説明

超音波探触子及び超音波診断装置

【課題】cMUTチップの電位を安定化して超音波特性を安定化させることを可能とする超音波探触子及び超音波診断装置を提供する。
【解決手段】cMUTチップ20の基板40は隅部において導電性材89を介してグランド線94に接続される。cMUTチップ20の基板40は、グランド電位となる。これにより、cMUTチップの電位を安定化して超音波特性を安定化させることができる。また、グランド電位のcMUTチップ20の基板40の上方は、音響レンズ及び絶縁層により二重絶縁される。これにより、超音波送受信面の摩耗や破損等が生じても超音波送受信面から感電することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断画像を撮像する超音波探触子及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波探触子から出力される反射エコー信号に基づいて診断画像を撮像する装置である。超音波探触子には、複数の超音波振動子が配列される。超音波振動子は、駆動信号を超音波に変換して超音波を被検体に送波すると共に、被検体から発生した反射エコー信号を受波して電気信号に変換する。
近年、cMUT(Capative Micromachined Ultrasonic Transducer)を用いた超音波探触子が開発されている。cMUTは、半導体微細加工プロセスにより製造される超微細容量型超音波振動子である。cMUTでは、バイアス電圧の大きさに応じて超音波送受信感度すなわち電気機械結合係数が変化する。尚、バイアス電圧は、超音波送受信部から供給される駆動信号に重畳して印加される(例えば、[特許文献1]参照。)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5894452号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
cMUTチップを超音波振動子素子として形成し、上部電極と下部電極間に、バイアス電圧を印加した状態で、超音波送波のための高周波電圧を印加するという基本概念は、上記特許文献1他の様々な文献に記載されている。しかし、cMUTチップを超音波探触子として実装し、それを超音波診断を行う臨床の場で安定的に動作させることについては、それらの文献に開示がない。
【0005】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、cMUTチップの電位を安定化して超音波特性を安定化させることを可能とする超音波探触子及び超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために第1の発明は、バイアス電圧に応じて電気機械結合係数または感度が変化する複数の振動要素を有し超音波を送受波するcMUTチップと、前記cMUTチップの超音波送受信側に設けられる音響レンズと、前記cMUTチップの背面に設けられるバッキング層と、を備える超音波探触子において、前記cMUTチップの下方に基板を有しており、前記cMUTチップの基板は、グランド電位のグランド線に接続されることを特徴とする超音波探触子である。
【0007】
第1の発明の超音波探触子では、cMUTチップの基板はグランド電位のグランド線に接続される。これにより、上部電極をグランド電位とすることなく、cMUTチップの電位を安定化して超音波特性を安定化させることができる。
【0008】
cMUTチップの基板とグランド線とは導電性材やバイヤホールを介して接続される。導電性材は、cMUTチップの隅部に充填することにより形成することが望ましい。これにより、信号パターン接続部とグランド接続部とを別の場所に独立して設けることができ、製作も容易である。
【0009】
第2の発明は、被検体に超音波を送受信する超音波探触子と、前記超音波探触子から出力される超音波受信信号に基づいて超音波画像を構成する画像処理部と、前記超音波画像を表示する表示部と、を備える超音波診断装置において、前記超音波探触子は請求項1から請求項4までのいずれかに記載の超音波探触子であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の超音波探触子を備える超音波診断装置に関する発明である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、cMUTチップの電位を安定化して超音波特性を安定化させることを可能とする超音波探触子及び超音波診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下添付図面を参照しながら、本発明に係る超音波探触子及び超音波診断装置の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、以下の説明及び添付図面において、略同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0013】
(1.超音波診断装置の構成)
