説明

車両のシート構造

【課題】車両の側突時に車両側部からの衝撃荷重をシートバックフレームのサイドフレームに設けた衝撃低減部により低減し、乗員の胸部へ入力される荷重を減少させることができる車両のシート構造を提供する。
【解決手段】シートクッション7の後部に連結され、乗員Xの背中を後方から支持するシートバック8内部に設けられたシートバックフレーム15と、シートバックフレーム15の側部において上下方向に延びるサイドフレーム17と、シートバック8の形状を形成し、かつ、サイドフレーム17を覆うパッド部材と、を備え、サイドフレーム17には車両側方からの衝撃を低減する衝撃低減部20が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートバック内部に設けられたシートバックフレームと、該シートバックフレームの側部において上下方向に延びるサイドフレームと、シートバックの形状を形成し、かつ上記サイドフレームを覆うパッド部材と、を備えたような車両のシート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のシート構造は、車両用シートのシートクッションの後部に連結されて、シートに着座した乗員の背中を後方から支持するシートバックと、このシートバックの内部に設けられたシートバックフレームと、このシートバックフレームの側部において上下方向に延びるサイドフレームと、上記シートバックの形状を形成すると共に、サイドフレームを覆うパッド部材と、を備えている。
このように、サイドフレームを備えた車両のシート構造において、車両の側面衝突時に、シートに着座した乗員の側方から荷重(側突荷重)が入力すると、乗員の胸部相当位置にサイドフレームが当接して、乗員に対する衝撃が大きくなる問題点があった。
【0003】
このような問題点を解決するため、例えば、特許文献1に開示された構造が既に発明されている。
すなわち、サイドフレーム(サイドブラケット参照)を備えた車両のシート構造において、乗員がシートに着座した時、該乗員の胸部とサイドフレームとが車両側面視でオーバラップしないように、該サイドフレームの上部を細く形成し、かつ、該サイドフレームには略コ字形状の棒状部材(ワイヤ部材参照)を車両前側に向かって突出して配置し、通常着座時においては該棒状部材にて乗員の車幅方向の保持性能を確保すると共に、車両の側突時には、車両側面に加わる衝撃を上記棒状部材にて、吸収するように構成したものである。
【0004】
しかしながら、この従来構造においては、サイドフレームの上部が細いので、その乗員の車幅方向の保持力が不充分となるうえ、該サイドフレームが2部材(サイドフレームと棒状部材との2部材)から構成される関係上、構造が複雑化すると共に、別途、棒状部材を必要とするので、部品点数および組付け工数が増大する問題点があった。
一方、特許文献2には、車両衝突時にその衝撃荷重を充分に吸収するように成したバックフレームが開示されている。
【0005】
このバックフレームは両側に位置するサイドフレームを有し、このサイドフレームの前部および後部に該サイドフレームの車幅方向全幅にわたって延びる凹形状のノッチを設け、このノッチにより衝撃荷重を吸収すべく構成したものである。
しかしながら、この特許文献2に開示された従来構造においては、車両の前突時、後突時に衝撃荷重を吸収することはできても、車両の側突時において衝撃荷重を吸収することは不可能である。
【0006】
また、特許文献3には、サイドフレームを備えた車両用シートにおいて、サイドフレームの前側に、硬質ポリウレタンフォームなどの合成樹脂弾性体から成るサポートパッドを取付け、このサポートパッドが、着座した乗員の肩部に対向する位置から腰部に対向する位置まで上下方向に延在し、腰部に対向する下部を、肩部に対向する上部よりも前方に膨出させた構造が開示されている。
この従来構造によれば、上記サポートパッドにより、シートに着座した乗員のホールド性(保持性)を高めることができるが、車両の側突時において該サポートパッドによりサイドフレームの乗員側への侵入を防止することはできないものである。
【0007】
さらに、特許文献4には、シートバックが、シートに着座した乗員を車両側方から支持するサイドサポート部を有し、このサイドサポート部の内部にエネルギ吸収パッドを設け、該エネルギ吸収パッドで側突時の衝撃を吸収するように構成したものが開示されているが、このエネルギ吸収パッドはサイドフレームの車幅方向外側に設けられており、該エネルギ吸収パッドでサイドフレームの乗員側への侵入を防止するという技術思想は全く存在しないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−212397号公報
【特許文献2】実開平5−70345号公報
【特許文献3】特開2006−110221号公報
【特許文献4】特開2000−125988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、サイドフレームに、車両側方からの衝撃を低減する衝撃低減部を設けることで、車両の側突時に車両側部からの衝撃荷重をシートバックフレームの上記サイドフレームに設けた衝撃低減部によって低減することができ、乗員の胸部へ入力される荷重を減少させることができる車両のシート構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による車両のシート構造は、車両用シートのシートクッションの後部に連結され、シートに着座した乗員の背中を後方から支持するシートバック内部に設けられたシートバックフレームと、上記シートバックフレームの側部において上下方向に延びるサイドフレームと、上記シートバックの形状を形成すると共に、上記サイドフレームを覆うパッド部材と、を備えた車両のシート構造であって、上記サイドフレームには車両側方からの衝撃を低減する衝撃低減部が設けられたものである。
上述の衝撃低減部は、側突時にサイドフレームを変形または分離する脆弱部、薄肉部、開口部、剛性低減部などに設定してもよい。
【0011】
上記構成によれば、サイドフレームそれ自体に上述の衝撃低減部を設けたので、車両の側突時に車両側部からの衝撃荷重を該衝撃低減部にて低減することができ、この結果、乗員の胸部へ入力される荷重を減少させることができる。
また、衝撃低減部がサイドフレームそれ自体に設けられるため、構造の複雑化や部品点数、組付け工数の増加を招くことなく、上記効果を達成することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記衝撃低減部は、車両側方からの衝撃により上記サイドフレームを変形させることで衝撃を低減するものである。
