説明

車両の側部車体構造

【課題】 シートバックを支持するストライカにかかる荷重を車体の各部分に分散させ、シートバックの取り付け剛性を向上させる車両の側部車体構造を提供する。
【解決手段】 車体側壁部3に配設され、シートバックを係止させるストライカ41と、上記ストライカの取付部45を補強するストライカレイン51と、車体後壁部4に形成されたバックドア用開口部8の車体前方に車体側壁部から車幅方向内方へ膨出するリアホイールハウス6と、車体側壁部において上記リアホイールハウスの上方に位置するサイドピラー9を有する車両の側部車体構造は、上記リアホイールハウス6上部と上記車体後壁部4とを連結する連結ガセット31と、上記リアホイールハウス6上部から上記サイドピラー9に向かって延びるピラーガセット23を備え、上記ストライカレイン51が、上記リアホイールハウス6の上部及び/又はその近傍に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両の側部車体構造、より詳しく言えば、車体後部の側壁部に、リアシートのシートバックを係止させるストライカが配設されてなる車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リアシートを有する自動車等の車両において、車体後部の車室空間を有効に利用するために、リアシートを可倒式としたものは周知である。特に、車体後壁部に開口部を有するワゴン型又はハッチバック型等の車両においては、この可倒式リアシートは広い荷室空間を確保するために多用されている。
【0003】
かかる可倒式リアシートのシートバックを支持する構造として、シートバック支持用のストライカを車体後部の側壁部に配設した構成が知られている。このようなストライカを設けることにより、シートバックを係脱可能に係止させることができる。例えば、特許文献1には、リヤピラーインナーパネルに、シートバック支持用のストライカと、後部座席乗員用シートベルトを巻き取るためのシートベルトリトラクタとを、ブラケットを介して固定した構造が開示されている。
【0004】
しかし、リアシートのシートバックは、着座乗員の荷重を支えるだけでなく、例えば、当該シートバックの後方に荷物が置かれている状態で車両が急停止した場合には、前動して来る荷物の衝突荷重に耐えなければならない。従って、シートバックを支持するストライカもかかる衝突荷重に耐える必要がある。
【0005】
このようなストライカに直接に関連したものではないが、例えば特許文献2には、車体後部に車体前方向きの衝撃荷重が作用する場合において、サスペンションタワーの前方変位に伴うリアピラーの変形を防止するために、衝撃吸収部を備え、車体前後方向に延設されたレインフォースメントを有する自動車の後部車体構造が開示されている。
【特許文献1】特開2004―268806号公報
【特許文献2】特開平5―16837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車体側壁部にシートベルトリトラクタが配設されている車両では、リアシートを折り畳む際、あるいは折り畳まれたリアシートを起立させる際に、シートベルトがシートバックに挟み込まれることがある。これを回避するために、シートベルトリトラクタをシートバック内に配設することが知られている。この場合には、車室空間のより有効な利用にも資することができる。
【0007】
しかし、シートベルトリトラクタがシートバック内に配設される場合には、車体側壁部に配設される場合に比して、シートバックに入力される荷重が大きくなる。シートバックを支持するストライカ及びその取付部にもかかる荷重が作用することとなる。
このような入力荷重に対する負荷能力を高める場合、荷重を受け持つ部材のサイズが過大なものとなることを回避するためには、入力荷重を車体の各部に分散させることが非常に有効である。従って、上記ストライカにかかる荷重を如何に車体各部に分散させるかが重要となる。
【0008】
そこで、この発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたもので、シートバックを支持するストライカが車体側壁部に配設された車両の側部車体構造において、シートバックにかかる荷重を、上記ストライカを介して車体の各部分に分散させ、シートバックの取り付け剛性を向上させることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本願の請求項1に係る発明は、車体後部の側壁部に配設されリアシートのシートバックを係脱可能に係止させるストライカと、該ストライカが取り付けられ、車体側壁部に対する前記ストライカの取付部を補強するストライカレインと、車体後壁部に形成されたバックドア用開口部の車体前方に、車体側壁部から車幅方向内方へ膨出するリアホイールハウスと、車体側壁部において前記リアホイールハウスの上方に位置するサイドピラーと、を有する車両の側部車体構造であって、車体側壁部に沿って配設され、前記リアホイールハウス上部と前記車体後壁部とを連結する連結ガセットと、前記リアホイールハウス上部から前記サイドピラーに向かって延びているピラーガセットと、を備え、前記ストライカレインが、前記リアホイールハウス上部及び/又はその近傍に配設されていることを特徴としたものである。
