距離測定装置
【課題】アクチュエータの負荷を重くせずに検知エリアを拡大することのできる距離測定装置を提供する。
【解決手段】距離測定装置は、投光レンズ1の後方の焦点位置に探査波の走査方向に沿って配置したLD1〜LD3を備えている。投光レンズ1は左右に移動可能であって、LD1、LD2、LD3は、それぞれ、検知エリア1、検知エリア2、検知エリア3に対して探査波を送信する。LD1、LD2、LD3は、検知エリア1と検知エリア2の一部が重なり、検知エリア3と検知エリア2の一部が重なるように配置される。投光レンズ1は、LD1の探査波が検知エリア1にのみ送波され、LD2の探査波が検知エリア3にのみ送波され、LD4の探査波が検知エリア4にのみ送波される長さだけ左右に移動する。
【解決手段】距離測定装置は、投光レンズ1の後方の焦点位置に探査波の走査方向に沿って配置したLD1〜LD3を備えている。投光レンズ1は左右に移動可能であって、LD1、LD2、LD3は、それぞれ、検知エリア1、検知エリア2、検知エリア3に対して探査波を送信する。LD1、LD2、LD3は、検知エリア1と検知エリア2の一部が重なり、検知エリア3と検知エリア2の一部が重なるように配置される。投光レンズ1は、LD1の探査波が検知エリア1にのみ送波され、LD2の探査波が検知エリア3にのみ送波され、LD4の探査波が検知エリア4にのみ送波される長さだけ左右に移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載レーダ装置などに適用される距離測定装置、特に探査波を複数個使用するマルチビーム距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いた距離測定装置では、従来、単一の光源を設置し、投受光レンズを左右方向に走査することにより、所望の検知エリアを確保していた。
【0003】
図1に従来の距離測定装置の光学系投受光部の概略図を示す。光源として、レーザダイオードLD1が投光レンズ1の焦点位置に設置されている。探査波である投光ビームは、この例では縦長のファンビーム(扇形に広がるビーム)形状である。投光レンズ1の横には受光レンズ2が一体的に設けられ、受光レンズ2の焦点位置に受光センサPD1が設置されている。
【0004】
投光レンズ1と受光レンズ2が左から右へ移動することにより投光ビームと受光ビームが同様に左から右に走査される。
【0005】
上記の構成で、所望の検知エリア1がY度、投光レンズ1の焦点距離をfmm、光源(LD1)を投光レンズ1の焦点位置に設置したとすると、投光レンズ1の移動量Lは、下記のようになる。
【0006】
L=f×tan(Y/2)×2(mm)
受光レンズ2と投光レンズ1とが同期して移動するために、受光センサPD1は投光レンズ1からの投光ビームが照射される方向からの反射光(反射波)を受光することができる。
【0007】
上記の構成において、検知エリア1を拡大しようとすれば投光レンズ1の移動量を大きくする必要がある。しかし、投光レンズ1の移動量を大きくすれば、同レンズを駆動するためのアクチュエータの負荷が大きくなるという問題があり、また、レンズの移動量が大きいと、端点付近でのビームプロファイルのFWHM(Full Width Half Maximum:半値幅)が中心部に比較して大きくなるという問題がある。
【0008】
そこで、一定の大きさの検知エリア1を確保したままレンズの移動量を小さくしてアクチュエータの負荷を軽減しようとすると、今度はレンズの焦点距離を短くすることが必要になるため、必然的にレンズサイズが小さくなる。このことは、受光センサのS/Nを低下させることになる。
【0009】
一方、精度を高めるためには受光センサで取得したデータの更新周期を短縮することが必要であるが、レンズの移動速度(走査速度)を上げることにより更新周期を短縮しようとすれば、アクチュエータの負荷が増大する。例えば、検知エリア1の大きさを変更せず、データの更新周期を3倍にするためには、走査速度を3倍にする必要がある。
【0010】
以上のような問題は、ミリ波式レーダ装置においても機械的に走査を行う限り同様に生じている。
【0011】
光学式レーダ装置の光学系に関する先行技術として、特許文献1に、マルチビームを使用するものが提案されている。また、特許文献2では、複数の放射器と単一の反射器を組み合わせ、車速に応じてビーム形状を変更する技術、放射器を切り換えることにより検知エリアを変更する技術が示されている。さらに、特許文献3では、マルチビームを形成するとともに、それらのビームの重なり領域を設けた構成が示されている。
【特許文献1】特開平9−76817号公報
【特許文献2】特開平5−273340号公報
