説明

超音波診断装置の駆動電源回路

【課題】
超音波振動子を駆動する送信回路に使用される電源のサージ電圧を低減することができる超音波診断装置の駆動電源回路を提供する。
【解決手段】
パルス電圧を生成するためのコンバータ内スイッチを有するDC−DCコンバータを備え、DC−DCコンバータの出力に基づいて、超音波振動子を駆動する電圧を出力する。DC−DCコンバータの出力をスイッチングする出力期間設定スイッチと、スイッチングされた電圧を昇圧整流し、昇圧整流した電圧を超音波振動子に供給する倍電圧整流回路と、出力期間設定スイッチをON、OFFする信号を出力する固定周波数発振回路と、コンバータ内スイッチにより生成されるパルスのエッジを含まない時間範囲内で、出力期間設定スイッチがON状態となるように、固定周波数発振回路から出力される信号の位相を調整する位相制御回路と、倍電圧整流回路の出力をDC−DCコンバータにフィードバックするループとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用した超音波診断装置の駆動電源回路に関するものである。特に、送信に用いる超音波振動子と受信に用いる超音波振動子を共用している超音波診断装置の駆動電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を体内に送信し、体内から反射してきた超音波信号を受信し、受信信号を画像化する超音波診断装置が広く用いられている。近年は、パルス・インバージョン・ハーモニック法などが用いられ、送信信号の正確さが必要になってきている。
【0003】
超音波振動子を駆動して体内に超音波を送信する送信部について説明する。図10は、超音波振動子を駆動する送信回路のひとつであるプッシュ・プルスイッチ112を用いた信号生成回路122と、超音波振動子103とを接続した図である。信号生成回路122は、トランス123の1次側コイルに中点タップが設けられ、中点タップには電圧値が+HVの駆動電源回路121が接続されている。駆動電源回路121は、電圧値が+HVである昇圧型のスイッチング電源である。中点タップに対して対称に2つのNチャネルMOSFET137、138のドレインが、トランス123の1次側コイルの両端に接続されている。2つのNチャネルMOSFET137、138のソースはどちらも接地されている。
【0004】
トランス123の2次側コイルには、超音波振動子103が接続されている。ダイオードブリッジ124は、受信部104で受信する信号が送信部の影響を受けないようにするために接続されている。
【0005】
NチャネルMOSFET137、138は、それぞれゲートドライバ139、140によって駆動する。NチャネルMOSFET用ゲートドライバ139に制御信号128を与えると、制御信号128がHIGHの時、NチャネルMOSFET137がオンになる。また、制御信号129がHIGHの時、NチャネルMOSFET138がオンになる。これによって、超音波振動子103には駆動信号130が印加される。
【0006】
図11は、駆動電源回路121の構成を示す回路図である。入力端118に印加された電圧は、キャパシタ131により平滑化される。コンバータ内スイッチ133がPWM制御回路134によりスイッチングされることにより、入力端118とコンバータ内スイッチ133との間に配置されたインダクタ132にリプル電流が流れ、インダクタ132は電流源のように機能して昇圧動作が行われる。ダイオード135は、片方の電流の流れを阻止する働きをしている。キャパシタ136は、出力端119に接続される負荷に対して出力電圧を平滑化する。
【0007】
PWM制御回路134のPWMのデューティ比を変えることで出力電圧を制御することができる。分圧抵抗116と分圧抵抗117によって出力電圧が分圧され、PWM制御回路134にフィードバックされることで出力電圧を一定にすることができる。
【0008】
次に、別の送信回路について説明する。図12は、超音波振動子を駆動する送信回路のひとつであるプッシュ・プルスイッチ112bを用いた信号生成回路122bと超音波振動子103とを接続した図である。プッシュ・プルスイッチ112bは、PチャネルMOSFET147とNチャネルMOSFET148とを組み合わせた構成となっている。
【0009】
