説明

身体管腔閉塞治療処置具

【課題】 身体管腔の損傷を防止し、容易に当該身体管腔を選択的に閉塞させることができる簡単な構成により安価で製造できる身体管腔閉塞治療処置具を実現すること。
【解決手段】 本発明の身体管腔閉塞治療処置具2は、身体管腔70内に挿入され、内部に流体路12を備えた柔軟なチューブ状の本体部5と、本体部の一端側に配設されたエネルギ発生部7,8(46)と、エネルギ発生部の近傍に開口部が配設された流体路に連通するポート25(6)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体管腔を閉塞させるための身体管腔閉塞治療処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、身体管腔、特に、血管内に挿入されて、所定の処置をするためのカテーテルがある。
このようなカテーテルは、その一例として、足の血管がみみずばれのように腫れたり、大腿や膝の後側に赤紫色の網目状に小さな血管が浮いていたりする下肢静脈瘤に用いられる場合がある。
【0003】
下肢静脈瘤は、下肢の表面の静脈が瘤状にはれてくる病気で、静脈の弁の破壊による血液の逆流が主な病因であることから、治療せずに放置した場合には徐々に進行して、静脈の瘤化、或いは下肢の静脈のうっ滞による症状を引き起こすと共にこれらに伴う合併症を引き起こす虞がある。
【0004】
このような、下肢静脈瘤を治療のため、身体管腔である血管を選択的に閉塞する処置具として、例えば、特許文献1に永久的な脈管閉塞のための方法、及び装置が開示されている。
【0005】
この特許文献1に記載された、永久的な脈管閉塞のための方法、及び装置は、血管を物理的に潰した後、血管に高周波を印加することで熱凝固させ、当該血管の一部分を永久的に閉塞するものである。
【0006】
その高周波を印加する前に、血管の一部を内部から半径外方向に向けて平らに押し広げることで、血管の一部を密着させたり、或いはピンセット状の顎部を内部で広げて血管を引っ掛けた後、抓むようにして密着させたり、さらに、血管内でバルーンを膨張させ、血液の流れを止めた後、内部を陰圧して、血管を密着させたりすることが開示されている。
【特許文献1】特表平11−506651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、高周波を印加して、血管を熱凝固する前に、当該血管に上述したような物理的な負担をかけてしまう。その結果、特許文献1の永久的な脈管閉塞のための方法、及び装置では、無理に負荷を与えた被処置血管を損傷させてしまう虞がある。また、特許文献1の装置は、特に、直径の小さな静脈血管に挿入する処置具としては機械的構造が複雑であり、製造コスト高となる問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みて成されたものであり、身体管腔の損傷を防止し、容易に当該身体管腔を選択的に閉塞させることができる簡単な構成により安価で製造できる身体管腔閉塞治療処置具を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明の身体管腔閉塞治療処置具は、身体管腔内に挿入され、内部に流体路を備えた柔軟なチューブ状の本体部と、該本体部の一端側に配設されたエネルギ発生部と、上記エネルギ発生部の近傍に配設された上記流体路に連通する開口部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、身体管腔の損傷を防止し、容易に当該身体管腔を選択的に閉塞させることができる簡単な構成により安価で製造できる身体管腔閉塞治療処置具を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
始めに、本発明の第1の実施の形態について、図1から図7を用いて説明する。
図1から図7は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は身体管腔収縮処置システムの構成を示す図、図2は身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す斜視図、図3は図2の身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す断面図、図4は静脈内に身体管腔閉塞治療処置具が挿入された状態を示す図、図5は図4から身体管腔閉塞治療処置具により吸引を行った静脈の状態を示す図、図6は静脈が身体管腔閉塞治療処置具により閉塞された状態を示す図、図7は静脈が閉塞された状態を示す図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態の身体管腔収縮処置システム(静脈収縮処置システムともいう)1は、身体管腔閉塞治療処置具であるカテーテル2と、高周波電源となる高周波発生装置3と、陰圧発生装置となる吸引装置4と、から構成されている。
