車両の前部車体構造
【課題】簡単なかつコンパクトな構成で車体の剛性を効果的に向上させる。
【解決手段】車室前部を仕切るダッシュパネル1と、このダッシュパネルから前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム2と、上記ダッシュパネル1に連続して車室の下面を形成するフロアパネル3と、このフロアパネル3の車幅方向中央部分を車室内側へ膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部4とを備えた車両の前部車体構造であって、上記ダッシュパネル1の車室内側壁面には車幅方向に伸びるダッシュクロスメンバ10が設けられ、このダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11が上記トンネル部4の上面に沿うように配設されるとともに、その左右両側方部12が上記フロントサイドフレーム2の後端部と対向するように配設された。
【解決手段】車室前部を仕切るダッシュパネル1と、このダッシュパネルから前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム2と、上記ダッシュパネル1に連続して車室の下面を形成するフロアパネル3と、このフロアパネル3の車幅方向中央部分を車室内側へ膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部4とを備えた車両の前部車体構造であって、上記ダッシュパネル1の車室内側壁面には車幅方向に伸びるダッシュクロスメンバ10が設けられ、このダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11が上記トンネル部4の上面に沿うように配設されるとともに、その左右両側方部12が上記フロントサイドフレーム2の後端部と対向するように配設された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室前部を仕切るダッシュパネルと、このダッシュパネルから前方に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、上記ダッシュパネルに連続して車室の下面を形成するフロアパネルと、その車幅方向中央部に設置されたトンネル部とを備えた車両の前部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車両の正突時等に、ダッシュパネルの後退を抑制すること等を目的として、上下方向に延び車室の前端壁を構成するダッシュパネルと、このダッシュパネルに連続して後方に延びるフロアパネルとを備え、上記フロアパネルの略中央部に上方へ突出して車両の前後方向に延びるトンネル部が設けられた車両の前部車体構造において、上記ダッシュパネルには一端部が上記トンネル部の側面に接合され、中間部がダッシュパネルに沿って車幅方向に延び、かつ他端部がヒンジピラーに接続された左右一対のダッシュクロスメンバを設けることが行われている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、車体重量の増加を抑制しつつ、車体の剛性を大きくすることを目的として、車体前部で車幅方向中心線を挟んで左右に設けたフロントサイドフレームと、車体後部で車幅方向中心線を挟んで左右に設けたリヤサイドフレームと、車体を側面から見たときにフロントサイドフレームとリヤサイドフレームよりも低く車幅方向中心線を挟んで左右に設けたフロアフレームまたはサイドシルとをそれぞれ連結し、フロントサイドフレームとリヤサイドフレームとの間で車幅方向中心線に沿ってフロアフレームまたはサイドシルよりも上方に突出する下開放コ字状断面構造のフロアトンネルを設けた車体構造において、前記フロアトンネルの上部に閉断面構造の補助フレームを設け、この補助フレームを前記フロントサイドフレームと前記リヤサイドフレームとに閉断面構造の延長部により接合することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−362419号公報
【特許文献2】特開2000−238667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されているように、ダッシュパネルに沿って車幅方向に延びる左右一対のダッシュクロスメンバを設け、その両側端部をそれぞれトンネル部の側面およびヒンジピラーに接続するように構成した場合には、車両の正突時等に、ダッシュパネルに入力される荷重をトンネル部とヒンジピラーとに分散させて支持することにより、上記ダッシュパネルの後退が後退するのをある程度は抑制できるという利点がある。しかし、この特許文献1に開示された車両の前部車体構造では、左右のクロスメンバがそれぞれ独立して設置されているため、車両の衝突時に、左右何れか一方のフロントサイドフレームを介して入力された衝突エネルギーを効率よく車体全体に伝達することができず、車体の剛性向上効果が不充分であるという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2に開示されているように、フロアトンネルの上部に設けられた閉断面構造の補助フレームを閉断面構造の延長部によりフロントサイドフレームおよびリヤサイドフレームにそれぞれ接続するように構成した場合には、車両の前突時に上記フロントサイドフレームの上部に入力された衝突エネルギーを、このフロントサイドフレームの上部と概ね同一高さにある補助フレームからリヤサイドフレームに伝達することにより、これらの各部材で上記衝突エネルギーを吸収できるという利点がある。しかし、この特許文献2に開示された車両の車体構造では、上記閉断面構造の延長部がエンジンルーム内に配設されることにより、エンジン本体等の設置スペースが狭められるため、車両をコンパクト化することが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単なかつコンパクトな構成で車体の剛性を効果的に向上させることができる車両の前部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車室前部を仕切るダッシュパネルと、このダッシュパネルから前方に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、上記ダッシュパネルに連続して車室の下面を形成するフロアパネルと、このフロアパネルの車幅方向中央部分を車室内側へ膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部とを備えた車両の前部車体構造であって、上記ダッシュパネルの車室内側壁面には車幅方向に伸びるダッシュクロスメンバが設けられ、このダッシュクロスメンバの車幅方向中央部が上記トンネル部の上面に沿うように配設されるとともに、その左右両側方部が上記フロントサイドフレームの後端部と対向するように配設されたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の前部車体構造において、上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部がトンネル部に沿って上方へ膨出するように屈曲形成されたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の前部車体構造において、上記トンネル部の上面に沿って車体の前後方向に延びるトンネルメンバを有し、このトンネルメンバに上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部が接続されたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造において、上記ダッシュクロスメンバとフロントサイドフレームとの接続部に対応した車室内側部位には、乗員が操作するペダル装置が配設されたものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造において、上記ダッシュクロスメンバの左右両側方部の少なくとも一部には、フロントサイドフレームの後端部内に入り込むように前方へ凹入した凹入部が設けられるとともに、この凹入部に対応して車体の前方側に突出する突出部が上記ダッシュパネルに形成されたものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、上記請求項5に記載の車両の前部車体構造において、上記ペダル装置はブレーキペダルを有し、このブレーキペダルの設置部に対応した位置に上記突出部が配設されるとともに、上記ブレーキペダルがダッシュクロスメンバに干渉するのを回避し得るように、上記凹入部の凹入量が設定されたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部を上記トンネル部の上面に沿わせるように配設するとともに、その左右両側方部を上記フロントサイドフレームの後端部と対向させるように配設したため、車両の正突時等に、上記フロントサイドフレームの後端部と対向する上記左右両側方部の何れか一方に入力された衝突エネルギーを、フロアパネルの車幅方向中央部おいて車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部から上記左右両側方部の他方へと伝達することにより、効率よく車体全体に分散させて支持することができる。したがって、上記フロントサイドフレームに入力された衝突エネルギーを上記トンネル部に伝達して支持する補強部材をエンジンルーム内に配設した場合のように、エンジン本体等の設置スペースが狭められる等の問題を生じることなく、車体の剛性を効果的に向上できるという利点がある。
【0015】
請求項2に係る発明では、上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部をトンネル部に沿って上方に膨出させるように屈曲形成したため、上記フロントサイドフレームの設置高さとトンネル部の上面高さとが異なっている場合においても、車両の正突時等に、上記フロントサイドフレームの後端部と対向する上記左右両側方部の何れか一方に入力された衝突エネルギーを、フロアパネルの車幅方向中央部おいて車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部から上記左右両側方部の他方へと確実に伝達して、効率よく車体全体に分散させて支持できるという利点がある。
【0016】
請求項3に係る発明では、上記トンネル部に沿って車体の前後方向に延びるように設置されたトンネルメンバの上面に上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部を接続したため、車両の正突時等に上記フロントサイドフレームからダッシュクロスメンバの左右両側方部を介して上記トンネル部およびトンネルメンバに伝達された衝突エネルギーを効果的に支持して、これを吸収できるという利点がある。
【0017】
請求項4に係る発明では、上記ダッシュクロスメンバとフロントサイドフレームとの接続部に対応した車室内側部位に、乗員が操作するペダル装置を配設し、このペダル装置の設置部を上記ダッシュクロスメンバにより補強するように構成したため、簡単な構成で安定したペダル操作が可能となるという利点がある。
【0018】
請求項5に係る発明では、上記ダッシュクロスメンバの左右両側方部の少なくとも一部に、フロントサイドフレームの後端部内に入り込むように前方へ凹入した凹入部を設けるとともに、この凹入部に対応して車体の前方側に突出する突出部を上記ダッシュパネルに形成したため、上記ダッシュクロスメンバの左右両側方部が車室内側に突出することに起因して車室内スペースが狭められるのを防止しつつ、上記ダッシュクロスメンバとダッシュパネルとの間に車幅方向に延びる閉断面を形成してその剛性を充分に確保できるという利点がある。
【0019】