プッシュ・プルスイッチ112bは、PチャネルMOSFET147のソース側に電圧値が+HVの駆動電源回路121が接続され、NチャネルMOSFET148のソース側に電圧値が−HVの駆動電源回路121bが接続されている。PチャネルMOSFET147とNチャネルMOSFET148のドレイン側には、ダイオードブリッジ124を介して、超音波振動子103が接続されている。PチャネルMOSFET147はPチャネル用ゲートドライバ149によって駆動し、NチャネルMOSFET148はNチャネル用ゲートドライバ150によって駆動する。ダイオードブリッジ124は、受信部104が送信部の影響を受けないようにするために接続されている。
【0010】
PチャネルMOSFET用ゲートドライバ149に制御信号128を与えると、制御信号128がHIGHの時、PチャネルMOSFET147がオンになる。また、NチャネルMOSFET用ゲートドライバ148に制御信号129を与えると、制御信号129がHIGHの時、NチャネルMOSFET148がオンになる。これによって、超音波振動子103には駆動信号130が印加される。
【0011】
パルス・インバージョン・ハーモニック法では、生体内の非線形特性による高調波を画像化するので、超音波振動子103の駆動信号および振幅を反転した駆動信号を加算した波形に2次高調波が存在すると、その受信信号を画像化したときに生体内の非線形特性による高調波との区別がつかない。
【0012】
駆動電源回路121と駆動電源回路121bとを別々に作成すると、駆動電源回路121と駆動電源回路121bの特性差によって超音波振動子103の駆動信号の正側の振幅と負側の振幅が異なる場合がある。この場合には、超音波振動子103の駆動信号および振幅を反転した駆動信号を加算した波形に2次高調波が存在してしまう。
【0013】
1つの電源回路により正負の電圧を出力する構成は、例えば、特許文献1に開示されている。図13は、正負の電圧を出力する駆動電源回路の基本的な部分を示した図である。1個のインダクタ132の電圧から1個のコンバータ内スイッチ133によって正電圧が生成され、倍電圧整流回路111bによって負電圧が生成される。また、PWM制御回路134への負帰還信号も分圧抵抗116と分圧抵抗117の一組の分圧抵抗より作成されているので、正電圧の出力端119に発生する電圧値と負電圧の出力端119bに発生する電圧値の負帰還による変動が等しくなり、ほぼ特性のそろった正負電圧を出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−93914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図14は、図11に示す駆動電源回路121の各部の波形を示す図である。図14(a)はPWM制御回路134の出力波形、図14(b)はインダクタ132の電流、図14(c)は駆動電源回路121の出力波形を示す。
【0016】
波形151は、PWM制御回路134によってコンバータ内スイッチ133がオンオフするタイミングを示す。波形152は、インダクタ132に流れる電流波形を示す。波形153は、出力端119の電圧を示す。このように、コンバータ内スイッチを使用する場合には、出力電位は一定ではなく、リプルを含む。条件によっては、図15のようなサージ電流154、サージ電圧155が発生することもある。
【0017】
また、図12に示した信号生成回路122bでは、PチャネルMOSFET147のオン抵抗(ドレイン−ソース間)とNチャネルMOSFET148のオン抵抗を等しくするように作成する(特性の絶対値が同じとみなせることをコンプリメンタリ(相補性)と呼ぶ)ことができる。この場合、駆動信号は、オン抵抗による電圧降下が等しくなり、PチャネルMOSFET147がオンの場合の振幅と、NチャネルMOSFET148がオンの場合の振幅を等しくなる。
【0018】
しかし、正の駆動電源回路121と負の駆動電源回路121bの出力インピーダンス特性が異なると、正の駆動電源回路121と負の駆動電源回路121bの電位の絶対値が等しくても出力端での電位が異なってくる。それによって、超音波振動子103の駆動信号130の正側の振幅値と負側の振幅値の絶対値に差が生じる。図13に示す構成では、正電源側が昇圧コンバータで負電源側が倍電圧整流回路となっているので、出力インピーダンス特性が異なる可能性があるという問題を有している。
【0019】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、超音波振動子を駆動する送信回路に使用される電源のサージ電圧を低減することができる超音波診断装置の駆動電源回路を提供することを目的とする。