【0013】
カテーテル2は、柔軟なチューブ状のカテーテル本体部5と、このカテーテル本体部5の先端面で開口する開口部である吸引口6と、カテーテル本体部5の先端外周に並設されたエネルギ発生部である電極7,8と、カテーテル本体部5の基端に配設された基部9と、を有して構成されている。
【0014】
カテーテル2の基部9には、高周波接続ポートが設けられ、この高周波接続ポートに高周波発生装置3と一端が着脱自在に接続されたケーブル10の他端が電気的に接続されている。また、この基部9は、吸引接続ポートも有し、この吸引接続ポートにカテーテル本体部5に配設された後述のルーメン12(図2、及び図3参照)と連通するように、吸引装置4に一端が着脱自在に接続された吸引チューブ11の他端とも接続されている。
【0015】
図2に示すように、カテーテル本体部5には、先端面の吸引口6が開口部となる吸引ポートであるルーメン12と、2つの電極7,8の夫々に先端部分が電気的に接続された2本のリード線13,14と、が配設されている。
【0016】
また、本実施の形態の2つの電極7,8は、図3に示すように、カテーテル本体部5の外周に嵌着されており、電極7が印加側、電極8が帰還側のバイポーラ型の高周波電極で構成されている。これら2つの電極7,8は、各表面となる外周面がカテーテル本体部5の外周面に沿って段差なく全周に設けられている。尚、高周波電極は、バイポーラ型に限定されること無く、モノポーラ型でも良い。
【0017】
これらの電極7,8に接続されたリード線13,14は、カテーテル本体部5に、上記基部に設けられた高周波電源接続ポートである図示しない高周波接続端子まで、ここでは互いを絶縁するため夫々が埋め込まれるように挿通している。
【0018】
すなわち、リード線13は、基部9の高周波接続端子に接続された上述のケーブル10を介して、高周波発生装置3からの高周波を電極7へ送電する。そして、リード線14は、電極7から外部へ放電し、電極8へ放電された高周波を、上記ケーブル10を介して高周波発生装置3に送電する。
【0019】
尚、リード線13,14は、充分に互いの絶縁性が保てる構成であれば裸線でも良いし、絶縁性被覆を有する電気通信線でも良い。また、上述の高周波発生装置3、及び吸引装置4は、図示しない、フットスイッチ、或いはコントローラユニットにより、所望の操作を行うことができる。
【0020】
以上のように構成された本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1を用いた、ここでは下肢静脈瘤の治療を実施する手順を図4から図7を用いて説明する。
先ず、ユーザである術者は、図1に示したように、カテーテル2に高周波発生装置3、及び吸引装置4を接続して構成した身体管腔収縮処置システム1準備する。そして、術者は、患者の下肢静脈瘤が発生している身体管腔である静脈の一部を皮膚側から切開などして、当該静脈内にカテーテル2のカテーテル本体部5を先端部分から挿入する。
【0021】
そして、術者は、図4に示すように、静脈70を収縮凝固させる位置までカテーテル本体部5の先端部分を挿入しながら移動する。そして、術者は、フットスイッチ、或いはコントローラユニットの操作により、吸引装置4を駆動する。
【0022】
すると、カテーテル本体部5の吸引口6(図2参照)からの吸引力によって、この吸引口6付近の静脈70の管壁が、図5に示すように陰圧状態となり萎む。このとき、カテーテル本体部5は、先端部分周りの静脈70が近接、或いは最終的には密着した状態となる。
【0023】
次に、術者は、フットスイッチ、或いはコントローラユニットの操作により、高周波発生装置3を駆動させる。すると、高周波発生装置3から出力された高周波電流は、印加電極7から放電する。
【0024】
そして、この印加電極7から放電された高周波電流は、電極7,8に近接、或いは密着した静脈70の管壁に導電しながら、カテーテル本体部5の先端部分の側面を流れ、帰還電極8へ通電する。このとき、電極7,8に近接、或いは密着した静脈70の管壁には、高周波電流によるジュール熱が発生し、この発生したジュール熱により、当該管壁が凝固収縮する。
【0025】
そして、術者は、フットスイッチ、或いはコントローラユニットの操作により、高周波発生装置3を停止させ、カテーテル本体部5を抜去する方向へ移動させる。すると、図6に示すように、静脈70のジュール熱を受けた管壁部分には、収縮作用がさらに続き、図7に示すように、凝固収縮して静脈70の当該管壁部分(被処置部70a)が完全に閉塞した状態となる。
