説明

車両においてビデオデータを表示するためのシステム

【課題】本発明は、車両においてビデオデータを表示するための改良されたシステムを提供する。
【解決手段】システムは、1又は複数の携帯用装置の表示を、1又は複数の車両側の表示装置に複製するための情報処理能力を有する。それぞれの車両側の表示装置は、特定の携帯用装置を共有するか、または、特定の携帯用装置に専念する。それぞれの携帯用装置からの画像は、情報処理で複製され、ワイヤレスの通信リンクを介して、車両側の統合ビデオシステムに提供される。ワイヤレスの通信リンクは、静止画像及び動的画像の両方に対処でき、リアルタイムにて車両側の統合ビデオシステムに画像を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、車両においてビデオデータを表示するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
消費者向けの電子市場は、急速に成長して新製品が開発されており、その速さは、自動車のOEM業者や供給者がそうした製品をサポートする機能を統合できる速度をはるかに上回っている。そのため、OEM業者は、技術的なギャップに対処すべく、情報圧縮式のオーディオプレーヤーなどの消費者向け電子装置のための有線式インターフェースを提供したり、携帯電話などの通信機器のための無線式インターフェースを提供している。これらのインターフェースは一般に、通信リンク上において、結合、制御、及びステータス情報を提供する。これは、携帯用装置と結合して制御するという、基本的なニーズを満たす。しかしながら、携帯用装置をサポートするためには、完全に新規な、代表的には、あつらえたユーザ・インターフェースを設計しなければならない。そうしたユーザ・インターフェースは、携帯用装置のためのインターフェースと同様である場合もあるし、相違している場合もある。従って、そうしたインターフェースは、著しい開発労力を必要とし、入手可能な消費者向け電子装置のうち極めて限られた数の装置用として開発されるのがしばしばである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の問題点に鑑みれば、車両においてビデオデータを表示するための改良されたシステムを求めるニーズが存在することは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述したニーズを満たすと共に、従来技術における列挙された不都合及びその他の限界を克服するために、本発明は、車両においてビデオデータを表示するための改良されたシステムを提供する。
本発明によるシステムは、1又は複数の携帯用装置の表示を、1又は複数の車両側の表示装置に複製するための情報処理能力を有する。それぞれの車両側の表示装置は、特定の携帯用装置を共有するか、または、特定の携帯用装置に専念する。それぞれの携帯用装置からの画像は、情報処理で複製され、ワイヤレスの通信リンクを介して、車両側の統合ビデオシステムに提供される。情報処理を伴う複製によって、画像は、車両内の表示装置に対して最適化される。このため、画像の最適化するために、画像のサイズを変更したり、画像を再サンプリングしたり、画像にカラーシフトを施したり、画像のアスペクト比を変更したりする。ワイヤレスの通信リンクは、静止画像及び動的画像の両方をサポートでき、リアルタイムにて車両側の統合ビデオシステムに画像を提供する。従って、携帯用の電子装置、例えば、携帯電話や、PDA、MP3やMPEGを含む圧縮メディア再生器、及び携帯用のナビゲーションシステムなどがサポートされる。
【0005】
本発明のその他の目的、特徴、及び利点に関しては、本願の一部をなすものである特許請求の範囲と添付図面とを参照して以下の説明を読むことで、当業者には容易に明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
まず、図1及び図2を参照すると、本発明の原理を具体化したシステムを符号10にて示している。システム10は、車両側の統合ビデオシステム12と、携帯用の電子装置14とを具備している。携帯用の電子装置14は、装置側の表示装置16と、装置側の制御装置18と、ワイヤレス・トランスミッタ20とを具備している。制御装置18は、携帯用の電子装置14の機能に対する制御を提供し、装置側の表示装置16と電気的に連絡してビデオ出力を提供し、ビデオ出力は、ビットマップ形式や、MPEG形式、又は一次的なピクセル情報を含むラスター形式などである。ビデオ出力は、生の又は記録されたビデオ画像などのエンターテイメント用のビデオ信号、または、制御目的には、グラフィックメニューなどの形式でも良い。装置側の制御装置18は、ビデオ出力を複製して、それをワイヤレス・トランスミッタ20に伝えることで、複製されたビデオデータは、車両側の統合ビデオシステム12に提供される。従って、携帯用の電子装置14は、PDA(personal digital assistant)や、携帯電話、圧縮メディア再生器、携帯用のナビゲーションシステム、又はその他の類似装置の形態をとり得る。