【0020】
また、超音波振動子を駆動する正負の電圧特性を等しくすることにより、パルス・インバージョン・ハーモニック法による超音波画像の画質を向上させることができる超音波診断装置の駆動電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の超音波診断装置の駆動電源回路は、直流電圧からパルス電圧を生成するためのコンバータ内スイッチを有するDC−DCコンバータを備え、前記DC−DCコンバータの出力に基づいて、超音波振動子を駆動する電圧を出力する。上記課題を解決するために、前記DC−DCコンバータの出力をスイッチングする出力期間設定スイッチと、前記スイッチングされた出力電圧を昇圧整流し、前記昇圧整流した電圧を前記超音波振動子に供給する倍電圧整流回路と、前記出力期間設定スイッチをON、OFFする信号を出力する固定周波数発振回路と、前記コンバータ内スイッチにより生成されるパルスのエッジを含まない時間範囲内で、前記出力期間設定スイッチがON状態となるように、前記固定周波数発振回路から出力される信号の位相を調整する位相制御回路と、前記倍電圧整流回路の出力を前記DC−DCコンバータにフィードバックするループとを備えたことを特徴とする。
【0022】
本発明の第2の超音波診断装置の駆動電源回路は、直流電圧からパルス電圧を生成するためのコンバータ内スイッチを有するDC−DCコンバータを備え、前記DC−DCコンバータの出力に基づいて、超音波振動子を駆動する電圧を出力する。上記課題を解決するために、前記DC−DCコンバータの出力をスイッチングする出力期間設定スイッチと、前記スイッチングされた出力電圧を昇圧整流して正電圧を生成し、前記昇圧整流した電圧を前記超音波振動子に供給する正倍電圧整流回路と、前記スイッチングされた出力電圧を昇圧整流して負電圧を生成し、前記昇圧整流した電圧を前記超音波振動子に供給する負倍電圧整流回路と、前記出力期間設定スイッチをON、OFFする信号を出力する固定周波数発振回路と、前記コンバータ内スイッチにより生成されるパルスのエッジを含まない時間範囲内で、前記出力期間設定スイッチがON状態となるように、前記固定周波数発振回路から出力される信号の位相を調整する位相制御回路と、前記倍電圧整流回路の出力または、前記負倍電圧整流回路の出力を前記DC−DCコンバータにフィードバックするループとを備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明の第3の超音波診断装置の駆動電源回路は、DC−DCコンバータを備え、超音波振動子を駆動させる電圧を出力する。上記課題を解決するために、前記DC−DCコンバータの出力をスイッチングする出力期間設定スイッチと、前記スイッチングされた信号を昇圧整流し、前記昇圧整流した電圧を前記超音波振動子に供給する倍電圧整流回路と、前記出力期間設定スイッチのスイッチング制御を行い、前記DC−DCコンバータの出力をパルス状にするPWM制御回路と、前記PWM制御回路が出力する前記パルスのデューティ比を前記倍電圧整流回路の出力に基づいて決定する判定回路と、前記倍電圧整流回路の出力を前記DC−DCコンバータにフィードバックするループとを備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明の第4の超音波診断装置の駆動電源回路は、DC−DCコンバータを備え、超音波振動子を駆動させる電圧を出力する。上記課題を解決するために、前記DC−DCコンバータの出力をスイッチングする出力期間設定スイッチと、前記スイッチングされた出力電圧を昇圧整流して正電圧を生成し、前記正電圧を前記超音波振動子に供給する正倍電圧整流回路と、前記スイッチングされた出力電圧を昇圧整流して負電圧を生成し、前記負電圧を前記超音波振動子に供給する負倍電圧整流回路と、前記出力期間設定スイッチのスイッチング制御を行い、前記DC−DCコンバータの出力をパルス状にするPWM制御回路と、前記PWM制御回路が出力する前記パルスのデューティ比を前記倍電圧整流回路の出力または、前記負倍電圧整流回路の出力に基づいて決定する判定回路と、前記倍電圧整流回路の出力または、前記負倍電圧整流回路を前記DC−DCコンバータにフィードバックするループとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コンバータ内スイッチにより生成されるパルスのエッジを含まない時間範囲内で、出力期間設定スイッチをONとすることにより、超音波振動子を駆動する送信回路に使用される電源のサージ電圧を低減することができる。