説明

車両の排気系配設構造

【課題】消音器による排気音の低減機能を維持しつつ、車両の後突時におけるテールパイプの損傷を抑制し、かつ車両の後部に荷物の収容スペースを充分に確保できるようにする。
【解決手段】車体後部の荷室床面を形成するリアフロアパネル4の下方に配設された後輪用サスペンション6の後方に、エンジンの排気音を低減する消音器7と、該消音器7に連結されるテールパイプ8とが配設された車両の排気系配設構造であって、上記リアフロアパネル4には、下方側に凹設された凹設部26が上記消音器7と並設されるとともに、上記テールパイプ8が、該凹設部26の下方を通って車両の後方側に延びるように設置された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部の荷室床面を形成するリアフロアパネルの下方に、エンジンの排気音を低減する消音器と、該消音器に連結されるテールパイプとが配設された車両の排気系配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、エンジンの排気装置において、限られたスペースの中で消音器(排気サイレンサ)の容量を可及的に大きくするとともに、消音器と排気管とを含めた排気装置の支持バランスおよび支持剛性を向上させることを目的として、車体下面視で車体後部のサイドフレームに重なって配設される上下方向に扁平な略直方体の消音器と、サイドフレームよりも車幅方向内側において消音器の前端面に連結される第1排気管と、サイドフレームの前後2個所に形成した開口部に、それぞれ挿入固定されるとともに、消音器の前端部および後端部を支持する第1,第2マウントラバーと、第1排気管を車体下部で支持する第3マウントラバーとを備え、第1〜第3マウントラバーを下面視で三角形状を形成するように配置したエンジンの排気装置が知られている。
【0003】
また、下記特許文献2に示すように、部品点数の増加を伴うことなく終減速装置に床下の通過風を導入可能とすることを目的として、車体フロアに前後方向に延在するトンネル部の下側内方にプロペラシャフトおよび排気管を配置するとともに、プロペラシャフトの後端部に終減速装置を設け、かつ、この終減速装置の車体前方側でトンネル部の下端両側部に跨って車幅方向に補強部材を配置し、この補強部材に、車両走行時に発生する床下の通過風をトンネル部内に取り込んで終減速装置に導く第1導風部を形成することにより、この取込み風で終減速装置を積極的に冷却できるように構成した車体床下構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−325802号公報
【特許文献2】特開2005−170278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されているように、車体下面視で車体後部のサイドフレームに重なるように略直方体の扁平な消音器を配設するとともに、該消音器の後端面における車幅方向外側位置にテールパイプを連結して車両の後方側に突設した場合には、車体後部の上下寸法および前後寸法が大きくなることを防止しつつ、限られたスペースに所定容量の消音器を配設できるという利点がある。しかし、上記特許文献1の図1に開示されているように、車体の下面視において、スペアタイヤパンの一側方部に消音器を配設するとともに、その後面から車両の後方側に向けてテールパイプを突設した構造とした場合には、該テールパイプが車両の後突時に損傷し易いという問題がある。
【0006】
すなわち、車両の後突事故は、車体の後部左右のいずれか一方から衝突荷重が入力されることが多く、上記のように車体後端の側方部にテールパイプが突設された車両では、テールパイプの設置部側に他車が衝突すると、その衝突荷重がテールパイプに作用して該テールパイプが損傷することを防止できなかった。なお、上記消音器による排気音の低減機能を向上させるためには、上記テールパイプの全長を極力増大することが望まれるが、該テールパイプの後方突出量を大きく設定すると、該テールパイプが車両の後突時に、より損傷し易くなるという欠点があった。
【0007】
また、上記特許文献2に係る車両床下構造のように、車体後部の左右に一対の消音器を配設した場合においても、車体後部の上下寸法および前後寸法が大きくなるのを抑制しつつ、限られたスペースに所定の容量を有する消音器を配設することが可能である。しかし、この構成では、車両の後突時に、車体後部の左右にそれぞれ配設されたテールパイプのいずれかに車両の後突荷重が作用することが避けられないため、該テールパイプが、より損傷し易いという欠点がある。
【0008】