【0007】
ビデオデータは、車両側の統合ビデオシステム12におけるワイヤレス・レシーバ22によって受信される。車両側の統合ビデオシステムは、例えば、車両のエンターテイメントシステムや計器群などといった、車両のより大きなサブシステムの一部分として構成しても良い。そして、トランスミッタ20と、レシーバ22とは、様々な無線プロトコルに従って通信するように構成される。例えば、トランスミッタ20と、レシーバ22とは、IEEE802.11又はBluetoothなどの、無線周波数の伝送を介して通信する。さらに、ワイヤレス通信は、IrDAなどの赤外線プロトコルでも良い。しかし、その他の一般的に知られた通信プロトコルを使用したり、専門化されたインターフェースを開発しても良い。レシーバ22は、ビデオデータを車両側の制御装置24に提供する。車両側の制御装置24は、装置側の表示装置16に提供された画像に情報処理を施して、これを複製すべく、ビデオデータを使用する。さらに、車両側の制御装置24は、ワイヤレス通信リンク上にあるべき携帯用装置を求めて絶えずスキャンするように構成しても良い。従って、車両側の制御装置24は、割込リクエストや、ポーリングルーチン、又はこれらに類似する技術を用いて、携帯用装置14との通信を開始する。
【0008】
車両側の制御装置24は、車両側の表示装置26に表示する画像を最適化するように構成されており、このために、例えば、画像のサイズを変更したり、画像を再サンプリングしたり、画像にカラーシフトを施したり、画像のアスペクト比を変更したりする。画像のサイズを変更することには、画像を拡大又は縮小するために、画像の外部にコンテンツを追加したり、画像からコンテンツを削除したりすることが含まれる。画像を再サンプリングすることには、画像全体のコンテンツを規則正しく追加又は削除することが含まれる。再サンプリングは代表的には、画像全体に対して比例的に行われ、例えば、ひとつおきの行や、ひとつおきの列を削除して、画像のサイズを小さくする。変形例としては、行及び列を一定の間隔で追加して、画像のコンテンツに加えても良い。しかしながら、行及び列は、隣接する行及び列の間において、二重化するか、平均化するか、または、補間するかによって、コンテンツを追加することで、画像の解像度を人工的に高めると良い。
【0009】
カラーシフトには、オリジナル画像の特定の色彩を、出力画像において、異なる色彩にマッピングして変更することが含まれる。カラーシフトは、車両側の統合された表示装置において利用可能な色数(例えば64k色)と、携帯用装置において利用可能な色数(例えば16色)とが相違する場合に行われる。さらに、これは制御メニューなどのビデオ出力を調色するためにも使用され、例えば、車両側の表示装置が計器群に統合されている場合に、近くに位置した制御部や表示の色にマッチさせる。従って、オリジナルの画像におけるすべてのテキストが青色であったとすれば、出力画像においては青色を赤色にマッピングして、車両側の表示装置に赤色のテキストを提供する。さらに、画像のアスペクト比も変更でき、例えば、画像を不均一に再サンプリングして、水平方向についてはコンテンツを追加又は削除すると共に、垂直なコンテンツについてはこれをそのまま残して、画像を明瞭に引き伸ばしても良い。また、ワイヤレス・インターフェースは、通信リンクを介して、ステータス及び制御情報を提供し、車両側の統合ビデオシステム12における制御装置25によって、携帯用の電子装置14の機能を操作できるようにしても良い。さらに、ビデオデータは、リアルタイムに提供されて、写真やメニューなどの静止的な表示をサポートし、また、ナビゲーションやビデオ又はリアルタイムの制御などの動的な表示をサポートする。
【0010】
車両側の制御装置24は、車両側のビデオ表示装置、例えば、計器群に配置された車両側の表示装置26と電気的に連絡している。車両側の表示装置26は、LCD表示装置を具備し、運転者が容易に視認できるように、計器群のその他の計器と並んで配置される。さらに、制御装置25は、ステアリングホイールに設けられ、運転者は、通信リンクを介して、携帯用の電子装置14を操作できる。車両側の制御装置24は、車両のダッシュボード27に配置された、もうひとつの車両側表示装置28とも電気的に連絡していて、助手席の同乗者が容易に視認できるようにしている。さらに、制御装置25は、助手席の正面のダッシュボードに設けても良い。さらに、携帯用の電子装置14のためのドッキング用の受け台29を、ダッシュボードの頂部に設けても良い。さらに、車両側の制御装置24は、ヘッドアップ式の車両側表示装置30と電気的に連絡し、車両の運転者が容易に視認できるように、フロントガラスにおける部分42上に画像を投影すべく構成されたプロジェクター44を具備しても良い。
【0011】