【0026】
尚、吸引装置4を駆動しないまま高周波発生装置3を駆動すると、静脈70の管壁は、カテーテル本体部5の先端部分に近接、或いは密着せず、発生したジュール熱が静脈70内の血流により拡散してしまい、静脈70の管壁に充分なジュール熱が与えられないため、当該静脈70の凝固収縮が充分に起こらない。
【0027】
以上に説明したように、本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1は、カテーテル2によって、管腔である被処置血管に無理な負荷により損傷を与えることなく、容易に凝固収縮させて永久的に閉塞することができる。さらに、身体管腔収縮処置システム1は、特に、直径の小さな静脈70などの処置のため、カテーテル2の構成を簡単なものとし、製造時の歩留まり低減に大きく寄与して、製造原価を抑えた安価な構成となっている。
【0028】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について、図8〜図15を用いて説明する。尚、以下の説明において、第1の実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0029】
図8から図16は、本発明の第2の実施の形態に係り、図8は身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す斜視図、図9は図8の身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す断面図、図10は図9のX−X線に沿った断面図、図11は図9のXI−XI線に沿った断面図、図12は図9のXII−XII線に沿った断面図、図13は静脈内に身体管腔閉塞治療処置具が挿入された状態を示す図、図14は図13から身体管腔閉塞治療処置具により吸引を行った静脈の状態を示す図、図15は静脈が身体管腔閉塞治療処置具により閉塞された状態を示す図、図16は静脈が閉塞された状態を示す図である。
【0030】
本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1のカテーテル2は、第1の実施の形態に比して、主に先端部分の構成が相違している。詳述すると、図8、及び図9に示すように、カテーテル2は、先端から順に絶縁性のある合成樹脂などからなる先端軟性部材20と、印加電極21と、帰還電極22と、合成樹脂などからなる絶縁部23と、可撓性チューブ24と、によって構成されている。
【0031】
先端軟性部材20は、管腔壁を損傷させないように、先端方向が半球状のドーム形状をしている。この先端軟性部材20の基端面には、略円盤状(図10参照)の印加電極21が接着剤などと共に嵌着されている。また、印加電極21の基端面は、絶縁部23が接着剤などと共に嵌着されている。
【0032】
この絶縁部23には、略円環状の帰還電極22が嵌着されている。また、絶縁部23は、略円柱状の部材であって、印加電極21と帰還電極22の間に、軸方向に直交した外周に向かって放射状に形成された複数の、ここでは8つの開口部である吸引ポート25(図11参照)を有している。
【0033】
また、絶縁部23は、これら吸引ポート25に連通する流体路を構成するチューブ26の先端部分が内部で固着されている。尚、このチューブ26は、基部9まで可撓性チューブ24内を挿通しており、図1で示した吸引装置4と吸引チューブ11により連通する構成となっている。
【0034】
尚、印加電極21、及び帰還電極22は、絶縁部23に挿貫しているリード線27,28と夫々電気的に接続されている。これらリード線27,28も、基部9まで可撓性チューブ24内を挿通しており、図1で示した高周波発生装置3とケーブル10を介して電気的に接続された構成となっている。
【0035】
以上のことから分かるように、絶縁部23には、チューブ26、及び2本のリード線27,28を、図12に示すように、貫挿するための孔部を有している。尚、本実施の形態でも、各電極21,22は、各表面となる外周面がカテーテル本体部5の外周面に沿って段差なく全周に設けられている。
【0036】
尚、印加電極21は、リード線27の素線27aを接続するための穴形状の接続部を供え、ここでは半田30により電気的に接続されている。一方、帰還電極22は、内周方向に向かった凸部22aを有しており、この凸部22aに形成された穴形状の接続部に、ここでは半田31によりリード線28の素線が電気的に接続されている。これら各電極21,22とリード線27,28との接続は、半田によるものに限定されること無く、コネクタ接続としても良い。
