説明

車両の側部構造

【課題】ドアガーニッシュの前端部分の盛上がりを低く形成したり、ドアガーニッシュの前端部分のテーパを大きくしなければならない点を解決することで、意匠的な効果を十分に発揮して精悍な意匠を実現することを可能にする。
【解決手段】車両用ドア(前ドア)の下方部分を車体前後方向に覆うドアガーニッシュ33と、このドアガーニッシュ33に沿わせて形成するとともにフロントフェンダ17の後部下方及びサイドシル31を覆うサイドガーニッシュ32と、を備えた車両10において、サイドガーニッシュ32を、フロントフェンダ17の後部下方を覆う垂直部38を備えるとともに、サイドシル31を覆う水平部39を備えるサイドガーニッシュアウタ35と、垂直部38の裏面に設けることでドアガーニッシュ33の前端33aに沿わすサイドガーニッシュインナ36と、から構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアの下方部分を覆うドアガーニッシュと、サイドシルを覆うサイドガーニッシュとを備える車両の側部構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の側部構造として、
車両用ドアの下方部分にドアガーニッシュを取付け、このドアガーニッシュに沿わせてサイドシルにサイドガーニッシュを取付けたものが実用に供されている。
実用の車両の側部構造は、ドアガーニッシュ及びサイドガーニッシュに適宜意匠的な処理や走行風に対する配慮を施して取付けをすれば実用上十分であった。
【0003】
このような車両の側部構造として、車両用ドアからの雨水の排出経路を確保したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平4−96526号公報(第2頁、図1)
【0004】
特許文献1の技術を説明する。
図9は従来の基本構成を説明する図であり、車両の側部構造200は、車体201の側部下方の構造体を形成するサイドシル202と、このサイドシル202の車幅外方に取付けたサイドガーニッシュ203と、車体201の側方を開閉自在に覆う車両用ドア204と、この車両用ドア204の下部側方に取付けることでサイドガーニッシュ203の上部を覆うドアガーニッシュ205と、を備えたものである。
【0005】
しかし、このような車両の側部構造200では、車両用ドア204の表面からドアガーニッシュ205が凸方向に盛り上がるため、車両用ドア204の開閉するための軌跡を考慮すると、例えば、フロントフェンダ(不図示)の後部に対向するドアガーニッシュ205の前端部分の盛上がりを低く形成したり、フロントフェンダの後部に対向するドアガーニッシュ205の前端部分のテーパを大きくする必要に迫られる。
【0006】
ドアガーニッシュ205の前端部分の盛上がりを低く形成したり、ドアガーニッシュ205の前端部分のテーパを大きくしたのでは、ドアガーニッシュ205やサイドガーニッシュ203を設けることで精悍な意匠を演出しようとするときに、意匠的な向上を臨むことができないことがある。
また、ドアガーニッシュ205やサイドガーニッシュ203を設けるときには、走行中に静粛性を確保できるように十分な剛性を確保することも必要である。
【0007】
すなわち、車両用ドアの下方部分にドアガーニッシュを取付け、このドアガーニッシュに沿わせてサイドシルにサイドガーニッシュを取付けるときに、意匠的な効果を十分に発揮して精悍な意匠を実現することができる車両の側部構造が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、車両用ドアの下方部分にドアガーニッシュを取付け、このドアガーニッシュに沿わせてサイドシルにサイドガーニッシュを取付けるときに、車両用ドアの開閉軌跡の確保のために、ドアガーニッシュの前端部分の盛上がりを低く形成したり、ドアガーニッシュの前端部分のテーパを大きくしなければならない点を解決し、意匠的な効果を十分に発揮して精悍な意匠を実現することができる車両の側部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車両用ドアの下方部分を車体前後方向に覆うドアガーニッシュと、このドアガーニッシュに沿わせて形成するとともにフロントフェンダの後部下方及びサイドシルを覆うサイドガーニッシュと、を備えた車両において、サイドガーニッシュを、フロントフェンダの後部下方を覆う垂直部を備えるとともに、サイドシルを覆う水平部を備えるサイドガーニッシュアウタと、垂直部の裏面に設けることでドアガーニッシュの前端に沿わすサイドガーニッシュインナと、から構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、サイドガーニッシュインナに、水平部と垂直部とを連結する連結部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、サイドガーニッシュを、フロントフェンダの後部下方を覆う垂直部を備えるとともに、サイドシルを覆う水平部を備えるサイドガーニッシュアウタと、垂直部の裏面に設けることでドアガーニッシュの前端に沿わすサイドガーニッシュインナと、から構成したので、車両用ドアの開閉軌跡を確保しつつ、垂直部とドアガーニッシュとの見切り幅を最小にすることを容易に行うことができる。この結果、意匠的な効果を十分に発揮して精悍な意匠を実現することができるという利点がある。ここで、見切り幅とは、垂直部後方の外表面エッジとドアガーニッシュ前端の外表面エッジとの幅をいう。
