説明

車両のブレーキ装置

【課題】 緊急ブレーキ操作時にブレーキ応答遅れがなく、車両の停止距離を短縮する。
【解決手段】 ブレーキチャンバ11を主エアタンク13に駆動エア通路12を介して連通接続する。この駆動エア回路に設けられたリレーバルブ16が主エアタンクに信号エア通路14を介して連通接続された信号圧室を有し、このリレーバルブが信号圧室に給排される圧縮エアの圧力に応じた圧力の圧縮エアをブレーキチャンバに給排する。またブレーキペダル17の踏込み量に応じた圧力の圧縮エアを信号圧室に給排するブレーキバルブ18を信号エア通路に設け、一端がブレーキチャンバ近傍の信号エア通路に連通接続された長さの短い補助エア通路19の他端に補助エアタンク21を連通接続する。更に補助エア通路の信号エア通路への連通接続部にダブルチェック弁31を設け、コントローラ26が踏込み量センサ24の検出出力に基づいて補助エア通路に設けた電磁弁22を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス、トラック等の車両のブレーキチャンバに、ブレーキペダルの踏込み量に応じて圧縮エアを給排することにより、車輪を制動し又は車輪の制動を解除するブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、車輪を制動し又は前記車輪の制動を解除するブレーキアクチュエータが駆動エア通路を介してエアタンクに連通接続され、エアタンクに第1信号エア通路を介して連通接続された制御室を有しかつこの制御室に給排される圧縮エアの圧力に応じた圧力の圧縮エアをブレーキアクチュエータに給排するリレーバルブが駆動エア通路に設けられ、更にブレーキペダルが接続されかつこのブレーキペダルの踏込み量に応じた圧力の圧縮エアを制御室に給排するブレーキバルブが第1信号エア通路に設けられた電気制御エアブレーキシステム(例えば、特許文献1参照。)が開示されている。この電気制御エアブレーキシステムでは、ブレーキバルブとリレーバルブの制御室とを連通接続する第1信号エア通路に電磁弁からなる常開の制御信号圧漏出防止弁が設けられ、この制御信号圧漏出防止弁と並列に、制御信号圧漏出防止弁の上流側及び下流側の圧力差が所定圧以上のとき上流側から下流側への圧縮エアの流れのみを許容する一方向弁が設けられる。またリレーバルブの制御室とエアタンクとを接続する第2信号エア通路に電磁弁からなる常閉の制御信号圧供給弁が設けられ、一端が制御室に連通接続された第3信号エア通路の他端に制御室の制御信号圧を排出する電磁弁からなる常閉の制御信号圧排出弁が設けられる。ブレーキバルブと制御信号漏出防止弁との間の第1信号エア通路にこの第1信号エア通路の圧力を検出する第1圧力センサが設けられ、リレーバルブとブレーキアクチュエータとを連通接続する駆動エア回路にこの駆動エア回路の圧力を検出する第2圧力センサが設けられ、ブレーキペダルにこのブレーキペダルの踏込み時にオンする常開のペダルスイッチが設けられる。更に第1圧力センサ、第2圧力センサ及びペダルスイッチの各検出出力に基づいて電子制御装置が制御信号圧漏出防止弁、制御信号圧供給弁及び制御信号圧排出弁をそれぞれ制御するように構成される。
このように構成された電気制御エアブレーキシステムでは、ブレーキペダルの踏込み時に、電子制御装置が迅速に制御信号圧漏出弁を閉じるので、ブレーキバルブの出力側の制御信号圧が迅速に上昇する。この制御信号圧は第1圧力センサにより殆ど遅れることなく検出され、この制御信号圧の電気信号と第2圧力センサにより検出されたブレーキアクチュエータのブレーキ圧の電気信号とにより、電子制御装置が制御信号圧供給弁及び制御信号圧排出弁を開閉制御する。この結果、殆ど応答遅れが無くブレーキを作動させることができ、良好な応答性が得られるようになっている。
