説明

超高分子量ポリオレフィンインフレーションフィルムおよびフラットヤーン

【課題】フライトマークを低減させた超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムの製造装置および製造方法の提供、並びに厚み斑が少ないインフレションフィルムおよび、繊度斑が少ない延伸テープを提供すること。
【解決手段】スクリューダイの第二スクリューのフライト高さ110がテーパー状に漸次低くなる形状を有する第二スクリューを備えたインフレションフィルム製造装置によって、フライトマークが低減された、厚み斑が少ないインフレーションフィルムを得ることができ、該インフレーションフィルムを裁断した後、延伸することで繊度斑が少ない延伸テープを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な厚み斑の少ない優れた超高分子量ポリオレフィンのインフレーションフイルムおよびその製造方法に関する。さらには、そのために好適に用いることができる新規なインフレーションフィルムの製造装置に関する。また該インフレーションフィルムを裁断した後、延伸して得られる繊度斑の少ない延伸テープに関する。
【背景技術】
【0002】
超高分子量ポリオレフィンは、汎用のポリオレフィンに比べ、耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、引張強度等に優れており、エンジニアリング樹脂として、その用途が広がっている。しかしながら、汎用のポリオレフィンに比較して溶融粘度が極めて高く、流動性が悪いため、超高分子量ポリオレフィン単体では、汎用ポリオレフィン用の成形機での成形加工が困難である。このような問題点を解決する方法として、特許文献1には、熱可塑性樹脂を押出機で溶融し、次いでマンドレルが押出機のスクリューと独立して回転する少なくともL/Dが5以上のスクリューダイを用い、マンドレルの回転数を可及的に低速にすることで、引張強度や衝撃強度等の力学的性質、及び縦延伸倍率や膜厚等を広い範囲にわたって調整し、従来のフィルム製造方法に比べて分子量の低下の少ないインフレーションフィルムを形成し得る製造装置が提案されている。
この方法は優れた方法であるが、得られるインフレーションフィルムの均一性(厚み斑)に難がある。
【0003】
一方、パイプを成形する際にフライトマークが発生すると言う問題があり、それに対しては、特殊なスクリュー形状の押出機を用いることが提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−183156号公報
【特許文献2】特開2002−160283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題を解決するものであり、インフレーションフィルムの表面に生じる「フライトマーク」と呼ばれるスクリューダイの第二スクリュー軸の外周に形成されたスクリューフライトの痕が、フィルム表面に残るのを防ぐことでフィルムの厚み斑を低減できる、超高分子量ポリオレフィンのインフレーションフィルム製造装置および該インフレーションフィルムの製造方法を提供すること。厚み斑が低減された超高分子量ポリオレフィンのインフレーションフィルムおよび該フィルムを裁断した後、延伸して得られる、繊度斑が少ない延伸テープを供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記問題を解決するべく鋭意研究した結果、フライト高さがテーパー状に徐々に低くなるスクリューダイの第二スクリューを有するインフレーションフィルム製造装置によって、超高分子量ポリオレフィンの持つ引張強度や衝撃強度等の優れた物性を損なうことなく、フライトマークが低減された、厚み斑が少ないインフレーションフィルムを得ることができ、このフィルムを裁断した後、延伸して得られる延伸テープの繊度斑が少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)極限粘度[η]が4〜25dl/gである超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムであり、引張強度が150MPa以上、偏肉度が10%以下であることを特徴とするインフレーションフィルムを提供する。
(2)第一スクリューを備えた押出機と、第一スクリューと独立して回転する第二スクリューと、第二スクリューの下流側の先端に連結され第二スクリューと共に回転するマンドレルと、マンドレルが挿通されるアウターダイと、第二スクリューの内部およびマンドレルの内部に延在してなる気体流路とを備え、前記第二スクリューのスクリュー軸の外周に形成されたスクリューフライト部の高さが、マンドレル部方向に向かってテーパー状に漸次減少し、マンドレルとの接続部分でフライトがなくなる形状を有する成形装置を用いて、極限粘度[η]が4〜25dl/gの超高分子量ポリオレフィンをインフレーション成形することを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法を提供する。
