説明

距離測定装置

【課題】構成を簡略化できる距離測定装置を提供する。
【解決手段】距離測定装置1は、距離を測定する航空機3とパルスP、Pを送受信するトランスポンダ部13と、ノイズAnを生じさせるノイズ源51a(51b)と、ノイズAnに基づいてランダム値Raを生成するランダム値生成回路53a(53b)と、ランダム値Raに基づいてパルス間隔Int(Int)を生成するパルス間隔生成回路55a(55b)と、トランスポンダ部13へ送信する擬似質問パルスPP(PP)を生成する擬似質問生成回路56a(56b)と、パルス間隔に基づいて擬似質問パルスを送信する送信回路35a(35b)と、擬似質問パルスに対してトランスポンダ部13が応答した応答パルスPに基づいてトランスポンダ部13の状況をモニタする応答パルスモニタ回路33a(33b)とを含む第1モニタ部15(第2モニタ部16)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスポンダ部をモニタするために2個のモニタ部を備えた距離測定装置(DME:Distance Measuring Equipment)に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物との距離を測定するための距離測定装置が知られている。このような距離測定装置として、航空機と地上局との間の距離を測定する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
距離測定装置は、地上局に設置され、航空機のインタロゲータと信号を送受信することによって、距離を測定する。一般に、距離測定装置は、2個のトランスポンダ部と、2個のモニタ部とを備えている。
【0004】
2個のトランスポンダ部は、同じ構成を有する。トランスポンダ部は、航空機に設置されたインタロゲータと信号を送受信するためのものである。尚、2個のトランスポンダのうち、一方は運転状態であって、他方は待機状態に設定される。
【0005】
2個のモニタ部は、同じ構成を有する。モニタ部は、運転中のトランスポンダ部の動作を常時監視するためのものである。
【0006】
この距離測定装置により距離を測定する場合、航空機に設置されたインタロゲータから運転状態のトランスポンダ部に質問パルスが送信される。この信号を受信したトランスポンダ部は、受信した質問パルスに対応した応答パルスをインタロゲータに送信する。航空機では、自らが送信した質問パルスに対応する応答パルスを受信する。そして、航空機では、質問パルスと受信パルスとの送受信にかかった時間等から地上局との距離を測定することができる。
【0007】
各モニタ部は、航空機とトランスポンダ部とのパルスの送受信と並行して、トランスポンダ部を監視する。具体的には、各モニタ部からトランスポンダ部へ擬似質問パルスが送信される。擬似質問パルスとは、航空機が送信する質問パルスと実質的に同じものである。これを受信したトランスポンダ部は、擬似質問パルスに対応する応答パルスを送信する。モニタ部は、この応答パルスを受信することによって、トンランスポンダ部が正常であると判断する。一方、モニタ部は、所定の時間が経過しても、応答パルスを受信しない状態が連続すると、トランスポンダ部が異常であると判断する。モニタ部によってトランスポンダ部が異常と判断されると、他方のトランスポンダ部に切り替えるか、または、シャットダウンする。
【0008】
ここでトランスポンダ部は、質問パルス及び擬似質問パルスを受信すると、受信した質問パルス及び擬似質問パルスに対応する応答パルスの送信を終了するまで、不感時間となる。従って、トランスポンダ部は、次の質問パルス及び擬似質問パルスを不感時間内に受信しても、応答パルスを送信できない。ここで、擬似質問パルスが不感時間内に連続してトランスポンダ部に受信されると、モニタ部は応答パルスを連続して受信しない状態が起こる。この結果、トランスポンダ部が正常であっても異常と判定されることが起こる。
【0009】
このため、2個のモニタ部が、毎回、同じパルス間隔で擬似質問パルスを送信するように構成すると、一方のモニタ部が送信した擬似質問パルス信号によって生じた不感時間に、他方のモニタ部が擬似質問パルスを一度送信すると、他方のモニタ部からの擬似質問パルスは、連続して不感時間に送信されることになる。この結果、トランスポンダ部が異常であると誤って判定されることが多くなるといった問題があった。
