説明

距離測定装置

【課題】本発明は、複数ビームを使用した3角測量方式による距離測定装置において、複数ビームの山部のプロファイルの非対称性による測定精度のバラツキを軽減した距離測定装置を提供する。
【解決手段】レーザビームを偏向して、複数点を時分割で同じ時間、且つ、同じ間隔で測定物表面を照射する偏向ビーム生成部13とレーザビームの反射光を1つの走査信号として、レーザビームの偏向タイミングと同期して受光するCCDカメラ部11と、偏向ビーム生成部とCCDカメラ部とを固定する検出基盤部12とを備える検出部1と、CCDカメラ部の出力を一定に制御するAGC21と、当該出力のビームプロファイルの形状と位置の変化から、測定物10表面と検出部1との距離を求める演算部22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する鋼板などとの距離を測定する距離測定装置に係り、特に、レーザ光を用いた3角測量方式による距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を用いた3角測量方式の距離測定装置が、高速で移動する鋼板の厚さや形状の測定にも広く応用されている。
【0003】
しかしながら、測定物表面の反射率や散乱特性の変化によって、反射レーザ光の強さや位置が正確に求まらないため、高精度な距離測定用としては不向きであった。
【0004】
そのため、光源から複数の線状ビームを送出し、測定対象に形成された複数の線状ビームに対応した像をCCD等の多分割光検出素子により受光し、多分割光検出素子が受光した複数の線状ビームに対応した電気信号に基づいて、予め決められた関数により積和演算を行ない、その積和演算の結果から像の位置を近似する関数を求め、測定表面の反射率のばらつきやスペックルの影響を軽減して、測定精度を上げようとする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、この方法では、積和計算が複雑になること、また、マルチビームの山の部分の波形が変化しやすいため、多分割光検出素子の出力信号のパターンの谷部のプロフィールを曲線近似して、その極小値を求めマルチビームの山の部分の影響を除くようにした技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3245003号公報
【特許文献2】特許第3966804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示された方法によれば、谷部のビームプロフィールを曲線で近似し、その極小値を求めるようにしているので、特許文献1に開示された積和計算による方法に比べて、距離校正点毎の関数演算が簡素化されるので、校正が容易でその作業も短縮できる。
【0008】
また、本発明者らのテストによれば谷の部分のプロフィールは、照射するビームのパワーを強くして、谷のプロフィールが雑音の影響を受けづらくした光学系とすれば、山の部分のプロフィールよりも測定値のばらつきが少ないことが分かってきた。
【0009】
しかしながら、従来の複数ビームの生成は、格子の回折像を利用した複数スリットを用いたものであるため、中心のビームと左右のビームのパワーが異なるため、図4(a)に示すようにその谷部Aの左右のプロフィールは、中心軸に対して非対称な形状となる。
【0010】
例えば、その詳細について図5を参照して説明する。図5は、多分割光検出素子の谷部Aの出力信号の拡大図で、実線で示す出力信号に対して、破線で示すようにその出力が半減した場合の極小点が、Pm1からPm2へ、Δe変化する様子を示したものである。
【0011】
即ち、最小値のビットA4(点m2)に対して、所定の値α以上の閾値Vrを越える左右のビットA1(点m1)、ビット7(点m3)の3点のデータから求めた極小値の位置Pm1は、破線のような半減した出力信号となった場合、夫々、点n2、点n1及び点n3から求めた極小点Pm2に変化する。
【0012】
そのため、多分割光検出素子数での分解能以上の高精度な距離測定を行う場合、測定表面の反射率のばらつきやスペックルの影響を受けやすく、精度の向上が図れない問題があった。
