説明

超音波検査装置

【課題】被覆部材で被覆された測定対象物の板厚を測定する超音波検査装置を提供すること。
【解決手段】超音波検査装置1は、断熱材110で被覆された配管100の一部を外部に露出させる導入孔を形成するスリーブ22と、導入孔に挿入され、配管100に超音波を発生させる超音波発生用光ファイバー211と、導入孔に挿入され、配管100に向かって検査用レーザー光を照射し、かつ超音波が発生している配管100によって反射した照射された検査用レーザー光の反射レーザー光を受信する検査用光ファイバー212と、検査用レーザー光および反射レーザー光に基づいて少なくとも配管100の板厚を測定する板厚測定手段である板厚測定装置4と、を備える。この超音波検査装置1は、配管100の板厚の測定に超音波発生用光ファイバー211および検査用光ファイバー212を用いるので、配管100が断熱材110で被覆された状態であっても配管100の板厚を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査装置に関し、さらに詳しくは、被覆部材で被覆された測定対象物の板厚を測定する超音波検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントにおける配管や炉内構造物など構成機器の状態、例えば減肉、腐食、傷などを検査することは、原子力プラントを安全でかつ健全な状態に保持するために必要な行為である。定期的に検査を行うことで、原子力プラントの保守、保全、リアルタイムの健全性評価、故障箇所の早期発見を行うことができる。
【0003】
構成機器の外部状態の検査は、例えば検査員が構成機器を直接目視することで行うことができる。しかし、構成機器の内部状態の検査は、構成機器の大きさ、位置、汚染状態によっては、原子力プラントの稼働を停止しても、検査員が直接目視することで行えない場合がある。
【0004】
また、構成機器の内部状態の検査は、構成機器を傷つけることなく行うことが必要となる。つまり、非破壊検査を行うことが必要である。これらにより、構成機器の内部状態の検査を行う装置として、目視検査装置、X線検査装置、超音波検査装置などがある。
【0005】
目視検査装置は、構成機器の内部にこの内部を撮像することができる撮像装置を挿入し、構成機器の外部から構成機器の内部状態を目視することで検査を行うものである。しかし、この目視検査装置では、目視対象物を例えば複雑に接続されている配管内部の任意の場所とする場合に、この任意の場所を探して内部状態を撮像するが困難である。また、例えば目視対象物が径の小さい配管などである場合に、この内部に撮像装置を挿入することが困難である。
【0006】
X線検査装置は、X線を用いて構成機器の内部状態の検査を行うものである。しかし、このX線検査装置は、検査を行う構成機器よりも大きくなるため、構成機器が密集している場合や、大きな構成機器の場合に、その内部状態の検査を行うことができない。
【0007】
超音波検査装置は、構成機器に超音波を発生させ、構成機器の内部状態の検査を行うものである。この超音波検査装置では、超音波を構成機器に発生させるために、例えば特許文献1に示すように圧電素子を備える。この圧電素子は、超音波を発生させる構成機器に液体媒質を介して直接接触させる。そして、構成機器に発生した超音波に基づいて、この構成機器(測定対象物)の内部状態として少なくとも板厚を測定するものである。従って、検査を行う構成機器の大きさ、位置、汚染状況などに拘わらず、構成機器の内部状態の検査を行うことができる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−274557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、圧電素子を用いた超音波検査装置では、例えば断熱材などの被覆部材により被覆されている既存の配管の状態を検査する場合、この圧電素子によって配管に超音波を発生させるために、この配管を被覆している被覆部材を剥がすことが必要となる。これにより、圧電素子を用いた超音波検査装置は、原子力プラントの稼働中に使用することができない。また、原子力プラントを再稼働する際に、剥がした被覆部材により再度配管を被覆する必要があり、再稼働までに時間がかかるという問題があった。