【0012】
請求項2に係る発明では、サイドガーニッシュインナに、水平部と垂直部とを連結する連結部を備えたので、水平部と垂直部とを補強することができ、サイドシルガーニッシュの剛性を向上することができる。この結果、走行中の静粛性の向上を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面車両の側部構造は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車両の側部構造を採用した車両の側面図であり、図中、10は車両、11は車体、13はフロントバンパ、14はボンネット、15は前照灯、16はフロントグリル、17はフロントフェンダ、18はフロントウインドウ、21はルーフ、22は前輪、23は後輪、24は車両用ドアとしての前ドア、25は後ドア、26はドアミラー、27はテールゲート、29はリヤバンパである。
【0014】
本発明に係る車両の側部構造30は、前ドア(車両用ドア)24の下方部分を車体前後方向に覆うドアガーニッシュ33と、このドアガーニッシュ33に沿わせて形成するとともにフロントフェンダ17の後部下方及びサイドシル31を覆うサイドガーニッシュ32と、からなり、車両10の精悍な意匠を実現することのできる構造である。
【0015】
図2は本発明に係る車両の側部構造のサイドガーニッシュの分解斜視図であり、サイドガーニッシュ32は、図1に示すサイドシル31及びフロントフェンダ17の後部下方を覆うサイドガーニッシュアウタ35と、このサイドガーニッシュアウタ35の前端裏面に取付けるサイドガーニッシュインナ36と、このサイドガーニッシュインナ36をサイドガーニッシュアウタ35に取付ける取付ねじ37,37と、からなる。
【0016】
サイドガーニッシュアウタ(第1のサイドガーニッシュ)35は、フロントフェンダ17(図1参照)の後部下方を覆う垂直部38と、サイドシル31を覆う水平部39と、からなる。
【0017】
垂直部38は、サイドガーニッシュインナ36を差込む差込み孔41・・・(・・・は複数個を示す。以下同じ)と、サイドガーニッシュインナ36を止める止めボス42,43と、フロントフェンダ17(図1参照)にねじ止めするための止め金具44,44と、を備える。
【0018】
水平部39は、サイドガーニッシュインナ36を差込む差込み部46と、サイドシル31(図1参照)側に係止する複数のクリップ47(1個のみ示す)と、サイドガーニッシュインナ36を位置決めする突起48と、を備える。
【0019】
サイドガーニッシュインナ(第2のサイドガーニッシュ)36は、垂直部38の裏面に設ける本体部51と、この本体部51から延出することで垂直部38の前ドア24(図1参照)側の側壁を形成する延出部(側壁)52と、この延出部52から車体後方に延ばすことで水平部39の一部を構成するとともに、水平部39に連結する連結部53と、この連結部53の先端に形成することで水平部39の差込み部46に差込む水平側差込み片54と、この水平側差込み片54に開けた位置決め孔55と、からなる。
【0020】
本体部51は、取付けねじ37,37を貫通させるねじ貫通部56a,56bと、フロントフェンダ17側に係止するクリップ57と、垂直部38の差込み孔41・・・に差込む垂直側差込み片58・・・と、を備える。
本体部51、延出部52及び連結部53は、連続的に形成した補強リブ59a〜59cを備え、延出部52及び連結部53は、サイドガーニッシュアウタ35の垂直部38と水平部39との補強の役目をなす。
【0021】
図3は本発明に係る車両の側部構造のサイドガーニッシュの背面図であり、車両の側部構造30は、サイドガーニッシュ32を、サイドガーニッシュアウタ35と、サイドガーニッシュインナ36と、からの2ピース構成とするとともに、サイドガーニッシュアウタ35を、垂直部38と水平部39とから構成し、これらの垂直部38と水平部39とをサイドガーニッシュインナ36で連結して補強したことを示す。
【0022】
図4は図3の4−4線断面図であり、図3に示すように、サイドガーニッシュインナ36は、取付ねじ37,37でサイドガーニッシュアウタ35の垂直部38に係合させ、図4に示すように、サイドガーニッシュアウタ35の突起48に位置決め孔55を嵌合させることで、サイドガーニッシュアウタ35の水平部39に係合させたことを示す。
【0023】
図5(a),(b)は本発明に係る車両の側部構造の作用説明図であり、(a)は比較例の車両の側部構造100を示し、(b)は実施例の車両の側部構造30を示す。
(a)において、車両用ドア104にドアガーニッシュ103を採用する車種は、ドアガーニッシュ103が車両用ドア104の表面から凸方向に盛り上がるため、車両用ドア104が開閉するための軌跡を考慮すると、例えば、フロントフェンダ107の後部に対向するドアガーニッシュ103の前端部分の盛上がりを低く形成したり、フロントフェンダの後部に対向するドアガーニッシュ103の前端部分のテーパを大きくする必要に迫られる。
【0024】
車両の側部構造100は、サイドガーニッシュ102を一体的に形成したものであり、垂直部109後方の外表面エッジとドアガーニッシュ103前端の外表面エッジとの幅を見切り幅A1と呼ぶときに、車両用ドア104の開閉軌跡を満足させるため見切り幅A1は幅広に設定せざるを得ない。
【0025】