【0010】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ピラーガセットが、前記リアホイールハウス上部から車体前上方に延びていることを特徴としたものである。
【0011】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記連結ガセットが、前記リアホイールハウス上部から車体後上方に延びていることを特徴としたものである。
【0012】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一に係る発明において、前記リアホイールハウス上部と車室フロア部とを略車体上下方向に連結するホイールハウスガセットを更に備え、前記ホイールハウスガセットが、前記リアホイールハウス上部において前記連結ガセットと連結されていることを特徴としたものである。
【0013】
また更に、本願の請求項5に係る発明は、車体後部の側壁部に配設されリアシートのシートバックを係脱可能に係止させるストライカと、該ストライカが取り付けられ、車体側壁部に対する前記ストライカの取付部を補強するストライカレインと、車体後壁部に形成されたバックドア用開口部の車体前方に、車体側壁部から車幅方向内方へ膨出するリアホイールハウスと、を有する車両の側部車体構造であって、車体側壁部に沿って配設され、前記リアホイールハウス上部と前記車体後壁部とを連結する連結ガセットと、前記リアホイールハウス上部と車室フロア部とを略車体上下方向に連結するホイールハウスガセットと、を備え、前記ストライカレインが、前記リアホイールハウス上部及び/又はその近傍に配設されていることを特徴としたものである。
【0014】
また更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項4又は5に係る発明において、前記ホイールハウスガセットは、略車幅方向に延びており、左右の前記リアホイールハウスは、前記ホイールハウスガセットにより相互に連結されていることを特徴としたものである。
【0015】
また更に、本願の請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか一に係る発明において、前記サイドピラーの車体後方において、車体側壁部にサイドウィンドウ用開口部を備え、前記ストライカレインが、前記サイドウィンドウ用開口部の下端縁部と前端縁部とにわたって配設されていることを特徴としたものである。
【0016】
また更に、本願の請求項8に係る発明は、請求項1〜7の何れか一に係る発明において、前記シートバックに、シートベルトを巻き取るためのシートベルトリトラクタが配設されていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本願の請求項1の発明に係る車両の側部車体構造によれば、リアホイールハウス上部と車体後壁部とを連結する連結ガセットと、リアホイールハウス上部からサイドピラーに向かって延びているピラーガセットと、備え、車体側壁部に対するストライカの取付部を補強するストライカレインが、上記リアホイールハウス上部及び/又はその近傍に配設されることにより、ストライカを介してストライカレインにかかる荷重を、連結ガセットを介してリアホイールハウス後方の車体側壁部及び車体後壁部に伝達するとともに、ピラーガセットを介してサイドピラーに伝達することができる。このように、上記荷重を車体後方の車体の各部分に分散させることができるので、シートバックの取り付け剛性を向上させることができる。
また、例えばサスペンション装置等を介してリアホイールハウスにかかる荷重を、連結ガセットを介してリアホイールハウス後方の車体側壁部及び車体後壁部に伝達するとともに、ピラーガセットを介してサイドピラーに伝達することができ、上記荷重を車体後方の車体の各部分に分散させることができる。
【0018】
また、本願の請求項2の発明によれば、基本的には上記請求項1の発明と同様の効果を奏することができる。特に、ピラーガセットが、リアホイールハウス上部から車体前上方に延びていることにより、ストライカレインにかかる荷重を、リアホイールハウスの車体前方および車体上方の車体側壁部に広範囲に分散させることができる。
【0019】
