説明

車両のドア構造

【課題】ガーニッシュが屈曲形状若しくはL字形状を有する場合に、延長部浮き上がりを見栄えよく防止することを可能にする。
【解決手段】車体11に開閉自在に取付けたドア本体21と、このドア本体21の設けられるドアサッシュ22と、このドアサッシュ22に設けられるガーニッシュ28とを備えた車両のドア構造において、ドアサッシュ22に、ドア本体21の縦方向に延ばされた縦サッシュ部35と、この縦サッシュ部35に対して屈曲され、縦サッシュ部35の上端部に連続して形成される上側サッシュ部36とを備え、ガーニッシュ28に、縦サッシュ部35を覆う基部41と、この基部41に対して屈曲されるとともに基部41の上端部に連続して形成され、上側サッシュ部36を覆う延長部42とを備え、基部41が縦サッシュ部35に固定されるとともに、延長部42に上側サッシュ部36に係合する係合部46が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアサッシュにシール部材を介してドアガラスが取付けられるとともに、ドアサッシュにガーニッシュが被せられる車両のドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドア構造として、ドアサッシュに車室外方からガーニッシュが被せられたものが知られている。
この種の車両のドア構造は、ドアサッシュに車室外方からガーニッシュを被せることで、車両の外観の向上を図るものであった。
【0003】
このような車両のドア構造に類似した技術として、ピラーに車室内側からガーニッシュを被せるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−105007号公報
【0004】
特許文献1の技術は、ルーフライニング(成形天井)の側部に且つ水平方向に向けてフランジ(水平部)が延出され、このフランジに車体側のピラー(ピラーインナパネル)に係止する係止片が設けられ、係止片にピラーを覆うピラーガーニッシュの上端部を差込む係止孔が設けられ、ピラーガーニッシュの上端部を係止孔に差込むとともに、ピラーガーニッシュの本体部をピラーに固定したものである。
【0005】
上記ピラーガーニッシュは、車体側のピラーを車室側から覆う部材なので、ほぼ長手に形成された矩形であると考えられるが、例えば、長手矩形に形成されたガーニッシュ端部から前後方向に延長部分(延長部)が延ばされ、ガーニッシュが略L字に形成される場合には、延出部分の浮き上がりを防止し、見栄えよく取付けできることが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ドアサッシュにシール部材を介してドアガラスが取付けられるとともに、ドアサッシュに車体外方からガーニッシュが被せられる車両のドア構造において、ガーニッシュが屈曲形状若しくはL字形状を有する場合に、延長部浮き上がりを防止し、見栄えよく取付けることができる車両のドア構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体に開閉自在に取付けたドア本体と、このドア本体の設けられるドアサッシュと、このドアサッシュに設けられるガーニッシュとを備えた車両のドア構造において、ドアサッシュに、ドア本体の縦方向に延ばされた縦サッシュ部と、この縦サッシュ部に対して屈曲され、縦サッシュ部の上端部に連続して形成される上側サッシュ部とを備え、ガーニッシュに、縦サッシュ部を覆う基部と、この基部に対して屈曲されるとともに基部の上端部に連続して形成され、上側サッシュ部を覆う延長部とを備え、基部が縦サッシュ部に固定されるとともに、延長部に上側サッシュ部に係合する係合部が設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、係合部が、基部と延長部とのコーナ寄りに設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、固定式のドアガラスが設けられるとともにドアガラスをシールするシール部材が設けられ、シール部材に、係合部が入り込む逃げ形状部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、逃げ形状部が、縦サッシュ部と上側サッシュ部との連続部の全体に渡って略三角形状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、シール部材が、車体高さ方向に関して係合部の上方で上側サッシュ部に当接することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、係合部に、車幅方向に関して上側サッシュ部側に突出する突出部と、突出部から車体高さ方向に関して上側サッシュ部に屈曲して延長して形成される爪部とを有し、突出部が、上側サッシュ部から離間させて形成されるとともに、爪部が、上側サッシュ部に車外側から当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、車体に開閉自在に取付けたドア本体と、このドア本体の設けられるドアサッシュと、このドアサッシュに設けられるガーニッシュとから車両のドア構造が構成される。