(b)において、車両の側部構造30は、サイドガーニッシュ32を、サイドガーニッシュアウタ35と、サイドガーニッシュインナ36との2ピース構成としたので、例えば、二点差線で示すように、延出部を車体前方に移動することで、見切り幅A2を最小に設定しつつ、車両用ドア内部の見切り処理も行いやすい。すなわち、車両の側部構造30は、設計の自由度を向上させた構造であるとも言える。
【0026】
図6は本発明に係る車両の側部構造の斜視図であり、図7は本発明に係る車両の側部構造のサイドガーニッシュの正面からの斜視図である。
車両の側部構造30は、車両用ドア(前ドア)の下方部分を車体前後方向に覆うドアガーニッシュ33と、このドアガーニッシュ33に沿わせて形成するとともにフロントフェンダ17の後部下方及びサイドシル31を覆うサイドガーニッシュ32と、を備えた車両10において、サイドガーニッシュ32を、フロントフェンダ17の後部下方を覆う垂直部38を備えるとともに、サイドシル31を覆う水平部39を備えるサイドガーニッシュアウタ35と、垂直部38の裏面に設けることでドアガーニッシュ33の前端33aに沿わすサイドガーニッシュインナ36(図7参照)と、から構成したものと言える。
【0027】
例えば、車両用ドアの開閉軌跡の確保のために、ドアガーニッシュの前端部分の盛上がりを確保したり、ドアガーニッシュの前端部分のテーパを最小にすることができれば、意匠的な効果を十分に発揮して精悍な意匠を実現することができるので好ましいことである。
また、ドアガーニッシュやサイドガーニッシュを設けるときに、十分な剛性を確保することができれば、走行中の静粛性の向上を図ることができるので好ましいことである。
【0028】
そこで、サイドガーニッシュ32を、フロントフェンダ17の後部下方を覆う垂直部38を備えるとともに、サイドシル31を覆う水平部39を備えるサイドガーニッシュアウタ35と、垂直部38の裏面に設けることでドアガーニッシュ33の前端33aに沿わすサイドガーニッシュインナ36(図7参照)と、から構成することで、車両用ドアの開閉軌跡を確保しつつ、垂直部38とドアガーニッシュ33との見切り幅を最小にすることを容易に行うことができる。この結果、意匠的な効果を十分に発揮して精悍な意匠を実現することができる。ここで、見切り幅とは、垂直部38後方の外表面エッジとドアガーニッシュ33前端33aの外表面エッジとの幅をいう。
【0029】
図8は本発明に係る車両の側部構造のサイドガーニッシュの背面からの斜視図であり、
車両の側部構造30は、サイドガーニッシュインナ36に、水平部39と垂直部38とを連結する連結部53を備えたものとも言える。
サイドガーニッシュインナ36に、水平部39と垂直部38とを連結する連結部53を備えることで、水平部39と垂直部38とを補強することができ、サイドシルガーニッシュ32の剛性を向上することができる。この結果、走行中の静粛性の向上を図ることができる。
【0030】
尚、本発明に係る車両の側部構造は、図6に示すように、車両用ドアは前ドア24であったが、これに限るものではなく、後ドア25部分に採用するようにしたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る車両の側部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る車両の側部構造を採用した車両の側面図である。
【図2】本発明に係る車両の側部構造のサイドガーニッシュの分解斜視図である。
【図3】本発明に係る車両の側部構造のサイドガーニッシュの背面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】本発明に係る車両の側部構造の作用説明図である。
【図6】本発明に係る車両の側部構造の斜視図である。
【図7】本発明に係る車両の側部構造のサイドガーニッシュの正面からの斜視図である。
【図8】本発明に係る車両の側部構造のサイドガーニッシュの背面からの斜視図である。
【図9】従来の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
10…車両、11…車体、17…フロントフェンダ、24…車両用ドア(前ドア)、30…車両の側部構造、31…サイドシル、32…サイドガーニッシュ、33…ドアガーニッシュ、35…サイドガーニッシュアウタ、82…、38…垂直部、39…水平部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの下方部分を車体前後方向に覆うドアガーニッシュと、
このドアガーニッシュに沿わせて形成するとともにフロントフェンダの後部下方及びサイドシルを覆うサイドガーニッシュと、を備えた車両において、
前記サイドガーニッシュは、前記フロントフェンダの後部下方を覆う垂直部を備えるとともに、前記サイドシルを覆う水平部を備えるサイドガーニッシュアウタと、前記垂直部の裏面に設けることで前記ドアガーニッシュの前端に沿わすサイドガーニッシュインナと、から構成したことを特徴とする車両の側部構造。
【請求項2】
前記サイドガーニッシュインナは、前記水平部と前記垂直部とを連結する連結部を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両の側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−283997(P2007−283997A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116462(P2006−116462)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】