説明

路面状態測定システム及び路面状態測定装置

【課題】 舗装路面上の複数の測線について測定を行い、路面のテクスチャ評価の信頼性向上を図った路面状態測定システムを提供する。
【解決手段】 路面状態測定システム1は、路面までの距離を計測するレーザ変位計11と、レーザ変位計11を測線に沿って走査させるステッピングモータ120A、レール12A、12B、ボールネジ121A、取付部材13A、13Bと、測線に直交する方向にレーザ変位計11を移動させるステッピングモータ130、レール13、ボールネジ131及び取付部材11Aとを有している。それにより、レーザ変位計11を2次元的に平行移動させながら複数の測線について測定を行うことができる。また、複数の測線上の測定結果から算出される複数のMPD等のテクスチャ評価値の平均値を求めることで、テクスチャ評価の信頼性向上が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装路面のテクスチャ(texture;キメ)の状態を測定するための路面状態測定システム及び路面状態測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両が走行時にタイヤと路面との接触面で生じる騒音(走行騒音などと呼ばれる)による公害が問題となっている。車両の走行騒音は、舗装路面の状態と密接に関連しており、近年では、走行騒音の低減機能を具備した低騒音舗装が普及してきており、注目を集めている。低騒音舗装による騒音低減効果は、路面に形成された空隙に基づく吸音作用と、路面のテクスチャの状態に基づく発生音の低減作用とに影響されるものと考えられている。また、路面のテクスチャは、走行車両のタイヤと路面との間の摩擦、すなわち滑り抵抗にも反映される。このように、路面のテクスチャは、路面の特性を把握するための重要な要素の一つと考えられている。
【0003】
下記の特許文献1には、路面のテクスチャの状態を測定する従来の手法が開示されている。当該文献に記載の測定方法は、レーザ変位計を路面から一定距離を隔てて水平移動させ、所定のサンプリング間隔毎の各位置にて路面までの距離を測定したデータを測定順序で並べたオリジナルデータ列を作成するステップと、オリジナルデータ列を列方向にサンプリング間隔の整数倍のずれピッチをずらせてずれデータからなるずれデータ列を作成するステップと、オリジナルデータを独立変数、ずれデータを従属変数とした点列データ群の回帰直線を求め、この回帰直線と点列データ群との寄与率を計算して、ずれピッチと寄与率との相関データ群を求めるステップと、この相関データ群を回帰分析して、ずれピッチに対する寄与率の指数回帰曲線を求めるステップと、この指数回帰曲線と相関データ群との寄与率を判定するステップと、この寄与率に応じてミクロ定義用及びマクロ定義用の寄与率をそれぞれ選択し、指数回帰曲線において、各寄与率に相当するずれピッチの値を路面のミクロ粗さ及びマクロ粗さとしてそれぞれ定義するステップとを含んでいる。
【0004】
この測定方法の第1番目のステップにおいては、当該文献の第2図に示すような測定装置を用いて路面状態の測定が行われる。この測定装置は、周知の構成のレーザ変位計と、このレーザ変位計を路面から一定距離を隔てて水平移動させる移動手段とを有している。当該移動手段は、本体フレームの支持片間に水平に架け渡される一対のガイド軸と、支持片間で枢支されガイド軸に平行なネジ軸(ボールネジ)と、このネジ軸を回転させるステッピングモータとを備えている。レーザ変位計は、ステッピングモータによるネジ軸の回転駆動によって水平移動される。なお、従来のレーザ変位計によるデータのサンプリング速度は、1秒間あたり10点程度であった(例えば非特許文献1参照)。
【0005】
このような路面状態測定においては、まず、数十センチメートルから1メートル程度の測定区間(「測線」と呼ばれる)を、例えば0.1ミリメートル程度のサンプリング間隔にて路面までの距離を計測する(例えば特許文献1を参照)。すなわち、路面上の微視的な凹凸(高さの変位)を計測する。そして、この測線(長さ1メートルとする)上における計測結果を例えば長さ10センチメートル毎の10個の部分区間に分割し、各部分区間におけるテクスチャの評価値を求めるようになっていた。ここで、各部分区間の長さは、評価値を算出するための基準となるもので「基長」などと呼ばれることがある。
【0006】
更に、従来の路面状態測定においては、特許文献1に示すように、レーザ変位計を一方向(上記ネジ軸の軸方向)に移動させて単一の測線上のデータを取得していた。しかしながら、使用する骨材の選択や施工時における転圧の具合などにより実際の路面(舗装面)のテクスチャは一様ではないことを考慮すると、1測線のみの測定では、得られるデータ数も少なく、測定範囲も狭いために、当該測定結果が路面全体を的確に反映しているとは言い難く、したがって、従来の手法による測定結果に基づくテクスチャ評価は、信頼性に問題が生じるおそれがあった。
【0007】
特許文献2には、路面のテクスチャの状態を測定するための他の従来の手法が開示されている。当該文献には、回転式動摩擦係数測定器と組み合わせて使用する路面粗さ測定装置であって、路面上に設置するための複数の脚を有する枠体を設け、その枠体上に鉛直方向に延びる回転軸を設けてその回転軸の上端にはロータリエンコーダを下端には回転板をそれぞれ取り付け、その回転軸を歯車を介して駆動する減速機付きモータを設け、前記回転板にレーザ変位計を取り付け、そのレーザ変位計を前記回転板の回転によって前記回転式動摩擦係数測定器が動摩擦係数を測定した測定円に沿って計測するように設置し、その測定円を複数個に分割して各分割区間毎の路面粗さをレーザ変位計及びロータリエンコーダの信号を基に算出する機能を有するものである。
【0008】
この特許文献2の測定装置は、路面上の動摩擦係数を測定する測定円に沿ってテクスチャを評価するものであるが、特許文献1と同様に、単一の測線上のデータに基づいてテクスチャを評価しているので、評価結果に十分な信頼性を期待することは困難であった。
【0009】
なお、特許文献1、2に記載のような従来の路面テクスチャ測定は、密粒度舗装のような凹凸の少ない比較的一様な路面を評価する上ではある程度の信頼性を保てると考えられるが、近年普及が進んでいる排水性舗装のように凹凸が大きい路面のテクスチャ評価に適用するには、信頼性が特に不十分であると考えられる。
【0010】
また、従来のテクスチャ評価においては、その評価値(「テクスチャ評価値」と呼ぶこととする)として、特許文献3等に記載のMPD(Mean Profile Depth;平均プロファイル深さ、平均キメ深さ)、凹凸累計延長比(例えば非特許文献1参照)、接触部分比(例えば非特許文献2参照)などがそれぞれ個別に用いられていた。そのため、複数種類のテクスチャ評価値を反映させた総合的な評価を行うことができず、ひいては信頼性の高い評価を行うことは困難であった。
【0011】
【特許文献1】特開2002−303514号公報(明細書段落[0010]、[0012]〜[0014]、[0030]、第1図、第2図)
【特許文献2】特開2000−131043号公報(請求項)
【特許文献3】特開2000−131043号公報(明細書段落[0017])
【非特許文献1】井原務他、「排水性舗装の路面テクスチャとタイヤ/路面騒音に関する検討」、土木学会舗装工学論文集、第7集、pp.1−1〜1−6(2002)
【非特許文献2】橋本喜正他、「路面性状からのタイヤ/路面騒音の予測に関する検討」、土木学会舗装工学論文集、第7集、pp.2−1〜2−9(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、舗装路面のテクスチャを評価するために、当該路面上の複数の測線について測定を行うことが可能な路面状態測定システム及び路面状態測定装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、舗装路面のテクスチャ評価の信頼性を向上させることを可能とする路面状態測定システム及び路面状態測定装置を提供することを更なる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、路面までの距離を計測する計測手段と、前記計測手段を移動させて前記路面までの距離の計測位置を走査する走査手段と、前記移動される前記計測手段により取得される前記路面までの距離の計測データ列に基づいて前記路面のテクスチャの評価に用いられるテクスチャ評価値を算出する演算手段と、を有する路面状態測定システムであって、前記走査手段は、前記計測手段を2次元的に移動させることを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の路面状態測定システムであって、前記走査手段は、所定の主走査方向に前記計測手段を移動させて前記計測位置を走査する主走査手段と、前記主走査方向に直交する副走査方向に前記計測手段を移動させる副走査手段と、を含んでいることを特徴とする。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の路面状態測定システムであって、前記計測手段は、前記副走査手段により前記副走査方向における位置を変更され、当該変更された前記位置において前記主走査手段により前記主走査方向に移動されるときに所定の計測間隔で前記距離を計測して当該位置に対応する前記計測データ列を取得することにより、前記副走査方向の複数の位置に対応する複数の前記計測データ列を取得することを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の路面状態測定システムであって、前記演算手段は、前記計測手段により取得された前記複数の計測データ列のそれぞれを複数の部分データ列に分割して各部分データ列毎に前記テクスチャ評価値を算出し、前記算出された前記各部分データ列毎の前記テクスチャ評価値の平均値を算出することを特徴とする。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の路面状態測定システムであって、前記演算手段は、前記計測手段により取得された前記複数の計測データ列毎に前記テクスチャ評価値を算出し、前記算出された前記複数の計測データ毎のテクスチャ評価値の平均値を算出することを特徴とする。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の路面状態測定システムであって、前記主走査手段は、前記計測手段を駆動する主駆動手段と、前記駆動される前記計測手段を前記主走査方向に案内する主案内手段と、を含んでいることを特徴とする。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は、請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の路面状態測定システムであって、前記副走査手段は、前記計測手段を駆動する副駆動手段と、前記駆動される前記計測手段を前記副走査方向に案内する副案内手段と、を含んでいることを特徴とする。
