説明

踏切制御装置

【課題】踏切の必要警報時間を確保すると共に、車両の走行速度に係わらず踏切の遮断時間を一定とする。
【解決手段】車上踏切制御部5は車両上に備えられ、踏切装置を制御する地上踏切制御部10と無線で通信を行ない該地上踏切制御部を制御する。運転曲線予測部16は、路線上のある地点から先の走行速度を示す運転曲線を予測し予測運転曲線を生成する。踏切制御タイミング演算部17は前記予測運転曲線に基づき、現在位置から踏切までの到達時間を予測し、前記予測運転曲線及び到達時間に基づき、踏切警報及び遮断に必要な時間を確保できる踏切制御指令発信位置を算出し、車両が当該位置に到達したら踏切に対して遮断指令を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車上から踏切遮断機の動作タイミングを指示する踏切制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車の高速運転、高密度運転、更にラッシュアワーにおける低速走行により踏切の遮断時間が長くなる傾向にある。踏切遮断時間を短くする方法として、車上側で遮断機の開閉タイミングを計算し、無線で踏切装置と通信する方法がある。
【0003】
特許文献1に記載された踏切制御システムでは、運転制御装置が適当な地点で走行制御パターンと、車両の走行位置及び速度と踏切位置に基づいて、踏切を制御する適切なタイミング時刻を求める。又、踏切の直前に停止する踏切停止走行制御パターンを発生させる。運転制御装置は、踏切に設置された踏切制御装置に対して無線装置を介して踏切制御指令を送信する。踏切制御装置は受信応答信号と踏切正常信号を運転制御装置へ返す。運転制御装置は両信号を受信することにより踏切停止走行制御パターンを消去する。
【0004】
しかし、特許文献1の踏切制御システムでは、踏切停止走行制御パターンが消去された後には、規定された必要警報時間(警報が鳴り出してから遮断機が下りるときまでの時間、遮断機が下りてから、列車が踏み切りに到達するまでの時間等)が必ずしも確保されない。
【0005】
特許文献2に記載された踏切制御システムでは、このことを考慮して、運転制御装置が遮断完了を受信した場合に、車両の現在位置、現在速度から、最大加速度をして走行制御(制限速度)パターンに従って走行したときの踏切までの到達時間が、規定の時間以上か否か判定する。規定の時間以上であるときは即座に踏切制御パターンの消去を行い、規定の時間以下のときには、不足する時間に応じた遅延の後に踏切停止走行制御パターンの消去を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−10667
【特許文献2】特開2004−224155
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された踏切制御システムでは、特許文献2が述べているように、踏切制御パターンが消去された後の走行方法によっては必要警報時間が確保されないという課題がある。
【0008】
又、特許文献2では、必要警報時間(規定時間)を確保するために、運転制御装置が遮断又は警報完了信号を受信した場合に、車両の現在位置、現在速度から最大加速を行い、走行制御パターンに従って走行したときの踏切までの到達時間から警報時間を決めているが、最大加速度で走行しなかった場合は、その分遮断時間が長くなるという課題がある。
【0009】
ところで、特許文献2の図2によると、走行制御パターンPTはそのパターン以下に速度が維持されるような制御曲線である。又、特許文献2の図3では、踏切までの到達時間を計算する時点での車両の現在速度Vaは、最大加速によって走行制御パターンPTで決まる最高許容速度よりも下の速度となっている。つまり、走行制御パターンPTは、ATS−P(パターン制御式列車自動停止装置)やATC(自動列車制御装置)のブレーキ曲線に該当し、信号機による減速・停止パターン及び、曲線や分岐の安全通過、勾配での停止距離確保、乗客の乗り心地確保等のための減速パターンと考えられる。
【0010】
これらの走行制御は車両速度がパターンを越えた時にのみ行うものであり、パターンを下回っている限りにおいては加速も減速も制御するものではなく、その速度制御は運転士の裁量に委ねられている。従って、踏切に到達するまでの走行時間にばらつきが生じる。例えば、分岐器の無い駅、いわゆる棒線駅などは、停止する列車に対しても進行信号が出力されている。つまり、停止する列車の走行すべき軌跡は走行制御パターンとは異なっており、特許文献2の方法では、踏切遮断時間が長くなってしまう。又、平行ダイヤと言って、列車密度を向上するためにラッシュ時は各駅停車も急行列車も駅間を同じ時間で走行するように設定することがある。先行列車の影響が無いとき、駅での停止/加速部分を除いて、走行制御パターンは両者同じになるが、実際の走行速度は時間調整のため、急行列車は各駅停車よりも低速で走行することになり、踏切の制御タイミングは両者で異なってくる。