【特許文献1】特開平11−43040号公報(請求項1、段落[0019])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の特許文献1に示された電気制御エアブレーキシステムでは、電子制御装置がペダルスイッチの検出出力に基づいて制御信号圧漏出弁を閉じることにより、ブレーキバルブの出力側の制御信号圧が上昇するけれども、ブレーキバルブから制御信号圧漏出弁までの第1信号エア通路が長いと、この第1信号エア通路の圧力が所定の圧力に達するまでに時間を要し、車両を緊急停止するためにブレーキペダルを強くかつ深く踏込む緊急ブレーキ操作時に、ブレーキの応答遅れが発生するおそれがあった。
また、上記従来の特許文献1に示された電気制御エアブレーキシステムでは、電子制御装置が第1及び第2圧力センサの各検出出力に基づいて制御信号圧供給弁及び制御信号圧排出弁を開閉制御するけれども、リレーバルブの制御室とエアタンクとを接続する第2信号エア通路が長いと、この第2信号エア通路の圧力が所定圧に達するまでに時間を要し、緊急ブレーキ操作時にブレーキの応答遅れが発生するおそれがあった。
更に、上記従来の特許文献1に示された電気制御エアブレーキシステムでは、ペダルスイッチに加えて第1及び第2圧力センサを必要とするため、制御回路が複雑になるとともに、既に製造されて実用に供されている車両に電気制御エアブレーキシステムを組込むことが難しい問題点もあった。
本発明の目的は、緊急ブレーキ操作時にブレーキの応答遅れを防止して、車両の停止距離を短縮できる、車両のブレーキ装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、比較的簡単な制御回路で構成でき、既に製造されて実用に供されている車両に組込むことができる、車両のブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、車輪を制動し又は車輪の制動を解除するブレーキチャンバ11が駆動エア通路12を介して主エアタンク13に連通接続され、主エアタンク13に信号エア通路14を介して連通接続された信号圧室を有しかつこの信号圧室に給排される圧縮エアの圧力に応じた圧力の圧縮エアをブレーキチャンバ11に給排するリレーバルブ16が駆動エア通路12に設けられ、ブレーキペダル17に接続されかつこのブレーキペダル17の踏込み量に応じた圧力の圧縮エアを信号圧室に給排するブレーキバルブ18が信号エア通路14に設けられた車両のブレーキ装置の改良である。
その特徴ある構成は、一端がブレーキバルブ18とリレーバルブ16の間の信号エア通路14に連通接続された長さの短い補助エア通路19と、補助エア通路19の他端に連通接続された補助エアタンク21と、補助エア通路19の信号エア通路14への連通接続部に設けられブレーキバルブ18からの圧縮エアと補助エアタンク21からの圧縮エアのうち圧力の高い圧縮エアをブレーキチャンバ11に供給するダブルチェック弁31と、補助エア通路19に設けられ補助エアタンク21及びダブルチェック弁31間を連通するか或いは補助エアタンク21及び駆動エア通路12間を遮断しかつダブルチェック弁31を大気に連通するように切換える電磁弁22と、ブレーキペダル17を準定常的に踏込んだとき最大圧力の圧縮エアを信号圧室に供給する踏込み量に達したことを検出する踏込み量センサ24と、踏込み量センサ24の検出出力に基づいて電磁弁22を制御するコントローラ26とを備えたところにある。
【0005】
この請求項1に記載された車両のブレーキ装置では、運転者が車両を緊急停止するためにブレーキペダル17を強くかつ深く踏込むと、ブレーキペダル17の踏込み量が最大圧力の圧縮エアを信号圧室に供給する踏込み量に達したことを踏込み量センサ24が検出する。このときコントローラ26は踏込み量センサ24の検出出力に基づき、電磁弁22を制御して補助エアタンク21及びダブルチェック弁31間を連通すると、ブレーキバルブ18からの圧縮エアより補助エアタンク21からの圧縮エアの方が圧力が高くなるので、ダブルチェック弁84はブレーキバルブ18とリレーバルブの信号圧室とを遮断し、補助エアタンク21とリレーバルブ16の信号圧室とを連通する。これにより補助エアタンク21内の圧縮エアがリレーバルブ16の信号圧室に瞬時に供給されるので、主エアタンク13内の圧縮エアが駆動エア通路12及びリレーバルブ16を通って速やかにブレーキチャンバ11に供給される。