請求項6に係る発明では、上記ペダル装置を構成するブレーキペダルの設置部に対応した位置に上記凹入部を配設するとともに、ブレーキペダルがダッシュクロスメンバに干渉するのを回避し得るように、上記凹入部の凹入量を設定したため、ダッシュパネルの車室内側面に配設された上記ダッシュクロスメンバとの干渉が生じることに起因してブレーキペダルの操作範囲が狭められる等の弊害を生じることなく、車両の正突時等に、上記フロントサイドフレームの後端部からダッシュクロスメンバ側方部に入力された衝突エネルギーを、効率よく車体全体に分散させて支持できる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車両の前部車体構造の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】上記前部車体構造の具体的構成を示す平面図である。
【図3】車体フレームの具体的構造を示す平面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】前部フレームの具体的構成を示す平面図である。
【図6】前部フレームの具体的構成を示す側面断面図である。
【図7】前部フレームの具体的構成を示す正面図である。
【図8】図3のVIII−VIII線断面図である。
【図9】トルクボックスの設置構造を示す側面断面図である。
【図10】本発明に係る車両の前部車体構造の第2実施形態を示す側面断面図である。
【図11】上記前部車体構造の具体的構成を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図4は、本発明に係る車両の前部車体構造の第1実施形態を示している。この下部車体構造は、車室前部とエンジンルームとを仕切るように設置されたダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の設置部から車両の前方側へ延びる左右一対のフロントサイドフレーム2,2と、上記ダッシュパネル1の下端部に連続して車室の底面部を形成するフロアパネル3と、このフロアパネル3の車幅方向中央部を車室内側(上方)に膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部4とを有し、このトンネル部4の上面左右には、閉断面形状のトンネルメンバ5,5が車体の前後方向に延びるように設置されている(図4参照)。
【0022】
また、上記ダッシュパネル1の車幅方向中央部には、車体の後方側へ凹入する凹入部6が形成されている。上記エンジンルームの後方部には、縦置き式に配設されたロータリエンジン等からなるエンジン本体7と、その後方に接続されたトランスミッション8とを有するパワートレインが配設されている。そして、上記エンジン本体7の後部が、ダッシュパネル1に形成された凹入部6内に配設されるとともに、上記トランスミッション8と、これに接続された図外のプロペラシャフトおよびパワープラントフレームとが上記トンネル部4内に配設されている。この構成により、重量物であるエンジン本体7等を可及的に車両の後方側に位置させて、車両の重心を車体の中心部に近付けることを可能とし、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性および走行安定性を向上させ得るようになっている。
【0023】
上記ダッシュパネル1の車室内側壁面(背面)には、車幅方向に伸びるダッシュクロスメンバ10が設けられ、このダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11が上記トンネル部4の上面、具体的にはトンネルメンバ5,5の上面に沿うように設置されて接合されるとともに、その左右両側方部12,12が上記フロントサイドフレーム2の後端部と対向するように、上記両側方部12,12の上下位置が設定されている。
【0024】
そして、上記ダッシュクロスメンバ10は、一対の取付フランジ部10aを有する断面ハット状部材からなり、その左右両側方部12,12の取付フランジ部10aがダッシュパネル1の背面に接合されることにより、ダッシュパネル1との間に車幅方向に延びる閉断面を形成している。また、上記ダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11は、図4に示すように、背面視でトンネル部4の側面および上面に沿って上方へ膨出するように屈曲形成されている。
【0025】
上記フロントサイドフレーム2は、前輪14aおよびこれを支持するフロントサスペンション14bの設置スペースを確保するために、車両の側壁面から所定距離だけ車幅方向内方側に位置する部位において、車両の前方側へ略直線状に延びるように設置された前方部材2aと、側面視でその後端部から後下がりに傾斜しつつ車体の後方側へ延びるように設置された後方部材2bとを備えている。また、上記フロントサイドフレーム2の前方部材13には、フロントサスペンション14bを支持するフロントサスペンションクロスメンバ15が取り付けられている。
【0026】
上記フロントサスペンションクロスメンバ15は、図5〜図7に示すように、車幅方向に延びるクロスメンバ本体16と、その左右両端部から後方側に延びる下部メンバ17と、上記クロスメンバ本体16の左右両端部から上方に延びる縦メンバ18と、その上端部から車両の前後方向に延びる上部メンバ19により構成され、この上部メンバ19の上端部が上記前方部材13の下面にボルト止めされる等により固定されている。そして、上記フロントサスペンションクロスメンバ15の下部メンバ17にフロントサスペンション14bのロアアーム20が取り付けられるとともに、上部メンバ19にフロントサスペンション14bのアッパアーム21が取り付けられるように構成されている。
【0027】
上記左右のフロントサイドフレーム2,2は、その前端部同士がフロントクロスメンバ22を介して互いに連結されている。このフロントクロスメンバ22に対する上記フロントサイドフレーム2の取付部よりもやや下方側かつ内方側には、上記フロントサイドフレーム2の前端部とフロントサスペンションクロスメンバ15とを接続するフロントサイドサブフレーム23の前端部が取り付けられている。
【0028】
上記フロントサイドサブフレーム23は、フロントクロスメンバ30に対する取付部から側面視で後下がりに傾斜しつつ、平面視でフロントサイドフレーム2の車幅方向内方側面に沿って後方側に延びる前方部24と、その後端部から平面視で車幅方向外方側に向けて傾斜しつつ、フロントサイドフレーム2の下面に沿って後方側に延びる後方部25とを有している。そして、上記フロントサイドサブフレーム23の後方部25が上記アッパアーム21の取付部、つまりフロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19にボルト止めされる等により接続されるようになっている。
【0029】
また、上記フロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19からなるアッパアーム21の取付部には、サブフレームリヤ部材27の前端部がボルト止めされる等により接続されている。このサブフレームリヤ部材27は、側面視で上記フロントサイドサブフレーム23と連続するとともに、前下がりの傾斜状態で設置されることにより、上記フロントサスペンションクロスメンバ15の一部、つまり上記上部メンバ19の後部と、上記ダッシュパネル1の下方部とを接続するように構成されている。
【0030】
上記サブフレームリヤ部材27の後端部は、フロントサイドフレーム2の後端部と上記フロントサスペンションクロスメンバ15の下部メンバ17との間に配設され、これらが取付ボルト29を介して一体に固定されるように構成されている。これにより、上記サブフレームリヤ部材27は、フロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19とダッシュパネル1の下方部とを、上記フロントサイドフレーム2の後端部を介して間接的に接続するようになっている。
【0031】
さらに、上記フロアパネル3の下面には、図3および図4に示すように、フロントサイドフレーム2,2の後端部に連続して車体の前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム31,31が設けられるとともに、このフロアフレーム31の前後方向中間部から、上記トンネル部4に向かって車幅方向内方側に傾斜しつつ車両の後方側へ延びるフロアサブフレーム32が配設されている。また、上記フロアパネル3の車幅方向両側方部には、アウタパネル33aとインナパネル33bとを備えた閉断面形状のサイドシル33がそれぞれ配設され、上記インナパネル33bの上下方向中間部にフロアパネル3の側端フランジ部3aがスポット溶接される等により固定されている。
【0032】
上記フロアフレーム31は、図4に示すように、左右一対の側壁34,34と、その下端部間に設置された底壁部35と、上記側壁34,34の上端部に連設された左右一対の接合フランジ部36,36とにより断面ハット型に形成されている。そして、フロアフレーム31は、上記フロントサイドフレーム2の後端部から車体の後方側へ延びるように設置された状態で、上記接合フランジ部36,36がフロアパネル3の下面にスポット溶接される等により固定されている。また、上記フロアフレーム31は、図3に示す平面視において、その後方部が車幅方向外方側を指向するように傾斜して設置されるとともに、その後端部が、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレーム37,37の前端部および上記サイドシル33の後端部近傍に接続されている。
【0033】
上記リヤサイドフレーム37は、後輪用サスペンション(図示せず)等の設置スペースを確保するために、車両の側壁面から所定距離だけ車幅方向内方側に位置する部位において、車体の後端部から車両の前方側へ略直線状に延びるように設置された後方部38と、その前端部から側面視で前下がりに傾斜しつつ、平面視で前方部が車幅方向外方側を指向するように傾斜して設置された前方部39とからなり、この前方部39の前端部に上記フロアフレーム31およびサイドシル33の後端部が接続されている。また、上記左右のリヤサイドフレーム37,37を互いに連結する前後一対のリヤクロスメンバ40,41が車幅方向に延びるように設置されている。
【0034】
上記フロアサブフレーム32は、フロアフレーム31の前後方向中間部からフロアパネル3の下面に沿って平面視で後方内向きに傾斜しつつ、トンネル部4側へ延びる傾斜部42と、この傾斜部42の後端部から上記トンネル部4に沿って車体の後方側へ延びる後方部43とからなり、このフロアサブフレーム32の後方部43によりトンネル部4の下方部分が補強されるようになっている。また、上記トンネル部4を横切るように下部レインフォースメント44が配設され、その左右両端部がフロアサブフレーム32,32、具体的には、上記左右の後方部43,43にねじ止めされることにより、上記下部レインフォースメント44を介して左右のフロアサブフレーム32,32を相連結されている。
【0035】
上記下部レインフォースメント44は、図8に示すように、所定の強度を有する鋼板材等からなり、その左右両端部に取付ボルト45の挿通孔が形成されている。そして、この挿通孔を貫通した取付ボルト45のねじ軸が、上記フロアサブフレーム32の底壁上面に固着されたナット46に螺着されることにより、上記下部レインフォースメント44がトンネル部4の下方車外側に配設された状態で、着脱可能に取り付けられている。
【0036】
また、上記フロントサイドフレーム2の後端部外側面には、図9に示すように、ダッシュパネル1の下端部に沿って車体の車幅方向外方側に延びるトルクボックス47が設けられ、このトルクボックス47を介して上記サイドシル33の前部とフロントサイドフレーム2の後端部とが連結されている。上記トルクボックス47は、ダッシュパネル1の下方部に沿ってその下方側へ延びる前壁48と、その下端部から上記ダッシュパネル1の下端面との間に所定の間隔を隔てて車両の後方側へ延びる底壁49と、その後端部から上方側へ延びるように設置されて上記ダッシュパネル1の下端部ないしフロアパネル3の下面に接続される後壁50とを有するボックス状部材からなっている。そして、図3に示すように、上記トルクボックス47の後壁50からなる後辺部が、上記サイドシル33に近づくに従い、つまり車幅方向外方側に至るに従って車体の後方側に位置するように傾斜し、かつ上記後壁50の外端部50aがダッシュパネル1の後端を超える位置まで延設されている。