更に、本願の請求項3の発明によれば、基本的には上記請求項1又は2の発明と同様の効果を奏することができる。特に、連結ガセットが、リアホイールハウス上部から車体後上方に延びていることにより、リアホイールハウスにかかる荷重を、リアホイールハウスの車体後方および車体上方の車体側壁部に広範囲に分散させることができる。
【0020】
また更に、本願の請求項4の発明によれば、基本的には上記請求項1〜3の何れか一の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記側部車体構造が、リアホイールハウス上部と車室フロア部とを略車体上下方向に連結するホイールハウスガセットを更に備えていることにより、ストライカレインにかかる荷重を、ホイールハウスガセットを介してフロア部に伝達し、該フロア部にも分散させることができる。
【0021】
また更に、本願の請求項5の発明に係る車両の側部車体構造によれば、リアホイールハウス上部と車体後壁部とを連結する連結ガセットと、リアホイールハウス上部と車室フロア部とを略車体上下方向に連結するホイールハウスガセットと、を備え、車体側壁部に対するストライカの取付部を補強するストライカレインが、上記リアホイールハウス上部及び/又はその近傍に配設されることにより、ストライカを介してストライカレインにかかる荷重を、連結ガセットを介してリアホイールハウス後方の車体側壁部及び車体後壁部に伝達するとともに、ホイールハウスガセットを介して車室フロア部に伝達することができ、上記荷重を車体後方及び下方の車体の各部分に分散させることができる。
【0022】
また更に、本願の請求項6の発明によれば、基本的には上記請求項4又は5の発明と同様の効果を奏することができる。特に、ホイールハウスガセットは、略車幅方向に延びており、左右の上記リアホイールハウスは、上記ホイールハウスガセットにより相互に連結されることにより、リアホイールハウスにかかる荷重を、ホイールハウスガセットを介して車幅方向反対側の車体の各部分に広範囲に分散させることができる。
【0023】
また更に、本願の請求項7の発明によれば、基本的には上記請求項1〜6の何れか一の発明と同様の効果を奏することができる。特に、上記側部車体構造が、サイドピラーの車体後方において、車体側壁部にサイドウィンドウ用開口部を備え、ストライカレインが、サイドウィンドウ用開口部の下端縁部と前端縁部とにわたって配設されることにより、応力が集中し易い、サイドウィンドウ用開口部の隅部を有効に補強することができる。
【0024】
また更に、本願の請求項8の発明によれば、基本的には上記請求項1〜7の何れか一の発明と同様の効果を奏することができる。特に、シートバックに、シートベルトリトラクタが配設されることにより、例えば車両の急停止時など、シートベルトを介してシートバックにかかる荷重が大きくなる場合においても、ストライカを介してストライカレインにかかる荷重を車体の各部分に分散させることができるので、上記効果をより有効に奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造を概略的に示した斜視図である。図2は、図1におけるY2−Y2線に沿った断面図であり、図3は図1におけるY3−Y3線に沿った断面図、図4は図1におけるY4―Y4線に沿った断面図である。なお、これらの図面では、車室内側の内装部材を取り除いた状態で示している。
【0027】
図1から分かるように、本実施形態に係る車両1は、概略的に言えば、車室の床面を構成する車室フロア部2と、車体の側面を構成する側壁部3と、車体の後端の車体後壁部4と、車体の天井部を構成するルーフ部5とを備えている。
【0028】
車体後部の車体側壁部3の下方には、車体側壁部3から車幅方向内方へ膨出するリアホイールハウス6が形成されている。リアホイールハウス6の上部には、後輪(不図示)を懸架するリアサスペンション装置(不図示)の上端部分が取り付けられる。
車体後端には、バックドア7に対応するバックドア用開口部8が形成されており、上記バックドア用開口部8の残余部分が車体後壁部4である。
【0029】
車体側壁部3には、バックドア用開口部8の車体前方にあるリアホイールハウス6の上部から車体上方にサイドピラー9が形成されており、上記サイドピラー9は、車体側壁部3の上端において車体前後方向に延びるルーフレール部10まで延びている。サイドピラー9の車体前方には、リアドア用開口部11が設けられており、上記サイドピラー9の車体後方には、サイドウィンドウ用開口部12が設けられている。
【0030】
この車体側壁部3は、図2および3に示されるように、インナパネル21と、アウタパネル22とを組み合わせて構成されており、これらのパネル21、22の間には、ピラーガセット23が配設されている。ピラーガセット23の下側の端部23aは、車幅方向外方へ膨出するインナパネルの膨出部21aの車幅方向略中央に接合されている。一方、ピラーガセット23の上側の端部23bは、図2に示される位置では、インナパネル21とアウタパネル22とに挟み込まれて接合されており、図3に示される位置では、インナパネル21に接合された構造を有している。