一方、運転者が車両を再発進させるためにブレーキペダル17の踏込みを解除すると、ブレーキペダル17の踏込み量が最大圧力の圧縮エアを信号圧室に供給する踏込み量未満になったことを踏込み量センサ24が検出する。このときコントローラ26は踏込み量センサ24の検出出力に基づき、電磁弁22を制御して補助エアタンク21及びダブルチェック弁31間を遮断し、かつダブルチェック弁31を大気に連通するので、リレーバルブ16の信号圧室内の圧縮エアが電磁弁22から大気に排出される。これによりブレーキチャンバ11内の圧縮エアがリレーバルブ16から大気に排出される。なお、『ブレーキペダル17を準定常的に踏込んだとき』の『準定常的に』とは、『徐々に』という意味であり、具体的には主エアタンク内や補助エアタンク内の圧縮エアの圧力の伝搬速度を無視できる程度にゆっくりという意味である。
【0006】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1に示すように、補助エアタンク21の容量が1〜2リットルであることを特徴とする。
この請求項3に記載された車両のブレーキ装置では、補助エアタンク21の容量を1〜2リットルと小さくしても、補助エアタンク21内の圧縮エアは容積の小さいリレーバルブ16の信号圧室に供給されるだけであるため、容量不足となることはない。
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1に示すように、主エアタンク13内の圧力と補助エアタンク21内の圧力を同一にするために主エアタンク13及び補助エアタンク21を連通接続する同圧エア通路27を更に備えたことを特徴とする。
この請求項4に記載された車両のブレーキ装置では、主エアタンク13及び補助エアタンク21を同圧エア通路27により連通接続したので、運転者によるブレーキペダル17の通常の操作時に主エアタンク13のみならず補助エアタンク21の圧縮エアをリレーバルブ16を通してブレーキチャンバ11に供給することができる。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように、本発明によれば、長さの短い補助エア通路の一端をブレーキバルブとリレーバルブの間の信号エア通路に連通接続し、補助エア通路の他端に補助エアタンクを連通接続し、この補助エア通路の信号エア通路への連通接続部にダブルチェック弁を設け、補助エア通路に電磁弁を設け、更に踏込み量センサの検出出力に基づいてコントローラが電磁弁を制御するので、ブレーキペダルの踏込み量が最大圧力の圧縮エアを信号圧室に供給する踏込み量に達したことを踏込み量センサが検出すると、コントローラは電磁弁を制御して補助エアタンク及びダブルチェック弁間を連通する。これによりブレーキバルブからの圧縮エアより補助エアタンクからの圧縮エアの方が圧力が高くなるので、ダブルチェック弁はブレーキバルブとリレーバルブの信号圧室とを遮断し、補助エアタンクとリレーバルブの信号圧室とを連通する。これにより補助エアタンク内の圧縮エアが、ブレーキバルブから排出されることなく、比較的短い補助エア通路を通ってリレーバルブの信号圧室に瞬時に供給されるので、主エアタンク内の圧縮エアが駆動エア通路及びリレーバルブを通って速やかにブレーキチャンバに供給される。この結果、緊急ブレーキ操作時におけるブレーキの応答遅れを防止できるので、車両の停止距離を短縮することができる。またペダルスイッチに加えて第1及び第2圧力センサを必要とするため、制御回路が複雑になるとともに既に製造されて実用に供されている車両に組込むことが難しい従来の電気制御エアブレーキシステムと比較して、本発明では、比較的簡単な制御回路で構成できるとともに、既に製造されて実用に供されている車両に組込むことができる。
【0008】
また補助エアタンクの容量を1〜2リットルと小さくしても、補助エアタンク内の圧縮エアは容積の小さいリレーバルブの信号圧室に供給されるだけであるため、容量不足となることはない。この結果、補助エアタンクを設置するためのスペースは僅かで済む。