【0021】
また、請求項8に記載の発明は、請求項2に記載の路面状態測定システムであって、前記主走査手段は、前記計測手段を前記路面に略平行な円周方向に移動させ、前記副走査手段は、前記計測手段を前記円周方向に直交する径方向に移動させる、ことを特徴とする。
【0022】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の路面状態測定システムであって、前記計測手段は、前記副走査手段により前記径方向における位置を変更され、当該変更された前記位置において前記主走査手段により前記円周方向に移動されるときに所定の計測間隔で前記距離を計測して当該位置に対応する前記計測データ列を取得することにより、同心円状の測線に沿った複数の前記計測データ列を取得することを特徴とする。
【0023】
また、請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の路面状態測定システムであって、前記計測手段は、前記副走査手段により前記径方向に所定の速度で移動されつつ、前記主走査手段により前記円周方向に移動されながら所定の計測間隔で前記距離を計測して前記計測データ列を取得することにより、螺旋状の測線に沿った前記計測データ列を取得することを特徴とする。
【0024】
また、請求項11に記載の発明は、請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の路面状態測定システムであって、あらかじめ設定された前記テクスチャ評価値の許容範囲を記憶する記憶手段と、前記演算手段により算出された前記テクスチャ評価値が前記許容範囲に含まれるか否か判断する判断手段と、前記判断手段により前記テクスチャ評価値が前記許容範囲に含まれないと判断されたことを報知する報知手段と、を更に備えていることを特徴とする。
【0025】
また、請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の路面状態測定システムであって、前記記憶手段は、複数種類の前記テクスチャ評価値の許容範囲を記憶しており、前記演算手段は、前記計測データ列に基づいて前記複数種類の前記テクスチャ評価値をそれぞれ算出し、前記判断手段は、前記算出された前記複数種類の前記テクスチャ評価値のそれぞれについて、前記記憶手段に記憶された前記許容範囲に含まれるか否か判断する、ことを特徴とする。
【0026】
また、請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の路面状態測定システムであって、前記複数種類の前記テクスチャ評価値は、平均キメ深さ、凹凸累計延長比及び接触部分比のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0027】
また、請求項14に記載の発明は、路面までの距離を計測する計測手段と、前記計測手段を移動させて前記路面までの距離の計測位置を走査する走査手段とを有し、前記移動される前記計測手段により、前記路面のテクスチャの評価に用いられる前記路面までの距離の計測データ列を取得する路面状態測定装置であって、前記走査手段は、前記計測手段を2次元的に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、路面までの距離を計測する計測手段と、この計測手段を路面に対して2次元的に移動させる走査手段とを備えているので、従来のような1測線のみの測定ではなく、複数の測線について測定を行うことができる。
【0029】
また、たとえ1測線のみを測定する場合であっても、計測手段を2次元的に移動させることにより、従来と比較して格段に広い範囲について測定を行って、多数の計測データを取得することが可能である。それにより、舗装路面のテクスチャ評価の信頼性向上を図ることができる。
【0030】
特に、請求項4又は請求項5に記載の本発明によれば、複数の測線に対応する複数の計測データ列に基づく複数のテクスチャ評価値の平均値を求めるように構成されているので、従来と比較して路面全体をより的確に反映したテクスチャ評価を行うことができ、その信頼性向上を図ることができる。
【0031】
また、請求項11、請求項12又は請求項13に記載の本発明によれば、テクスチャ評価値が許容範囲内であるか否かを判断し、許容範囲外であると判断されたときに報知を行うように構成されているので、異常の発生を容易に知ることができる。それにより、その異常の原因を施工現場にて発見しリアルタイムでフィードバックして施工処理を是正することができるので、施工現場にて有効に利用される。
【0032】
特に、請求項12に記載の本発明によれば、複数種類のテクスチャ評価値を判断対象としているので、総合的なテクスチャ評価を施工現場で有効に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明による路面のテクスチャ状態の測定は、従来の1測線のみの測定とは異なり、複数の測線上において測定を行う点を特徴としている。また、本発明による測定は、従来の測定と比較して、測定対象領域内の多数の位置において測定を行う点を特徴とするものである。以下、このような新規な測定手法を実現する本発明の好適な実施形態の一例について、図面を適宜参照しながら説明する。
【0034】
[システムの全体構成及び各部の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る路面状態測定システム1の外観構成の概略を表す。路面状態測定システム1は、移動用の台車2に搭載された複数の機器を含んで構成されている。台車2は、ハンドル部を備えた例えば金属製の枠体3と、この枠体3に固定された上下2段の機器搭載棚4、5と、下段の機器搭載棚5の底部に設けられたキャスタ等の車輪6とを有している。また、車輪6の回転を禁止するストッパを設けて、測定中や保管中などにおけるシステム1の勝手な移動を防止するようにしてもよい。
【0035】
下段の機器搭載棚5には、後述するレーザ変位計等の各種機器を格納する測定本体部10と、電源供給用のバッテリ40とが搭載されている。バッテリ40には、測定本体部10等に対する電源供給を制御する電源供給回路(後述)が接続されている。また、上段の機器搭載棚4には、システム各部の動作制御や測定本体部10による測定結果の解析処理などを行う(ノートブック)コンピュータ20と、システム各部を操作するためのコントロールボックス30とが搭載されている。
【0036】
レーザ変位計は、被測定体(路面)までの距離を計測するための機器であり、後述の走査手段がその計測位置を測線に沿って走査することにより、当該測線上における路面までの距離の変位、すなわち、当該測線上における路面の凹凸の変位を取得する。路面のテクスチャの状態は、路面の凹凸の変位の状態に基づいて評価されるものである。
【0037】
本実施形態に用いられるレーザ変位計は、周知の構成を有しており、例えば、半導体レーザ等のレーザ光源、このレーザ光からのレーザ光を集光する集光レンズ、レーザ光の路面による反射光を結像させる結像レンズ、レーザ光の結像位置を検出するPSD(Position Sensitive Detector)等の受光素子、レーザ光の結像位置の検出結果を基に当該レーザ変位計と路面との間の距離を算出する演算回路などを含んで構成されている。ここで、距離の算出処理は、コンピュータ20が実行するようにしてもよい。なお、上述したレーザ変位計の計測位置は、路面におけるレーザ光の反射位置に相当する。
【0038】
(測定本体部)
図2は、測定本体部10に格納されるレーザ変位計11、及び、このレーザ変位計11の移動をガイドするレール12A、12B、13の概略構成を表している。レール12Aとレール12Bとは互いに平行に配置されており、レール13は、取付部材13A、13Bを介してレール12A、12Bに掛け渡されるように配置されている。ここで、レール12A、12Bとレール13とは、互いに直交するように配置されている。
【0039】
また、少なくともレーザ変位計11による計測時において、レール12A、12B、13は、路面に対して平行に配置される。それにより、レーザ変位計11は、路面に対して平行移動される。レーザ変位計11は、このように、巨視的に見て路面との距離を変化させないように当該路面に対して平行に移動されることが望ましいが、これに限定されるものではない。例えば、路面に対して傾斜した方向にレーザ変位計11を移動させるなど、レーザ変位計11を直線的に移動させるように構成してもよい。更に、レーザ変位計11の移動の軌跡を参照可能に構成すれば、レーザ変位計11の移動を直線的とする必要もない。すなわち、レーザ変位計11の移動の軌跡を参照して路面との距離の計測結果を補正すればよいからである。
【0040】
レーザ変位計11は、本発明の「計測手段」を構成し、レール13の側面に取付部材11Aを介して取り付けられている。取付部材11Aは、ステッピングモータの駆動によってレール13の長手方向に移動可能に設けられている。レーザ変位計11は、この取付部材11Aと一体的に移動される。ここで、レール13の長手方向を「副走査方向」と呼ぶこととする。レーザ変位計11は、この副走査方向に移動されるときには計測を実行しないように制御される(詳細は後述する)。
【0041】
また、各取付部材13A、13Bは、ステッピングモータの駆動によってレール12A、12Bの上をその長手方向に移動可能に設けられている。レーザ変位計11は、レール13及び取付部材13A、13Bと一体的にレール12A、12Bの長手方向に移動される。
【0042】
ここで、レール12A、12Bの長手方向を「主走査方向」と呼ぶこととする。測定本体部10は、この主走査方向を測線の方向に合わせるように設置される(つまり、本実施形態における測線方向は主走査方向となる)。レーザ変位計11は、主走査方向に移動されながら計測を実行するように制御される(詳細は後述する)。それにより、レーザ変位計11による路面上の計測位置が主走査方向に走査される。
【0043】
このように、本実施形態の路面状態測定システム1は、レーザ変位計11を主走査方向と、それに直交する副走査方向とにそれぞれ独立に移動させる構成を有することを特徴の一つとしている。なお、一般に、レール12A、12Bとレール13とを斜交配置して主走査方向と副走査方向とが斜交するように構成することもできる。すなわち、本発明においては、レーザ変位計11が2次元的に移動可能とされていれば十分である。
【0044】
図3は、レーザ変位計11をレール13の長手方向(副走査方向)に移動させるための構成の概略を表している。図3(A)は、レーザ変位計11やレール13等の正面図であり、図3(B)は、レール13の短手方向における断面図である。
【0045】