次に、図3を参照すると、車両側の制御装置24は、天井に取り付けられたLCD表示装置などの車両側の表示装置32と電気的に連絡している。天井に取り付けられた車両側の表示装置32は、DVDプレーヤーやVTRプレーヤーの表示など、車両におけるエンターテイメント・システムのために使用される。天井に取り付けられた車両側の表示装置32は、吊下式の表示装置であって、表示装置は、後部座席の乗客が使用できるほど充分に大きく、また、はね上げて天井パネルと平行にすれば、容易に隠される。さらに、車両側の制御装置24は、前列座席の背面に取り付けられた、車両側の表示装置34と電気的に連絡している。さらに、前列座席の背面には、車両側の制御装置25が設けられ、後部座席の乗客は、車両側の表示装置34を容易に視認できると共に、車両の後部座席上にあって制御装置25を操作できるようになっている。さらに別の車両側の表示装置36は、車両側の制御装置24と電気的に連絡し、前列座席の間にある中央コンソールに取り付けられている。車両側の表示装置36は、中央コンソールに静止させて取り付けられた、LCD表示装置などである。変形例としては、車両側の表示装置36は、中央コンソールに容易に隠されるような、はね上げ式又ははね降ろし式の表示装置でも良い。さらに、中央コンソールには、制御装置25が設けられて、ワイヤレス通信リンクを介して、携帯用の電子装置14を容易に操作できる。
【0012】
それぞれの車両側の表示装置は、制御装置25を備え、制御装置は、どの携帯用の電子装置における装置側の表示装置の画像を複製して、ビデオデータを受けるのか、選択するように構成されている。例えば、それぞれの車両側の表示装置は、ボタン又はその他の制御部を具備し、それらは、制御装置とワイヤレス通信している利用可能な携帯用の電子装置のそれぞれの間において、表示するもの(index)として用いられる。さらに、制御装置は、表示装置を2つの部分に分割して、単一の表示装置に複数の画像を表示するように構成されている。ひとつの実施形態においては、携帯用の電子装置46と、携帯用の電子装置48とが、車両に設けた1又は複数の制御装置と電気的に連絡している。携帯用の電子装置46は、円形を表示しているものとして図示され、他方、携帯用の電子装置48は、三角形を表示しているものとして図示される。従って、ひとつの車両側の表示装置は、携帯用の電子装置46からの画像を複製し、また、他方の車両側の表示装置は、携帯用の電子装置48からの画像を複製する。さらに、車両側の制御装置24は、ひとつの携帯用の電子装置の画像を車両側の表示装置におけるひとつの部分に複製し、他方の携帯用の電子装置の画像を車両側の表示装置における他の部分に複製するように構成されている。ひとつの例を示せば、車両側の表示装置32において、携帯用の電子装置46からの画像は、車両側の表示装置32における半分の部分に複製され、携帯用の電子装置48からの画像は、車両側の表示装置32における残りの半分に複製されている。別の例としては、車両側の表示装置36においては、ピクチャー・イン・ピクチャーの形式にて、複製されたひとつの画像の上に、複製された他方の画像がオーバーレイされている。
【0013】
再び図1を参照すると、装置側の制御装置は、2以上の車両側の制御装置、および、2以上の車両側の統合ビデオシステムに、電気的に連絡させても良い。そして、携帯用の電子装置は、車両側の統合ビデオシステム37とワイヤレス通信する。従って、ビデオデータは、車両側のレシーバ38によって受信されて、車両側の制御装置39に与えられる。車両側の制御装置39は、車両側の表示装置40と電気的に連絡していて、かかる表示装置は、前述した車両側の表示装置の任意のタイプに対応させることができる。車両側の制御装置を複数使用することで、コストを削減し、車両内の制御装置の通信の複雑さを低下させると共に、車両側の制御装置間においてワイヤレス通信することが可能になる。
当業者は容易に理解するだろうが、上述した説明は、本発明の原理を実現するための例示を意味している。上述した説明は、本発明の範囲や用途を限定することを意図したものではなく、本発明は、特許請求の範囲に定められた本発明の精神から逸脱せずに、応用、改変、及び変更できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明のひとつの実施形態による、携帯用装置からのビデオデータを車両において表示するためのシステムを示したブロック図である。
【図2】図2は、車両のダッシュボードと計器群とを示した斜視図である。
【図3】図3は、乗車区画室のうち前方の半分を示した斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内でビデオデータを表示するためのシステムであって、
携帯用の電子装置であって、装置側の表示装置と、装置側の制御装置と、ワイヤレス・トランスミッタとを具備し、制御装置は、装置側の表示装置に表示される画像のレプリカに対応するビデオデータを伝送するように構成されている上記携帯用の電子装置と、
車両に設けた統合ビデオシステムであって、車両側の表示装置と、車両側の制御装置と、ワイヤレス・レシーバとを具備し、制御装置は、ワイヤレス・レシーバと電気的に連絡し、ワイヤレス・レシーバからのビデオデータを再現して車両側の表示装置に表示するように構成されている上記統合ビデオシステムと、