【0013】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、複数ビームを使用した3角測量方式による距離測定装置において、複数ビームの山部のプロファイルの非対称性による測定精度のバラツキを軽減した距離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明による距離測定装置は、レーザビームを偏向して、複数点を時分割で同じ時間、且つ、同じ間隔で測定物表面を照射する偏向ビーム生成部と、照射された前記レーザビームの反射光を1つの走査信号として、前記レーザビームの偏向タイミングと同期して受光するCCDカメラ部と、前記測定物表面に対して、前記偏向ビーム生成部と前記CCDカメラ部とを、予め設定される光学的位置に固定する検出基盤部とを備える検出部と、前記CCDカメラ部の出力を一定に制御するAGCと、当該出力の谷部の形状の変化から、前記測定物表面と前記検出部との距離を求める演算部とを備える距離演算部とを備え、レーザビームを偏向して、複数点を時分割で同じ時間、且つ、同じ間隔で測定物表面を照射して、その受光信号のビームプロファイルの形状と位置の変化から距離を求めるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本発明の距離測定装置は、複数ビームを使用した3角測量方式による距離測定装置において、複数ビームの山部のプロファイルの非対称性による測定精度のバラツキを軽減した距離測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示す距離測定装置の構成図。
【図2】偏向光学部の構成図。
【図3】本発明の実施形態の動作を説明するためのタイムチャート。
【図4】本発明の実施形態の効果を説明するための図。
【図5】従来の複数ビーム方式の問題点を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本実施形態の構成図である。本実施形態の距離測定装置100は、検出部1と、距離演算部2とを備える。
【0018】
検出部1は、レーザビームを偏向して、複数点を時分割で同じ時間、且つ、同じ間隔で測定物表面10を照射する偏向ビーム生成部13と、照射されたレーザビームの反射光を、予め設定される受光角θrで受光し、1つの走査信号としてレーザビームの偏向タイミングと同期して受光するCCDカメラ部11と、測定物表面10に対して、偏向ビーム生成部13とCCDカメラ部11とを、予め設定される光学的位置に固定する検出基盤部12とを備える。
【0019】
距離演算部2は、検出部1とCCDカメラ部11の出力を一定に制御するAGC21と、当該出力のビームプロファイルの形状と位置の変化から、測定物10表面と検出部1との距離を求める演算部22とを備える。
【0020】
次に、各部の詳細構成について説明する。CCDカメラ部11は、測定物10表面からの反射光を受光して、予め設定される分解能のビット数を備えるライン走査型のCCDでCCDカメラ出力信号Soiを生成するCCDカメラ11aと、CCDカメラ出力信号Soiをデジタル信号に変換するADC11bとを備える。
【0021】
偏向ビーム生成部13は、レーザビームを偏向する複数の周波数のドライバー信号fiを生成するドライバー部13aと、ドライバー信号fiに対応してレーザビームを偏向するとともに、予め定めるビームサイズに成形し測定物10表面に照射する偏向光学部13bと、AGC21で生成されるカメラ走査信号Ssに同期して、レーザビームを点滅させる照射制御信号S3T、及び複数の周波数のドライバー信号fiを設定する偏向設定信号Viとを生成しさらに、ドライバー部13aで生成されたドライバー信号の周波数をモニタする偏向ビーム制御部13cと、を備える。
【0022】
次に、この偏向光学部13bの詳細構成について、図2を参照して説明する。偏向光学部13bは音響光学素子13b2と、当該音響光学素子13b2に対して、直線偏向レーザビームを予め設定されるビームサイズ、且つ、0次回折光は除去し、1次回折光が分離抽出可能な入射角θiで照射するレーザ光源部13b1と、入射した1次回折光を供給されるドライバー信号fiで偏向した音響光学素子13b2からの出力光を受光して、測定物表面10に予め設定されるビームサイズで結像させるコリメータ部13b3とを備える。
【0023】
さらに詳細には、使用するレーザビームの光源は、可視光の半導体レーザを使用し、音響光学素子13b2は、この使用するレーザビームの波長、偏向、パワー密度等のレーザパラメータにより、予め定める偏向角度Δθが得られるものが選択される。
【0024】
例えば、可視光の領域では、ガリウムリン等の市販の音響光学素子13b2が使用され、音響光学素子13b2には、測定物10表面で複数点のレーザビームが、予め設定される間隔ΔPで偏向されるような、100〜300MHzの周波数帯域のドライバー信号fiが供給される。