なお、車両の燃費および運動性能の向上させるためには、車体を極力小型化するとともに低床化を図ることが好ましいが、所定の容量を有する消音器を、燃料タンクや後輪用のサスペンションとともに、リアフロアパネルの下方に配設した構造とした場合には、車両の後部に荷物を収納するためのスペースを充分に確保することが困難となり、この点を改善することが望まれていた。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、消音器による排気音の低減機能を効果的に向上できるとともに、車両の後突時におけるテールパイプの損傷を抑制可能であり、かつ車両の後部に荷物の収容スペースを充分に確保できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、車体後部の荷室床面を形成するリアフロアパネルの下方に配設された後輪用サスペンションの後方に、エンジンの排気音を低減する消音器と、該消音器に連結されるテールパイプとが配設された車両の排気系配設構造であって、上記リアフロアパネルには、下方側に凹設された凹設部が上記消音器と並設されるとともに、上記テールパイプが、該凹設部の下方を通って車両の後方側に延びるように設置されたものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の排気系配設構造において、上記テールパイプが、車幅方向中央付近から車体後方側へと延びるよう設置されたものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の排気系配設構造において、上記リアフロアパネルの下方には、車両前部に配設されたエンジンと上記消音器とを連結する排気パイプが設けられ、該排気パイプの少なくとも一部が上記凹設部の下方を通るように配管されたものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の排気系配設構造において、上記消音器が、凹設部の車幅方向左右両側にそれぞれ配設されたものである。
【0014】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の排気系配設構造において、エンジンの駆動力を後輪に伝達する駆動系が上記リアフロアパネルの下方に配設されるとともに、該駆動系の車幅方向左右には後輪を収容するホイールハウスが形成され、上記消音器が該ホイールハウスの後方に配設され、かつ上記排気パイプがサスペンションおよび該駆動系の下方を通過するように配管されて上記消音器と連結されたものである。
【0015】
請求項6に係る発明は、上記請求項3〜5のいずれか1項に記載の車両の排気系配設構造において、上記消音器の下面が、凹設部の下面よりも下方側に突出するように設置され、上記テールパイプおよび排気パイプが、上記消音器の車幅方向内側面にそれぞれ連結されたものである。
【0016】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の排気系配設構造において、上記凹設部に、後部荷室に連通可能なサブトランク部が配設されたものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、リアフロアに形成された凹設部を後輪用のサスペンションとの干渉を回避し得る位置で、上記凹設部と消音器とを車幅方向に並設したため、該凹設部の下方に消音器を配設した場合のように、凹設部の設置深さが制限されるという事態を生じることがなく、上記消音器の容量を充分に確保して優れた排気音の低減機能が得られるととともに、上記凹設部の容量を大きく設定して車両の後部に荷物を収容するための充分なスペースを確保できるという利点がある。しかも、上記テールパイプの下流端部を消音器よりも車幅方向の中央部側に位置させることにより、上記消音器の後端面からテールパイプをストレートに車両の後方側に突設したものに比べ、テールパイプの全長を充分に大きくすることができ、これによって上記消音器による排気音の低減機能を効果的に向上させることができるとともに、車体の後部側方に他車が衝突する車両の後突事故が発生した場合においても、上記テールパイプの下流端部に衝突荷重が入力されることはなく、その損傷を効果的に防止できるという利点がある。
【0018】
請求項2に係る発明では、テールパイプを、車幅方向中央付近から車体後方側へと延びるよう設置したため、車体後面の車幅方向中央付近に他車が衝突した場合を除いて、車両の後突時に上記テールパイプが損傷するのを防止できるとともに、上記凹設部との干渉を回避しつつ、テールパイプの全長を効果的に増大して優れた排気音の低減機能が得られるという利点がある。
【0019】
請求項3に係る発明では、上記リアフロアパネルの下方にエンジンと消音器とを連結する排気パイプを設け、該排気パイプの少なくとも一部を、上記凹設部の下方を通るように配管したため、該凹設部の下方空間を有効に利用して上記排気パイプを効率よく取り回すことができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、左右一対の消音器を凹設部の車幅方向左右両側に配設したため、上記凹設部の片側にのみ消音器を配設した場合に比べて、消音器の総容量を倍に設定することができ、上記凹設部の左右両側方部に設けられたスペースを充分に活用して排気の消音効果を効果的に向上できるとともに、上記凹設部の下方空間を有効に利用することにより、上記両消音器に対する排気パイプおよびテールパイプ等の取り回しを効率よく実現できるという利点がある。