【0037】
上記構成において、車両に前突事故が発生して上記フロントクロスメンバ22に衝突エネルギーが入力されると、この衝突エネルギーは、図6および図9の矢印P1に示すように、上記フロントサイドフレーム2を介してダッシュパネル1に伝達されるとともに、図6の矢印P2に示すように、上記フロントサイドサブフレーム23を介してフロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19に伝達される。このフロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19に伝達された衝突エネルギーは、その一部が矢印P3に示すように、サブフレームリヤ部材27を介してダッシュパネル1の下端部に伝達されるとともに、残りの衝突エネルギーが矢印P4に示すように、フロントサスペンションクロスメンバ15の縦メンバ18および下部メンバ17を介して上記フロントサイドフレーム2の後端部およびダッシュパネル1の下方部に伝達されることにより支持される。
【0038】
また、図6の矢印P1に示すように、フロントサイドフレーム2を介してダッシュパネル1へと直接的に伝達された衝突エネルギーは、その一部が、図3の矢印P5に示すように、上記トルクボックス47を介してサイドシル33に伝達されるとともに、図3の矢印P6に示すように、上記フロントサイドフレーム2の後端部からフロアフレーム31に伝達され、かつ上記衝突エネルギーの残りが、図6の矢印P8に示すように、ダッシュパネル1に固着されたダッシュクロスメンバ10を介してトンネル部4の上方部に伝達される。
【0039】
上記トルクボックス47の後壁50からなる後辺部は、サイドシル33に近づくに従って車体の後方側に位置するように傾斜して設置されている。このため、上記フロントサイドフレーム2からトルクボックス47に入力された衝突エネルギーの伝達方向P5が、トルクボックス47を介して後部外方側へ変換されることにより、上記衝突エネルギーがサイドシル33に対してスムーズに伝達される。そして、このサイドシル33からリヤサイドフレーム37に上記衝突エネルギーが伝達されることにより安定して支持されることになる。
【0040】
また、車両の前突時に、図3の矢印P6に示すように、上記フロントサイドフレーム2からフロアフレーム31に入力された衝突エネルギーは、その一部が矢印P7に示すように、上記フロアサブフレーム32からトンネル部4の下方部分へと伝達されて支持されるとともに、残りの衝突エネルギーが上記フロアフレーム31を介してサイドシル33の後端部側およびリヤサイドフレーム37の前端部に伝達されることにより、安定して支持されるようになっている。そして、上記トンネル部4の下方には、その底部を横切るように下部レインフォースメント44が配設されているため、上記トンネル部4に伝達された衝突エネルギーに応じてトンネル部4の底面が拡開変形し、あるいは収縮変形することを効果的に防止することが可能である。
【0041】
上記のように車室前部とエンジンルームとを仕切るように設置されたダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の設置部から車両の前方側へ延びる左右一対のフロントサイドフレーム2,2と、上記ダッシュパネル1の下端部に連続して車室の底面部を形成するフロアパネル3と、このフロアパネル3の車幅方向中央部分を車室内側に膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部4とを備えた車両の前部車体構造において、上記ダッシュパネル1の車室内側壁面に車幅方向に伸びるダッシュクロスメンバ10を設け、このダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11を上記トンネル部4の上面に沿わせるように配設するとともに、その左右両側方部12,12を上記フロントサイドフレーム2の後端部と対向させるように配設したため、簡単なかつコンパクトな構成で車体の剛性を効果的に向上させることができる。
【0042】
すなわち、上記第1実施形態では、ダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11を背面視でトンネル部4の上面に沿って上方に膨出させるように屈曲形成したため、上記フロントサイドフレーム2の設置高さとトンネル部4の上面高さとが異なっている場合においても、車両の正突時等に、上記ダッシュパネル1を介してフロントサイドフレーム2の後端部と対向する上記左右両側方部12,12の何れか一方に入力された衝突エネルギーを、フロアパネル3の車幅方向中央部おいて車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部4から上記左右両側方部12,12の他方へと伝達することにより、効率よく車体全体に分散させて支持することができる。しかも、上記フロントサイドフレーム2に入力された衝突エネルギーを上記トンネル部4に伝達して支持する補強部材をエンジンルーム内に配設した場合のように、エンジン本体等の設置スペースが狭められる等の問題を生じることがないため、車両を効果的にコンパクト化しつつ、車体の剛性向上効果を充分に得られるという利点がある。
【0043】
また、上記第1実施形態に示すように、上面に沿ってトンネルメンバ5,5が車体の前後方向に延びるように設置されることにより剛性が充分に確保されたトンネル部4に、上記ダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11を接続した構造とした場合には、車両の正突時等に上記フロントサイドフレーム2からダッシュクロスメンバ10の左右両側方部12,12を介して上記トンネル部4およびトンネルメンバ5,5に伝達された衝突エネルギーを効果的に支持して、これを吸収することができる。
【0044】
さらに、上記第1実施形態では、フロントサイドフレーム2に、フロントサスペンション14bを支持するフロントサスペンションクロスメンバ15を取り付けるとともに、上記フロントサイドフレーム2の前端部とフロントサスペンションクロスメンバ15とを接続するフロントサイドサブフレーム23を設けたため、車両の前突時等に入力された衝突エネルギーを車体下部に効率よく伝達し、これを効果的に吸収できる利点がある。
【0045】
すなわち、上記第1実施形態では、左右一対のフロントサイドフレーム2,2を互いに連結するフロントクロスメンバ30を備えた車両において、このフロントクロスメンバ30に上記フロントサイドサブフレーム23の前端部を接続したため、上記フロントクロスメンバ22に入力された前突時等の衝突エネルギーを、上記フロントサイドフレーム2からダッシュパネル1およびフロアフレーム31に向かう成分(P1)と、上記フロントサイドサブフレーム23からフロントサスペンションクロスメンバ15に向かう成分(P2)とに分けて車体の後部に伝達することができる。そして、上記フロントサイドサブフレーム23からフロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19に伝達された衝突エネルギーを、フロントサスペンションクロスメンバ15の縦メンバ18および下部メンバ17を介してダッシュパネル1の下方部およびフロアパネル3へと伝達することにより、上記衝突エネルギーを効果的に車体全体へと分散させて効率よく吸収できるという利点がある。
【0046】
特に、上記第1実施形態に示すように、フロントクロスメンバ30に上記フロントサイドフレーム2およびフロントサイドサブフレーム23の前端部をそれぞれオフセットさせて接続した構成によれば、車両の前突時に上記フロントクロスメンバ30に入力された衝突エネルギーを上記フロントサイドフレーム2およびフロントサイドサブフレーム23の少なくとも一方を介して車体の後部に伝達してこれを確実に支持することができる。しかも、上記フロントサイドフレーム2およびフロントサイドサブフレーム23によりフロントクロスメンバ30を補強して、その剛性を効果的に向上させることがでるため、車両の軽衝突時における車両の損傷を効果的に防止できるという利点がある。
【0047】
また、上記第1実施形態では、フロントサスペンションクロスメンバ15にフロントサスペンション14bのアッパアーム21が取り付けられてなる車両の前部車体構造において、このアッパアーム21の取付部に上記フロントサイドサブフレーム23の後端部を接続した構造としたため、このフロントサイドサブフレーム23により上記アッパアーム21の取付部を効果的に補強することができる。したがって、車両の衝突時における衝突エネルギーの吸収効果と、車両の走行時に車両の繰安性を向上させるという効果とが同時に得られるという利点がある。
【0048】
さらに、上記第1実施形態に示すように、フロントサスペンションクロスメンバ15の一部(上部メンバ19)と、ダッシュパネルの下方部とを接続する上記サブフレームリヤ部材27を設けた構造とした場合には、車両の衝突時に上記フロントサイドサブフレーム23からフロントサスペンションクロスメンバ15に伝達された衝突エネルギーを、上記サブフレームリヤ部材27によりダッシュパネル1の下方部へと効果的に伝達し、これを効果的に吸収できるという利点がある。
【0049】
上記第1実施形態では、フロントサスペンションクロスメンバ15に設けられたアッパアーム21の取付部、つまり上記上部メンバ19に、上記サブフレームリヤ部材27の前端部を接続した構成としたため、このサブフレームリヤ部材27により上記アッパアーム21の取付部を補強することができるとともに、車両の衝突時に上記フロントサイドサブフレーム23からフロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19に伝達された衝突エネルギーを、上記サブフレームリヤ部材27によりダッシュパネル1の下方部へと効果的に伝達することができる。したがって、車両の衝突時に上記衝突エネルギーをより効果的に吸収できるとともに、車両の走行時に車両の繰安性をさらに効果的に向上できるという利点がある。
【0050】
特に、上記第1実施形態では、フロントサイドサブフレーム23とサブフレームリヤ部材27とが、上記フロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19を介して側面視で連続して配設されるとともに、このフロントサイドサブフレーム23およびサブフレームリヤ部材27に傾斜部が設けられることにより、それぞれ後下がりの傾斜状態で設置された構造としたため、車両の前突時に上記フロントクロスメンバ30に入力された衝突エネルギーを上記フロントサイドサブフレーム23およびサブフレームリヤ部材27を介してダッシュパネル1の下方部へとスムーズに伝達してこれを効果的に支持できるという利点がある。
【0051】
なお、上記フロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19を介してフロントサイドサブフレーム23とサブフレームリヤ部材27とを側面視で間接的に連続させた上記第1実施形態に代え、上記フロントサイドサブフレーム23とサブフレームリヤ部材27とを一体に形成して直接的に連続させるとともに、その下端部に上記フロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19を取り付けた構造としてもよい。
【0052】
また、上記第1実施形態では、フロアフレーム31をフロントサイドフレーム2の後端部から車体の後方側へ延びるように設置し、フロアフレーム31の後方部を車幅方向外方側に向けて傾斜させるとともに、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレーム37の前端部に上記フロアフレーム31の後端部を接続したため、車両の前突時に、上記フロントサイドフレーム2と、フロントサイドサブフレーム23およびサブフレームリヤ部材27とを介して、フロアフレーム31に入力された衝突エネルギーをリヤサイドフレーム37に伝達することにより安定して支持でき、車両の前突荷重に対する車体の剛性を簡単な構成で効果的に向上させることができる。
【0053】