(3)第一スクリューを備えた押出機と、第一スクリューと独立して回転する第二スクリューと、第二スクリューの下流側の先端に連結され第二スクリューと共に回転するマンドレルと、マンドレルが挿通されるアウターダイと、第二スクリューの内部およびマンドレルの内部に延在してなる気体流路とを備え、前記第二スクリューのスクリュー軸の外周に形成されたスクリューフライト部の高さが、マンドレル部方向に向かってテーパー状に漸次減少し、マンドレルとの接続部分でフライトがなくなる形状を有するインフレーションフィルムの製造装置を提供する。
(4)極限粘度[η]が4〜25dl/gである超高分子量ポリオレフィンからなる延伸テープであり、引張強度が13.2cN/dtex以上、繊度斑が15%以下であることを特徴とする延伸テープを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインフレーションフィルム製造装置により、超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムのフライトマークを低減でき、厚み斑の少ないインフレーションフィルムを得ることができる。また、該インフレーションフィルムを原料にした延伸テープの繊度斑は少なく、工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のインフレーションフィルムの製造装置および製造方法、並びに超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムおよび延伸テープについて説明する。
【0009】
[超高分子量ポリオレフィン]
本発明に用いる超高分子量ポリオレフィンは、デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度[η]が4〜25dl/g、好適には7〜25dl/gで、且つASTM D1238、F規格で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以下の超高分子量ポリオレフィンである。極限粘度[η]がこのような範囲にあると、延伸テープとして十分な強度が得られることから好ましい。
本発明の延伸テープを構成する超高分子量ポリオレフィンは、具体的には、エチレンの単独重合体、プロピレンの単独重合体またはエチレンまたはプロピレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンとの共重合体であり、炭素原子数3〜10のα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。これらの中で経済性などの面から、エチレンの単独重合体またはエチレンを主体とした上記α−オレフィンとの共重合体が好適に用いられ、エチレンが重合体全体の80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であることが好ましい。
本発明に用いる超高分子量ポリオレフィン樹脂は、従来公知の方法で製造可能でであり、例えば特開平2003−64225号公報に記載されているように、触媒の存在下に上記エチレンやα−オレフィンを重合することで得ることができる。
【0010】
また、上記のような超高分子量ポリオレフィンには、必要に応じて公知の各種安定剤を配合してもよい。この安定剤としては、例えば、テトラキス〔メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート〕メタン、ジステアリルチオジプロピオネート等の耐熱安定剤、あるいはビス(2,2′,6,6′−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、2−(2−ヒドロキシ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾル等の耐候安定剤などが挙げられる。また、着色剤として無機系、有機系のドライカラーを添加してもよい。
【0011】
[インフレーションフィルムの製造装置]
図1は、本発明の超高分子量ポリオレフィンのインフレーションフィルムの製造装置の概略を示した図である。この装置は、図1に示すごとく、10は第一スクリュー20を有する押出機で、30の第二スクリューが、該押出機と直交する方向へ向けた状態で設けられ、40のマンドレルと連結された、50のスクリューダイ、60のバブル安定体、70の気体吹き出し口からなる。この第二スクリューは駆動方式によって、第一スクリューとは独立に回転できるようになっている。
【0012】