【0010】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、被覆部材で被覆された状態の測定対象物の板厚を測定することができる板厚測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明では、被覆部材で被覆された測定対象物の一部を外部に露出させる導入孔を形成するスリーブと、前記導入孔に挿入され、前記測定対象物に超音波を発生させる超音波発生用光ファイバーと、前記導入孔に挿入され、前記測定対象物に向かって検査用レーザー光を照射し、かつ前記超音波が発生している測定対象物によって反射した前記照射された検査用レーザー光の反射レーザー光を受信する検査用光ファイバーと、前記検査用レーザー光および前記反射レーザー光に基づいて少なくとも前記測定対象物の板厚を測定する板厚測定手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、圧電素子よりも小さい超音波発生用光ファイバーおよび検査用光ファイバーを用いる。従って、超音波発生用光ファイバーおよび検査用光ファイバーが挿入される導入孔を形成するスリーブの外径を小さくすることができ、測定対象物を被覆する被覆部材にこのスリーブを容易に差し込むことができる。これにより、超音波発生用光ファイバーおよび検査用光ファイバーを測定対象物の近傍に位置させことができ、被覆部材で被覆された状態の測定対象物の板厚を測定することができる。また、スリーブの外径が小さいため、このスリーブを被覆部材に差し込んでも、この被覆部材の性能低下を抑制することができる。
【0013】
また、この発明では、上記板厚測定装置において、前記スリーブ、前記超音波発生用光ファイバーおよび前記検査用光ファイバーから構成されるセンサユニットを複数個備え、前記複数のセンサユニットから任意のセンサユニットを選択し、当該選択されたセンサユニットと前記板厚測定手段とを接続するチャンネルセレクターをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、各センサユニットの各スリーブを被覆部材に差し込むことだけで、1つの板厚測定手段により、測定対象物の複数の測定箇所における板厚を測定することができる。従って、測定対象物の複数の測定箇所における板厚の測定を1回の検査作業で行うことができる。これにより、測定箇所ごとに検査作業を行う必要がないので、検査時間を短縮することができる。
【0015】
また、この発明では、上記板厚測定装置において、前記スリーブを複数個備え、前記測定対象物は、予め前記各スリーブにより前記導入孔が形成されていることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、各スリーブを被覆部材に予め差し込むことだけで、一組の超音波発生用光ファイバー、検査用光ファイバーおよび板厚測定手段により、測定対象物の複数の測定箇所における板厚を測定することができる。従って、測定対象物の予め決められた複数箇所を繰り返し検査することができる。これにより、測定対象物の予め決められた複数箇所の経時変化を知ることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明にかかる超音波検査装置は、測定対象物の板厚の測定に超音波発生用光ファイバーおよび検査用光ファイバーを用いるので、測定対象物が被覆部材で被覆された状態であっても測定対象物の板厚を測定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0019】
図1は、超音波検査装置の構成例を示す図である。図2は、センサユニットの詳細を示す図である。図3は、図2のA部分拡大図である。この超音波検査装置1は、図1〜3に示すように、センサユニット2と、接続用光ファイバーケーブル3と、板厚測定装置4とにより構成されている。なお、100は、被覆部材で被覆された測定対象物、この実施例では配管である。また、110は、被覆部材、この実施例では断熱材である。また、120は、断熱材110のカバーである。
【0020】
センサユニット2は、検査用プローブ21と、スリーブ22とにより構成されている。検査用プローブ21は、超音波発生用光ファイバー211と、検査用光ファイバー212とにより構成されている。
【0021】
超音波発生用光ファイバー211は、測定対象物に超音波を発生させるものである。この実施例では、例えばYAGレーザーなどの超音波発生用レーザー光を配管100に照射することで、この配管100に超音波(超音波振動)を発生させるものである。
【0022】
検査用光ファイバー212は、測定対象物に向かって検査用レーザー光を照射し、かつ超音波が発生している測定対象物によって反射した照射された検査用レーザー光の反射レーザー光を受信するものである。この実施例では、例えばYAGレーザーなどの検査用レーザー光を超音波が発生している配管100の表面に照射し、この超音波が発生している配管100によって反射したこの照射された検査用レーザー光の反射レーザー光を受信するものである。
【0023】
スリーブ22は、被覆部材で被覆された測定対象物の一部を外部に露出させる導入孔を形成するものである。この実施例では、スリーブ22は、円筒形状で、その空間部を導入孔23とするものである。従って、スリーブ22は、配管100を被覆する断熱材110に差し込まれることで、この断熱材110で被覆された配管100の一部を外部に露出させる導入孔23を形成するものである。このスリーブ22の導入孔23には、検査用プローブ21が挿入される。これにより、超音波発生用光ファイバー211および検査用光ファイバー212を配管100の近傍に非接触で位置する。