さらに、上記第1実施形態に示すように、車両の前後方向に延びる閉断面形状のサイドシル33を上記フロアパネル3の車幅方向両側方部に設けるとともに、このサイドシル33の後端部近傍に、上記フロアフレーム31の後端部を接続し、かつ上記サイドシル33の前部と上記フロントサイドフレーム2の後端部とを連結する閉断面形状のトルクボックス47を設けた構造とした場合には、車両の衝突時に上記フロアフレーム31およびトルクボックス47を介して上記サイドシル33に衝突エネルギーを効率よく伝達して支持することができるため、車両の前突荷重に対する車体の剛性を、簡単な構成でより効果的に向上させることができるという利点がある。
【0054】
特に、上記第1実施形態では、サイドシル33の後端部を、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレーム37の前端部に接続するように構成したため、上記フロントサイドフレーム2からサイドシル33に伝達された衝突エネルギーを、このサイドシル33から上記リヤサイドフレーム37に伝達することができる。したがって、車両前突時に、上記フロントサイドフレーム2に入力された衝突エネルギーを車体の全体に分散させて、これを効果的に支持できるという利点がある。
【0055】
また、上記第1実施形態に示すように、トルクボックス47の後壁50からなる後辺部をサイドシル33に近づくに従って車体の後方側に位置させるように傾斜させた構造とした場合には、上記フロントサイドフレーム2からトルクボックス47に入力された衝突エネルギーの伝達方向を、トルクボックス47を介して後部外方側へ変換することにより、上記衝突エネルギーをサイドシル33に対してスムーズに伝達することができるため、このサイドシル33により上記衝突エネルギーを安定して支持できるという利点がある。
【0056】
さらに、上記第1実施形態では、トルクボックス47をダッシュパネル1の下面、具体的には、上記ダッシュパネル1の下面に沿って設置されたボックス状部材により構成したため、上記トルクボックス47が車室内に突出した状態で設置されることに起因して車室内スペースが狭められる等の弊害を生じることなく、車両の前突荷重に対する車体の剛性を効果的に向上させることができる。
【0057】
しかも、上記第1実施形態では、トルクボックス47の後壁外端部50aをダッシュパネル1の後端を超える位置まで延設したため、車両の前突時に入力される衝突エネルギーに応じてダッシュパネル1が変形すること等を上記トルクボックス47により効果的に防止できるとともに、このトルクボックス47を介して上記衝突エネルギーをサイドシル33に効率よく伝達できるという利点がある。
【0058】
特に、上記第1実施形態に示すように、フロントサイドフレーム2の後端部からフロアパネル3に沿って車両の後方側へ延びるように設置されたフロアフレーム31の前部に上記トルクボックス47を接続した構造とした場合には、車両の前突時に、フロントサイドフレーム2に入力された衝突エネルギーを、上記トルクボックス47からサイドシル33およびフロアフレーム31に分散させて効率よく伝達することができるため、上記衝突エネルギーを、さらに効果的に支持できるという利点がある。
【0059】
上記第1実施形態では、上記フロアパネル3に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム31,31を設けるとともに、左右のフロアフレーム31,31の前後方向中間部からそれぞれトンネル部に向かって延びるフロアサブフレーム32,32を配設し、かつ上記トンネル部4を横切るように下部レインフォースメント44を配設したため、簡単な構成で車体の剛性を効果的に向上させることができ、車両の衝突時に作用する衝突エネルギーを効果的に吸収できるという利点がある。
【0060】
すなわち、車両の前突時等に上記フロントクロスメンバ30、上記フロントサイドフレーム2およびフロントサイドサブフレーム23を介して入力された衝突エネルギーを、フロアパネル3の下面に沿って設置された上記フロアフレーム31により車両の後方側へ伝達して支持することができるとともに、上記衝突エネルギーの一部をフロアサブフレーム32によりトンネル部4側へ効率よく伝達して支持することができる。そして、上記トンネル部4を横切るように配設した下部レインフォースメント44により、トンネル部4の下方部分を補強したため、上記衝突エネルギーに応じてトンネル部4の底面が拡開変形し、あるいは収縮変形するのを効果的に防止しつつ、上記衝突エネルギーを車体後部に伝達して効率よく支持できるという利点がある。
【0061】
また、車両の側突時に車体側部からトンネル部4に入力された衝突エネルギーを上記下部レインフォースメント44により効率よく支持することができる。したがって、車両の側突時に入力された衝突エネルギーに対応して車体が変形するのを防止するためのセンタクロスメンバをフロアパネル3上に配設した場合のように、車室内スペースが狭められる等の問題を生じることなく、車両の衝突時における車体の変形を効果的に防止することが可能であり、ルーフのないオープンカー等においても、簡単な構成で車体の剛性を充分に確保できるという利点がある。
【0062】
さらに、上記第1実施形態に示すように、下部レインフォースメント44をトンネル部4の下方車外側に配設して着脱可能に取り付けた構造とした場合には、上記下部レインフォースメント44が車室内に突出することに起因して車室内スペースが狭められるという事態を生じることなく、上記トンネル部4の下方部分を効果的に補強することができる。しかも、上記トンネル部4内に配設されたプロペラシャフトまたは排気管の保守点検時等には、上記下部レインフォースメント44をトンネル部4から取り外すことにより、上記保守点検作業等を容易に行うことができるという利点がある。
【0063】
また、上記第1実施形態では、フロアサブフレーム32の後方部43をトンネル部4に沿って車体の前後方向に延びるように設置することにより、上記フロアサブフレーム32の後方部43を介してトンネル部4を補強するように構成したため、フロアパネル3の車幅方向中央部近傍における車体の剛性を効果的に向上させることができる。したがって、車両の前突時または側突時に、上記トンネル部4の設置部に伝達された衝突エネルギーを効果的に支持して車体の変形を確実に抑制できるという利点がある。
【0064】
さらに、上記第1実施形態に示すように、トンネル部4を横切るように設置された上記下部レインフォースメント44により左右のフロアサブフレーム32の下方部を連結するように構成した場合には、トンネル部4に沿って車体の前後方向に延びるように上記フロアサブフレーム32の後方部43を設置することによる補強作用と、トンネル部4を横切るように上記下部レインフォースメント44を車幅方向に設置することによる補強作用との相乗作用により、フロアパネル3の車幅方向中央部近傍における車体の剛性を、より効果的に向上させることができる。
【0065】
図10および図11は、本発明に係る車両の前部車体構造の第2実施形態を示している。この第2実施形態では、ダッシュクロスメンバ10の左右両側方部12,12の一部に、上記フロントサイドフレーム2の後端部内に入り込むように前方へ凹入した凹入部51が形成されるとともに、この凹入部51に対応して車体の前方側に突出する突出部52が上記ダッシュパネル1に形成されている。具体的には、乗員が操作するブレーキペダル53を有するペダル装置54が配設された運転席側(当実施形態では車室の左側)に位置する上記側方部12の少なくとも一部が、フロントサイドフレームの後端部内に所定距離だけ入り込むように凹設されることにより、上記ブレーキペダル53の操作軌跡を確保し得る位置および深さを有する上記凹入部51がダッシュクロスメンバ10の側方部12に形成されている。
【0066】
上記のようにダッシュクロスメンバ10とフロントサイドフレーム2との接続部に対応した車室内側部位に、乗員が操作するブレーキペダル53等を有するペダル装置54を配設した構成とした場合には、このペダル装置54の設置部を上記ダッシュクロスメンバ10により補強することができるため、簡単な構成で安定したペダル操作が可能となるという利点がある。そして、上記第2実施形態では、ダッシュクロスメンバ10の凹入部51がブレーキペダル53の操作軌跡を確保し得る位置および深さに形成されることにより、ダッシュパネル1の車室内側面に配設された上記ダッシュクロスメンバ10との干渉が生じることに起因してブレーキペダル53の操作範囲が狭められる等の弊害を生じることなく、車両の正突時等に、上記フロントサイドフレーム2の後端部からダッシュクロスメンバ10側方部12に入力された衝突エネルギーを、効率よく車体全体に分散させて支持できるという利点がある。
【0067】
しかも、上記ダッシュクロスメンバ10の左右両側方部12,12の一部(凹入部51)をフロントサイドフレーム2の後端部内に入り込むように前方へ凹入させた凹入部51を形成するとともに、この凹入部51に対応して車体の前方側に突出する突出部52を上記ダッシュパネル1に形成したため、上記ダッシュクロスメンバ10の左右両側方部12が車室内側に突出することに起因して車室内スペースが狭められるのを防止しつつ、上記ダッシュクロスメンバ10とダッシュパネル1との間に車幅方向に延びる閉断面を形成してその剛性を充分に確保することができる。なお、上記ダッシュクロスメンバ10の凹入部51およびダッシュパネル1の突出部52をフロントサイドフレーム2の後端部内に入り込ませるように構成しても、この部分は本来デッドスペースであるため、有効スペースが狭められる等の問題が生じることはない。
【0068】
上記ブレーキペダル53の設置部に対応した位置に上記ダッシュクロスメンバ10の凹入部51を配設してなる上記第2実施形態に代え、アクセルペダルまたはクラッチペダル等の設置部に対応した位置に上記ダッシュクロスメンバ10の凹入部51を配設した構造とすることも可能である。しかし、上記ブレーキペダル53は、アクセルペダル等に比べて操作軌跡が大きい傾向があるため、上記のようにブレーキペダル53の設置部に対応した位置に上記凹入部51を配設することにより、このブレーキペダル53が上記ダッシュクロスメンバ10に干渉するのを回避し得るように構成することが望ましい。
【符号の説明】
【0069】
1 ダッシュパネル
2 フロントサイドフレーム
3 フロアパネル
4 トンネル部
5 トンネルメンバ
10 ダッシュクロスメンバ
11 ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部
12 ダッシュクロスメンバの側方部
51 凹入部
52 突出部
53 ブレーキペダル
54 ペダル装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室前部を仕切るダッシュパネルと、このダッシュパネルから前方に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、上記ダッシュパネルに連続して車室の下面を形成するフロアパネルと、その車幅方向中央部に設置されたトンネル部とを備えた車両の前部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車両の正突時等に、ダッシュパネルの後退を抑制すること等を目的として、上下方向に延び車室の前端壁を構成するダッシュパネルと、このダッシュパネルに連続して後方に延びるフロアパネルとを備え、上記フロアパネルの略中央部に上方へ突出して車両の前後方向に延びるトンネル部が設けられた車両の前部車体構造において、上記ダッシュパネルには一端部が上記トンネル部の側面に接合され、中間部がダッシュパネルに沿って車幅方向に延び、かつ他端部がヒンジピラーに接続された左右一対のダッシュクロスメンバを設けることが行われている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、車体重量の増加を抑制しつつ、車体の剛性を大きくすることを目的として、車体前部で車幅方向中心線を挟んで左右に設けたフロントサイドフレームと、車体後部で車幅方向中心線を挟んで左右に設けたリヤサイドフレームと、車体を側面から見たときにフロントサイドフレームとリヤサイドフレームよりも低く車幅方向中心線を挟んで左右に設けたフロアフレームまたはサイドシルとをそれぞれ連結し、フロントサイドフレームとリヤサイドフレームとの間で車幅方向中心線に沿ってフロアフレームまたはサイドシルよりも上方に突出する下開放コ字状断面構造のフロアトンネルを設けた車体構造において、前記フロアトンネルの上部に閉断面構造の補助フレームを設け、この補助フレームを前記フロントサイドフレームと前記リヤサイドフレームとに閉断面構造の延長部により接合することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−362419号公報