【0037】
本実施の形態において、カテーテル2は、電極21,22を有する先端部分から基端側が柔軟な可撓性チューブ24と、この可撓性チューブ24内に挿通する、内蔵物であるチューブ26、及びリード線27,28のみの構成である。つまり、カテーテル2の大半は、柔軟な可撓性のある部品により形成されているため、自由に撓むことができ、血管などの管腔内を屈曲しながら自由に身体可能な構成となっている。
【0038】
次に、以上のように構成された本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1を用いた、ここでも第1の実施の形態と同様な下肢静脈瘤の治療を実施する手順を図13から図15を用いて説明する。
先ず、術者は、第1の実施の形態と同様に、カテーテル2に高周波発生装置3、及び吸引装置4を接続して構成した身体管腔収縮処置システム1準備し、患者の下肢静脈瘤が発生している身体管腔である静脈にカテーテル2を先端軟性部材20側から挿入する。
【0039】
そして、術者は、図13に示すように、静脈70を収縮凝固させる位置までカテーテル2の先端部分を挿入しながら移動する。そして、術者は、フットスイッチ、或いはコントローラユニットの操作により、吸引装置4を駆動する。
【0040】
すると、各吸引ポート25からの吸引力によって、この吸引ポート25付近の静脈70の管壁が、図14に示すように陰圧状態となり萎む。このとき、カテーテル2の先端部分は、各電極21,22周りの静脈70が密着した状態となる。
【0041】
すなわち、本実施の形態では、一対の電極21,22の間に配設された吸引ポート25に静脈70の一部の管壁が吸着した状態となる。すなわち、吸い付けられた静脈70の一部の管壁が各電極21,22の表面と密着した状態となる。
【0042】
次に、術者は、フットスイッチ、或いはコントローラユニットの操作により、高周波発生装置3を駆動させる。すると、高周波発生装置3から出力された高周波電流は、印加電極21から帰還電極22へと放電する。このとき、高周波電流は、一対の電極21,22に密着した静脈70の管壁に導電しながら、帰還電極8へ通電する。第1の実施の形態と同様に、各電極21,22に密着した静脈70の管壁には、高周波電流によるジュール熱が発生し、この発生したジュール熱により、当該管壁が凝固収縮する。
【0043】
そして、術者は、フットスイッチ、或いはコントローラユニットの操作により、高周波発生装置3を停止させ、カテーテル2を抜去する方向へ移動させる。すると、図15に示すように、静脈70のジュール熱を受けた管壁部分には、第1の実施の形態と同様にして、収縮作用がさらに続き、図16に示すように、凝固収縮して静脈70の当該管壁部分(被処置部70a)が完全に閉塞した状態となる。
【0044】
以上に説明したように、本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1のカテーテル2は、第1の実施の形態の効果を奏すると共に、一対の電極21,22間に、外表面の周方向で開口する複数の吸引ポート25を放射状に形成することにより、管腔である血管の管壁を吸着して、確実に電極21,22の高周波電流の放電によるジュール熱を効率よく伝播させることができる。その結果、管腔の管壁は、確実に凝固収縮して、閉塞される。
【0045】
尚、本実施の形態では、一対の電極21,22間に、複数の吸引ポート25の開口を設けた。この配置が効率よく、近傍の管壁を吸着するが、これに限定されること無く、各電極21,22の近傍であれば、印加電極21の先端側、或いは(及び)帰還電極22の基端側に上記開口を配置しても良い。
【0046】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について、図17から図21を用いて説明する。尚、以下の説明においても、第1の実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0047】
図17から図21は、本発明の第3の実施の形態に係り、図17は身体管腔収縮処置システムの構成を示す図、図18は身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す斜視図、図19は図18の身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す断面図、図20は静脈内に身体管腔閉塞治療処置具が挿入され、吸引を行った状態を示す図、図21は静脈が身体管腔閉塞治療処置具により閉塞された状態を示す図である。
【0048】