【0024】
ここで、導入孔23の直径dは、この導入孔23に挿入される検査用プローブ21の直径によって設定される。この検査用プローブ21を構成する超音波発生用光ファイバー211および検査用光ファイバー212は、従来の超音波検査装置に用いられる圧電素子よりも小さいものである。超音波発生用光ファイバー211および検査用光ファイバー212の直径は、2〜3mm程度であるのに対して、圧電素子の直径は15mm程度である。従って、導入孔23の直径dを小さくすることができる。これにより、超音波発生用光ファイバー211および検査用光ファイバー212が挿入される導入孔23を形成するスリーブ22の外径Dの小さくすることができる。例えば、スリーブ22の外径Dは、超音波発生用光ファイバー211および検査用光ファイバー212を用いることで5mm程度とすることができる。
【0025】
接続用光ファイバーケーブル3は、検査用プローブ21と板厚測定装置4とを接続するものである。この接続用光ファイバーケーブル3は、第1伝送用光ファイバー31と、第2伝送用光ファイバー32とにより構成されている。
【0026】
第1伝送用光ファイバー31は、超音波発生用光ファイバー211と、板厚測定装置4の後述する第1レーザー発信機41と、に接続されている。この第1伝送用光ファイバー31は、第1レーザー発信機41が出力する超音波発生用レーザー光を超音波発生用光ファイバー211に伝送するものである。
【0027】
第2伝送用光ファイバー32は、検査用光ファイバー212と、板厚測定装置4の後述する分岐器43を介して第2レーザー発信機41と、干渉計44とに接続されている。この第2伝送用光ファイバー32は、第2レーザー発信機42が出力する検査用レーザー光を検査用光ファイバー212に伝送し、この検査用光ファイバー212が受信した反射レーザー光を干渉計44に伝送するものである。
【0028】
板厚測定装置4は、板厚測定手段であり、検査用レーザー光および反射レーザー光に基づいて測定対象物の板厚を測定するものである。この実施例では、干渉計44を用いることで検査用レーザー光および反射レーザー光に基づいて配管100の板厚Wを測定するものである。この板厚測定装置4は、第1レーザー発信機41と、第2レーザー発信機42と、分岐器43と、干渉計44と、分析装置45と、同期信号発生装置46とにより構成されている。
【0029】
第1レーザー発信機41は、超音波発生用レーザー光を発信するものであり、発信した超音波発生用レーザー光は、上記第1伝送用光ファイバー31を介して超音波発生用光ファイバー211に伝送される。
【0030】
第2レーザー発信機42は、検査用レーザー光を発信するものであり、発信した検査用レーザー光は、上記第2伝送用光ファイバー32を介して検査用光ファイバー212に伝送される。なお、第1レーザー発信機41および第2レーザー発信機42は、同期信号発生装置46に接続されている。従って、第1レーザー発信機41および第2レーザー発信機42からそれぞれ発信される超音波発生用レーザー光および検査用レーザー光は、第1レーザー発信機41および第2レーザー発信機42に入力された同期信号に基づいて同期させられている。なお、この同期信号は、分析装置45にも入力されている。
【0031】
分岐器43は、検査用レーザー光を分岐するものである。この分岐器43は、第2伝送用光ファイバー32および干渉計44に接続されている。従って、分岐器43により分岐した一方の検査用レーザー光は、上記第2伝送用光ファイバー32を介して検査用光ファイバー212に伝送される。また、分岐器43により分岐した他方の検査用レーザー光は、干渉計44に入力される。
【0032】
干渉計44は、検査用レーザー光と、反射レーザー光とに基づいて干渉渦を生成するものである。この干渉計44は、分析装置45に接続されており、生成された干渉渦に基づく信号がこの分析装置45に出力される。
【0033】
分析装置45は、上記干渉計44によって生成された干渉渦を分析することで、測定対象物に発生した超音波を受信し、この測定対象物の板厚を測定するものである。なお、この分析装置45には、図示しない入出力装置が備えられており、測定された板厚などを例えばモニタなどに表示される。
【0034】
次に、この超音波発生装置1の動作、すなわち測定対象物の板厚測定方法について説明する。まず、図示しない検査員は、測定対象物を被覆する被覆部材、この実施例では断熱材110に、スリーブ22を差し込む。このとき、このスリーブ22は、その先端が測定対象物、この実施例では配管100の測定箇所表面に到達するまで断熱材110に差し込まれる。これにより、断熱材110で被覆された配管100の一部を外部に露出させる導入孔23が形成される。また、上述のように、スリーブ22の外径Dは、十分に小さいため、断熱材110にこのスリーブ22を容易に差し込むことができる。