【特許文献3】特開平5−203738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1〜3は、いずれも送信装置、受信装置が1つであるため、検知エリアを広げようとすれば、また、精度を高めるためにビームの走査速度を速くしようとすれば、走査を行うためのレンズ駆動用アクチュエータの負荷が大きくなり、発熱、機械的損耗、信頼性低下等の問題が生じる。
【0013】
この発明は、複数組の送受信装置を設置することにより、アクチュエータの負荷を重くせずに検知エリアを拡大することのできる距離測定装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、この発明は、走査速度を速くしなくても検知精度を高めることのできる距離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、この発明は以下のように構成される。
【0016】
この発明に係るマルチビームレーダ装置は、検知エリアに対し探査波を送信した時刻と、検知エリア内にある障害物の反射波を受信した時刻との時間差に基づいて障害物との相対的位置関係を計測する距離測定装置において、探査波及び反射波を走査する走査手段と、探査波及び反射波を走査する水平方向又は垂直方向の走査方向に沿って配置される複数組の送受信装置とを備えている。そして、各組の送受信装置毎に、送信装置から送信された探査波に基づく反射波を受信装置で受信する。
【0017】
上記構成において、走査手段は、水平方向にのみ走査するか、又は水平方向と垂直方向に順次走査する。いずれの場合も前方の2次元面を走査する。したがって、前者の場合は送信ビーム(探査波)は、垂直方向に長いビーム形状となる。
【0018】
また、各組の送信装置と受信装置とは対の関係となる。例えば、第1の送信装置から送信される探査波の反射波は、第1の受信装置で受信される。第2の送信装置から送信される探査波の反射波は、第2の受信装置で受信される。また、各組の送受信装置は水平方向又は垂直方向の走査方向に沿って配置されている。したがって、走査位置が任意の位置にあるとき、各組の送受信装置での検知エリアを異なったエリアに設定することができるから、走査装置の移動量を大きくしなくても全体の検知エリアを大きくできる。
【0019】
この発明の好ましい実施態様では、前記複数組の送受信装置は、複数の送信装置と、該送信装置の数と同数の複数の受信装置とで構成される。しかし、受信装置の数は送信装置の数よりも少なくても良い。その場合は、複数の組の送受信装置において、第1の組の受信装置が第2の組の受信装置を兼用、すなわち、1つの受信装置が複数の送信装置の受信を担当することになる。
【0020】
この発明は、好ましい構成として、第1の組の送受信装置による検知エリアが第2の組の送受信装置による検知エリアと重なっている。
【0021】
このように構成では、重なっている検知エリアでは、1回の探査波及び反射波の走査で複数回の計測が可能である。したがって、走査速度を速くしなくてもデータ更新回数を複数回に増やし、これにより計測精度を高くすることができる。
【0022】
この発明の別の実施態様では、各組の送信装置から探査波を送信するタイミングを組毎に変えることが可能である。また、各組の送信装置において、送信する探査波の波長を組毎に異なる長さに設定し、且つ、各組の受信装置には、それに対応する送信装置から送信される探査波の波長と同一波長を通過させるフィルタを設けることも可能である。
【0023】
このような構成では、各組の送受信装置でカバーする検知エリア間、特に隣接する検知エリア間の干渉を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、走査装置を駆動するためのアクチュエータの負荷を大きくしなくても全体の検知エリアを大きくできる。また、各組の送受信装置の検知エリアを重ねることにより、走査装置での走査速度を速くしなくても計測精度を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図2は、この発明の実施形態である距離測定装置(レーザレーダ)の概略ブロック図である。このレーザレーダは、車両に設けられる。
【0026】
スキャナ10は、投光レンズ1と、受光レンズ2と、これらのレンズを左右に移動することにより探査波(以下、送波ビームという)と反射波(以下、受波ビームという)とを走査する走査機構部3と、さらに、送波ビームを送信する送信手段であるLD(Laser Diode)1、LD2、LD3と、受波ビームを受信する受信手段であるPD(Photo Diode)1、PD2、PD3とを備えている。アクチュエータである走査機構部3は、水平方向板バネ、垂直方向板バネ、水平方向駆動用コイル、垂直方向駆動用コイルを備え、これらのコイルに所定の電流を流すことにより、投光レンズ1と受光レンズ2を一体的に支持する支持部材を、水平方向及び垂直方向に移動させる。投光レンズ1と受光レンズ2とで各々形成されるビームは、縦長ファンビーム形状であり、このビームを水平方向と垂直方向に走査していく。
