説明

車両の盗難防止装置

【課題】ステアリングロック用アクチュエータによりステアリングのロック/アンロック状態を切り換える場合に、そのアクチュエータの駆動音が大きくても目立たなくするとともに、イグニッションスイッチがオフ状態にあるときの暗電流の増大を抑制する。
【解決手段】ステアリングがアンロック状態にあり、かつ、イグニッションスイッチがオフ状態にあるときにおいて、ドア状態が変化したことが検知され、かつ、車両停止状態検知手段により車両の停止状態が検知されたときに、ステアリングをロック状態に切り換える(ステップS7)とともに、イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態になったときに、車両停止状態検知手段への電源供給を停止し(ステップS2)、該電源供給停止後にイグニッションスイッチのオフ状態が維持されている状態で、ドア状態が変化したことが検知されたときに、車両停止状態検知手段へ電源を供給する(ステップS4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングロック用アクチュエータを駆動制御してステアリングをロック状態とアンロック状態とに択一的に切り換えるようにした車両の盗難防止装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、操作性の向上を目的として、スマートキーレスエントリシステムを搭載することが提案されている。このスマートキーレスエントリシステムでは、乗員が携帯機を所持しながら、ドアのアウタドアハンドル又はその近傍に設けられたスイッチを操作することで、ドアのロック/アンロックを行うことができ、携帯機が車室内に存在するときには、車室内に設けられたプッシュ式や回動式のイグニッションスイッチを操作することで、エンジンの始動・停止が可能となる。
【0003】
一方、車両の盗難防止性を確保するために、車両には、ステアリングロック機構が設けられている。このステアリングロック機構は、車両の駐車状態においてステアリングの回動を規制することによって盗難防止性を向上させる機構であり、上記のようなスマートキーレスエントリシステムを有する車両のステアリングロック機構においては、ステアリングシャフトに係脱可能なロック部材をステアリングロック用アクチュエータによって駆動し、そのアクチュエータの駆動を制御装置によって制御することで、ステアリングのロック/アンロック状態を切り換えるようにしている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−1865号公報
【特許文献2】特開2003−293923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようにステアリングロック用アクチュエータを駆動してステアリングのロック/アンロック状態を切り換えるようにする盗難防止装置では、そのアクチュエータの駆動音が比較的大きくなる場合があり、このため、その駆動音が目立たないようにするべく、ドアの開閉(開状態から閉状態への変化又は閉状態から開状態への変化)時や、ドアのロック/アンロック状態の切換え時に、ステアリングのロック/アンロック状態を切り換えるようにすることが好ましい。そこで、ステアリングをアンロック状態からロック状態へ切り換えるタイミングとしては、イグニッションスイッチをオフ状態にしたときにおいて、ドアの開閉状態やドアのロック/アンロック状態等のドア状態の変化を検知したときが考えられる。
【0005】
また、安全性の観点から、車両が停止していることを条件として、ステアリングをアンロック状態からロック状態へ切り換える必要がある。そこで、イグニッションスイッチをオフ状態にしたときにおいて、ドア状態の変化を検知しかつ車両の停止状態を検知したときに、ステアリングをアンロック状態からロック状態へ切り換えるようにすることが好ましい。
【0006】
ここで、上記車両の停止は、一般的な車速センサ等により検知することができる。或いは、盗難防止装置とは別の装置やシステム(例えばアンチロックブレーキシステム)に設けられている車速検出部により検出された車速を用いて検知することもでき、こうすれば、コストダウンを図ることができる。
【0007】
しかし、上記のようなロック状態への切換えタイミングでは、イグニッションスイッチがオフ状態にあるときに、従来は非作動にしていた車速センサや他の装置、システム等を作動させておく必要があるため、乗員が仮眠する等してイグニッションスイッチがオフ状態でドアの開閉等が長時間なされなかった場合、その間中、車速センサ等に電源が供給されて、暗電流が増大するという問題がある。特に他の装置やシステムの車速検出部による車速を用いる場合には、その装置やシステム全体を作動し続ける必要があり、暗電流がより一層増大する。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ステアリングロック用アクチュエータによりステアリングのロック/アンロック状態を切り換える場合に、そのアクチュエータの駆動音が大きくても目立たなくするとともに、イグニッションスイッチがオフ状態にあるときの暗電流の増大を出来る限り抑制しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、ステアリングがアンロック状態にあり、かつ、イグニッションスイッチがオフ状態にあるときにおいて、ドア状態検知手段によりドア状態が変化したことが検知され、かつ、車両停止状態検知手段により車両の停止状態が検知されたときに、ステアリングをロック状態に切り換えるとともに、イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態になったときに、車両停止状態検知手段への電源供給を停止し、該電源供給停止後にイグニッションスイッチのオフ状態が維持されている状態で、ドア状態検知手段によりドア状態が変化したことが検知されたときに、車両停止状態検知手段へ電源を供給するようにした。