図2は、インフレーションフィルム製造装置における第二スクリューの概略を示した図である。図2において、100はスクリュー軸、110はスクリューフライト、120は気体流路であり、スクリューフライトの高さが、マンドレル部方向に向かってテーパー状に徐々に低くなり、マンドレルとの接続部分でフライトがなくなる構造を示す。
【0013】
本発明のインフレーションフィルム製造装置は、第一スクリューを有する押出機、第二スクリューとマンドレルからなるスクリューダイ、バブル安定体および気体吹き出し口より構成される。第一スクリューを有する押出機と第二スクリューを有するスクリューダイは、該押出機の片端とスクリューダイの片端が直交する方向へ向けた状態で設けられている。第二スクリューは独自の駆動手段によって、第一スクリューとは独立に回転するようになっている。第二スクリューの先端には、マンドレルが設置され、さらに、その先にバブル安定体とバブル安定体を貫通する流路から導かれた気体の噴出する気体吹き出し口が設置される。スクリューダイのマンドレルは、第二スクリューの下流側に設置されており、第二スクリューとともに回転する構造となっている。
【0014】
本発明のインフレーションフィルム製造装置のマンドレル部のL/Dは5以上、好ましくは15以上、さらに20〜70が好ましく、L/Dが5以上であれば超高分子量ポリオレフィンを十分に溶融することができ、ダイから押し出されたチューブ状のフィルム内部に気体を吹き込んだ際にチューブが破れることなく、均一に膨らませることができる。またL/Dが大きい方が成形速度を上げることができ、上限は特に限定されないが、生産性と設備の大きさとからして実用上70以下が好ましい。
【0015】
本発明のインフレーションフィルム製造装置の第二スクリューの押出機側のスクリューフライトの高さは、第二スクリューの押出機側からマンドレル部方向に向かってテーパー状に徐々に低くなり、マンドレルとの接続部分でフライトがなくなる構造を有している。また、第二スクリューの押出機側の最外径D1とマンドレル側の最外径D2の比(D1/D2)は1.1以上、好ましくは、1.15〜1.3であるのが、運転に際して第二スクリューに過剰な負荷がかからず好ましい。また、第二スクリューのスクリューフライトの高さは、押出機側からフライト一周分は同じ高さであると、押出機により押し出された樹脂の流れ方向を水平方向から垂直方向に円滑に方向転換することができ好ましい。また、第二スクリューの長さL1と、第二スクリューの押出機側の最外径D1との比(L1/D1)は1.6以上、好ましくは1.7〜4.2であると、第二スクリューのフライトによる溶融樹脂の方向転換が十分に行われることから、スクリューダイからパイプ形状に樹脂を均一に押し出すことができることから好ましい。
【0016】
[インフレーションフィルムの製造方法]
本発明の超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムの製造方法は、
超高分子量ポリオレフィンを、第一スクリューを備える押出機で溶融し、次いで第一スクリューと独立して回転する前記第二スクリューを備えるスクリューダイからチューブ状のフィルムを押し出し、該チューブ状のフィルム内部に、第二スクリュー内部およびマンドレルの内部に内在する気体流路を通して、気体吹き出し口から気体を吹き込むことでチューブ状のフィルムを膨張させ、同時に延伸・冷却してフィルムとすることができる。スクリューダイの第二スクリューおよび連結されるマンドレルは、押出機の第一スクリューと独立して回転させることが好ましく、その回転数は必ずしも押出機の第一スクリューの回転数と同じである必要はない。また、チューブ状フィルムの内部に吹き込む上記の気体は通常空気であるが、窒素等を用いてもよい。また、溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込む場合には、膨比は7倍以上、好ましくは7〜20倍、さらに8〜12倍とするのが好ましい。膨比が7倍以上であると周方向(TD)の厚みが均一となり、良好な引張強度、衝撃強度等の機械的物性を得ることができる。また膨比が20倍以下であると、フィルムが白濁することなく、破裂現象を生じることなく良好な成形性を得ることができる。
【0017】
また押し出し速度より速い速度で引き取るとフィルム成形と同時に縦延伸することができ、縦延伸倍率を7倍以上、好ましくは7〜40倍、さらに8〜30倍とすることが好ましい。縦延伸倍率が7倍以上であると、チューブ状フィルムに気体を吹き込んだ際にバルーン(膨張チューブ)が揺れることがなく、縦方向(MD)、周方向(TD)の厚みが均一となり、機械的特性にバラツキを生じない。また縦延伸倍率が40倍以下であると、フィルムに破裂現象を生じることなく良好に成形することができる。ここで、膨比とは、スクリューダイ出口における膨張前のチューブの円周長さと、膨張後のチューブの円周長さとの比をいい、縦延伸倍率とは、ダイからの樹脂の流出速度(線速度)に対するピンチロールの引き取り速度の比をいう。