【0027】
前記投光レンズ1の後方には、LD1、LD2、LD3が、水平走査方向に沿って配置されている。同様に、受光レンズ2の後方には、PD1、PD2、PD3が、水平走査方向に沿って配置されている。
【0028】
LD1、LD2、LD3は、LD駆動回路4で駆動され、PD1、PD2、PD3の受光信号は受光回路5で受信される。また、走査機構部3の水平位置と垂直位置は、水平走査位置検出装置6と垂直走査位置検出装置7でそれぞれ検出される。制御回路8には、上記LD駆動回路4、受光回路5、水平走査位置検出装置6、垂直走査位置検出装置7が接続され、さらに、車測センサ9とメモリ10が接続されている。制御回路8は、LD駆動回路4に駆動用制御信号を送り、受光回路5から障害物の反射信号を受けるとともに、水平走査位置検出装置6、垂直走査位置検出装置7でそのときの水平・垂直位置を取得する。これらの情報から、前方に存在する障害物(先行車両など)までの距離や位置を計測し、さらに、車測センサ9からの車速信号を取得して、図示しない車両制御装置に対し、車間距離制御のための制御信号を出力する。
【0029】
図3は、LD1〜LD3の配置位置と検知エリアの関係を示す図である。図示のように、投光レンズ1の後方の焦点位置に、水平走査方向に沿ってLD1〜LD3が配置されている。各LD1〜LD3の位置は、それらにより送波ビームが送信されるエリア(検知エリア)が、図示のように検知エリア1〜3となるように定められる。図示の例では、検知エリア1がLD1、検知エリア2がLD2、検知エリア3がLD3にそれぞれ対応している。投光レンズ1を水平方向の左右に移動(走査)することにより、各LD1〜LD3から送信される送波ビームも左右に走査される。
【0030】
また、図3に示すように、この実施形態では、検知エリア3の右側と検知エリア2の左側、及び検知エリア1の左側と検知エリア2の右側が重なっている。すなわち、走査中心付近の検知エリアを重ねている。
【0031】
以上の構成にしたことから、この実施形態では、
(1)全体の検知エリアは、3つのLDで分担するために、投光レンズ1の移動量を、図1に示す従来の構成の移動量と同じにしても、検知エリアを拡大できる。すなわち、図1に示す検知エリアと同じ大きさの検知エリアを確保するには、投光レンズ1の移動量は相対的に小さくて良い。
【0032】
(2)重なり部の検知エリアからは1回の走査により2回の情報が得られるため、図1の構成において投光レンズ1を2倍の走査速度で走査したときと同じ情報量が得られる。すなわち、投光レンズ1を図1に示す走査速度と同じ走査速度で走査すると、得られる情報量は相対的に2倍となる。
【0033】
図4は、PD1〜PD3の配置位置と検知エリアの関係を示す図である。図示のように、受光レンズ2の後方の焦点位置に、水平方向の走査方向に沿ってPD1〜PD3が配置されている。各PD1〜PD3の位置は、それらにより受波ビームが受信されるエリア(検知エリア)が、図示のように検知エリア1〜3となるように定められる。図示の例では、検知エリア1がPD1、検知エリア2がPD2、検知エリア3がPD3にそれぞれ対応している。受光レンズ2を左右に移動(走査)することにより、各PD1〜PD3が受信(受波)する受波ビームも左右に走査される。
【0034】
このように、図3、図4に示すLD1〜LD3及びPD1〜PD3の構成においては、LD1とPD1、LD2とPD2、LD3とPD3でそれぞれ一対の組を構成し、LD1で検知エリア1に対して送信した送波ビームについてはその受波ビームをPD1で受信し、LD2で検知エリア2に送信した送波ビームについてはその受波ビームをPD2で受信し、LD3で検知エリア3に送信した送波ビームについてはその受波ビームをPD3で受信する。PD1〜PD3を各LD1〜LD3に対応させることにより、各PDは全体の検知エリアをカバーする必要がなくなるためPD面積を小さくすることができる。これにより、PD1〜PD3のS/Nを相対的に向上させることができる。
【0035】
図5は、PDの配置の他の実施例を示す。この実施例では、1個のPDのみ使用する。すなわち、LD1とPD、LD2とPD、LD3とPDでそれぞれ一対の組を構成し、一つのPDが各組の受信装置を兼用している。したがって、一つのPDで全体の検知エリアをカバーする。この構成では、図4の構成に対してS/Nの点では劣るが低コストとなる。
【0036】
図6は、図3の構成において各LDの駆動タイミングを変える実施例を示す。すなわち、LD駆動回路4において、各LD1〜LD3の駆動タイミングを変えている。このようにすることで、各組での計測に干渉が生じなくなり計測精度を高くすることができる。
【0037】