【0010】
この問題を解決するために、各モニタ部が、毎回、不規則なパルス間隔で擬似質問パルスを送信する技術が知られている。この場合、各モニタ部は、この異なるパルス間隔を生成するためのランダムデータが記憶された記憶手段を備えている。ここで当然同じランダムデータによってパルス間隔を生成すると、2個のモニタ部が同じパルス間隔で擬似質問パルスを送信する。これを防ぐために、各モニタ部は、異なるランダムデータが記憶された2個の記憶手段(以下、第1記憶手段及び第2記憶手段という)をそれぞれ備えている。これにより、一方のモニタ部が第1記憶手段に記憶されたランダムデータによってパルス間隔を生成するとともに、他方のモニタ部が第2記憶手段に記憶されたランダムデータによりパルス間隔を生成する。これによって、2個のモニタ部が、異なるパルス間隔で擬似質問パルスを送信することができる。これにより、一方のモニタ部が、他方のモニタ部により生じた不感時間に連続して擬似質問パルスを送信することを抑制できる。この結果、正常なトランスポンダ部が誤って異常と判定されることを抑制できる。
【特許文献1】特開2001−249172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した距離測定装置では、2個のモニタ部を同じ構成にする必要があるため、各モニタ部に同じ2個の記憶手段を設けなくてはならない。このため、各モニタ部の構成が複雑になる。また、これらの記憶手段のいずれかを選択するための制御手段が必要となるために、更に構成が複雑になる。これらにより、距離測定装置の構成が複雑になるといった課題がある。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、構成を簡略化できる距離測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴に係る距離測定装置は、距離を測定する対象とパルスを送受信するトランスポンダ部と、第1ノイズを生じさせる第1ノイズ源と、第1ノイズに基づいて第1ランダム値を生成する第1ランダム値生成手段と、第1ランダム値に基づいて第1パルス間隔を生成する第1パルス間隔生成手段と、トランスポンダ部へ送信する第1擬似質問パルスを生成する第1擬似質問生成手段と、第1パルス間隔に基づいてトランスポンダ部へ第1擬似質問パルスを送信する第1送信手段と、第1擬似質問パルスに対してトランスポンダ部が応答した応答パルスに基づいてトランスポンダ部の状況をモニタする第1応答パルスモニタ部とを含む第1モニタ部と、第2ノイズを生じさせる第2ノイズ源と、第2ノイズに基づいて第2ランダム値を生成する第2ランダム値生成手段と、第2ランダム値に基づいて第2パルス間隔を生成する第2パルス間隔生成手段と、トランスポンダ部へ送信する第2擬似質問パルスを生成する第2擬似質問生成手段と、第2パルス間隔に基づいてトランスポンダ部へ第2擬似質問パルスを送信する第2送信手段と、第2擬似質問パルスに対してトランスポンダ部が応答した応答パルスに基づいてトランスポンダ部の状況をモニタする第2応答パルスモニタ部とを含む第2モニタ部とを具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各モニタ部がノイズ源から生じるノイズに基づいて不規則なパルス間隔を生成しているので、構成を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明を航空機と地上局との距離を測定するための距離測定装置に適用した第1実施形態による距離測定装置について説明する。図1は、第1実施形態による距離測定装置と航空機との関係を示す概略図である。図2は、第1実施形態による距離測定装置の全体構成を示すブロック図である。図3は、擬似質問制御回路の内部構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、距離測定装置1は、地上局2に設置される。距離測定装置1は、航空機3に設けられたインタロゲータ4と質問パルスP及び応答パルスPを送受信する。これにより、航空機3は、地上局2に設けられた距離測定装置1との距離を測定することができる。
【0017】