【0011】
本発明は、踏切の必要警報時間を確保すると共に、車両の走行速度に係らず踏切の遮断時間を一定とすることを目的とする。又、障害物センサが作動した場合あるいは非常停止ボタンが押されたときに、自動的に車両を停止させることを目的とする。更に、車上踏切制御部を持たない車両、車上踏切制御部が故障している車両に対しても、必要な警報時間を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため本発明では、踏切までの到達時間を走行制御パターンによって予測するのではなく、現在距離・速度及び列車ダイヤから、今後走行する運転曲線(車両速度)を予測し、この予測運転曲線に沿って踏切までの走行時間を予測することにより、踏切の必要警報時間を確保すると共に、遮断時間を一定とする。
【0013】
本発明の一実施例に係る踏切制御装置は、車両上に車上踏切制御部と、車上踏切制御部から受信した踏切制御指令に基づいて踏切の警報・遮断動作を実行する地上踏切制御部と、車上踏切制部と地上制御部間を接続する送受信部とを備える。前記車上踏切制御部は、車両の走行位置と速度を検出し、走行制御アルゴリズムに従って、車両がある地点からの走行すべき運転曲線(位置/速度の走行軌跡)を予測・生成し、前記運転曲線に沿って現在位置から踏切までの到達時間を算出し、前記到達時間が前記送受信部おける車上/地上間の通信時間を含めて踏切警報・遮断に必要な時間となった地点に達すると、地上踏切制御部に対して遮断指令を出力し、前記遮断指令出力後、踏切停止パターンを生成し、運転制御部へ渡す。
【0014】
地上踏切制御部は遮断指令を受信すると、正常応答を前記車上踏切制御部へ返信すると共に、警報装置を稼動させ、一定時間後に遮断機を降下し、前記車上踏切制御部は、地上踏切制御部から正常応答を受信すると、前記踏切停止パターンを消去するよう、運転制御部へ通知する。運転制御部は、地上の信号制御装置による減速パターンと踏切停止パターンのどちらか低い方のパターンに従って、ブレーキ制御指令をブレーキ制御部へ出力する。
【0015】
本発明の一実施例に係る車上踏切制御部は、運転制御部が予測運転曲線と減速パターンと踏切停止パターンのいずれか速度の低い方のパターンに沿って、モータ制御指令(加速指令)、ブレーキ制御指令を行い、車両を自動運転することを特長とする。
【0016】
又、本発明に係る車上踏切制御部は、予測・履歴運転曲線表示部が、前記予測運転曲線上に、速度・位置走行履歴(履歴運転曲線)を重ね合わせ表示し、運転士が予測運転曲線に沿って車両を運転するよう支援することを特長とする。
【0017】
又、本発明に係る車上踏切制御部は、踏切装置に設けられた障害検知センサが障害物を検知すると再び踏切停止パターンを生成することにより、一旦踏切制御パターン消去された後に踏切で障害が発生しても車両を踏切手前に停止できることを特長とする。
【0018】
又、本発明に係る車上踏切制御部は、踏切装置に設けられた非常停止ボタンが押されると、再び踏切停止パターンを生成することにより、一旦踏切制御パターン消去された後に車両を非常停止できることを特長とする。
【0019】
更に、本発明に係る踏切制御装置は、車両上と地上に通過検知器をそれぞれ具備し、これら通過検知器が車両通過を検知すると、地上踏切制御部は、車上踏切制御部から機能稼動中信号を受信した場合は、車上踏切制御部からの踏切遮断指令を受付け、車上踏切制御部から機能稼動中信号を受信できない場合は、地上側で捕らえた車両の通過検知情報だけで踏切警報・遮断制御することにより、本願の車上踏切制御部を具備しない、又は車上踏切制御部が故障中の車両も当該路線を走行可能であることを特長とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、踏切の必要警報時間を確保すると共に、車両の走行速度に係らず踏切の遮断時間を一定とすることが可能となる。又、障害物センサが作動した場合あるいは非常停止ボタンが押されたときに、自動的に車両を停止させることができる。更に、車上踏切制御部を持たない車両又は車上踏切制御部が故障している車両に対しても、必要な警報時間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1に係る踏切制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】上記実施例1に係る予測運転曲線、制限速度パターン、踏切停止パターンを示す図である。