【特許文献2】特開2000−238667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されているように、ダッシュパネルに沿って車幅方向に延びる左右一対のダッシュクロスメンバを設け、その両側端部をそれぞれトンネル部の側面およびヒンジピラーに接続するように構成した場合には、車両の正突時等に、ダッシュパネルに入力される荷重をトンネル部とヒンジピラーとに分散させて支持することにより、上記ダッシュパネルの後退が後退するのをある程度は抑制できるという利点がある。しかし、この特許文献1に開示された車両の前部車体構造では、左右のクロスメンバがそれぞれ独立して設置されているため、車両の衝突時に、左右何れか一方のフロントサイドフレームを介して入力された衝突エネルギーを効率よく車体全体に伝達することができず、車体の剛性向上効果が不充分であるという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2に開示されているように、フロアトンネルの上部に設けられた閉断面構造の補助フレームを閉断面構造の延長部によりフロントサイドフレームおよびリヤサイドフレームにそれぞれ接続するように構成した場合には、車両の前突時に上記フロントサイドフレームの上部に入力された衝突エネルギーを、このフロントサイドフレームの上部と概ね同一高さにある補助フレームからリヤサイドフレームに伝達することにより、これらの各部材で上記衝突エネルギーを吸収できるという利点がある。しかし、この特許文献2に開示された車両の車体構造では、上記閉断面構造の延長部がエンジンルーム内に配設されることにより、エンジン本体等の設置スペースが狭められるため、車両をコンパクト化することが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単なかつコンパクトな構成で車体の剛性を効果的に向上させることができる車両の前部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車室前部を仕切るダッシュパネルと、このダッシュパネルから前方に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、上記ダッシュパネルに連続して車室の下面を形成するフロアパネルと、このフロアパネルの車幅方向中央部分を車室内側へ膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部とを備えた車両の前部車体構造であって、上記ダッシュパネルの車室内側壁面には車幅方向に伸びるダッシュクロスメンバが設けられ、このダッシュクロスメンバの車幅方向中央部が上記トンネル部の上面に沿うように配設されるとともに、その左右両側方部が上記フロントサイドフレームの後端部と対向するように配設されたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の前部車体構造において、上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部がトンネル部に沿って上方へ膨出するように屈曲形成されたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の前部車体構造において、上記トンネル部の上面に沿って車体の前後方向に延びるトンネルメンバを有し、このトンネルメンバに上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部が接続されたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造において、上記ダッシュクロスメンバとフロントサイドフレームとの接続部に対応した車室内側部位には、乗員が操作するペダル装置が配設されたものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造において、上記ダッシュクロスメンバの左右両側方部の少なくとも一部には、フロントサイドフレームの後端部内に入り込むように前方へ凹入した凹入部が設けられるとともに、この凹入部に対応して車体の前方側に突出する突出部が上記ダッシュパネルに形成されたものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、上記請求項5に記載の車両の前部車体構造において、上記ペダル装置はブレーキペダルを有し、このブレーキペダルの設置部に対応した位置に上記突出部が配設されるとともに、上記ブレーキペダルがダッシュクロスメンバに干渉するのを回避し得るように、上記凹入部の凹入量が設定されたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部を上記トンネル部の上面に沿わせるように配設するとともに、その左右両側方部を上記フロントサイドフレームの後端部と対向させるように配設したため、車両の正突時等に、上記フロントサイドフレームの後端部と対向する上記左右両側方部の何れか一方に入力された衝突エネルギーを、フロアパネルの車幅方向中央部おいて車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部から上記左右両側方部の他方へと伝達することにより、効率よく車体全体に分散させて支持することができる。したがって、上記フロントサイドフレームに入力された衝突エネルギーを上記トンネル部に伝達して支持する補強部材をエンジンルーム内に配設した場合のように、エンジン本体等の設置スペースが狭められる等の問題を生じることなく、車体の剛性を効果的に向上できるという利点がある。
【0015】
請求項2に係る発明では、上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部をトンネル部に沿って上方に膨出させるように屈曲形成したため、上記フロントサイドフレームの設置高さとトンネル部の上面高さとが異なっている場合においても、車両の正突時等に、上記フロントサイドフレームの後端部と対向する上記左右両側方部の何れか一方に入力された衝突エネルギーを、フロアパネルの車幅方向中央部おいて車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部から上記左右両側方部の他方へと確実に伝達して、効率よく車体全体に分散させて支持できるという利点がある。
【0016】
請求項3に係る発明では、上記トンネル部に沿って車体の前後方向に延びるように設置されたトンネルメンバの上面に上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部を接続したため、車両の正突時等に上記フロントサイドフレームからダッシュクロスメンバの左右両側方部を介して上記トンネル部およびトンネルメンバに伝達された衝突エネルギーを効果的に支持して、これを吸収できるという利点がある。
【0017】
請求項4に係る発明では、上記ダッシュクロスメンバとフロントサイドフレームとの接続部に対応した車室内側部位に、乗員が操作するペダル装置を配設し、このペダル装置の設置部を上記ダッシュクロスメンバにより補強するように構成したため、簡単な構成で安定したペダル操作が可能となるという利点がある。
【0018】
請求項5に係る発明では、上記ダッシュクロスメンバの左右両側方部の少なくとも一部に、フロントサイドフレームの後端部内に入り込むように前方へ凹入した凹入部を設けるとともに、この凹入部に対応して車体の前方側に突出する突出部を上記ダッシュパネルに形成したため、上記ダッシュクロスメンバの左右両側方部が車室内側に突出することに起因して車室内スペースが狭められるのを防止しつつ、上記ダッシュクロスメンバとダッシュパネルとの間に車幅方向に延びる閉断面を形成してその剛性を充分に確保できるという利点がある。
【0019】
請求項6に係る発明では、上記ペダル装置を構成するブレーキペダルの設置部に対応した位置に上記凹入部を配設するとともに、ブレーキペダルがダッシュクロスメンバに干渉するのを回避し得るように、上記凹入部の凹入量を設定したため、ダッシュパネルの車室内側面に配設された上記ダッシュクロスメンバとの干渉が生じることに起因してブレーキペダルの操作範囲が狭められる等の弊害を生じることなく、車両の正突時等に、上記フロントサイドフレームの後端部からダッシュクロスメンバ側方部に入力された衝突エネルギーを、効率よく車体全体に分散させて支持できる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車両の前部車体構造の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】上記前部車体構造の具体的構成を示す平面図である。
【図3】車体フレームの具体的構造を示す平面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】前部フレームの具体的構成を示す平面図である。
【図6】前部フレームの具体的構成を示す側面断面図である。
【図7】前部フレームの具体的構成を示す正面図である。
【図8】図3のVIII−VIII線断面図である。
【図9】トルクボックスの設置構造を示す側面断面図である。
【図10】本発明に係る車両の前部車体構造の第2実施形態を示す側面断面図である。
【図11】上記前部車体構造の具体的構成を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図4は、本発明に係る車両の前部車体構造の第1実施形態を示している。この下部車体構造は、車室前部とエンジンルームとを仕切るように設置されたダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の設置部から車両の前方側へ延びる左右一対のフロントサイドフレーム2,2と、上記ダッシュパネル1の下端部に連続して車室の底面部を形成するフロアパネル3と、このフロアパネル3の車幅方向中央部を車室内側(上方)に膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部4とを有し、このトンネル部4の上面左右には、閉断面形状のトンネルメンバ5,5が車体の前後方向に延びるように設置されている(図4参照)。
【0022】
また、上記ダッシュパネル1の車幅方向中央部には、車体の後方側へ凹入する凹入部6が形成されている。上記エンジンルームの後方部には、縦置き式に配設されたロータリエンジン等からなるエンジン本体7と、その後方に接続されたトランスミッション8とを有するパワートレインが配設されている。そして、上記エンジン本体7の後部が、ダッシュパネル1に形成された凹入部6内に配設されるとともに、上記トランスミッション8と、これに接続された図外のプロペラシャフトおよびパワープラントフレームとが上記トンネル部4内に配設されている。この構成により、重量物であるエンジン本体7等を可及的に車両の後方側に位置させて、車両の重心を車体の中心部に近付けることを可能とし、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性および走行安定性を向上させ得るようになっている。
【0023】
上記ダッシュパネル1の車室内側壁面(背面)には、車幅方向に伸びるダッシュクロスメンバ10が設けられ、このダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11が上記トンネル部4の上面、具体的にはトンネルメンバ5,5の上面に沿うように設置されて接合されるとともに、その左右両側方部12,12が上記フロントサイドフレーム2の後端部と対向するように、上記両側方部12,12の上下位置が設定されている。