図7は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、LDを2個使用し、検知エリア1と検知エリア2とを中央付近で重ねている。図8は、PDの配置位置を示す。図9は、各LD1、LD2の駆動タイミングを変えるときの各LD1、LD2の駆動タイミングを示している。
【0038】
図10、図11は、図3、図7の構成において、検知エリアの走査中心線を水平走査方向にシフトしたときの状態を示している。検知エリアの走査中心線Oは、走査機構部3の制御により水平走査方向にシフト可能であり、車両が車線に沿って右方向に旋回し始めると、走査中心線Oを右方向にシフトし、反対に、車両が左方向に旋回し始めると、走査中心線Oを左方向にシフトする。このような制御により、検知エリアの重なり部が常に車両の前方中心エリアに位置することになるから、前方に存在する先行車両を高精度で検出し追従させることが可能になる。なお、車両の旋回方向を検出する手段としては、ハンドル角センサ、ジャイロ、ナビゲーションシステム、前方監視カメラ等があり、これらの装置から得られる情報に基づいて道路形状を取得し、走査中心線Oを車線に追従させる。
【0039】
図12、図13は、この発明の他の実施形態を示している。この実施形態の距離測定装置の構成は図2に示す構成と同様であり、また、LD1〜LD3、PD1〜PD3の配置は図3、図4と同様であるが、各LDの探査波の波長が異なっている。すなわち、
LD1=λ1、LD2=λ2、LD3=λ3
に設定されている。また、PD1〜PD3の前には、BPF(バンドパスフィルタ)1〜BPF3が配置されている。λ1=800nm、λ2=850nm、λ3=900nmとした場合のBPF1〜BPF3の分光感度特性を図14に示す。図14から分かるように、各PDは各々対応するLDの波長のみ受光するため、LD1〜LD3が同時に駆動されても相互に干渉することがない。このように波長を各組毎に変えることで干渉の問題は生じないため、LD1〜LD3の駆動タイミングは同時であってよい。図15は、この場合のLD1〜LD3の駆動タイミングを示している。このように各LDを同時駆動することにより、データ更新周期の短縮が可能となる。
【0040】
なお、上記実施形態では、水平方向の走査方向に沿って複数のLD、PDを配置したが、ビームを横長ファンビーム形状として、垂直方向の走査方向に沿って複数のLD、PDを配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来の距離測定装置の光学系投受光部の構成図
【図2】この発明の実施形態である距離測定装置の概略構成図
【図3】光学系投光部の構成図
【図4】光学系受光部の構成図
【図5】受光部の他の例の構成図
【図6】投光部の駆動タイミングを示す図
【図7】他の実施形態の光学系投光部の構成図
【図8】他の実施形態の光学系受光部の構成図
【図9】投光部の駆動タイミングを示す図
【図10】検知エリアの走査中心線を走査方向にシフトしたときの状態を示す図
【図11】検知エリアの走査中心線を走査方向にシフトしたときの状態を示す図
【図12】他の実施形態の光学系投光部の構成図
【図13】他の実施形態の光学系受光部の構成図
【図14】BPF分光感度特性図
【図15】投光部の駆動タイミングを示す図
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載レーダ装置などに適用される距離測定装置、特に探査波を複数個使用するマルチビーム距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いた距離測定装置では、従来、単一の光源を設置し、投受光レンズを左右方向に走査することにより、所望の検知エリアを確保していた。
【0003】
図1に従来の距離測定装置の光学系投受光部の概略図を示す。光源として、レーザダイオードLD1が投光レンズ1の焦点位置に設置されている。探査波である投光ビームは、この例では縦長のファンビーム(扇形に広がるビーム)形状である。投光レンズ1の横には受光レンズ2が一体的に設けられ、受光レンズ2の焦点位置に受光センサPD1が設置されている。
【0004】
投光レンズ1と受光レンズ2が左から右へ移動することにより投光ビームと受光ビームが同様に左から右に走査される。
【0005】
上記の構成で、所望の検知エリア1がY度、投光レンズ1の焦点距離をfmm、光源(LD1)を投光レンズ1の焦点位置に設置したとすると、投光レンズ1の移動量Lは、下記のようになる。
【0006】
L=f×tan(Y/2)×2(mm)
受光レンズ2と投光レンズ1とが同期して移動するために、受光センサPD1は投光レンズ1からの投光ビームが照射される方向からの反射光(反射波)を受光することができる。
【0007】