図2に示すように、距離測定装置1は、アンテナ11と、スイッチ回路12と、第1トランスポンダ部13と、第2トランスポンダ部14と、第1モニタ部15と、第2モニタ部16と、制御部17と、リモート装置18とを備えている。尚、以下の説明において、第1トランスポンダ部13が運転状態であって、第2トランスポンダ部14が待機状態であるとして説明する。
【0018】
スイッチ回路12は、ミキサーを含む。スイッチ回路12は、アンテナ11、トランスポンダ部13、14及びモニタ部15、16間のパルスの送受信を切り替える。また、スイッチ回路12は、制御部17からの切替信号SSによって、第1トランスポンダ部13及び第2トランスポンダ部14を運転状態と待機状態に切り替えるためのものである。
【0019】
第1トランスポンダ部13は、アンテナ11を介して、距離を測定する対象である航空機3のインタロゲータ4と質問パルスP及び応答パルスPを送受信するためのものである。
【0020】
第1トランスポンダ部13は、受信回路21と、応答回路22と、送信切替回路23と、送信回路24とを備えている。
【0021】
受信回路21は、航空機3のインタロゲータ4から送信された質問パルスPをアンテナ11及びスイッチ回路12を介して受信する。質問パルスPは、所定のパルス幅及び所定のパルス間隔を有するツインパルスである。受信回路21は、受信した質問パルスPを応答回路22へと出力する。
【0022】
応答回路22は、受信回路21から入力された質問パルスPを解析して、航空機3からの質問パルスPであるか否かを判定する。応答回路22は、入力されたパルスが質問パルスPであると判定した場合は、質問パルスPに対応した応答パルスPを送信切替回路23へと出力する。
【0023】
送信切替回路23は、応答回路22から応答パルスPが入力されると、第1トランスポンダ部13を送信状態に切り替えて、応答パルスPを送信回路24へと出力する。
【0024】
送信回路24は、送信切替回路23から応答パルスPが入力されると、スイッチ回路12及びアンテナ11を介して航空機3に応答パルスPを送信する。応答パルスPは、所定のパルス幅及び所定のパルス間隔を有するツインパルスである。
【0025】
ここで、受信回路21で質問パルスPが受信されてから送信回路24が応答パルスPを送信するまでのディレイ時間Dtは50μsである(図4参照)。受信回路21に質問パルスPが受信されてから送信回路24が応答パルスPの送信を終了するまでは、不感時間となる。この不感時間Ntは100μsである(図4参照)。
【0026】
また、後述する第1モニタ部15及び第2モニタ部16が第1トランスポンダ部13へと送信する擬似質問パルスPP、PPに対しても、第1トランスポンダ部13は、上述した質問パルスPと同様に、応答パルスPを生成して送信する。
【0027】
第2トランスポンダ部14は、上述した第1トランスポンダ部13と同じ構成を有するので説明を省略する。第2トランスポンダ部14は、待機状態である。待機状態では、質問パルスPが、スイッチ回路12から第2トランスポンダ部14に入力されることはない。第2トランスポンダ部14は、第1トランスポンダ部13が異常と判定された場合には、制御部17によって運転状態に切り替えられる。
【0028】
第1モニタ部15は、運転状態のトランスポンダ部13(14)をモニタするためのものである。第1モニタ部15は、サーキュレータ31aと、受信回路32aと、応答パルスモニタ回路33aと、擬似質問制御回路34aと、送信回路35aとを備えている。
【0029】
サーキュレータ31aは、トランスポンダ部13(14)から送信された応答パルスPを、受信回路32aへと出力する。また、サーキュレータ31aは、スイッチ回路12を介して、送信回路35aが送信した擬似質問パルスPPをトランスポンダ部13(14)へと送信する。
【0030】
受信回路32aは、トランスポンダ部13(14)から送信された応答パルスPを受信して、応答パルスモニタ回路33aへと出力する。
【0031】