を有することを特徴とするシステム。
【請求項2】
ワイヤレス・トランスミッタとワイヤレス・レシーバとは、赤外線通信リンクを介して通信することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ワイヤレス・トランスミッタとワイヤレス・レシーバとは、無線周波数の通信リンクを介して通信することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
車両側の表示装置は、車両における計器群に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
車両側の表示装置は、ダッシュボードに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
車両側の表示装置は、ヘッドアップディスプレイから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
車両側の表示装置は、頭上に取り付けられたビデオ表示器から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
車両側の表示装置は、座席の背面に取り付けられたビデオ表示装置から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
車両側の表示装置は、対をなす前列座席の間に位置してなる、中央コンソールに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
車両側の表示装置は、トランクに取り付けられたビデオ表示装置から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
制御装置は、車両側の表示装置に表示するために、ビデオデータから生成した画像のサイズを変更するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
制御装置は、車両側の表示装置に表示するために、ビデオデータから生成した画像の再サンプリングをするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
制御装置は、車両側の表示装置に表示するために、ビデオデータから生成した画像にカラーシフトを施すように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
制御装置は、車両側の表示装置に表示するために、ビデオデータから生成した画像にアスペクト比の変更を施すように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
画像を構築するためにビデオデータを使用し、装置側の表示装置に表示される画像と同一である画像を、車両側の表示装置に表示することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
携帯用の電子装置は、携帯電話から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
携帯用の電子装置は、PDA(personal digital assistant)から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
携帯用の電子装置は、圧縮メディア再生器から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
携帯用の電子装置は、携帯用のナビゲーション・システムから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
車両側の制御装置は、携帯用の電子装置を絶えずスキャンするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
車両に設けた統合ビデオシステムは、複数の車両側の表示装置と、複数の車両側の制御装置と、複数のワイヤレス・レシーバとを具備し、それぞれの制御装置は、対応するワイヤレス・レシーバと電気的に連絡し、それぞれのワイヤレス・レシーバからのビデオデータを再現して対応する車両側の表示装置に表示すべく構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
車両側の制御装置は、複数の携帯用の電子装置と連絡し、それぞれの携帯用の電子装置からの画像を再現して車両側の表示装置に表示すべく構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−186194(P2007−186194A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338446(P2006−338446)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】