説明

車両の制御装置

【課題】 バッテリやキャパシタ等の蓄電機構を1つしか搭載していない車両においても、エンジンの停止時にジェネレータにより発電された電力でバッテリを充電する。
【解決手段】 MG_ECU300は、エンジンが運転中であって(S100にてYES)、エンジンに対する停止要求やエンジンが停止処理中であると(S110)、昇圧コンバータが昇圧動作から降圧動作に変更されないようにして平滑コンデンサから電荷がバッテリに供給されない状態とし、エンジンによりジェネレータを作動させて発電された電力をバッテリに供給するようにしてエンジンを停止させるために、昇圧コンバータへの降圧許可信号をオフにするステップ(S120)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータにより駆動される車両の制御装置に関し、特に、変圧機構(昇圧および降圧)を有する車両の停止時における制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の機関を用いることが考えられる。)と電気モータとを組合せたハイブリッドシステムと呼ばれるパワートレインを搭載した車両が開発され、実用化されている。このような車両においては、運転者のアクセル操作量に関係なく、エンジンによる運転と電気モータとによる運転とが自動的に切換えられて、最も効率が良くなるように制御される。たとえば、エンジンが、定常状態で運転されて二次電池(バッテリ)を充電する発電機を回すために運転される場合、あるいは二次電池の充電量などに応じて走行中に間欠的に運転される場合などは、運転者によるアクセルの操作量とは無関係にエンジンの運転および停止を繰返す。つまりエンジンと電気モータとをそれぞれ単独、または協同して動作させることにより、燃料消費向上や排気ガスを大幅に抑制することが可能になる。
【0003】
このように、ハイブリッド車両のエンジンは、走行中においても間欠駆動が行なわれることになり、頻繁に停止制御が行なわれるようになる。エンジンの停止制御を行なう場合、エンジンの回転エネルギ(運動エネルギ)をジェネレータに与えて、ジェネレータにより電気エネルギに変換して、車両を停止させることがある。このときに発電された電力は二次電池を充電するために用いられる。特開平8−308025号公報(特許文献1)は、このような車両の制御に関する電気自動車電源制御装置を開示する。
【0004】
この電気自動車電源制御装置は、加速時には車両駆動源として動作し減速時には発電機として動作するモータと、第1蓄電手段と、少ない電力損失で急速充放電が可能な第2蓄電手段と、第2蓄電手段に降圧側が接続されたコンバータと、コンバータの動作を制御するコンバータ制御装置と、交流側がモータに接続され直流側が第1蓄電手段およびコンバータの昇圧側に接続されたインバータとを備え、加速時には第1蓄電手段および第2蓄電手段からモータに給電し、減速時にはモータから電力を回生する電気自動車電源制御装置であって、インバータ直流電流の大きさおよび方向を検出する電流検出装置と、コンバータ電流を検出する電流検出抵抗とを設け、電流検出装置からの検出信号により加速時か回生時かを判定するとともに、加速時においては、インバータ直流電流が予め定めてある規定放電電流以下の場合にはコンバータをオフし、規定放電電流を超える場合には超える分を第2蓄電手段より供給するようコンバータを昇圧制御し、減速時においては、インバータ直流電流が予め定めてある規定充電電流以下の場合にはコンバータをオフし、規定充電電流を超える場合には超える分を第2蓄電手段へ流すようコンバータを降圧制御する。
【0005】
この電気自動車電源制御装置によると、車両加速時にモータへ給電する場合、必要とする電流がバッテリ等の第1蓄電手段について予め決めてある規定放電電流以下であれば、第1蓄電手段からのみ給電する。それ以上の電流を必要とする時には、規定放電電流を超える分だけ第2蓄電手段からコンバータを介して供給する。これにより、第1蓄電手段の放電電流がより一層平準化されるとともに、モータが必要とする電力が減少したとしても、第2蓄電手段から第1蓄電手段への充電が起こることがない。また、モータから電力を回生する場合、回生電流であるインバータの直流電流が、第1蓄電手段について予め定めてある規定充電電流以下であれば、第1蓄電手段にのみ流す。それ以上であれば、規定充電電流を超える分だけコンバータを介して第2蓄電手段へ流す。これにより、第1蓄電手段への充電電流がより一層平準化されるとともに、回生電流が減少したとしても、第1蓄電手段から第2蓄電手段への充電が起こることがない。