応答パルスモニタ回路33aは、擬似質問パルスPPに対して運転状態のトランスポンダ部13(14)が応答した応答パルスPに基づいてトランスポンダ部13(14)の状況をモニタする。具体的には、応答パルスモニタ回路33aは、受信回路32aから入力されたパルスが応答パルスPか否かを判定する。応答パルスモニタ回路33aは、入力されたパルスが応答パルスPでない場合やパルスが入力されない場合は、トランスポンダ部13(14)の異常を報せるためのトランスポンダアラームAlを制御部17へと出力する。また、応答パルスモニタ回路33aは、0.5msの間隔(以下、基準タイミング間隔ST)で定期的に基準タイミングパルスSTPを擬似質問制御回路34aへと出力する。基準タイミングパルスSTPは、擬似質問パルスPPを送信するためのトリガーとなる。
【0032】
擬似質問制御回路34aは、航空機3から送信される質問パルスPと同じツインパルスからなる擬似質問パルスPPを生成して、送信回路35aへと出力する。擬似質問制御回路34aは、1秒間(=単位時間T)当たりに2000個(=単位時間T当たりに送信する擬似質問パルスの数N)の擬似質問パルスPPを生成して出力する。即ち、擬似質問制御回路34aは、基準タイミング間隔STである0.5msに1個の割合で擬似質問パルスPPを出力する。ここで、擬似質問制御回路34aの回路動作周波数は、10MHzである。擬似質問制御回路34aの1クロックは、0.1μsである。従って、基準タイミング間隔STの0.5msをクロック数に変換したクロック数は、5000クロックである。
【0033】
以下、図3を参照して、より具体的に擬似質問制御回路34aを説明する。
【0034】
図3に示すように、擬似質問制御回路34aは、ノイズ源51aと、AD変換器52aと、ランダム値生成回路53aと、増幅回路54aと、パルス間隔生成回路55aと、擬似質問生成回路56aとを備えている。
【0035】
ノイズ源51aは、ツェナーダイオード61aを有する。ノイズ源51aは、このツェナーダイオード61aに15Vの電圧が印加されることによって、ノイズAnを生じさせて、AD変換器52aへと出力する。
【0036】
AD変換器52aは、ノイズ源51aから入力されたアナログのノイズAnをデジタルのノイズDnに変換する。尚、AD変換器52aは、別に設けられているAD変換器の余ったチャネルを使用してもよい。
【0037】
ランダム値生成回路53aは、デジタルに変換されたノイズDnからランダム値Raを生成する。ランダム値Raは、「0≦Ra≦1」に設定される。ここで、ノイズ源51aからのノイズAnが小さい場合は、増幅回路54aによってランダム値Raが増幅される。
【0038】
増幅回路54aには、8bitの擬似ランダム値が記憶されている。増幅回路54aは、ランダム値Raが3bitの際に、ランダム値Raに8bitの擬似ランダム値を足すことによって、ランダム値Raを11bitに増幅する。
【0039】
パルス間隔生成回路55aでは、擬似質問パルスPPを生成する毎に、入力されたランダム値Raに基づいてパルス間隔Intを生成する。ここでいうパルス間隔Intとは、基準タイミングパルスSTPが出力されてから擬似質問パルスPPの送信開始までの時間のことである。パルス間隔Intの算出方法は、ランダム値Ra、最大パルス間隔Imax、最小パルス間隔Iminを用いた以下の式(1)による。
Int=Ra×(Imax−Imin)+Imin ・・・(1)
ここで、最小パルス間隔Iminは、トランスポンダ部13(14)が質問パルスP及び擬似質問パルスPP、PPを受信してから応答パルスPの送信が完了するまでの不感時間Ntと同じである。最大パルス間隔Imaxは、基準タイミング間隔ST(=0.5ms)と同じである。これにより、パルス間隔Intは、最小パルス間隔Imin以上、最大パルス間隔Imax以下となる。従って、擬似質問パルスPPは、基準タイミングパルスSTPが出力されてから最小パルス間隔Imin以上、最大パルス間隔Imax以下の間に送信される。
【0040】
擬似質問生成回路56aは、トランスポンダ部13(14)へと送信するための擬似質問パルスPPを生成する。擬似質問パルスPPは、航空機3のインタロゲータ4から送信されるツインパルスと同じパルス幅及びパルス間隔を有する。擬似質問生成回路56aは、送信回路35aへと擬似質問パルスPPを出力する。ここで、擬似質問生成回路56aは、基準タイミングパルスSTPが出力されてからパルス間隔Intの後に送信回路35aが擬似質問パルスPPを送信するように、擬似質問パルスPPを出力する時間を調整する。
【0041】