【0035】
次に、断熱材110に差し込まれたスリーブ22の導入孔23に検査プローブ21を挿入する。なお、この検査プローブ21は、接続用光ファイバーケーブル3を介して、板厚測定装置4と予め接続されている。
【0036】
次に、板厚測定装置4を動作させる。第1レーザー発信機41および第2レーザー発信機42は、それぞれ同期された超音波発生用レーザー光および検査用レーザー光を発信する。
【0037】
第1レーザー発信機41が発信した超音波発生用レーザー光は、第1伝送用光ファイバー31を介して、超音波発生用光ファイバー211に伝送される。超音波発生用光ファイバー211は、伝送された超音波発生用レーザー光を配管100の測定箇所に向かって照射する。照射された超音波発生用レーザー光により、配管100に超音波が発生する。発生した超音波は、配管100の内壁面で反射し、反射波となり、この反射波によって配管100の測定箇所の表面が超音波振動する(図3参照)。
【0038】
第2レーザー発信機42が発信した検査用レーザー光は、分岐器43および第2伝送用光ファイバー32を介して、検査用光ファイバー212に伝送される。検査用光ファイバー212は、伝送された検査用レーザー光を配管100の測定箇所に向かって照射する。照射された超音波発生用レーザー光は、超音波振動している配管100の表面で反射し、反射レーザー光として、検査用光ファイバー212に受信される。ここで、反射レーザー光には、ドップラーシフトが発生している。
【0039】
受信された反射レーザー光は、第2伝送用光ファイバー32を介して、干渉計44に伝送される。ここで、干渉計44には、第2レーザー発信機42が発信した検査用レーザー光が分岐器43を介して伝送されている。
【0040】
干渉計44は、検査用レーザー光とドップラーシフトが発生している反射レーザー光とに基づいて干渉渦を生成する。この生成された干渉渦(生成された干渉渦に基づく信号)は、分析装置45に出力される。
【0041】
分析装置45は、干渉計44によって生成された干渉渦を分析し、配管100に発生した超音波を受信し、この配管100の板厚Wを測定する。
【0042】
以上のように、超音波発生用光ファイバー211および検査用光ファイバー212を測定対象物である配管100の近傍に位置させることができ、被覆部材である断熱材110で被覆された状態の配管の板厚Wを測定することができる。また、超音波発生用光ファイバー211および検査用光ファイバー212を用いた超音波検査装置1は、配管100と非接触で、配管100の板厚Wを測定するため、温度の高い測定対象物、例えば高温の流体あるいは気体が通過する配管100の板厚を測定することができる。また、スリーブ22の外径Dが小さいため、このスリーブ22を被覆部材である断熱材110に差し込んでも、この断熱材110の性能、例えば断熱性の低下を抑制することができる。従って、配管100が原子力プラントなどのプラントに用いられている場合、このプラントが稼働していても、配管100の板厚Wを常時測定することができる。
【0043】
なお、上記超音波検査装置1は、測定対象物の1つの測定箇所における板厚を測定する場合について説明したが、以下に複数の測定箇所における板厚を効率良く測定する場合について説明する。図4は、超音波検査装置の他の構成例を示す図である。図5は、超音波検査装置の他の構成例を示す図である。ここで、以下の説明では、同一の測定対象物の複数の測定箇所における板厚を測定する場合について説明するが、板厚を測定する測定対象物は異なるものであっても良い。
【0044】
図4に示す超音波測定装置1は、測定対象物、この実施例では配管100の板厚を測定したい複数の測定箇所に対応する複数センサユニット2と、各センサユニット2に対応する複数個の接続用光ファイバーケーブル3と、板厚測定装置4と、チャンネルセレクター5とにより構成されている。
【0045】
各センサユニット2は、配管100の複数の測定箇所に各スリーブ22をそれぞれ差し込むことで配置される。各接続用光ファイバーケーブル3は、各センサユニット2と接続されており、かつチャンネルセレクター5と接続されている。板厚測定装置4は、チャンネルセレクター5と接続されている。
【0046】
チャンネルセレクター5は、複数個のセンサユニット2から任意のセンサユニット2と、板厚測定装置4とを接続するものである。このチャンネルセレクター5は、複数個のセンサユニット2から任意のセンサユニット2を検査員の指示によりあるいは自動的に選択するものである。そして、この選択されたセンサユニット2の超音波発生用光ファイバー211および検査用光ファイバー212に、板厚測定装置4の第1レーザー発信機41および第2レーザー発信機42が発信した超音波発生用レーザー光および検査用レーザー光をそれぞれ伝送するものである。
【0047】
