説明

超音波洗浄装置

【課題】被洗浄体Wの表面を損傷することなく、環境の汚染を可及的に抑えて表面にこびり付いた汚染物質を洗浄できる超音波洗浄装置を提供すること。
【解決手段】一端に縦振動モードの超音波振動子1が固定されたホーン2の他端に被洗浄体の硬度と略同一な粉末を研磨剤とする研磨板3が固定され、ホーン3の少なくも研磨板近傍にはホーン2の振動を阻害せずかつ水密性を維持する筒状体4が研磨板3を被洗浄物の表面に当接できるように配置され、筒状体4に液を供給する手段が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄体の表面に付着した汚染物質を除去するのに適した超音波洗浄装置に関するに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動を利用して物体の表面を洗浄する装置としては特許文献1に見られるように、把持手段を有するハウジングと、洗浄すべき表面上に載置され且つその表面上全体を移動することができる洗浄ヘッドと、ハウジング内に取り付けられ洗浄ヘッドを超音波周波数で振動させる変換器手段とからなり、硬質表面から頑固な汚染物を除去するために
(i)汚れを洗浄組成物と接触させる段階と、
(ii)汚れを超音波洗浄 装置の洗浄ヘッドと接触させる段階と、
(iii)硬質表面を水溶液ですすぐ段階
を実行するように構成されている。
【0003】
しかし自動車のウインドを構成するガラスを洗浄しようとすると、洗浄ヘッドがガラスの表面に平行に振動するため、研磨剤によりガラスに擦り傷が生じたり、またその擦り傷に研磨剤が侵入して再付着したり、さらには研磨剤が外部にそのまま廃棄され環境を汚染するという問題がある。
【0004】
このような問題を解消するため、特許文献2に見られるように洗浄液供給管から供給される洗浄液に超音波振動子から発振される超音波振動を噴出口から噴出する洗浄液に集束させる集束板と、超音波振動子を振動させる超音波発振器とを備えて、流水を用いて超音波キャビテーションによる洗浄を行うことも提案されている。
しかしながら、被洗浄体に強固にこびり付いた汚染物質を確実に除去することが困難であるという問題がある。
【特許文献1】特表2002-529237
【特許文献2】特開2007-319748
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは被洗浄体Wの表面を損傷することなく、環境の汚染を可及的に抑えて表面にこびり付いた汚染物質を洗浄できる超音波洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を達成するために本発明は一端に縦振動モードの超音波振動子が固定されたホーンの他端に被洗浄体の硬度と略同一な粉末を研磨剤とする研磨板が固定され、前記ホーンの少なくも前記研磨板近傍には前記ホーンの振動を阻害せずかつ水密性を維持する筒状体が前記研磨板を被洗浄物の表面に当接できるように配置され、前記筒状体に液を供給する手段が接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、研磨板は被洗浄体Wと略同一硬度の物質により構成され、かつ被洗浄体Wの垂直方向にのみ当接するため、被洗浄体Wに擦過等の損傷を与えることは可及的に抑制される。剥離された汚染物質は、超音波により振動状態となっているため、被洗浄体Wの表面に再付着することはない。このようにして剥離された汚染物質は循環する水により回収される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
そこで以下に本発明の詳細を実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施例を示すものであって軸方向に伸縮する、例えばランジュバン型振動素子を複数積層して構成された超音波振動子1の一端に先端が可及的に平面あるいは被洗浄体の表面形状倣うように成型されたホーン2が固定されている。
【0009】
ホーン2の先端面には、被洗浄体Wであるガラスと略同等の硬度を有する粉末を研磨剤とする研磨板3が粘着層などを介して着脱可能に固定されている。
【0010】
ホーン2は、先端部側に開口4aし、かつホーン2の周囲との間に水が浸入でき、さらにホーン2の振動を阻害しないように一端が把持部を兼ねる防水ケース5の底部5aに固定された筒状体4により包囲されている。
【0011】
ホーン2の先端の外周には環状の弾性材からなるシール部材6が設けられている。このシール材6としては多孔質弾性材、例えばスポンジなどが好ましい。すなわち、被洗浄体Wから除去した汚染物質をシール材6により捕捉しつつ若干の水を漏洩させて被洗浄物Wの周囲を湿潤させることができる。