【0021】
請求項5に係る発明では、エンジンの駆動力を後輪に伝達する駆動系を上記リアフロアパネルの下方に配設するとともに、該駆動系の車幅方向左右に後輪を収容するホイールハウスを形成し、かつ該ホイールハウスの後方に上記消音器を配設し、サスペンションおよび該駆動系の下方を通過させるように該排気パイプを配管して上記消音器と連結したため、該消音器の容量を充分に確保しつつ、サスペンションに干渉させることなくリアフロアパネルの車幅方向側方部に上記消音器を配設できるとともに、該消音器に対して排気パイプおよびテールパイプを適正に配管できるという利点がある。
【0022】
請求項6に係る発明では、上記消音器の下面を、凹設部の下面よりも下方側に突出させるように設置し、上記テールパイプおよび排気パイプを、上記消音器の車幅方向内側面にそれぞれ連結したため、車両の正面視で上記凹設部に下面に沿って車幅方向に延びるようにテールパイプおよび排気パイプの下流側部分を真っ直ぐ設置して、その端部を上記消音器に対して容易かつ適正に連結することができる。しかも、上記消音器および凹設部の下面を同一高さに設定し、かつ該凹設部の下面に沿って上記テールパイプおよび排気パイプを配管した場合のように、該テールパイプおよび排気パイプが過度に低い位置に設置されることに起因して車両の走行時に路面に接触すること等を効果的に防止しつつ、上記凹設部の下面に沿ってテールパイプおよび排気パイプを適正に取り回して上記消音器に連結できるとともに、車両の空力特性が損なわれるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0023】
請求項7に係る発明では、後部荷室に連通可能なサブトランク部を上記凹設部に配設した構造としたため、該後部荷室および凹設部を荷物の収納部として効率よく使用可能できるとともに、該サブトランク部の下方において上記テールパイプおよび排気パイプを適正に配管できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両の排気系配設構造を示す平面図である。
【図2】排気系およびサスペンション等の配設構造を示す平面図である。
【図3】排気系およびサブトランク部の配設構造を示す側面断面図である。
【図4】排気系およびサブトランク部の配設構造を示す背面断面図である。
【図5】後輪用サスペンションの具体的構成を示す斜視図である。
【図6】後輪用サスペンションの具体的構成を示す平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車両の排気系配設構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図4は、本発明の第1実施形態に係る車両の排気系配設構造を示している。この車両は、車室1の床面を構成するフロアパネル2と、その後方に配設された後部荷室3の床面を形成するリアフロアパネル4とを有している。該リアフロアパネル4の下方左右には、後輪5用のサスペンション6が配設され、該サスペンション6の後方には、エンジンの排気音を低減する左右一対の消音器7と、各消音器7に連結された排気ガスの導出部となるテールパイプ8とがそれぞれ配設されている。
【0026】
上記フロアパネル2の車幅方向中央部には、上方に膨出したフロアトンネル部9が車両の前後方向に延びるように設置され、該フロアトンネル部9内には、エンジンにより回転駆動されるプロペラシャフト10が配設されている。そして、該プロペラシャフト10と、その後端部に設けられたディファレンシャル11と、ドライブシャフト12とを有する駆動系を介して、左右の後輪5,5にエンジンの駆動力が伝達されるようになっている。
【0027】
上記フロアパネル2の後部左右には、斜め後方に向けて立ち上がるキックアップ部13が形成されている。また、上記リアフロアパネル4の左右両側方部には、その下面に沿って車両の前後方向に延びるようにリアサイドフレーム14が設置されている。さらに、上記リアフロアパネル4の前部左右には、後輪5を収容するホイールハウス15が形成されるとともに、その下方に後輪5を支持するサスペンション6が設置されている。
【0028】
上記後輪5用のサスペンション6は、例えば図5および図6に示すように、5本のIリンク16〜20により後輪5のホイールサポート21を車体に対してストローク可能に連結するとともに、緩衝装置24の上下反力を利用して各リンク16〜20の弾性ブッシュに付勢力(プリロード)を付与するように構成されたプリロード式のマルチリンク式サスペンションからなっている。