従来の公知のインフレーションフィルムの製造装置では、押し出されたチューブ状のパイプに、第二スクリューのフライトに起因するフライトマークが残存しており、従って、得られるインフレーションフィルムにもフライトマークが残存していた。しかしながら本発明の、第二スクリューのスクリュー軸の外周に形成されたスクリューフライトの高さを、マンドレル部方向に向かってテーパー状に徐々に低くした形状を有するスクリューを使用すると、このフライトマークを大きく低減させることができ、厚み斑の少ない超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムを得ることができる。
【0018】
[インフレーションフィルム]
本発明のインフレーションフィルムは、本発明のインフレーションフィルム製造装置を使用して、上述のように極限粘度[η]が4〜25dl/gである超高分子量ポリオレフィンを、膨比7倍以上、縦延伸倍率7倍以上とすることで、インフレーションフィルムの縦方向または周方向の少なくとも一方の引張強度が150MPa以上、好ましくは150〜300MPa、衝撃強度が40kJ/m以上、好ましくは50〜150kJ/mの特性を有する、超高分子量ポリオレフィンからなる延伸フィルムを製造して得ることができる。
【0019】
また、上述の第二スクリューのスクリュー軸の外周に形成されたスクリューフライトの高さを、マンドレル部方向に向かってテーパー状に徐々に低くした形状を有するスクリューを使用するとによって、厚み斑の少ない超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムを得ることができ、フィルムの厚み10〜1000μm、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは15〜100μmでの偏肉度が10%以下、好ましくは経済的な面からして2〜10%の超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムを得ることができる。尚、フィルムに厚み斑がない場合、後述の数式(1)で表わされる偏肉度の定義から、偏肉度の下限値は0%である。
【0020】
また、本発明の超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムの用途としては、サイロ、ホッパー、シュート等のライニング材、アルカリ電池、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の非水電解質電池および電解質電池用セパレータ、ロール、パイプ、鋼管等の被覆用収縮フィルム、食品包装用等の包装フィルム、包装用バック、包装用容器、ヘルメット、セイルボード、スキー滑走面等のスポーツ用品などが例示され、その他、具体的には、スライディングテープ、スラストワッシャー、すべりシート、ガイド、ドクターナイフ、カセットテープライナー、カセットテープ用スリットシート、耐極低温性袋、熱収縮性フィルム、低温保存用バック、包装用テープ、高強度延伸糸用原糸、コンデンサーフィルム、絶縁フィルム、ポリオレフィン被覆ゴムロール、食品充填パック、血液パック、スプリットヤーン、登山用ロープ、織布、延伸テープ、血小板凍結防止用フィルター、帆布、防爆シート、切傷防止用保護衣、安全手袋、重布、電気ケーブル、テンションメンバー、スピーカー振動板、装甲板、レーダードーム、不織布、コンデンサーフィルム、合成紙、屋外展示物用印刷紙、航空便用封筒、水分吸収剤、酸素吸収剤等の包装材料、通気性包装体、滅菌・殺菌包装材料、医療用基布、医療用器具の包装材料、水分調節物品のシール・包装、分離膜、各種フィルター等のろ過材、フィルターの担持体、農業用ハウス、マルチフィルム等の農業用フィルム、グリーンフィルム、エレクトレットフィルム、ハウスラップ等の建築用資材等を例示することができる。
【0021】
[延伸テープ]
本発明の繊度斑が少ない延伸テープは、上記のインフレーションフィルム製造装置で得られる、フライトマークが低減された厚み斑が少ない超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムを裁断した後、延伸して得ることができる。
【0022】
延伸テープの製造方法として、例えば、特開平6−10233号公報に記載されている方法が例示できる。延伸テープの使用用途にもよるが、好ましくはインフレーションフィルムの押出方向と平行に、幅0.3〜1754mm、好ましくは3.1〜351mmに裁断して得られるテープ状フィルムを、超高分子量ポリオレフィンの融点未満の温度、使用する超高分子量ポリオレフィンの樹脂の種類にもよるが、温度100℃〜150℃、好ましくは130〜150℃で、少なくともフィルムの押出方向に2倍以上、好ましくは4〜15倍、さらに好ましくは6〜13倍延伸した後、80℃以下に冷却して得ることができる。このようにして製造される延伸テープは、延伸方向の引張強度が13.2cN/dtex以上、好ましくは13.2〜22.1cN/dtexであり、さらに繊度50〜1000dtexでの繊度斑が15%以下、好ましくは経済的な面からして2〜10%の特性を有している。尚、延伸テープの繊度に斑がない場合、後述の数式(3)で表わされる繊度斑の定義から、繊度斑の下限値は0%である。
