説明

車両の後部車体構造

【課題】後輪用サスペンションの支持剛性を確保しつつ、該サスペンション周辺の車体構造を簡素化することができる後部車体構造を提供する。
【解決手段】左右のリヤサイドフレーム4,4間に、キックアップフロア部2cの下方において、車幅方向に延びて左右両端部がリヤサイドフレーム4,4に接続されると共に後輪用サスペンション10が取り付けられるサスペンションクロスメンバ20を設ける。該クロスメンバ20に対して上方かつ車体前後方向でほぼ同じ位置で車幅方向に延びて左右両端部がリヤサイドフレーム4,4に接続される本体部30aと、本体部30aの車幅方向中央から前方にトンネル部2dに沿って延び、トンネル部2dに結合される前方延伸部30bとを有するリヤクロスメンバ30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部車体における後輪用サスペンション周辺の構造に関し、車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、車室の床面を構成するフロアパネルの後部には、段差状に高くされたキックアップフロア部(特許文献1のリヤフロアに相当する)が設けられると共に、該フロアパネルにおけるキックアップフロア部を構成する部分よりも前方の部分には、車幅方向中央で車体前後方向に延び、上方に隆起するトンネル部が形成されることがある。また、特許文献1には、前記フロアパネルにおけるキックアップフロア部を構成する部分の下方において、前記トンネル部とほぼ高さ位置で車体前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームを設けると共に、これらのリヤサイドフレーム間に、前記トンネル部の後方近傍において、後輪用サスペンションを取り付けるサスペンション支持部材を設けた構造が開示されている。
【0003】
ここで、車体後部における後輪用サスペンション周辺部分は、後輪用サスペンションから入力される荷重を受け止め可能な支持剛性が要求される。そこで、前記特許文献1には、サスペンション支持部材を、左右のリヤサイドフレームの下面に沿って前後に延びる左右一対の前後フレーム部と、該前後フレーム部の前端部近傍及び後端部近傍間を連結する前後一対の横フレーム部とでなる枠状の構造体とすると共に、前記サスペンション支持部材の上方かつ車体前後方向のほぼ同じ位置で車幅方向に延びて左右のリヤサイドフレームを連結する第4、第5クロスメンバを設け、さらに第4クロスメンバの車幅方向中央部にトンネル部の後端部を接続した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−137139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に記載の構造においては、後輪用サスペンションの支持剛性確保のために枠状構造のサスペンション支持部材や、第4、第5クロスメンバという複数のクロスメンバを設けたことにより、後輪用サスペンション周辺の車体構造が複雑化するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、後輪用サスペンションの支持剛性を確保しつつ、サスペンション周辺の車体構造を簡素化することができる後部車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車室の床面を構成するフロアパネルの後部に段差状に高くされたキックアップフロア部が設けられていると共に、該フロアパネルにおけるキックアップフロア部を構成する部分よりも前方の部分に、車幅方向中央で車体前後方向に延び、上方に隆起するトンネル部が形成されており、かつ前記フロアパネルにおけるキックアップフロア部を構成する部分の下方において、前記トンネル部とほぼ高さ位置で車体前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームが設けられた車両の後部車体構造であって、前記左右のリヤサイドフレーム間に、前記トンネル部の後方近傍において、車幅方向に延びて左右両端部が前記リヤサイドフレームに接続されると共に後輪用サスペンションが取り付けられるサスペンションクロスメンバが設けられ、かつ、該サスペンションクロスメンバに対して上方かつ車体前後方向でほぼ同じ位置で車幅方向に延びて左右両端部が前記リヤサイドフレームに接続される本体部と、該本体部の車幅方向中央から前記トンネル部に沿って前方に延び、該トンネル部に結合される前方延伸部とを有するリヤクロスメンバが設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両の後部車体構造において、前記リヤクロスメンバの本体部は、両端部よりも車幅方向中央部が前方に位置するように平面視でへ字状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の車両の後部車体構造において、前記フロアパネルにおけるキックアップフロア部よりも前方の部分の上面に、トンネル部を横切って車幅方向に延びるフロアクロスメンバが設けられていると共に、前記リヤクロスメンバの前方延伸部の前端部が前記フロアクロスメンバに接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造において、前記リヤクロスメンバの前方延伸部の下方に燃料タンクが配設されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載の車両の後部車体構造において、前記リヤクロスメンバの前方延伸部には、車体前後方向から衝撃荷重が入力されたときに該前方延伸部を燃料タンクから離間する方向に変形させる変形制御部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
次に、本発明の効果について説明する。
【0014】
まず、請求項1に記載の発明によれば、後輪から後輪用サスペンションに入力される荷重は、サスペンションクロスメンバだけでなく、該サスペンションクロスメンバに対して上方かつ車体前後方向でほぼ同じ位置で略車幅方向に延びるリヤクロスメンバの本体部により分担して受け止められると共に、該本体部の車幅方向中央から前方にトンネル部に沿って延び、該トンネル部に結合される前方延伸部を介してトンネル部にも分散されることとなる。その場合に、トンネル部は車体の中でも一般に特に剛性の高い部位であり、しかもそのトンネル部に沿うように前方延伸部を設けて結合させているので、多くの荷重を分散させることができ、特許文献1に記載のもののように枠状のサスペンション支持部材や複数のクロスメンバを設ける必要がなくなる。すなわち、サスペンションの支持剛性を確保しつつ、後輪用サスペンション周辺の車体構造を簡素化することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、例えば自車両の車体後部に後突があった場合における耐後突性能も向上させることができる。すなわち、後突があった場合、衝撃荷重はリヤサイドフレームを介して前方の車体に分散されるが、本発明においては、リヤクロスメンバの本体部は、車幅方向中央側が両端部よりも前方に位置するように平面視でへ字状に形成されているから、リヤサイドフレームからリヤクロスメンバの本体部にも分散されやすくなる。また、この分散された荷重が前方延伸部を介してトンネル部に入力されやすくなる。すなわち、後突時にリヤサイドフレームに入力された衝撃荷重を、剛性の高いトンネル部に分散させやすくなり、耐後突性能が向上することとなる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記フロアパネルにおけるキックアップフロア部よりも前方の部分の上面に、トンネル部を横切って車幅方向に延びるフロアクロスメンバが設けられていると共に、前記リヤクロスメンバの前方延伸部の前端部が前記フロアクロスメンバに接続されているから、該フロアクロスメンバにもサスペンションに入力された荷重を分散させることができる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明によれば、燃料タンクは、リヤクロスメンバの前方延伸部の下方、すなわち車体における車体前後方向剛性が高い部分の下方に配設されることとなり、前後突時における燃料タンクの保護性能が向上する。
【0018】
ここで、前後突の衝撃荷重が大きい場合には、前後方向剛性の高い前方延伸部でも変形する虞がある。そして、前方延伸部が例えば下方へ変形した場合には、燃料タンクに当接して該燃料タンクが破損するする虞があり、これを防止する必要がある。
【0019】
そこで、請求項5に記載の発明においては、前記リヤクロスメンバの前方延伸部に、車体前後方向から衝撃荷重が入力されたときに該前方延伸部を燃料タンクから離間する方向に変形させる変形制御部を設けたものであり、これによれば、車体後方からの衝撃荷重の入力時に前方延伸部が下方に変形するのが防止されることとなる。すなわち、前方延伸部の下方への変形による燃料タンクの破損が防止されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の後部車体(下部)の一部破断平面図(フロアパネルを一部破断させている)である。
【図2】同後部車体の側面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】後突時における作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る車両の後部車体構造について説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両1の後部車体の一部破断平面図、図2は、同後部車体の側面図である。これらの図に示すように、車室の床面を構成するフロアパネル2は、前席シート及び後席シートが配設されるフロントフロア部2aと、該フロントフロア部2aの後端から上方に立ち上がる縦壁部2bと、該縦壁部2bの上端から後方に延び、フロントフロア部2aに対して段差状に高くされたキックアップフロア部2cとを有している。このキックアップフロア部2cは、例えば荷室等として利用可能とされている。フロアパネル2の後部側は、車幅方向長が前部側よりも狭くされ、側方に後輪W,Wが配設されるようになっている。