【0025】
この時、測定物10表面でのレーザビームの位置設定は、例えば、複数点P1、P2,P3のピーク位置が間隔ΔPとなるように、偏向角度Δθiピッチで設定される。
【0026】
間隔ΔPは、図3の最下部に示すカメラ出力信号Soiに示すように、ガウス分布したプロフィールのレーザビームの出力信号が、ピーク位置の1/eの位置で重なり合う位置に設定しておく。
【0027】
このカメラ出力信号Soiは、谷部の信号レベルが雑音の影響を受けにくい値以上で、且つ、谷部のプロフィールの形状の特徴が距離測定の範囲内で維持される値に適宜調整し、位置検出分解能な状態に設定する。
【0028】
この調整は、特許文献1、及び2の開示されたマルチビーム成形の場合、回折格子によるビーム成形では、複数のピークのプロフィール全体が、ガウス分布状となるので、谷部の信号レベルとその谷部プロフィールを調整することが出来なかったが、本構成に信号レベルは、レーザビームのパワーとAGC21に設定により、また、ビームの間隔はドライバー信号fiを微調整することで独立して調整できる。
【0029】
また、3つのピーク値をもつビームプロファイルの2つの谷部は、特許文献1に開示された方法の場合、回折格子により生成された複数の谷部がそのピーク位置の中心軸に対して非対称な形状であったが、本実施例による方法では対称な形状とできる特徴が有る。
【0030】
このように構成された距離測定装置100の検出部1は、レーザビームを偏向して、複数点を時分割で同じ時間、且つ、同じ間隔(オーバーラップ量)として測定物10表面を照射することが出来る。
【0031】
また、距離演算部2では、対称なビームプロファイルの谷部の形状を関数で近似し、近似された関数の極小点を求めて距離を求めるので、測定物10表面の反射率のばらつきやスペックルがあっても、近似関数の対称性が維持されやすいので極小点の位置変化が少なくなる。
【0032】
次に、図3を参照して、距離演算装置100の動作を説明する。図3は、図1に示す距離演算装置100の各部の信号をタイムチャートで示したものである。CCDカメラ11aで検出される信号は、走査周期信号Ssの周期時間Tsiで決定されるチャージ時間で制御される。
【0033】
この周期時間Tsiは、カメラ部11bの出力を設定し、ADC11bの出力を一定に制御するAGC21で生成される。
【0034】
ドライバー部13aで生成されるドライバー信号fiは、この走査周期信号Ssに同期して、予め定める同じ照射時間Tで、予め設定される周波数のドライバー信号f1、f2、f3を音響光学素子13b2に時分割で供給する。
【0035】
このドライバー信号fiは、偏向ビーム制御部13cで生成する偏向設定位置信号Viで予め設定された電圧信号をドライバー部13aに供給し、ドライバー部13aでは、この偏向設定位置信号Viをその電圧値に対応する周波数のドライバー信号fiに変換する。
【0036】
生成されたドライバー信号fiの周波数は、この偏向ビーム制御部13cに帰還され、その周波数とCCDカメラ11aのCCDカメラ出力信号Soiを観測して、ビーム間隔ΔPの値が設定値となるような周波数に偏向設定位置信号Viを微調整して設定する。
【0037】
レーザ光源部13b1のレーザビームの照射時間は、偏向ビーム制御部13cで生成する走査周期信号Ssに同期した照射制御信号S3Tによって設定し、偏向設定位置信号Viは走査周期信号Ssに同期したパルス幅信号として、時間Tで設定する。
【0038】
即ち、CCDカメラの出力信号Soiは、走査周期信号Ssで設定される周期Tsiの時間をチャージ時間とし、1周期遅れで周期Tsiに影響を与えないように高速のクロック信号Ckで読み出される。
【0039】
次に、このように構成された距離測定装置100の位置検出における効果について図4を参照して説明する。図4は、図5で説明した特許文献2に示す方法での位置検出と対比して説明するための図である。
【0040】
図4に示すように、CCDカメラ11aの出力信号Soiの複数のビームプロファイルは、同じ形状で軸対称となる。
【0041】
したがって、特許文献2に示す方法と同様の方法で、谷部とその近傍の左右2点を結ぶ曲線からその極小値を求めて位置検出を行う場合、実線で示すCCDカメラ11aのCCDカメラ出力信号Soiの各ビット(A1〜A8)の出力信号に対して、破線で示すようにその出力が半減した場合の極小点を示したものである。