レール13のレーザ変位計11側の側面は、その長手方向に沿って開口されている。また、レール13の内部には、その長手方向に沿ってボールネジ131が設けられている。レール13の一端にはステッピングモータ130が設けられており、このステッピングモータ130の回転軸にはボールネジ131の一端が接続されている。ボールネジ131の他端は、レール13の他端に回動可能に接続されている。ボールネジ131は、ステッピングモータ130によって軸O1周りに回動される。
【0046】
取付部材11Aには、レール13の上記の側面開口からレール13内部に向けて突出部11aが形成されており、この突出部11aのほぼ中心位置には、レール13の長手方向に沿って雌ネジ部11bが開口されている。この雌ネジ部11bにはボールネジ131が係合されている。
【0047】
ステッピングモータ130によりボールネジ131が軸O1周りに回転されると、このボールネジ131と雌ネジ部11bとの係合関係によって、レール13の長手方向に取付部材11Aが移動される。取付部材11Aの移動の向きは、ステッピングモータ130の回転方向によって制御される。このようにして、レーザ変位計11は、副走査方向に移動可能とされる。
【0048】
なお、ステッピングモータ130、レール13、ボールネジ131及び取付部材11Aは本発明の「副走査手段」を構成する。また、ステッピングモータ130は、レーザ変位計11を駆動する本発明の「副駆動手段」を構成し、レール13、ボールネジ131及び取付部材11Aは、ステッピングモータ130により駆動されるレーザ変位計11等を副走査方向に案内する本発明の「副案内手段」を構成している。
【0049】
図4は、レール13(つまりレーザ変位計11)をレール12Aの長手方向(主走査方向)に移動させるための構成の概略を表している。図4(A)は、レール12Aやレール13等の側面図であり、図4(B)は、レール12Aの短手方向における断面図である。ここで、必要であれば、図4の各図に示すものと同様の機構をレール12B側にも設けることができる。
【0050】
レール12Aの上面は、その長手方向に沿って開口されている。また、レール12Aの内部には、その長手方向に沿ってボールネジ121Aが設けられている。レール12Aの一端にはステッピングモータ120Aが設けられており、このステッピングモータ120Aの回転軸にはボールネジ121の一端が接続されている。ボールネジ121の他端は、レール12Aの他端に回動可能に接続されている。ボールネジ121Aは、ステッピングモータ120Aによって軸O2周りに回動される。
【0051】
取付部材13Aには、レール12Aの上記の上面開口からレール12A内部に向けて突出部13aが形成されており、この突出部13aのほぼ中心位置には、レール12Aの長手方向に沿って雌ネジ部13bが開口されている。この雌ネジ部13bにはボールネジ121Aが係合されている。
【0052】
ステッピングモータ120Aによりボールネジ121Aが軸O2周りに回転されると、このボールネジ121Aと雌ネジ部13bとの係合関係によって、レール12Aの長手方向に取付部材13Aが移動される。取付部材13Aの移動の向きは、ステッピングモータ120Aの回転方向によって制御される。このようにして、レーザ変位計11は、主走査方向に移動可能とされる。
【0053】
なお、ステッピングモータ120A、レール12A、12B、ボールネジ121A及び取付部材13A、13Bは本発明の「主走査手段」を構成する。また、ステッピングモータ120は、レーザ変位計11を駆動する本発明の「主駆動手段」を構成し、レール12A、12B、ボールネジ121及び取付部材13A、13Bは、ステッピングモータ120Aにより駆動されるレーザ変位計11等を主走査方向に案内する本発明の「主案内手段」を構成している。レール12B側にもステッピングモータとボールネジを設ける場合にはそれらも主走査手段を構成し、また、当該ステッピングモータは主駆動手段を、当該ボールネジは主案内手段を構成することとなる。
【0054】
また、主走査手段を構成するステッピングモータ120A、レール12A、12B、ボールネジ121A及び取付部材13A、13Bと、副走査手段を構成するステッピングモータ130、レール13、ボールネジ131及び取付部材11Aとは、本発明にいう「走査手段」を構成する。
【0055】
なお、図2〜図4に示す構成は、本発明の「路面状態測定装置」の一例を構成している。
【0056】
(昇降機構)
ところで、測定本体部10内には、レーザ変位計11及びそれを移動させるための移動機構(レール12A、12B、13、ステッピングモータ120A、130等)を上下方向に移動させるための昇降機構が設けられている。下段の機器搭載棚5には、測定本体部10の底面の面積よりも小さな開口面積の開口部が形成されており(図示省略)、昇降機構は、レーザ変位計11及び上記移動機構を、当該開口部を通じて上下移動させる。レーザ変位計11等は、路面のテクスチャの状態を測定するときに路面の近傍の所定位置まで下降され、路面状態測定システム1を移動させるときには測定本体部10内に格納されるようになっている。レーザ変位計11等の上下移動は、オペレータによる操作に応じて実行される(詳細は後述する)。このような昇降機構によれば、システム1を移動させるときにレーザ変位計11等が路面の凸部に衝突したり擦れたりする事態を回避することができる。また、レーザ変位計11等を下降させたときに、上記移動機構の底面等が路面に接触配置されるように構成すれば、測定中におけるレーザ変位計11の安定性が高まる。つまり、車輪6の回転を禁止する前述のストッパを設けずとも、レーザ変位計11が測定中に勝手に移動する事態を抑止できる。
【0057】
図5は、このような昇降機構の一構成例の概略を表している。同図に示す昇降機構50Aは、レール12Aを直接に上下移動させるものであり、レール12B側にも同様の昇降機構50Bが設けられている。昇降機構50A、50Bの動作制御は同時に行われるようになっている。レーザ変位計11、レール13、ステッピングモータ120、130等は、一対の昇降機構50A、50Bの駆動により、レール12A、12Bと一体的に上下移動される。
【0058】
図5に示す昇降機構50Aは、測定本体部10の筐体の内壁等に固定配置されたモータ51Aと、このモータ51Aの回転軸52Aに同軸に接続されて一体的に回転するギア53Aと、ネジ56Aによりレール12Aに一端が固定され、上下方向を長手方向とするアーム54Aとを含んで構成される。アーム54Aの片側側面にはギア53Aと係合される係合部55Aが形成されている。
【0059】
モータ51Aが回転軸52Aを回転させると、回転軸52Aと一体的に回転するギア53Aの回転運動は、係合部55Aとの係合関係によってアーム54Aの上下移動に変換され、それによりレール12Aが上下移動される。
【0060】
レール12Aの移動の向きは、モータ51Aの回転方向によって切り換えられる。図5においては、モータ51Aが回転軸52Aを時計回りに回転させるとレール12Aは下方に移動され、反時計回りに回転させると上方に移動される。
【0061】
なお、本発明における昇降機構は、図5に示した構成に限定されるものではなく、レーザ変位計11等を昇降させるように作用するものであれば任意の構成を適用することが可能である。例えば、一対のアームのそれぞれの一端にレール12A、12Bを回動可能に接続するとともに、それぞれの他端にステッピングモータを設け、レーザ変位計11等を測定本体部10内に格納するときには各アームを水平配置させ、路面近傍に下降させるときには、ステッピングモータによりアームを垂直面内において下方に回転させるような構成の昇降機構を適用することができる。
【0062】
また、オペレータが手動によってレーザ変位計11等を昇降させるような機構を適用することも可能である。
【0063】
また、昇降機構は、測定本体部10内に格納されている必要はなく、例えば測定本体部10自体を上下移動させる構成を採用する場合などには、測定本体部10の外部に設けることができる。その場合、下段の機器搭載棚5の上記開口部は、測定本体部10の底面よりも大きな開口面積を有するように形成される。
【0064】
(コントロールボックス)
図6は、コントロールボックス30の概略構成を表す上面図である。コントロールボックス30の操作パネル上には、当該システム1の電源のON/OFFを切り換えるために操作される電源ボタン31と、バッテリ40から供給される電源電圧値を表示する電圧インジケータ32Aと、電源電流値を表示する電流インジケータ32Bと、昇降機構50A、50Bによりレーザ変位計11等を上昇させるために操作される上昇ボタン33Aと、下降させるために操作される下降ボタン33Bと、レーザ変位計1による計測を開始するために操作される計測開始ボタン34Aと、計測を停止するために操作される計測停止ボタン34Bとを備えている。
【0065】
なお、上記の操作をコンピュータ20のキーボードやマウス等を用いて行うように構成する場合には、コントロールボックス30を設ける必要はない。また、必要に応じて、上記の操作以外の操作を行うための手段(ボタン等)を設けることが可能である。また、コンピュータ20が専用バッテリを搭載している場合などには、コンピュータ20のON/OFFは、電源ボタン31ではなく、コンピュータ20自身の電源ボタン等の操作により切り換えるように構成してもよい。
【0066】
〔制御系の構成〕
次に、本実施形態の路面状態測定システム1の制御系の構成について、図7に示すブロック図を参照して説明する。当該システム1の制御は、上述のようにコンピュータ20によって行われる。
【0067】
なお、本実施形態においては、レール12A、12Bの長手方向(主走査方向)へのレール13の移動を安定して行わせるために、図4に示した構成をレール12B側にも設けることとし、レール12B側のステッピングモータを符号120Bで表すこととする。
【0068】
図7に示すように、測定本体部10のレーザ変位計11、ステッピングモータ120A、120B、130、モータ51A、51B、及び、コントロールボックス30は、それぞれコンピュータ20に接続されている。ステッピングモータ120A、120B、130と、モータ51A、51Bとは、それぞれ電源供給回路60を介してコンピュータ20に接続されている。
【0069】
(コンピュータ)
コンピュータ20は、CPU21、ハードディスクドライブ(HDD)22、表示部23、音声出力部24、ROM25、RAM26及び送受信インターフェイス(I/F)27を含んで構成されている。
【0070】
なお、HDD22の代わりに、コンピュータ20によりアクセス可能なドライブ装置(CD−ROM、CD−R(W)、DVD−ROM、DVD−RAM、MO、フロッピー(登録商標)ディスクなどの任意の記憶メディアを読み書きする装置)を用いることができる。その場合、必要な情報は記憶メディアにあらかじめ記憶しておく。
【0071】
CPU21は、HDD22やROM25に記憶されたコンピュータプログラム(図示省略)をRAM26上に展開して実行することにより、当該システム1の各部の制御処理や、レーザ変位計11による計測結果の解析処理などを行う。
【0072】