【0023】
また、本発明の延伸テープは、繊維補強ホースの繊維、コンクリートの補強繊維、紙袋の補強繊維、フラットヤーン製の袋の繊維等として良好に適用することができる。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の具体的な実施例を記載するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
[超高分子量ポリオレフィン]
超高分子量ポリエチレン粉末([η]=7.2dl/g、MFR=0.01g/10分未満)を用いた。
【0026】
[インフレーションフィルム製造装置の仕様]
押出機の第一スクリュー外径60mmφ、スクリュー有効長さ2184mm(L/D=36.4)、フライトピッチ50mm一定、スクリュー圧縮比1.5、押出機に対して立設してなるスクリューダイの有効長さ1000mm、ダイ出口アウターダイ内径105mmφ、ダイ出口マンドレル外径95mmφ、スクリューダイの第2スクリューの押出機側の最外径D1;110mmφ、マンドレル側の最外径D2;89mmφ、第二スクリュー有効長さL1;200mm(D1/D2=1.24、L1/D1=1.82)、フライトピッチは、62.5mmで一定である4条スクリューであり、スクリューフライトの高さは図2に示すごとく、押出機側のフライト根元から一周分はフライト高さが変わらず、その後マンドレル部方向に向かって最終のフライト部の高さが0mmとなるような滑らかなテーパー状にフライトの高さが漸次減少する形状であり、第二スクリューの圧縮比1.0、バブル安定体の外径53mmφ、バブル安定体の長さ1300mm、第2スクリュー内部、マンドレル内部及びバブル安定体シャフト内部に延在してなる10mmφの気体流路、安定板、ピンチロールおよび製品巻取機を具備してなる。
【0027】
[極限粘度[η]]
ASTM D2040に準じ、溶媒としてデカリンを用い、毛細管法にて測定したものを極限粘度[η]とした。
【0028】
[MFR]
ASTM D1238に準じ、温度190℃、ピストン荷重2.16kgにて測定した。
【0029】
[フィルムの引張強度]
JIS K7127に準じ、JIS K6781に準じた試験片を作成し、引張速度:200mm/分、チャック間距離:80mm、試験片幅10mmで測定した。
【0030】
[フィルムの衝撃強度]
ASTM D3420に準じ、10cm×10cmのフィルムの衝撃強度を、東洋精機社製フィルムインパクトテスターを使用して、先端径:1インチ、振り子エネルギー:2.943Jで、試験台に固定されたフィルムを、振り子式ハンマーで撃ち破った時のエネルギーを測定し、次式からフィルムの衝撃強度を求めた。
フィルムの衝撃強度(kJ/m)=破壊エネルギー(J)/厚さ(m)/1000
【0031】
[フィルムの厚み斑の評価]
フィルムの厚み斑として偏肉度および2σを指標として求めた。
評価方法については、縦方向と周方向のフィルム厚みを測定して評価した。ここで、縦方向(MD方向)とは、フィルムの引き取り方向をいい、周方向(TD方向)とは、それに直交する方向をいう。
縦方向については、チューブ状のフィルムに気体を吹き込んで膨張したフィルムが一定の膨比となったダイ出口からの距離1000mmの位置から、さらに上方に距離1000mmの位置であって、押出機からチューブ状のフィルムに向かって左側の、周方向の一定位置のフィルムの厚みを、インタクト社製の静電容量方式の厚み計にて、安定した成形条件下で成形を行いながら連続的に0.5秒間隔で40分間測定して得られた4800点のデータに基づき、偏肉度を数式(1)、2σを数式(2)に基づき算出した。
また周方向については、Mitutoyo社製マイクロメータにて、縦方向の厚みを測定した膨張チューブを半分に押し潰す形で折りたたんだフィルムの周方向に、等間隔にフィルムの厚みを測定して得られた128点のデータに基づき、縦方向と同様に数式(1)および数式(2)より偏肉度および2σを算出した。
偏肉度={(膜厚の最大値)−(膜厚の最小値)}/2/(平均膜厚)×100 (1)
2σ=2×(標準偏差)/(平均膜厚)×100 (2)