送信回路35aは、入力された擬似質問パルスPPをサーキュレータ31a及びスイッチ回路12を介して運転状態のトランスポンダ部13(14)へと送信する。送信回路35aは、基準タイミングパルスSTPが入力されてからパルス間隔Intが経過した後、擬似質問パルスPPを送信する。
【0042】
第2モニタ部16は、サーキュレータ31bと、受信回路32bと、応答パルスモニタ回路33bと、擬似質問制御回路34bと、送信回路35bとを備えている。尚、第2モニタ部16の各構成31b〜35bは、第1モニタ部15の構成31a〜35aと同じ構成なので説明を省略する。
【0043】
また、擬似質問制御回路34bは、ツェナーダイオード61bを含むノイズ源51bと、AD変換器52bと、ランダム値生成回路53bと、増幅回路54bと、パルス間隔生成回路55bと、擬似質問生成回路56bとを備えている。尚、擬似質問制御回路34bの各構成51b〜56bは、擬似質問制御回路34aの構成41a〜46aと同じ構成なので説明を省略する。
【0044】
制御部17は、距離測定装置1の制御全般を司る。制御部17は、両モニタ部15、16の応答パルスモニタ回路33a、33bからトランスポンダアラームAl、Alが連続して入力されると運転状態のトランスポンダ部13(14)が異常であると判定する。
ここで、第1トランスポンダ部13が運転状態である場合、制御部17は、スイッチ回路12を介して、第2トランスポンダ部14を運転状態に切り替えるとともに、第1トランスポンダ部13を待機状態に切り替える。また、制御部17は、トランスポンダ部13、14及びモニタ部15、16へ動作制御信号CSを送信して、それぞれの動作を制御する。
【0045】
リモート装置18は、制御部17から送られるステータス信号に基づいて状況を表示装置に表示する。オペレーターは、表示された状況に基づいて、リモート装置18を操作して、制御部17へとコントロール信号を送る。
【0046】
次に、上述した第1実施形態による距離測定装置1の動作を説明する。
【0047】
最初に、運転状態である第1トランスポンダ部13による距離測定の動作について説明する。
【0048】
まず、航空機3のインタロゲータ4から質問パルスPが送信される。この質問パルスPは、アンテナ11によって受信される。アンテナ11で受信された質問パルスPは、スイッチ回路12を介して、運転状態の第1トランスポンダ部13の受信回路21に受信される。受信回路21は、応答回路22へと質問パルスPを出力する。応答回路22は、受信回路21から入力されたパルスが航空機3から送信された質問パルスPか否かを判定する。応答回路22は、航空機3から送信された質問パルスPであると判定した場合は、質問パルスPに対応する応答パルスPを生成して、送信切替回路23へと出力する。
【0049】
送信切替回路23は、送信状態に切り替えるとともに、応答パルスPを送信回路24へと出力する。送信回路24は、スイッチ回路12及びアンテナ11を介して、応答パルスPを航空機3のインタロゲータ4へと送信する。ここで、送信回路24は、受信回路21によって質問パルスPが受信されてからディレイ時間Dtが経過した時に、応答パルスPを送信する。航空機3は、応答パルスPを受信する。航空機3は、質問パルスPを送信してから応答パルスPを受信するまでの時間から、地上局2までの距離を算出する。
【0050】
次に、運転状態の第1トランスポンダ部13をモニタ部15、16によってモニタする動作について、図2〜図4を参照して説明する。図4は、2個のモニタ部から送信される擬似質問パルスと応答パルスとの関係を示す図である。
【0051】
以下の説明において、第1モニタ部15から送信される擬似質問パルスをPP1n(n=1,2・・)とし、パルス間隔をInt1n(n=1,2・・)とする。第2モニタ部16から送信される擬似質問パルスをPP2n(n=1,2・・)とし、パルス間隔をInt2n(n=1,2・・)とする。擬似質問パルスPP1n、PP2nに対する応答パルスをP2n(n=1,2・・)とする。
【0052】