更に主エアタンク内の圧力と補助エアタンク内の圧力を同一にするために主エアタンク及び補助エアタンクを同圧エア通路を介して連通接続すれば、運転者によるブレーキペダルの通常の操作時に主エアタンクのみならず補助エアタンクの圧縮エアをリレーバルブを通してブレーキチャンバに供給することができる。この結果、主エアタンクの容量を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、車両のブレーキ装置は、圧縮エアの給排により車輪を制動し又は車輪の制動を解除するブレーキチャンバ11と、このブレーキチャンバ11に駆動エア管路12を介して連通接続されかつ圧縮エアが貯留される主エアタンク13と、主エアタンク13に信号エア管路14を介して連通接続された信号圧室を有しかつ駆動エア管路12に設けられたリレーバルブ16と、ブレーキペダル17に機械的に接続されかつ信号エア管路14に設けられたブレーキバルブ18とを備える。ブレーキチャンバ11は、圧縮エアの給排と内蔵スプリング(図示せず)の弾性力によりチャンバ用プランジャ11aがチャンバ用ケース11bから出没するように構成される。このチャンバ用プランジャ11aの出没により、図示しないが、車輪のホイール内に設けられたブレーキシューがブレーキドラムに圧接され或いはブレーキドラムから離脱するように構成される。
【0010】
一方、リレーバルブ16は、主エアタンク13側の駆動エア管路12に接続された第1ポート16aと、ブレーキチャンバ11側の駆動エア管路12に接続された第2ポート16bと、信号圧室に連通し信号エア管路14が接続された信号ポート16cと、大気に開放された排気ポート16dとを有する。またブレーキバルブ18の上面には、ブレーキペダル17の基端が枢着され、ブレーキペダル17の踏込み量に応じた圧力の圧縮エアを信号圧室に給排するように構成される。更にリレーバルブ16は信号圧室に給排される圧縮エアの圧力に応じた圧力の圧縮エアをブレーキチャンバ11に給排する、即ちブレーキバルブ18からの信号圧に基づいてブレーキチャンバ11に主エアタンク13内の圧縮エアを給排するように構成される。具体的には、信号圧室のエア圧が徐々に増大すると、このエア圧に比例した圧力の圧縮エアが、主エアタンク13から第1ポート16a及び第2ポート16bを通ってブレーキチャンバ11に供給され、信号圧室のエア圧が徐々に減少すると、ブレーキチャンバ11のエア圧が信号圧室のエア圧に比例した圧力となるように、ブレーキチャンバ11の圧縮エアが第2ポート16b及び排気ポート16dを通って大気中に排出されるように構成される。
【0011】
一方、ブレーキバルブ18とリレーバルブ16の信号圧室との間の信号エア管路14であってリレーバルブ16の近傍には、長さの短い補助エア管路19の一端が連通接続され、この補助エア管路19の他端に補助エアタンク21が連通接続される。この補助エア通路19の信号エア通路14への連通接続部にはダブルチェック弁31が設けられ、補助エア通路19には電磁弁22が設けられる。ダブルチェック弁31は、チェック用ケース31aと、このケース31aに摺動可能に収容されたチェック用ピストン31bとを有する。ケース31aには、ブレーキバルブ18に連通接続されたチェック用第1ポート31cと、電磁弁22の電磁弁用第1ポート22aに連通接続されたチェック用第2ポート31dと、リレーバルブ16の信号圧室に連通接続されたチェック用第3ポート31eとが設けられる。このダブルチェック弁31はブレーキバルブ18からの圧縮エアと補助エアタンク21からの圧縮エアのうち圧力の高い圧縮エアを上記リレーバルブ16の信号圧室に供給するように構成される。即ち、ブレーキバルブ18からのエア圧が補助エアタンク21からのエア圧より高い場合には、チェック用ピストン31bがチェック用第2ポート31d側に移動し、チェック用第1ポート31cとチェック用第3ポート31eとが連通し、ブレーキバルブ18からのエア圧が補助エアタンク21からのエア圧より低い場合には、チェック用ピストン31bがチェック用第1ポート31c側に移動し、チェック用第2ポート31dとチェック用第3ポート31eとが連通するように構成される。