ドアサッシュに、ドア本体の縦方向に延ばされた縦サッシュ部と、この縦サッシュ部に対して屈曲され、縦サッシュ部の上端部に連続して形成される上側サッシュ部とを備える。ガーニッシュに、縦サッシュ部を覆う基部と、この基部に対して屈曲されるとともに基部の上端部に連続して形成され、上側サッシュ部を覆う延長部とを備える。
例えば、デザイン的にガーニッシュが屈曲形状を有する場合であっても、基部が縦サッシュ部に固定されるとともに、延長部に上側サッシュ部に係合する係合部が設けられたので、取付強度を高めることができるとともに、延長部の浮き上がりを防止し、見栄えよく取付けできることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、係合部が、基部と延長部とのコーナ寄りに設けられたので、さらに、ガーニッシュの取付強度を増すことができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、シール部材に、係合部が入り込む逃げ形状部が形成されているので、係合部とシール部材との干渉を防止することができる。これにより、ドアサッシュとガーニッシュとの安定した係合状態を確保することができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、逃げ形状部が、縦サッシュ部と上側サッシュ部との連続部の全体に渡って略三角形状に形成されているので、例えば、組付けにばらつきが生じた場合にも、確実に係合部とシール部材との干渉を防止することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、シール部材が、車体高さ方向に関して係合部の上方で上側サッシュ部に当接するので、ガーニッシュの延長部に係合部を設けた場合であっても、ドアサッシュとのシール性を確保することができる。
【0018】
請求項6に係る発明では、係合部に、車幅方向に関して上側サッシュ部側に突出する突出部と、突出部から車体高さ方向に関して上側サッシュ部に屈曲して延長して形成される爪部とを有し、突出部が、上側サッシュ部から離間させて形成されるとともに、爪部が、上側サッシュ部に車外側から当接するので、ガーニッシュの延長部の浮きを防止することができるとともに、係合部での組付けのばらつきを吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車両のドア構造を採用した車両の側面図である。
車両10は、車体11に開閉自在に取付けられ車室12内に乗降のためのドア(後部ドア)15が設けられる。
【0020】
ドア(後ドア)15は、車体11にヒンジ(不図示)を介して開閉自在に取付けられるドア本体21と、このドア本体21の上部に設けられるベルトラインモール29と、ドア本体21の上部に略門型に設けられるドアサッシュ22と、このドアサッシュ22の上部からドア本体21に渡され、ドアサッシュ22及びドア本体21で囲まれた空間を前部空間23及び後部空間24に仕切るクオータサッシュ25と、ドア本体21に昇降自在に取付けられ、前部空間23を覆う昇降式の窓ガラス26と、ドアサッシュ22、クオータサッシュ25及びドア本体21で囲まれた後部空間24にシール部材31(図4参照)を介して設けられるクオータガラス(固定式のドアガラス)27と、このクオータガラス27の後部及びドアサッシュ22の後部を車外から覆うガーニッシュ28とからなる。
【0021】
図2は本発明に係る車両のドア構造の側面図であり、図3は図2に示された車両のドア構造の分解図であり、図4は図2の4−4線断面図であり、図5は図2の5−5線断面図である。
【0022】
車両のドア構造は、クオータガラス(固定式のドアガラス)27及びガーニッシュ28廻りの構造であり、詳細には、車体11に開閉自在に取付けたドア本体21と、このドア本体21の設けられるドアサッシュ22と、前部空間23及び後部空間24に仕切るクオータサッシュ25と、後部空間24に設けられる略矩形のシール部材(枠体)31と、このシール部材31に嵌め込まれるクオータガラス(固定式のドアガラス)27と、これらのドアサッシュ22の後縦サッシュ部(縦サッシュ部)35を覆うガーニッシュ28とから構成される。
【0023】
ドアサッシュ22は、図4及び図5に示されたように、アウタサッシュ32とインナサッシュ33とから構成され、ドア本体21の上部前方から縦方向に延ばされた前縦サッシュ部(図1参照)34と、ドア本体21の上部後方から縦方向に延ばされた後縦サッシュ部(縦サッシュ部)35と、これらの前・後縦サッシュ部34,35を繋ぐ上側サッシュ部36とを備える。