当該コンピュータプログラムには、レーザ変位計11による計測動作の制御、主走査方向及び副走査方向へのレーザ変位計11の移動制御、昇降機構50Aによるレーザ変位計11等の上昇/下降の動作制御などをCPU21に実行させるためのシステム制御用プログラム、路面のテクスチャ評価値をCPU21に算出させるための評価値演算用プログラム、算出されたテクスチャ評価値の適否をCPU21に判断させるための判断用プログラムなどが含まれている。CPU21は、これらの各プログラムをそれぞれ実行することにより、順に、制御部211、評価値演算部212、評価値判断部213などとして動作するようになっている。
【0073】
制御部211は、上記システム制御用プログラムの処理フローにしたがってシステム各部の制御を行う。また、コントロールボックス30の各ボタンが操作されると、コンピュータ20に操作信号が送信され、制御部211は、この操作信号に基づくシステム制御を実行する。
【0074】
評価値演算部212は、本発明の「演算手段」に相当し、レーザ変位計11により得られた計測データに基づいて、路面のテクスチャ評価値を算出する。本実施形態では、テクスチャ評価値として、MPD(Mean Profile Depth)、凹凸累計延長比(単に累計延長比と呼ぶこともある)及び接触部分比の内の少なくとも1つを適用する。これらのテクスチャ評価値については、その概略を後述する。
【0075】
評価値判断部213は、本発明の「判断手段」に相当するものであり、評価値演算部212により算出されたテクスチャ評価値が所定の許容範囲に含まれるか否かを判断する。その際、評価値判断部213は、HDD22に記憶された下記の情報を参照して判断を行う。
【0076】
HDD22には、テクスチャ評価値の許容範囲を表す情報を記憶するためのディレクトリが設定されている。当該ディレクトリを評価値情報記憶部221と呼ぶ。この評価値情報記憶部221には、あらかじめ設定された各テクスチャ評価値の許容範囲の情報が実際の測定前に記憶される。評価値情報記憶部221(HDD22)は、本発明の「記憶手段」を構成している。
【0077】
本実施形態においては、MPDの許容範囲を表すMPD許容範囲情報221Aと、累計延長比の許容範囲を表す累計延長比許容範囲情報221Bと、接触部分比の許容範囲を表す接触部分比許容範囲情報221Cとが、当該評価値情報記憶部221に記憶される。
【0078】
ここで、各テクスチャ評価値の許容範囲情報は、路面の種類毎に設定されることが好ましい。例えば、排水性舗装、密粒度舗装などの舗装のタイプ毎に許容範囲情報を設定したり、アスファルト混合物に含まれる骨材の最大粒径(13ミリメートル、5ミリメートル等)など、舗装の構成物の特性毎に許容範囲情報を設定することにより、様々な種類の舗装路面のテクスチャを評価することが可能となる。また、舗装のタイプと舗装構成物の特性とを組み合わせて許容範囲情報を設定してもよい。
【0079】
表示部23は、(ノートブック)コンピュータ20のモニタにより構成され、音声出力部24はスピーカ等から構成される。ここで、表示部23及び音声出力部24は、本発明の「報知手段」を構成している。また、送受信I/F27は、データ送受信用のインターフェイス回路などからなる。
【0080】
電源供給回路60は、バッテリ40に接続されており、コンピュータ20からの制御信号を受けて、ステッピングモータ120A、120B、130及びモータ51A、51Bのそれぞれに対してバッテリ40から電源を供給する。
【0081】
ステッピングモータ120A、120B、130に対しては、電源をパルス状に送信し、ステッピングモータ120A等をそのパルス数に応じた角度だけ回転させてレーザ変位計11を移動させる。
【0082】
また、モータ51A、51Bに対しては、例えば所定の時間だけ電源を供給し、レーザ変位計11等を上昇/下降させる。なお、モータ51A、51Bとしてステッピングモータを用いる場合には、電源を所定のパルス数だけ送信してレーザ変位計11等を所定の距離だけ上昇/下降させる。
【0083】
[テクスチャ評価値について]
ここで、本実施形態にて用いられる路面のテクスチャ評価値についてその概略を説明する。本実施形態では、MPD、累計延長比及び接触部分比のうちの少なくとも1つの評価値が適用される。以下、図8〜図10を参照して、これら3種類のテクスチャ評価値についてそれぞれ説明する。なお、本発明においては、これら以外の任意の評価値を適用することが可能である。
【0084】
(MPD)
まず、MPD(平均キメ深さ)について説明する。MPDは、路面テクスチャの解析手法として広く一般に用いられているもので、その算出方法はISOに明示されている(参照:CHARACTERIZATION OF PAVEMENT TEXTURE UTILIZING SURFACE PROFILES PART−1:DETERMINATION OF MEAN PROFILE DEPTH、International Organization for Standardization、International Standard ISO 13473−1、1996)。
【0085】
MPDは、レーザ変位計11による計測における各測線を一定長さ(基長)に分割した区間(基長区間)毎に、次のようにして算出される。まず、基長区間における平均高さを求めるとともに、当該基長区間をその中心で2分割して各分割区間における最大高さを求める。そして、各分割区間における最大高さと当該基長区間における平均高さとの差を算出してそれらの相加平均を求める。その算出結果を当該基長区間のMPDとして定義する。
【0086】
すなわち、図8に示すように、当該基長区間における平均高さをHMEANと表し、第1、第2の分割区間における最大高さをそれぞれHMAX1、HMAX2と表すと、当該基長区間のMPDは次式により表される。ここで、図8に示すグラフは、レーザ変位計11により計測された当該基長区間における路面までの距離(路面の高さ)の変位を表している。したがって、同図のグラフは、当該基長区間における路面の表面形状を表す断面図である。なお、当該グラフは、凹凸を強調して示されている。
【0087】
【数1】

【0088】
レーザ変位計11による計測における測線の長さを例えば1メートルとし、基長を例えば10センチメートルとすると、当該測線は10個の基長区間に分割されるので、当該測線について10個のMPDが取得されることとなる。
【0089】
(累計延長比)
累計延長比については例えば上述の非特許文献1に説明がある。以下、図9を参照して累計延長比について説明する。同図に示すグラフは、図8と同様に、レーザ変位計11により計測された当該基長区間における路面の高さの変位(路面の表面形状)を表している。また、当該グラフも凹凸が強調されている。
【0090】
累計延長比は次のように算出される。まず、測線の各基長区間における最大高さを求め、その最大高さから所定の下り幅における高さ(下限高さと呼ぶこととする)を求める。そして、各基長区間について、高さが下限高さを超える測定範囲における路面表面の長さ(凹凸も含む)を求めて全ての基長区間について足し合わせる。更に、その算出結果を測線の長さで除算して、当該測線の累計延長比として定義する。
【0091】
図9に示すケースについて具体的に説明する。まず、1つの測線を、第1の基長区間、第2の基長区間、第3の基長区間、・・・と分割するとともに、上記の下り幅をXミリメートル(例えば2ミリメートル)に設定する。各基長区間における最大高さH1MAX、H2MAX、H3MAX、・・・をそれぞれ求め、各基長区間における下限高さH1LOW、H2LOW、H3LOW、・・・をそれぞれ求める。
【0092】
第1の基長区間について、高さが下限高さH1LOWを超える測定範囲における路面表面の長さL11を求める。すなわち、図9のグラフの第1の基長区間において、グラフの値がH1MAXとH1LOWとの間となる測定範囲におけるグラフの長さL11を求める。第2の基長区間については、高さが下限高さH2LOWを超える測定範囲が4箇所あるので、各箇所における路面表面の長さL21、L22、L23、L24を求める。同様に、第3の基長区間、第4の基長区間、・・・について、高さが下限高さを超える測定範囲における路面表面の長さを求める。
【0093】
更に、各基長区間について求めた上記路面表面の高さを全ての基長区間について足し合わせ、その算出結果を測線の長さ(L)で除算することにより、当該測線の累計延長比を求める。すなわち、当該測線の累計延長比は、(L11+L21+L22+L23+L24+L31+L41+・・・)/Lとなる。
【0094】
(接触部分比)
接触部分比については例えば上述の非特許文献2に説明がある。以下、図10を参照して接触部分比について説明する。同図に示すグラフは、図9と同様に、レーザ変位計11により計測された当該基長区間における路面の高さの変位(路面の表面形状)を表している。また、当該グラフも凹凸が強調されている。
【0095】
接触部分比は、累計延長比と同様に次のようにして算出される。まず、測線の各基長区間における最大高さを求め、その最大高さから所定の下り幅における高さ(下限高さ)を求める。そして、各基長区間について、高さが下限高さを超える測定範囲の長さを求めて全ての基長区間について足し合わせる。更に、その算出結果を測線の長さで除算して、当該測線の接触部分比として定義する。
【0096】
なお、累計延長比と接触部分比は、ともに、高さが下限高さを超える測定範囲を考慮することにより取得されるという共通点を有するが、累計延長比は、当該測定範囲における路面表面(一般に曲線や折れ線等である)の長さの総和に基づいて算出される値であり、接触部分比は、当該測定範囲(直線である)の長さの総和に基づいて算出される値である点が相違している。
【0097】
図10に示すケースについて具体的に説明する。まず、1つの測線を、第1の基長区間、第2の基長区間、第3の基長区間、・・・と分割するとともに、上記の下り幅をXミリメートルに設定する。各基長区間における最大高さH1MAX、H2MAX、H3MAX、・・・をそれぞれ求め、各基長区間における下限高さH1LOW、H2LOW、H3LOW、・・・をそれぞれ求める。
【0098】
第1の基長区間について、高さが下限高さH1LOWを超える測定範囲の長さM11を求める。すなわち、図10のグラフの第1の基長区間において、グラフの値がH1MAXとH1LOWとの間となる測定範囲の長さM11を求める。第2の基長区間については、高さが下限高さH2LOWを超える測定範囲が4箇所あるので、各箇所における測定範囲の長さM21、M22、M23、M24を求める。同様に、第3の基長区間、第4の基長区間、・・・について、高さが下限高さを超える測定範囲の長さを求める。
【0099】
更に、各基長区間について求めた上記測定範囲の高さを全ての基長区間について足し合わせ、その算出結果を測線の長さ(L)で除算することにより、当該測線の接触部分比を求める。すなわち、当該測線の接触部分比は、(M11+M21+M22+M23+M24+M31+M41+・・・)/Lとなる。
【0100】
[処理態様]