【0042】
即ち、最小値のビットA5(点m2)に対して、所定の値α以上の閾値Vrを越える左右のビットA2(点m1)、ビットA7(点m3)の3点のデータから求めた極小値の位置Pmは、破線のような半減した出力信号となった場合、夫々、ビットA5(点n2)、ビットA1(点n1)及びビットA8(点n3)から求めた極小点Pmの位置は変化しない。
【0043】
そのため、CCDカメラ11aの素子数の分解能以上の高精度な距離測定を行う場合、従来の測定では、ビームプロファイルが非軸対称であること、さらに、その最小値も雑音でばらつきが多いため、測定物10表面の反射率のばらつきやスペックルの影響を受けやすかったが、本方式の場合、ビームプロファイルが軸対称であること、さらに、その最小値は雑音の影響を受けにくいレベルに設定されることから、測定物表面の反射率のばらつきやスペックルの影響を受けにくくなり、ビット分解能以上の距離測定精度の向上が図れる。
【0044】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本実施形態は、複数のビームプロファイルを、音響光学素子を使用して時分割で位置を変更し、その出力をCCDカメラで同期して検出するものであれば良く、谷部の形状とその位置の変化から距離を求める場合だけでなく、山部の形状とその位置の変化から距離を求める場合にも適用することが出来ることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0045】
1 検出部
2 距離演算部
10 測定物
11 CCDカメラ部
11a CCDカメラ
11b ADC
12 検出基盤部
13 偏向ビーム生成部
13a ドライバー部
13b 偏向光学部
13b1 レーザ光源部
13b2 音響光学素子
13b3 コリメータ部
21 AGC
22 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを偏向して、複数点を時分割で同じ時間、且つ、同じ間隔で測定物表面を照射する偏向ビーム生成部と、照射された前記レーザビームの反射光を1つの走査信号として、前記レーザビームの偏向タイミングと同期して受光するCCDカメラ部と、前記測定物表面に対して、前記偏向ビーム生成部と前記CCDカメラ部とを、予め設定される光学的位置に固定する検出基盤部とを備える検出部と、
前記CCDカメラ部の出力を一定に制御するAGCと、当該出力の谷部の形状の変化から、前記測定物表面と前記検出部との距離を求める演算部とを備える距離演算部と
を備え、
レーザビームを偏向して、複数点を時分割で同じ時間、且つ、同じ間隔で測定物表面を照射して、その受光信号のビームプロファイルの形状と位置変化から距離を求めるようにしたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記偏向ビーム生成部は、音響光学素子と、当該音響光学素子に、直線偏向されたレーザビームを予め設定されるビームサイズ、且つ、1次回折光が分離可能な入射角で照射するレーザ光源部と、当該音響光学素子で偏向された一次回折光を受光して、前記測定物表面に結像させるコリメータ部とを備える偏向光学部と、
前記音響光学素子に、予め定める複数の周波数を生成するドライバー信号を等時間印加するドライバー部と、
前記レーザ光源部から照射するレーザビームの点滅を前記CCDカメラ部の走査周期信号に同期して制御する照射制御信号を生成して前記レーザ光源部に印加し、前記複数の周波数は、前記レーザビームが前記測定物表面において同じ間隔となるように設定する偏向設定信号を前記走査周期信号に同期して前記ドライバー部に送り、さらに、前記ドライバー部の出力周波数をモニタする偏向ビーム制御部と
を備える請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記距離演算部は,前記CCDカメラ部の出力のビームプロファイルの谷部の形状を所定の関数で近似し、近似された関数の極小点を求め,この極小点の位置に対応する距離を演算によって求めるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127868(P2012−127868A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280959(P2010−280959)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】