【0031】
また、図4に示されるように、サイドピラー9においては、ピラーガセット23の両端部23c、23dが、インナパネル21とアウタパネル22とに挟み込まれた構造を有しており、上記ピラーガセット23は、サイドピラー9に沿って、リアホイールハウス6上部から車体前上方に(すなわち、車体前方に向かうに従って車体上方に)延びている。
【0032】
上記のように車体側壁部3に形成されたリアホイールハウス6は、車幅方向内方へ膨出する膨出部6aを備え、リアホイールハウスの外側の周縁部には、フランジ部6bを備えている。上記フランジ部6bは、インナパネル21の下部に接合されている。
【0033】
本実施形態では、図1に示されるように、リアホイールハウス6上部と車体後壁部4とを連結する連結ガセット31が、車体側壁部3に沿って配設されている。連結ガセット31は、平面視で略長方形状のプレート部材であり、平面部31aと、その周縁部に折り曲げて成形されるフランジ部31b、31c、31d、31eとを備えており、リアホイールハウス6上部から車体後上方に(すなわち、車体後方に向かうに従って車体上方に)延びている。
【0034】
図1には、連結ガセット31のフランジ部がそれぞれ車体各部に接合されている状態が示されている。フランジ部31bは車体側壁部3を構成するインナパネル21に沿って接合され、フランジ部31cは車体後壁部4に接合され、フランジ部31dはリアホイールハウス6上部において膨出部6aの上面に接合されている。また、フランジ部31eは、連結ガセットの剛性を向上させるために、下方に折り曲げて成形されている。
【0035】
本実施形態では、リアシートのシートバックを係止させるストライカ41が、車体後部の側壁部3に配設されている。上記ストライカ41は、車体側壁部3に対するストライカ41の取付部(取付板)45を補強するストライカレイン(ストライカレインフォースメント)51を備え、上記ストライカレイン51に取り付けられている。
【0036】
図5〜8には、上記ストライカ41及びストライカレイン51の詳細が示されている。図5は、図1におけるY5−Y5線に沿って破断された斜視図であり、図6はストライカを備えたストライカレインの正面側から見た斜視図、図7は図6に示したストライカレインを背面側から見た斜視図である。また、図8は、本実施形態に係る車両の側部車体構造を車体後方から概略的に示した斜視図である。
【0037】
図8に示されるように、リアシート60のシートバック61背面に凹部62が形成されており、上記凹部62内にラッチ部材63が備えられている。上記ラッチ部材63は、車体側壁部3に配設されたストライカ41と係脱可能に係止させることができる。
【0038】
上記ストライカ41は、図5〜7に示されるように、その取付板45を介して、略板状に形成されたストライカレイン51に取り付けられ、車体側壁部3に配設されている。ナット42が溶着されたプレート43とストライカ41の取付板45との間にストライカレイン51を挟み込み、取付ボルト44を締め付けることにより、ストライカ41はストライカレイン51に固定されている。
【0039】
また、ストライカレイン51は、図に示されるように、その周縁部が車体側壁部3のインナパネル21に接合され、車体側壁部3においてリアホイールハウス6の近傍に広範囲にわたって配設されている。ストライカレイン51の上部は、サイドピラー9に沿って延びるとともに、サイドウィンドウ用開口部12の下端縁部と前端縁部とにわたって配設されている。
本実施形態では、ストライカレイン51がリアホイールハウスの近傍に配設されているが、リアホイールハウス上部にわたって配設されてもよい。
【0040】
このように、リアホイールハウス6上部と車体後壁部4とを連結する連結ガセット31と、リアホイールハウス6上部からサイドピラー9に向かって延びているピラーガセット23とを備え、車体側壁部3に対するストライカ41の取付部45を補強するストライカレイン51が、上記リアホイールハウス6上部及びその近傍の少なくとも何れか一方に配設されるので、ストライカ41を介してストライカレイン51にかかる荷重を、連結ガセット31を介してリアホイールハウス6後方の車体側壁部3及び車体後壁部4に伝達するとともに、ピラーガセット23を介してサイドピラー9に伝達することができる。このように、上記荷重を車体後方の車体の各部分に分散させることができるので、シートバックの取り付け剛性を向上させることができる。
【0041】
