説明

車両のアンチロール方法及びシステム、並びに対応する車両

車両のアンチロール方法及びシステム、並びに対応する車両を提供する。車両1のロールの制御装置10は、ロールに作用することができる少なくとも1つのアクチュエータ21と、前輪の旋回角、車両に加えられるアンチロールトルク、及び速度からロール状態を推定するモジュールと、ロールに作用する外乱の漸近除去設定値を求めるモジュールとを備える。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、陸上車両、特に車輪により走行する自動車の制御システムの分野に関する。
【0002】
通常、自動車は、シャーシ、車内、サスペンションシステムによりシャーシに連結される車輪を備える。車輪について、前輪は車内の運転手が使用できるハンドルにより制御される操舵輪であり、後輪は操舵輪である場合と非操舵輪である場合とがある。
【0003】
特許文献1は、横方向加速度センサ、ロールセンサ、旋回角センサ、及びヨー安定性の制御ユニットに情報を供給する少なくとも1つの速度センサを備えるヨー安定性制御システムについて記載しており、ロール安定性制御ユニット並びに優先度機能ユニットにより、アクティブサスペンションシステム、およびアクティブアンチロールバーシステムを制御することができる。
【0004】
特許文献2は、導関数および二次導関数比例型の補正、および制動制御システムまたは旋回制御システムに送信される制御信号を用いる、車両のロールの制限方法について記載している。
【0005】
しかしながら、これらのシステムは多数のセンサを必要とし、運転者の指示内容によっては、あるいは車道の状態によっては、安定性が不充分な挙動を車両にもたらす。例えば1つまたは2つの障害物の回避時など、状況によっては車両の制御が効かなくなることがある。この場合の制御の喪失は、車の応答が激し過ぎる、衝撃吸収が充分に行われていない、あるいはほとんど予測できないなど、車両の応答が不適当なことによる場合が多い。
【特許文献1】US 2004/0117085
【特許文献2】US 2004/0117071
【0006】
本発明は、安全性、安心感、快適性、および高いドライビングプレジャーをもたらすアンチロール制御システムを提供することを目的とする。
【0007】
ロールに作用することができる少なくとも1つのアクチュエータを備える車両のロールに係る本制御方法は、前輪の旋回角と、車両に加えられるアンチロールトルクと、速度とからロール状態を推定する段階と、ロールに作用する外乱の漸近除去設定値を求める段階とを含む。こうすることにより、外乱を効果的に除去することができ、その結果、車両の安定性が向上する。
【0008】
好適には、アクチュエータの設定値および旋回角に応じてロール状態を計算する。
【0009】
好適には、アクチュエータの動力性に応じてロール状態を計算する。
【0010】
好適には、外乱に応じてロール状態の進行を計算する。
【0011】
一実施形態によれば、センサを使用してロール状態の進行を測定する。
【0012】
一実施形態によれば、車両の速度に応じて設定値を決定する。
【0013】
車両のロールの制御装置は、ロールに作用することができる少なくとも1つのアクチュエータと、前輪の旋回角、車両に加えられるアンチロールトルク、及び速度からロール状態を推定するモジュールと、ロールに作用する外乱の漸近除去設定値を求めるモジュールとを備える。
【0014】
一実施形態によれば、モジュールは閉ループに配置される。
【0015】
一実施形態によれば、アクチュエータは、制御可能なアンチロールバーに結合される。
【0016】
一実施形態によれば、アクチュエータは、アクティブサスペンションに結合される。
【0017】
車両は、シャーシと、シャーシに連結された少なくとも3つの車輪と、車両のロールの制御装置とを備える。前記装置は、ロールに作用することができる少なくとも1つのアクチュエータと、前輪の旋回角、車両に加えられるアンチロールトルク、及び速度からロール状態を推定するモジュールと、ロールに作用する外乱の漸近除去設定値を求めるモジュールとを備える。
【0018】
本発明は、少なくとも操舵輪が2つある、前輪が2つで後輪が2つの4輪車、3輪車、さらには6輪以上の車両に適用される。
【0019】