また、正負それぞれの電源の特性を等しくすることにより、超音波振動子を駆動する信号の正負の電圧を等しくすることができる。これにより、パルス・インバージョン・ハーモニック法による超音波画像の画質を向上させることができる超音波診断装置の駆動電源回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1に係る駆動電源回路を有する超音波診断装置の構成を示すブロック図
【図2】実施の形態1に係る送信部の一部および超音波振動子の構成を示す回路図
【図3】実施の形態1に係る駆動電源回路の構成を示す回路図
【図4A】実施の形態1におけるPWM制御回路のパルス波形と出力期間設定スイッチの出力パルス波形の関係を示す図
【図4B】実施の形態1におけるPWM制御回路のパルス波形と出力期間設定スイッチの出力パルス波形の関係を示す図
【図5】実施の形態1に係る別の超音波診断装置における駆動電源回路を含む送信部の一部および超音波振動子の構成を示す回路図
【図6】本発明の実施の形態2に係る駆動電源回路の構成を示す回路図
【図7】実施の形態2におけるPWM制御回路から出力されるパルスのデューティ比と、倍電圧整流回路の電源出力端の電圧値との関係を示す図
【図8】実施の形態2における駆動電源回路を有する超音波診断装置における送信部の一部および超音波振動子の構成を示す回路図
【図9】実施の形態2における駆動電源回路を有する超音波診断装置における送信部の一部および超音波振動子の構成を示す回路図
【図10】従来の超音波診断装置における信号生成回路と、超音波振動子とを接続した図
【図11】従来の駆動電源回路の構成を示す回路図
【図12】従来の別の超音波診断装置における信号生成回路と超音波振動子とを接続した図
【図13】従来の正負の電圧を出力する駆動電源回路の基本的な部分を示した図
【図14】従来の駆動電源回路の各部の波形を示す図
【図15】従来の駆動電源回路の各部の波形を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の駆動電源回路を有する超音波診断装置1の構成を示すブロック図である。送信部2は、駆動電源回路を有し、超音波振動子3を駆動するための駆動信号を生成する。超音波振動子3は、駆動信号を超音波に変換して被検体に照射し、被検体で反射された超音波を受信する。超音波振動子3で受信された受信信号に対して、受信部4は増幅、検波など信号処理を施し、処理した信号を超音波画像として表示部5に表示する。
【0028】
図2は、送信部2の一部および超音波振動子3の構成を示す回路図である。トランス23の1次側コイルに中点タップが設けられ、中点タップには電源出力端20により+HVの正の電圧を供給する駆動電源回路21が接続されている。トランス23の1次側コイルの両端は、信号生成回路22を構成するNチャネルMOSFET37、38のドレインとそれぞれ接続されている。2つのNチャネルMOSFET37、38のソースは、どちらも接地されている。NチャネルMOSFET37、38は、プッシュ・プルスイッチを構成している。NチャネルMOSFET37にはNチャネル用ゲートドライバ39が接続され、NチャネルMOSFET38にはNチャネル用ゲートドライバ40が接続されている。
【0029】
トランス23の2次側コイルには、超音波振動子3が接続されている。ダイオードブリッジ24は、受信部4で受信する信号が送信部2の影響をうけないようにするために接続されている。
【0030】
NチャネルMOSFET37、38は、ゲートに加えられる信号がHIGHの状態でオンになり、LOWの状態でオフとなる。NチャネルMOSFET用ゲートドライバ39には、制御信号28が与えられる。また、PチャネルMOSFET用ゲートドライバ40には、制御信号28に対して、HIGH、LOWが逆となる制御信号29が与えられる。これによって、駆動信号30が超音波振動子3が印加される。
【0031】
図3は、駆動電源回路21の構成を示す回路図である。駆動電源回路21は、図示しない外部電源に接続され、所望の電圧を図2に示す信号生成回路22に供給する。外部電源から電圧が印加される入力端18には、DC−DCコンバータ11が接続されている。DC−DCコンバータ11の出力端19には、MOSFETで構成された出力期間設定スイッチ12が接続されている。