以上のような構成を有する路面状態測定システム1により実行される路面のテクスチャの評価処理の一態様について、当該システム1を用いたワークフローに基づいて説明する。路面状態測定システム1を用いたワークフローの一例を図11に示す。本発明は、例えば、施工が進行中の現場において好適に利用可能であり、図11のフローチャートは、施工現場における当該システム1の適用例を表している。
【0101】
(測定準備;S01)
当該システム1を使用する場合、まず、このシステム1を路面の目的の測定領域に設置させる。このとき、測線の方向に主走査方向を合わせるようにシステム1は設置される。
【0102】
オペレータは、コントロールボックス30の電源ボタン31を操作してシステム1(特に測定本体部10)をONにするとともに、コンピュータ20を起動させる。続いて、オペレータは、コントロールボックス30の下降ボタン33Bを操作する。制御部211は、下降ボタン33Bが操作されたことに対応してモータ51A、51Bを制御して(すなわち電源供給回路60を制御してモータ51A、51Bに電源を供給して)、レーザ変位計11等を路面近傍の所定位置まで下降させて計測準備を整える。
【0103】
(路面高さの計測;S02)
オペレータがコントロールボックス30の計測開始ボタン34Aを操作すると、コンピュータ20の制御部211は、レーザ変位計11及びステッピングモータ120A、120B、130を制御して、以下のような計測を実行させる。なお、ステッピングモータ120A、120、130の制御は、電源供給回路60を制御して各ステッピングモータにパルス状の電源信号を供給することにより行われる。
【0104】
ここで、図12に示すように、目的の測定領域Aに対して、長さ1メートルの第1〜第11の測線A1〜A11が1センチメートル間隔に設定されているものとする。すなわち、当該測定領域Aは、(主走査方向に1メートル)×(副走査方向に10センチメートル)の範囲に設定されているものとする。なお、測線の長さ、本数、間隔は、例えばコンピュータ20やコントロールボックス30からの操作により任意に設定できるようになっている。
【0105】
図13は、図12に示した測定領域Aにおけるレーザ変位計11の計測位置の走査態様の一例を表す上面図である。制御部211は、あらかじめ、ステッピングモータ120A、120B、130を制御してレーザ変位計11を移動させ、その計測位置を測定開始位置Sに合わせておく。
【0106】
なお、図13に示すように、同図における左右方向は主走査方向であり、右方向を「+主走査方向」、左方向を「−主走査方向」と表す。また、同図における上下方向は副走査方向であり、上方向を「+副走査方向」、下方向を「−副走査方向」と表す。
【0107】
計測開始ボタン34Aが操作されると、制御部211は、ステッピングモータ120A、120Bを制御してレーザ変位計11を+主走査方向に移動させ、レーザ変位計11の計測位置を第1測線A1に沿って走査させながら、所定の計測間隔(例えば0.1ミリメートル間隔)で路面までの距離を計測する。それにより、第1測線A1上における路面の高さの変位が計測される。その計測結果はコンピュータ20に送信されて、例えばHDD22あるいはRAM26等に保存される。
【0108】
第1測線A1上の走査が終了すると、制御部211は、ステッピングモータ130を制御してレーザ変位計11を−副走査方向に矢印B1に示すように1センチメートルだけ移動させる。このとき、レーザ変位計11による計測は、制御部211によって停止されている。
【0109】
矢印B1に示すレーザ変位計11の移動が終了すると、制御部211は、ステッピングモータ120A、120Bを制御してレーザ変位計11を−主走査方向に移動させ、レーザ変位計11の計測位置を第2測線A2に沿って走査させながら、上記の計測間隔で路面までの距離を連続的に計測する。それにより、第2測線A2上における路面の高さの変位が計測される。その計測結果はコンピュータ20に送信されてHDD22やRAM26に保存される。
【0110】
第2測線A2上の走査が終了すると、制御部211は、ステッピングモータ130を制御してレーザ変位計11を−副走査方向に矢印B2に示すように1センチメートルだけ移動させる。このとき、レーザ変位計11による計測は、制御部211によって停止されている。
【0111】
同様に、制御部211は、レーザ変位計11を、第3測線A3、矢印B3、第4測線A4、矢印B4、第5測線A5、矢印B5、第6測線A6、矢印B6、第7測線A7、矢印B7、第8測線A8、矢印B8、第9測線A9、矢印B9、第10測線A10、矢印B10、第11測線A11の順に、計測終了位置Eまで移動させる。レーザ変位計11は、各測線A3〜A11上を移動されるときには、制御部211によって路面の高さの変位を計測するように制御され、各矢印B3〜B10上を移動するときには計測を停止するように制御される。
【0112】
このような計測処理により、測定領域Aについて11個の測線A1〜A11上の計測データが自動的に取得される。ここで、取得された計測データをコンピュータ20の表示部23に表示するようにしてもよい。そのとき、表示部23には、図8〜10中のような路面高さの変位(凹凸)の状態を表すグラフが表示される。
【0113】
(テクスチャ評価値の算出;S03)
次に、コンピュータ20の評価値演算部212が、ステップS02にて取得された複数の測線A1〜A11上の路面高さの計測データを基に、MPD、累計延長比及び接触部分比を算出する。このとき、評価値演算部212は、[テクスチャ評価値ついて]の項にて説明した方法にしたがい、各測線A1〜A11上の計測データを10個の基長区間に対応する10個の部分データに分割して各評価値を算出する。算出されたテクスチャ評価値は、例えばHDD22あるいはRAM26等に保存される。また、算出されたテクスチャ評価値をコンピュータ20の表示部23に表示させるようにしてもよい。
【0114】
また、評価値演算部212による処理において、上記算出された複数のテクスチャ評価値の平均値を求めるようにしてもよい。詳細は後述するが、上記算出される複数のテクスチャ評価値には多少のばらつき(変動)が介在する一方、それらの平均値は路面全体のテクスチャを良好に反映したものとなるため、当該平均値を用いることにより、評価の信頼性を向上させることができる。なお、当該平均値は、MPDについては110個の算出値から算出され、累計延長比及び接触部分比については11個の算出値から算出される。
【0115】
ここで、ステップS02において、各測線A1〜A11上を路面に対して平行移動されるレーザ変位計11により取得される路面までの距離(路面高さ)の計測データは、本発明にいう「計測データ列」に相当する。本実施形態では、11個の計測データ列を取得するようになっている。
【0116】
また、ステップS03において、計測データ列を基長区間毎に分割して得られる部分データは、本発明にいう「部分データ列」に相当している。
【0117】
上述のように各測線A1〜A11の長さを1メートルとし、計測間隔を0.1ミリメートルとした場合、各測線A1〜A11上にそれぞれ10000の計測位置が設定されることとなり、したがって、各測線に対応する計測データ(列)には10000個の計測値が含まれることとなる。また、基長区間を10センチメートルとすると、各基長区間に対する部分データ(列)には1000個の計測値が含まれることとなる。
【0118】
(テクスチャ評価値の適否判断;S04、S05、S06)
テクスチャ評価値が算出されると、コンピュータ20の評価値判断部213が、各テクスチャ評価値の適否を判断する。より具体的には、評価値判断部213は、次のような判断処理を実行する。
【0119】
ここで、ハードディスクドライブ22の評価値情報記憶部221には、あらかじめ、MPD、累計延長比、接触部分比のそれぞれの許容範囲を表すMPD許容範囲情報221A、累計延長比許容範囲情報221B、接触部分比許容範囲情報221Cが記憶されている。各許容範囲情報221A〜221Cは、例えば、各評価値として許容可能な最大値を示す情報からなる。また、各評価値の許容範囲は、例えば、様々な路面状態の舗装を実際に又はコンピュータシミュレーションにて形成し、それらのテクスチャ評価値を検討することにより実験的に取得される。
【0120】
まず、MPDについて(ステップS04)、評価値判断部213は、ステップS03にて算出されたMPDと、MPD許容範囲情報221Aに示すMPDの最大値との大小を比較し、前者の値が後者の値以下である場合には「許容可能(正常)」と判断し(S04;Y)、前者が後者より大きい場合には「許容不可能(異常の可能性有り)」と判断する(S04;N)。正常と判断された場合、処理はステップS05に移行し、異常の可能性有りと判断された場合には、処理はステップS09へと移行する。
【0121】
同様に、累計延長比について(ステップS05)、評価値判断部213は、ステップS03にて算出された累計延長比と、累計延長比許容範囲情報221Bに示す累計延長比の最大値との大小を比較し、前者の値が後者の値以下である場合には「許容可能(正常)」と判断し(S05;Y)、前者が後者より大きい場合には「許容不可能(異常の可能性有り)」と判断する(S05;N)。正常と判断された場合、処理はステップS06に移行し、異常の可能性有りと判断された場合には、処理はステップS09へと移行する。
【0122】
同様に、接触部分比について(ステップS06)、評価値判断部213は、ステップS03にて算出された接触部分比と、接触部分比許容範囲情報221Cに示す接触部分比の最大値との大小を比較し、前者の値が後者の値以下である場合には「許容可能(正常)」と判断し(S06;Y)、前者が後者より大きい場合には「許容不可能(異常の可能性有り)」と判断する(S06;N)。正常と判断された場合、処理はステップS07に移行し、異常の可能性有りと判断された場合には、処理はステップS09へと移行する。
【0123】
ここで、評価値判断部213による各テクスチャ評価値の適否の判断結果をコンピュータ20の表示部23に表示させるようにしてもよい。
【0124】
なお、ステップS03において、複数のテクスチャ評価値の平均値を算出した場合には、当該平均値が許容範囲に含まれるか否か判断され、平均値を算出しない場合には、複数のテクスチャ評価値のうちの少なくとも1つが判断対象とされる。後者の場合、2つ以上のテクスチャ評価値を判断対象とすれば、評価の信頼性は従来よりも向上される。
【0125】
(他の領域に対する測定の有無;S07、S08)
ステップS06で測定領域Aについての処理は終了となる。測定領域Aに対する測定が終了すると、オペレータは、路面上の他の領域に対して更に測定を行うか否か判断する(S7)。当該判断は、例えば、事前に作成された測定予定にしたがう。
【0126】
測定領域Aにて測定を終了する場合(S07;N)、オペレータは、コントロールボックス30の電源ボタン31を操作して測定本体部10の電源をOFFにするとともに、コンピュータ20の電源をOFFにして、路面状態測定システム1による測定を終了する。
