説明

超音波画像における病変の検出及び分類方法、及びそのシステム

超音波画像の中の候補病変領域を判定する方法は、解剖学的組織のデジタル超音波画像にアクセスするステップと、実質的に同様の輝度値と空間的な滑らかさの制約とに従って超音波画像にて空間的に隣接した画素を複数の領域にセグメント化するステップと、前記複数の領域から、所定の輝度値よりも低い輝度値を有する一つ又は複数の候補病変領域を選択するステップと、を含む。ある構成では、前記一つ又は複数の候補病変領域は、良性、悪性、又は未知のうちの少なくとも一つのクラスに分類される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像のデジタル画像処理、より具体的には、そのような画像内の病変の検出及び分類に関する。
【背景技術】
【0002】
乳癌リスクのアセスメントは、乳癌のリスクが増加した個人に対するスクリーニングの向上を含み得る調査計画を考案する機会を提供する。マンモグラフィーの組織パターンのコンピュータ化された分析は、乳癌リスクに関係付けられ得るこれらのパターンの客観的且つ定量的な特徴付けを提供し得る。マンモグラフ単独の又は疫学的リスクファクター(例えば年齢)と組み合わせた分析に基づく乳癌リスクのコンピュータ化されたアセスメントは、乳癌リスクの予測において、コストが掛かり且つ/又は情報に依存する現在の現存している医療方法に対する代替策として機能することができる。
【0003】
乳房は、主として2つの成分、すなわち繊維腺組織と脂肪組織とから構成される。平均的な乳房は、50%の繊維腺組織及び50%の脂肪組織から構成される。繊維腺組織は、繊維性の結合組織と、乳房の管の内側を覆う腺上皮細胞との混合である(柔組織)。
【0004】
主要な乳房の病気は、乳房の末端の管状小葉単位から始まり、管の内側を覆う上皮細胞から主に生じる。しかし、繊維又は結合組織もまた、関与することがある。何人かの個人によって、悪性の乳房の病気は、上皮の過生成、すなわち上皮細胞の数の増加から始まると考えられている。上皮の過生成は、非定形の過生成に進行することがあり、そこでは、上皮細胞は数が増えるだけではなく、これらの細胞に対しては普通ではない方法で変化もする。進行は、このステージでは、可逆であると考えられている。非定形のある基準レベルが到達されると、その場(in-situ)癌診断が行われることができて、悪性細胞の管の外への侵入はない。悪性の形質転換の進行は、このステージでは不可逆であると考えられる。進行の最終フェーズでは、癌細胞は管壁の外に出て、周囲の間質組織に侵入し、この時点で、病気は浸透性又は侵襲性の癌と呼ばれる。
【0005】
たいていの(80%〜85%)の乳癌は、マンモグラフにおいて、塊り、小さな組織のクラスター、又は両者の組み合わせとして見ることができる。他のマンモグラフ的な異常は、塊り及び/又は石灰化よりも特異性及び有病率がより少なく、皮膚又は乳首の変化、わきのしたにおける異常、非対称の密度、及び構造上の歪みを含む。
【0006】
乳癌の早期検出は生存率を改善することができる。いくつかの統計は、乳癌と診断された女性に対する総合的な5年生存率は84%であるが、小さな局所的なステージで発見されると、5年生存率は97%であることを示している。少なくとも一つの研究は、スクリーニングマンモグラフィーの使用が検出時の病変のサイズ及びステージを低減することができて、生存に対する予測を改善することを示している。現在、マンモグラフィーは、乳癌の早期検出のための確立されたイメージング技法である。少なくとも一つの組織が、40歳以上の全ての女性に対して、年に1回のスクリーニングマンモグラフィーを推奨している。
【0007】
特許文献1は、乳癌リスクのコンピュータ化されたアセスメントのための方法及びシステムに関し、乳房のデジタル画像が獲得されて、少なくとも一つの特徴が、そのデジタル画像の対象領域から抽出される。抽出された特徴は所定のモデルと比較され、抽出された特徴のパターンを、遺伝子キャリア情報、又は医療情報、又は遺伝子キャリア情報及び医療情報の両方に基づいて所定のモデルに関連付けられた対応する特徴パターンから導き出されたリスク推定と関連付け、リスク分類インデックスが比較の結果として出力される。デジタル画像から抽出されるべき好適な特徴は、1)前記対象領域における画素のグレーレベルの絶対値に基づいた一つ又はそれ以上の特徴、2)前記対象領域における画素のグレーレベルヒストグラム分析に基づいた一つ又はそれ以上の特徴、3)前記対象領域における画素値のフーリエ分析に基づいた一つ又はそれ以上の特徴、及び4)対象領域内部の画素のグレーレベルの間の空間的関係に基づいた一つ又はそれ以上の特徴、を含む。
【0008】