【図3】上記実施例1に係る踏切遮断指令のタイムチャートを示す図である。
【図4】上記実施例1に係る予測運転曲線、制限速度パターン、踏切停止パターンを示す図である。
【図5】本発明の実施例2に係る踏切制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例3に係る踏切制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】上記実施例3に係る予測・履歴運転曲線の表示例を示す図である。
【図8】本発明の実施例4に係る踏切装置の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施例5に係る踏切装置の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施例6に係る踏切制御装置の構成を示す図である。
【図11】上記実施例6に係る車上/地上踏切制御部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら実施の形態について説明する。尚、以下の説明において同一の要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の実施例1に係る踏切制御装置を示すブロック図である。
【0024】
車上踏切制御部5は、運転曲線予測部16と踏切制御部タイミング演算部17と踏切停止パターン制御部18とから構成される。踏切装置2は路線上に設置され、踏切の警報及び遮断動作を実行し、踏切車上装置1と情報通信を無線で行う。
【0025】
運転曲線予測部16は速度・位置検出部9から車両1の走行位置と速度を入力すると共に、運転制御部6から信号制御装置3の信号情報を入力する。信号制御装置3はATS−PやATC等の地上装置である。速度・位置検出部9は位置補正用トランスポンダと速度発電機による方法や、GPS、ドップラーレーダなどにより行う方法が用いられる。信号制御装置3からの信号情報としては、前車両に接近したときの減速パターン情報の他、臨時速度制限がある。
【0026】
運転曲線予測部16は、入力した速度・位置、信号情報及びデータ記憶部4に記憶された走行制御アルゴリズム12、車両性能DB(データベース)13、路線DB14、列車ダイヤ15に従って、ある地点からの車両が走行すべき運転曲線(位置/速度の走行軌跡)を予測・生成する。すなわち予測運転曲線は、ある地点から先の走行速度を予測した曲線である。この予測運転曲線P1を図2に示す。この予測運転曲線P1は列車ダイヤに応じて決定され、停止駅での減速停止部と発車時の加速部を含んでいることが特徴である。例えば朝のラッシュアワーのような利用客が多い時間帯では、制限速度が同一であっても、この運転曲線は他の時間帯に比べ速度の低いパターンとなる。
【0027】
踏切制御タイミング演算部17は予測運転曲線に沿って現在位置から踏切までの到達時間T1を算出し、到達時間が送受信部8a/8bおける車上−地上間の通信時間を含めて踏切警報・遮断に必要な時間となった地点に達すると、踏切装置2の地上踏切制御部10に対して遮断指令31を出力する。予測運転曲線は踏切通過まで逐次更新するが、遮断指令31の出力後は、踏切への到達時間が短くなるような変更は行わない。尚、通信時間はノイズ等の通信環境に左右されることがあるため、タイマ方式として遮断指令31を残り時間付きで事前に出力しておいても良い。つまり図2において、遮断指令出力時点から予想踏切到達時点までの適切な所要時間が例えば35秒である場合、予想踏切到達時点より例えば40秒手前で通信を開始すると共に時間を計測し、丁度35秒手前になったとき、遮断指令を出力する。こうすれば正確な時点で遮断指令を出力することができる。又、踏切制御タイミング演算部17は車両が踏切を通り過ぎると、地上踏切制御部10に対して遮断解除指令34を出力する。
【0028】
踏切遮断指令に関するタイムチャート例を図3に示す。
【0029】
踏切警報時間と遮断〜到達までの時間は、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令の施行及びこれに伴う国土交通省関係省令の整備等に関する省令 第一条第三号の規定による廃止前の普通鉄道構造規則第四十四条第二項、第四十六条から第四十八条まで、第60条及び第百三十九条第二項の基準を定める告示」では、「警報開始から遮断完了までは15秒を標準とし10秒以上、遮断完了から車両到達までは20秒を標準とし15秒以上あること」と記されている。警報開始から遮断完了までの時間T3を15秒、遮断完了から車両到達までの時間T4は20秒、車上踏切制御部5と地上踏切制御部間10の通信時間T2を1秒とすると、車上踏切制御部5からの遮断指令31は踏切到達の36秒前に出力することになる。