【0024】
そして、上記ダッシュクロスメンバ10は、一対の取付フランジ部10aを有する断面ハット状部材からなり、その左右両側方部12,12の取付フランジ部10aがダッシュパネル1の背面に接合されることにより、ダッシュパネル1との間に車幅方向に延びる閉断面を形成している。また、上記ダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11は、図4に示すように、背面視でトンネル部4の側面および上面に沿って上方へ膨出するように屈曲形成されている。
【0025】
上記フロントサイドフレーム2は、前輪14aおよびこれを支持するフロントサスペンション14bの設置スペースを確保するために、車両の側壁面から所定距離だけ車幅方向内方側に位置する部位において、車両の前方側へ略直線状に延びるように設置された前方部材2aと、側面視でその後端部から後下がりに傾斜しつつ車体の後方側へ延びるように設置された後方部材2bとを備えている。また、上記フロントサイドフレーム2の前方部材13には、フロントサスペンション14bを支持するフロントサスペンションクロスメンバ15が取り付けられている。
【0026】
上記フロントサスペンションクロスメンバ15は、図5〜図7に示すように、車幅方向に延びるクロスメンバ本体16と、その左右両端部から後方側に延びる下部メンバ17と、上記クロスメンバ本体16の左右両端部から上方に延びる縦メンバ18と、その上端部から車両の前後方向に延びる上部メンバ19により構成され、この上部メンバ19の上端部が上記前方部材13の下面にボルト止めされる等により固定されている。そして、上記フロントサスペンションクロスメンバ15の下部メンバ17にフロントサスペンション14bのロアアーム20が取り付けられるとともに、上部メンバ19にフロントサスペンション14bのアッパアーム21が取り付けられるように構成されている。
【0027】
上記左右のフロントサイドフレーム2,2は、その前端部同士がフロントクロスメンバ22を介して互いに連結されている。このフロントクロスメンバ22に対する上記フロントサイドフレーム2の取付部よりもやや下方側かつ内方側には、上記フロントサイドフレーム2の前端部とフロントサスペンションクロスメンバ15とを接続するフロントサイドサブフレーム23の前端部が取り付けられている。
【0028】
上記フロントサイドサブフレーム23は、フロントクロスメンバ30に対する取付部から側面視で後下がりに傾斜しつつ、平面視でフロントサイドフレーム2の車幅方向内方側面に沿って後方側に延びる前方部24と、その後端部から平面視で車幅方向外方側に向けて傾斜しつつ、フロントサイドフレーム2の下面に沿って後方側に延びる後方部25とを有している。そして、上記フロントサイドサブフレーム23の後方部25が上記アッパアーム21の取付部、つまりフロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19にボルト止めされる等により接続されるようになっている。
【0029】
また、上記フロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19からなるアッパアーム21の取付部には、サブフレームリヤ部材27の前端部がボルト止めされる等により接続されている。このサブフレームリヤ部材27は、側面視で上記フロントサイドサブフレーム23と連続するとともに、前下がりの傾斜状態で設置されることにより、上記フロントサスペンションクロスメンバ15の一部、つまり上記上部メンバ19の後部と、上記ダッシュパネル1の下方部とを接続するように構成されている。
【0030】
上記サブフレームリヤ部材27の後端部は、フロントサイドフレーム2の後端部と上記フロントサスペンションクロスメンバ15の下部メンバ17との間に配設され、これらが取付ボルト29を介して一体に固定されるように構成されている。これにより、上記サブフレームリヤ部材27は、フロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19とダッシュパネル1の下方部とを、上記フロントサイドフレーム2の後端部を介して間接的に接続するようになっている。
【0031】
さらに、上記フロアパネル3の下面には、図3および図4に示すように、フロントサイドフレーム2,2の後端部に連続して車体の前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム31,31が設けられるとともに、このフロアフレーム31の前後方向中間部から、上記トンネル部4に向かって車幅方向内方側に傾斜しつつ車両の後方側へ延びるフロアサブフレーム32が配設されている。また、上記フロアパネル3の車幅方向両側方部には、アウタパネル33aとインナパネル33bとを備えた閉断面形状のサイドシル33がそれぞれ配設され、上記インナパネル33bの上下方向中間部にフロアパネル3の側端フランジ部3aがスポット溶接される等により固定されている。
【0032】
上記フロアフレーム31は、図4に示すように、左右一対の側壁34,34と、その下端部間に設置された底壁部35と、上記側壁34,34の上端部に連設された左右一対の接合フランジ部36,36とにより断面ハット型に形成されている。そして、フロアフレーム31は、上記フロントサイドフレーム2の後端部から車体の後方側へ延びるように設置された状態で、上記接合フランジ部36,36がフロアパネル3の下面にスポット溶接される等により固定されている。また、上記フロアフレーム31は、図3に示す平面視において、その後方部が車幅方向外方側を指向するように傾斜して設置されるとともに、その後端部が、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレーム37,37の前端部および上記サイドシル33の後端部近傍に接続されている。
【0033】
上記リヤサイドフレーム37は、後輪用サスペンション(図示せず)等の設置スペースを確保するために、車両の側壁面から所定距離だけ車幅方向内方側に位置する部位において、車体の後端部から車両の前方側へ略直線状に延びるように設置された後方部38と、その前端部から側面視で前下がりに傾斜しつつ、平面視で前方部が車幅方向外方側を指向するように傾斜して設置された前方部39とからなり、この前方部39の前端部に上記フロアフレーム31およびサイドシル33の後端部が接続されている。また、上記左右のリヤサイドフレーム37,37を互いに連結する前後一対のリヤクロスメンバ40,41が車幅方向に延びるように設置されている。
【0034】
上記フロアサブフレーム32は、フロアフレーム31の前後方向中間部からフロアパネル3の下面に沿って平面視で後方内向きに傾斜しつつ、トンネル部4側へ延びる傾斜部42と、この傾斜部42の後端部から上記トンネル部4に沿って車体の後方側へ延びる後方部43とからなり、このフロアサブフレーム32の後方部43によりトンネル部4の下方部分が補強されるようになっている。また、上記トンネル部4を横切るように下部レインフォースメント44が配設され、その左右両端部がフロアサブフレーム32,32、具体的には、上記左右の後方部43,43にねじ止めされることにより、上記下部レインフォースメント44を介して左右のフロアサブフレーム32,32を相連結されている。
【0035】
上記下部レインフォースメント44は、図8に示すように、所定の強度を有する鋼板材等からなり、その左右両端部に取付ボルト45の挿通孔が形成されている。そして、この挿通孔を貫通した取付ボルト45のねじ軸が、上記フロアサブフレーム32の底壁上面に固着されたナット46に螺着されることにより、上記下部レインフォースメント44がトンネル部4の下方車外側に配設された状態で、着脱可能に取り付けられている。
【0036】
また、上記フロントサイドフレーム2の後端部外側面には、図9に示すように、ダッシュパネル1の下端部に沿って車体の車幅方向外方側に延びるトルクボックス47が設けられ、このトルクボックス47を介して上記サイドシル33の前部とフロントサイドフレーム2の後端部とが連結されている。上記トルクボックス47は、ダッシュパネル1の下方部に沿ってその下方側へ延びる前壁48と、その下端部から上記ダッシュパネル1の下端面との間に所定の間隔を隔てて車両の後方側へ延びる底壁49と、その後端部から上方側へ延びるように設置されて上記ダッシュパネル1の下端部ないしフロアパネル3の下面に接続される後壁50とを有するボックス状部材からなっている。そして、図3に示すように、上記トルクボックス47の後壁50からなる後辺部が、上記サイドシル33に近づくに従い、つまり車幅方向外方側に至るに従って車体の後方側に位置するように傾斜し、かつ上記後壁50の外端部50aがダッシュパネル1の後端を超える位置まで延設されている。
【0037】
上記構成において、車両に前突事故が発生して上記フロントクロスメンバ22に衝突エネルギーが入力されると、この衝突エネルギーは、図6および図9の矢印P1に示すように、上記フロントサイドフレーム2を介してダッシュパネル1に伝達されるとともに、図6の矢印P2に示すように、上記フロントサイドサブフレーム23を介してフロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19に伝達される。このフロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19に伝達された衝突エネルギーは、その一部が矢印P3に示すように、サブフレームリヤ部材27を介してダッシュパネル1の下端部に伝達されるとともに、残りの衝突エネルギーが矢印P4に示すように、フロントサスペンションクロスメンバ15の縦メンバ18および下部メンバ17を介して上記フロントサイドフレーム2の後端部およびダッシュパネル1の下方部に伝達されることにより支持される。
【0038】
また、図6の矢印P1に示すように、フロントサイドフレーム2を介してダッシュパネル1へと直接的に伝達された衝突エネルギーは、その一部が、図3の矢印P5に示すように、上記トルクボックス47を介してサイドシル33に伝達されるとともに、図3の矢印P6に示すように、上記フロントサイドフレーム2の後端部からフロアフレーム31に伝達され、かつ上記衝突エネルギーの残りが、図6の矢印P8に示すように、ダッシュパネル1に固着されたダッシュクロスメンバ10を介してトンネル部4の上方部に伝達される。
【0039】
上記トルクボックス47の後壁50からなる後辺部は、サイドシル33に近づくに従って車体の後方側に位置するように傾斜して設置されている。このため、上記フロントサイドフレーム2からトルクボックス47に入力された衝突エネルギーの伝達方向P5が、トルクボックス47を介して後部外方側へ変換されることにより、上記衝突エネルギーがサイドシル33に対してスムーズに伝達される。そして、このサイドシル33からリヤサイドフレーム37に上記衝突エネルギーが伝達されることにより安定して支持されることになる。
【0040】
また、車両の前突時に、図3の矢印P6に示すように、上記フロントサイドフレーム2からフロアフレーム31に入力された衝突エネルギーは、その一部が矢印P7に示すように、上記フロアサブフレーム32からトンネル部4の下方部分へと伝達されて支持されるとともに、残りの衝突エネルギーが上記フロアフレーム31を介してサイドシル33の後端部側およびリヤサイドフレーム37の前端部に伝達されることにより、安定して支持されるようになっている。そして、上記トンネル部4の下方には、その底部を横切るように下部レインフォースメント44が配設されているため、上記トンネル部4に伝達された衝突エネルギーに応じてトンネル部4の底面が拡開変形し、あるいは収縮変形することを効果的に防止することが可能である。
【0041】
上記のように車室前部とエンジンルームとを仕切るように設置されたダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の設置部から車両の前方側へ延びる左右一対のフロントサイドフレーム2,2と、上記ダッシュパネル1の下端部に連続して車室の底面部を形成するフロアパネル3と、このフロアパネル3の車幅方向中央部分を車室内側に膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部4とを備えた車両の前部車体構造において、上記ダッシュパネル1の車室内側壁面に車幅方向に伸びるダッシュクロスメンバ10を設け、このダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11を上記トンネル部4の上面に沿わせるように配設するとともに、その左右両側方部12,12を上記フロントサイドフレーム2の後端部と対向させるように配設したため、簡単なかつコンパクトな構成で車体の剛性を効果的に向上させることができる。