また、例えばサスペンション装置等を介してリアホイールハウス6にかかる荷重を、連結ガセット31を介してリアホイールハウス6後方の車体側壁部3及び車体後壁部4に伝達するとともに、ピラーガセット23を介してサイドピラー9に伝達することができ、上記荷重を車体後方の車体の各部分に分散させることができる。
【0042】
本実施形態では、ピラーガセット23が、リアホイールハウス6上部から車体前上方に延びているので、ストライカレイン51にかかる荷重を、リアホイールハウス6の車体前方および車体上方の車体側壁部3に広範囲に分散させることができる。
【0043】
また、連結ガセット31が、リアホイールハウス6上部から車体後上方に延びているので、リアホイールハウス6にかかる荷重を、リアホイールハウス6の車体後方および車体上方の車体側壁部に広範囲に分散させることができる。
【0044】
更に、ストライカレイン51が、サイドウィンドウ用開口部12の下端縁部と前端縁部とにわたって配設されるので、応力が集中し易い、上記サイドウィンドウ用開口部12の隅部を有効に補強することができる。
【0045】
次に、本実施形態に係る車両の側部車体構造において、リアホイールハウス上部から下方における車体構造について説明する。
本実施形態に係る車両1は更に、図1に示されるように、リアホイールハウス6上部とフロア部2とを連結するホイールハウスガセット70を備えている。ホイールハウスガセット70は、その上部を構成する第1のホイールハウス補強部材71と、その下部を構成する第2のホイールハウス補強部材76と、上記第1及び第2のホイールハウス補強部材71、76を連結する第3のホイールハウス補強部材77とを備えている。
【0046】
第1のホイールハウス補強部材71は、リアホイールハウス6の上部に配設され、リアホイールハウス6の膨出部6aに沿って車体下方に延びている。第1のホイールハウス補強部材71は、その周縁部のフランジ部71a、71b、71cと該フランジ部に対して車体内方に膨出する膨出部71dとを備え、断面ハット形状に形成されている。上記フランジ部71a、71b、及び71cはそれぞれ、車体側壁部3のインナパネル21、リアホイールハウス6の膨出部6aの上面、及びリアホイールハウス6の膨出部6aの側面に接合されている。
【0047】
上記膨出部71dには、リアホイールハウス6上部において連結ガセット31の車体前方のフランジ部31fが接合されている。この接合部においては、図3に示されるように、連結ガセット31と、ホイールハウスガセット70と、リアホイールハウス6の膨出部6aとが接合されており、上記接合部に形成された孔部30には、サスペンション装置(不図示)の上端部分が取り付けられる。また、第1のホイールハウス補強部材71のフランジ部71aには、ストライカレイン51が接合されている。
【0048】
第3のホイールハウス補強部材77は、上記第1のホイールハウス補強部材71の下方に配設されている。上記第3のホイールハウス補強部材77は、車体前後方向の端部にフランジ部77a、77bを備え、該フランジ部77a、77bの間に膨出部77cを備え、断面ハット形状に形成されている。上記第1のホイールハウス補強部材71の膨出部71dの下部と上記第3のホイールハウス補強部材77の膨出部77cの上部とが嵌め合わされて連結されている。
【0049】
図9は、図1におけるY9−Y9線に沿った断面図であり、第2のホイールハウス補強部材76の車体前後方向における断面を示している。第2のホイールハウス補強部材76は、車室フロア部2に沿って車幅方向に延在している。フロア部2は板状のフロアパネル81により形成され、図2に示されるように、車幅方向の外方に位置し車体前後方向に延びるフレーム部材82が接合されている。フロアパネル81の車幅方向外方の接合部83において、上記フロアパネル81とリアホイールハウスの膨出部6aの下端部との間にフレーム部材82が挟み込まれている。
【0050】
第2のホイールハウス補強部材76は、車体前後方向の両端にフランジ部76a、76bを備え、断面ハット形状に形成されている。上記フランジ部76a、76bはともにフロアパネル81に接合されている。
また、フロアパネル81の下方には、車体前後方向の両端にフランジ部86a、86bを備え、断面ハット形状に形成された補強部材86が配設されている。上記フランジ部86a、86bはフロアパネル81に接合されており、第2のホイールハウス補強部材76のフランジ部76aと補強部材86のフランジ部86aとはフロアパネル81を介して3重に接合されている。
【0051】
上記実施形態では、車両の一方の側部車体構造についてのみ記述しているが、反対側の側部についても同様に構成されており、左右の上記リアホイールハウス6は、上記第3のホイールハウス補強部材76を通じて上記ホイールハウスガセット70により相互に連結されている。
【0052】
