説明

車両に関する情報を制御するためのシステム

【課題】現行法規に従って車両が満たさなければならない基準に関する情報を含むチップカードを、許可された者(14)がデータ入力装置を用いて車両に関する静的および/または動的情報の制御を実施するために読み取ることができる、車両(10)に関する情報を制御するためのシステムを提供する。
【解決手段】チップカードは、車両内部に取り外せないように配置される非接触チップカード(12)であり、データ入力装置(16)は、カードに保存された情報を遠隔地で読み取るための非接触カードリーダと、入力情報を表示する表示画面とを含む構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公共当局による車両コンプライアンスの制御に関し、特に、車両に関する情報を制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車、大型トラック、バスを問わず、車両は時間とともに増加していく制約に影響される。そのため、全ての乗用車は保険に加入していることを証明しなければならない。各車両はそのため、フロント窓の角の車両内部に、被保険車両の識別および保険の満了日に関する情報を含む保険証書(現在は緑色)を表示する義務がある。これにより、警察官などの制御当局者は、証書を表示する車両が確かに保険に加入していると納得できる。
【0003】
しかしながら上記システムには数多くの不利な点がある。まず、情報の入力に人が介入する限り、間違いをする可能性がある。この入力は時間と手間がかかる。さらに、フロントガラス上の証書のサイズは小さくなければならず、そのために証書上の情報は限られる(現在は契約番号、登録番号、有効日および保険名)。そのため証書は市販のコピー材料を用いて容易に偽造できる。最後に、保険証書には、車両の型に関する情報が含まれていないため、マッチするナンバープレートを取り付けることによって、型の異なる他の車両に純正証書を容易に貼付できる。
【0004】
上述の問題は、文書US5,459,304に記載されるシステムで部分的に解決されており、このシステムでは、車両所有者が所持するチップカードに車両の識別、車両運転免許、車両保険、車両に関する違反等に関する情報の全てが含まれている。このカードは、このような情報の更新を含む複数のデータベースに接続することができる。残念なことに、このカードは車両所有者が所持し、読み取るためには好適なリーダに挿入しなければならず、車両所有者の不在時には制御不能である。
【0005】
特に大型トラックの場合、上述の問題に加えて、運転者が実際に制約を受けるという別の問題がある。各大型トラックは現在、1日に移動したキロメートルによる距離、運転時間数、強制ブレーキ回数に関する情報をペーパーチャートに記入する装置を備えている。運転者に関連するこのチャートは、大型トラック運転者に課された法規が確実に遵守されていることを確かめるため警察官が制御することができる。しかしながら、保険証書の場合同様、大型トラックチャートには数多くの不利な点がある。まず、これは正しい位置に設置しやすいとは限らない。制御責任のある警察官が認めるように、読んで解釈しにくい。さらに、各チャートは1日1車両あたり1枚のチャートを用いる運転者固有のものである。運転者がその日のうちに車両を変更した場合、運転者は新しい車両の新しいチャートを用いる。そのため、このシステムでは、運転者がチャートを所持し、管理する必要があるため、人による取り扱いにつきもののリスクがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、本発明の目的は、制御当局者によって手動で情報を入力する必要のない、車両に関する情報を制御するためのシステムを提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、制御する情報を偽造しにくい車両に関する情報を制御するためのシステムを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、車両所有者の立会いを必要とすることなく、許可された者が自動的に制御を実施する車両に関する情報を制御するためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、本発明の対象は、現行法規に従って車両が満たさなければならない基準に関する情報を含むチップカードを、許可された者がデータ入力装置を用いて車両に関する静的および/または動的情報の制御を実施するため検査できる、車両に関する情報を制御するためのシステムである。チップカードは、車両内部に取り外せないように設置される非接触チップカードで、データ入力装置は、カードに記録された情報を遠隔地で読み取ることに適合する非接触カードリーダおよび、情報を表示する表示画面を含む。
【0010】
本発明の特定の用途によると、非接触チップカードはさらに、重量物運搬車両の場合のように、所定期間、例えば1日の車両走行距離に関する動的情報を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の狙い、目的および特徴は、図面を参照する下記の説明からより明らかになろう。
【0012】