【特許文献1】特開平8−308025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された電気自動車電源制御装置においては、バッテリ等の第1蓄電手段の他にコンバータを介して設けられたコンデンサ等の第2蓄電手段を備えなければならない。すなわち、2つ(2種類)以上の蓄電機構が必要になる。このため、バッテリしか搭載しない車両においては適用できない。そのため、バッテリやキャパシタ等の蓄電機構を1つしか搭載していない車両において(たとえばバッテリしか有さない車両)、バッテリが充電状態であって満充電状態に近いと、エンジンの停止時にジェネレータで発電された電力をバッテリに給電するとバッテリが過充電状態になる。このようなことによりバッテリが劣化してその寿命が短くなることもある。また、瞬時的に電流および電圧の変化が大きくなり許容値を超過することもある。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、バッテリやキャパシタ等の蓄電機構を1つしか搭載していない車両においても、車両の停止時に発電された電力を蓄電機構に供給して充電できる車両の制御装置を提供することである。また、別の目的は、車両の駆動のために電気機器を作動させる電力を蓄電機構から十分に供給できる車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る車両の制御装置は、蓄電機構の電力を用いて電気機器を作動させることにより駆動される車両を制御する。この制御装置は、蓄電機構の電力を昇降圧するための昇降圧手段と、昇降圧手段を制御するための制御手段とを含む。昇降圧手段は、昇圧動作から降圧動作に変更されると、昇降圧手段の内部に蓄えられた電力が蓄電機構へ供給される。制御手段は、電気機器を作動させて発電された電力が蓄電機構へ供給される時期と、降圧動作への変更時期とを同期させないように、昇降圧手段を制御するための手段を含む。
【0009】
第1の発明によると、蓄電機構である二次電池やキャパシタなどの蓄えられた電力の電圧が昇降圧手段であるDC/DCコンバータなどにより昇圧されたり降圧されたりする。このDC/DCコンバータには、平滑コンデンサと呼ばれる昇圧時に電荷を貯めておくコンデンサがあり、昇圧動作から降圧動作に切り換わると、この平滑コンデンサに貯められた電荷が放出され蓄電機構に戻される。このような動作の切換えが行なわれ蓄電機構が満充電状態や満充電状態に近い状態になっていると、電気機器であるジェネレータを作動させて発電された電力を蓄えることができなくなる。すなわち、蓄電機構が過充電状態になり蓄電機構を劣化させる可能性があったり瞬時的に電流および電圧の変化が大きくなり許容値を超過することがあったりするため、充電が禁止されることがある。このようなことを回避すべく、制御手段は、ジェネレータにより発電された電力が蓄電機構へ供給される時期と、DC/DCコンバータの降圧動作への変更時期とを同期させないようにDC/DCコンバータを制御する。たとえば、ジェネレータにより発電されているときや、発電される予定があるときには、DC/DCコンバータの降圧動作への切換えを禁止する。このようにすると、ジェネレータにより発電された電力が蓄電機構へ供給される時期と、DC/DCコンバータの降圧動作への変更時期とが重ならなくなり、ジェネレータにより発電された電力が蓄電機構へ供給されて充電される。その結果、バッテリやキャパシタ等の蓄電機構を1つしか搭載していない車両においても、車両の停止時に発電された電力を蓄電機構に給電できる車両の制御装置を提供することができる。
【0010】
第2の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、電気機器を作動させて発電された電力が蓄電機構へ供給される時期は、エンジンの停止時またはエンジンの回転数の低下時に、エンジンによりジェネレータが作動されて電力が発電される時期である。
【0011】
第2の発明によると、車両には、車両の駆動源としてエンジンが搭載され、電気機器はジェネレータであって、制御手段は、ジェネレータにより発電された電力が蓄電機構へ供給される時期と、DC/DCコンバータの降圧動作への変更時期とを同期させないようにDC/DCコンバータを制御する。たとえば、エンジンが停止される前などにおいては、ジェネレータにより発電される予定があるので、DC/DCコンバータの降圧動作への切換えを禁止する。発電時期を、DC/DCコンバータの降圧動作への変更時期から避けることができるので、ジェネレータにより発電された電力を用いて蓄電機構を充電することができる。
【0012】
第3の発明に係る車両の制御装置においては、第1または第2の発明の構成に加えて、昇降圧手段は、DC/DCコンバータであって、昇圧動作から降圧動作に変更されると、DC/DCコンバータの平滑コンデンサに蓄えられた電力が蓄電機構へ供給されるものである。