このように、本実施形態に係る車両1が、リアホイールハウス6上部と車室フロア部2とを略車体上下方向に連結するホイールハウスガセット70を更に備えているので、ストライカレイン51にかかる荷重を、ホイールハウスガセット70を介してフロア部2に伝達し、該フロア部にも分散させることができる。
【0053】
更に、上記ホイールハウスガセット70は、略車幅方向に延びており、左右の上記リアホイールハウス6は、上記ホイールハウスガセット70により相互に連結されるので、リアホイールハウス6にかかる荷重を、ホイールハウスガセット70を介して車幅方向反対側の車体の各部分に広範囲に分散させることができる。
このことは、分割可倒式のリアシートを有する車両において、左右一方の側のリアシートのみを折り畳んで使用する際に、特に有効である。
【0054】
また更に、図10は、本実施形態に係る車両の側部車体構造を車体前方から概略的に示した斜視図である。この図の破線により示されているように、本実施形態では、シートベルト65を巻き取るためのシートベルトリトラクタ66がシートバック61内に配設されており、リアシート60を折り畳む際、あるいはリアシート60を起立させる際に、シートベルト65が上記リアシート60に絡まることを防止している。
【0055】
このように、本実施形態に係る車両の側部車体構造においては、シートバック61に、シートベルトリトラクタ66が配設されるので、例えば車両の急停止時など、シートベルト65を介してシートバック61にかかる荷重が大きくなる場合においても、上記ストライカを介してストライカレインにかかる荷重を車体の各部分に分散させることができる。
更に、このようにシートベルトリトラクタ66がシートバック61内に配設される場合には、車体側壁部3にシートベルトリトラクタが配設される場合に比して、車室空間をより有効に利用することができる。
【0056】
本実施形態では、車体側壁部3においては上記リアホイールハウス6上部にわたって連結ガセット31、ピラーガセット23、及びホイールハウスガセット70が配設されている。それらは全体として、アルファベットの大文字“Y”の字に類似した形状に形成されており、リアホイールハウス6上部及びその近傍の少なくとも何れか一方に配設されるストライカレインにかかる荷重を車体の各部分に広範囲に分散させることができる。
【0057】
上記実施形態における側部車体構造では、連結ガセット31、ピラーガセット23、及びホイールハウスガセット70を備えているが、例えば、連結ガセット31とホイールハウスガセット70とが設けられていてもよい。
【0058】
この場合においても、上記実施形態と同様に、ストライカを介してストライカレインにかかる荷重を、連結ガセットを介してリアホイールハウス後方の車体側壁部及び車体後壁部に伝達するとともに、ホイールハウスガセットを介してフロア部に伝達することができ、上記荷重を車体後方及び下方の車体各部に分散させることができる。
【0059】
このように、ストライカレインに入力される荷重は、車体の構成部材及びその形状等に応じてピラーガセット、連結ガセット、ホイールハウスガセットのいずれかの組み合わせを用いることにより、上記荷重は、少なくともリアホイールハウス上部を通じて車体の各部分に分散させることができる。また、これらのガセットを車体の側壁部に配設させることにより、車体側壁部の強度及び剛性も高められる。
【0060】
本実施形態では、上記ホイールハウスガセットが、3つのホイールハウス補強部材71、76、77により別体で構成されているが、このように分割式で構成されても、一体的に構成されてもよい。
また、本実施形態では、シートベルトリトラクタがリアシートのシートバック内に配設されている場合について記述されているが、シートベルトリトラクタが、車体側壁部に配設されている場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0061】
以上のように、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、車体後部の車体側壁部に、リアシートのシートバックを支持するストライカが配設されてなる車両において、特に、シートベルトリトラクタがシートバック内に配設された車両などに好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の側部車体構造を概略的に示した斜視図である。
【図2】図1におけるY2−Y2線に沿った断面図である。
【図3】図1におけるY3−Y3線に沿った断面図である。
【図4】図1におけるY4―Y4線に沿った断面図である。
【図5】図1におけるY5−Y5線に沿って破断された斜視図である。
【図6】ストライカを備えたストライカレインの正面側から見た斜視図である。
【図7】図6に示したストライカレインを背面側から見た斜視図である。