特許文献2は、解剖学的組織に存在する病変の分析のための方法に関しており、(a)病変が存在する解剖学的組織の超音波画像から導出された第1のデジタル画像データを獲得するステップと、(b)病変の位置を第1のデジタルデータに関して決定するステップと、(c)特徴抽出分析のために、1)病変の縁における対象領域、及び2)病変とその病変の周囲近傍にある対象領域とを含む対象領域、及び3)病変とその病変の縁にある対象領域とを含む対象領域、の少なくとも一つを選択するステップと、(d)前記選択ステップにおいて選択された各々の選択された対象領域から、前記第1の画像データの内部の病変を特徴付ける少なくとも一つの第1の特徴を抽出するステップと、(e)抽出された少なくとも一つの特徴に基づいて前記病変を特徴付けるステップと、を包含する。
【0009】
特許文献3及び特許文献4は同様のシステムを記述しており、それぞれ、超音波画像における病変の影の分析、及びソノグラフ画像における放射状勾配インデックス(RGI)を使用する。
【0010】
【特許文献1】米国特許第6282305号明細書
【特許文献2】米国特許第5984870号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0161513号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0125621号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
乳房病変の検出及び診断のためのコンピュータ化されたシステムに関連する困難さは、周囲の組織からの病変領域のセグメント化である。いくつかのシステム、例えば特許文献2は、セグメント化がグラフィック・ユーザ・インターフェースを使用して病変の輪郭を手作業で決めることによって得られると推定する。この手作業の手順は多大な労力が掛かり、完全自動化を妨げることがあり、人間の誤り、不一致、及び主観の影響を受ける。結果として生じる病変の輪郭決定における不正確さは、引き続くコンピュータ化された診断に悪影響を及ぼす。なぜなら、不正確な病変輪郭から計算された特徴(例えば特許文献2によって教示されるようなもの)は、病変分類に対して不正確になる傾向があるからである。
【0012】
したがって、コンピュータ化されたマンモグラフィー分析システムを合理化する自動セグメント化モジュールを考案することが望まれている。
【0013】
画素ベース、エッジベース、領域ベース、及びモデルベースのセグメント化技法が、医療画像処理において知られている。各アプローチは、それ自身の限界を有している。例えば、画素ベースのセグメント化技法は、画像内に顕著な量のノイズがあると困難を有する傾向にあり、エッジベースの技法は、物体の境界が十分に規定されていないとき及び画像のコントラストが乏しいときに問題を経験する傾向があり、モデルベースの技法は、対象の物体の形状及び外観に顕著な量の変動があると失敗する傾向にある。領域成長技法は、良好なシードポイント(典型的には手作業の相互作用によって提供される)を必要とし、隣接する物体が対象の物体と、それらの外観において非常に合致するときには、致命的な誤りの対象になる。
【0014】
そのため、現存している方法の限界を克服する方法に対する必要性が存在する。
【0015】
本発明は病変のセグメント化及び分類方法を提供し、セグメント化は自動で、且つ画像のノイズ及びターゲットの外観(色及び形状)における変動に対して比較的鈍感である。さらに、この方法は、自動病変セグメント化と自動病変分類とを段階的に(カスケードに)行うことによって、病変のセグメント化及び分類のための完全自動システムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は病変セグメント化方法を提供することであり、セグメント化は自動で、且つ画像のノイズ及びターゲットの外観(例えば、色及び形状)における変動に対して比較的鈍感である。
【0017】
本発明の他の目的は、自動病変セグメント化と自動病変分類とを段階的に(カスケードに)行うことによって、病変のセグメント化及び分類のための自動システムを提供することである。
【0018】
これらの目的は、描写的な例によってのみ与えられ、そのような目的は、本発明の一つ又は複数の例示であり得る。開示された発明によって本質的に達成されるその他の望ましい目的及び効果が、生じ得るか、又は当業者に対して明らかになり得る。本発明は、添付の請求項によって規定される。
【0019】
本発明は、方法、コンピュータプログラム、及びシステムを提供し、そこでは、病変領域が超音波(マンモグラフィー)画像の中で自動的に位置決めされ、そのような病変領域は、病変領域それ自身に対して計算された複数の特徴にしたがって分類され、病変が良性か悪性かが判定される。
【0020】