上記構成によれば、車両側部からの衝撃を、サイドフレームが変形することにより上記衝撃低減部が吸収するので、乗員の胸部へ入力される荷重の減少を図ることができる。
また、上記サイドフレームがパッド部材の内部において変形するので、サイドフレームの硬さがパッド部材により吸収緩和され、側突時に乗員に付勢される衝撃荷重の低減を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記衝撃低減部は、上記サイドフレームに上下方向に延設形成された脆弱部で構成され、車両側方からの衝撃により上記サイドフレームが該脆弱部を起点として変形可能に構成されたものである。
上述の脆弱部は、薄肉部または長孔などの開口部に設定してもよい。
上記構成によれば、衝撃低減部としての脆弱部が上下方向に延設形成されているので、側方からの衝撃を受けた際、サイドフレームが該脆弱部を起点として変形しやすくなり、乗員胸部への入力荷重の低減を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記脆弱部は上記サイドフレームに設けられた薄肉部であることを特徴とする。
上記構成によれば、プレス加工によりサイドフレームの加工と同時に上記薄肉部を容易に形成することができる。換言すれば、上記薄肉部をサイドフレームと同時成形することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記サイドフレームに上下方向に延設された上記脆弱部に連続して、該サイドフレームの車両前端に向けて他の脆弱部が設けられたものである。
上記構成によれば、上下方向に延びる脆弱部と、サイドフレームの前端に向けて設けられた他の脆弱部とにより、側突時に乗員へ衝撃を与えるサイドフレームの部分が該サイドフレームのフレーム本体から切り離されて、分離し、この部分がシートバックのパッド部材で拘束されない状態となるため、サイドフレームが乗員へ与える衝撃を低減することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記衝撃低減部がシートに着座した乗員の胸部相当位置に設けられたものである。
上記構成によれば、衝撃低減部がシート着座乗員の胸部に対応して設けられているので、乗員の胸部に相当する位置のサイドフレームが変形または分離して、乗員の胸部へ与える衝撃を低減することができて、乗員の胸部の圧迫を軽減することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記サイドフレームに取付けられて所定条件成立時に乗員の側方にて膨張展開するバッグ部を備えたサイドエアバッグ装置が設けられ、上記バック部にガスを供給するためのインフレータが、上記衝撃低減部よりもシート後方位置に取付けられたものである。
上述の所定条件成立は、車両側方から入力される横加速度、いわゆる横Gが所定値を超えたか否かで、判定してもよい。
【0018】
上記構成によれば、上記インフレータが衝撃低減部よりもシート後方位置(変形しない位置)に取付けられているので、側突時においてサイドエアバッグ装置のバッグ部の膨張展開が安定して行なわれる。
また、剛性部材であるインフレータが、衝撃により変形する衝撃低減部よりも後方に位置するので、インフレータにより乗員に過度の荷重を与えるものではない。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記衝撃低減部がシートバック前側表面における乗員の着座面よりも後方に設けられたものである。
上述の着座面とは、乗員がシートバックに背中をもたれかけて、パッド部材が所定量圧縮して安定した状態下におけるシートバック前側表面のことである。
上記構成によれば、衝撃低減部が上記着座面よりも後方に設けられたので、車両側方から衝撃を受けた時、変形したサイドフレームにより乗員が衝撃を受ける量の低減を図ることができる。
【0020】
この発明による車両のシート構造は、また、車両用シートのシートクッションの後部に連結され、シートに着座した乗員の背中を後方から支持するシートバック内部に設けられたシートバックフレームと、上記シートバックフレームの側部において上下方向に延びるサイドフレームと、上記シートバックの形状を形成すると共に、上記サイドフレームを覆うパッド部材と、を備えた車両のシート構造であって、上記シートバックはシートに着座した乗員を車両側方から支持するサイドサポート部を有し、乗員の胸部相当位置でのシート断面視において、シートバック前側表面における乗員の着座面より前方のサイドサポート部内には上記サイドフレームが存在せず、該サイドフレームは上記着座面より後方に位置し、上記パッド部材とは別体の衝撃低減部としての硬質パッド部材が、上記サイドサポート部内において上記サイドフレームの車幅方向内側に沿設して設けられたものである。
上述の硬質パッド部材は、硬質ウレタン部材で形成してもよい。
【0021】
上記構成によれば、通常時においては、上記シート断面視において、シートバック前側表面における乗員の着座面よりも前方のサイドサポート部内に上記サイドフレームが存在しないので、該サイドフレームの上部を細くすることができ、これにより側面視においてサイドフレームが乗員へ当接する部分が少なくなる。
【0022】
また通常時においては、サイドフレームの車幅方向内側に沿設された硬質パッド部材にて、乗員を側方から支持することができる。
さらに、側突時においては、上記シート断面視において、シートバック前側表面における乗員の着座面よりも前方のサイドサポート部内に上記サイドフレームが存在しないので、特に問題はないが、側突時に仮にサイドフレームが車幅方向内方へ変位しても、これを硬質パッド部材が受け止めるので、乗員のさらなる安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、サイドフレームに、車両側方からの衝撃を低減する衝撃低減部を設けたので、車両の側突時に車両側部からの衝撃荷重をシートバックフレームの上記サイドフレームに設けた衝撃低減部によって低減することができ、乗員の胸部へ入力される荷重を減少させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の車両のシート構造を示す概略側面図
【図2】図1のA−A線矢視断面図
【図3】サイドフレームの側面図
【図4】図3のB−B線矢視断面図
【図5】(a)〜(d)は何れも脆弱部の構造を示す断面図