最初に、図1を参照しながら、超音波診断装置1の構成について説明する。
図1は、超音波診断装置1の構成図である。
超音波診断装置1は、超音波探触子2、送信手段4、バイアス手段6、受信手段8、整相加算手段10、画像処理手段12、表示手段14、制御手段16、操作手段18から構成される。
【0014】
超音波探触子2は、被検体に接触させて被検体との間で超音波を送受波する装置である。超音波探触子2から超音波が被検体に射出され、被検体から発生した反射エコー信号が超音波探触子2により受波される。
【0015】
送信手段4及びバイアス手段6は、超音波探触子2に駆動信号を供給する装置である。
受信手段8は、超音波探触子2から出力される反射エコー信号を受信する装置である。受信手段8は、さらに、受信した反射エコー信号に対してアナログデジタル変換等の処理を行う。
【0016】
整相加算部10は、受信された反射エコー信号を整相加算する装置である。
画像処理手段12は、整相加算された反射エコー信号に基づいて診断画像(例えば、断層像や血流像)を構成する装置である。
表示部18は、画像処理された診断画像を表示する表示装置である。
制御手段16は、上述した各構成要素を制御する装置である。
操作手段18は、制御手段16に指示を与える装置である。操作手段18は、例えば、トラックボールやキーボードやマウス等の入力機器である。
【0017】
(2.超音波探触子2)
次に、図2〜図4を参照しながら、超音波探触子2について説明する。
【0018】
(2−1.超音波探触子2の構成)
図2は、超音波探触子2の構成図である。図2は、超音波探触子2の一部切り欠き斜視図である。
超音波探触子2は、cMUTチップ20を備える。cMUTチップ20は、複数の振動子21−1、振動子21−2、…が短柵状に配列された1次元アレイ型の振動子群である。振動子21−1、振動子21−2、…には、複数の振動要素28が配設される。尚、2次元アレイ型やコンベックス型等の他の形態の振動子群を用いてもよい。
cMUTチップ20の背面側には、バッキング層22が設けられる。cMUTチップ20の超音波射出側には、音響レンズ26が設けられる。cMUTチップ20及びバッキング層22は、超音波探触子カバー25に格納される。
【0019】
cMUTチップ20は、送信手段4及びバイアス手段6からの駆動信号を超音波に変換して被検体に超音波を送波する。受信手段8は、被検体から発生した超音波を電気信号に変換して反射エコー信号として受波する。
バッキング層22は、cMUTチップ20から背面側に射出される超音波の伝搬を吸収して、余分な振動を抑制する層である。
音響レンズ26は、cMUTチップ20から送波される超音波ビームを収束させるレンズである。音響レンズ26は、1つの焦点距離に基づいて曲率が定められる。
【0020】
尚、音響レンズ26とcMUTチップ20との間にマッチング層を設けてもよい。マッチング層は、cMUTチップ20及び被検体の音響インピーダンスを整合させて、超音波の伝送効率を向上させる層である。
【0021】
(2−2.振動子21)
図3は、振動子21の構成図である。
振動要素28の上部電極46は、長軸方向Xに区分された振動子21毎に結線される。すなわち、上部電極46−1、上部電極46−2、…は、長軸方向Xに並列配置される。
振動要素28の下部電極48は、短軸方向Yに区分された区分毎に結線される。すなわち、下部電極48−1、下部電極48−2、…は、短軸方向Yに並列配置される。
【0022】
(2−3.振動要素28)
図4は、振動要素28の構成図である。図4は、1つの振動要素28の断面図である。
振動要素28は、基板40、膜体44、膜体45、上部電極46、枠体47、下部電極48から構成される。振動要素28は、半導体プロセスによる微細加工により形成される。尚、振動要素28は、cMUTの1素子分に相当する。
【0023】
基板40は、シリコン等の半導体基板である。
膜体44及び枠体47は、シリコン化合物等の半導体化合物から形成される。膜体44は、枠体47の超音波射出側に設けられる。膜体44と枠体47との間に上部電極46が設けられる。基板40と膜体45との間に下部電極48が設けられる。枠体47及び膜体45により区画された内部空間50は、真空状態とされるか、あるいは、所定のガスにより充填される。
上部電極46及び下部電極48は、それぞれ、駆動信号として交流高周波電圧を供給する送信手段4と、バイアス電圧として直流電圧を印加するバイアス手段6とに接続される。
【0024】
超音波を送波する場合には、振動要素28に上部電極46及び下部電極48を介して、直流のバイアス電圧(Va)が印加され、バイアス電圧(Va)により電界が発生する。発生した電界により膜体44が緊張して所定の電気機械結合係数(Sa)になる。送信手段4から上部電極46に駆動信号が供給されると、電気機械結合係数(Sa)に基づいて超音波が膜体44から射出される。