【0012】
上記電磁弁22は3ポート2位置切換えの電磁弁であり、補助エアタンク21に連通接続された電磁弁用第1ポート22aと、ダブルチェック弁31のチェック用第2ポート31dに連通接続された電磁弁用第2ポート22bと、大気に開放された電磁弁用排気ポート22cとを有する。この補助側電磁弁22を作動させると電磁弁用第1ポート22aと電磁弁用第2ポート22bが連通して、補助エアタンク21及びダブルチェック弁31間を連通するとともにダブルチェック弁31を大気から遮断し、補助側電磁弁22を不作動にすると電磁弁用第2ポート22bと電磁弁用排気ポート22cが連通して、補助エアタンク21及びダブルチェック弁31間を遮断するとともにダブルチェック弁31を大気に連通するように構成される。ここで補助エア管路19の長さは0.5〜2m、好ましくは0.5〜1mに設定され、ダブルチェック弁31からリレーバルブ16の信号圧室までの信号エア管路14の長さは0.5〜2m、好ましくは0.5〜1mに設定され、更にリレーバルブ16からブレーキチャンバ11までの駆動エア管路12の長さは1〜3m、好ましくは1〜2mに設定される。補助エア管路19の長さを0.5〜2mの範囲に限定したのは、0.5m未満では補助エアタンク21を信号エア管路14に接続できず、2mを越えると補助エアタンク21内の圧縮エアがリレーバルブ16の信号圧室に供給されるまでの時間が長くなるからである。またダブルチェック弁31からリレーバルブ16の信号圧室までの信号エア管路14の長さを0.5〜2mの範囲に限定したのは、0.5m未満では補助エア管路19を信号エア管路14に接続できず、2mを越えると補助エアタンク21内の圧縮エアがリレーバルブ16の信号圧室に供給されるまでの時間が長くなるからである。更に上記リレーバルブ16からブレーキチャンバ11までの駆動エア管路12の長さを1〜3mの範囲に限定したのは、1m未満では駆動エア管路12をブレーキチャンバ11に接続できず、3mを越えると主エアタンク13内の圧縮エアがブレーキチャンバ11に供給されるまでの時間が長くなるからである。
【0013】
一方、ブレーキペダル17を準定常的に踏込んだとき最大圧力(主エアタンク13内と同一圧力)の圧縮エアを信号圧室に供給する踏込み量に達したことを検出する踏込み量センサ24が設けられる。具体的には、ブレーキペダル17の踏込み量がブレーキペダル17のフルストロークの70%以上であることを検出する踏込み量センサ24が設けられる。ここでブレーキペダル17の踏込み量をブレーキペダル17のフルストロークの70%以上の範囲に限定したのは、ブレーキペダルを準定常的に踏込んでいったときに、最大圧力(主エアタンク13内と同一圧力)の圧縮エアをリレーバルブ16の信号圧室に供給する踏込み量がフルストロークの70%に達したときだからである。この踏込み量センサ24は、この実施の形態では、リミットスイッチであり、内蔵スプリング(図示せず)の弾性力によりセンサ用プランジャ24aがセンサ用ケース24bから出没するように構成される。踏込み量センサ24の検出出力はコントローラ26の制御入力に接続され、コントローラ26の制御出力は電磁弁22に接続される。また主エアタンク13内の圧力と補助エアタンク21内の圧力を同一にするために、主エアタンク13及び補助エアタンク21が同圧エア管路27により連通接続される。また補助エアタンク21の容量は1〜2リットル、好ましくは1.5〜2リットルに設定される。ここで、補助エアタンク21の容量を1〜2リットルの範囲に限定したのは、1リットル未満ではリレーバルブの信号圧室に十分な量の圧縮エアを供給できず、2リットルを越えると圧縮エアの貯留量が過剰となり必要以上に車両スペースを確保しなければならないからである。なお、図1中の符号29はアンチロックブレーキシステム(ABS)のモジュールである。
【0014】
このように構成された車両のブレーキ装置の動作を説明する。