まず、第1モニタ部15の擬似質問制御回路34aにおける動作から説明する。ノイズ源51aで生じたアナログのノイズAnが、AD変換器52aに入力されてデジタルのノイズDnに変換される。次に、AD変換器52aが、ノイズDnをランダム値生成回路53aへと出力する。ランダム値生成回路53aは、ノイズDnに基づいてランダム値Ra(0≦Ra≦1)を生成する。ここでノイズAnが小さく、ランダム値Raが小さい場合は、増幅回路54aによってランダム値Raが増幅される。ランダム値生成回路53aは、生成されたランダム値Raをパルス間隔生成回路55aへと出力する。パルス間隔生成回路55aは、上述した式(1)にランダム値Raを代入して、パルス間隔Int11を生成する。パルス間隔生成回路55aは、パルス間隔Int11を擬似質問生成回路56aへと出力する。擬似質問生成回路56aは、擬似質問パルスPP11を生成する。擬似質問生成回路56aは、基準タイミングパルスSTPが出力されてからパルス間隔Intの後に送信回路35aが擬似質問パルスPPを出力するように、時間を調整して、擬似質問パルスPP11を送信回路35aへと出力する。
【0053】
次に、第1モニタ部15の送信回路35aは、基準タイミングパルスSTPが出力されてからパルス間隔Int11が経過した後、サーキュレータ31a及びスイッチ回路12を介して、擬似質問パルスPP11を第1トランスポンダ部13へと送信する。
【0054】
次に、第1トランスポンダ部13は、距離測定の時と同様の動作によって、擬似質問パルスPP11が受信されてからディレイ時間Dtが経過した後、擬似質問パルスPP11に対応する応答パルスP21を第1モニタ部15へと送信する。応答パルスP21は、サーキュレータ31a及び受信回路32aを介して、応答パルスモニタ回路33aに入力される。応答パルスモニタ回路33aは、擬似質問パルスPP11に対応する応答パルスP21が入力されたので、制御部17にトランスポンダアラームAlを出力しない。応答パルスモニタ回路33aは、擬似質問制御回路34aへと基準タイミングパルスSTPを出力する。
【0055】
一方、第2モニタ部16でも同様に、擬似質問制御回路34bが、パルス間隔Int21及び擬似質問パルスPP21を生成する。そして、擬似質問制御回路34bが、擬似質問パルスPP21を送信回路35bへと出力する。次に、送信回路35bは、基準タイミングパルスSTPが出力されてからパルス間隔Int21が経過した後、第1トランスポンダ部13へと擬似質問パルスPP21を送信する。ここで、擬似質問パルスPP21は、第1モニタ部15からの擬似質問パルスPP11により生じた不感時間Ntに第1トランスポンダ部13に受信されているとする。この場合、第1トランスポンダ部13は、第2モニタ部16へ応答パルスPを送信しない。このため、応答パルスモニタ回路33bには、応答パルスPが入力されないので、応答パルスモニタ回路33bは、制御部17へとトランスポンダアラームAlを出力する。
【0056】
次に、基準タイミングパルスSTPが入力された第1モニタ部15の擬似質問制御回路34aは、パルス間隔Int12及び擬似質問パルスPP12を生成する。そして、擬似質問制御回路34aは、擬似質問パルスPP12を送信回路35aへと出力する。この後、送信回路35aは、基準タイミングパルスSTPが入力されてからパルス間隔Int12の後、擬似質問パルスPP12を第1トランスポンダ部13へと送信する。
【0057】
一方、第2モニタ部16では、トランスポンダアラームAlを制御部17に出力した後、基準タイミングパルスSTPを擬似質問制御回路34bへと出力する。これにより、擬似質問制御回路34bは、式(1)に基づいてパルス間隔Int22及び擬似質問パルスPP22を生成する。そして、擬似質問制御回路34bが、擬似質問パルスPP22を送信回路35bへと出力する。そして、送信回路35bは、基準タイミングパルスSTPが入力されてからパルス間隔Int22の後、擬似質問パルスPP22を第1トランスポンダ部13へと送信する。ここで、異なるノイズ源51a、51bから生じるノイズAnに基づいて生成されるパルス間隔Int1n、Int2nは、毎回ほとんどが異なる。これにより、前回と同様に、擬似質問パルスPP22が、擬似質問パルスPP12により生じた不感時間Ntに第1トランスポンダ部13に受信される確率は非常に低い。従って、第2モニタ部16は、応答パルスP23を受信するので、応答パルスモニタ33bがトランスポンダアラームAlを制御部17へと出力することなく処理を継続する。
【0058】