【0032】
出力期間設定スイッチ12には、特定の固定周波数、固定のデューティ比でパルスを発振する固定周波数発振回路14が接続されている。また、固定周波数発振回路14には、固定周波数発振回路14のパルスの位相を調整して、出力期間設定スイッチ12を制御する位相制御回路13が接続されている。
【0033】
また、出力期間設定スイッチ12には、出力期間設定スイッチ12によりスイッチングされた信号を整流する倍電圧整流回路15が接続されている。倍電圧整流回路15には、信号生成回路22に接続された電源出力端20が接続されている。倍電圧整流回路15は、出力期間設定スイッチ12を通過した信号を整流し、電圧を出力端19で出力された電圧に戻す。倍電圧整流回路15には、分圧抵抗16、17が接続されている。分圧抵抗16と分圧抵抗17の接続点は、倍電圧整流回路15の出力電圧をフィードバックするために、DC−DCコンバータ11に接続されている。
【0034】
DC−DCコンバータ11について詳細に説明する。キャパシタ31は、外部電源からの入力電圧を平滑化する。インダクタ32には、直列にMOSFETで構成されたコンバータ内スイッチ33が接続されている。インダクタ32にリプル電流が流れると、インダクタ32は、電流源として動作するため、昇圧される。コンバータ内スイッチ33は、PWM制御回路34によりスイッチング制御される。PWM制御回路34が行うスイッチングのデューティ比を変えることで出力電圧を制御することができる。PWM制御回路34は、分圧抵抗16と分圧抵抗17によって分圧された電源出力端20の電圧がフィードバックされることにより、負荷の変動に対して安定した出力電圧を出力することができる。ダイオード35は、片方の電流の流れを阻止する。キャパシタ36は、出力される電圧を平滑化する。
【0035】
DC−DCコンバータ11は、従来の構成と同様であり、コンバータ内スイッチ33により昇圧された電圧がスイッチングされるため、サージ電圧が発生する。一方、出力期間設定スイッチ12は、キャパシタ36に蓄えられたエネルギーをスイッチングするため、損失は大きいが、サージ電圧が発生し難い。
【0036】
次に、出力期間設定スイッチ12およびコンバータ内スイッチ33のスイッチングについて説明する。ここで、DC−DCコンバータ11の出力信号においてサージ電圧が発生している時間は、出力期間設定スイッチ12をオフにするようにタイミング調整することで、駆動電源回路21はサージ電圧の少ない出力電圧を供給することができる。
【0037】
図4A、4Bは、PWM制御回路34の出力パルス波形と固定周波数発振回路14の出力パルス波形の関係を示す図である。ここで、DC−DCコンバータ11における出力電圧の電圧値を+HVとする。
【0038】
図4Aは、本実施の形態における超音波診断装置用の正の駆動電源回路21に取り付けられた負荷が重い場合に、PWM制御回路34から出力されるパルスの波形51と、固定周波数発振回路14から出力されるパルスの波形52との関係を示している。駆動電源回路21に取り付けられた負荷が重いため、PWM制御回路34は、出力するパルスの幅を広くしている。固定周波数発振回路14は、位相制御回路13により、パルスの波形51の立ち上がり時および立ち下がり時にOFFとなり、パルスの波形51のON時の一部で、ONとなるように位相が調整され、パルスの波形52となる信号を出力する。
【0039】
図4Bは、本実施の形態における超音波診断装置用の正の駆動電源回路21に取り付けられた負荷が軽い場合に、PWM制御回路34から出力されるパルスの波形53と固定周波数発振回路14から出力されるパルスの波形54との関係を示している。駆動電源回路27に取り付けられた負荷が軽いため、PWM制御回路34は、出力するパルスの幅を狭くしている。固定周波数発振回路14は、位相制御回路13により、パルスの波形53の立ち上がり時および立ち下がり時にOFFとなり、パルスの波形53のOFF時の一部で、ONとなるように位相が調整され、パルスの波形54となる信号を出力する。
【0040】
このように、出力期間設定スイッチ12のオン期間には、コンバータ内スイッチ33のON、OFF切り替え時(パルスエッジの時間領域)が含まれないように、出力期間設定スイッチ12が制御される。このことにより、DC−DCコンバータ11は、コンバータ内スイッチ33のON、OFF切り替え時に生じるサージ電圧の影響が小さい直流電圧を供給することができる。