また、振動要素28に上部電極46及び下部電極48を介して、直流のバイアス電圧(Vb)が印加されると、バイアス電圧(Vb)により電界が発生する。発生した電界により膜体44が緊張して所定の電気機械結合係数(Sb)になる。送信手段4から上部電極46に駆動信号が供給されると、電気機械結合係数(Sb)に基づいて超音波が膜体44から射出される。
【0025】
ここで、バイアス電圧が「Va<Vb」の場合には、電気機械結合係数は「Sa<Sb」となる。
一方、超音波を受波する場合には、被検体から発生した反射エコー信号により膜体44が励起されて内部空間50の容量が変化する。この内部空間50の変化量に基づいて、電気信号が上部電極46を介して検出される。
【0026】
尚、振動要素28の電気機械結合係数は、膜体44の緊張度により決定される。従って、振動要素28に印加するバイアス電圧の大きさを変えて膜体44の緊張度を制御すれば、同一振幅の駆動信号が入力される場合であっても、振動要素28から射出される超音波の音圧(例えば、振幅)を変化させることができる。
【0027】
(3.第1の実施形態)
次に、図5〜図9を参照しながら、第1の実施形態について説明する。
【0028】
(3−1.超音波探触子2の構成部材)
図5は、第1の実施形態に係る超音波探触子2を示す図である。図5は、図2の超音波探触子2の平面A断面図である。
【0029】
音響レンズ26の下面には、絶縁層である絶縁膜78が形成される。絶縁膜78は、例えば、シリコン酸化物膜、パラキシリレン膜である。
絶縁膜78の下方にグランド層としての導電膜76が設けられる。導電膜76は、グランド電位であるアース120に接続される。導電膜76は、例えば、蒸着により形成されるCu膜である。
【0030】
cMUTチップ20は、接着層70を介してバッキング層22の上面に接着される。バッキング層22の上面周縁から四方側面に渡って、フレキシブル基板72(Flexible printed circuits:FPC)が設けられる。フレキシブル基板72は、接着層71を介してバッキング層22の上面周縁に接着される。
【0031】
接着層70及び接着層71は、例えば、エポキシ樹脂からなる接着剤である。接着層70及び接着層71の層厚を任意に調整して、cMUTチップ20及びフレキシブル基板72の高さ方向位置を調整することができる。
【0032】
フレキシブル基板72とcMUTチップ20とは、ワイヤ86を介して電気的に接続される。ワイヤ86は、ワイヤボンディング方式により接続される。ワイヤ86としては、Auワイヤ等を用いることができる。ワイヤ86の周囲には、光硬化樹脂88が充填される。
【0033】
音響レンズ26は、導電膜76及び接着層90を介してcMUTチップ20の上面に接着される。音響レンズ26の材質としては、例えば、シリコンゴムが用いられる。接着層90の材質に関しては、音響レンズ26と類似の材質(例えば、シリコン)とすることが望ましい。
音響レンズ26の上面は、少なくとも領域23の範囲内において、超音波照射方向に凸状である。cMUTチップ20には、少なくとも領域23に対応する範囲内に、振動要素28が配置される。音響レンズ26の凸状の部分から超音波が照射される。
音響レンズ26の下面は、cMUTチップ20の周縁に対応する位置に、凹部を有する。この凹部には、cMUTチップ20とフレキシブル基板72との接続部分(光硬化樹脂88の部分)が嵌合される。
【0034】
超音波探触子カバー25は、超音波探触子2の四方側面に設けられる。超音波探触子カバー25は、音響レンズ26の四方側面に固定される。検者は、超音波探触子カバー25を手で把持して超音波探触子2を操作する。
【0035】
(3−2.超音波探触子2の接続)
図6は、超音波診断装置1と超音波探触子2の接続を示す模式図である。
超音波診断装置1と超音波探触子2は、ケーブル82を介して接続されている。ケーブル82は、複数の同軸ケーブル96を有している。
【0036】
振動要素28の上部電極46は、配線85に接続されている。配線85は、同軸ケーブル96の内部導体を介して超音波診断装置1内の配線91に接続されている。配線91は、送受分離回路98を介して受信手段8内の受信アンプ100及び送信手段4に接続される。
振動要素28の下部電極48は、配線66に接続されている。配線66は、同軸ケーブル96の内部導体を介して超音波診断装置1内の配線62に接続されている。配線62は、バイアス手段6に接続される。
同軸ケーブル96の本数は、複数の振動要素28に共通配置された上部電極46と下部電極48の合計の数となる。
振動要素28の基板40は、配線87に接続されている。配線87は、同軸ケーブル96の外部導体を介して超音波診断装置1内の配線93に接続されている。配線93は、本体装置(図示せず)のシャーシグランドを介してグランド108に接続される。
【0037】
配線66と配線87の間にはコンデンサ112が配置されている。このコンデンサ112は、AC電流が上部電極46から下部電極48に流れたとき、下部電極48からの電流をバイパスするための信号電流のバイパス用の容量素子である。
配線91と配線93の間には抵抗110が配置されている。この抵抗110は、上部電極46のDC電位をグランド電位に安定化するための抵抗素子である。