【0042】
すなわち、上記第1実施形態では、ダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11を背面視でトンネル部4の上面に沿って上方に膨出させるように屈曲形成したため、上記フロントサイドフレーム2の設置高さとトンネル部4の上面高さとが異なっている場合においても、車両の正突時等に、上記ダッシュパネル1を介してフロントサイドフレーム2の後端部と対向する上記左右両側方部12,12の何れか一方に入力された衝突エネルギーを、フロアパネル3の車幅方向中央部おいて車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部4から上記左右両側方部12,12の他方へと伝達することにより、効率よく車体全体に分散させて支持することができる。しかも、上記フロントサイドフレーム2に入力された衝突エネルギーを上記トンネル部4に伝達して支持する補強部材をエンジンルーム内に配設した場合のように、エンジン本体等の設置スペースが狭められる等の問題を生じることがないため、車両を効果的にコンパクト化しつつ、車体の剛性向上効果を充分に得られるという利点がある。
【0043】
また、上記第1実施形態に示すように、上面に沿ってトンネルメンバ5,5が車体の前後方向に延びるように設置されることにより剛性が充分に確保されたトンネル部4に、上記ダッシュクロスメンバ10の車幅方向中央部11を接続した構造とした場合には、車両の正突時等に上記フロントサイドフレーム2からダッシュクロスメンバ10の左右両側方部12,12を介して上記トンネル部4およびトンネルメンバ5,5に伝達された衝突エネルギーを効果的に支持して、これを吸収することができる。
【0044】
さらに、上記第1実施形態では、フロントサイドフレーム2に、フロントサスペンション14bを支持するフロントサスペンションクロスメンバ15を取り付けるとともに、上記フロントサイドフレーム2の前端部とフロントサスペンションクロスメンバ15とを接続するフロントサイドサブフレーム23を設けたため、車両の前突時等に入力された衝突エネルギーを車体下部に効率よく伝達し、これを効果的に吸収できる利点がある。
【0045】
すなわち、上記第1実施形態では、左右一対のフロントサイドフレーム2,2を互いに連結するフロントクロスメンバ30を備えた車両において、このフロントクロスメンバ30に上記フロントサイドサブフレーム23の前端部を接続したため、上記フロントクロスメンバ22に入力された前突時等の衝突エネルギーを、上記フロントサイドフレーム2からダッシュパネル1およびフロアフレーム31に向かう成分(P1)と、上記フロントサイドサブフレーム23からフロントサスペンションクロスメンバ15に向かう成分(P2)とに分けて車体の後部に伝達することができる。そして、上記フロントサイドサブフレーム23からフロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19に伝達された衝突エネルギーを、フロントサスペンションクロスメンバ15の縦メンバ18および下部メンバ17を介してダッシュパネル1の下方部およびフロアパネル3へと伝達することにより、上記衝突エネルギーを効果的に車体全体へと分散させて効率よく吸収できるという利点がある。
【0046】
特に、上記第1実施形態に示すように、フロントクロスメンバ30に上記フロントサイドフレーム2およびフロントサイドサブフレーム23の前端部をそれぞれオフセットさせて接続した構成によれば、車両の前突時に上記フロントクロスメンバ30に入力された衝突エネルギーを上記フロントサイドフレーム2およびフロントサイドサブフレーム23の少なくとも一方を介して車体の後部に伝達してこれを確実に支持することができる。しかも、上記フロントサイドフレーム2およびフロントサイドサブフレーム23によりフロントクロスメンバ30を補強して、その剛性を効果的に向上させることがでるため、車両の軽衝突時における車両の損傷を効果的に防止できるという利点がある。
【0047】
また、上記第1実施形態では、フロントサスペンションクロスメンバ15にフロントサスペンション14bのアッパアーム21が取り付けられてなる車両の前部車体構造において、このアッパアーム21の取付部に上記フロントサイドサブフレーム23の後端部を接続した構造としたため、このフロントサイドサブフレーム23により上記アッパアーム21の取付部を効果的に補強することができる。したがって、車両の衝突時における衝突エネルギーの吸収効果と、車両の走行時に車両の繰安性を向上させるという効果とが同時に得られるという利点がある。
【0048】
さらに、上記第1実施形態に示すように、フロントサスペンションクロスメンバ15の一部(上部メンバ19)と、ダッシュパネルの下方部とを接続する上記サブフレームリヤ部材27を設けた構造とした場合には、車両の衝突時に上記フロントサイドサブフレーム23からフロントサスペンションクロスメンバ15に伝達された衝突エネルギーを、上記サブフレームリヤ部材27によりダッシュパネル1の下方部へと効果的に伝達し、これを効果的に吸収できるという利点がある。
【0049】
上記第1実施形態では、フロントサスペンションクロスメンバ15に設けられたアッパアーム21の取付部、つまり上記上部メンバ19に、上記サブフレームリヤ部材27の前端部を接続した構成としたため、このサブフレームリヤ部材27により上記アッパアーム21の取付部を補強することができるとともに、車両の衝突時に上記フロントサイドサブフレーム23からフロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19に伝達された衝突エネルギーを、上記サブフレームリヤ部材27によりダッシュパネル1の下方部へと効果的に伝達することができる。したがって、車両の衝突時に上記衝突エネルギーをより効果的に吸収できるとともに、車両の走行時に車両の繰安性をさらに効果的に向上できるという利点がある。
【0050】
特に、上記第1実施形態では、フロントサイドサブフレーム23とサブフレームリヤ部材27とが、上記フロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19を介して側面視で連続して配設されるとともに、このフロントサイドサブフレーム23およびサブフレームリヤ部材27に傾斜部が設けられることにより、それぞれ後下がりの傾斜状態で設置された構造としたため、車両の前突時に上記フロントクロスメンバ30に入力された衝突エネルギーを上記フロントサイドサブフレーム23およびサブフレームリヤ部材27を介してダッシュパネル1の下方部へとスムーズに伝達してこれを効果的に支持できるという利点がある。
【0051】
なお、上記フロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19を介してフロントサイドサブフレーム23とサブフレームリヤ部材27とを側面視で間接的に連続させた上記第1実施形態に代え、上記フロントサイドサブフレーム23とサブフレームリヤ部材27とを一体に形成して直接的に連続させるとともに、その下端部に上記フロントサスペンションクロスメンバ15の上部メンバ19を取り付けた構造としてもよい。
【0052】
また、上記第1実施形態では、フロアフレーム31をフロントサイドフレーム2の後端部から車体の後方側へ延びるように設置し、フロアフレーム31の後方部を車幅方向外方側に向けて傾斜させるとともに、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレーム37の前端部に上記フロアフレーム31の後端部を接続したため、車両の前突時に、上記フロントサイドフレーム2と、フロントサイドサブフレーム23およびサブフレームリヤ部材27とを介して、フロアフレーム31に入力された衝突エネルギーをリヤサイドフレーム37に伝達することにより安定して支持でき、車両の前突荷重に対する車体の剛性を簡単な構成で効果的に向上させることができる。
【0053】
さらに、上記第1実施形態に示すように、車両の前後方向に延びる閉断面形状のサイドシル33を上記フロアパネル3の車幅方向両側方部に設けるとともに、このサイドシル33の後端部近傍に、上記フロアフレーム31の後端部を接続し、かつ上記サイドシル33の前部と上記フロントサイドフレーム2の後端部とを連結する閉断面形状のトルクボックス47を設けた構造とした場合には、車両の衝突時に上記フロアフレーム31およびトルクボックス47を介して上記サイドシル33に衝突エネルギーを効率よく伝達して支持することができるため、車両の前突荷重に対する車体の剛性を、簡単な構成でより効果的に向上させることができるという利点がある。
【0054】
特に、上記第1実施形態では、サイドシル33の後端部を、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレーム37の前端部に接続するように構成したため、上記フロントサイドフレーム2からサイドシル33に伝達された衝突エネルギーを、このサイドシル33から上記リヤサイドフレーム37に伝達することができる。したがって、車両前突時に、上記フロントサイドフレーム2に入力された衝突エネルギーを車体の全体に分散させて、これを効果的に支持できるという利点がある。
【0055】
また、上記第1実施形態に示すように、トルクボックス47の後壁50からなる後辺部をサイドシル33に近づくに従って車体の後方側に位置させるように傾斜させた構造とした場合には、上記フロントサイドフレーム2からトルクボックス47に入力された衝突エネルギーの伝達方向を、トルクボックス47を介して後部外方側へ変換することにより、上記衝突エネルギーをサイドシル33に対してスムーズに伝達することができるため、このサイドシル33により上記衝突エネルギーを安定して支持できるという利点がある。
【0056】
さらに、上記第1実施形態では、トルクボックス47をダッシュパネル1の下面、具体的には、上記ダッシュパネル1の下面に沿って設置されたボックス状部材により構成したため、上記トルクボックス47が車室内に突出した状態で設置されることに起因して車室内スペースが狭められる等の弊害を生じることなく、車両の前突荷重に対する車体の剛性を効果的に向上させることができる。
【0057】
しかも、上記第1実施形態では、トルクボックス47の後壁外端部50aをダッシュパネル1の後端を超える位置まで延設したため、車両の前突時に入力される衝突エネルギーに応じてダッシュパネル1が変形すること等を上記トルクボックス47により効果的に防止できるとともに、このトルクボックス47を介して上記衝突エネルギーをサイドシル33に効率よく伝達できるという利点がある。
【0058】
特に、上記第1実施形態に示すように、フロントサイドフレーム2の後端部からフロアパネル3に沿って車両の後方側へ延びるように設置されたフロアフレーム31の前部に上記トルクボックス47を接続した構造とした場合には、車両の前突時に、フロントサイドフレーム2に入力された衝突エネルギーを、上記トルクボックス47からサイドシル33およびフロアフレーム31に分散させて効率よく伝達することができるため、上記衝突エネルギーを、さらに効果的に支持できるという利点がある。
【0059】
上記第1実施形態では、上記フロアパネル3に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム31,31を設けるとともに、左右のフロアフレーム31,31の前後方向中間部からそれぞれトンネル部に向かって延びるフロアサブフレーム32,32を配設し、かつ上記トンネル部4を横切るように下部レインフォースメント44を配設したため、簡単な構成で車体の剛性を効果的に向上させることができ、車両の衝突時に作用する衝突エネルギーを効果的に吸収できるという利点がある。