【0041】
図5は、本実施の形態にかかる別の超音波診断装置における駆動電源回路21bを含む送信部の一部および超音波振動子3の構成を示す回路図である。ここで、駆動電源回路21bは、DC−DCコンバータ11、出力期間設定スイッチ12b、位相制御回路13、固定周波数発振回路14、倍電圧整流回路15、15b、およびキャパシタ25で構成されている。図5の構成において、図2の構成と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
出力期間設定スイッチ12bは、NチャネルMOSFET41とPチャネルMOSFET42とを有する。信号生成回路22bは、倍電圧整流回路15に接続されたPチャネルMOSFET47と、倍電圧整流回路15bに接続されたNチャネルMOSFET48とを有する。
【0043】
正の倍電整流回路15と、出力期間設定スイッチ12bとの間に、キャパシタ25が配置されている。負の倍電圧整流回路15bは、出力期間設定スイッチ12bの出力側に接続されている。負の倍電圧整流回路15bは、入力側にキャパシタが配置され、ダイオード45、46がそれぞれ倍電圧整流回路15のダイオード43、44に対して逆向きに配置され、他の構成要素は倍電圧整流回路15と同じように構成されている。キャパシタ25が配置されることにより、負の倍電圧整流回路15bとを上記のような構成にすることができる。これにより、ダイオードの向き以外は、正の倍電整流回路15と負の倍電圧整流回路15bとを同様の構成要素で形成することができる。したがって、倍電圧整流回路15と、倍電圧整流回路15bは、部品ごとの特性バラツキを除けば、出力インピーダンスの特性を等しくすることができる。
【0044】
このような構成により、PチャネルMOSFET47とNチャネルMOSFET48がコンプリメンタリであれば、PチャネルMOSFET47とNチャネルMOSFET48のオン抵抗による電圧降下が等しくなる。したがって、PチャネルMOSFET47で駆動した場合の振幅と、NチャネルMOSFET48で駆動した場合の振幅を等しくすることができる。
【0045】
PチャネルMOSFET47のゲートには、PチャネルMOSFET47をスイッチング制御するPチャネル用ゲートドライバ49が接続されている。NチャネルMOSFET48のゲートには、NチャネルMOSFET48をスイッチング制御するNチャネル用ゲートドライバ50が接続されている。PチャネルMOSFET47およびNチャネルMOSFET48のドレインがダイオードブリッジ24を介して超音波振動子3に接続されている。
【0046】
なお、図5では、DC−DCコンバータ11のPWM制御回路34に入力する信号は、倍電圧整流回路15の出力電圧を分圧抵抗16と分圧抵抗17とで分圧して生成する場合について示した。しかし、倍電圧整流回路15bの出力電圧を分圧抵抗16と分圧抵抗17とで分圧して生成してもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、DC−DCコンバータ11として昇圧コンバータを例に説明した。しかし、本実施の形態では、この例に限定されず、さまざまな構成のDC−DCコンバータを用いることができる。例えば、入力電圧よりも出力電圧が低い電圧を出力する場合には、降圧コンバータを用いることができる。昇圧コンバータや降圧コンバータにおいて、フライバックやフィード・フォワードなどの方式のものを用いることができる。また、入力電圧が負の場合には反転コンバータを用いることができる。
【0048】
このようなDC−DCコンバータであっても、本実施の形態に係る駆動電源回路は、上述のように出力期間設定スイッチ12を制御することにより、DC−DCコンバータ内で生じるサージ電圧の影響をほとんど受けない電圧を出力することができる。
【0049】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る駆動電源回路21cの構成を示す回路図である。本実施の形態に係る駆動電源回路21cは、図3に示す駆動電源回路21の位相制御回路13および固定周波数発振回路14に代えて、PWM制御回路26および判定回路27が配置された構成である。駆動電源回路21cにおいて、駆動電源回路21と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