運転者が車両を緊急停止するためにブレーキペダル17を強くかつ深く踏込むと、ブレーキペダル17の準定常的踏込み時に最大圧力の圧縮エアを信号圧室に供給する踏込み量に達したことを踏込み量センサ24が検出する、即ちブレーキペダル17の踏込み量がブレーキペダル17のフルストロークの70%以上であることを踏込み量センサ24が検出する。このときコントローラ26は踏込み量センサ24の検出出力に基づき、電磁弁22を制御して補助エアタンク21及びダブルチェック弁31間を連通し、かつダブルチェック弁31を大気から遮断する。これによりブレーキバルブ18からの圧縮エアより補助エアタンク21からの圧縮エアの方が圧力が高くなるので、ダブルチェック弁31のチェック用ピストン31bがチェック用第1ポート31c側に移動して、チェック用第2ポート31dとチェック用第3ポート31eとが連通する。この結果、ブレーキバルブ18とリレーバルブ16の信号圧室とが遮断され、補助エアタンク21とリレーバルブ16の信号圧室とが連通されるので、補助エアタンク21内の圧縮エアは、リレーバルブ16の排気ポート16dから排出されることなく、比較的短い補助エア管路19及び信号エア管路14を通ってリレーバルブ16の信号圧室に瞬時に供給される。従って、リレーバルブ16の第1及び第2ポート16a,16bが連通して主エアタンク13内の圧縮エアが駆動エア管路12及びリレーバルブ16を通ってブレーキチャンバ11に速やかに供給されるので、緊急ブレーキ操作時におけるブレーキの応答遅れを防止でき、車両の停止距離を短縮することができる。
【0015】
なお、運転者が車両を再発進させるためにブレーキペダル17の踏込みを解除すると、ブレーキペダル17の踏込み量がブレーキペダル17の準定常的踏込み時に最大圧力の圧縮エアを信号圧室に供給する踏込み量未満になったことを踏込み量センサ24が検出する、即ちブレーキペダル17の踏込み量がブレーキペダル17のフルストロークの70%未満になったことを踏込み量センサ24が検出する。このときコントローラ26は踏込み量センサ24の検出出力に基づき、電磁弁22を制御して補助エアタンク21及びダブルチェック弁31間を遮断し、かつダブルチェック弁31を大気に連通する。この結果、ブレーキチャンバ11内の圧縮エアがリレーバルブ16から大気に排出され、ブレーキチャンバ11内の圧縮エアが駆動エア管路12を通ってリレーバルブ16の排気ポート16dから大気に排出されるので、ブレーキが速やかに解除される。
【0016】
一方、運転者が車両を徐々に停止させるためにブレーキペダル17を緩やかにかつ比較的浅く踏込むと、ブレーキペダル17の踏込み量がブレーキペダル17のフルストロークの70%未満であることを踏込み量センサ24が検出した状態に保たれる。このためコントローラ26は踏込み量センサ24の検出出力に基づき、電磁弁22を制御して補助エアタンク21及びダブルチェック弁31間を遮断し、かつダブルチェック弁31を大気に連通した状態に保つ。これにより補助エアタンク21からの圧縮エアの圧力がブレーキバルブ18からの圧縮エアの圧力より高くなるため、ダブルチェック弁31のチェック用ピストン31bがチェック用第2ポート31d側に移動して、チェック用第1ポート31cとチェック用第3ポート31eとが連通する。この結果、補助エアタンク21とダブルチェック弁31とが遮断され、ブレーキバルブ18とダブルチェック弁31とが連通されるので、主エアタンク13内の圧縮エア及び補助エアタンク21内の同圧エア管路27を通る圧縮エアがリレーバルブ16でブレーキペダル17の踏込み量に応じた圧力に調整された後に、駆動エア管路12を通ってブレーキチャンバ11に供給され、車両が徐々に減速して停止する。
【0017】