制御部17は、トランスポンダアラームAlが連続して入力されないので、第1トランスポンダ部13が正常であると判定する。ここで、パルス間隔Int22が非常に大きく、応答パルスP23が次の基準タイミングパルスSTP(STP)以降に第2モニタ部16に受信されたとする。即ち、第1トランスポンダ部13の不感時間Ntが、次の基準タイミングパルスSTP(STP)以降まで継続しているとする。
【0059】
この後、第1モニタ部15は、基準タイミングパルスSTPからパルス間隔Int13の後、擬似質問パルスPP13を第1トランスポンダ部13へと送信する。ここで、上述した式(1)から明らかなように、パルス間隔Int13は、不感時間Nt(=最小パルス間隔Imin)よりも大きくなる。従って、擬似質問パルスPP13が、第2モニタ部16から送信された擬似質問パルスPP22によって生じた不感時間Ntに第1トランスポンダ部13に受信されることはない。従って、第1トランスポンダ部13は、応答パルスP24を第1モニタ部15へと送信する。
【0060】
この後、第2モニタ部16は、パルス間隔Int23で擬似質問パルスPP23を第1トランスポンダ部13へと送信する。そして、第1トランスポンダ部13は、応答パルスP25を第2モニタ部16へと送信する。
【0061】
以後、これらの処理が繰り返されて、第1モニタ部15及び第2モニタ部16による第1トランスポンダ部13のモニタが継続される。
【0062】
上述したように第1実施形態による距離測定装置1では、異なるパルス間隔Int、Intが擬似質問パルスPP、PPを送信する毎に生成されている。このため、第1モニタ部15及び第2モニタ部16から送信される擬似質問パルスPP、PPが互いの不感時間Ntに第1トランスポンダ部13に連続して受信されることを低減できる。この結果、正常なトランスポンダ部13(14)を誤って異常と判定することを抑制できる。ここで、パルス間隔Int、Intは、ノイズ源51a、51bから生じるノイズAnから生成している。このため、距離測定装置1の構成を簡略化することができる。
【0063】
また、式(1)に示すようにパルス間隔Int、Intを不感時間Nt(=最小パルス間隔Imin)よりも大きくすることによって、モニタ部15、16が送信した擬似質問パルスPP1n、PP2nにより生じた不感時間Ntに、次の基準タイミングパルスSTP(STP)以降の擬似質問パルスPP1m、PP2m(m=n+1)が送信されることがない。これにより、トランスポンダ部13(14)が正常な場合に、応答パルスPが応答される確率をより向上させることができる。
【0064】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。以下、上記実施形態を一部変更した変更形態について説明する。
【0065】
例えば、上述した実施形態では、航空機と地上局との距離を測定するための距離測定装置に本発明を適用したが、他の距離を測定するための距離測定装置に本発明を適用してもよい。一例として、自動車と自動車との距離を測定するための距離測定装置等に本発明を適用してもよい。
【0066】
また、パルス間隔生成回路によるパルス間隔の生成方法としては、
パルス間隔Int=ランダム値Ra×最大パルス間隔Intmax
によって算出してもよい。
【0067】
また、増幅回路によるランダム値の増幅方法は、適宜変更可能である。例えば、以下の式(a)〜(d)によってランダム値を増幅してもよい。
(a)擬似ランダム値×ノイズ値
(b)擬似ランダム値+ノイズ値×256
(c)擬似ランダム値−ノイズ値×256
(d)擬似ランダム値×ノイズ値
更に、ノイズ源のノイズが充分に大きい場合は、増幅回路を省略してもよい。
【0068】
また、ノイズ源のツェナーダイオード以外の半導体素子やその他のノイズ源を適用してもよい。一例として、電源を直接AD変換器に接続してもよい。
【0069】
また、擬似質問パルスを1秒間に2000回出力するように構成したが、これは一例であり、擬似質問パルスの1秒間の出力回数は、1回〜60回等に適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1実施形態による距離測定装置と航空機との関係を示す概略図である。
【図2】第1実施形態による距離測定装置の全体構成を示すブロック図である。
【図3】擬似質問制御回路の内部構成を示すブロック図である。