【0013】
第3の発明によると、DC/DCコンバータが、昇圧動作から降圧動作に変更されると、平滑コンデンサから電力(電荷)が蓄電機構に供給されてしまうが、ジェネレータで発電しているときにはこのような変更を行なわないようにするので、ジェネレータでの発電電力を用いて蓄電機構を充電することができる。
【0014】
第4の発明に係る車両の制御装置は、蓄電機構の電力を用いて電気機器を作動させることにより駆動される車両を制御する。この制御装置は、蓄電機構の電力を昇降圧するための昇降圧手段と、昇降圧手段を制御するための制御手段とを含む。昇降圧手段は、降圧動作から昇圧動作に変更されると、昇降圧手段の内部に蓄えられる電力が蓄電機構から供給される。制御手段は、電気機器を作動させるための電力が蓄電機構から電気機器へ供給される時期と、昇圧動作への変更時期とを同期させないように、昇降圧手段を制御するための手段を含む。
【0015】
第4の発明によると、蓄電機構である二次電池やキャパシタなどの蓄えられた電力の電圧が昇降圧手段であるDC/DCコンバータなどにより昇圧されたり降圧されたりする。このDC/DCコンバータには、平滑コンデンサと呼ばれる昇圧時に電荷を貯めておくコンデンサがあり、降圧動作から昇圧動作に切り換わると、この平滑コンデンサに電荷を貯めるための電力が蓄電機構から与えられる。このような動作の切換えが行なわれ蓄電機構から放電されて状態になっていると、電気機器であるモータを作動させて車両を走行させることができなくなる。すなわち、蓄電機構が過放電状態になり蓄電機構を劣化させる可能性があったり瞬時的に電流および電圧の変化が大きくなり許容値を超過することがあったりするため、放電が制限されることがある。このようなことを回避すべく、制御手段は、モータに蓄電機構から電力が供給される時期と、DC/DCコンバータの昇圧動作への変更時期とを同期させないようにDC/DCコンバータを制御する。たとえば、モータにより車両を駆動しているときや、モータにより車両が駆動される予定があるときには、DC/DCコンバータの昇圧動作への切換えを禁止する。このようにすると、モータへ供給される電力が蓄電機構から供給される時期と、DC/DCコンバータの昇圧動作への変更時期とが重ならなくなり、モータに十分な電力が蓄電機構から供給できる。その結果、バッテリやキャパシタ等の蓄電機構を1つしか搭載していない車両においても、車両の駆動のために電気機器を作動させる電力を蓄電機構から十分に供給できる車両の制御装置を提供することができる。
【0016】
第5の発明に係る車両の制御装置においては、第4の発明の構成に加えて、電気機器を作動させるための電力が蓄電機構から電気機器へ供給される時期は、電気機器により車両が駆動される時に、電気機器が作動されて電力が消費される時期である。
【0017】
第5の発明によると、制御手段は、モータへ電力が蓄電機構へ供給される時期と、DC/DCコンバータの昇圧動作への変更時期とを同期させないようにDC/DCコンバータを制御する。たとえば、エンジンをアシストするためにモータを駆動するときなどにおいては、モータへ放電される予定があるので、DC/DCコンバータの昇圧動作への切換えを禁止する。放電時期を、DC/DCコンバータの昇圧動作への変更時期から避けることができるので、モータへ十分な電力を供給することができる。
【0018】
第6の発明に係る車両の制御装置においては、第4または第5の発明の構成に加えて、昇降圧手段は、DC/DCコンバータであって、降圧動作から昇圧動作に変更されると、DC/DCコンバータの平滑コンデンサに蓄えられる電力が蓄電機構から供給されるものである。
【0019】
第6の発明によると、DC/DCコンバータが、降圧動作から昇圧動作に変更されると、平滑コンデンサに電力(電荷)が蓄電機構から供給されてしまうが、モータで電力を消費しているときにはこのような変更を行なわないようにするので、モータへ十分な電力を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0021】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の制御ブロック図を説明する。なお、本発明は図1に示すハイブリッド車両に限定されない。他の態様を有するハイブリッド車両であってもよい。また、電気自動車であっても、燃料電池車であってもよい。
【0022】
ハイブリッド車両は、駆動源としての、たとえばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関(以下、単にエンジンという)120と、モータジェネレータ(MG)140を含む。なお、図1においては、説明の便宜上、モータジェネレータ140を、モータ140Aとジェネレータ140B(あるいはモータジェネレータ140B)と表現するが、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、モータ140Aがジェネレータとして機能したり、ジェネレータ140Bがモータとして機能したりする。