【0029】
上記各Iリンクは、仮想的にアッパアームを構成する車体前側および後側の2本のアッパリンク16,17と、仮想的にロアアームを構成する車体前側および後側の2本のロアリンク18,19と、該仮想のアッパアームおよびロアアームの配置により決まる仮想キングピン軸周りに後輪5が回動変位するのを規制するトーコントロールリンク20とからなっている。そして、上記アッパリンク16,17およびロアリンク18,19がそれぞれ車体側の端部を中心として上下に揺動することにより、上記ホイールサポート21および後輪5が所定の軌跡に沿って上下にストロークするように構成されている。
【0030】
上記緩衝装置24は、コイルばね22とダンパ23とが略同軸に配置された上下方向に長い円筒状をなし、その上端側に配設された円筒状ブラケット25が車体に取り付けられるとともに、上記ダンパ23の下端部がホイールサポート21の車体内方側に枢着されている。そして、自動車の車体後部の分担荷重および後輪5のストロークに対応するコイルばね22およびダンパ23の反力(緩衝装置の上下反力)が、ホイールサポート21に作用するようになっている。
【0031】
上記リアフロアパネル4には、上方の後部荷室3と連通する凹設部26が、後輪5用のサスペンション6との干渉を回避し得る位置、つまりホイールハウス15の後方側に位置する範囲で、かつ上記リアサイドフレーム14,14間の略全域に亘る範囲において下方に凹設されている。また、上記消音器7は、リアフロアパネル4の左右両側方部に形成されたホイールハウス15の後方側に配設されることにより、該消音器7と上記凹設部26とが車幅方向に並設され、かつ消音器7の下面が、上記凹設部26の下面よりも下方に突出するように設置されている。
【0032】
上記凹設部26内には、荷物が収容されるサブトランク部を構成するボックス状収納部27が挿入されて図外の係止具により係脱可能に係止されている。そして、上記ボックス状収納部27の上面には、必要に応じて開閉リッド28が設置されることにより、後部荷室3の略全体に亘ってフラットな床面が形成され、かつ上記開閉リッド28を開放した状態で、ボックス状収納部27内に対する物品の出し入れを行い得るように構成されている。
【0033】
また、上記消音器7は、フロアトンネル部9内に配設されて車両の前後方向に延びるように設置された上流側パイプ29と、その後端部に連設された左右一対の下流側パイプ30とを有する排気パイプ31を介して、車体の前方部に配設された図外のエンジンに連結されている。上記排気パイプ31の下流側パイプ30は、リアフロアパネル4に形成された凹設部26の下方を通り、かつ上記ドライブシャフト12等からなる駆動系およびサスペンション6の下方を通過して車幅方向の外方側に延びるように配管されるとともに、下流側パイプ30の下流端部が、上記消音器7の車幅方向内側面であってその下辺部前方に連結されている。
【0034】
上記消音器7の車幅方向内側面であってその下辺部後方にはテールパイプ8の上流端部が連結されている。該テールパイプ8は、上記凹設部26の下方を通って車幅方向に延びる上流側部32と、その車幅方向中央部側に位置する下流端部から上記凹設部26の下方を通って車両の後方側に延びる下流側部33とを有している。そして、上記凹設部26の車幅方向左右両側に配設された一対の消音器7に上流側部32が連結された両テールパイプ8の下流側部33が、それぞれ車幅方向中部付近から車両の後端面側に向けて突設されている。
【0035】
上記のように車体後部の荷室床面を形成するリアフロアパネル4の下方に配設された後輪5用のサスペンション6の後方に、エンジンの排気音を低減する消音器7と、該消音器7に連結されるテールパイプ8とが配設された排気系の配設構造において、上記リアフロアパネル4には、下方側に凹設された凹設部26が上記消音器7と並設されるとともに、上記テールパイプ8が、該凹設部26の下方を通って車両の後方側に延びるように設置された構成としたため、消音器7による排気音の低減機能を効果的に向上できるとともに、車両の後突時におけるテールパイプ8の損傷を抑制可能であり、かつ車両の後部に荷物を収容するためのスペースを効果的に確保できるという利点がある。
【0036】
すなわち、上記第1実施形態では、上方の後部荷室3と連通する凹設部26を、後輪5用のサスペンション6との干渉を回避し得る位置で、上記リアサイドフレーム14,14間の略全域に亘る範囲に配設したため、上記凹設部26の容量を大きく設定して車両の後部に荷物を収容するための充分なスペースを確保することができる。しかも、上記凹設部26と消音器7とを車幅方向に並設したため、該凹設部26の下方に消音器7を配設するように構成した場合のように凹設部26の設置深さが制限されるという事態を生じることがなく、上記消音器7の容量を充分に確保することにより、優れた排気音の低減機能が得られるという利点がある。
【0037】