【図8】本実施形態に係る車両の側部車体構造を車体後方から概略的に示した斜視図である。
【図9】図1におけるY9−Y9線に沿った断面図である。
【図10】本実施形態に係る車両の側部車体構造を車体前方から概略的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
2 フロア部
3 車両側壁部
4 車体後壁部
6 リアホイールハウス
8 バックドア用開口部
9 サイドピラー
12 サイドウィンドウ用開口部
23 ピラーガセット
31 連結ガセット
41 ストライカ
45 取付部
51 ストライカレイン
61 シートバック
66 シートベルトリトラクタ
70 ホイールハウスガセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の側壁部に配設されリアシートのシートバックを係脱可能に係止させるストライカと、該ストライカが取り付けられ、車体側壁部に対する前記ストライカの取付部を補強するストライカレインと、車体後壁部に形成されたバックドア用開口部の車体前方に、車体側壁部から車幅方向内方へ膨出するリアホイールハウスと、車体側壁部において前記リアホイールハウスの上方に位置するサイドピラーと、を有する車両の側部車体構造であって、
車体側壁部に沿って配設され、前記リアホイールハウス上部と前記車体後壁部とを連結する連結ガセットと、
前記リアホイールハウス上部から前記サイドピラーに向かって延びているピラーガセットと、を備え、
前記ストライカレインが、前記リアホイールハウス上部及び/又はその近傍に配設されていることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項2】
前記ピラーガセットが、前記リアホイールハウス上部から車体前上方に延びていることを特徴とする請求項1記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
前記連結ガセットが、前記リアホイールハウス上部から車体後上方に延びていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の側部車体構造。
【請求項4】
前記リアホイールハウス上部と車室フロア部とを略車体上下方向に連結するホイールハウスガセットを更に備え、
前記ホイールハウスガセットが、前記リアホイールハウス上部において前記連結ガセットと連結されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一に記載の車両の側部車体構造。
【請求項5】
車体後部の側壁部に配設されリアシートのシートバックを係脱可能に係止させるストライカと、該ストライカが取り付けられ、車体側壁部に対する前記ストライカの取付部を補強するストライカレインと、車体後壁部に形成されたバックドア用開口部の車体前方に、車体側壁部から車幅方向内方へ膨出するリアホイールハウスと、を有する車両の側部車体構造であって、
車体側壁部に沿って配設され、前記リアホイールハウス上部と前記車体後壁部とを連結する連結ガセットと、
前記リアホイールハウス上部と車室フロア部とを略車体上下方向に連結するホイールハウスガセットと、を備え、
前記ストライカレインが、前記リアホイールハウス上部及び/又はその近傍に配設されていることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項6】
前記ホイールハウスガセットは、略車幅方向に延びており、左右の前記リアホイールハウスは、前記ホイールハウスガセットにより相互に連結されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の車両の側部車体構造。
【請求項7】
前記サイドピラーの車体後方において、車体側壁部にサイドウィンドウ用開口部を備え、
前記ストライカレインが、前記サイドウィンドウ用開口部の下端縁部と前端縁部とにわたって配設されていることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一に記載の車両の側部車体構造。
【請求項8】
前記シートバックに、シートベルトを巻き取るためのシートベルトリトラクタが配設されていることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか一に記載の車両の側部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−193047(P2006−193047A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6589(P2005−6589)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】