本発明により、車両は、運転者の指令内容及び車道の状態の如何にかかわらず、可能な限り安定した挙動をとることができる。例えば1つまたは2つの障害物の回避時など車両の制御が効かなくなる状況を考慮に入れることができる。本発明により、車の応答が激し過ぎる、衝撃吸収が充分に行われていない、あるいはほとんど予測できないなど、応答が不適当なことによるこの種の制御の喪失のリスクを軽減することが可能である。
【0020】
また、本発明により、安心感、快適性、及びドライビングプレジャーの向上を実現することができる。
【0021】
アクティブアンチロールシステムにより、車両の速度を考慮しながら、運転者のハンドル操作に対する車両の横方向応答を最小化することが可能である。そして、安全性、快適性、及びドライビングプレジャーの基準に従って最適化が行われる。
【0022】
本発明は、非限定的な例として提示され添付の図面により示されるいくつかの実施形態についての詳細な説明を読むことにより、よりよく理解されよう。
【0023】
図1でわかるように、車両1は、シャーシ2、2つの操舵前輪3及び4、2つの後輪5及び6を備え、車輪は、図示されないサスペンション機構によりシャーシ2に連結される。
【0024】
車両1を補完するものとして、前輪3及び4の間に配設されたラック8、車両の運転者に提供される図示されないハンドルから機械的にまたは電気的に受け取った命令に応じて、ラック8を介して前輪3及び4の方向を決めることができるラックアクチュエータ9を備える操舵システム7がある。
【0025】
アンチロール制御システム10は、制御ユニット11と、例えばアクチュエータ9上に配置される前輪3及び4の旋回位置センサ12と、車両の速度Vを判定することが可能な、例えば前輪の回転速度センサ13と、車両のロール角θ、すなわち前後方向における重心を中心とする車両の傾きを検出するセンサ14とを備える。
【0026】
システム10はさらに、後輪5及び6の旋回角センサ17及び18と、前記後輪5及び6の向きを決めることができるアクチュエータ19及び20とを備えることもできる。しかしながら、旋回角並びに後輪5及び6の向きを検出するために、ただ1つのセンサ17とただ1つのアクチュエータ19とのみを用いることも可能である。後輪5及び6は、非操舵輪であってもよい。位置センサおよび速度センサは、可動部分に固設されたエンコーダと協働する、光学方式あるいは例えばホール効果による磁気方式のものとすることができるが、センサは回転しない。
【0027】
車両1は、前輪3及び4を連結するアンチロールバー15と、後輪5及び6を連結するアンチロールバー16とを備える。アンチロール制御システム10は、少なくとも1つのアクチュエータとして、フロントアンチロールバー15及びリアアンチロールバー16にそれぞれ組み合わされ、制御ユニット11からの制御命令の受信時にアクティブアンチロールバーとなるように、前記アンチロールバー15及び16にそれぞれ作用することができる2つのアクチュエータ21及び22を備える。アクチュエータ21及び22は、例えば、制御ユニット11から受信した設定値に応じて、アンチロールバー15及び16の剛性を変えることができる。
【0028】
制御ユニット11は、RAMと、ROMと、CPUと、センサからの情報を受信して特にアンチロールアクチュエータ21及び22に指示を送信することが可能な入出力インタフェースを備えるマイクロプロセッサの形態で作製することができる。
【0029】
より詳細には、制御ユニット11は、図2でわかるように、センサ12ないし14からの信号、特に車両速度V、ロール角θ、及び前輪角α1を受信する入力ブロック23を備える。車両速度Vは、車輪のアンチブロックシステムのセンサにより測定される、前輪または後輪の速度の平均値を求めることにより得られる。この場合、1車輪あたり1つのセンサ13が設けられ、車輪のアンチブロックシステムは、車両速度についての情報を供給するために制御ユニット11の入力部に接続された出力部を備える。代替例としては、各センサ13が制御ユニット11の入力部に接続され、制御ユニット11が車輪の速度の平均値を算出する。
【0030】
制御ユニット11は、測定されないが制御には必要な情報、特に、車両に影響を及ぼす外乱を推定することが可能な状態観測装置24をも含む。入力ブロック23は、車両の速度V、ロール角θ、前輪角αを状態観測装置24に供給する。状態観測装置24は、例えば、前輪旋回角αと車体のロール角θとの間、並びにアクチュエータによって加えられるトルクμと車体のロール角θとの間の伝達を表す単純式に応じるモデルに基づいて構築することができる。この式はたとえば以下のように表すことができる:

【0031】
さらに、アクチュエータによって実際に加えられるトルクμと指令トルクμとを区別することにより、アクチュエータの動力性を導入することができる。これは以下のように表すことができる。

【0032】
このモデルに関する状態式は以下のとおりである:


さらに:



【0033】
yは想定出力であり、X2,cは、想定出力をyとした時、X2,c=2ξωθ+θ−Gαταによって定義されるロール時の車両の第2状態であり、Mは車両の合計質量であり、IXXは、車体のロール軸、すなわち地上より高いところに設定され前方に向かって若干傾斜していてもよい前後軸を中心とする車体の慣性であり、Lは車両のホイールベースであり、hは車体のロール軸を基準とする重心の高さであり、Eは前車軸のトレッドであり、Eは後車軸のトレッドであり、αは前輪の旋回角であり、θは車体のロール角であり、θはモデルから算出された車体のロール角であり、θは車体のロール速度であり、θはモデルから算出された車体のロール速度であり、μは設定ロールトルクであり、μはアクチュエータの動力性によりろ波されたロールトルク、すなわち実際に加えられたトルクであり、τはアンチロールアクチュエータの応答時間である。
【0034】
次に、同じモデルに基づくが、モデルに外乱を付加することにより、観測装置を構築する。外乱は、たとえば式d=0によって特徴付けられるステップ外乱としてモデル化することができる。
【0035】
すると観測装置の発展方程式は以下のようになる:


ここで^は値が推定値であることを意味する。
【0036】
なお観測装置は速度に依存することに留意されたい。また、Kobsは観測装置の設定パラメータであることにも留意すべきである。複数の車両速度についてパラメータを計算し、次にこれを外挿してKobs(V)および車両の速度の変化にともなう挙動の違いを得ることができる。
【0037】
4つの推定値

は制御ユニット11のその他の要素が使用できるような、車両の状態の推定値である。
【0038】
さらに制御ユニット11は、漸近的外乱除去ブロック25も備える。漸近的外乱除去ブロック25により、想定出力、一般的には車両1のロール角θに対し、外乱

を見えないようにすることが可能である。状態観測装置24により、推定外乱

に対しルーピングが行われる。その場合の制御式は以下のようになる。

ここで、以下の関係が成立することに注意のこと。

【0039】
利得Gαの計算は、線形システムの解像度についての従来の数学的概念を使用して求めることができる。
【0040】
制御ユニット11を補完するものとして出力部27があるが、これは制御ユニットの総合的出力部を形成するもので、トルク設定値μを出力し、アンチロールアクチュエータ21及び22に送信する。
【0041】
本発明により、特に車両がカーブに差しかかった時、所望のタイミングで、アンチロールバー15及び16のアンチロール作用の変動を利用することができるようになるので、車両の接地性、並びに運転者が感じる運転快適性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施態様による制御システムを具備する車両の略図である。
【図2】図1のシステムのロジックダイアグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪の旋回角と、車両に加えられるアンチロールトルクと、速度とからロール状態を推定し、ロールに作用する外乱の漸近除去設定値を求めることを特徴とする、ロールに作用することができる少なくとも1つのアクチュエータ(21)を備える車両(1)のロールの制御方法。
【請求項2】
アクチュエータの設定値及び旋回角に応じてロール角を計算することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アクチュエータの動力性に応じてロール角を計算することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
外乱に応じてロール角の進行を計算することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
センサ(14)を使用してロール角の進行を測定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
車両の速度に応じて設定値を決定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ロールに作用することができる少なくとも1つのアクチュエータ(21)と、前輪の旋回角、車両に加えられるアンチロールトルク、及び速度からロール状態を推定するモジュール(24)と、ロールに作用する外乱の漸近除去設定値を求めるモジュール(25)とを備える、車両のロールの制御装置。
【請求項8】
モジュールが閉ループに配置されることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
アクチュエータが、制御可能なアンチロールバーに結合されることを特徴とする請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
アクチュエータが、アクティブサスペンションに結合されることを特徴とする請求項7または8に記載の装置。
【請求項11】
シャーシと、シャーシに連結された少なくとも3つの車輪と、車両のロールの制御装置とを備える車両であって、前記装置が、ロールに作用することができる少なくとも1つのアクチュエータと、前輪の旋回角、車両に加えられるアンチロールトルク、及び速度からロール状態を推定するモジュールと、ロールに作用する外乱の漸近除去設定値を求めるモジュールとを備える前記車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−544925(P2008−544925A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519974(P2008−519974)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050658
【国際公開番号】WO2007/003858
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】