PWM制御回路26は、オンオフの周波数を固定とし、デューティ比を変化させて出力期間設定スイッチ12のスイッチング制御を行う。PWM制御回路26のデューティ比は、判定回路27によって決定される。判定回路27は、倍電圧整流回路15の電源出力端20の電圧を分圧抵抗16と分圧抵抗17とにより分圧した値を基にPWM制御回路26のデューティ比を決定する。
【0051】
図7は、PWM制御回路26から出力されるパルスのデューティ比と、倍電圧整流回路15の電源出力端20の電圧値との関係を示す図である。PWM制御回路26から出力されるパルスのデューティ比が50%の場合(波形55)には、倍電圧整流回路15の電源出力端20での電圧値は波形58のようになる。
【0052】
PWM制御回路26から出力されるパルスのデューティ比が50%以下の場合(波形56)には、倍電圧整流回路15の電源出力端20での電圧値は波形59のようになり、波形58と比較すると、波形のリプルの変動幅が大きくなり、電圧値が小さくなる。これに対して、PWM制御回路26から出力されるパルスのデューティ比が50%以上の場合(波形57)には、倍電圧整流回路15の電源出力端20での電圧値は波形60のようになり、波形58と比較すると、電圧値は小さくなり、波形のリプルの変動幅も小さくなる。
【0053】
そこで、判定回路27は、倍電圧整流回路15の電源出力端20の電圧を分圧抵抗16と分圧抵抗17により分圧した値を監視し、所望の出力電圧値に対して実際の出力電圧が小さい場合には、高速に所望の出力電圧値に近づけるために、PWM制御回路26のデューティ比を50%とする。電源出力端20の電圧が所望の出力電圧値に近づくに従い、PWM制御回路26のデューティ比を50%から上げていくことでリプルの変動幅を小さくすることができる。所望の出力電圧値に対して実際の出力電圧が大きい場合には、PWM制御回路26のデューティ比を大きく上げることにより電圧を下げ、かつリプルの変動幅を小さくすることができる。
【0054】
図8は、駆動電源回路21cを有する超音波診断装置における送信部2の一部および超音波振動子3の構成を示す回路図である。駆動電源回路21cの構成が異なる以外は、図2に示す回路と同様である。
【0055】
図9は、駆動電源回路21dを有する超音波診断装置における送信部2の一部および超音波振動子3の構成を示す回路図である。駆動電源回路21dの構成が異なる以外は、図5に示す回路と同様である。
【0056】
図8、図9の構成において、上述した出力期間設定スイッチ12に対するPWM制御回路26のスイッチング動作により、リプル電圧が小さい電圧を超音波振動子3に印加することができる。
【0057】
また、図9の構成において、正負の駆動電源回路の特性を等しくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の超音波診断装置の電源は、DC−DCコンバータの出力波形のパルスの立ち上がり、立ち下がりを含まない範囲で倍電圧整流回路を駆動することにより、サージ電圧の影響を低減することができる。また、倍電圧整流回路に入力されるパルスの幅を調整することでリプル波形の振幅の変動幅を小さくすることができる。さらに、DC−DCコンバータの出力をそのまま使わずに倍電圧整流回路を通して使用することで正負の電圧特性を等しくすることができる。このような効果が得られることから、パルス・インバージョン・ハーモニック法などを行う超音波診断の駆動電源回路として利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 超音波診断装置
2 送信部
3 超音波振動子
4 受信部
5 表示部
11 DC−DCコンバータ
12、12b 出力期間設定スイッチ
13 位相制御回路
14 固定周波数発振回路
15、15b 倍電圧整流回路
16、17 分圧抵抗
18 入力端
19 出力端
20 電源出力端
21、21b〜21d 駆動電源回路
22、22b 信号生成回路
23 トランス
24 ダイオードブリッジ
25 キャパシタ
26 PWM制御回路
27 判定回路
28、29 制御信号
30 駆動信号
31、36 平滑用キャパシタ
32 インダクタ
33 コンバータ内スイッチ
34 PWM制御回路
35、43〜46 ダイオード
37、38、42、48 Nチャネルトランジスタ
39、40、50 Nチャネル用ゲートドライバ
41、47 Pチャネルトランジスタ
49 Pチャネル用ゲートドライバ
51、53、55〜57 PWM制御回路出力波形