上記の構成において、検知エリア1を拡大しようとすれば投光レンズ1の移動量を大きくする必要がある。しかし、投光レンズ1の移動量を大きくすれば、同レンズを駆動するためのアクチュエータの負荷が大きくなるという問題があり、また、レンズの移動量が大きいと、端点付近でのビームプロファイルのFWHM(Full Width Half Maximum:半値幅)が中心部に比較して大きくなるという問題がある。
【0008】
そこで、一定の大きさの検知エリア1を確保したままレンズの移動量を小さくしてアクチュエータの負荷を軽減しようとすると、今度はレンズの焦点距離を短くすることが必要になるため、必然的にレンズサイズが小さくなる。このことは、受光センサのS/Nを低下させることになる。
【0009】
一方、精度を高めるためには受光センサで取得したデータの更新周期を短縮することが必要であるが、レンズの移動速度(走査速度)を上げることにより更新周期を短縮しようとすれば、アクチュエータの負荷が増大する。例えば、検知エリア1の大きさを変更せず、データの更新周期を3倍にするためには、走査速度を3倍にする必要がある。
【0010】
以上のような問題は、ミリ波式レーダ装置においても機械的に走査を行う限り同様に生じている。
【0011】
光学式レーダ装置の光学系に関する先行技術として、特許文献1に、マルチビームを使用するものが提案されている。また、特許文献2では、複数の放射器と単一の反射器を組み合わせ、車速に応じてビーム形状を変更する技術、放射器を切り換えることにより検知エリアを変更する技術が示されている。さらに、特許文献3では、マルチビームを形成するとともに、それらのビームの重なり領域を設けた構成が示されている。
【特許文献1】特開平9−76817号公報
【特許文献2】特開平5−273340号公報
【特許文献3】特開平5−203738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1〜3は、いずれも送信装置、受信装置が1つであるため、検知エリアを広げようとすれば、また、精度を高めるためにビームの走査速度を速くしようとすれば、走査を行うためのレンズ駆動用アクチュエータの負荷が大きくなり、発熱、機械的損耗、信頼性低下等の問題が生じる。
【0013】
この発明は、複数組の送受信装置を設置することにより、アクチュエータの負荷を重くせずに検知エリアを拡大することのできる距離測定装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、この発明は、走査速度を速くしなくても検知精度を高めることのできる距離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、この発明は以下のように構成される。
【0016】
この発明に係るマルチビームレーダ装置は、検知エリアに対し探査波を送信した時刻と、検知エリア内にある障害物の反射波を受信した時刻との時間差に基づいて障害物との相対的位置関係を計測する距離測定装置において、探査波及び反射波を走査する走査手段と、探査波及び反射波を走査する水平方向又は垂直方向の走査方向に沿って配置される複数組の送受信装置とを備えている。そして、各組の送受信装置毎に、送信装置から送信された探査波に基づく反射波を受信装置で受信する。
【0017】
上記構成において、走査手段は、水平方向にのみ走査するか、又は水平方向と垂直方向に順次走査する。いずれの場合も前方の2次元面を走査する。したがって、前者の場合は送信ビーム(探査波)は、垂直方向に長いビーム形状となる。
【0018】
また、各組の送信装置と受信装置とは対の関係となる。例えば、第1の送信装置から送信される探査波の反射波は、第1の受信装置で受信される。第2の送信装置から送信される探査波の反射波は、第2の受信装置で受信される。また、各組の送受信装置は水平方向又は垂直方向の走査方向に沿って配置されている。したがって、走査位置が任意の位置にあるとき、各組の送受信装置での検知エリアを異なったエリアに設定することができるから、走査装置の移動量を大きくしなくても全体の検知エリアを大きくできる。
【0019】
この発明の好ましい実施態様では、前記複数組の送受信装置は、複数の送信装置と、該送信装置の数と同数の複数の受信装置とで構成される。しかし、受信装置の数は送信装置の数よりも少なくても良い。その場合は、複数の組の送受信装置において、第1の組の受信装置が第2の組の受信装置を兼用、すなわち、1つの受信装置が複数の送信装置の受信を担当することになる。
【0020】
この発明は、好ましい構成として、第1の組の送受信装置による検知エリアが第2の組の送受信装置による検知エリアと重なっている。
【0021】
このように構成では、重なっている検知エリアでは、1回の探査波及び反射波の走査で複数回の計測が可能である。したがって、走査速度を速くしなくてもデータ更新回数を複数回に増やし、これにより計測精度を高くすることができる。