【図6】側突時におけるサイドフレームの変形状態を示す説明図
【図7】衝撃低減部形成パターンの他の実施例を示す側面図
【図8】衝撃低減部として長孔を用いた実施例を示す側面図
【図9】サイドエアバッグ装置を備えた車両のシート構造を示す断面図
【図10】図9の要部の側面図
【図11】エアバッグ展開時の説明図
【図12】インフレータ配設構造の他の実施例を示す側面図
【図13】インフレータをサイドフレームの車幅方向内側に配設した実施例を示す断面図
【図14】エアバッグ展開時の説明図
【図15】衝撃低減部の他の実施例を示す断面図
【図16】衝撃低減部のさらに他の実施例を示す断面図
【図17】車両のシート構造のさらに他の実施例を示す断面図
【図18】車両のシート構造のさらに他の実施例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
車両の側突時に車両側部からの衝撃荷重をシートバックフレームのサイドフレームに設けた衝撃低減部にて低減して、乗員の胸部へ入力される荷重を減少するという目的を、車両用シートのシートクッションの後部に連結され、シートに着座した乗員の背中を後方から支持するシートバック内部に設けられたシートバックフレームと、上記シートバックフレームの側部において上下方向に延びるサイドフレームと、上記シートバックの形状を形成すると共に、上記サイドフレームを覆うパッド部材と、を備えた車両のシート構造において、上記サイドフレームには車両側方からの衝撃を低減する衝撃低減部を設けるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0026】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のシート構造を示し、図1に示す概略側面図において、フロアパネル1上には複数のシート取付けブラケット2,3を介してシートスライドレール4を取付けている。
【0027】
このシートスライドレール4は、下側に位置する固定構造のロアレールと、上側に位置する可動構造のアッパレールとを備えており、シートスライドレール4におけるアッパレールにはシートクッションフレーム5を介してシート6を取付けている。このシート6は、ドライバーズシートまたはパッセンジャーズシートなどのフロントシート、2列目のリヤシート、3列目のリヤシートの何れであってもよいが、この実施例では車両の左側に配設されたシートを例示している。
【0028】
このシート6は、乗員の着座面を構成するシートクッション7と、シートクッション7の後部に連結され、シート6に着座した乗員の背中を後方から支持するシートバック8と、シートバック8の上部に設けられて、シート6に着座した乗員の頭部を後方から支持するヘッドレスト9と、を備えている。
なお、図面では乗員に代えて人体マネキン(いわゆるダミー人形)Xを示しており、Yは人体マネキンXの胸部、Zはその肋骨を示す。
【0029】
図2は図1のA−A線矢視断面図(平面図)、図3は図2の車幅方向外側から見た状態で示す要部の側面図であって、図2に示すように、シートバック8は、シート6に着座した乗員(人体マネキンX参照)を車両側方から支持する左右一対のサイドサポート部10,11を備えている。
また、上述のシートバック8は、その形状を形成するパッド部材12と、該パッド部材12を外側から覆う表面13とを備えると共に、シートバック8内の背部には軽量化を目的としてパッド部材12が存在しない空間部14が形成されている。
【0030】
図2、図3に示すように、シートバック8の内部にはシートバックフレーム15が設けられている、このシートバックフレーム15は車両正面視で門形状に形成されたメインフレーム16と、このメインフレーム16の左右両側部において上下方向に延びるサイドフレーム17,17と、を備えており、図1、図3に示すように、メインフレーム16の上部にはポールガイド18(いわゆる支持パイプ)を取付け、このポールガイド18でヘッドレスト9のヘッドレストポール19を上下調整可能に支持するように構成している。
また、図2に示すように、上述のサイドフレーム17,17はパッド部材12で覆われている。
【0031】
図4は図3のB−B線矢視断面図であって、サイドフレーム17の断面構造を示すものである。図4に示すように、サイドフレーム17は、前後方向に延びるサイド部17a(後述するフロントビード部17c、膨出部17eを含む)と、車幅方向に延びるリヤ部17b(後述するリヤビード部17dを含む)と、を平面視で略L字状に一体形成したもので、サイド部17aの前端には車幅方向の内外両側方に突出するフロントビード部17cを一体形成し、リヤ部17bの車幅方向内端には後方に突出するリヤビード部17dを一体形成すると共に、サイド部17aの後部には車幅方向外方に突出する膨出部17eが一体形成されている。
【0032】
換言すれば、図3に側面図で示すように、フロントビード部17cと膨出部17eとの間に、サイドフレーム17の長手方向に沿って上下方向に延びる凹部17fが形成されたものであって、これにより、サイドフレーム17の剛性を確保するように構成している。
しかも、このサイドフレーム17のサイド部17aには、図3に示すように、車両側方からの衝撃を低減する衝撃低減部の一例として、サイド部17aに上下方向に延設形成された脆弱部20が設けられている。
【0033】
図3に示すように、この脆弱部20はサイドフレーム17におけるサイド部17aの上端から、シート6に着座した乗員の胸部相当位置、つまり図3に仮想線で示す人体マネキンXの肋骨Zの後部の直後位置を通って下方に延びるように上下方向に連続して形成されていて、この脆弱部20は車両側方からの衝撃(側突時の衝撃)により上述のサイドフレーム17のサイド部17aを変形させることで衝撃を低減すべく構成している。図3で示した上述の脆弱部20は、上下方向に完全に連続して直線状に延びるように形成されているが、この脆弱部は上下方向の微小間隔を隔てて上下方向に略連続するように形成してもよく、また脆弱部20の形成パターンは必ずしも直線状でなくてもよい。
この実施例1では、車両側方からの衝撃により上述のサイドフレーム17のサイド部17aが上記脆弱部20を起点として、車幅方向の外側または内側へ変形可能に構成されたものである。
【0034】
図5の(a)〜(d)は図3、図4で示した脆弱部20の具体的構造を示す断面図であって、図5の(a)に示す脆弱部20は、サイド部17aの片側にV字状の凹部20aを形成することで、該サイド部17aを薄肉化した薄肉部20bにより脆弱部20を構成したものである。
【0035】
