説明

距離測定装置及びカメラ

【課題】距離を正確かつ安全に測定することができる距離測定装置及びカメラを提供する。
【解決手段】オートフォーカス機能によって取得された画像データの画像処理を行って顔を検出し、顔以外の部分にレーザ光を照射して人Mまでの距離を測定する。正確な距離情報が得られたフォーカスエリアFAと他のフォーカスエリアFAとの差分からすべてのフォーカスエリアFAにある物体までの距離を算出し、ファインダ枠50内の全部の物体までの距離情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は距離測定装置およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザを用いて物体までの距離を求める距離測定装置として下記の特許文献に記載されたものが知られている。
【0003】
この距離測定装置では、光量信号を一種以上の変調周波数で変調し、計測対象上で計測対象の大きさに等しいかそれ以上の大きさに投影される角度又は大きさを持つレーザ光を計測対象上に投影し、その反射光、散乱光、回折光又は干渉光を光学系の共役面上に結像させ、結像面に配置した2ヶ以上の光量測定センサで光量を求め、その光量の時間的変化に基づいて物体までの距離を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−108907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の距離測定装置によれば正確な距離情報を得ることができるが、レーザが人間の眼や皮膚に照射されると、それらが損傷するおそれがある。
【0006】
これに対し、赤外線等のレーザ以外の光を計測対象に照射し、位相差又はコントラストを利用して計測対象までの距離情報を得るようにすれば、安全性では問題なくなる。しかし、赤外線等のレーザ以外の光を用いた距離測定では、レーザのように正確な距離情報を得ることは難しい。
【0007】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は距離を正確かつ安全に測定することができる距離測定装置及びカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、対象物にレーザを照射してその対象物までの距離を求める距離測定装置において、2次元平面上に配置された撮像手段に前記対象物の像を結像する光学系と、前記光学系によって前記2次元平面上に結像された前記対象物の像の状態を前記撮像手段で取得した画像データに基づいて判定する結像状態判定手段と、前記画像データ中から前記対象物を判別する対象物判別手段と、前記対象物判別手段の判別結果に基づいて前記レーザを前記対象物に照射する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の距離測定装置において、前記結像状態判定手段は、位相差又はコントラストを利用して前記画像データ中の画像全体の結像状態を判定することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の距離測定装置において、前記制御手段は、前記2次元平面上の前記対象物以外の物体に前記レーザを照射して、その距離情報を取得することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の距離測定装置において、前記対象物判別手段は、前記距離情報に基づいて前記対象物の形状情報を取得することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の距離測定装置において、前記対象物以外の物体は人間の顔以外の部分であることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載の距離測定装置を備えることを特徴とするカメラである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、距離を正確かつ安全に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1はこの発明の一実施形態に係る距離測定装置を備えるカメラの概念図である。
【図2】図2はカメラで対象物を撮影している状況を説明するための概念図である。
【図3】図3はファインダ枠に表示された対象物の画像の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1はこの発明の一実施形態に係る距離測定装置を備えるカメラ1の概念図、図2はカメラ1で対象物を撮影している状況を説明するための概念図、図3はファインダ枠50に表示された対象物の画像の一例を示す概念図である。なお、図3は図2を撮像したときとは異なる対象物を撮像したときの画像を示している。
【0018】
カメラ1はカメラ本体10とカメラ本体10から対象物(人M等)までの距離を求めるレーザ測距モジュール(距離測定装置)20とを備えている。レーザ測距モジュール20は、例えばレーザパルスを人Mの顔以外の部分(対象物以外の物体)に向けて照射し、反射光を受光し、出射から受光までのレーザパルス走行時間を計測し、計測されたレーザパルス走行時間に基づいて人Mまでの距離を演算する。
【0019】
なお、距離測定方法としては、後述するレンズ(光学系)12を物理的に動かして、測定する箇所の数だけコントラストの高い合焦位置を求めることにより行う方法もある。それは、例えばカメラ1のオートフォーカス機構を用いる方法がある。
【0020】
カメラ本体10は、2次元平面上に配置された固体撮像素子(撮像手段)11の撮像領域に対象物の像を結像するレンズ12と、レーザ測距モジュール20から出射されたレーザを反射させて人Mの顔以外の部分に照射するとともに、その反射光を反射させてレーザ測距モジュール20へ導くミラー13とを備えている。ミラー13は例えば人Mを撮像するとき、人Mの像が固体撮像素子11上に結像されるように図1の位置から図示しない所定の位置に退避(回転)する。