【0022】
この発明の別の実施態様では、各組の送信装置から探査波を送信するタイミングを組毎に変えることが可能である。また、各組の送信装置において、送信する探査波の波長を組毎に異なる長さに設定し、且つ、各組の受信装置には、それに対応する送信装置から送信される探査波の波長と同一波長を通過させるフィルタを設けることも可能である。
【0023】
このような構成では、各組の送受信装置でカバーする検知エリア間、特に隣接する検知エリア間の干渉を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、走査装置を駆動するためのアクチュエータの負荷を大きくしなくても全体の検知エリアを大きくできる。また、各組の送受信装置の検知エリアを重ねることにより、走査装置での走査速度を速くしなくても計測精度を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図2は、この発明の実施形態である距離測定装置(レーザレーダ)の概略ブロック図である。このレーザレーダは、車両に設けられる。
【0026】
スキャナ10は、投光レンズ1と、受光レンズ2と、これらのレンズを左右に移動することにより探査波(以下、送波ビームという)と反射波(以下、受波ビームという)とを走査する走査機構部3と、さらに、送波ビームを送信する送信手段であるLD(Laser Diode)1、LD2、LD3と、受波ビームを受信する受信手段であるPD(Photo Diode)1、PD2、PD3とを備えている。アクチュエータである走査機構部3は、水平方向板バネ、垂直方向板バネ、水平方向駆動用コイル、垂直方向駆動用コイルを備え、これらのコイルに所定の電流を流すことにより、投光レンズ1と受光レンズ2を一体的に支持する支持部材を、水平方向及び垂直方向に移動させる。投光レンズ1と受光レンズ2とで各々形成されるビームは、縦長ファンビーム形状であり、このビームを水平方向と垂直方向に走査していく。
【0027】
前記投光レンズ1の後方には、LD1、LD2、LD3が、水平走査方向に沿って配置されている。同様に、受光レンズ2の後方には、PD1、PD2、PD3が、水平走査方向に沿って配置されている。
【0028】
LD1、LD2、LD3は、LD駆動回路4で駆動され、PD1、PD2、PD3の受光信号は受光回路5で受信される。また、走査機構部3の水平位置と垂直位置は、水平走査位置検出装置6と垂直走査位置検出装置7でそれぞれ検出される。制御回路8には、上記LD駆動回路4、受光回路5、水平走査位置検出装置6、垂直走査位置検出装置7が接続され、さらに、車測センサ9とメモリ10が接続されている。制御回路8は、LD駆動回路4に駆動用制御信号を送り、受光回路5から障害物の反射信号を受けるとともに、水平走査位置検出装置6、垂直走査位置検出装置7でそのときの水平・垂直位置を取得する。これらの情報から、前方に存在する障害物(先行車両など)までの距離や位置を計測し、さらに、車測センサ9からの車速信号を取得して、図示しない車両制御装置に対し、車間距離制御のための制御信号を出力する。
【0029】
図3は、LD1〜LD3の配置位置と検知エリアの関係を示す図である。図示のように、投光レンズ1の後方の焦点位置に、水平走査方向に沿ってLD1〜LD3が配置されている。各LD1〜LD3の位置は、それらにより送波ビームが送信されるエリア(検知エリア)が、図示のように検知エリア1〜3となるように定められる。図示の例では、検知エリア1がLD1、検知エリア2がLD2、検知エリア3がLD3にそれぞれ対応している。投光レンズ1を水平方向の左右に移動(走査)することにより、各LD1〜LD3から送信される送波ビームも左右に走査される。
【0030】
また、図3に示すように、この実施形態では、検知エリア3の右側と検知エリア2の左側、及び検知エリア1の左側と検知エリア2の右側が重なっている。すなわち、走査中心付近の検知エリアを重ねている。
【0031】
以上の構成にしたことから、この実施形態では、
(1)全体の検知エリアは、3つのLDで分担するために、投光レンズ1の移動量を、図1に示す従来の構成の移動量と同じにしても、検知エリアを拡大できる。すなわち、図1に示す検知エリアと同じ大きさの検知エリアを確保するには、投光レンズ1の移動量は相対的に小さくて良い。
【0032】
(2)重なり部の検知エリアからは1回の走査により2回の情報が得られるため、図1の構成において投光レンズ1を2倍の走査速度で走査したときと同じ情報量が得られる。すなわち、投光レンズ1を図1に示す走査速度と同じ走査速度で走査すると、得られる情報量は相対的に2倍となる。
【0033】