ここで、縦方向のフィルムの厚み(膜厚)の最大値、最小値および平均値とはそれぞれ、上記の通り0.5秒間隔で40分間測定して得られた4800点の厚みデータの最大の値、最小の値および測定値の和を測定点数で除した値のことであり、周方向のフィルムの厚み(膜厚)の最大値、最小値および平均値とはそれぞれ、膨張チューブを半分に押し潰す形で折りたたんだフィルムの周方向に等間隔に測定して得られた128点の厚みデータの最大の値、最小の値、および測定値の和を測定点数で除した値のことである。また、標準偏差は各厚みデータ値と平均値との差の二乗和を測定点数から1を引いた値で除した値の平方根である。
【0032】
[延伸テープの引張強度]
延伸テープの引張強度は、JIS L1069に準じ、ORIENTEC社製 RTM−100を用いて、温度/湿度:23℃/65%RH、初期試料長:100mm、クロスヘッド速度:100mm/分で測定して求めた。
【0033】
[延伸テープの繊度斑の評価]
延伸テープの繊度斑の評価は、長さ550mの延伸テープをサンプリングして、0.5m間隔に裁断して延伸テープの質量を測定し、得られた質量を10000m長さの質量に換算して繊度を求め、得られた1100点の延伸テープの繊度に基づき、繊度斑を数式(3)、2σを数式(4)にて算出した。
繊度斑={(繊度の最大値)−(繊度の最小値)}/2/(平均繊度)×100 (3)
2σ=2×(標準偏差)/(平均繊度)×100 (4)
ここで、繊度の最大値、最小値、平均値とは、上記の通り得られた1100点の延伸テープの繊度のデータの最大の値、最小の値、および求めた繊度の和を測定点数で除した値のことである。また、標準偏差は求めた各繊度の値と平均値との差の二乗和を測定点数から1を引いた値で除した値の平方根である。
【0034】
[実施例1]
[インフレーションフィルムの製造]
超高分子量ポリエチレン粉末([η]=7.2dl/g、MFR=0.01g/分未満)を用い、アウターダイ/マンドレル=105/95mmφからなるダイを接続した60mmφ押出機を、シリンダ温度200℃、ダイ温度170℃、第一スクリューの回転数を27rpm、第二スクリューの回転数1.5rpmに設定し、ピンチロールで7.0m/分の速度で引き取りながら、図2に示すようなフライト高さがテーパー状に徐々に低減する二次スクリューを用いて、二次スクリュー内部およびダイのマンドレル内部に延在してなる気体流路から圧搾空気を吹き込んでチューブを冷却リング内径840mmφに接触する大きさに膨らませて(膨比8.0)、折り幅1320mm、厚み27μmからなる超高分子量ポリエチレンフィルムを製造した。得られたインフレーションフィルムの、引張強度および偏肉度などを評価した結果を表1に示した。
【0035】
[延伸テープの製造]
上記のようにして製造して得られたインフレーションフィルムの膨張チューブを半分に押し潰す形で折りたたみ、折りたたまれたフィルムの中央部から幅13mmでフィルムの縦方向(MD方向)に平行に裁断して得られたテープを原反とした。次いで、この原反を縦方向(MD方向)に143℃の熱板延伸槽で5.0倍に延伸し、147℃のエアオーブン延伸槽で縦方向(MD方向)にさらに1.5倍に延伸してトータル延伸倍率7.5倍に延伸した。このようにして、一本が444dtexの延伸テープを得た。得られた延伸テープの、引張強度および繊度斑などを評価した結果を表1に示した。
【0036】
[実施例2]
[インフレーションフィルムの製造]
ピンチロールによる引き取り速度を4.8m/分にした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを製造し、厚み40μmからなる超高分子量ポリエチレンフィルムを製造した。得られたインフレーションフィルムの、引張強度および偏肉度などを評価した結果を表1に示した。
[延伸テープの製造]
上記のようにして製造して得られたインフレーションフィルムの膨張チューブを半分に押し潰す形で折りたたみ、折りたたまれたフィルムの中央部から幅8.8mmでフィルムの縦方向(MD方向)に平行に裁断して得られたテープを原反とした。次いで、この原反を縦方向(MD方向)に143℃の熱板延伸槽で5.0倍に延伸し、147℃のエアオーブン延伸槽で縦方向(MD方向)にさらに1.5倍に延伸してトータル延伸倍率7.5倍に延伸した。このようにして、一本が444dtexの延伸テープを得た。得られた延伸テープの、引張強度および繊度斑などを評価した結果を表1に示した。
【0037】
[実施例3]
[インフレーションフィルムの製造]
ピンチロールによる引き取り速度を9.5m/分にした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを製造し、厚み20μmからなる超高分子量ポリエチレンフィルムを製造した。得られたインフレーションフィルムの、引張強度および偏肉度などを評価した結果を表1に示した。
[延伸テープの製造]