配線62と配線93の間にはバイアス手段6が配置されている。このバイアス手段6は、上部電極46と下部電極48の間に電位差を生じさせる。また、送信手段4は、上部電極46に交流高周波電圧を駆動信号として印加させる。具体的には、上部電極46は、DC=グランド(基準電位)、AC=Vppとなり、下部電極48は、DC=Vdc、AC=0となる。
【0038】
振動要素28の導電膜76は、配線84に接続されている。配線84は、超音波探触子2の内部回路(配線85、配線66、コンデンサ112など)を覆うように形成されており、ケーブル82の外周を介して、超音波診断装置1内の配線89に接続されている。配線89は、超音波診断装置1の内部回路(配線91、配線62、抵抗110など)を覆うように形成されており、アース120に接続されている。よって、導電膜76、配線84、ケーブル82の外周、配線89は、DC=0、AC=0である。
導電膜76、配線84、ケーブル82の外周、配線89及びアース120は、保護回路を形成し、外部からの電磁波を超音波診断装置1と超音波探触子2の内部回路に侵入させないようにするとともに、超音波診断装置1と超音波探触子2の内部で発生した電気をそれらの外部に放出させないようにしている。
【0039】
(3−3.超音波探触子2の配線)
図7は、超音波探触子2の配線を示す図である。
cMUTチップ20の基板40は、バッキング層22の上面に固定される。フレキシブル基板72は、バッキング層22の上面周縁に固定される。
フレキシブル基板72には、紙面上下で対になる信号パターン38−1〜信号パターン38−n及び紙面左右で対になる信号パターン41−1〜信号パターン41−4が配設される。
【0040】
上部電極46−1〜上部電極46−nは、信号パターン38−1〜信号パターン38−nに接続される。下部電極48−1〜下部電極48−4は、信号パターン41−1〜信号パターン41−nに接続される。隣接する下部電極48−1〜下部電極48−4は、絶縁される。上部電極46及び下部電極48は、それぞれ、ワイヤ86を介してワイヤボンディング方式によりフレキシブル基板72に接続される。
【0041】
尚、下部電極48−1〜下部電極48−4の形状は、振動要素28の形状(例えば、六角形)に応じた形状(例えば、波形)とすることが望ましい。これにより、各振動要素28を下部共通電極48−1〜下部共通電極48−4のいずれかのみに対応させて配置することができる。
【0042】
また、下部電極48−1〜下部電極48−4が4個配設されるが、数はこれに限られない。
また、信号パターン38−1〜信号パターン38−nは紙面上下に対にして設けられ、信号パターン48−1〜信号パターン48−4は紙面左右に対にして設けられるものとして説明したが、これに限られず、対にせずに片方だけでもよい。
また、信号パターンと上部電極又は下部電極とがワイヤボンディング方式により接続されるものとして説明したが、これに限られず、パッド同士で接続するフリップチップボンディング方式を用いてもよい。
【0043】
(3−4.グランド接続)
図8は、図7の模式図である。
図9は、超音波探触子2の基板40のグランド接続を示す図である。図9は、図8のB−B’線断面図である。
【0044】
cMUTチップ20の上面周縁では、MUTチップ20とフレキシブル基板72とは、ワイヤ86で接続される。光硬化樹脂88がワイヤ86の周囲に充填されて接続部が封止される。
cMUTチップ20の隅部(角部)では、cMUTチップ20とフレキシブル基板72と間に導電性材89が充填される。導電性材89は、基板40とグランド線94との接続部に相当する。グランド線94は、cMUTチップ20の隅部において、フレキシブル基板72とバッキング層22との間に配設される。
【0045】
基板40は、cMUTチップ20の底面に設けられる。基板40は、導電性材89に電気的に接続される。導電性材89は、フレキシブル基板72の表面に設けられるバイヤホール92に電気的に接続される。バイヤホール92は、グランド線94に電気的に接続される。基板40は、導電性材89及びバイヤホール92及びグランド線94を介してグランド108に接続される。尚、図10のグランド線94は、図6の配線87に相当する。バイヤホール92及び導電性材89は、基板40と配線87との接続部に設けられる。
【0046】
(3−5.効果等)
以上詳細に説明したように、第1の実施形態の超音波探触子2では、cMUTチップの基板は隅部において導電性材を介してグランド線に接続される。これにより、上部電極をグランド電位とすることなく、cMUTチップの電位を安定化して超音波特性を安定化させることができる。
また、グランド電位のcMUTチップの基板の上方は、音響レンズ及び絶縁層により二重絶縁される。これにより、超音波送受信面の摩耗や破損等が生じても超音波送受信面から感電することがない。
【0047】
また、cMUTチップの隅部以外の周縁には、フレキシブル基板の信号パターンとcMUTチップとを接続するワイヤが存在するが、cMUTチップの基板とグランド線とはcMUTチップの隅部に充填される導電性材を介して接続される。これにより、信号パターン接続部とグランド接続部とを別の場所に独立して設けることができ、製作も容易である。