なお、運転者がブレーキペダル17を更に深く踏込んで、ブレーキペダル17の踏込み量がブレーキペダル17のフルストロークの70%以上であることを踏込み量センサ24が検出すると、コントローラ26は踏込み量センサ24の検出出力に基づき、電磁弁22を制御して補助エアタンク21及びダブルチェック弁31間を連通し、かつダブルチェック弁31を大気から遮断する。このときブレーキバルブ18からの圧縮エアの圧力と補助エアタンク21からの圧縮エアの圧力が略同一であるので、ダブルチェック弁31のチェック用ピストン31bがチェック用第2ポート31d側に移動した状態に保たれて、チェック用第1ポート31cとチェック用第3ポート31eとが連通した状態に保たれる。この結果、補助エアタンク21とダブルチェック弁31とが遮断した状態に保たれ、ブレーキバルブ18とダブルチェック弁31が連通した状態に保たれるので、主エアタンク13内の圧縮エア及び補助エアタンク21内の同圧エア管路27を通る圧縮エアが、リレーバルブ16で減圧されることなく最大圧力のまま、リレーバルブ16及び駆動エア管路12を通ってブレーキチャンバ11に供給され、ブレーキによる車両の制動力は更に増大する。この状態で、運転者が車両を再発進させるためにブレーキペダル17の踏込みを解除すると、ブレーキペダル17の踏込み量がブレーキペダル17のフルストロークの70%未満になったことを踏込み量センサ24が検出する。このときコントローラ26は踏込み量センサ24の検出出力に基づき、電磁弁22を制御して補助エアタンク21及びダブルチェック弁31間を遮断し、かつダブルチェック弁31のチェック用第2ポート31dを大気に連通する。しかし、チェック用ピストン31bがチェック用第2ポート31d側に位置しているため、リレーバルブ16の信号圧室内の圧縮エアはチェック用第3ポート31e及びチェック用第1ポート31cを通ってブレーキバルブ18の排気ポート18aから排出される。この結果、ブレーキチャンバ11内の圧縮エアは駆動エア管路12を通ってリレーバルブ16の排気ポート16dから大気中に排出されるので、ブレーキが速やかに解除される。
【実施例】
【0018】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
荷台に15トンの荷物と積載したトラックに本発明のブレーキ装置を搭載した。このトラックを実施例1とした。具体的には、図1に示すように、長さ1mの補助エア管路19の一端をブレーキバルブ18とリレーバルブ16の間の信号エア管路14に連通接続し、補助エア管路19の他端に補助エアタンク21を連通接続した。また補助エア管路19の信号エア管路14への連通接続部にダブるチェック弁31を設け、補助エア管路19に3ポート2位置切換えの電磁弁22を設け、踏込み量センサ24はブレーキペダル17の踏込み量がブレーキペダル17のフルストロークの70%以上であることを検出するように構成した。更に踏込み量センサ24の検出出力に基づいてコントローラ26が電磁弁22を制御するように構成した。なお、補助エア管路19の長さを1mに設定し、ダブルチェック弁31からリレーバルブ16の信号圧室までの信号エア管路14の長さを1mに設定し、リレーバルブ16からブレーキチャンバ11までの駆動エア管路12の長さを2mに設定した。
<比較例1>
補助エア管路、補助エアタンク及び電磁弁を用いなかったことを除いて、実施例1と同一に構成したトラックを比較例1とした。
【0019】
<比較試験1及び評価>
実施例1及び比較例2のトラックを速度90km/時で走行している状態で、緊急停止するためにブレーキペダルを強くかつ深く踏込んだときの時間経過に対する減速度と、走行距離に対する車速の変化を測定した。その結果を図2及び図3に示す。
図2から明らかなように、実施例1が比較例1より減速度が向上することが分かった。また図3から明らかなように、実施例1が比較例1より短い距離で車速が低下するのが分かった。
<試験2及び評価>
実施例1のトラックを速度90km/時で走行している状態で、緊急停止するためにブレーキペダルを強くかつ深く踏込んだときのブレーキチャンバ内の圧力変化を測定した。その結果を図4に示す。
図4から明らかなように、ブレーキペダルを踏込み量が50mmになって踏込み量センサがオンするとほぼ同時にブレーキチャンバ内の圧力は最大圧力に上昇した。これにより主エアタンク内の圧縮エアが通ってブレーキチャンバに速やかに供給されたことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明実施形態の車両のブレーキ装置を含む回路構成図である。