上記のようにして製造して得られたインフレーションフィルムの膨張チューブを半分に押し潰す形で折りたたみ、折りたたまれたフィルムの中央部から幅17.5mmでフィルムの縦方向(MD方向)に平行に裁断して得られたテープを原反とした。次いで、この原反を縦方向(MD方向)に143℃の熱板延伸槽で5.0倍に延伸し、147℃のエアオーブン延伸槽で縦方向(MD方向)にさらに1.5倍に延伸してトータル延伸倍率7.5倍に延伸した。このようにして、一本が445dtexの延伸テープを得た。得られた延伸テープの、引張強度および繊度斑などを評価した結果を表1に示した。
【0038】
[比較例1]
[インフレーションフィルムの製造]
第二スクリューのスクリューフライトの高さが、押出機側とマンドレル側で同じ一定高さ(D1=D2)の形状を有するスクリューを用いた以外は、実施例1と同じ方法で製造してインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの、引張強度および偏肉度などを評価した結果を表1に示した。
[延伸テープの製造]
得られたインフレーションフィルムから実施例1と同じ方法で製造して、延伸テープを得た。得られた延伸テープの、引張強度および繊度斑などを評価した結果を表1に示した。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のインフレーションフィルム製造装置により、超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムのフライトマークを低減でき、厚み斑の少ないインフレーションフィルムを得ることができる。また該フィルムを裁断した後、延伸して得られる延伸テープの繊度斑は少なく、土木、農業、レジャー、トラック荷台用シート・カバー、用途のシート類、網状のカーテン、農業、遮光、用途のネット類、土のう、コンテナーバッグ、穀物用途の袋類、カーペット基布、人工芝用ヤーン用途の平織敷物、ひも、ロープなどに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】インフレーションフィルム製造装置の概略を示した図である。
【図2】スクリューダイの第二スクリューの概略を示した図である。
【符号の説明】
【0042】
10 押出機
20 第一スクリュー
30 第二スクリュー
40 マンドレル
50 スクリューダイ
60 バブル安定体
70 気体吹き出し口
80 アウターダイ
100 スクリュー軸
110 スクリューフライト
120 気体流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極限粘度[η]が4〜25dl/gである超高分子量ポリオレフィンからなるインフレーションフィルムであり、引張強度が150MPa以上、偏肉度が10%以下であることを特徴とするインフレーションフィルム。
【請求項2】
第一スクリューを備えた押出機と、第一スクリューと独立して回転する第二スクリューと、第二スクリューの下流側の先端に連結され第二スクリューと共に回転するマンドレルと、マンドレルが挿通されるアウターダイと、第二スクリューの内部およびマンドレルの内部に延在してなる気体流路とを備え、前記第二スクリューのスクリュー軸の外周に形成されたスクリューフライト部の高さが、マンドレル部方向に向かってテーパー状に漸次減少し、マンドレルとの接続部分でフライトがなくなる形状を有する成形装置を用いて、極限粘度[η]が4〜25dl/gの超高分子量ポリオレフィンをインフレーション成形することを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項3】
第一スクリューを備えた押出機と、第一スクリューと独立して回転する第二スクリューと、第二スクリューの下流側の先端に連結され第二スクリューと共に回転するマンドレルと、マンドレルが挿通されるアウターダイと、第二スクリューの内部およびマンドレルの内部に延在してなる気体流路とを備え、前記第二スクリューのスクリュー軸の外周に形成されたスクリューフライト部の高さが、マンドレル部方向に向かってテーパー状に漸次減少し、マンドレルとの接続部分でフライトがなくなる形状を有するインフレーションフィルムの製造装置。
【請求項4】
第2スクリューの押出機側の最外径(D1)とマンドレル側の最外径(D2)の比(D1/D2)が1.1以上であることを特徴とする請求項3記載のインフレーションフィルム製造装置。
【請求項5】
極限粘度[η]が4〜25dl/gである超高分子量ポリオレフィンからなる延伸テープであり、引張強度が13.2cN/dtex以上、繊度斑が15%以下であることを特徴とする延伸テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−56169(P2006−56169A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241524(P2004−241524)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】