図4は、PD1〜PD3の配置位置と検知エリアの関係を示す図である。図示のように、受光レンズ2の後方の焦点位置に、水平方向の走査方向に沿ってPD1〜PD3が配置されている。各PD1〜PD3の位置は、それらにより受波ビームが受信されるエリア(検知エリア)が、図示のように検知エリア1〜3となるように定められる。図示の例では、検知エリア1がPD1、検知エリア2がPD2、検知エリア3がPD3にそれぞれ対応している。受光レンズ2を左右に移動(走査)することにより、各PD1〜PD3が受信(受波)する受波ビームも左右に走査される。
【0034】
このように、図3、図4に示すLD1〜LD3及びPD1〜PD3の構成においては、LD1とPD1、LD2とPD2、LD3とPD3でそれぞれ一対の組を構成し、LD1で検知エリア1に対して送信した送波ビームについてはその受波ビームをPD1で受信し、LD2で検知エリア2に送信した送波ビームについてはその受波ビームをPD2で受信し、LD3で検知エリア3に送信した送波ビームについてはその受波ビームをPD3で受信する。PD1〜PD3を各LD1〜LD3に対応させることにより、各PDは全体の検知エリアをカバーする必要がなくなるためPD面積を小さくすることができる。これにより、PD1〜PD3のS/Nを相対的に向上させることができる。
【0035】
図5は、PDの配置の他の実施例を示す。この実施例では、1個のPDのみ使用する。すなわち、LD1とPD、LD2とPD、LD3とPDでそれぞれ一対の組を構成し、一つのPDが各組の受信装置を兼用している。したがって、一つのPDで全体の検知エリアをカバーする。この構成では、図4の構成に対してS/Nの点では劣るが低コストとなる。
【0036】
図6は、図3の構成において各LDの駆動タイミングを変える実施例を示す。すなわち、LD駆動回路4において、各LD1〜LD3の駆動タイミングを変えている。このようにすることで、各組での計測に干渉が生じなくなり計測精度を高くすることができる。
【0037】
図7は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、LDを2個使用し、検知エリア1と検知エリア2とを中央付近で重ねている。図8は、PDの配置位置を示す。図9は、各LD1、LD2の駆動タイミングを変えるときの各LD1、LD2の駆動タイミングを示している。
【0038】
図10、図11は、図3、図7の構成において、検知エリアの走査中心線を水平走査方向にシフトしたときの状態を示している。検知エリアの走査中心線Oは、走査機構部3の制御により水平走査方向にシフト可能であり、車両が車線に沿って右方向に旋回し始めると、走査中心線Oを右方向にシフトし、反対に、車両が左方向に旋回し始めると、走査中心線Oを左方向にシフトする。このような制御により、検知エリアの重なり部が常に車両の前方中心エリアに位置することになるから、前方に存在する先行車両を高精度で検出し追従させることが可能になる。なお、車両の旋回方向を検出する手段としては、ハンドル角センサ、ジャイロ、ナビゲーションシステム、前方監視カメラ等があり、これらの装置から得られる情報に基づいて道路形状を取得し、走査中心線Oを車線に追従させる。
【0039】
図12、図13は、この発明の他の実施形態を示している。この実施形態の距離測定装置の構成は図2に示す構成と同様であり、また、LD1〜LD3、PD1〜PD3の配置は図3、図4と同様であるが、各LDの探査波の波長が異なっている。すなわち、
LD1=λ1、LD2=λ2、LD3=λ3
に設定されている。また、PD1〜PD3の前には、BPF(バンドパスフィルタ)1〜BPF3が配置されている。λ1=800nm、λ2=850nm、λ3=900nmとした場合のBPF1〜BPF3の分光感度特性を図14に示す。図14から分かるように、各PDは各々対応するLDの波長のみ受光するため、LD1〜LD3が同時に駆動されても相互に干渉することがない。このように波長を各組毎に変えることで干渉の問題は生じないため、LD1〜LD3の駆動タイミングは同時であってよい。図15は、この場合のLD1〜LD3の駆動タイミングを示している。このように各LDを同時駆動することにより、データ更新周期の短縮が可能となる。
【0040】
なお、上記実施形態では、水平方向の走査方向に沿って複数のLD、PDを配置したが、ビームを横長ファンビーム形状として、垂直方向の走査方向に沿って複数のLD、PDを配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来の距離測定装置の光学系投受光部の構成図
【図2】この発明の実施形態である距離測定装置の概略構成図
【図3】光学系投光部の構成図
【図4】光学系受光部の構成図
【図5】受光部の他の例の構成図
【図6】投光部の駆動タイミングを示す図
【図7】他の実施形態の光学系投光部の構成図
【図8】他の実施形態の光学系受光部の構成図