【0021】
また、カメラ本体10は、カメラ1全体の制御を行うコントローラ30を備えている。
【0022】
コントローラ30は、2次元平面上に結像された人Mの像の状態を固体撮像素子11で取得した画像データに基づいて判定する結像状態判定手段31、人Mの顔を識別する顔認識手段(対象物判別手段)32、顔認識手段32の判別結果に基づいてレーザを人Mの顔以外の部分に照射する制御手段33として機能する。
【0023】
結像状態判定手段31は、位相差又はコントラストを利用して画像データ中の画像全体の結像状態を判定する。
【0024】
例えばカメラ1のオートフォーカス機能(測距機能)を利用して人Mまでの距離を測定する。オートフォーカスに、人Mに赤外線や超音波を照射しその反射を検出する「アクティブ方式」を用いている場合は、赤外線照射部と受光部、又は超音波発振部と受信機等を用いる。一方、オートフォーカスに、画像が最も鮮明に見えるときにピントがあったと判断する「コントラスト方式」を用いる場合には、後述する固体撮像素子(撮像手段)11で得られた画像データを用いる。
【0025】
上記方法によって、結像面における任意の位置の人Mを含む物体の結像状態を判別することができる。また、フォーカスエリアFA(図3のファインダ枠50の中央に縦及び横にそれぞれ12個及び16個づつ配置されている192個の四角形の領域))間の差分情報がわかる。
【0026】
顔認識手段32は、固体撮像素子11から送られてきた顔を含む画像(画像データ)の処理を行って顔に関する様々な情報を検出する。顔に関する情報としては、例えば、目、口、鼻等の部分的な情報と、顔全体としての特徴点を示す情報等がある。
【0027】
制御手段33は、顔認識手段32によって得られた顔(図3では人Mの顔は点線の枠で囲まれている)に関する情報に基づいて人Mの顔以外の部分(例えば矢印Pで示した位置の人Mの胴体)にレーザ測距モジュール20を駆動してレーザパルスを照射する。制御手段33は、人Mの顔以外の部分で反射された反射光が受光されるまでのレーザパルス走行時間を計測し、レーザパルス走行時間に基づいて矢印Pで示したフォーカスエリアFAに対応する人Mの胴体の位置までの正確な距離を演算する。
【0028】
制御手段33は、人Mの胴体に対する他の方法(上記位相差等)によって得た合焦情報(差分情報)を用いて矢印Pで示したフォーカスエリアFA以外の全ての フォーカスエリアFAに対応する物体までの距離を演算する。その結果、例えば人Mの顔までの正確な距離情報を得ることができる。
【0029】
次に、カメラ1の使用方法を説明する。なお、カメラ1の電源はすでに入っているものとする。
【0030】
まず、レリーズボタン2(図2参照)を半押しする。
【0031】
レリーズボタン2が半押しされると、オートフォーカス機能によって取得された画像データの画像処理を行って人Mの顔を検出する。
【0032】
その後、人Mの顔以外の部分にレーザ光を照射して距離を測定する。このとき、正確な距離情報が得られたフォーカスエリアFAと他のフォーカスエリアFAとの差分から全てのフォーカスエリアFAに対応する物体までの距離を算出し、ファインダ枠50内の全部の物体までの距離情報を取得する。この距離情報から人Mの形状情報を取得することができる。
【0033】
この実施形態によれば、対象物である人Mまでの距離を正確かつ安全に測定することができる。その結果、人Mの正確な形状を検出することができる。なお、上記実施形態ではファインダ枠50に表示される画像に基づいて距離を測定したが、液晶画面に表示される画像に基づいて距離を測定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1:カメラ、11:固体撮像素子(撮像手段)、12:光学系、20:レーザ測距モジュール(距離測定装置)、30:コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にレーザを照射してその対象物までの距離を求める距離測定装置において、
2次元平面上に配置された撮像手段に前記対象物の像を結像する光学系と、
前記光学系によって前記2次元平面上に結像された前記対象物の像の状態を前記撮像手段で取得した画像データに基づいて判定する結像状態判定手段と、
前記画像データ中から前記対象物を判別する対象物判別手段と、
前記対象物判別手段の判別結果に基づいて前記レーザを前記対象物に照射する制御手段と
を備えていることを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記結像状態判定手段は、位相差又はコントラストを利用して前記画像データ中の画像全体の結像状態を判定することを特徴とする請求項1記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記2次元平面上の前記対象物以外の物体に前記レーザを照射して、その距離情報を取得することを特徴とする請求項1又は2記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記対象物判別手段は、前記距離情報に基づいて前記対象物の形状情報を取得することを特徴とする請求項3記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記対象物以外の物体は人間の顔以外の部分であることを特徴とする請求項3記載の距離測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の距離測定装置を備えることを特徴とするカメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−185119(P2012−185119A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50074(P2011−50074)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】