【0023】
フロントフロア部2aの車幅方向中央には、車体前後方向に延びると共にキックアップフロア部2cとほぼ同じ高さ位置まで上方に隆起するトンネル部2dが設けられている。また、フロントフロア部2aの左右の側部には車体前後方向に延びるサイドシル3,3が設けられている。サイドシル3は、車体前後方向に延びる閉断面構造とされている。
【0024】
また、フロアパネル2の後部の下面側には、該フロアパネル2の左右の両側部に沿って略車体前後方向に延びるリヤサイドフレーム4,4が設けられている。リヤサイドフレーム4,4は、前端部がサイドシル3,3に接続されていると共に、フロアパネル2の下面に沿うように湾曲形成されており、キックアップフロア部2cの下方の後部フレーム部4aは、フロアパネル2のトンネル部2dとほぼ高さ位置で車体前後方向に延びている。ここで、リヤサイドフレーム4としては、本実施の形態では、断面矩形の角パイプ材が利用されている。なお、例えば断面ハット状の部材を利用して、フロアパネル2とで閉断面を構成するようにしてもよい。
【0025】
左右のサイドシル3,3間には、フロアパネル2のフロントフロア部2aの上面側、かつ前後方向で左右のリヤサイドフレーム4,4の前端位置において、トンネル部2dを横断して(貫通して)車幅方向に延び、左右の端部が左右のサイドシル3,3及びリヤサイドフレーム4,4に接続されるフロアクロスメンバ5が設けられている。フロアクロスメンバ5は、断面ハット状の部材により構成され、フロアパネル2の上面とで閉断面を形成している。
【0026】
フロアパネル2のフロントフロア部2aの下面側には、フロアクロスメンバ5よりも前方、かつサイドシル3とトンネル部2dとの間において、略車体前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム6,6が設けられ、該フロアフレーム6,6の後端部がフロアクロスメンバ5にフロアパネル2を介して接続されている。
【0027】
次に、後輪W,Wを懸架するサスペンション10,10周辺の構造について説明する。
【0028】
すなわち、図1〜図3に示すように、左右のリヤサイドフレーム4,4の後部フレーム部4a間には、前記トンネル部2dの後方近傍において、車幅方向に延び、両端部が前記後部フレーム部4a,4aの下面に接続されるリヤサスペンションクロスメンバ20,20が設けられている。このリヤサスペンションクロスメンバ20,20は、図3から明らかなように、車幅方向中央側が両端部よりも低くされて、後面視で略V字状の形状とされている。本実施の形態においては、リヤサスペンションクロスメンバ20としては、例えば断面矩形の角パイプ材が利用されている。なお、例えば断面ハット状の部材を利用してもよい。
【0029】
また、このリヤサスペンションクロスメンバ20の上方には、リヤクロスメンバ30が設けられている。このリヤクロスメンバ30は、リヤサスペンションクロスメンバ20に対して前後方向でほぼ同じ位置で略車幅方向に延びて左右のリヤサイドフレーム4,4を連結する本体部30aと、該本体部30aの車幅方向中央から、フロアパネル2のトンネル部2dに沿ってその内部空間を前方に延び、該トンネル部2dに結合される前方延伸部30bとを有している。本実施の形態においては、リヤクロスメンバ30の本体部30a及び前方延伸部30bとしてはそれぞれ、例えば断面矩形の角パイプ材が利用されており、前方延伸部30bの後端部が本体部30aの車幅方向中央部に溶着されている。なお、本体部30a及び前方延伸部30bとしては、例えば断面ハット状やコ字状の部材を、上方が開口した状態で利用することも可能である。
【0030】
また、図1から明らかなように、リヤクロスメンバ30の本体部30aは、車幅方向中央側が両端部よりも前方に位置するように平面視でへ字状に形成されている。
【0031】
また、リヤクロスメンバ30の前方延伸部30bは、前端部がフロアクロスメンバ5の車幅方向中央部に接続されている。その場合に、前方延伸部30bの前端側は、下方へ湾曲させてフロアクロスメンバ5に接続されている。すなわち、前方延伸部30bの前端部に湾曲部30cが設けられている。
【0032】