つまり、同図に示す超音波測定装置1は、各センサユニット2の各スリーブ22を被覆部材である断熱材110に差し込むことだけで、1つの板厚測定装置4により、配管100の複数の測定箇所における板厚を測定することができる。従って、配管100の複数の測定箇所における板厚の測定を1回の検査作業で行うことができる。これにより、測定箇所ごとに1つのセンサユニット2のスリーブ22を差し込む、その測定箇所における板厚の測定、すなわち検査作業を行う必要がないので、検査時間を短縮することができる。
【0048】
また、同図に示す超音波測定装置1では、複数の測定箇所のうち1箇所における板厚を常時測定するようにし、定期点検時などにのみチャンネルセレクター5により他の箇所に対応するセンサユニット2を選択してその箇所における板厚を測定しても良い。つまり、ある測定箇所は常時検査し、他の箇所は巡回点検時に検査することもできる。
【0049】
図5に示す超音波測定装置1は、測定対象物、この実施例では配管100の板厚を測定したい複数の測定箇所に対応する複数個のスリーブ22、1つの検査プローブ21、1つの接続用光ファイバーケーブル3と、板厚測定装置4とにより構成されている。
【0050】
各スリーブ22は、配管100の複数の測定箇所に予めそれぞれ差し込まれている。つまり、配管100は、予め各スリーブ22により導入孔23が測定したい複数の測定箇所に対応して形成されている。
【0051】
つまり、同図に示す超音波測定装置1は、検査プローブ21を各スリーブ22の導入孔23に挿入するだけで、一組の検査プローブ21(超音波発生用光ファイバー211および検査用光ファイバー212)、接続用光ファイバーケーブル3、板厚測定装置4により、配管100の複数の測定箇所における板厚を測定することができる。従って、配管100の予め決められた複数箇所を繰り返し検査することができる。これにより、配管100の予め決められた複数箇所の経時変化を知ることができる。
【0052】
上記実施例の超音波検査装置1では、測定対象物に超音波を発生させるものとして、超音波発生用光ファイバー211を用いたが、EMATを用いて超音波を発生させる超音波検査装置1’も考えられる。図6は、他のセンサユニットの詳細を示す図である。図7は、図6のB部分拡大図である。
【0053】
図6および図7に示すこの超音波検査装置1’は、測定対象物である配管100に超音波を発生する手段としてEMAT7(Electromagnetic Acoustic Transducer)を用いるものである。このEMAT7は、電磁気的作用により配管100に非接触で超音波をこの配管100に対して任意の向きに発生させ、受信することができるものである。しかしながら、EMAT7自体で配管100に発生した超音波を受信すると、受信感度が悪い。従って、配管100の板厚を測定することは可能であるが、この配管100の欠陥、すなわち傷の有無などを検査することは困難であった。そこで、従来では、EMATを構成する電磁力発生コイルを薄膜コイルにするなどの改良が行われたが、十分ではなかった。そこで、超音波検査装置1’のように、EMAT7を配管100に超音波を発生させるだけに用い、配管100に発生した超音波の受信に、受信感度がEMAT7よりも高い検査用光ファイバー61を用いることが考えられる。
【0054】
超音波検査装置1’は、センサユニット6(検査用光ファイバー61およびこの検査用光ファイバー61を挿入する挿入孔63が形成されたスリーブ62)と、EMAT7と、接続用光ファイバーケーブル3と、図示しない測定装置とにより構成されている。なお、8は、EMAT7を駆動する電力を供給する駆動ケーブルである。この駆動ケーブル8は、例えば測定装置に接続されていても良いし、図示しないEMAT7の駆動を制御する制御装置に接続されていても良い。ここで、検査用光ファイバー61は、接続用光ファイバーケーブル3を介して測定装置に接続されている。
【0055】
図示しない測定装置の基本的構成は、図1に示す板厚測定装置4のレーザー発信機41を除いた基本的構成と同一であり、測定装置は、板厚の測定のみならず、欠陥、すなわち傷の位置や大きさを測定することができるものである。また、センサユニット6の基本構成は、図1に示すセンサユニット2の超音波発生用光ファイバー211を除いた基本構成と同一である。なお、スリーブ62は、EMAT7に形成された図示しない貫通孔に挿入固定されている。
【0056】
次に、この超音波発生装置1’の動作、すなわち測定対象物の板厚測定方法について説明する。まず、図示しない検査員は、測定対象物である配管100にセンサユニット6およびEMAT7を取り付ける。なお、センサユニット6およびEMAT7の配管100への取付は、この配管100が被覆部材、例えば断熱材などで被覆されている場合は、その被覆部材を剥がしてから行われる。
【0057】
次に、EMAT7を駆動し、図示しない測定装置を動作させ、この測定装置の図示しないレーザー発信機が検査用レーザー光を発信する。なお、EMAT7は、駆動ケーブル8から供給された電力により、配管100に超音波を発生させる。この発生した超音波は、配管100の内壁面で反射し、反射波となり、この反射波によって配管100の測定箇所の表面が超音波振動する(図7参照)。