【0012】
筒状体4には給水管7と排水管8とが接続され、図示しない給水ポンプにより水等の液体が循環するように構成されている。
【0013】
なお、図中符号9は、複数の超音波振動板を積層状態に維持してホーン2に固定するためのボルトを示す。
【0014】
この実施例において被洗浄ガラスの表面に洗浄装置を当接させて、給水ポンプを作動させ、超音波振動子1を作動させる、研磨板3が被洗浄体Wの表面に対して垂直(図中の矢印方向)に断続的に当接しする。これにより被洗浄面に付着している汚染物質は、研磨板3の衝撃力で剥離を受け、同時にホーン2の超音波振動による衝撃水をも受けて剥離が促進される。
【0015】
いうまでもなく、研磨板3は被洗浄体Wと略同一硬度の物質により構成され、かつ被洗浄体Wの垂直方向にのみ当接するため、被洗浄体Wに擦過等の損傷を与えることは可及的に抑制される。
【0016】
剥離された汚染物質は、液体中で超音波により振動状態となっているため、被洗浄体Wの表面に再付着することはない。このようにして剥離された汚染物質は循環する水により回収される。
また、一部の水はシール材6を通過して周辺を予め湿潤状態とさせるから洗浄装置をスムーズに移動させることが可能となる。
【0017】
(比較例)
図2の写真、図3の写真は、本発明の洗浄装置による洗浄結果を示すものであり、また図4、図5、及び図6のは従来装置による洗浄結果を示すものである。
すなわち、シリカが付着した試料(図2)を本発明の洗浄装置により3分程度洗浄したところ、図3の写真に示すようにシリカが除去されたばかりでなく、擦り傷も発生していない。
【0018】
これに対してシリカが付着した試料(図4)を従来の洗浄装置により3分程度洗浄したところ、図5の写真に示すようにシリカは除去できているものの研磨方向(図中 略垂直方向)に擦り傷が発生している。なお、図6の写真は、研磨方向を略水平方向に変えて上述と同様に研磨した結果を示すものである。
このことから、本発明は、従来の洗浄装置と同等以上の洗浄能力を有しつつ、しかも被洗浄体に擦り傷を付けることがなく洗浄することが確認できた。
なお、図2乃至図6において×状の傷は、研磨方向を指示するためのマーカである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明による洗浄結果を示すための洗浄前の試料を示す図面に代わる写真。
【図3】本発明による洗浄結果を示す洗浄後の試料を示す図面に代わる写真。
【図4】従来の洗浄装置による洗浄結果を示すための洗浄前の試料を示す図面に代わる写真。
【図5】従来の洗浄装置による洗浄結果を示す洗浄後の試料を示す図面に代わる写真。
【図6】従来の洗浄装置による洗浄結果を示す洗浄後の試料を示す図面に代わる写真。
【符号の説明】
【0020】
1 超音波振動子 2 ホーン 3 研磨板 4 筒状体 5 防水ケース 6 シール部材 7 給水管 8 排水管 W 被洗浄体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に縦振動モードの超音波振動子が固定されたホーンの他端に被洗浄体の硬度と略同一な粉末を研磨剤とする研磨板が固定され、前記ホーンの少なくも前記研磨板近傍には前記ホーンの振動を阻害せずかつ水密性を維持する筒状体が前記研磨板を被洗浄物の表面に当接できるように配置され、前記筒状体に液を供給する手段が接続されている超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記筒状体の先端に環状の多孔質弾性体が配置されている請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記超音波振動子がランジュバン型振動素子を複数積層して構成されている請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記超音波振動子が液密に封止されている請求項1に記載の超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−247953(P2009−247953A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97054(P2008−97054)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(599045970)
【出願人】(391013715)日本車輌洗滌機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】