図5の(b)に示す脆弱部20は、サイド部17aの両側にV字状の凹部20a,20aをそれぞれ形成することで、該サイド部17aを薄肉化した薄肉部20bにより脆弱部20を構成したものである。
【0036】
図5の(c)に示す脆弱部20は、サイド部17aの片側にU字状の凹部20cを形成することで、該サイド部17aを薄肉化した薄肉部20bにより脆弱部20を構成したものである。
【0037】
図5の(d)に示す脆弱部20は、サイド部17aの片側に逆台形状の凹部20dを形成することで、該サイド部17aを薄肉化した薄肉部20bにより脆弱部20を構成したものである。
【0038】
図5の(a)〜(d)で例示した脆弱部20の構造の他に各種の変形構造を用いてもよい。例えば、図5の(c)、図5の(d)で示した凹部20c,20dは両側に形成してもよく、また、図5の(d)で示した逆台形状の凹部20dにおける台形頂部の長さを長くして、薄肉部20bの車両前後方向の長さを、さらに長く形成してもよい。
【0039】
脆弱部20の採用に際しては、図5の(a)〜(d)の構造の何れか1つを選定すればよい。また、サイドフレーム17は図2に示すように、シートバック8内に左右一対存在するが、これら一対のサイドフレーム17,17のうち車幅方向外側に位置するサイドフレーム17のみに脆弱部20を形成すれば充分である。但し、一対のサイドフレーム17,17の両方に脆弱部20を形成し、シート6を車両の左側または右側の何れに搭載しても、衝撃低減構造が得られるように成してもよいことは勿論である。
なお、図中、矢印Fは車両の前方を示し、矢印Rは車両の後方を示し、矢印OUTは車両の外方を示し、矢印INは車両の内方を示す。
【0040】
このように構成した車両のシート構造において、車両の側面衝突時にシート6に対して車両側方からの衝撃が入力すると、図6に示すように、サイドフレーム17のサイド部17aはその脆弱部20を起点として変形し、このサイド部17aの変形により、衝撃荷重を低減するので、乗員の胸部へ入力される荷重を減少させることができる。
【0041】
このように、図1〜図6で示した実施例1の車両のシート構造(請求項1、2、3、4、6に相当)は、車両用シート6のシートクッション7の後部に連結され、シート6に着座した乗員(人体マネキンX参照)の背中を後方から支持するシートバック8内部に設けられたシートバックフレーム15と、上記シートバックフレーム15の側部において上下方向に延びるサイドフレーム17と、上記シートバック8の形状を形成すると共に、上記サイドフレーム17を覆うパッド部材12と、を備えた車両のシート構造であって、上記サイドフレーム17には車両側方からの衝撃を低減する衝撃低減部(脆弱部20参照)が設けられたものである(図1、図2、図3参照)。
【0042】
この構成によれば、サイドフレーム17それ自体に上述の衝撃低減部(脆弱部20参照)を設けたので、車両の側突時に車両側部からの衝撃荷重を該衝撃低減部(脆弱部20)にて低減することができ、この結果、乗員の胸部へ入力される荷重を減少させることができる。
また、衝撃低減部(脆弱部20)がサイドフレーム17それ自体に設けられるため、構造の複雑化や部品点数、組付け工数の増加を招くことなく、上記効果を達成することができる。
【0043】
また、上記衝撃低減部(脆弱部20参照)は、車両側方からの衝撃により上記サイドフレーム17を変形させることで衝撃を低減するものである(図6参照)。
この構成によれば、車両側部からの衝撃を、サイドフレーム17が変形することにより上記衝撃低減部(脆弱部20)が吸収するので、乗員の胸部へ入力される荷重の減少を図ることができる。
【0044】
さらに、上記サイドフレーム17がパッド部材12の内部において変形するので、サイドフレーム17の硬さがパッド部材12により吸収緩和され、側突時に乗員に付勢される衝撃荷重の低減を図ることができる。
加えて、上記衝撃低減部は、上記サイドフレーム17に上下方向に形成された脆弱部20で構成され、車両側方からの衝撃により上記サイドフレーム17が該脆弱部20を起点として変形可能に構成されたものである(図3、図6参照)。
この構成によれば、衝撃低減部としての脆弱部20が上下方向に延設形成されているので、側方からの衝撃を受けた際、サイドフレーム17(特にそのサイド部17a)が該脆弱部20を起点として容易に変形して、乗員胸部への入力荷重の低減を図ることができる。
【0045】
また、上記脆弱部20は上記サイドフレーム17に設けられた薄肉部20bであることを特徴とする(図4、図5参照)。
この構成によれば、プレス加工によりサイドフレーム17の加工と同時に上記薄肉部20bを簡単に形成することができる。換言すれば、上記薄肉部20bをサイドフレーム17と同時成形することができる。
【0046】
さらに、上記衝撃低減部(脆弱部20参照)がシート6に着座した乗員の胸部(図3に仮想線で示す人体マネキンXの胸部Y参照)相当位置に設けられたものである(図3参照)。
この構成によれば、衝撃低減部(脆弱部20)がシート着座乗員の胸部Yに対応して設けられているので、乗員の胸部Yに相当する位置のサイドフレーム17が変形または分離(但し、この実施例1では変形)して、乗員の胸部Yへ与える衝撃を低減することができて、乗員の胸部Yの圧迫を軽減することができる。
【実施例2】
【0047】
図7は車両のシート構造の他の実施例を示し、サイドフレーム17のサイド部17aにおいて上下方向に延設された上述の脆弱部20に連続して、該サイドフレーム17のサイド部17aの車両前端に向けて他の脆弱部21が設けられたものである。
すなわち、上述の脆弱部20は、メインフレーム16とサブフレーム17とが車幅方向にオーバラップしない位置において、サイド部17aの上端からメインフレーム16下端対応部まで下方に延びる上部20Aと、この上部20Aの下端から斜め下方後方に延びる中間部20Bと、この中間部20Bの下端から膨出部17eの前側に沿って下方に延びる下部20Dと、を上下方向に連続して形成したものである。
【0048】
そして、上述の脆弱部20の下端20Eからサイド部17aの車両前端に向けて他の脆弱部21が斜め前方下方に延びるように設け、脆弱部20と、他の脆弱部21とを完全に連続させたものである。ここで、上述の他の脆弱部21は、側突時において各脆弱部20,21よりも前側の部分を切り離すことを目的として、フロントビード部17cにも連続して形成される。
【0049】
このように、図7で示した実施例2(請求項1〜6に相当)においては、上記サイドフレーム17に上下方向に沿設された上記脆弱部20に連続して、該サイドフレーム17の車両前端に向けて他の脆弱部21が設けられたものである(図7参照)。