次にサスペンション10,10について説明する。なお、左右のサスペンション10,10は左右対称の構成であり、そのため、左側のサスペンション10についてのみ代表して説明する。すなわち、図1〜図3に示すように、サスペンション10は、後輪Wを回転自在に支持するホイールサポート11と、前端部が前記リサヤイドフレーム4の湾曲部4bの下端近傍に揺動可能に支持され、後端部がホイールサポート11の下部から車幅方向内方に突出形成された取付部11dに結合されたトレーリングアーム12と、ホイールサポート11の上部に形成された取付部11aに外端部が、リヤサスペンションクロスメンバ20の車幅方向外端近傍に形成された取付部20aに内端部がそれぞれ揺動自在に連結されたアッパーリンク13と、ホイールサポート11の下部に形成された取付部11bに外端部が、リヤサスペンションクロスメンバ20の車幅方向中央近傍に形成された取付部20bに内端部がそれぞれ揺動自在に支持されたロアーリンク14と、ホイールサポート11の下部に形成された取付部11cとリヤホイールハウス7に形成されたサスペンション支持部との間に介設された緩衝装置15とを有している。アッパーリンク13及びロアーリンク14は、トレーリングアーム12の揺動時に捩れ変形可能に構成されている。緩衝装置15は、ダンパ及びコイルスプリング等で構成されている。
【0033】
ここで、本実施の形態においては、図1〜図3に示されているように、前記リヤクロスメンバ30の前方延伸部30bの下方に燃料タンク40が配設されている。この燃料タンクは、図3から明らかなように、キックアップフロア部2cとほぼ同じ幅(車幅方向長さ)を有して上下方向の厚みが比較的小さい扁平な形状とされているが、車幅方向中央部分には、燃料タンク容量をできるだけ多く確保可能なように、トンネル部2dの内部空間に向かって上方へ突出し、上端部が前方延伸部30bの下面近傍に位置する突出部40aが設けられている。
【0034】
次に、本実施の形態に係る車両の後部車体構造の作用、効果について説明する。
【0035】
すなわち、後輪Wから後輪用サスペンション10に入力される荷重は、リヤサスペンションクロスメンバ20だけでなく、該サスペンションクロスメンバ20に対して上方かつ車体前後方向でほぼ同じ位置で略車幅方向に延びるリヤクロスメンバ30の本体部30aにより分担して受け止められると共に、該本体部30aの車幅方向中央から前方にトンネル部2dに沿って延び、該トンネル部2dに結合される前方延伸部30bを介してトンネル部2dにも分散されることとなる。その場合に、トンネル部2dは車体の中でも特に剛性の高い部位であり、しかもそのトンネル部2dに沿うように前方延伸部30bを設けて結合させているので、多くの荷重を分散させることができ、前記特許文献1に記載のもののように枠状のサスペンション支持部材や複数のクロスメンバを設ける必要がなくなる。すなわち、リヤサスペンション10,10の支持剛性を確保しつつ、後輪用サスペンション周辺の車体構造を簡素化することができる。
【0036】
また、例えば自車両1の車体後部に後突があった場合における耐後突性能も向上することとなる。すなわち、後突があった場合、衝撃荷重はリヤサイドフレーム4,4を介して前方の車体に分散されるが、本実施の形態においては、リヤクロスメンバ30の本体部30aは、車幅方向中央側が両端部よりも前方に位置するように平面視でへ字状に形成されているから、車幅方向に直線的に形成されている場合よりも、図1に矢印αで示すように、リヤサイドフレーム4,4からリヤクロスメンバ30の本体部30aにも分散されやすくなる。また、矢印βで示すように、この分散された荷重が前方延伸部30bを介してトンネル部2dに入力されやすくなる。すなわち、後突時にリヤサイドフレーム4,4に入力された衝撃荷重を、剛性の高いトンネル部2dに分散させやすくなり、耐後突性能が向上することとなる。
【0037】
また、キックアップフロア部2cよりも前方のフロアパネル2上に、トンネル部2dを横切って車幅方向に延びるフロアクロスメンバ5が設けられていると共に、リヤクロスメンバ30の前方延伸部30bの前端部が前記フロアクロスメンバ5に接続されているから、フロアクロスメンバ5にもサスペンション10,10に入力された荷重を分散させることができる。
【0038】
また、燃料タンク40は、リヤクロスメンバ30の前方延伸部30bの下方、すなわち車体における車体前後方向剛性が高い部分の下方に配設されることとなり、前後突時における燃料タンク40の保護性能が向上する。
【0039】
ここで、前後突の衝撃荷重が大きい場合には、前後方向剛性の高い前方延伸部30bでも変形する虞がある。そして、前方延伸部30bが例えば下方へ変形した場合には、燃料タンク40に当接して該燃料タンク40が破損するする虞があり、これを防止する必要がある。特に、燃料タンク40に突出部40aを設けた場合には、重要な問題である。
【0040】
そこで、本実施の形態においては、リヤクロスメンバ30の前方延伸部30bの前端側に湾曲部30c(変形制御部)を設けたものであり、これによれば、自車両1の後部車体に車体前後方向から衝撃荷重が入力されて、例えば図4(一例として後突により車体後方から衝撃荷重が入力された場合を示している)に示すようにリヤサイドフレーム4の後端側(車体の後端側)が上方に持ち上がるような変形を起こした場合、湾曲部30cに対して矢印γで示す方向の力が働き、その結果、該前方延伸部30bが燃料タンク40から離間する方向に(上方に)変形することとなる。したがって、前方延伸部30bによる燃料タンク40の破損が防止されることとなる。また、前方延伸部30bの先端部はフロアクロスメンバ5に接続されているから、前方延伸部30bの先端が前方に移動できず、その結果、湾曲部30cに前記矢印γで示す力が一層働きやすくなり、本効果が一層確実に得られることとなる。