改良された病変診断方法及び装置が提供されることが本発明の有益な効果であり、そこでは、セグメント化は自動で、且つ画像のノイズ及びターゲットの外観(例えば、色及び形状)に対して比較的鈍感である。
【0021】
完全に自動化された病変のセグメント化及び分類方法を提供することが、本発明の更なる有益な効果である。
【0022】
本発明の一つの局面によれば、超音波画像の中の候補病変領域を判定する方法が提供される。この方法は、解剖学的組織のデジタル超音波画像にアクセスするステップと、同様の輝度値と空間的な滑らかさの制約とに従って超音波画像にて空間的に隣接した画素を複数の領域にセグメント化するステップと、前記複数の領域から、所定の輝度値よりも低い輝度値を有する一つ又は複数の候補病変領域を選択するステップと、を含む。ある構成では、前記一つ又は複数の候補病変領域は、良性、悪性、又は未知のうちの少なくとも一つのクラスに分類される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
添付の図面と共に本発明の実施形態の以下の記述を参照することによって、この発明及びそれらを達成する方法の上述の及びその他の特徴及び目的がより明らかになり、且つ、本発明それ自身がよりよく理解されるであろう。
【0024】
以下は、本発明の好適な実施形態の詳細な記述であり、図面が参照され、そこでは、いくつかの図面の各々において、同じ参照番号が構造の同じ構成要素を示す。
【0025】
以下に続く詳細な描写のいくつかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する動作のアルゴリズム及びシンボル描写に関して提示される。これらのアルゴリズムの記述及び表現は、データ処理分野における当業者によって、彼らの仕事の実質を他の当業者に最も効果的に提示するために使用される。アルゴリズムは、所望の結果に導く動作の首尾一貫したシーケンスであり、一般的には、そういうものであるとみなされる。動作は、物理的実体の物理的操作を必要とするものである。通常は、これらの実体は、記憶され、転送され、結合され、比較され、且つ他の方法で操作されることができる電気的又は磁気的な信号の形態を取るが、必ずしもそうである必然性はない。簡便のために、これらの信号は、ここでは時折、下地情報に関して、ビット、値、要素、シンボル、文字、用語、数などのような指示対象を使用して参照される。
【0026】
しかし、これら及び類似の用語が適切な物理的実体に関連されており、これらの実体に適用された単なる便利なラベルであることが、認識されるべきである。以下の記述から明らかであることとは異なるように具体的に述べられない限り、明細書を通して、「処理する」又は「計算する(computing)」又は「計算する(calculating)」又は「決定する」又は「表示する」などのような用語を使用した議論は、コンピュータシステム又は同様のデータ処理装置の動作及びプロセスを指しており、これらは、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリの内部で物理的な(例えば電子的な)実体として表現されるデータを処理し、コンピュータシステムのメモリ又はレジスタ又はその他のそのような情報の記憶、伝送、又は表示装置の内部で物理的実体として同様に表現される他のデータに変換する。
【0027】
本発明はまた、ここに記述されている動作を実行する特定の装置を含むシステムにも関している。プログラマブルコンピュータのような装置は、要求される目的のために特別に構成され得て、あるいは、コンピュータに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に駆動されるか又は再構成される汎用コンピュータを備え得る。そのようなコンピュータプログラムはコンピュータ読み取り可能記憶媒体に記憶され得て、それは、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク、CD−ROM、及び磁気光ディスクを含む任意のタイプのディスク、リードオンリーメモリ(ROM)、ダイナミックRAM(DRAM)、EPROM、EEPROMのようなランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気又は光カード、又は電子的指示を記憶するために適した任意のタイプの媒体のようなものであるが、それらに限られるものではない。上記の記憶要素の各々は、コンピュータシステムバスに結合されている。
【0028】
ここで提示されるアルゴリズム及びディスプレーは、任意の特定のコンピュータ又はその他の装置に本質的に関連してはいない。様々な汎用システムが、ここの教示にしたがってプログラムと共に使用され得て、あるいは、この方法を実行するために、より専門化された装置を構成することが便利であることが示され得る。様々なこれらのシステムのための構造は、以下の記述から明らかになるであろう。加えて、本発明は、任意の特定のプログラミング言語に関して記述されてはいない。様々なプログラミング言語がここに記述される本発明の教示を具現化するために使用され得ることを、理解されたい。