【0023】
ハイブリッド車両には、この他に、エンジン120やモータジェネレータ140で発生した動力を駆動輪160に伝達したり、駆動輪160の駆動をエンジン120やモータジェネレータ140に伝達する減速機180と、エンジン120の発生する動力を駆動輪160とジェネレータ140Bとの2経路に分配する動力分割機構(たとえば、遊星歯車機構)200と、モータジェネレータ140を駆動するための電力を充電する走行用バッテリ220と、走行用バッテリ220の直流とモータ140Aおよびジェネレータ140Bの交流とを変換しながら電流制御を行なうインバータ240と、走行用バッテリ220の充放電状態を管理制御するバッテリ制御ユニット(以下、バッテリECU(Electronic Control Unit)という)260と、エンジン120の動作状態を制御するエンジンECU280と、ハイブリッド車両の状態に応じてモータジェネレータ140およびバッテリECU260、インバータ240等を制御するMG_ECU300と、バッテリECU260、エンジンECU280およびMG_ECU300等を相互に管理制御して、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体を制御するHV_ECU320等を含む。
【0024】
本実施の形態においては、走行用バッテリ220とインバータ240との間には昇圧コンバータ242が設けられている。これは、走行用バッテリ220の定格電圧が、モータ140Aやモータジェネレータ140Bの定格電圧よりも低いので、走行用バッテリ220からモータ140Aやモータジェネレータ140Bに電力を供給するときには、昇圧コンバータ242で電力を昇圧する。この昇圧コンバータ242には平滑コンデンサが内蔵されており、昇圧コンバータ242が昇圧動作から降圧動作に変更されると、この平滑コンデンサに蓄えられていた電荷が走行用バッテリ220に供給される。
【0025】
なお、図1においては、各ECUを別構成しているが、2個以上のECUを統合したECUとして構成してもよい(たとえば、図1に、点線で示すように、MG_ECU300とHV_ECU320とを統合したECUとすることがその一例である)。
【0026】
動力分割機構200は、エンジン120の動力を、駆動輪160とモータジェネレータ140Bとの両方に振り分けるために、遊星歯車機構(プラネタリーギヤ)が使用される。モータジェネレータ140Bの回転数を制御することにより、動力分割機構200は無段変速機としても機能する。エンジン120の回転力はプラネタリーキャリア(C)に入力され、それがサンギヤ(S)によってモータジェネレータ140Bに、リングギヤ(R)によってモータおよび出力軸(駆動輪160側)に伝えられる。回転中のエンジン120を停止させる時には、エンジン120が回転しているので、この回転の運動エネルギをモータジェネレータ140Bで電気エネルギに変換して、エンジン120の回転数を低下させる。
【0027】
図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、発進時や低速走行時等であってエンジン120の効率が悪い場合には、モータジェネレータ140のモータ140Aのみによりハイブリッド車両の走行を行ない、通常走行時には、たとえば動力分割機構200によりエンジン120の動力を2経路に分け、一方で駆動輪160の直接駆動を行ない、他方でジェネレータ140Bを駆動して発電を行なう。この時、発生する電力でモータ140Aを駆動して駆動輪160の駆動補助を行なう。また、高速走行時には、さらに走行用バッテリ220からの電力をモータ140Aに供給してモータ140Aの出力を増大させて駆動輪160に対して駆動力の追加を行なう。一方、減速時には、駆動輪160により従動するモータ140Aがジェネレータとして機能して回生発電を行ない、回収した電力を走行用バッテリ220に蓄える。なお、走行用バッテリ220の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン120の出力を増加してジェネレータ140Bによる発電量を増やして走行用バッテリ220に対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時でも必要に応じてエンジン120の駆動量を増加する制御を行なう。たとえば、上述のように走行用バッテリ220の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン120の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