この構成によれば、上下方向に延びる脆弱部20と、サイドフレーム17の前端に向けて設けられた他の脆弱部21とにより、側突時に乗員へ衝撃を与えるサイドフレーム17の部分(各脆弱部20,21よりも車両前方側の部分)が該サイドフレーム17のフレーム本体から切り離されて、分離し、シートバック8のパッド部材12で拘束されない状態となるため、サイドフレーム17が乗員へ与える衝撃をより一層確実に低減することができる。
【0050】
この実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例1とほぼ同様であるから、図7において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略するが、各脆弱部20,21がサイドフレーム17のサイド部17a上端から、シートに着座した乗員の胸部相当位置(人体マネキンXの肋骨Z後部より後方の位置)を経由して、サイド部17a前端まで連続する構造であれば、その形成パターンは図7の形成パターンに限定されるものではない。
【実施例3】
【0051】
図8は車両のシート構造のさらに他の実施例を示し、衝撃低減部を複数の長孔22,23,24,25で形成したものである。
すなわち、サイドフレーム17のサイド部17aには車両側方からの衝撃を低減する衝撃低減部として複数の長孔22〜25を設け、これら各長孔22〜25は、車両側方からの衝撃によりサイドフレーム17のサイド部17aを変形させることで衝撃を低減するものである。
【0052】
この実施例3では、第1長孔22と、第2長孔23と、第3長孔24の上部とは、サイドフレーム17のサイド部17aに上下方向に延びるように形成されており、第3長孔24の下部および第4長孔25は円弧状に形成されており、該第3長孔24の下部に対して、その延長線上に沿うように第4長孔25の下端は、サイド部17aの前端近傍まで開口形成されている。
【0053】
また、上記各長孔間(22,23間、23,24間、24,25間)にはサイドフレーム17のサイド部17aを残し、これら複数の長孔22〜25(つまり、開口部)をそれぞれ非連続と成して、通常時におけるサイドフレーム7の所定剛性を確保するように構成している。
つまり、この実施例3では、第1長孔22と、第2長孔23と、第3長孔24の上部とは、サイドフレーム17の上下方向に延設された脆弱部を構成し、第3長孔24の下部と第4長孔25とは、脆弱部に連続してサイドフレーム17の車両前端に向けて延びる他の脆弱部を構成するものである。
【0054】
また、第1長孔22と、第2長孔23と、第3長孔24の上部とは、シール16に着座した乗員の胸部相当位置(人体マネキンXの肋骨Z後部より後方位置)に設けられている。
このように構成した車両のシート構造(請求項1、2、3、6に相当)において、車両の側面衝突時にシート6に対して車両側方からの衝撃が入力すると、サイドフレーム17のサイド部17aは衝撃低減部としての長孔22,23,24,25を起点として変形し、このサイド部17aの変形により、衝撃荷重を低減するので、乗員の胸部へ入力される荷重を軽減することができる。
【0055】
この実施例3においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図8において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略するが、各長孔22〜25がサイドフレーム17のサイド部17a上端近傍から、シートに着座した乗員の胸部相当位置(人体マネキンXの肋骨Z後部より後方の位置)を経由して、サイド部17aの前端近傍まで延びる構成であれば、その形成パターンは図8の形成パターンに限定されるものではない。
また、各長孔22〜25の長さ、および長孔の形成個数は図8で示した構造に限定されるものではなく、長孔の数量は3つでもよく、または5つ以上であってもよい。
【実施例4】
【0056】
図9、図10、図11は車両のシート構造のさらに他の実施例を示し、図9は平面図、図10は要部側面図、図11はエアバッグ展開時の説明図である。
図9に示すように、この実施例4では、サイドフレーム17のサイド部17aにおける車幅方向外側にサイドエアバッグ装置30を設けている。
【0057】
このサイドエアバッグ装置30は、所定条件成立時(例えば、車両側方から入力される横加速度、いわゆる横Gが所定値を超えた時)に乗員の側方にて膨張展開するバッグ部31と、このバック部31にガスを供給するためのインフレータ32とを備えている。
上述のサイドエアバッグ装置30はサイドフレーム17に取付けられており、バッグ部31はサイド部17aの車幅方向外側からサイドサポート部10にわたって内蔵されている。また、バッグ部31は該サイドサポート部10の前部から前方に膨張して、シート6に着座した乗員の側方に展開(図11参照)するので、対応部位のパッド部材12には切れ目12aが形成されている。
【0058】
なお、図9において、バッグ部31の折畳み構造は図示の便宜上省略しており、このバッグ部31を概略的に図示している。
図9において、Gはシートバック8前側表面における乗員の着座面(乗員がシートバック8に背中をもたれかけて、パッド部材12が所定量圧縮して安定した状態下におけるシートバック前側表面、つまり、背もたれ面)であって、衝撃低減部としての前述の脆弱部20は、この着座面Gよりも後方に設けられている。
【0059】
しかも、上述のインフレータ32は、この衝撃低減部としての脆弱部20よりもさらにシート後方位置に取付けられている。つまり、該インフレータ32は側突時に変形しない部位に取付けられたものである。
また、図10に示すように、上述のインフレータ32はサイドフレーム17におけるサイド部17aの上下方向の中間部に相当する高さ位置に取付けられている。
【0060】
このように構成した車両のシート構造において、車両の側面衝突時にシート6に対して車両側方からの衝撃が入力すると、インフレータ32の作動によりバッグ部31内にガスが供給され、該バッグ部31はサイドサポート部10の切れ目12aから前方に膨張して、図11に示すように、シート6に着座した乗員の側方に展開する。
上述のバッグ部31の展開圧力により、サイドフレーム17のサイド部17aは衝撃低減部としての脆弱部20を起点として車幅方向の内側に変形し、このサイド部17aの変形により、衝撃荷重を低減するので、乗員の胸部へ入力される荷重軽減を図ることができる。
【0061】