本発明によると、各車両10は、適合するリーダによって読み取り可能なように、車両内部に取り外せないように設置した非接触チップカード12を有する。このカードは、例えば現在の保険証書の場合のように、フロント窓の右下角に固定したケースに入れておくことができる。
【0013】
このチップカードは、チップメモリ内に、車両に関する静的情報、すなわち、車両が現行法規に従って満たさなければならない基準に関する情報を含み、また、後述する、現在、大型トラックチャートに記入されているような車両の1日の走行距離に関する情報等の動的情報を含むことができる。
【0014】
チップカードに含まれる静的情報はどのような種類のものであってもよいが、主に次の情報から構成される。
車両の種類
車両の型
登録番号
識別番号
保険名
保険契約番号
前述の契約有効日
【0015】
追加として別のアクセス不能な識別番号が、最近の車両のフロントガラスの下部に組み込まれていることに留意されたい。制御の際、この識別番号はフロントガラスに作成した読み取り窓を通じて読み取り可能である。
【0016】
車両制御の実施を望む警察官14等の制御当局者はいずれも、例えば長さ15cm、幅10cmおよび奥行き2cmの小寸法の箱型で、携帯電話ネットワーク18にアクセスするためのGSM(またはGPRSまたはUMTS)ユニットを備えるデータ入力装置16を支給される。これはまた、表示画面からなり、英数字キーボードを備えることができる。
【0017】
データ入力装置は、車両所有者が立ち会う必要なしに警察官がカード情報を遠隔地で入力することができる非接触チップカードリーダを備える。警察官は自分のデータ入力装置を、カードに対して比較的近接した場所に設置する。公知の技術により、非接触チップカードは、データ入力装置内に備えられたリーダから、一般的には13.56MHzの周波数で発せられる電磁信号を受信するため、チップと平行に接続したアンテナを有する。アンテナが受信するこれらの電磁信号は、例えば847KHzの周波数での電磁信号の逆変調により、リーダに所望の情報を送信するために必要な電力をチップに与える。
【0018】
チップからの情報はデータ入力装置16の表示画面に表示され、警察官14が制御を実施できるようにする。そのため、警察官は保険の有効性をチェックし、車両登録番号をチェックし、表示された車両識別番号をフロントガラスの窓に位置するものと比較して、実際に同一であるか等を確認することができる。
【0019】
警察官14が車両について(盗難車か?)、あるいはカードの与える情報について疑念を抱いたとする。この場合、特定の実施例に従って、データ入力装置16は、上述のように、携帯電話などの携帯電話ネットワーク18に接続するためのユニットを有する。警察官は、サーバ20を介して、カードに存在するはずの集中情報を保持する管理センター22、24、26のいずれかに接続することができる。これらの管理センターは、保険管理センター、車両試験管理センター、運転免許罰則点数管理センター等が考えられる。車両登録証書に関して、この種の情報を保持する当局もまた管理センターとして役割を果たすことができる。カードの提供する情報は非常に短時間で適切な管理センターに送信され、そこに存在するはずの情報と比較される。
【0020】
本発明によるシステムの別の用途は、上述のように重量物運搬車両の制御である。この場合、全ての車両の場合同様、チップカードは車両の制御に必要な静的情報全てを含むだけでなく、例えば1日等の所定期間内のキロメートルで表した走行距離、ブレーキ回数および速度に関する動的情報をも含む。動的情報は、近い将来、軽車両についても登録できるようになることに留意されたい。
【0021】
この場合に用いられるチップカードは非接触カードであってもよく、この場合、動的データ記録装置と電磁波によって通信する。カードはまた、結線によって記録装置に(接触によって)接続した接触・非接触ハイブリッドカードでもよい。
【0022】
重量物運搬車両に用いるチップカードは、現在利用されているペーパー制御チャートの場合同様、車両運転者に関連させることができる。しかしながら、ペーパーチャートの場合は明らかに不可能だが、複数の運転者に関するデータを記録するだけの容量がある限り、カードは車両に関連させることが望ましい。
【0023】
データ入力装置とチップカードとの間の通信は、不正な運転者による偽造カードの利用、カードに存在する情報収集目的での偽データ入力装置の利用、または制御当局者を欺く目的での情報の改変を防ぐために、安全なものでなければならない。
【0024】
データ入力装置とカード、またはデータ入力装置と管理センターとの間のメッセージは全て同じ構造を持つ。これらはデータフィールドおよび署名を含む。署名は、送信者のプライベートキーを用いた暗号化データフィールドの「ハッシング」から生じる。データフィールドは送信者の識別子を含み、ヘッダは受信者の識別子を含む。データフィールドはオープンに送信することもでき、受信者のパブリックキーを用いて任意で暗号化することもできる。受信者がメッセージを受信し、必要に応じてプライベートキーを用いて復号化した後、送信者のパブリックキーを用いて署名を復号化し、データフィールドを「ハッシュ」する。このハッシングの結果は、復号化後の受信した署名の結果と同一でなければならない。
【0025】