【0048】
(4.第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る基板40のグランド接続を示す図である。
図9では、cMUTチップ20の基板40は、導電性材89及びバイヤホール92を介してグランド線94に接続されるものとして説明したが、これに限られない。図10では、cMUTチップ20の基板40は、導電性材89を介して直接グランド線94に接続される。
【0049】
このように、第2の実施形態では、フレキシブル基板72にバイヤホールを設けることなく、cMUTチップ20の基板40をグランド線94に接続することができる。
【0050】
(5.その他)
上述の実施の形態では、絶縁層の膜厚を1μm程度とすることが望ましい。絶縁層の膜厚をそれぞれ薄くすることにより、cMUTチップにおいて送受される超音波への影響(パルス・周波数特性への影響や減衰)を抑制することができる。
【0051】
膜形成方法に関しては、音響レンズの成形と同時に絶縁シートをインモールド成形する方法や絶縁膜を物理的蒸着あるいは化学的蒸着により形成する方法がある。インモールド成形では、低コストに膜を形成することができるが、膜厚10μm程度が限界である。一方、蒸着による膜形成では、膜厚1μm程度とすることができる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る超音波探触子及び超音波診断装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】超音波診断装置1の構成図
【図2】超音波探触子2の構成図
【図3】振動子21の構成図
【図4】振動要素28の構成図
【図5】第1の実施形態に係る超音波探触子2を示す図
【図6】超音波診断装置1と超音波探触子2の接続を示す模式図
【図7】超音波探触子2の配線を示す図
【図8】図7の模式図
【図9】基板40のグランド接続を示す図(第1の実施形態)
【図10】基板40のグランド接続を示す図(第2の実施形態)
【符号の説明】
【0054】
1………超音波診断装置
2………超音波探触子
4………送信手段
6………バイアス手段
8………受信手段
10………整相加算手段
12………画像処理手段
14………表示手段
16………制御手段
18………操作手段
20………cMUTチップ
21−1、21−2、…、………振動子
22………バッキング層
25………超音波探触子カバー
26………音響レンズ
28………振動要素
40………基板
46………上部電極
48………下部電極
72………フレキシブル基板
70、71、90………接着層
78………絶縁膜(絶縁層)
76………導電膜(グランド層)
86………ワイヤ
88………光硬化樹脂
89………導電性材
92………バイヤホール
94………グランド線
108………グランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアス電圧に応じて電気機械結合係数または感度が変化する複数の振動要素を有し超音波を送受波するcMUTチップと、前記cMUTチップの超音波送受信側に設けられる音響レンズと、前記cMUTチップの背面に設けられるバッキング層と、を備える超音波探触子において、
前記cMUTチップの下方に基板を有しており、
前記cMUTチップの基板は、グランド電位のグランド線に接続されることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記cMUTチップの基板は、導電性材を介して前記グランド線に接続されることを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記cMUTチップの基板は、導電性材及びバイヤホールを介して前記グランド線に接続されることを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記導電性材は、前記cMUTチップの隅部に設けられることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項5】
被検体に超音波を送受信する超音波探触子と、前記超音波探触子から出力される超音波受信信号に基づいて超音波画像を構成する画像処理部と、前記超音波画像を表示する表示部と、を備える超音波診断装置において、
前記超音波探触子は請求項1から請求項4までのいずれかに記載の超音波探触子であることを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−148720(P2008−148720A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336532(P2006−336532)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】