【図9】投光部の駆動タイミングを示す図
【図10】検知エリアの走査中心線を走査方向にシフトしたときの状態を示す図
【図11】検知エリアの走査中心線を走査方向にシフトしたときの状態を示す図
【図12】他の実施形態の光学系投光部の構成図
【図13】他の実施形態の光学系受光部の構成図
【図14】BPF分光感度特性図
【図15】投光部の駆動タイミングを示す図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知エリアに対し探査波を送信した時刻と、検知エリア内にある障害物の反射波を受信した時刻との時間差に基づいて障害物との相対的位置関係を測定する距離測定装置において、
探査波及び反射波を走査する走査手段と、
探査波及び反射波を走査する水平方向又は垂直方向の走査方向に沿って配置される複数組の送受信装置とを備え、各組の送受信装置毎に、送信装置から送信された探査波に基づく反射波を受信装置で受信することを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
第1の組の送受信装置による検知エリアが第2の組の送受信装置による検知エリアと重なっていることを特徴する請求項1記載の距離測定装置。
【請求項3】
各組の送信装置から探査波を送信するタイミングを組毎に変えることを特徴とする請求項1又は2記載の距離測定装置。
【請求項4】
各組の送信装置は、送信する探査波の波長が組毎に異なり、各組の受信装置は、対応する送信装置から送信される探査波の波長と同一波長を通過させるフィルタを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記複数組の送受信装置は、複数の送信装置と、該送信装置の数と同数の複数の受信装置とで構成したことを特徴とする請求項1記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記走査手段は、投受光レンズを走査方向に移動することにより探査波及び反射波を走査するレンズ駆動手段で構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項7】
前記走査手段は、検知エリアの走査中心線を走査方向にシフト可能にしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項1】
検知エリアに対し探査波を送信した時刻と、検知エリア内にある障害物の反射波を受信した時刻との時間差に基づいて障害物との相対的位置関係を測定する距離測定装置において、
探査波及び反射波を走査する走査手段と、
探査波及び反射波を走査する水平方向又は垂直方向の走査方向に沿って配置される複数組の送受信装置とを備え、各組の送受信装置毎に、送信装置から送信された探査波に基づく反射波を受信装置で受信することを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
第1の組の送受信装置による検知エリアが第2の組の送受信装置による検知エリアと重なっていることを特徴する請求項1記載の距離測定装置。
【請求項3】
各組の送信装置から探査波を送信するタイミングを組毎に変えることを特徴とする請求項1又は2記載の距離測定装置。
【請求項4】
各組の送信装置は、送信する探査波の波長が組毎に異なり、各組の受信装置は、対応する送信装置から送信される探査波の波長と同一波長を通過させるフィルタを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記複数組の送受信装置は、複数の送信装置と、該送信装置の数と同数の複数の受信装置とで構成したことを特徴とする請求項1記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記走査手段は、投受光レンズを走査方向に移動することにより探査波及び反射波を走査するレンズ駆動手段で構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項7】
前記走査手段は、検知エリアの走査中心線を走査方向にシフト可能にしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の距離測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−101342(P2007−101342A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291044(P2005−291044)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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