【0029】
機械読み取り可能媒体は、情報を記憶し、又は機械(例えばコンピュータ)によって読み取り可能な形態に変換する任意の機構を含み得る。例えば、機械読み取り可能媒体は、リードオンリーメモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリ装置、伝搬される信号(例えば、搬送波、赤外信号、デジタル信号、など)の電気的、光学的、アコースティック的、又はその他の形態などを含む。
【0030】
「特定の実施形態において」などの参照は、本発明の少なくとも一つの実施形態に存在している特徴を指す。「ある実施形態」又は「特定の実施形態」などへの別個の参照は、必ずしも同じ一つ又は複数の実施形態を指すものではない。しかし、そのような実施形態は、そうであると示されているか又は当業者に容易に明らかでない限りは、相互に排他的ではない。本発明はこれより、ここに記述されている実施形態の組み合わせを含む。
【0031】
「病変」という用語は、ここでは、そうでなければ通常の解剖学的組織の内部の単一の異常な塊りを指すために使用される。
【0032】
「マンモグラフィー画像」という用語は、ここでは、患者の乳房の一部を示す画像を指すために使用され、それは、通常の乳房組織、及びある場合には病変を含む。
【0033】
ここに具体的に示されないか又は記述されない構成要素は、当該技術で知られているものから選択され得る。記述されるべき実施形態のある局面は、ソフトウエアで提供され得る。本発明に従って示され且つ記述される方法を以下の材料に与えると、本発明の具現化のために有用であるがここで具体的に示されず、記述されず、又は示唆されないソフトウエアは、従来のものであり、そのような技術における通常の技術の範囲内である。本発明の方法は、当業者に良く知られているカラー画像処理手順と一緒の使用に有用であるが、それに限定されるものではない。
【0034】
図1を参照すると、本発明が、示されているブロック図を参照して記述されている。第1に、入力超音波画像10は、分析のためにアクセス/獲得/提供される。領域セグメント化20が入力超音波画像に対して実行されて、多くの領域を生成し、その各々が異なる輝度特徴を有している。セグメント化された領域の間で、いくつかは、病変に対する候補領域30として選択され得る。次に、複数の特徴が、各々の候補領域に対して抽出40される。各々の候補領域はそれから、例えば良性病変、又は悪性病変として、又はある場合には病変ではないと、分類50される。
【0035】
以下により具体的に記述されるように、領域セグメント化20に先立って、入力画像を前処理15することが望まれることもある。
【0036】
ここで図2を参照すると、本発明の好適な実施形態に従った適切な領域セグメント化方法(ステップ20)のブロック図が示されている。この方法は、1997年IEEE画像処理に関する国際会議講演論文集のLuo et al.の「写真カラー画像の物理ベースのセグメント化に向けて」に記述されている適応ベイズカラーセグメント化アルゴリズムから改良されている。
【0037】
領域セグメント化は、同様の輝度パターンに関して、任意の形状の加工しやすい数の物理的にコヒーレントな領域を生成する。
【0038】
同様の輝度パターンとは、同様の輝度値、又は同様の輝度テクスチュア、及び/又は両者の組み合わせを指すことができる。同様の輝度パターンを有する領域は同じ輝度クラスになるが、そうでなければ、空間的に分離されていて異なる形状を有する。このセグメント化方法が好適であるが、当業者が、本発明の範囲から逸脱することなく、任意の形状の領域を得るために異なるセグメント化方法を使用することができる点を理解されたい。任意の形状をした領域のセグメント化は、サイズ、位置、形状、ならびに潜在的な物体の内部特性の正確な測定を容易にする。
【0039】
画像の領域への初期セグメント化が得られるS50。画像の輝度ヒストグラムが計算され、それから、画像内の異なる優勢な輝度に対応する複数のクラスターに区分される。画像の各画素は、輝度クラスターの平均値に関する好適な輝度距離メトリックにしたがって、輝度空間内の最も近いクラスターに分類される(1997年IEEE画像処理に関する国際会議講演論文集のLuo et al.の「写真カラー画像の物理ベースのセグメント化に向けて」)。この分類プロセスは、画像の初期セグメント化をもたらす結果となる。
【0040】