【0024】
さらに、ドアサッシュ22は、車室12内に雨水の浸入を防止するウェザーストリップ38,39が設けられる。
上側サッシュ部36は、図3及び図4に示されたように、前・後縦サッシュ部34,35に対して屈曲され、前・後縦サッシュ部34,35の上端部に連続して形成される。
【0025】
図6は図2に示された車両のドア構造のガーニッシュの側面図である。
ガーニッシュ28は、後縦サッシュ部(縦サッシュ部)35を覆う基部41と、この基部41に対して屈曲されるとともに基部41の上端部に連続して形成され、上側サッシュ部36を覆う延長部42と、基部41の裏面に設けられ、後縦サッシュ部35の孔55に嵌合する嵌合部44と、基部41の裏面に設けられ、後縦サッシュ部35に取付けられる取付部45と、延長部42に設けられ、上側サッシュ部36に係合する係合部46とからなる。
【0026】
すなわち、ガーニッシュ28は、基部41が後縦サッシュ部35に固定されるとともに、延長部42が上側サッシュ部36に係合する。また、ガーニッシュ28には、適宜、振動吸収のためにパッキン48,49が設けられる。
【0027】
詳細には、係合部46は、基部41と延長部42とのコーナ51寄りに設けられ、車幅方向に関して上側サッシュ部36側に突出する突出部52と、突出部52から車体11高さ方向に関して上側サッシュ部36に屈曲して延長して形成される爪部53とを有する。
突出部52は、図4に示されたように、上側サッシュ部36から離間させて形成される。また、爪部53は、車体11の上方に指向し、上側サッシュ部36に車外側から当接する。
【0028】
係合部46は、基部41と延長部42とのコーナ51寄りに設けられたので、さらに、ガーニッシュ28の取付強度を増すことができる。
【0029】
係合部46に、車幅方向に関して上側サッシュ部36側に突出する突出部52と、突出部52から車体11高さ方向に関して上側サッシュ部36に屈曲して延長して形成される爪部53とを有し、突出部52が、上側サッシュ部36から離間させて形成されるとともに、爪部53が、上側サッシュ部36に車外側から当接するので、ガーニッシュ28の延長部42の浮きを防止することができるとともに、係合部46での組付けのばらつきを吸収することができる。
【0030】
図7は図2に示された車両のドア構造のシール部材の側面図であり、図8は図2に示された車両のドア構造のシール部材の斜視図である。
シール部材31は、図7に示されたように、後部空間24が形成される後縦サッシュ部35、上側サッシュ部36及びドア本体21に設けられるゴム等の弾性体で形成された略矩形の枠体であり、前縦サッシュ部34に嵌め込まれる前枠61と、後縦サッシュ部35に嵌め込まれる後枠62と、これらの前・後枠61,62の上端に形成され、上側サッシュ部36に嵌め込まれる上枠63と、前・後枠61,62の下端に形成される下枠64と、これらの前枠61、後枠62、上枠63及び下枠64の内方に形成され、図4及び図5に示されたように、クオータガラス(固定式のドアガラス)27が嵌め込まれる溝部65と、後枠62と上枠63の角部66に形成され、図8に示されるように、ガーニッシュ28の係合部46が入り込む逃げ形状部67とからなる。
【0031】
なお、シール部材31は、図4に示されたように、車体11高さ方向に関して係合部46の上方で上側サッシュ部36に当接させる当接部68を有するものともいえる。また、逃げ形状部67は、図3及び図8に示されたように、後縦サッシュ部(縦サッシュ部)35と上側サッシュ部36との連続部37の全体に渡って略三角形状に形成されたものともいえる。
【0032】
シール部材31に、係合部46が入り込む逃げ形状部67が形成されているので、係合部46とシール部材31との干渉を防止することができる。これにより、ドアサッシュ22とガーニッシュ28との安定した係合状態を確保することができる。
【0033】
逃げ形状部67は、後縦サッシュ部(縦サッシュ部)35と上側サッシュ部36との連続部37の全体に渡って略三角形状に形成されているので、例えば、組付けにばらつきが生じた場合にも、確実に係合部46とシール部材31との干渉を防止することができる。
【0034】
車両のドア構造では、シール部材31の当接部68が、車体11高さ方向に関して係合部46の上方で上側サッシュ部36に当接するので、ガーニッシュ28の延長部42に係合部46を設けた場合であっても、ドアサッシュ22とのシール性を確保することができる。
【0035】