【0127】
一方、他の領域の測定を引き続き行う場合(S07;Y)、オペレータは、必要があれば、測定本体部10やコンピュータ20の電源をOFFにして、路面状態測定システム1を他の測定領域に移動させ(S08)、同様に測定を行う。
【0128】
(テクスチャ評価値が許容範囲に含まれない場合の処理;S09〜S12)
ステップS04、S05又はS06において、異常の可能性有りと判断された場合(S04;N:S05;N:S06;N)、コンピュータ20の制御部211は、その旨をオペレータ等に報知する(S08)。この報知処理の具体的態様としては、例えば、路面を舗装した材料やその施工状態を確認するべき警告メッセージを表示部23に表示させたり、同様の警告メッセージやビープ音を音声出力部24により出力させることができる。
【0129】
オペレータ等は、このような報知処理により異常の可能性を認識でき、それにより、例えば、舗装に用いた骨材の粒径、形状、配合、更には転圧処理の適否などを確認することができる(S10)。
【0130】
舗装材料や施工状態の確認作業により異常が発見された場合(S11;Y)、その内容を分析して施工現場にフィードバックすることができる(S12)。例えば、施工すべき領域の一部が完了したときに、その部分に対して路面状態測定システム1による測定を行う。異常が報知された場合、他の部分の工事を一時的にストップし、異常の原因を分析する。異常の原因が特定されたら、例えば骨材を他のものに代えたり、転圧処理を適正に行うようにするなど、施工処理の是正を講じることが可能となる。したがって、舗装の品質を向上させることができるほか、再工事による時間的、コスト的な無駄を削減することが可能となる。
【0131】
[作用及び効果]
以上のような路面状態測定システム1により奏される作用及び効果について説明する。
【0132】
路面状態測定システム1は、レーザ変位計11を主走査方向及び副走査方向にそれぞれ独立に移動させることにより、レーザ変位計11を2次元的に移動させることができる。それにより、路面上の測定領域に対して、従来のような1測線のみの測定ではなく、複数の測線について測定を行うことができる。
【0133】
1測線における基長区間の個数が同じ(例えば10区間)である場合、従来の1測線のみの測定では、MPDについては10個、累計延長比と接触部分比についてはそれぞれ1個の値しか取得することができなかったが、本実施形態のような走査(図13参照)を行うことにより、MPDについては10×11=110個、累計延長比及び接触部分比につてはそれぞれ1×11=11個の値を取得することができる。
【0134】
したがって、本発明によれば、従来よりも多くのテクスチャ評価値を取得することができるので、統計的に精度の高い測定を行うことができ、テクスチャ評価の信頼性が向上される。
【0135】
ここで、レーザ変位計11による路面高さの計測間隔は、従来と同様に例えば0.1ミリメートルに設定されているので、各測線についての測定精度の低下はない。なお、本発明においては、計測速度の速いレーザ変位計を用いて測定の長時間化を避けることが実用上望ましい。
【0136】
更に、複数の測線について測定を行うことにより、従来よりも広範囲からのデータを収集することが可能となり、従来と比較して路面全体の状態をより好適に反映したテクスチャ評価を行うことが可能となる。
【0137】
また、各テクスチャ評価値について複数の値を算出してそれらの平均値を求めるとともに、その平均値を用いて路面のテクスチャの状態を評価することができるので、テクスチャ評価の信頼性が向上される(理由は後述する)。
【0138】
また、路面状態測定システム1は、MPD、累計延長比、接触部分比など複数種類の評価値を勘案して路面のテクスチャを評価するように構成されているので、総合的で信頼性の高いテクスチャ評価を実現することができる。
【0139】
更に、図11のフローチャートに示すように、求めたテクスチャ評価値が許容範囲内であるか否かを判断し、許容範囲外であると判断されたときに報知を行うように構成されているので、異常の発生を容易に知ることができる。それにより、その異常の原因を施工現場にて発見しリアルタイムでフィードバックして施工処理を是正することができるので、施工現場における利用に有効であると期待される。特に、複数種類のテクスチャ評価値のいずれかが許容範囲外であったときに異常の可能性を報知するようにすれば、総合的なテクスチャ評価を施工現場にて行うことができる。
【0140】
(従来のテクスチャ評価との比較)
本発明によるテクスチャ評価と従来のそれとを比較して本発明の有効性を検証する。
【0141】
図14は、骨材の最大粒径が13ミリメートルの排水性舗装(「13mm」、「排水13mm」などと記載)、同5ミリメートルの排水性舗装(「5mm」、「排水5mm」などと記載)、及び、同13ミリメートルの密粒度舗装(「密粒」と記載)のそれぞれについて、本実施形態の路面状態測定システム1により取得されたMPDの測定結果を表している。測定は、図12に示したように、1メートル×10センチメートルの領域に11測線を設定して行った。
【0142】
図14(A)には、「13mm」は19箇所の測定領域について、「5mm」は7箇所の測定領域について、「密粒」は3箇所の測定領域について、それぞれ11測線上を測定し、各測線において10個のMPDを求めてその平均値(平均値MPDと呼ぶ)を算出するとともに、この11個の平均値MPDの値のばらつき(変動範囲)及び平均値が示されている。なお、「13mm」については、4箇所の舗装A〜Dについて測定を行った。また、図14(B)には、当該測定に基づいて算出された各舗装における平均値MPDの平均値、平均値MPDの変動係数(=(標準偏差)/(平均値))及び変動範囲の平均値が示してある。
【0143】
同図に示す測定結果から分かるように、各測定領域における11個の平均MPDには大きなばらつきがある。すなわち、測定領域内のどの位置(どの測線)を測定するかによって、取得されるMPDの値は変動してしまう。具体的には、「密粒」における変動範囲は最も小さく0.47ミリメートルであり、次いで「5mm」おいては0.77ミリメートルであり、更に「13mm」においては1.75ミリメートルもの変動範囲がある。
【0144】
また、例えば「13mm」の舗装A等の測定結果から分かるように、同一舗装路面上のどこに測定領域を設けるかによっても、取得されるMPDの値は少なからず変動してしまう。
【0145】
したがって、従来のような1測線のみの測定では、路面上における測定領域の位置に加え、その測定領域における測線の位置により、測定結果に大きな誤差が生じることとなるため、テクスチャ評価の信頼性を保証することは困難である。
【0146】
ここで、図14(A)に示す各測定領域の平均値を見ると、例えば「13mm」の舗装Aにおける6個の平均値はそれほど大きな変動を有していない。本発明に係る上記実施形態では、当該平均値を算出し、それを用いてテクスチャを評価するようになっているため、従来と比較して信頼性の高い評価を行うことが可能と考えられる。
【0147】
また、図15は、「13mm」の1メートル×10センチメートルの測定領域について取得された110個のMPDの変動の状態を表すもので、図15(A)は横断方向(副走査方向)における変動の状態を示し、図15(B)は縦断方向(主走査方向、測線方向)における変動の状態を示している。同図の結果を得るための測定は、使用材料及び舗装構成などのデータが明示された基準路面に対して行った。
【0148】
図15(A)、(B)から分かるように、測定領域内におけるMPDの値は、横断方向においても縦断方向においても不規則に分布している。したがって、従来の1測線のみの測定では、1メートル×10センチメートルの範囲の測定領域すらも有効に評価することは困難であるといえる。なお、「5mm」及び「密粒」についても同様の測定を実施したが、同様の傾向が見られた。
【0149】
このように、1測線のみに対する測定結果から路面のテクスチャを評価する従来の手法により得られるテクスチャ評価値は信頼性に問題があることが分かる。
【0150】
本発明は、従来のような「線」としての評価ではなく、路面のテクスチャを「面」として評価することによりその信頼性を向上させようとするものである。以下に、本発明による測定及び評価手法の有効性を説明するとともに、この「面」としての評価を有効に行うために必要なテクスチャ評価値のサンプル数について検討する。
【0151】
そのために、「13mm」の舗装の1メートル×10センチメートルの測定領域について1ミリメートルピッチの101測線を設定して1010個のMPDの値を収集した。図16は、その測定結果を表す。
【0152】
図16(A)のヒストグラムは、当該測定により収集されたMPDの値の分布を表している。同図に示すように、MPDの分布状況は正規分布に近似していることから、それを正規分布とみなして母平均の区間推定を行う。
【0153】
図16(B)は、図16(A)に示すMPDの分布における、信頼区間95%の母平均の区間推定の結果を示している。なお、同図には、「5mm」、「密粒」について行った同様の測定に基づく結果も記載されている。
【0154】
図16(B)から分かるように、母平均μの最小値と最大値との幅は十分に小さく、ばらつきが小さいことから、当該測定により収集したデータにより、母集団である路面全体を十分に評価することができる。したがって、1メートル×10センチメートルの測定領域に101の測線を設定して1010個のMPDを収集すれば、高い信頼性で路面のテクスチャを評価できることが分かった。
【0155】
次に、テクスチャ評価を有効に行うために必要な評価値のサンプル数について検討する。図14(B)の表の「平均値MPDの平均」の値から分かるように、「5mm」に−0.2ミリメートルの誤差が介在し、「密粒」に+0.2ミリメートルの誤差が介在すると、MPDの値からそれらの違いを判別することが困難となる。そこで、0.1ミリメートルの誤差でMPDを取得するために必要なMPDのサンプル数を求めると、「13mm」については93個となった。図16(C)は、「13mm」、「5mm」、「密粒」について、上記実施形態のように110個のMPDを取得したときの精度を表すものである。
【0156】
なお、詳細については省略するが、本発明者らが実施した測定によれば、MPD、累計延長比、接触部分比は、それぞれ互いに高い相関係数を有しており、また、「13mm」に対する測定により、MPDの変動係数は、累計延長比及び接触部分比の変動係数よりも大きいとの結果を得た。したがって、上記のようにMPDについて信頼性の高い結果が得られたので、累計延長比及び接触部分比についても高い信頼性を仮定することができる。
【0157】
このように、本発明によれば、路面の測定領域内を2次元的に走査して100個程度のテクスチャ評価値(MPD、累計延長比、接触部分比等)を取得することにより、路面のテクスチャ評価を「面」として行うことができ、評価の信頼性を向上することが可能となる。
【0158】
[変形例]