このように、図9、図10、図11で示した実施例(請求項1〜8に相当)においては、上記サイドフレーム17に取付けられて所定条件成立時に乗員の側方にて膨張展開するバッグ部31を備えたサイドエアバッグ装置30が設けられ、上記バック部31にガスを供給するためのインフレータ32が、上記衝撃低減部(脆弱部20参照)よりもシート後方位置に取付けられたものである(図9参照)。
この構成によれば、上記インフレータ32が衝撃低減部(脆弱部20参照)よりもシート後方位置の変形しない位置に取付けられているので、側突時においてサイドエアバッグ装置30のバッグ部31の膨張展開が安定して行なわれる。
【0062】
また、剛性部材であるインフレータ32が、衝撃により変形する衝撃低減部(脆弱部20参照)よりも後方に位置するので、インフレータ32により乗員に過度の荷重を与えるものではない。
【0063】
さらに、上記衝撃低減部(脆弱部20参照)がシートバック8前側表面における乗員の着座面Gよりも後方に設けられたものである(図9参照)。
この構成によれば、衝撃低減部(脆弱部20)が上記着座面Gよりも後方に設けられたので、車両側方から衝撃を受けた時、変形したサイドフレーム17により乗員が衝撃を受ける量の低減を図ることができる。
【0064】
図9〜図11で示したこの実施例4においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図9〜図11において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略するが、図10の構成に代えて、図12に示す構成を採用してもよい。
すなわち、図10においては、インフレータ32をサイドフレーム17のサイド部17aにおいて乗員の胸部に対応する部分に設けたが、図12に示す実施例においては、インフレータ32をサイドフレーム17のサイド部17aにおいて乗員の腰部に対応する部分で、かつ該サイド部17aの前後方向の前方部に取付け、さらに該サイド部17aのインフレータ32の後方位置には、該インフレータ32と前後方向にオフセットさせてランバサポートレバー33を取付けたものである。
【0065】
また、図12に示すように、脆弱部20と、他の脆弱部21とで前後方向に区画されたサイドフレーム17のサイド部17aは、各脆弱部20,21よりも前側部分が側突時に分離される分離領域に設定され、各脆弱部20,21よりも後側および下側の部分が分離されない非分離領域に設定されており、上述のインフレータ32およびランバサポート33は非分離領域(変形しない領域)に設定されたものである。さらに、インフレータ32は他の脆弱部21下方において乗員の腰部に対応するように取付けられている。
【0066】
このように、インフレータ32を乗員の腰部対応位置に取付けると、側突時にインフレータ32により乗員の胸部に傷害を与えることがなくなり、かつ、インフレータ32の前方配置を確保しつつ、インフレータ32と、ランバサポートレバー33とのレイアウトの両立を図ることができる。
このように構成しても、その他の構成、作用、効果については、図9〜図11で示した実施例とほぼ同様であるから、図12において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例5】
【0067】
図13、図14、車両のシート構造のさらに他の実施例を示し、図13は平面図、図14はエアバッグ展開時の説明図である。
図13に示すように、この実施例5では、サイドフレーム17のサイド部17aにおける車幅方向内側にサイドエアバッグ装置30を設けている。
【0068】
このサイドエアバッグ装置30は、所定条件成立時(例えば、車両側方から入力される横加速度、いわゆる横Gが所定値を超えた時)に乗員の側方にて膨張展開するバッグ部31と、このバック部31にガスを供給するためのインフレータ32とを備えている。
【0069】
上述のサイドエアバッグ装置30はサイドフレーム17に取付けられており、バッグ部31はサイド部17aの車幅方向内側からサイドサポート部10にわたって内蔵されている。また、バッグ部31は該サイドサポート部10の前部から前方に膨張して、シート6に着座した乗員の側方に展開(図14参照)するので、対応部位のパッド部材12には切れ目12aが形成されている。
なお、図13において、バッグ部31の折畳み構造は図示の便宜上省略しており、このバッグ部31を概略的に図示している。
図13において、Gはシートバック8前側表面における乗員の着座面であって、衝撃低減部としての上述の脆弱部20は、この着座面Gよりも後方に設けられている。
【0070】
しかも、上述のインフレータ32は、この衝撃低減部としての脆弱部20よりもさらにシート後方位置に取付けられている。つまり、該インフレータ32は側突時に変形しない部位に取付けられたものである。
ここで、上述のインフレータ32の上下方向の取付け位置は、図10で示した位置と同等の高さ位置であるが、図10の位置に代えて、図12で示した高さ位置に設定してもよい。
【0071】
このように構成した車両のシート構造において、車両の側面衝突時にシート6に対して車両側方からの衝撃が入力すると、インフレータ32の作動によりバッグ部31内にガスが供給され、該バッグ部31はサイドサポート部10の切れ目12aから前方に膨張して、図14に示すように、シート6に着座した乗員の側方に展開する。
上述のバッグ部31の展開圧力により、サイドフレーム17のサイド部17aは衝撃低減部としての脆弱部20を起点として車幅方向の外側に変形し、このサイド部17aの変形により、衝撃荷重を低減するので、乗員の胸部へ入力される荷重軽減を図ることができる。
【0072】
このように、図13、図14で示した実施例(請求項1〜8に相当)においては、上記サイドフレーム17に取付けられて所定条件成立時に乗員の側方にて膨張展開するバッグ部31を備えたサイドエアバッグ装置30が設けられ、上記バック部31にガスを供給するためのインフレータ32が、上記衝撃低減部(脆弱部20参照)よりもシート後方位置に取付けられたものである(図13参照)。
この構成によれば、上記インフレータ32が衝撃低減部(脆弱部20参照)よりもシート後方位置に取付けられているので、側突時においてサイドエアバッグ装置30のバッグ部31の膨張展開が安定して行なわれる。
【0073】
また、剛性部材であるインフレータ32が、衝撃により変形する衝撃低減部(脆弱部20参照)よりも後方に位置するので、インフレータ32により乗員に傷害を与えるものではない。
さらに、上記衝撃低減部(脆弱部20参照)がシートバック8前側表面における乗員の着座面Gよりも後方に設けられたものである(図13参照)。
【0074】