【0030】
地上踏切制御部10からの正常応答32を受信したときは、踏切停止パターンを消去する。地上踏切制御部10から異常応答33を受信するか、正常応答32を受信できないときは、踏切停止パターンはそのまま残り、車両は停止する。列車速度が踏切停止パターンに当り、減速中に正常応答32を受信した時は、ブレーキは解除されるが、その後の加速は予測時間より早く踏切に到着しない範囲で可能となる。
【0031】
地上踏切制御部10は遮断指令31を受信かつ踏切装置2に異常が無ければ、正常応答32を車上踏切制御部5へ返信すると共に、警報装置11aを鳴動させ、一定時間後に遮断機11bを降下させる。踏切装置2に異常があれば、異常応答33を車上踏切制御部5へ返信する。又、地上踏切制御部10は遮断解除指令34を受信すると、警報装置11aの鳴動を停止させると共に、遮断機11bを上昇させる。
【0032】
尚、上記の例では、踏切装置2に異常がなければ、遮断機11bが正常に稼動するものとして正常応答32を即座に返信することとしたが、オプションとして踏切遮断機11bの遮断完了をもって正常応答を返信しても良い。
【0033】
踏切停止パターン制御部18は、踏切制御タイミング演算部17が遮断指令31を出力したタイミングで、当該踏切に対する踏切停止パターンを生成し、運転制御部6へ渡す。地上踏切制御部10から正常応答32を受信した場合は、踏切停止パターン制御部18は、踏切制御パターン消去指令を運転制御部6へ通知する。尚、異常応答33を受信したり、正常応答32がタイムアウトとなった場合は何もしないので、車両1は踏切停止パターンに従って停止することになる。
【0034】
運転制御部6は、ATS−PやATCに該当し、通常は地上の信号制御装置3からの信号に基づいて作成した減速パターンに従って、ブレーキ制御指令をブレーキ制御部7へ出力する。ただし、運転制御部6は予測運転曲線及び踏切停止パターンを入力した時は、図2に示すように予測運転曲線と踏切停止パターンのどちらか低い方のパターンに従って、ブレーキ制御指令をブレーキ制御部7へ出力する。尚、予測運転曲線は減速パターンを上回ることは無い。
【0035】
図4は駅間運転時間に余裕がある場合の予測運転曲線の1例を予測運転曲線P2として示す。余裕を使うために、最高速度を落して走行している。この例の場合、走行速度が低くなっているため、遮断指令を出す地点L2を図2のL1に比べて踏切寄りとし、遮断指令出力から踏切到達までが36秒で同一であるように調整する。
【0036】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、踏切までの予測到達時間を列車ダイヤの情報を含めて計算するので、安全確保のための制限速度パターンを下回る速度で走行する様々なケースにおいて、踏切遮断時間を一定とすることができる。又、信号制御装置3からの信号情報を使用して逐次運転曲線を予測(計算)するので、前列車に接近したことを示す信号あるいは臨時速度制限を示す信号が、信号制御装置3から入力された時にも適切な予測ができる。更に、予測到達時間よりも早く到達することを防ぐ列車制御を行うので、必要な踏切遮断時間を確保することができる。
【実施例2】
【0037】
図5は本発明の実施例2に係る踏切制御装置の一例を示すブロック図である。
【0038】
運転制御部6’はATO(自動列車運転装置)に該当し、通常は地上の信号制御装置3からの信号に基づく制限速度パターンより速度の低い目標速度パターンに沿って走行するように、加速指令をモータ制御部22へブレーキ制御指令をブレーキ制御部7へ出力する。
【0039】
ただし、予測運転曲線と踏切停止パターンを入力した時は、予測運転曲線と踏切停止パターンのどちらか低い方のパターンに沿って、加速時は加速指令をモータ制御部22へ、減速時はブレーキ制御指令をブレーキ制御部7へ出力する。
【0040】
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、車両を自動運転することにより、運転士の裁量による加速制御のばらつきを排除し、踏切遮断時間を更に一定とすることができる。
【実施例3】
【0041】
図6は本発明の実施例3に係る踏切制御装置を示すブロック図である。
【0042】
予測・履歴運転曲線表示部21は、運転曲線予測部16から予測運転曲線を入力してモニタ等に表示する。更に、速度・位置検出部9から逐次車両の速度・位置を入力し、速度・位置走行履歴(履歴運転曲線)を重ね合わせ表示する。表示例を図7に示す。運転士はモニタを見て、列車速度の実測値を示す履歴運転曲線P4が、予測運転曲線P3に一致するように、列車速度を適切かつ容易に制御できる。