この画素に対する局所輝度ヒストグラムを計算するためにどの近隣画素が使われるかを決定するために、近隣ウインドウが各画素に配置される。ウインドウサイズは、局所輝度ヒストグラムが画像全体に対するものと同じになって再計算される必要がないように、最初は画像全体のサイズに設定されるS52。
【0041】
次に、反復手順が、2つの交互のプロセス、現在のセグメント化に基づいた各輝度クラスの局所平均値の再計算S54と輝度クラスの更新された局所平均値にしたがった画素の再分類S56との間で実行される。
【0042】
この反復手順は、収束に達するS60まで実行される。この反復手順の間に、空間的制約の強さが逐次的方法で調整されることができるS58(例えば、空間的制約の強さを示すβの値が、各反復で線形に増加される)。
【0043】
特定のウインドウサイズに対して収束が達成された後、輝度クラスに対する局所平均値を推定するために使用されたウインドウが、半分のサイズに縮減されるS62。
【0044】
反復手順は、縮減されたウインドウサイズが輝度クラスに対する局所平均値のより正確な推定を許容するように、繰り返される。このメカニズムは、セグメント化プロセスに空間的な適合可能性を導入する。
【0045】
最後に、画像のセグメント化は、反復手順が最小ウインドウサイズに対する収束に達するときに得られるS64。
【0046】
本発明の好適な実施形態では、出願人は、異なる輝度クラスの数を、病変、通常の組織、及び未知の構造に大雑把に対応して、3に設定/予め定義した。
【0047】
図2に記述された好適なセグメント化方法の利点は、小さな病変がそのサイズのために失われることがないことであり、これは、既知の古典的なk平均アルゴリズム(k−means algorithm)のような他の非好適なセグメント化方法に対してはしばしばチャレンジである。適当な領域セグメント化なしでは、物体の認識ならびにサイズ及び形状のような特性の適切なアセスメントを実行することが、困難であることがある。
【0048】
セグメント化の結果は、領域のラベルを含む。すなわち、各画素がそのラベル値によって表現される。ラベル付けされた領域の画像は、ラベル画像又はセグメント化マップと称される。
【0049】
上記で示したように、領域セグメント化20に先立って入力画像を前処理する15ことが望ましいことがある。より具体的には、セグメント化20が適用される前に、病変と通常の組織との間のコントラストを強調することが望ましいことがある。
【0050】
本発明の好適な実施形態では、2.0のガンマ補正が使用される。代替的なコントラスト強調が同じ目的のために実行されることができる。画素座標(x,y)であるときに輝度値をI(x,y)とすると、ガンマ補正された値は、方程式I'(x,y)=I(x,y)^(1/ガンマ)によって与えられる。
【0051】
領域セグメント化20に続いて、セグメント化された領域が、ステップ30で病変に対する候補領域として選ばれ得る。
【0052】
一般に、病変は、典型的には超音波画像で比較的暗い領域として見える。なぜなら、それらは通常の組織に対して境界を形成し、より高い水分含有量を有する傾向にあるからである。それゆえ、本発明では、より暗い領域が病変候補として選択される。
【0053】
本発明の好適な実施形態では、所定の値(例えば、可能な最大輝度の20%)よりも低い平均輝度を有する領域が、候補領域として選択される。
【0054】
付加的な基準を使用して、可能性の低い候補領域をさらに排除/低減することができる。例えば、オペレータは通常は病変を視野の中心に配置すると推定される。言い換えると、病変は、もし存在すれば画像内に完全に捉えられて、したがって、画像の境界に接している領域は病変である可能性は低く、これより更なる分析から排除されることができる。
【0055】
候補の選択は、少ない数の領域に焦点を絞ることによって、引き続く病変の分類を容易にする。
【0056】
選択された候補領域の各々に対して、ステップ40で、特徴のセットが抽出されて各領域を特徴付ける。特徴のリストは、一つ又はそれ以上のカテゴリーを備えることができる。特定のアプリケーションでは、3つのカテゴリー、すなわち、形状特徴、内部特徴、及び境界特徴が使用される。他のカテゴリー、例えば影特徴が含まれることができる。他のカテゴリーは、当業者には既知であり得る。
【0057】
加えて、特徴の生の測定値は、適切な非線形特性を有する関数によって、それらの値が[0,1.0]の範囲内に正規化されるように変換されてもよい。正規化は、当業者には既知である。当業者は、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、特徴の代替的なタイプを認識することができる。
【0058】
一般に、コンパクトな楕円形状及び滑らかな輪郭を有する病変は、両性である傾向がある。
【0059】
基本的な特徴は、高さ、幅、及び周、ならびにサイズである。
【0060】