以上に詳述した構成は、本発明を好適に実施するための一例に過ぎないものである。したがって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形を施すことが可能である。
【0159】
例えば、レーザ変位計による計測位置の走査態様は、図12に示したものに限定されるものではなく、例えば、各測線上を同じ向きに走査するなど、結果的にレーザ変位計を2次元的に走査するものであればよい。
【0160】
また、レーザ変位計(計測手段)を路面に平行に移動させるための構成(走査手段)は、上述したようなボールネジやステッピングモータやレール等による構成に限定されることはなく、レーザ変位計を2次元的に平行移動させることができるものであれば任意の構成を適用することが可能である。
【0161】
また、上記の実施形態では、テクスチャ評価値としてMPD、累計延長比及び接触部分比の全てを用いるように構成されているが、本発明としては、これらのうちの少なくとも1つを用いれば十分である。ただし、複数の評価値を用いてテクスチャを総合的に評価することが望ましい。
【0162】
また、路面までの距離を計測する計測手段としてレーザ変位計以外の機器を適用することも可能である。
【0163】
〔計測手段の走査態様に関する変形例〕
図17は、上記実施形態とは異なる走査態様で計測手段(たとえばレーザ変位計)を移動させる路面状態測定システムの概略構成を表している。同図に示す構成によれば、同心円状の測線に沿った複数の計測データ列、更には、螺旋状の測線に沿った計測データ列を取得することができる。
【0164】
(構成)
図17(A)は、レーザ変位計301を走査するための構成を下方(路面側)から見たときの下面図である。また、図17(B)は、当該構成を側方(路面に平行な方向)から見たときの側面図である。両図に示す構成は、上記実施形態における図2に相当するものである。図17に示す構成物は、測定本体部10(図1参照)内に格納されており、図5に示すような昇降機構によって路面近くの位置まで下降され、測定に供されるようになっている。
【0165】
レーザ変位計301は、路面に対して略平行に配設されたアーム302に取り付けられている。このアーム302の一端は、回動軸303aを介して回動機構303に取り付けられている。回動機構303には、この回動軸303aを回動させるアクチュエータ(モータ等)が設けられている。回動機構303は、このアクチュエータの駆動力により、回動軸303aを中心にアーム302を回動させるように作用する。
【0166】
このように作用するアーム302及び回動機構303は、レーザ変位計301を路面に略平行な円周方向に移動させる本発明の「主走査手段」の一例に相当する。
【0167】
アーム302には、その長手方向(回動機構303による回動方向に直交する径方向)に沿って、開口部302aが形成されている。また、レーザ変位計301の上側には、上方に延びる保持部301aが設けられている。この保持部301aは、アーム302の開口部302aを下方から上方に挿通するように配設されている。レーザ変位計301の保持部301aのアーム302よりも上方側には、アーム302の長手方向に沿って開口部301bが形成されている。
【0168】
アーム302上面側の回動機構303の近傍位置には、更なる回動機構304が取り付けられている。この回動機構304には、回動軸304aの一端が接続されており、内蔵のアクチュエータ(モータ等)の駆動力によってこの回動軸304aを回転させるようになっている。この回転軸304aは、アーム302の長手方向に沿って配設されており、その他端は、レーザ変位計301の保持部301aの開口部301bに挿通されている。
【0169】
回動軸304aは、その表面にネジ山が螺刻してあり、ボールネジとして作用する。また、レーザ変位計301の保持部301aの開口部bは、ボールネジとしての回動軸304aに螺合する雌ネジとして作用する。このような構成により、回動機構304が回動軸304aを回動させることによって、レーザ変位計301がアーム302の長手方向に沿って移動されるようになっている。レーザ変位計301の移動方向は、回動軸304aの回転方向に応じて切り換えられる。
【0170】
このように作用するアーム302及び回動機構304は、レーザ変位計301を上記円周方向に直交する径方向に移動させる本発明の「副走査手段」の一例に相当する。
【0171】
回動機構303、304の動作は、それぞれ、上記の実施形態におけるCPU21(図7参照)のようなマイクロプロセッサなどの制御手段によって制御されるようになっている。
【0172】
以上のような構成を具備する本変形例の路面状態測定システムによる、計測手段の走査態様について説明する。
【0173】
(第1の走査態様)
第1の走査態様は、計測手段を同心円状に走査するものである。そのためにまず、CPU21は、回動機構304を制御して、レーザ変位計301をアーム302に対する第1の走査位置に配置させる。この第1の走査位置は、たとえばアーム302の外側の端部(回動軸303aの逆側の端部)近傍の位置とされる。
【0174】
次に、CPU21は、レーザ変位計301を第1の走査位置に固定配置させた状態のまま、回動機構303を制御してアーム302を円周方向に回転させる。このとき、レーザ変位計301は、所定の計測間隔で路面までの距離を連続的に計測する。それにより、レーザ変位計301は、第1の走査位置と回動軸303aとの間の距離を半径(r1)とし、かつ、回動軸303aを中心とする円周C1に沿った測線上の計測データ列を取得することとなる。
【0175】
続いて、CPU21は、回動機構304を制御して、レーザ変位計301を第2の走査位置に移動させる。第2の走査位置は、たとえば、第1の走査位置から回動軸303a方向に所定距離だけ移動した位置とされる。そして、CPU21は、レーザ変位計301を第2の走査位置に固定配置させた状態のまま、回動機構303を制御してアーム302を円周方向に回転させる。このとき、レーザ変位計301は、所定の計測間隔で路面までの距離を連続的に計測する。それにより、レーザ変位計301は、第2の走査位置と回動軸303aとの間の距離を半径(r2)とし、かつ、回動軸303aを中心とする円周C2に沿った測線上の計測データ列を取得する。
【0176】
このような測定を繰り返すことにより、第iの走査位置と回動軸303aとの間の距離を半径(ri)とし、かつ、回動軸303aを中心とする円周Ciに沿った測線上の計測データ列が取得される(i=1〜N)。これらN個の円周C1〜CNは、回動軸303aを中心とする同心円となっている。
【0177】
(第2の走査態様)
第2の走査態様は、計測手段を螺旋状に走査するものである。そのためにまず、CPU21は、回動機構304を制御して、レーザ変位計301を所定の走査開始位置に配置させる。この走査開始位置は、たとえばアーム302の外側の端部近傍の位置とされる。
【0178】
続いて、CPU21は、回動機構303を制御してアーム302を所定の回転速度で回転させるとともに、回動機構304を制御してレーザ変位計301を走査開始位置から所定の移動速度で(回動軸303a方向に向けて)移動させる。このとき、レーザ変位計301は、所定の計測間隔で路面までの距離を連続的に計測する。それにより、レーザ変位計301は、走査開始位置から徐々に回転半径が小さくなっていく螺旋状の測線上の計測データ列を取得する。
【0179】
(作用及び効果)
このような走査形態を実現する本変形例によれば、次のような作用効果が奏される。
【0180】
上述の第1の走査態様によれば、上記の実施形態と同様に、路面上の測定領域に対して同心円状の複数の測線上の計測データ列を取得することができるので、路面のテクスチャ評価の信頼性の向上を図ることが可能である。
【0181】
また、第2の走査態様によれば、路面上の測定領域について螺旋状の測線上の計測データ列を取得することができるので、前述の特許文献2に記載された従来の走査態様における単一円周上を計測する場合よりも広い範囲を計測することが可能である。したがって、路面のテクスチャ評価の信頼性向上を図ることが可能である。
【0182】
なお、図17に示した構成は、主走査手段及び副走査手段の一構成例である。本変形例における主走査手段は、計測手段を路面に略平行な円周方向に移動させるように作用するものであれば任意の構成を適用することが可能である。また、本変形例における副走査手段は、主走査手段による円周方向への走査方向(主走査方向)に直交する径方向(副走査方向)に計測手段を移動させるように作用するものであれば、その構成は任意である。
【0183】
また、上記実施形態において説明した各種の構成を本変形例に適用することが可能である。たとえば、テクスチャ評価値の許容範囲を記憶しておくとともに、算出されたテクスチャ評価値がこの許容範囲に含まれるか否か判断し、当該許容範囲に含まれないと判断されたことを報知する構成を適用することができる。このとき、平均キメ深さ、凹凸累計延長比、接触部分比などの複数種類のテクスチャ評価値の許容範囲を記憶しておき、それら複数種類のテクスチャ評価値の算出結果のそれぞれが許容範囲に含まれるか否か判断するように構成することが望ましい。
【0184】
[付記]
以上に説明した実施形態が備えるその他の特徴点を以下に記載する。
【0185】
〔付記請求項1〕
特許請求の範囲の請求項6に記載の路面状態測定システムであって、
前記主駆動手段は、ステッピングモータを含み、
前記主案内手段は、前記主走査方向を長手方向とするレールと、前記ステッピングモータの回転軸に一端が接続され、前記レールの長手方向に沿って配置されたボールネジと、前記計測手段が取り付けられ、前記ボールネジと係合する雌ネジ部を有し、前記ステッピングモータによる前記ボールネジの回転に応じて前記主走査方向に移動される取付部材とを含んでいる、
ことを特徴とする路面状態測定システム。
【0186】
〔付記請求項2〕
特許請求の範囲の請求項7に記載の路面状態測定システムであって、
前記副駆動手段は、ステッピングモータを含み、
前記副案内手段は、前記副走査方向を長手方向とするレールと、前記ステッピングモータの回転軸に一端が接続され、前記レールの長手方向に沿って配置されたボールネジと、前記計測手段が取り付けられ、前記ボールネジと係合する雌ネジ部を有し、前記ステッピングモータによる前記ボールネジの回転に応じて前記副走査方向に移動される取付部材とを含んでいる、
ことを特徴とする路面状態測定システム。
【0187】
〔付記請求項3〕
特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の路面状態測定システムであって、前記計測手段はレーザ変位計を含んでいることを特徴とする路面状態測定システム。
【0188】
〔付記請求項4〕
特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の路面状態測定システムであって、
前記計測手段を上下移動させる昇降手段を更に備えていることを特徴とする路面状態測定システム。