【図4】2個のモニタ部から出力される擬似質問パルスと応答パルスとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 距離測定装置
2 地上局
3 航空機
4 インタロゲータ
11 アンテナ
12 スイッチ回路
13 第1トランスポンダ部
14 第2トランスポンダ部
15 第1モニタ部
16 第2モニタ部
17 制御部
18 リモート装置
21 受信回路
22 応答回路
23 送信切替回路
24 送信回路
31a、31b サーキュレータ
32a、32b 受信回路
33a、33b 応答パルスモニタ回路
34a、34b 擬似質問制御回路
35a、35b 送信回路
51a、51b ノイズ源
52a、52b AD変換器
53a、53b ランダム値生成回路
54a、54b 増幅回路
55a、55b パルス間隔生成回路
56a、56b 擬似質問生成回路
61a、61b ツェナーダイオード
Al、Al トランスポンダアラーム
An ノイズ
Dn ノイズ
Dt ディレイ時間
max 最大パルス間隔
min 最小パルス間隔
Int、Int パルス間隔
Nt 不感時間
質問パルス
応答パルス
PP、PP 擬似質問パルス
Ra ランダム値
STP、STP 基準タイミングパルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離を測定する対象とパルスを送受信するトランスポンダ部と、
第1ノイズを生じさせる第1ノイズ源と、前記第1ノイズに基づいて第1ランダム値を生成する第1ランダム値生成手段と、前記第1ランダム値に基づいて第1パルス間隔を生成する第1パルス間隔生成手段と、前記トランスポンダ部へ送信する第1擬似質問パルスを生成する第1擬似質問生成手段と、前記第1パルス間隔に基づいて前記トランスポンダ部へ前記第1擬似質問パルスを送信する第1送信手段と、前記第1擬似質問パルスに対して前記トランスポンダ部が応答した応答パルスに基づいて前記トランスポンダ部の状況をモニタする第1応答パルスモニタ部とを含む第1モニタ部と、
第2ノイズを生じさせる第2ノイズ源と、前記第2ノイズに基づいて第2ランダム値を生成する第2ランダム値生成手段と、前記第2ランダム値に基づいて第2パルス間隔を生成する第2パルス間隔生成手段と、前記トランスポンダ部へ送信する第2擬似質問パルスを生成する第2擬似質問生成手段と、前記第2パルス間隔に基づいて前記トランスポンダ部へ前記第2擬似質問パルスを送信する第2送信手段と、前記第2擬似質問パルスに対して前記トランスポンダ部が応答した応答パルスに基づいて前記トランスポンダ部の状況をモニタする第2応答パルスモニタ部とを含む第2モニタ部と
を具備することを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記第1及び第2パルス間隔生成手段は、
ランダム値Ra、最大パルス間隔Imax、最小パルス間隔Iminを用いて
Int=Ra×(Imax−Imin)+Imin
により前記第1及び第2パルス間隔Intを算出することを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記最小パルス間隔Iminは、前記トンランスポンダ部が、前記擬似質問パルスを受信してから前記応答パルスの送信を終了するまでの不感時間であることを特徴とする請求項2に記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記最大パルス間隔Imaxは、単位時間をTとし、単位時間当たりに送信する前記擬似質問パルスの数をNとすると、
max=T/N
であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記第1モニタ部は、第1ランダム値を増幅する増幅手段を具備していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−60499(P2010−60499A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228416(P2008−228416)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】