本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1は、上述した各実施形態とは異なる形態のエネルギ発生部を有している。図17に示すように、本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1は、第1、及び第2の実施の形態の高周波発生装置3に代えて、カテーテル2の基部9の光ファイバ接続ポートと光ケーブル42を介して着脱自在に接続されたレーザ発生装置41が用いられる。
【0049】
また、これに合わせて、カテーテル2は、図18、及び図19に示すように、カテーテル本体部5内、及び基部9内(不図示)にレーザ発生装置41からのレーザ光を伝送する光ファイバ45が配設されている。また、カテーテル本体部5の先端には、光ファイバ45の先端面に接するように配置された照射レンズ46が設けられている。
【0050】
尚、この照射レンズ46は、先端面47から、光ファイバ45が伝送するレーザを、例えば30度の角度で前方へ照射するための照射部を構成するエネルギ発生部となる光学部品である。
【0051】
以上のように構成された本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1を用いた、ここでも上述の各実施の形態と同様な下肢静脈瘤の治療を実施する手順を図20、及び図21を用いて説明する。
術者は、第1の実施の形態と同様にして、静脈70内にカテーテル2のカテーテル本体部5を先端部分から挿入し、静脈70を収縮凝固させる位置までカテーテル本体部5の先端部分を挿入しながら移動する。
【0052】
そして、術者は、フットスイッチ、或いはコントローラユニットの操作により、吸引装置4を駆動し、図20に示すように、カテーテル本体部5の吸引口6(図2参照)からの吸引力によって、カテーテル本体部5の先端部分周りの静脈70を近接、或いは最終的には密着した状態とする。
【0053】
次に、術者は、フットスイッチ、或いはコントローラユニットの操作により、レーザ発生装置41を駆動させる。すると、レーザ発生装置41から出力されたレーザ光は、光ファイバ45を介して、照射レンズ46から近接、或いは密着した静脈70の一部に照射する。すると、静脈70の管壁は、レーザ光により、熱が発生し、この発生した熱により、当該管壁が凝固収縮する。尚、このとき、術者は、カテーテル本体部5を抜去する方向に若干移動させながら、レーザ光を静脈70の被処置部70aに照射すると良い。
【0054】
そして、術者は、フットスイッチ、或いはコントローラユニットの操作により、レーザ発生装置41を停止させ、カテーテル本体部5を抜去する方向へ移動させる。
【0055】
ここでも、静脈70の熱を受けた被処置部70aは、収縮作用がさらに続き、図21に示すように、凝固収縮して完全に閉塞した状態となる。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1は、レーザ光を発生するレーザ発生装置41と、このレーザ光を被処置部70aに照射するため、カテーテル2に光ファイバ45、及び照射レンズ46を設けた構成により、管腔である静脈70を完全に閉塞できる。そのため、本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1においても、第1の実施の形態と同様な効果を奏する。
【0057】
(第4の実施の形態)
最後に、本発明の第4の実施の形態について、図22〜図25を用いて説明する。尚、以下の説明においても、第1、及び第3の実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0058】
図22から図25は、本発明の第4の実施の形態に係り、図22は身体管腔収縮処置システムの構成を示す図、図23は静脈内に身体管腔閉塞治療処置具が挿入され、インドシアニングリーン(ICG)溶液を散布した状態を示す図、図24は静脈内に散布されたインドシアニングリーン(ICG)溶液にレーザ光が照射された状態を示す図、図25は静脈が身体管腔閉塞治療処置具により閉塞された状態を示す図である。
【0059】
図22に示すように、本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1は、吸引チューブ11に吸引装置4に代えてシリンジ51を接続している。このシリンジ51内には、レーザ光吸収性溶液であるインドシアニングリーン(ICG)溶液が充填されている。尚、本実施の形態では、レーザ発生装置41からのレーザ光は、波長790〜830nmの半導体レーザを使用する。
【0060】
すなわち、身体管腔収縮処置システム1は、カテーテル2のルーメン12とシリンジ51の内部が挿通した状態にして、ICG溶液を、ルーメン12を介して、第1の実施の形態での吸引口6から排出できる構成となっている。つまり、吸引口6は、ここでは排出口となる。