領域のアスペクト比は、領域の長軸/短軸、又は高さ/幅である。この特徴ディテクタは、細長い形状が病変とみなされることからディスカウントする。加えて、悪性の病変は圧縮され難く、超音波散乱の方向、すなわちトランスデューサの方向に沿って、幅広くというよりは背が高く見えることがある。良性の病変、又は非病変は、背が高いというよりは、むしろ幅広く見える傾向にある。そのような特徴は、アスペクト比によっても示されることができる。
【0061】
コンパクトさは、領域の周の2乗を領域の面積で割ったものである。S字信頼関数は、サーキュラリティを確信値にマッピングする。
【0062】
内部特徴は、候補領域の内部における輝度値の平均及び標準偏差を含む。
【0063】
境界特徴は、候補領域の境界に沿った輝度勾配値の平均及び標準偏差を含む。
【0064】
影特徴は、候補病変領域によって作られた影を測定するために使用される。
【0065】
特定の特徴が全ての候補領域に対して計算されると、その特徴は、ステップ50において、候補領域が良性病変であるか又は悪性病変であるか又は全く病変ではないかどうかを分類するために使用される。
【0066】
「病変ではない」という第3のクラスは、あいまいさのために、候補選択ステップ30が時々選択されるべき非病変領域を含むならば、設けられる。医療の専門家によって分類されるそのような場合の例は、いわゆるトレーニング例として訂正される必要がある。これらのトレーニング例の特徴及び関連した分類ラベルは、分類子を導く基礎であり、これがそれから、分類子によって見られない新規の候補領域を分類するために使用される。当業者は、決定ツリー、ニューラルネットワーク、ベイズ分類子などを含む多くの現存している分類子から選ぶことができる。デューダ、ハート、及びストークの「パターン分類子」は、そのよう分類子の例を記述している。本発明の好適な実施形態では、決定ツリーが使用される。信頼できる値が望まれるならば、ニューラルネットワーク又はベイズ分類子のような代替的な分類子が使用されるべきである。
【0067】
図3A〜3Dは、乳房の超音波画像の4つの例を示す。図3A〜3Dに対応する図4A〜4Dにおいて、各画像は3つの輝度クラスにセグメント化され、最も暗い領域の輝度クラスは、セグメント化された画像における最高の明るさによって示されている。一般に、病変候補はこれらの領域から選択される。図5A〜5Dにおいて、全ての候補領域は、良性(例えば部分100)、悪性(例えば部分110)、あるいは病変ではない(例えば部分120)に分類される。より具体的には、図5Aは病変を示さず、図5Bは良性病変を示し、図5Cは悪性病変を示し、図5Dは悪性病変を示す。
【0068】
あるいは、信頼値が望まれるならば、カラーバー200(図5A〜5Dの近くに示される)が、オペレータがカーソルを置く領域の隣に表示されることができて、バーの影(カラー飽和)が病変分類の視覚的な提示及び関連した信頼値を与える。例えば、チェック印201(又は他の記号)が、病変が高い信頼値で悪性と分類されるときにはカラーバーの深い赤の範囲を示し、あるいは、病変が良性と分類されるが低い信頼値であるときにはカラーバーの明るい青の範囲を示す、などである。
【0069】
図6A及び6Bは追加の例を示し、オペレータによって操作可能なカーソルを示し、候補領域の輪郭が描かれている。
【0070】
本発明が、乳房の病変に関係した好適な実施形態にて記述されているが、肝臓のような他の組織における病変に対して、本発明の思想及び範囲の内部で変化及び改変が行われることができることを理解されたい。
【0071】
本発明は、オンライン、リアルタイム、又はオフラインで実行され得る。リアルタイムの状況では、オペレータに瞬時の警告又はフィードバックを提供することができる。オフラインの状況では、前もって記録された画像のデータベースを分析することができる。
【0072】
加えて、自動セグメント化に続いて、超音波画像とセグメント化された病変領域の輪郭とを表示し、グラフィック・ユーザ・インターフェースを使用したオペレータによる領域輪郭の調整を受け入れることが望ましいことがある。
【0073】
本発明は、例えばコンピュータプログラム製品にて具現化されることができる。コンピュータプログラム製品は、一つ又はそれ以上の記憶媒体、例えば、(フロッピー(登録商標)ディスクのような)磁気ディスク又は磁気テープ、光ディスク、光テープ、又は機械読み取り可能なバーコードのような光学記憶媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)又はリードオンリーメモリ(ROM)のような固体電子記憶装置、あるいは、本発明に従った方法を実行するように一つ又はそれ以上のコンピュータを制御する指示を有するコンピュータプログラムを記憶するために利用される任意の他の物理的装置又は媒体を含み得る。