52、54 スイッチの出力波形
58〜60 倍電圧整流回路出力波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧からパルス電圧を生成するためのコンバータ内スイッチを有するDC−DCコンバータを備え、前記DC−DCコンバータの出力に基づいて、超音波振動子を駆動する電圧を出力する超音波診断装置の駆動電源回路において、
前記DC−DCコンバータの出力をスイッチングする出力期間設定スイッチと、
前記スイッチングされた出力電圧を昇圧整流し、前記昇圧整流した電圧を前記超音波振動子に供給する倍電圧整流回路と、
前記出力期間設定スイッチをON、OFFする信号を出力する固定周波数発振回路と、
前記コンバータ内スイッチにより生成されるパルスのエッジを含まない時間範囲内で、前記出力期間設定スイッチがON状態となるように、前記固定周波数発振回路から出力される信号の位相を調整する位相制御回路と、
前記倍電圧整流回路の出力を前記DC−DCコンバータにフィードバックするループとを備えたことを特徴とする超音波診断装置の駆動電源回路。
【請求項2】
直流電圧からパルス電圧を生成するためのコンバータ内スイッチを有するDC−DCコンバータを備え、前記DC−DCコンバータの出力に基づいて、超音波振動子を駆動する電圧を出力する超音波診断装置の駆動電源回路において、
前記DC−DCコンバータの出力をスイッチングする出力期間設定スイッチと、
前記スイッチングされた出力電圧を昇圧整流して正電圧を生成し、前記昇圧整流した電圧を前記超音波振動子に供給する正倍電圧整流回路と、
前記スイッチングされた出力電圧を昇圧整流して負電圧を生成し、前記昇圧整流した電圧を前記超音波振動子に供給する負倍電圧整流回路と、
前記出力期間設定スイッチをON、OFFする信号を出力する固定周波数発振回路と、
前記コンバータ内スイッチにより生成されるパルスのエッジを含まない時間範囲内で、前記出力期間設定スイッチがON状態となるように、前記固定周波数発振回路から出力される信号の位相を調整する位相制御回路と、
前記倍電圧整流回路の出力または、前記負倍電圧整流回路の出力を前記DC−DCコンバータにフィードバックするループとを備えたことを特徴とする超音波診断装置の駆動電源回路。
【請求項3】
DC−DCコンバータを備え、超音波振動子を駆動させる電圧を出力する超音波診断装置の駆動電源回路において、
前記DC−DCコンバータの出力をスイッチングする出力期間設定スイッチと、
前記スイッチングされた信号を昇圧整流し、前記昇圧整流した電圧を前記超音波振動子に供給する倍電圧整流回路と、
前記出力期間設定スイッチのスイッチング制御を行い、前記DC−DCコンバータの出力をパルス状にするPWM制御回路と、
前記PWM制御回路が出力する前記パルスのデューティ比を前記倍電圧整流回路の出力に基づいて決定する判定回路と、
前記倍電圧整流回路の出力を前記DC−DCコンバータにフィードバックするループとを備えたことを特徴とする超音波診断装置の駆動電源回路。
【請求項4】
DC−DCコンバータを備え、超音波振動子を駆動させる電圧を出力する超音波診断装置の駆動電源回路において、
前記DC−DCコンバータの出力をスイッチングする出力期間設定スイッチと、
前記スイッチングされた出力電圧を昇圧整流して正電圧を生成し、前記正電圧を前記超音波振動子に供給する正倍電圧整流回路と、
前記スイッチングされた出力電圧を昇圧整流して負電圧を生成し、前記負電圧を前記超音波振動子に供給する負倍電圧整流回路と、
前記出力期間設定スイッチのスイッチング制御を行い、前記DC−DCコンバータの出力をパルス状にするPWM制御回路と、
前記PWM制御回路が出力する前記パルスのデューティ比を前記倍電圧整流回路の出力または、前記負倍電圧整流回路の出力に基づいて決定する判定回路と、
前記倍電圧整流回路の出力または、前記負倍電圧整流回路を前記DC−DCコンバータにフィードバックするループとを備えたことを特徴とする超音波診断装置の駆動電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−30331(P2011−30331A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172285(P2009−172285)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】