【0058】
図示しないレーザー発信機が発信した検査用レーザー光は、図示しない分岐器および接続用光ファイバーケーブル3を介して、検査用光ファイバー61に伝送される。検査用光ファイバー61は、伝送された検査用レーザー光を配管100の測定箇所に向かって照射する。照射された超音波発生用レーザー光は、超音波振動している配管100の表面で反射し、反射レーザー光として、検査用光ファイバー61に受信される。
【0059】
受信された反射レーザー光は、接続用光ファイバーケーブル3を介して、図示しない測定装置の干渉計に伝送される。ここで、干渉計には、図示しないレーザー発信機が発信した検査用レーザー光が図示しない分岐器を介して伝送されている。
【0060】
次に、図示しない干渉計は、検査用レーザー光とドップラーシフトが発生している反射レーザー光とに基づいて干渉渦を生成する。この生成された干渉渦(生成された干渉渦に基づく信号)は、図示しない分析装置に出力される。
【0061】
次に、図示しない分析装置は、図示しない干渉計によって生成された干渉渦を分析し、配管100に発生した超音波を受信し、この配管100の板厚を測定し、配管100に傷がある場合は、傷の位置、大きさを測定する。
【0062】
以上のように、超音波検査装置1’は、測定対象物である配管100に発生した超音波をEMAT7自体で配管100に発生した超音波を受信する場合よりも受信感度の高い検査用光ファイバー61により受信する。従って、超音波検査装置1’は、配管100の板厚の測定のみならず、欠陥、すなわち傷の有無などを検査することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、この発明にかかる超音波検査装置は、被覆部材で被覆された測定対象物の板厚を測定する超音波検査装置に有用であり、特に、被覆部材で被覆された状態の測定対象物の板厚を測定するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】超音波検査装置の構成例を示す図である。
【図2】センサユニットの詳細を示す図である。
【図3】図2のA部分拡大図である。
【図4】超音波検査装置の他の構成例を示す図である。
【図5】超音波検査装置の他の構成例を示す図である。
【図6】他のセンサユニットの詳細を示す図である。
【図7】図6のB部分拡大図である。
【符号の説明】
【0065】
1 超音波検査装置
2 センサユニット
21 検査プローブ
211 超音波発生用光ファイバー
212 検査用光ファイバー
22 スリーブ
23 導入孔
3 接続用光ファイバーケーブル
31 第1伝送用光ファイバー
32 第2伝送用光ファイバー
4 板厚測定装置
41 第1レーザー発信機
42 第2レーザー発信機
43 分岐器
44 干渉計
45 分析装置
46 同期信号発生装置
5 チャンネルセレクター
6 センサユニット
61 検査用光ファイバー
62 スリーブ
63 挿入孔
7 EMAT
8 EMAT駆動ケーブル
100 配管(測定対象物)
110 断熱材(被覆部材)
120 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆部材で被覆された測定対象物の一部を外部に露出させる導入孔を形成するスリーブと、
前記導入孔に挿入され、前記測定対象物に超音波を発生させる超音波発生用光ファイバーと、
前記導入孔に挿入され、前記測定対象物に向かって検査用レーザー光を照射し、かつ前記超音波が発生している測定対象物によって反射した前記照射された検査用レーザー光の反射レーザー光を受信する検査用光ファイバーと、
前記検査用レーザー光および前記反射レーザー光に基づいて少なくとも前記測定対象物の板厚を測定する板厚測定手段と、
を備えることを特徴とする超音波検査装置。
【請求項2】
前記スリーブ、前記超音波発生用光ファイバーおよび前記検査用光ファイバーから構成されるセンサユニットを複数個備え、
前記複数のセンサユニットから任意のセンサユニットを選択し、当該選択されたセンサユニットと前記板厚測定手段とを接続するチャンネルセレクターをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波検査装置。
【請求項3】
前記スリーブを複数個備え、
前記測定対象物は、予め前記各スリーブにより前記導入孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−232528(P2007−232528A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53635(P2006−53635)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】