【0074】
本発明のシステムは、マイクロプロセッサ、コンピュータメモリ、及び前記コンピュータメモリに記憶された本方法のステップを実行するためのコンピュータプログラムを含む。このコンピュータは、マイクロプロセッサに動作可能に接続されたメモリインターフェースを有する。これは、取り外し可能なメモリを受け入れるドライブ上のUSBポートのようなポート、あるいは、カメラメモリへのアクセスを許容する何らかの他の装置であることができる。このシステムは、メモリインターフェースに適合するメモリを有するデジタルカメラを含む。望まれるならば、写真フィルムカメラ及びスキャナが、デジタルカメラの代わりに使用されることができる。グラフィック・ユーザ・インターフェース(GUI)、ならびにマウス及びキーボードのようなユーザ入力ユニットが、コンピュータの一部として提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に従った方法のある実施形態のステップを描いたブロック図である。
【図2】通常の組織領域から病変領域をセグメント化するステップを描いているブロック図である。
【図3A】病変(良性及び悪性)及び通常の組織領域の両方を備える超音波画像の例を示す図である。
【図3B】病変(良性及び悪性)及び通常の組織領域の両方を備える超音波画像の例を示す図である。
【図3C】病変(良性及び悪性)及び通常の組織領域の両方を備える超音波画像の例を示す図である。
【図3D】病変(良性及び悪性)及び通常の組織領域の両方を備える超音波画像の例を示す図である。
【図4A】図3Aに対応し、セグメント化された病変領域の例を示す図である。
【図4B】図3Bに対応し、セグメント化された病変領域の例を示す図である。
【図4C】図3Cに対応し、セグメント化された病変領域の例を示す図である。
【図4D】図3Dに対応し、セグメント化された病変領域の例を示す図である。
【図5A】図3A及び図4Aに対応し、分類された病変領域の例を示す図である。
【図5B】図3B及び図4Bに対応し、分類された病変領域の例を示す図である。
【図5C】図3C及び図4Cに対応し、分類された病変領域の例を示す図である。
【図5D】図3D及び図4Dに対応し、分類された病変領域の例を示す図である。
【図6A】分類された病変領域の追加の例を示す図である。
【図6B】分類された病変領域の追加の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解剖学的組織のデジタル超音波画像における病変を検出する方法であって、
前記解剖学的組織のデジタル超音波画像にアクセスするステップと、
前記解剖学的組織のデジタル超音波画像における空間的に隣接した画素を、同様の輝度パターンにしたがって複数の領域にセグメント化するステップと、
前記複数の領域から、所定の輝度値よりも低い輝度値を有する一つ又は複数の候補病変領域を選択するステップと、
前記一つ又は複数の候補病変領域を、良性、悪性、又は未知のうちの少なくとも一つのクラスに分類するステップと、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記一つ又は複数の候補病変領域を分類するステップは、前記一つ又は複数の候補病変領域を、形状特徴、内部特徴、又は境界特徴のうちの少なくとも一つにしたがって、良性又は悪性クラスに分類するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記病変分類に対する信頼値を提供するステップをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記セグメント化するステップに先立って、前記デジタル超音波画像を前処理するステップをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記デジタル超音波画像は病変を備えており、前記デジタル超音波画像は前記病変と普通の解剖学的組織との間のコントラストを強調するように前処理される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記選択された候補病変領域は、所定の輝度値よりも低い平均輝度値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
超音波画像における候補病変領域を判定する方法であって、
前記解剖学的組織のデジタル超音波画像にアクセスするステップと、
同様の輝度値と空間的な滑らかさの制約とに従って前記超音波画像にて空間的に隣接した画素を複数の領域にセグメント化するステップと、
前記複数の領域から、所定の輝度値よりも低い輝度値を有する一つ又は複数の候補病変領域を選択するステップと、
を包含する、方法。
【請求項8】