そして、上記凹設部26の下方を通って車幅方向に延びる上流側部32と、その車幅方向中央部側に位置する下流端部から上記凹設部26の下方を通って車両の後方側に延びる下流側部33とにより上記テールパイプ8を構成したため、消音器7の後端面からテールパイプをストレートに車両の後方側に突設したものに比べ、上記テールパイプ8の全長を充分に大きくすることができ、これによって上記消音器7による排気音の低減機能を効果的に向上させることができる。
【0038】
さらに、上記テールパイプ8を凹設部26の下面に沿って車両の後方側に延びるように設置することにより、テールパイプ8の下流側部33を消音器7の設置部よりも車幅方向の中央部側に位置させた構造としたため、車体の後部側方に他車が衝突する車両の後突事故が発生した場合においても、上記テールパイプ8の下流側部33に衝突荷重が入力されることはなく、その損傷を効果的に防止できるという利点がある。特に、上記第1実施形態に示すように、テールパイプ8の下流側部33を、車幅方向中央付近から車体後方側へと延びるよう設置した場合には、車体後面の車幅方向中央付近に他車が衝突した場合を除いて、車両の後突時に上記テールパイプ8が損傷するのを防止できるという利点がある。しかも、上記凹設部26との干渉を回避しつつ、テールパイプ8の全長を効果的に増大して優れた排気音の低減機能が得られるという利点もある。
【0039】
また、上記第1実施形態では、リアフロアパネル4の下方に、車両前部に配設されたエンジンと上記消音器7とを連結する上流側パイプ29および下流側パイプ30からなる排気パイプ31を設け、該排気パイプ31の少なくとも一部、具体的には下流側パイプ30を上記凹設部26の下面に沿って配管した構成としたため、該凹設部26の下方空間を有効に利用して上記排気パイプ31を効率よく取り回すことができる。
【0040】
さらに、上記第1実施形態に示すように、左右一対の消音器7を凹設部26の車幅方向左右両側に配設した場合には、上記凹設部26の片側にのみ消音器7を配設した場合に比べて、消音器7の総容量を倍に設定することができる。したがって、上記凹設部26の左右両側方部に設けられたスペースを充分に活用して排気の消音効果を効果的に向上させることができるとともに、上記凹設部26の下方空間を有効に利用することにより、上記両消音器7に対する排気パイプ31およびテールパイプ8の取り回しを効率よく実現できるという利点がある。
【0041】
また、上記第1実施形態では、エンジンの駆動力を後輪5に伝達するプロペラシャフト10、ディファレンシャル11およびドライブシャフト12等からなる駆動系を上記リアフロアパネル4の下方に配設するとともに、該駆動系の車幅方向左右に後輪5を収容するホイールハウス15を形成し、上記消音器7を該ホイールハウス15の後方に配設するとともに、上記排気パイプ31を、上記サスペンション6および該駆動系の下方を通過させるように配管して上記消音器7と連結した構成としたため、該消音器7をサスペンション6に干渉させることなく、リアフロアパネル4の車幅方向側方部に配設してその容量を充分に確保しつつ、上記排気パイプ31およびテールパイプ8を消音器7に対して適正に配管できるという利点がある。
【0042】
さらに、上記第1実施形態に示すように、消音器7の下面を、凹設部26の下面よりも下方に突出させるように設置し、上記テールパイプ8および排気パイプ31を、上記消音器7の車幅方向内側面にそれぞれ連結した構成とした場合には、車両の正面視で上記凹設部26に下面に沿って上記テールパイプおよび排気パイプ30の下流側パイプ31を車幅方向に延びるように真っ直ぐに設置して、その端部を上記消音器7に対して容易かつ適正に連結することができる。
【0043】
なお、上記消音器7および凹設部26の下面を同一高さに設定し、かつ該凹設部20の下面に沿って上記テールパイプ8および排気パイプ31を配管することも可能であるが、このように構成した場合には、該テールパイプ8および排気パイプ31が過度に低い位置に設置されて車両の走行時に路面に接触する可能性があるとともに、車両の空力特性が損なわれる可能性がある。これに対して上記第1実施形態のように消音器7の下面を、凹設部26の下面よりも下方に突出させるように設置し場合には、上記テールパイプ8および排気パイプ31の設置高さが過度に低くなること等を効果的に防止しつつ、凹設部26の下面に沿ってテールパイプ8および排気パイプ31を適正に取り回して上記消音器7に連結できるとともに、車両の空力特性が損なわれるのを防止できるという利点がある。
【0044】
また、上記第1実施形態では、後部荷室3に連通可能なサブトランク部となるボックス状収納部27を上記凹設部26に配設した構造としたため、該後部荷室3および凹設部26を荷物の収納部として効率よく使用可能できるとともに、該サブトランク部の下方部において上記テールパイプ8および排気パイプ31を適正に配管できるという利点がある。