【図2】実施例1と比較例1のブレーキを操作してからの時間に対する車両の減速度の変化を示す図である。
【図3】実施例1と比較例1のブレーキを操作してから車両の進む距離に対する車速の変化を示す図である。
【図4】実施例1のブレーキペダルのストロークに対するブレーキチャンバ内の圧縮エアの圧力の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
11 ブレーキチャンバ
12 駆動エア管路(駆動エア通路)
13 主エアタンク
14 信号エア管路(信号エア通路)
16 リレーバルブ
17 ブレーキペダル
18 ブレーキバルブ
19 補助エア管路(補助エア通路)
21 補助エアタンク
22 電磁弁
24 踏込み量センサ
26 コントローラ
27 同圧エア管路(同圧エア通路)
31 ダブルチェック弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を制動し又は前記車輪の制動を解除するブレーキチャンバ(11)が駆動エア通路(12)を介して主エアタンク(13)に連通接続され、前記主エアタンク(13)に信号エア通路(14)を介して連通接続された信号圧室を有しかつこの信号圧室に給排される圧縮エアの圧力に応じた圧力の圧縮エアを前記ブレーキチャンバ(11)に給排するリレーバルブ(16)が前記駆動エア通路(12)に設けられ、ブレーキペダル(17)に接続されかつこのブレーキペダル(17)の踏込み量に応じた圧力の圧縮エアを前記信号圧室に給排するブレーキバルブ(18)が前記信号エア通路(14)に設けられた車両のブレーキ装置において、
一端が前記ブレーキバルブ(18)と前記リレーバルブ(16)の間の信号エア通路(14)に連通接続された長さの短い補助エア通路(19)と、
前記補助エア通路(19)の他端に連通接続された補助エアタンク(21)と、
前記補助エア通路(19)の前記信号エア通路(14)への連通接続部に設けられ前記ブレーキバルブ(18)からの圧縮エアと前記補助エアタンク(21)からの圧縮エアのうち圧力の高い圧縮エアをブレーキチャンバ(11)に供給するダブルチェック弁(31)と、
前記補助エア通路(19)に設けられ前記補助エアタンク(21)及び前記ダブルチェック弁(31)間を連通するか或いは前記補助エアタンク(21)及び前記駆動エア通路(12)間を遮断しかつ前記ダブルチェック弁(31)を大気に連通するように切換える電磁弁(22)と、
前記ブレーキペダル(17)を準定常的に踏込んだとき最大圧力の圧縮エアを前記信号圧室に供給する踏込み量に達したことを検出する踏込み量センサ(24)と、
前記踏込み量センサ(24)の検出出力に基づいて前記電磁弁(22)を制御するコントローラ(26)と
を備えたことを特徴とする車両のブレーキ装置。
【請求項2】
補助エア通路(19)の長さが0.5〜2mであり、ダブルチェック弁(31)からリレーバルブ(16)の信号圧室までの前記信号エア管路(14)の長さが0.5〜2mであり、前記リレーバルブ(16)からブレーキチャンバ(11)までの駆動エア通路(12)の長さが1〜3mである請求項1記載の車両のブレーキ装置。
【請求項3】
補助エアタンク(21)の容量が1〜2リットルである請求項1記載の車両のブレーキ装置。
【請求項4】
主エアタンク(13)内の圧力と補助エアタンク(21)内の圧力を同一にするために前記主エアタンク(13)及び前記補助エアタンク(21)を連通接続する同圧エア通路(27)を更に備えた請求項1記載の車両のブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−38867(P2007−38867A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225602(P2005−225602)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】