前記セグメント化するステップに先立って、前記デジタル超音波画像を、病変と通常の解剖学的組織との間のコントラストが強調されるように前処理するステップをさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記前処理ステップは、ガンマ補正を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記一つ又は複数の候補病変領域を、良性、悪性、又は未知のうちの少なくとも一つのクラスに分類するステップをさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記一つ又は複数の候補病変領域を分類するステップは、前記一つ又は複数の候補病変領域を、形状特徴、内部特徴、又は境界特徴のうちの少なくとも一つにしたがって、良性又は悪性クラスに分類するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記一つ又は複数の候補病変領域の選択に先立って、ある領域の内部の小さな孔を除去し、前記領域の輪郭を平滑化することによって、複数の領域の数を減らすステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記セグメント化するステップは、改良k平均アルゴリズム(k−means algorithm)におけるマルコフランダムフィールドモデルを使用して達成される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記分類ステップは、
前記選択された候補病変領域の輪郭を抽出するステップと、
形状特徴、内部特徴、又は境界特徴からなるグループから少なくとも一つの特徴を決定するステップと、
前記選択された候補病変領域を、前記計算された少なくとも一つの特徴に応じて、良性、悪性、あるいは未知又は悪性のいずれかとして分類するステップと、
をさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも2つの特徴は、前記選択された候補病変領域に対して決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記形状特徴は、前記選択された候補病変領域のアスペクト比である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記境界特徴は、領域の周と前記選択された候補病変領域の平方根との比を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記内部特徴は、前記選択された候補病変領域の内部の画素値の分散である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記境界特徴は、前記選択された候補病変領域の境界を横切る平均勾配である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記超音波画像をディスプレー上に、前記選択された候補病変領域の輪郭と共に表示するステップをさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項21】
一つ又は複数のコンピュータに請求項1に記載の方法を実行させるための指示を内部に記憶した少なくとも一つのコンピュータ記憶媒体を有するコンピュータストレジ製品。
【請求項22】
解剖学的組織のデジタル超音波画像における病変を検出するシステムであって、
前記解剖学的組織のデジタル超音波画像にアクセスする手段と、
前記デジタル画像における空間的に隣接した画素を、実質的に同様な輝度パターンにしたがって複数の領域にセグメント化する手段と、
前記複数の領域から、所定の輝度値よりも低い輝度値を有する一つ又はそれ以上の候補病変領域を選択する手段と、
前記一つ又はそれ以上の候補病変領域を、以下のクラス、すなわち良性、悪性、又は未知のうちの少なくとも一つのクラスに分類する手段と、
を備える、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公表番号】特表2008−520345(P2008−520345A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543061(P2007−543061)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/037843
【国際公開番号】WO2006/057740
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507224587)ケアストリーム ヘルス インク (76)
【Fターム(参考)】