データ入力装置の全てが、カードにある情報の全てを収集することを許されるわけではなく、管理センター全てに接続できるわけでもない。実際、制御当局者は一般に法執行当局者であるが、国家警察、地方警察または警官隊のいずれに属するかによって異なる権力を有する。例えば、国家警察官は、カード情報全てと管理センター全てにアクセス可能なデータ入力装置を所有することができるが、地方警察官は、車両の制御に関するカード情報にしかアクセスできないため、車両試験センターにしかアクセスできない。このため、各データ入力装置はアクセスできる各種センターに対するアクティブなパブリックキーを含む。
【0026】
警察官が車両のカードを検査したい場合、警察官は自分のデータ入力装置を起動し、これをカードの前に設置する。上記に定義するメッセージ構造を用いて、データ入力装置は図2に示す初期要求(INITIAL REQUEST)を送り、カードは内蔵する各種情報に関連するコード(CODE)を送ることにより、内蔵する各種データの識別を与える。機密データは送信されないため、この送信はオープンに行うことができる。例えば、カードは、登録証書、保険、技術試験、安全証明書、違反リスト、運転免許に関連するデータを含むことを示す。
【0027】
これに対して、データ入力装置は、情報の要求を許可されたコードを選択し(実際にはこのオペレーションについて既に構成されている)、全てのデータ入力装置に共通するプライベートキーCPRI-PDASを用いて送信したデータを暗号化し、これをカードに送信する。この送信には、データ入力装置のパブリックキーCPUB-PDAを伴うことができ、カードがこれを用いて次のメッセージのデータを暗号化して、データ入力装置がそのプライベートキーを用いてこのデータをデコードできるようにすることに留意されたい。カードは、全てのデータ入力装置に共通するパブリックキーを有し、これを用いて受信したデータを復号化する。
【0028】
カードは、別のメッセージで各優先コードに関連するデータを送信することで対応する。各メッセージまたはメッセージパートには、このデータに責任を負い、改変不能なカードデータを提供する管理センターによってカード作成時に確立されたデータ署名(上記に説明)を含む。この署名は、センターのプライベートキーを用いて作成される。対応するパブリックキーを検索可能にするセンターの識別子がデータに追加される。
【0029】
実際、カードからの必要なデータの送信は、データを暗号化しなければならないか否かによって2つの方法で実行することができる。暗号化の必要性は、各コードに対し、必要な場合は1、そうでない場合は0のシングルビットによって示す。
【0030】
カードの送り返すデータが暗号化されていない場合、各メッセージ(またはメッセージパート)は、コードDATA-CODEに関連するデータと署名SIGDATAとから成る。カードの送り返すデータが暗号化されている場合、各メッセージ(またはメッセージパート)は、データ入力装置CPUB-PDAに固有のパブリックキーによって暗号化された前述と同じ要素から成る。
【0031】
各コードは、関連するセンター(データ入力装置に含まれる)のパブリックキーの定義に用いて、カードが与える全ての情報の署名をチェックできるようにする識別子であることに留意されたい。センターのパブリックキー/プライベートキーのペアは、例えば毎年、定期的に変更する必要があり、従ってデータ入力装置は、署名のチェックに用いるセンターのパブリックキーを判定するためにこの識別子を利用できる。そのため、このコードは、2003年に対応するパブリックキーを使用しなければならないことを示すため、03で終わることができる。
【0032】
上述のように、データ入力装置は情報をチェックするためセンターに接続しなければならない場合がある。この場合、データ入力装置は、そのプライベートキーを用いて署名し、センターのパブリックキーを用いて暗号化した可能性のあるメッセージをセンターに送る。センターは、そのプライベートキーを用いて署名し、データ入力装置のパブリックキーを用いて暗号化したメッセージで応答する。図3に示すように、データ入力装置が送信する要求メッセージは、データ入力装置I-PDAの識別とセンターI-CENTREの識別とから成る。メッセージはサーバ20を通過し、これが必要なセンターを識別し、メッセージをこのセンターに送信する。センターは要求されたデータDATAと、データ入力装置CPUB-PDAのパブリックキーを用いて暗号化したこのデータSIGDATAの署名を送り返し、メッセージはサーバを通過して、サーバがその識別子I-PDAを用いてデータ入力装置を識別する。
【0033】
カードデータを検査し、場合によりセンターとチェックした後、車両が法規に違反していることがわかると、警察官はチケットを発行することができる。そのためには、欧州特許第1,034,499号および特許出願PCT/FR02/01103に記載のシステムを用いることが望ましい。この場合、データ入力装置はキーボードおよび/または音声認識手段および/または選択的検索手段を有し、警察官がキーボードにタイプするか、音声認識手段を用いて口頭でか、あるいはデータ入力装置に保存されたデータを選択することにより、チケットのパラメータを入力または選択することができる。このデータの入力または選択後、警察官は接触チケットカードをデータ入力装置に挿入し、チケットのパラメータをそこに記録するか、非接触チケットカードをデータ入力装置の前に設置して、非接触カードに関する従来技術に従ってカードに前記パラメータを記録する。そしてチケットカードを、上記に引用する2つの特許に記載されているように車両のフロントガラスのワイパーアームに挟む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による情報を制御するためのシステムのブロック図を示す。