【0043】
(実施例3の効果)
本実施例3によれば、ATS−P,ATCのように加速制御を持たない列車制御装置を搭載した車両や、通常のATSのように停止制御のみで減速制御機能を持たない車両に対しても踏切遮断時間を一定とするように、運転士を支援することができる。
【実施例4】
【0044】
図8は本発明の実施例4に係る踏切制御装置のうち、踏切装置側の一例を示すブロック図である。
【0045】
踏切遮断動作中に障害検知センサ23aが障害物を検知すると、地上踏切制御部10は異常応答33を送受信部8a/8bを経由して車上踏切制御部5へ通知する。車上踏切制御部5の踏切停止パターン制御部18は、再度踏切停止パターンを生成し、運転制御部6へ通知する。
【実施例5】
【0046】
図9は本発明の実施例5に係る踏切制御装置のうち、踏切装置側の一例を示すブロック図である。
【0047】
非常停止ボタン23bの押下を検知すると、地上踏切制御部10は異常応答33を送受信部8a/8bを経由して車上踏切制御部5へ通知する。車上踏切制御部5の踏切停止パターン制御部18は再度踏切停止パターンを生成し、運転制御部6へ通知する。
【0048】
(実施例4及び実施例5の効果)
本実施例4及び実施例5によれば、実施例1〜3の踏切制御装置に対して、障害物センサや非常停止ボタンが押されたときに、自動的に車両を停止させる機能を付加することができる。
【実施例6】
【0049】
図10は本発明の実施例6に係る踏切制御装置を示すブロック図である。
【0050】
本実施例では、通過車両が前述した実施例のように無線対応車両であるか判断し、無線対応車両である場合には、上記実施例1〜5のように踏切装置2が無線で制御され、非無線対応車両である場合には、従来と同様な方法で踏切装置2が制御される。
【0051】
地上には当該線区を走行する最速の車両が走行した場合でも、踏切の警報・遮断に必要となる時間と、通過車両が無線対応か否か判定するための時間とを加えた時間を確保できるような位置に通過検知器24aが設置される。この通過検知器24aの先には、従来の踏切用列車通過検知器が設置されている。一方、車両1上にも通過検知器24bが装備される。
【0052】
通過検知器24a/24bは、車両が通過検知器24a上を通過すると、通過信号をそれぞれ地上踏切制御部10及び車上踏切制御部5へ通知する。尚、地上側の通過検知器24aは、車上に通過検知器24bを持たない車両の通過も検知できるものとする。例えば、軌道回路とトランスポンダ(両方向通信器)を装備し、地上踏み切り制御部10は軌道回路で車両の通過を検知し、車上の通過検知器24bはトランスポンダによって通過を検知する。別の例では車軸検知器とRFID(無線タグ)を装備し、地上踏み切り制御部10は車軸検知器で車両の通過を検知し、車上の通過検知器24bはRFIDからの読み出し情報によって通過を検知する。
【0053】
以下、車上踏切制御部5と地上踏切制御部10の処理を図11を参照して説明する。
【0054】
車上踏切制御部5は、通過信号35aの通知を受けると(ステップS101)、機能稼働中信号41を地上踏切制御部10へ無線で通知する(ステップS102)。
【0055】
地上踏切制御部10は、通過信号35bの通知を受けると(ステップS201)、機能稼働中信号41の受信待ち状態となる(ステップS202)。
【0056】
地上踏切制御部10は、機能稼動中信号41を一定時間内に受信した場合、車上踏切制御部5からの踏切遮断指令31により、踏切の警報・遮断制御を行う(車上踏切制御部との協調制御モード)(S204)。機能稼動中信号を一定時間内に受信できない場合は、踏切遮断指令31によらずに、警報・遮断制御を行う(地上踏切制御部による単独制御モード)(S205−S206)。通過検知器24aは踏切通過後の位置にも設置してあり、車両を検知すると地上踏切制御部は踏切警報を停止し、遮断機を開放する(S207−S209)。
【0057】
(実施例6の効果)