【0045】
上記第1実施形態では、フロアトンネル部9に沿って車両の前後方向に延びるように設置された上流側パイプ29と、その後端部に連設された左右一対の下流側パイプ30とを有する排気パイプ31により、上記左右の消音器7を車体前方部のエンジンに対して並列に配置した例について説明したが、左右の消音器7をエンジンに対して直列に配置した構造としてもよい。例えば、図7に示す本発明の第2実施形態のように、フロアトンネル部9に沿って設置された上流側パイプ29と、その下流部から車幅方向外方側へ略直角に屈曲してその下流端部が一方の消音器7aに連結された屈曲部34とにより排気パイプ31を構成するとともに、該消音器7aの内側面下辺部後方と、他方の消音器7bの内側面下辺部前方とを接続する接続管35を設け、かつ上記消音器7bの車幅方向内側面であってその下辺部後方にテールパイプ8の上流端部を連結することにより、車体前方部のエンジンに対して左右の消音器7a,7bを直列に配置した構造としてもよい。
【0046】
上記第2実施形態に係る車両の排気系配設構造においても、リアフロアパネル4に形成された凹設部26と、上記消音器7とを車幅方向に並設することにより、該消音器7の容量を充分に確保して優れた排気音の低減機能が得られるとともに、上記凹設部26の下方を通って車幅方向に延びるように上記接続管35およびテールパイプ8を配設することにより、その全長を充分に大きくすることができるため、上記消音器7による排気音の低減機能を効果的に向上させることができる。しかも、上記テールパイプ8の下流側部33を、車幅方向中央付近から車体後方側へと延びるよう設置することにより、車体の後部側方に他車が衝突する車両の後突事故の発生時に、上記テールパイプの損傷を効果的に防止できる等の利点がある。
【符号の説明】
【0047】
3 後部荷室
4 リアフロアパネル
5 後輪
6 サスペンション
7 消音器
8 テールパイプ
15 ホイールハウス
26 凹設部
31 排気パイプ
27 ボックス状収納部(サブトランク部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の荷室床面を形成するリアフロアパネルの下方に配設された後輪用サスペンションの後方に、エンジンの排気音を低減する消音器と、該消音器に連結されるテールパイプとが配設された車両の排気系配設構造であって、リアフロアパネルには、下方側に凹設された凹設部が上記消音器と並設されるとともに、上記テールパイプが、該凹設部の下方を通って車両の後方側に延びるように設置されたことを特徴とする車両の排気系配設構造。
【請求項2】
上記テールパイプが、車幅方向中央付近から車体後方側へと延びるよう設置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の排気系配設構造。
【請求項3】
上記リアフロアパネルの下方には、車両前部に配設されたエンジンと上記消音器とを連結する排気パイプが設けられ、該排気パイプの少なくとも一部が上記凹設部の下方を通るように配管されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の排気系配設構造。
【請求項4】
上記消音器が、凹設部の車幅方向左右両側にそれぞれ配設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の排気系配設構造。
【請求項5】
エンジンの駆動力を後輪に伝達する駆動系が上記リアフロアパネルの下方に配設されるとともに、該駆動系の車幅方向左右には後輪を収容するホイールハウスが形成され、上記消音器が該ホイールハウスの後方に配設され、かつ上記排気パイプがサスペンションおよび該駆動系の下方を通過するように配管されて上記消音器と連結されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の排気系配設構造。
【請求項6】
上記消音器の下面が、凹設部の下面よりも下方側に突出するように設置され、上記テールパイプおよび排気パイプが、上記消音器の車幅方向内側面にそれぞれ連結されたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の車両の排気系配設構造。
【請求項7】
上記凹設部に、後部荷室に連通可能なサブトランク部が配設されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の排気系配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−234994(P2010−234994A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86223(P2009−86223)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】