【0028】
本実施の形態における技術的特徴は、エンジン120に対するエンジン停止要求があった場合や、エンジン120が停止処理中である場合には、モータジェネレータ140Bを利用して、エンジン120の運動エネルギを電気エネルギに変換して、発生した電力を用いて走行用バッテリ220を充電する。このときに、昇圧コンバータ242が昇圧動作から降圧動作に入ると平滑コンデンサに蓄えられていた電荷が走行用バッテリ220に供給されてしまう。平滑コンデンサに蓄えられていた電荷が走行用バッテリ220に供給されて走行用バッテリ220が充電され満充電状態あるいは満充電状態に近い状態になると、モータジェネレータ140Bを用いて発生させた電力により走行用バッテリ220を充電できない(過充電状態になる)。また、瞬時的に電流および電圧の変化が大きくなり許容値を超過することがある。このため、このような場合には、昇圧コンバータ242の平滑コンデンサから走行用バッテリ220へ電力が供給されないように、昇圧動作から降圧動作への変更を禁止する。
【0029】
図2を参照して、MG_ECU300で実行されるエンジン停止処理の制御構造を説明する。
【0030】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、MG_ECU300は、エンジン120が運転中であるか否かを判断する。この判断は、たとえば、HV_ECU320を介してエンジンECU280からMG_ECU300に入力されるエンジン回転数センサが検知した信号に基づいて行なわれる。エンジン120が運転中であると(S100にてYES)、処理はS110へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
【0031】
S110にて、MG_ECU300は、エンジン120に対してエンジン停止要求があるか、または、エンジン120が停止処理中であるか否かを判断する。この判断も、S100における判断と同じように、HV_ECU320を介してエンジンECU280からMG_ECU300に入力された各種信号に基づいて行なわれる。エンジン120に対してエンジン停止要求があるか、または、エンジン120が停止処理中であると(S110にてYES)、処理はS120へ移される。もしそうでないと(S110にてNO)、処理はS130へ移される。
【0032】
S120にて、MG_ECU300は、昇圧コンバータ242へ出力される降圧許可信号をオフにする。この降圧許可信号がオフにされていると、昇圧コンバータ242は降圧動作に入ることができなくなり、平滑コンデンサに蓄えられた電荷により走行用バッテリ220が充電されることがない。
【0033】
S130にて、MG_ECU300は、昇圧コンバータ242へ出力される降圧許可信号をオンにする。この降圧許可信号がオンにされると、昇圧コンバータ242は降圧動作に入ることができるようになる。この降圧動作への動作変更時に、平滑コンデンサに蓄えられた電荷により走行用バッテリ220が充電される。
【0034】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る車両の動作について説明する。
【0035】
ハイブリッド車両の運転者がイグニッションキーをエンジンスタート位置にして、エンジンの始動を指示して、エンジン120が運転中となったり、HV_ECU320の指示によりエンジン120が運転中になったりする(S100にてYES)。たとえば、エンジン120を停止させてモータ140Aのみで走行中に走行用バッテリ220のSOC(States Of Charge)が低下して充電しなければならなくなった場合には、エンジン120を運転させてエンジン120によりジェネレータ140Bを回転させて発電して走行用バッテリ220を充電するためにHV_ECU320の指示によりエンジン120が運転中になる。
【0036】
エンジン120の運転中に、エンジン停止要求があったり、エンジン120の停止処理中であったりすると(S110にてYES)、昇圧コンバータ242に降圧許可信号がオフにされて昇圧コンバータ242は降圧動作に入ることができなくなり、平滑コンデンサに蓄えられた電荷はそのままの状態になる。そのため、エンジン120を停止させるためにジェネレータ140Bにより発電された電力が走行用バッテリ220を充電できる。