【0041】
なお、本実施の形態においては、リヤサスペンションは、トレーリングアームを有する形式のものであるが、本発明は、これに限定されるものはなく、その他の形式のリヤサスペンションにも適用可能である。
【0042】
また、トンネル部には、前端と後端との間に車体前後方向に延び、トンネル部を補強するトンネルレインフォースメンントが設けられることがあるが、本発明はこのようなものに対しても適用可能であり、この場合、本発明による効果が一層顕著なものとなる。例えば、特許文献1に記載のものにおいてはトンネル部の頂部の上面に沿ってトンネルレインフォースメントが設けられているが、このようなものの場合、本発明の前方延伸部を設けたとしてもトンネルレインフォースメンと干渉することはない。また、トンネル部の頂部の下面に沿ってトンネルレインフォースメントを設けることも考えられるが、この場合、前方延伸部をこの下方で前方に延伸させることにより、トンネルレインフォースメントとの干渉を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、後輪用サスペンションの支持剛性を確保しつつ、サスペンション周辺の車体構造を簡素化することができる後部車体構造を提供することができ、自動車産業において広く利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
2 フロアパネル
2c キックアップフロア部
2d トンネル部
4 リヤサイドフレーム
5 フロアクロスメンバ
10 リヤサスペンション(後輪用サスペンション)
20 リヤサスペンションクロスメンバ(サスペンションクロスメンバ) 30 リヤクロスメンバ
30a 本体部
30b 前方延伸部
30c 湾曲部(変形制御部)
40 燃料タンク
W 後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の床面を構成するフロアパネルの後部に段差状に高くされたキックアップフロア部が設けられていると共に、該フロアパネルにおけるキックアップフロア部を構成する部分よりも前方の部分に、車幅方向中央で車体前後方向に延び、上方に隆起するトンネル部が形成されており、かつ前記フロアパネルにおけるキックアップフロア部を構成する部分の下方において、前記トンネル部とほぼ高さ位置で車体前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームが設けられた車両の後部車体構造であって、
前記左右のリヤサイドフレーム間に、車幅方向に延びて左右両端部が前記リヤサイドフレームに接続されると共に後輪用サスペンションが取り付けられるサスペンションクロスメンバが設けられ、
かつ、該サスペンションクロスメンバに対して上方かつ車体前後方向でほぼ同じ位置で車幅方向に延びて左右両端部が前記リヤサイドフレームに接続される本体部と、該本体部の車幅方向中央から前方に前記トンネル部内に沿って延び、該トンネル部に結合される前方延伸部とを有するリヤクロスメンバが設けられていることを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両の後部車体構造において、
前記リヤクロスメンバの本体部は、両端部よりも車幅方向中央部が前方に位置するように平面視でへ字状に形成されていることを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の車両の後部車体構造において、
前記フロアパネルにおけるキックアップフロア部よりも前方の部分の上面に、トンネル部を横切って車幅方向に延びるフロアクロスメンバが設けられていると共に、
前記リヤクロスメンバの前方延伸部の前端部が前記フロアクロスメンバに接続されていることを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造において、
前記リヤクロスメンバの前方延伸部の下方に燃料タンクが配設されていることを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項5】
前記請求項4に記載の車両の後部車体構造において、
前記リヤクロスメンバの前方延伸部には、車体前後方向から衝撃荷重が入力されたときに該前方延伸部を燃料タンクから離間する方向に変形させる変形制御部が設けられていることを特徴とする車両の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−195257(P2010−195257A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43683(P2009−43683)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】