この構成によれば、衝撃低減部(脆弱部20)が上記着座面Gよりも後方に設けられたので、車両側方から衝撃を受けた時、変形したサイドフレーム17により乗員が衝撃を受ける量の低減を図ることができる。
図13、図14で示したこの実施例5においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例4とほぼ同様であるから、図13、図14において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例6】
【0075】
図15はサイドフレーム17の他の実施例を示し、図3、図7、図10、図12においては衝撃低減部として薄肉部などの脆弱部20を示し、図8においは脆弱部として複数の長孔22〜25を示したが、図15に示すこの実施例ではサイドフレーム17の剛性部分を非剛性構造と成したものである。
すなわち、図15に仮想線で示すようにサイド部17aよりも車幅方向外側へ膨出する高剛性のフロントビード部17cを廃止し、このフロントビード部17cに代えて、サイド部17aよりも車幅方向外側に膨出しない低剛性のアール部(半円部)17gを設けることで、このアール部17gを衝撃低減部と成したものである。
【0076】
図15に示すように、剛性構造を廃止して成るサイドフレーム17を、例えば、図2に示すシートバック8に組込んで車両のシート構造を構成すると、車両の側突時に車両側部からの衝撃荷重を、低剛性のアール部17gが変形して吸収するので、乗員の胸部へ入力される荷重を低減することができる。
なお、上述のアール部17gを形成する上下方向の範囲は、シートに着座した乗員の胸部に対応する範囲のみでよいが、サイドフレーム17の加工性を考慮して、該サイドフレーム17の略全高にわたって形成してもよい。
【0077】
図15に示す構造に代えて、図16に示す構造のサイドフレーム17を採用してもよい。この図16に示す実施例においても、サイドフレーム17の剛性部分を非剛性構造と成したものである。
つまり、図16に仮想線で示すようにサイド部17aよりも車幅方向外側へ膨出する高剛性のフロントビード部17cを廃止し、このフロントビード部17cに代えて、サイド部17aの延長線上に位置する低剛性の略直線部17hを設けることで、この略直線部17hを衝撃低減部と成したものである。
【0078】
図16に示すように、剛性構造を廃止して成るサイドフレーム17を、例えば、図2に示すシートバック8に組込んで車両のシート構造を構成すると、車両の側突時に車両側部からの衝撃荷重を、低剛性の略直線部17hが変形して吸収するので、乗員の胸部へ入力される荷重を低減することができる。
なお、上述の略直線部17hを形成する上下方向の範囲は、図15の実施例と同様に、シートに着座した乗員の胸部に対応する範囲のみでよいが、サイドフレーム17の加工性を考慮して、該サイドフレーム17の略全高にわたって形成してもよい。
【0079】
ここで、図15、図16で示す何れの実施例においても、サイドフレーム17のリヤビード部17dおよび膨出部17eはそのまま存在しており、これにより通常時(非衝突時)におけるサイドフレーム17の必要最低限の剛性は確保するように形成している。
なお、図15、図16において、図4と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例7】
【0080】
図17は車両のシート構造のさらに他の実施例を示す部分拡大平面図である。
この実施例においては、シートバック8はシート6に着座した乗員を車両側方から支持するサイドサポート部10と、サイド部17aおよびリヤ部17bをもった断面L字状のサイドフレーム17と、を備えており、該サイドフレーム17はシートバックフレーム15の側部において上下方向に延びるように配設されている。
【0081】
図17において、Gはシートバック8前側表面における乗員の着座面であって、同図に示す乗員の胸部相当位置でのシート水平断面視(平面視)において、上記着座面Gよりも前方のサイドサポート部10内部には、上述のサイドフレーム17が存在せず、このサイドフレーム17は上記着座面Gよりも車両後方に位置するように設けられている。
【0082】
また、前述のパッド部材12とは別体の衝撃低減部としての硬質パッド部材40を設け、この硬質パッド部材40を上述のサイドサポート部10の内部において、サイドフレーム17の車幅方向内側に沿設して設けている。
上述の硬質パッド部材40としては、硬質ウレタン部材を用いることができ、この硬質パッド部材40の前部40aは上記着座面Gよりも前方に位置しており、シート6に着座した乗員の車両側方からの支持性能向上を図るように構成している。
【0083】
このように構成した車両のシート構造において、車両の側突時にシート6の対して車両側方からの衝撃が入力され、サイドフレーム17が車幅方向内方に変位しても、このサイドフレーム17は着座面Gよりも前方には存在していないので、特に問題はない。仮に、上記サイドフレーム17が側突時において車幅方向内方へ変位しても、これを硬質パッド部材40で受け止めることができるので、シート6に着座した乗員のさらなる安全性を確保することができる。
【0084】
このように、図17に示す実施例7の車両のシート構造(請求項9に相当)は、車両用シート6のシートクッション7の後部に連結され、シート6に着座した乗員の背中を後方から支持するシートバック8内部に設けられたシートバックフレーム15と、上記シートバックフレーム15の側部において上下方向に延びるサイドフレーム17と、上記シートバック8の形状を形成すると共に、上記サイドフレーム17を覆うパッド部材12と、を備えた車両のシート構造であって、上記シートバック8はシート6に着座した乗員を車両側方から支持するサイドサポート部10を有し、乗員の胸部相当位置でのシート6の水平断面視において、シートバック8前側表面における乗員の着座面Gより前方のサイドサポート部10内には上記サイドフレーム17が存在せず、該サイドフレーム17は上記着座面Gより後方に位置し、上記パッド部材12とは別体の衝撃低減部としての硬質パッド部材40が、上記サイドサポート部10内において上記サイドフレーム17の車幅方向内側に沿設して設けられたものである(図17および前図参照)。
この構成によれば、通常時においては、上記シート水平断面視(図17参照)において、シートバック8前側表面における乗員の着座面Gよりも前方のサイドサポート部10内に上記サイドフレーム17が存在しないので、該サイドフレーム17の上部を細く形成することができ、これにより側面視においてサイドフレーム17が乗員へ当接する部分が少なくなる。