【0037】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、ハイブリッド車両において、ジェネレータを用いて発電させることによりエンジンを停止させる場合に、バッテリやキャパシタ等の蓄電機構を1つしか搭載していない車両においても、車両の停止時に発電された電力を蓄電機構に給電できる車両の制御装置を提供することができる。
【0038】
なお、上述した態様とは逆の態様も考えられる。すなわち、ジェネレータ140Bが走行用バッテリ220の電力を消費するタイミングと、昇圧コンバータ242が降圧動作から昇圧動作へ変更されるタイミングとが重なってしまうと、走行用バッテリ220から昇圧コンバータ242の平滑コンデンサへ電力が供給されるとともに、走行用バッテリ220からジェネレータ140Bへ電力が供給される。このときに、過放電状態にならないように、また、瞬時的に電流および電圧の変化が大きくなり許容値を超過することがないように、昇圧コンバータ242において、降圧動作から昇圧動作への変更を禁止するように制御する。このようにすると、過放電や瞬時的に電流および電圧の大きな変化を防止することができる。
【0039】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の制御ブロック図である。
【図2】MG_ECUで実行されるエンジン停止処理の制御構造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
120 エンジン、140 モータジェネレータ、140A モータ、140B ジェネレータ、160 駆動輪、180 減速機、200 動力分割機構、220 走行用バッテリ、240 インバータ、242 昇圧コンバータ、260 バッテリECU、280 エンジンECU、300 MG_ECU、320 HV_ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電機構の電力を用いて電気機器を作動させることにより駆動される車両の制御装置であって、
蓄電機構の電力を昇降圧するための昇降圧手段と、
前記昇降圧手段を制御するための制御手段とを含み、
前記昇降圧手段は、昇圧動作から降圧動作に変更されると、前記昇降圧手段の内部に蓄えられた電力が前記蓄電機構へ供給され、
前記制御手段は、前記電気機器を作動させて発電された電力が前記蓄電機構へ供給される時期と、前記降圧動作への変更時期とを同期させないように、前記昇降圧手段を制御するための手段を含む、車両の制御装置。
【請求項2】
前記車両には、車両の駆動源としてエンジンが搭載され、
前記電気機器はジェネレータであって、
前記電気機器を作動させて発電された電力が前記蓄電機構へ供給される時期は、前記エンジンの停止時または前記エンジンの回転数の低下時に、前記エンジンにより前記ジェネレータが作動されて電力が発電される時期である、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記昇降圧手段は、DC/DCコンバータであって、前記昇圧動作から前記降圧動作に変更されると、前記DC/DCコンバータの平滑コンデンサに蓄えられた電力が前記蓄電機構へ供給される、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
蓄電機構の電力を用いて電気機器を作動させることにより駆動される車両の制御装置であって、
蓄電機構の電力を昇降圧するための昇降圧手段と、
前記昇降圧手段を制御するための制御手段とを含み、
前記昇降圧手段は、降圧動作から昇圧動作に変更されると、前記昇降圧手段の内部に蓄えられる電力が前記蓄電機構から供給され、
前記制御手段は、前記電気機器を作動させるための電力が前記蓄電機構から前記電気機器へ供給される時期と、前記昇圧動作への変更時期とを同期させないように、前記昇降圧手段を制御するための手段を含む、車両の制御装置。
【請求項5】
前記電気機器を作動させるための電力が前記蓄電機構から前記電気機器へ供給される時期は、前記電気機器により車両が駆動される時に、前記電気機器が作動されて電力が消費される時期である、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記昇降圧手段は、DC/DCコンバータであって、降圧動作から昇圧動作に変更されると、前記DC/DCコンバータの平滑コンデンサに蓄えられる電力が前記蓄電機構から供給される、請求項4または5に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−50773(P2006−50773A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227907(P2004−227907)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】