【0189】
なお、付記請求項4の「昇降手段」は、例えば、図5に示した昇降機構50Aのような構成を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態の外観構成の一例を表す概略斜視図である。
【図2】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態におけるレーザ変位計及びレールの構成の一例を表す概略斜視図である。
【図3】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態におけるレーザ変位計を移動させるための構成の一例を表す概略図であり、図3(A)は正面図、図3(B)は断面図である。
【図4】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態におけるレーザ変位計を移動させるための構成の一例を表す概略図であり、図4(A)は側面図、図4(B)は断面図である。
【図5】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態におけるレーザ変位計等を上下移動させるための構成の一例を表す概略側面図である。
【図6】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態におけるコントロールボックスの構成の一例を表す概略上面図である。
【図7】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態の制御系の構成の一例を表すブロック図である。
【図8】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態により算出されるMPDの算出方法を説明するための図である。
【図9】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態により算出される累計延長比の算出方法を説明するための図である。
【図10】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態により算出される接触部分比の算出方法を説明するための図である。
【図11】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態を用いたワークフローの一例を表すフローチャートである。
【図12】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態による測定態様を説明するための図である。
【図13】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態による測定態様を説明するための図である。
【図14】本発明による路面のテクスチャ評価の有効性を説明するために参照される図である。図14(A)は各種舗装に対する測定に基づき取得されたMPDの値の変動状況の一例を表す図であり、図14(B)は当該MPDの値の変動状況から算出された統計的なデータを記載した表である。
【図15】本発明による路面のテクスチャ評価の有効性を説明するために参照される図である。図15(A)は所定の測定領域について取得されたMPDの横断方向における変動状況の一例を表し、図15(B)は縦断方向における変動状況の一例を表している。
【図16】本発明により路面のテクスチャ評価を有効に行うために必要なサンプル数を検討するために参照される図である。図16(A)は所定の測定領域について取得されたMPDの値の分布を表すグラフ図であり、図16(B)は当該MPDの分布に対する母平均の区間平均の算出結果を記載した表であり、図16(C)は110個のMPDの値を用いて路面のテクスチャを評価するときの評価精度を記載した表である。
【図17】本発明に係る路面状態測定システムの実施形態の変形例における、レーザ変位計を走査するための構成の一例を表す概略図である。図17(A)は、レーザ変位計を走査するための構成の一例を表す概略下面図である。また、図17(B)は、レーザ変位計を走査するための構成の一例を表す概略側面図である。
【符号の説明】
【0191】
1 路面状態測定システム
2 台車
3 枠体
4、5 機器搭載棚
6 車輪
10 測定本体部
11 レーザ変位計
11A、13A、13B 取付部材
11a、13a 突出部
11b、13b 雌ネジ部
12A、12B、13 レール
120A、120B、130 ステッピングモータ
121A、131 ボールネジ
O 軸
50A 昇降機構
51A、51B モータ
52A 回転軸
53A ギア
54A アーム
55A 係合部
56A ネジ
20 コンピュータ
21 CPU
211 制御部
212 評価値演算部
213 表価値判断部
22 ハードディスクドライブ(HDD)
221 評価値情報記憶部
221A MPD許容範囲情報
221B 累計延長比許容範囲情報
221C 接触部分比許容範囲情報
23 表示部
24 音声出力部
25 ROM
26 RAM
30 コントロールボックス
31 電源ボタン
32A 電圧インジケータ
32B 電流インジケータ
33A 上昇ボタン
33B 下降ボタン
34A 計測開始ボタン
34B 計測停止ボタン
40 バッテリ
60 電源供給回路
301 レーザ変位計
301a 保持部
301b 開口部
302 アーム
302a 開口部
303、304 回動機構
303a、304a 回動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面までの距離を計測する計測手段と、前記計測手段を移動させて前記路面までの距離の計測位置を走査する走査手段と、前記移動される前記計測手段により取得される前記路面までの距離の計測データ列に基づいて前記路面のテクスチャの評価に用いられるテクスチャ評価値を算出する演算手段と、を有する路面状態測定システムであって、
前記走査手段は、前記計測手段を2次元的に移動させることを特徴とする路面状態測定システム。
【請求項2】
前記走査手段は、所定の主走査方向に前記計測手段を移動させて前記計測位置を走査する主走査手段と、前記主走査方向に直交する副走査方向に前記計測手段を移動させる副走査手段と、を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の路面状態測定システム。
【請求項3】
前記計測手段は、前記副走査手段により前記副走査方向における位置を変更され、当該変更された前記位置において前記主走査手段により前記主走査方向に移動されるときに所定の計測間隔で前記距離を計測して当該位置に対応する前記計測データ列を取得することにより、前記副走査方向の複数の位置に対応する複数の前記計測データ列を取得することを特徴とする請求項2に記載の路面状態測定システム。
【請求項4】
前記演算手段は、前記計測手段により取得された前記複数の計測データ列のそれぞれを複数の部分データ列に分割して各部分データ列毎に前記テクスチャ評価値を算出し、前記算出された前記各部分データ列毎の前記テクスチャ評価値の平均値を算出することを特徴とする請求項3に記載の路面状態測定システム。
【請求項5】
前記演算手段は、前記計測手段により取得された前記複数の計測データ列毎に前記テクスチャ評価値を算出し、前記算出された前記複数の計測データ毎のテクスチャ評価値の平均値を算出することを特徴とする請求項3に記載の路面状態測定システム。
【請求項6】
前記主走査手段は、
前記計測手段を駆動する主駆動手段と、
前記駆動される前記計測手段を前記主走査方向に案内する主案内手段と、
を含んでいることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の路面状態測定システム。
【請求項7】
前記副走査手段は、
前記計測手段を駆動する副駆動手段と、
前記駆動される前記計測手段を前記副走査方向に案内する副案内手段と、
を含んでいることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の路面状態測定システム。
【請求項8】
前記主走査手段は、前記計測手段を前記路面に略平行な円周方向に移動させ、
前記副走査手段は、前記計測手段を前記円周方向に直交する径方向に移動させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の路面状態測定システム。
【請求項9】
前記計測手段は、前記副走査手段により前記径方向における位置を変更され、当該変更された前記位置において前記主走査手段により前記円周方向に移動されるときに所定の計測間隔で前記距離を計測して当該位置に対応する前記計測データ列を取得することにより、同心円状の測線に沿った複数の前記計測データ列を取得することを特徴とする請求項8に記載の路面状態測定システム。
【請求項10】
前記計測手段は、前記副走査手段により前記径方向に所定の速度で移動されつつ、前記主走査手段により前記円周方向に移動されながら所定の計測間隔で前記距離を計測して前記計測データ列を取得することにより、螺旋状の測線に沿った前記計測データ列を取得することを特徴とする請求項8に記載の路面状態測定システム。
【請求項11】
あらかじめ設定された前記テクスチャ評価値の許容範囲を記憶する記憶手段と、
前記演算手段により算出された前記テクスチャ評価値が前記許容範囲に含まれるか否か判断する判断手段と、
前記判断手段により前記テクスチャ評価値が前記許容範囲に含まれないと判断されたことを報知する報知手段と、
を更に備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の路面状態測定システム。
【請求項12】
前記記憶手段は、複数種類の前記テクスチャ評価値の許容範囲を記憶しており、
前記演算手段は、前記計測データ列に基づいて前記複数種類の前記テクスチャ評価値をそれぞれ算出し、
前記判断手段は、前記算出された前記複数種類の前記テクスチャ評価値のそれぞれについて、前記記憶手段に記憶された前記許容範囲に含まれるか否か判断する、
ことを特徴とする請求項11に記載の路面状態測定システム。
【請求項13】
前記複数種類の前記テクスチャ評価値は、平均キメ深さ、凹凸累計延長比及び接触部分比のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項12に記載の路面状態測定システム。
【請求項14】
路面までの距離を計測する計測手段と、前記計測手段を移動させて前記路面までの距離の計測位置を走査する走査手段とを有し、前記移動される前記計測手段により、前記路面のテクスチャの評価に用いられる前記路面までの距離の計測データ列を取得する路面状態測定装置であって、
前記走査手段は、前記計測手段を2次元的に移動させることを特徴とする路面状態測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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