【0085】
また通常時においては、サイドフレーム17の車幅方向内側に沿設された硬質パッド部材40(特に、その前部40a)にて、乗員を側方から支持することができる。
さらに、側突時においては、上記シート水平断面視(図17参照)において、シートバック8前側表面における乗員の着座面Gよりも前方のサイドサポート部10内に上記サイドフレーム17が存在しないので、特に問題はないが、側突時に仮にサイドフレーム17が車幅方向内方へ変位しても、これを硬質パッド部材40が受け止めて、それ以上の車幅方向内側への侵入を阻止するので、乗員のさらなる安全性を確保することができる。
【0086】
この図17で示した実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図17において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
図17で示した構成に代えて、図18の構造を採用してもよい。
【0087】
図17で示した構造は、硬質パッド部材40がサイドフレーム17の車幅方向内側に沿って設けられるように、該硬質パッド部材40を、シートバック8の形状を形成するパッド部材12に埋設したが、図18に示すこの実施例では、該硬質パッド部材40を上記パッド部材12に埋設することなく、この硬質パッド部材40をサイドフレーム17に取付け固定したものである。
【0088】
すなわち、図18に示すように、硬質パッド部材40の後端部には複数のボルト40b(但し、図18では1つのみを示す)を硬質ウレタン等により一体成形し、該ボルト40bにナット41を締付けることで、硬質パッド部材40をサイドフレーム17におけるリヤ部17bの前面に着脱可能に取付け、該硬質パッド部材40をサイドフレーム17のサイド部17aの車幅方向内側に沿設したものである。
このように構成しても、図17で示した実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図18において、前図と同一の部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0089】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の衝撃低減部は、実施例の脆弱部20、他の脆弱部21、長孔22〜25、アール部17g、略直線部17hに対応するも、
この発明は、上記実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記構成の車両のシート構造は、シートバックの車幅方向外方の片側にのみ適用してもよく、または、シートバックの左右両側に左右一対となるように適用してもよい。
【符号の説明】
【0090】
6…シート
7…シートクッション
8…シートバック
10…サイドサポート部
12…パッド部材
17…サイドフレーム
17g…アール部(衝撃低減部)
17h…略直線部(衝撃低減部)
20…脆弱部(衝撃低減部)
20b…薄肉部(脆弱部)
21…他の脆弱部(衝撃低減部)
22〜25…長孔(衝撃低減部)
30…サイドエアバッグ装置
31…バッグ部
32…インフレータ
40…硬質パッド部材
G…着座面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートクッションの後部に連結され、シートに着座した乗員の背中を後方から支持するシートバック内部に設けられたシートバックフレームと、
上記シートバックフレームの側部において上下方向に延びるサイドフレームと、
上記シートバックの形状を形成すると共に、上記サイドフレームを覆うパッド部材と、を備えた
車両のシート構造であって、
上記サイドフレームには車両側方からの衝撃を低減する衝撃低減部が設けられたことを特徴とする
車両のシート構造。
【請求項2】
上記衝撃低減部は、車両側方からの衝撃により上記サイドフレームを変形させることで衝撃を低減する
請求項1記載の車両のシート構造。
【請求項3】
上記衝撃低減部は、上記サイドフレームに上下方向に延設形成された脆弱部で構成され、
車両側方からの衝撃により上記サイドフレームが該脆弱部を起点として変形可能に構成された
請求項2記載の車両のシート構造。
【請求項4】
上記脆弱部は上記サイドフレームに設けられた薄肉部である
請求項3記載の車両のシート構造。
【請求項5】
上記サイドフレームに上下方向に延設された上記脆弱部に連続して、該サイドフレームの車両前端に向けて他の脆弱部が設けられた
請求項3または4記載の車両のシート構造。
【請求項6】
上記衝撃低減部がシートに着座した乗員の胸部相当位置に設けられた
請求項2〜5の何れか1に記載の車両のシート構造。
【請求項7】
上記サイドフレームに取付けられて所定条件成立時に乗員の側方にて膨張展開するバッグ部を備えたサイドエアバッグ装置が設けられ、
上記バック部にガスを供給するためのインフレータが、上記衝撃低減部よりもシート後方位置に取付けられた
請求項2〜6の何れか1に記載の車両のシート構造。
【請求項8】
上記衝撃低減部がシートバック前側表面における乗員の着座面よりも後方に設けられた
請求項2〜7の何れか1に記載の車両のシート構造。
【請求項9】
車両用シートのシートクッションの後部に連結され、シートに着座した乗員の背中を後方から支持するシートバック内部に設けられたシートバックフレームと、
上記シートバックフレームの側部において上下方向に延びるサイドフレームと、
上記シートバックの形状を形成すると共に、上記サイドフレームを覆うパッド部材と、を備えた
車両のシート構造であって、
上記シートバックはシートに着座した乗員を車両側方から支持するサイドサポート部を有し、
乗員の胸部相当位置でのシート断面視において、シートバック前側表面における乗員の着座面より前方のサイドサポート部内には上記サイドフレームが存在せず、
該サイドフレームは上記着座面より後方に位置し、
上記パッド部材とは別体の衝撃低減部としての硬質パッド部材が、上記サイドサポート部内において上記サイドフレームの車幅方向内側に沿設して設けられた
車両のシート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−56979(P2011−56979A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205749(P2009−205749)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】