【0061】
このように構成された身体管腔収縮処置システム1において、術者は、下肢静脈瘤の治療の際、静脈70を収縮凝固させる位置までカテーテル本体部5の先端部分を挿入した後、図23に示すように、ICG溶液75を静脈70内に吐出させる。
【0062】
そして、第3の実施の形態と同様にして、術者は、図24に示すように、フットスイッチ、或いはコントローラユニットの操作により、レーザ発生装置41を駆動させ、レーザ光を静脈70内で散布されたICG溶液75の領域に照射する。
【0063】
すると、ICG溶液75の散布領域は、レーザ光を吸収して、他の領域よりも発熱量が多くなり、加熱される。この加熱されたICG溶液75の散布領域にある静脈70の管壁のみとなる被処置部70aが、図25に示すように、凝固収縮する。尚、術者は、静脈70の被処置部70aが収縮した状態で、さらに、この被処置部70aに対してレーザ光を照射しても良く、これにより、被処置部70aを完全に閉塞させることができる。
【0064】
尚、ICGを散布しないで、静脈70内にレーザ光を照射した場合、血流により熱が拡散するため、充分な静脈70の閉塞は不可能である。
【0065】
以上に説明したように、本実施の形態の身体管腔収縮処置システム1は、ICG溶液75の散布により、管腔である静脈70に血流があった場合でも、管腔壁を凝固収縮させるための充分な熱量を得られる。また、本実施の形態では、第1の実施の形態の効果に加え、吸引装置4が不要であり、安価な構成により、管腔の閉塞を容易に行うことができる。
【0066】
尚、本実施の形態では、レーザ光の波長が790〜830nmであるため、ICG溶液を用いたが、これに限定されること無く、照射するレーザ光の波長に適した、メチレンブルー溶液、エバンスブルー溶液、クリスタルバイオレット溶液などのレーザ光吸収性溶液を用いても良い。
【0067】
以上に説明した、本発明は、以上述べた各実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0068】
尚、本発明には以下の付記項に記載の特徴が含まれる。
【0069】
(付記1)
身体管腔内に挿入され、内部に流体路を備えた柔軟なチューブ状の本体部と、該本体部の一端側に配設されたエネルギ発生部と、このエネルギ発生部の近傍の上記本体部に配設された上記流体路に連通する開口部と、を有する身体管腔閉塞治療処置を用いた身体管腔の閉塞方法であって、
上記エネルギ発生部が配設された上記本体部の一端部分を上記身体管腔内に被処置部まで挿入し、
上記開口部から上記身体管腔内に陰圧をかけるため、上記流体路に吸引をかけて、管腔壁を萎ませ、
上記エネルギ発生部から上記萎んだ管腔壁に所定のエネルギを印加して、加熱することで、上記身体管腔の一部を凝固収縮させて、加熱閉塞させる、
ことを特徴とする身体管腔閉塞治療処置を用いた身体管腔の閉塞方法。
【0070】
(付記2)
身体管腔内に挿入され、内部に流体路、及び光ファイバを備えた柔軟なチューブ状の本体部と、該本体部の一端側に配設され、上記光ファイバからのレーザ光を照射する照射部と、この照射部の近傍の上記本体部に配設された上記流体路に連通する開口部と、を有する身体管腔閉塞治療処置を用いた身体管腔の閉塞方法であって、
上記エネルギ発生部が配設された上記本体部の一端部分を上記身体管腔内に被処置部まで挿入し、
上記流体路にレーザ光吸収性溶液を供給して、上記身体管腔内に該レーザ光吸収性溶液を上記開口部から散布し、
上記照射部から上記レーザ光吸収性溶液にレーザ光を照射して、該レーザ光吸収性溶液を加熱することで、上記身体管腔の一部を凝固収縮させて、加熱閉塞させる、
ことを特徴とする身体管腔閉塞治療処置を用いた身体管腔の閉塞方法。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る身体管腔収縮処置システムの構成を示す図。
【図2】同、身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す斜視図。
【図3】同、図2の身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す断面図。
【図4】同、静脈内に身体管腔閉塞治療処置具が挿入された状態を示す図。
【図5】同、図4から身体管腔閉塞治療処置具により吸引を行った静脈の状態を示す図。
【図6】同、静脈が身体管腔閉塞治療処置具により閉塞された状態を示す図。
【図7】同、静脈が閉塞された状態を示す図。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す斜視図。