すなわち、図2〜図4に示されたように、車体11に開閉自在に取付けたドア本体21と、このドア本体21の設けられるドアサッシュ22と、このドアサッシュ22に設けられるガーニッシュ28とから車両のドア構造が構成され、ドアサッシュ22に、ドア本体21の縦方向に延ばされた縦サッシュ部と、この縦サッシュ部35に対して屈曲され、縦サッシュ部35の上端部に連続して形成される上側サッシュ部36とを備える。ガーニッシュ28に、縦サッシュ部35を覆う基部41と、この基部41に対して屈曲されるとともに基部41の上端部に連続して形成され、上側サッシュ部36を覆う延長部42とを備える。
【0036】
例えば、デザイン的にガーニッシュ28が屈曲形状を有する場合であっても、基部41が縦サッシュ部35に固定されるとともに、延長部42に上側サッシュ部36に係合する係合部46が設けられたので、取付強度を高めることができるとともに、延長部42の浮き上がりを防止し、見栄えよく取付けできることができる。
【0037】
尚、本発明に係る車両のドア構造は、図6に示すように、ガーニッシュ28の係合部46は、延長部42に、且つ基部41と延長部42とのコーナ寄りに設けられたが、これに限るものではなく、延長部42の先端に設けることを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る車両のドア構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る車両のドア構造を採用した車両の側面図である。
【図2】本発明に係る車両のドア構造の側面図である。
【図3】図2に示された車両のドア構造の分解図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】図2に示された車両のドア構造のガーニッシュの側面図である。
【図7】図2に示された車両のドア構造のシール部材の側面図である。
【図8】図2に示された車両のドア構造のシール部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
11…車体、21…ドア本体、22…ドアサッシュ、27…固定式のドアガラス(クオータガラス)、28…ガーニッシュ、31…シール部材、35…縦サッシュ(後縦サッシュ)、36…上側サッシュ、37…連続部、41…基部、42…延長部、46…係合部、51…コーナ、52…突出部、53…爪部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に開閉自在に取付けたドア本体と、このドア本体の設けられるドアサッシュと、このドアサッシュに設けられるガーニッシュとを備えた車両のドア構造において、
前記ドアサッシュは、前記ドア本体の縦方向に延ばされた縦サッシュ部と、この縦サッシュ部に対して屈曲され、前記縦サッシュ部の上端部に連続して形成される上側サッシュ部とを備え、
前記ガーニッシュは、前記縦サッシュ部を覆う基部と、この基部に対して屈曲されるとともに前記基部の上端部に連続して形成され、前記上側サッシュ部を覆う延長部とを備え、前記基部が縦サッシュ部に固定されるとともに、前記延長部に前記上側サッシュ部に係合する係合部が設けられたことを特徴とする車両のドア構造。
【請求項2】
前記係合部は、前記基部と前記延長部とのコーナ寄りに設けられたことを特徴とする請求項1記載の車両のドア構造。
【請求項3】
前記ドアサッシュは、固定式のドアガラスが設けられるとともにドアガラスをシールするシール部材が設けられ、
前記シール部材は、前記係合部が入り込む逃げ形状部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両のドア構造。
【請求項4】
前記逃げ形状部は、前記縦サッシュ部と上側サッシュ部との連続部の全体に渡って略三角形状に形成されていることを特徴とする請求項3記載の車両のドア構造。
【請求項5】
前記シール部材は、車体高さ方向に関して前記係合部の上方で前記上側サッシュ部に当接することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の車両のドア構造。
【請求項6】
前記係合部は、車幅方向に関して前記上側サッシュ部側に突出する突出部と、前記突出部から車体高さ方向に関して前記上側サッシュ部に屈曲して延長して形成される爪部とを有し、
前記突出部は、前記上側サッシュ部から離間させて形成されるとともに、前記爪部は、前記上側サッシュ部に車外側から当接することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の車両のドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−70054(P2010−70054A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239755(P2008−239755)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】