【図2】カードとデータ入力装置との間で送信されるメッセージの時間依存図を示す。
【図3】データ入力装置と管理センターとの間で送信されるメッセージの時間依存図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現行法規に従って車両が満たさなければならない基準に関する情報を含むチップカードを、許可された者(14)がデータ入力装置を用いて前記車両に関する静的および/または動的情報の制御を実施するために検査できる、車両(10)に関する情報を制御するためのシステムであって、前記チップカードが、前記車両内部に取り外せないように設置される非接触チップカード(12)で、前記データ入力装置(16)が、前記カードに記録された情報を遠隔地で読み取ることに適合する非接触カードリーダと、前記情報を表示する表示画面とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記非接触チップカード(12)に含まれる静的情報は、車両の種類、登録番号、識別番号、保険契約番号およびその有効性を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記非接触チップカードは、重量物運搬車両の場合同様、所定期間、例えば1日に前記車両(10)が走行した距離に関する動的情報をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記データ入力装置(16)を接続できる1つまたは複数の管理センター(22、24、26)をさらに含み、同センターは、前記車両(10)に関する各種静的および/または動的情報の管理を許可されていることを特徴とする請求項1、2及び3のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項5】
前記データ入力装置(16)は、携帯電話ネットワーク(18)およびサーバ(20)を介して前記センター(22、24、26)のそれぞれに接続できる接続手段を有することを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記非接触チップカード(12)に含まれる情報は、それを識別するコードに関連し、同コードは前記カードの各検査時に前記カードによって与えられ、前記データ入力装置は1つまたは複数の前記コードに関連する情報の要求を許可されていることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記データ入力装置(16)は、全てのデータ入力装置に共通するプライベートキー(CPRI-PDAS)を用いた暗号化の後、選択したコードを前記非接触チップカード(12)に送信することにより、1つまたは複数の前記コードに関連するデータを要求し、前記カードは、前記共通プライベートキーに関連する共通パブリックキーを用いて受信した暗号化データを復号化することを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
各コードは、前記非接触チップカード(12)による前記データ送信中に前記コードに関連するデータを暗号化する必要があるかどうかを判定する0または1の値の1ビットを含み、暗号化は、前記データ入力装置(16)に固有のパブリックキー(CPUB-PDA)を用いて実施し、暗号化データは、前記パブリックキーに関連するプライベートキーを用いて前記データ入力装置によって復号化されることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記データ入力装置(16)と前記カード(12)との間で送信されるデータメッセージは、データフィールドと、前記データフィールドのハッシングにより生じる署名と、送信者、カードまたはデータ入力装置のプライベートキーによる結果の暗号化を含むことを特徴とする請求項6、7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記データ入力装置(16)は、前記非接触チップカード(12)の提供する情報が現行法規に従っていない時、前記許可された者(14)がチケットカードにチケットのパラメータを記録できるようにするキーボードまたは音声認識手段または選択的検索手段を含み、前記チケットカードは前記車両(10)のフロントガラスのワイパーアームに挟むことを特徴とする先行請求項のいずれか1つに記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−509400(P2007−509400A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536125(P2006−536125)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002697
【国際公開番号】WO2005/041133
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506138395)
【氏名又は名称原語表記】GRISON,PAUL
【Fターム(参考)】