【図9】同、図8の身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す断面図。
【図10】同、図9のX−X線に沿った断面図。
【図11】同、図9のXI−XI線に沿った断面図。
【図12】同、図9のXII−XII線に沿った断面図。
【図13】同、静脈内に身体管腔閉塞治療処置具が挿入された状態を示す図。
【図14】同、図13から身体管腔閉塞治療処置具により吸引を行った静脈の状態を示す図。
【図15】同、静脈が身体管腔閉塞治療処置具により閉塞された状態を示す図。
【図16】同、静脈が閉塞された状態を示す図。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係る身体管腔収縮処置システムの構成を示す図。
【図18】同、身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す斜視図。
【図19】同、図18の身体管腔閉塞治療処置具の先端部分を示す断面図。
【図20】同、静脈内に身体管腔閉塞治療処置具が挿入され、吸引を行った状態を示す図。
【図21】同、静脈が身体管腔閉塞治療処置具により閉塞された状態を示す図。
【図22】本発明の第4の実施の形態に係る身体管腔収縮処置システムの構成を示す図。
【図23】同、静脈内に身体管腔閉塞治療処置具が挿入され、インドシアニングリーン(ICG)溶液を散布した状態を示す図。
【図24】同、静脈内に散布されたインドシアニングリーン(ICG)溶液にレーザ光が照射された状態を示す図。
【図25】同、静脈が身体管腔閉塞治療処置具により閉塞された状態を示す図。
【符号の説明】
【0072】
1・・・身体管腔収縮処置システム
2・・・カテーテル
3・・・高周波発生装置
4・・・吸引装置
5・・・カテーテル本体部
6・・・吸引口
7・・・印加電極
8・・・帰還電極
8・・・電極
9・・・基部
10・・・ケーブル
11・・・吸引チューブ
12・・・ルーメン
20・・・先端軟性部材
21・・・印加電極
22・・・帰還電極
22a・・・凸部
23・・・絶縁部
24・・・可撓性チューブ
25・・・吸引ポート
26・・・チューブ
41・・・レーザ発生装置
42・・・光ケーブル
45・・・光ファイバ
46・・・照射レンズ
47・・・先端面
51・・・シリンジ
70・・・静脈
70a・・・被処置部
75・・・ICG溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体管腔内に挿入され、内部に流体路を備えた柔軟なチューブ状の本体部と、
該本体部の一端側に配設されたエネルギ発生部と、
上記エネルギ発生部の近傍に配設された上記流体路に連通する開口部と、
を有することを特徴とする身体管腔閉塞治療処置具。
【請求項2】
上記エネルギ発生部は、上記本体部の側周部に配設され、
上記開口部が上記本体部の側周面に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の身体管腔閉塞治療処置具。
【請求項3】
上記エネルギ発生部は、高周波電流を放電するための電極であることを特徴とする請求項2に記載の身体管腔閉塞治療処置具。
【請求項4】
上記電極は、一対のバイポーラ電極であって、
上記開口部は、上記一対のバイポーラ電極間に上記側周部周りに略等間隔に複数が配設されていることを特徴とする請求項3に記載の身体管腔閉塞治療処置具。
【請求項5】
上記本体部には、レーザ光を照射するための光ファイバが配設され、
上記エネルギ発生部が上記本体部の上記一端面に配設され、上記光ファイバにより伝送されたレーザ光を上記身体管腔に向けて照射するため照射部であることを特徴とする請求項1に記載の身体管腔閉塞治療処置具。
【請求項6】
上記流体路は、外部の吸引装置に接続され、上記開口部から上記身体管腔内を陰圧にするための吸引路であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の身体管腔閉塞治療処置具。
【請求項7】
上記流体路は、外部からレーザ光吸収溶液を上記開口部から上記身体管腔内に吐出するための溶液供給路であることを特徴とする請求項5に記載の身体管腔閉塞治療処置具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−132163(P2008−132163A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320693(P2006−320693)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】