本実施例6によれば、車上踏切制御部を持つ車両、持たない車両の混在走行が可能であり、実施例1から3の踏切装置を段階的に導入することが可能となる。又、車上踏切制御部が故障した車両も走行させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…車両、2…踏切装置、3…信号制御装置、4…車上データ記憶部、5…車上踏切制御部、6…運転制御部、7…ブレーキ制御部、8a…送受信部(車上側)、8b…送受信部(踏切側)、9…速度・位置検出部、10…地上踏切制御部、11a…踏切警報装置、11b…踏切遮断機、12…走行制御アルゴリズム格納部、13…車両性能DB格納部、14…路線DB格納部、15…列車ダイヤ格納部、16…運転曲線予測部、17…踏切制御タイミング演算部、18…踏切停止パターン制御部、21…予測・履歴運転曲線表示部、22…モータ制御部、23a…障害検知センサ、23b…非常停止ボタン、24a…通過検知器(地上側)、24b…通過検知器(車上側)、31…遮断指令、32…正常応答、33…異常応答、34…遮断解除指令、41…機能稼働中信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切の警報及び遮断動作を実行する踏切装置を制御する地上踏切制御部と通信を行ない該地上踏切制御部を制御する、車両上に備えられる車上踏切制御部であって、
前記地上踏切制御部との通信を無線で行う送受信部と、
路線上のある地点から先の走行速度を示す運転曲線を予測し、予測運転曲線を生成する手段と、
前記予測運転曲線に基づき、現在位置から踏切までの到達時間を予測する手段と、
前記予測運転曲線及び到達時間に基づき、踏切警報及び遮断に必要な時間を確保できる踏切制御指令発信位置を算出し、車両が当該位置に到達したら踏切に対して遮断指令を出力する手段と、
前記遮断指令を出力後に前記踏切の手前に停止するための踏切停止パターンを生成する一方、踏切からの正常応答により前記踏切停止パターンを消去する手段と、
を具備することを特徴とする車上踏切制御装置。
【請求項2】
前記予測運転曲線と踏切停止パターンと制限速度パターンのいづれか速度の低い方に沿って車両を加速及び減速させ、予測時間通りに踏切に到達するよう前記車両を自動運転する運転制御手段を更に具備することを特徴とする請求項1の車上踏切制御装置。
【請求項3】
前記車両の速度及び位置を検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出された前記速度及び位置に基づいて、前記車両の走行履歴を示す履歴運転曲線を作成する作成手段と、
前記予測運転曲線と前記履歴運転曲線を重ね合わせて表示する表示手段と、
を更に具備することを特徴とする請求項1の車上踏切制御装置。
【請求項4】
車両上に備えられる車上踏切制御部と、前記車上踏切制御部から受信した踏み切り制御指令に基づいて、踏切の警報及び遮断動作を実行する踏切装置に備えられる地上踏切制御部と、前記車上踏み切り制御部と前記地上踏切制御部間の通信を無線で行なう送受信部とを具備する踏切制御装置であって、
前記車上踏切制御部は、
路線上のある地点から先の各地点での走行速度を予測し、予測運転曲線を生成する手段と、
前記予測運転曲線に基づき、現在位置から踏切までの到達時間を予測する手段と、
前記予測運転曲線及び到達時間に基づき、踏切警報及び遮断に必要な時間を確保できる踏切制御指令発信位置を算出し、車両が当該位置に到達したら踏切に対して遮断指令を出力する手段と、
前記遮断指令を出力後に前記踏切の手前に停止するための踏切停止パターンを生成する一方、踏切からの正常応答により踏切停止パターンを消去する手段と、
を具備することを特徴とする踏切制御装置。
【請求項5】
前記地上踏切制御部は、前記踏切に障害検知センサ又は非常停止ボタンを具備し、前記障害検知センサ又は非常停止ボタンが作動すると、異常を示す信号を前記車上踏切装置に送信し、
前記車上踏切制御部は、前記異常を示す信号を前記地上踏切制御部から受信すると、前記踏切停止パターンを一旦消去した後でも、再び踏切停止パターンを生成し、車両を踏切手前に停止させることを特徴とする請求項4記載の踏切制御装置。
【請求項6】
前記車上及び地上踏切制御部は、車両通過検知手段を具備し、
前記車上踏切制御部は前記通過検知手段から車両通過を通知されると、前記地上踏切制御部に対して、所定信号を送信し、
前記地上踏切制御部は前記通過検知手段から車両通過を通知された後、所定時間内に前記車両から前記所定信号を受信しなければ、通過車両は前記車上踏切制御部を具備しない車両と判断し、前記通過車両が最速で走行した場合の踏切警報及び遮断にそれぞれ必要な時間を確保するタイミングで踏切警報及び遮断を開始することを特徴とする請求項4記載の踏切制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−228648(P2010−228648A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79788(P2009−79788)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】