【0060】
すなわち、車両の前突時等に上記フロントクロスメンバ30、上記フロントサイドフレーム2およびフロントサイドサブフレーム23を介して入力された衝突エネルギーを、フロアパネル3の下面に沿って設置された上記フロアフレーム31により車両の後方側へ伝達して支持することができるとともに、上記衝突エネルギーの一部をフロアサブフレーム32によりトンネル部4側へ効率よく伝達して支持することができる。そして、上記トンネル部4を横切るように配設した下部レインフォースメント44により、トンネル部4の下方部分を補強したため、上記衝突エネルギーに応じてトンネル部4の底面が拡開変形し、あるいは収縮変形するのを効果的に防止しつつ、上記衝突エネルギーを車体後部に伝達して効率よく支持できるという利点がある。
【0061】
また、車両の側突時に車体側部からトンネル部4に入力された衝突エネルギーを上記下部レインフォースメント44により効率よく支持することができる。したがって、車両の側突時に入力された衝突エネルギーに対応して車体が変形するのを防止するためのセンタクロスメンバをフロアパネル3上に配設した場合のように、車室内スペースが狭められる等の問題を生じることなく、車両の衝突時における車体の変形を効果的に防止することが可能であり、ルーフのないオープンカー等においても、簡単な構成で車体の剛性を充分に確保できるという利点がある。
【0062】
さらに、上記第1実施形態に示すように、下部レインフォースメント44をトンネル部4の下方車外側に配設して着脱可能に取り付けた構造とした場合には、上記下部レインフォースメント44が車室内に突出することに起因して車室内スペースが狭められるという事態を生じることなく、上記トンネル部4の下方部分を効果的に補強することができる。しかも、上記トンネル部4内に配設されたプロペラシャフトまたは排気管の保守点検時等には、上記下部レインフォースメント44をトンネル部4から取り外すことにより、上記保守点検作業等を容易に行うことができるという利点がある。
【0063】
また、上記第1実施形態では、フロアサブフレーム32の後方部43をトンネル部4に沿って車体の前後方向に延びるように設置することにより、上記フロアサブフレーム32の後方部43を介してトンネル部4を補強するように構成したため、フロアパネル3の車幅方向中央部近傍における車体の剛性を効果的に向上させることができる。したがって、車両の前突時または側突時に、上記トンネル部4の設置部に伝達された衝突エネルギーを効果的に支持して車体の変形を確実に抑制できるという利点がある。
【0064】
さらに、上記第1実施形態に示すように、トンネル部4を横切るように設置された上記下部レインフォースメント44により左右のフロアサブフレーム32の下方部を連結するように構成した場合には、トンネル部4に沿って車体の前後方向に延びるように上記フロアサブフレーム32の後方部43を設置することによる補強作用と、トンネル部4を横切るように上記下部レインフォースメント44を車幅方向に設置することによる補強作用との相乗作用により、フロアパネル3の車幅方向中央部近傍における車体の剛性を、より効果的に向上させることができる。
【0065】
図10および図11は、本発明に係る車両の前部車体構造の第2実施形態を示している。この第2実施形態では、ダッシュクロスメンバ10の左右両側方部12,12の一部に、上記フロントサイドフレーム2の後端部内に入り込むように前方へ凹入した凹入部51が形成されるとともに、この凹入部51に対応して車体の前方側に突出する突出部52が上記ダッシュパネル1に形成されている。具体的には、乗員が操作するブレーキペダル53を有するペダル装置54が配設された運転席側(当実施形態では車室の左側)に位置する上記側方部12の少なくとも一部が、フロントサイドフレームの後端部内に所定距離だけ入り込むように凹設されることにより、上記ブレーキペダル53の操作軌跡を確保し得る位置および深さを有する上記凹入部51がダッシュクロスメンバ10の側方部12に形成されている。
【0066】
上記のようにダッシュクロスメンバ10とフロントサイドフレーム2との接続部に対応した車室内側部位に、乗員が操作するブレーキペダル53等を有するペダル装置54を配設した構成とした場合には、このペダル装置54の設置部を上記ダッシュクロスメンバ10により補強することができるため、簡単な構成で安定したペダル操作が可能となるという利点がある。そして、上記第2実施形態では、ダッシュクロスメンバ10の凹入部51がブレーキペダル53の操作軌跡を確保し得る位置および深さに形成されることにより、ダッシュパネル1の車室内側面に配設された上記ダッシュクロスメンバ10との干渉が生じることに起因してブレーキペダル53の操作範囲が狭められる等の弊害を生じることなく、車両の正突時等に、上記フロントサイドフレーム2の後端部からダッシュクロスメンバ10側方部12に入力された衝突エネルギーを、効率よく車体全体に分散させて支持できるという利点がある。
【0067】
しかも、上記ダッシュクロスメンバ10の左右両側方部12,12の一部(凹入部51)をフロントサイドフレーム2の後端部内に入り込むように前方へ凹入させた凹入部51を形成するとともに、この凹入部51に対応して車体の前方側に突出する突出部52を上記ダッシュパネル1に形成したため、上記ダッシュクロスメンバ10の左右両側方部12が車室内側に突出することに起因して車室内スペースが狭められるのを防止しつつ、上記ダッシュクロスメンバ10とダッシュパネル1との間に車幅方向に延びる閉断面を形成してその剛性を充分に確保することができる。なお、上記ダッシュクロスメンバ10の凹入部51およびダッシュパネル1の突出部52をフロントサイドフレーム2の後端部内に入り込ませるように構成しても、この部分は本来デッドスペースであるため、有効スペースが狭められる等の問題が生じることはない。
【0068】
上記ブレーキペダル53の設置部に対応した位置に上記ダッシュクロスメンバ10の凹入部51を配設してなる上記第2実施形態に代え、アクセルペダルまたはクラッチペダル等の設置部に対応した位置に上記ダッシュクロスメンバ10の凹入部51を配設した構造とすることも可能である。しかし、上記ブレーキペダル53は、アクセルペダル等に比べて操作軌跡が大きい傾向があるため、上記のようにブレーキペダル53の設置部に対応した位置に上記凹入部51を配設することにより、このブレーキペダル53が上記ダッシュクロスメンバ10に干渉するのを回避し得るように構成することが望ましい。
【符号の説明】
【0069】
1 ダッシュパネル
2 フロントサイドフレーム
3 フロアパネル
4 トンネル部
5 トンネルメンバ
10 ダッシュクロスメンバ
11 ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部
12 ダッシュクロスメンバの側方部
51 凹入部
52 突出部
53 ブレーキペダル
54 ペダル装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部を仕切るダッシュパネルと、このダッシュパネルから前方に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、上記ダッシュパネルに連続して車室の下面を形成するフロアパネルと、このフロアパネルの車幅方向中央部分を車室内側へ膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部とを備えた車両の前部車体構造であって、上記ダッシュパネルの車室内側壁面には車幅方向に伸びるダッシュクロスメンバが設けられ、このダッシュクロスメンバの車幅方向中央部が上記トンネル部の上面に沿うように配設されるとともに、その左右両側方部が上記フロントサイドフレームの後端部と対向するように配設されたことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部がトンネル部に沿って上方へ膨出するように屈曲形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記トンネル部に沿って車体の前後方向に延びるトンネルメンバを有し、このトンネルメンバに上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部が接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
上記ダッシュクロスメンバとフロントサイドフレームとの接続部に対応した車室内側部位には、乗員が操作するペダル装置が配設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
上記ダッシュクロスメンバの左右両側方部の少なくとも一部には、フロントサイドフレームの後端部内に入り込むように前方へ凹入した凹入部が設けられるとともに、この凹入部に対応して車体の前方側に突出する突出部が上記ダッシュパネルに形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
上記ペダル装置はブレーキペダルを有し、このブレーキペダルの設置部に対応した位置に上記突出部が配設されるとともに、上記ブレーキペダルがダッシュクロスメンバに干渉するのを回避し得るように、上記凹入部の凹入量が設定されたことを特徴とする請求項5に記載の車両の前部車体構造。
【請求項1】
車室前部を仕切るダッシュパネルと、このダッシュパネルから前方に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、上記ダッシュパネルに連続して車室の下面を形成するフロアパネルと、このフロアパネルの車幅方向中央部分を車室内側へ膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部とを備えた車両の前部車体構造であって、上記ダッシュパネルの車室内側壁面には車幅方向に伸びるダッシュクロスメンバが設けられ、このダッシュクロスメンバの車幅方向中央部が上記トンネル部の上面に沿うように配設されるとともに、その左右両側方部が上記フロントサイドフレームの後端部と対向するように配設されたことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部がトンネル部に沿って上方へ膨出するように屈曲形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記トンネル部に沿って車体の前後方向に延びるトンネルメンバを有し、このトンネルメンバに上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部が接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
上記ダッシュクロスメンバとフロントサイドフレームとの接続部に対応した車室内側部位には、乗員が操作するペダル装置が配設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
上記ダッシュクロスメンバの左右両側方部の少なくとも一部には、フロントサイドフレームの後端部内に入り込むように前方へ凹入した凹入部が設けられるとともに、この凹入部に対応して車体の前方側に突出する突出部が上記ダッシュパネルに形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
上記ペダル装置はブレーキペダルを有し、このブレーキペダルの設置部に対応した位置に上記突出部が配設されるとともに、上記ブレーキペダルがダッシュクロスメンバに干渉するのを回避し得るように、上記凹入部の凹入量が設定されたことを特徴とする請求項5に記載の車両の前部車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−179898(P2010−179898A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27781(P2009−27781)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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