【0010】
具体的には、請求項1の発明では、ステアリング操作に連動する可動部材に対して係脱して該ステアリングをロック状態とアンロック状態とに択一的に切り換えるロック部材と、該ロック部材を、上記ステアリングのロック/アンロック状態が切り換わるように駆動するステアリングロック用アクチュエータと、該アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段とを備えた車両の盗難防止装置を対象とする。
【0011】
そして、上記車両の乗員が操作するイグニッションスイッチと、上記車両の停止状態を検知する車両停止状態検知手段と、上記イグニッションスイッチがオン状態にあるときに、上記車両停止状態検知手段へ、該車両停止状態検知手段を作動させるための電源を供給する電源供給手段と、上記車両のドア状態を検知するドア状態検知手段とを備え、上記駆動制御手段は、上記ステアリングがアンロック状態にあり、かつ、上記イグニッションスイッチがオフ状態にあるときにおいて、上記ドア状態検知手段により上記ドア状態が変化したことが検知され、かつ、上記車両停止状態検知手段により上記車両の停止状態が検知されたときに、上記ステアリングロック用アクチュエータを駆動して、上記ステアリングをロック状態に切り換えるように構成されており、上記電源供給手段は、上記イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態になったときに、上記車両停止状態検知手段への電源供給を停止し、該電源供給停止後において上記イグニッションスイッチのオフ状態が維持されている状態で、上記ドア状態検知手段により上記ドア状態が変化したことが検知されたときに、上記車両停止状態検知手段へ電源を供給するように構成されているものとする。
【0012】
上記の構成により、イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態になると、車両停止状態検知手段への電源供給が停止される。そして、この電源供給停止状態は、イグニッションスイッチのオフ状態が維持されていれば、ドア状態検知手段によりドア状態が変化するまで続けられ、ドア状態(ドアの開閉状態やドアのロック/アンロック状態)が変化したことが検知されると(ドア状態検知手段に対しては、イグニッションスイッチがオフ状態であっても電源が供給される)、車両停止状態検知手段へ電源が供給され、これにより、車両が停止していれば、車両停止状態検知手段により車両の停止状態が検知される。こうして車両の停止状態が検知されると、ステアリングがロック状態に切り換えられる。ここで、車両停止状態検知手段への電源供給及び車両停止状態検知手段による車両停止状態の検知にかかる時間は非常に短く、この結果、ステアリングロック用アクチュエータの駆動音がドアの開閉音やドアロック用アクチュエータの駆動音(ドアロック音)と重なって、ステアリングロック用アクチュエータの駆動音が大きくても目立たなくなる。また、上記の如く、ドア状態検知手段によりドア状態が変化するまで車両停止状態検知手段への電源供給が停止されるので、乗員が仮眠する等してイグニッションスイッチがオフ状態でドアの開閉等が長時間なされなかったとしても、車両停止状態検知手段の作動による暗電流の増大を抑制することができる。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記電源供給手段は、上記ステアリングのロック状態への切換え完了後に、上記車両停止状態検知手段への電源供給を停止するように構成されているものとする。
【0014】
このことにより、ステアリングのロック状態への切換え完了後においても、車両停止状態検知手段の作動による暗電流の増大を抑制することができる。
【0015】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記車両は、制動時の車輪ロックを抑制するように制動装置の制動力を制御するアンチロックブレーキシステムを有し、上記車両停止状態検知手段は、上記アンチロックブレーキシステムにおいて車速を検出する車速検出部により構成されているものとする。
【0016】
このことで、車両停止状態検知手段を盗難防止装置専用に設ける必要がなくて、コストダウンを図ることができる。一方、アンチロックブレーキシステムの車速検出部を作動させるためには、通常、アンチロックブレーキシステム全体を作動させる必要があり、乗員が仮眠する等してイグニッションスイッチがオフ状態でドアの開閉等が長時間なされなかった場合に、アンチロックブレーキシステム全体を作動し続けると、暗電流が大幅に増大することになる。しかし、本発明では、ドアの開閉等が長時間なされなかった場合でも、アンチロックブレーキシステム全体を非作動にすることができ、暗電流の増大効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0017】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、上記車両は、該車両の乗員が携帯しかつ識別コードを無線送信する携帯機と、該車両に搭載されかつ該携帯機からの識別コードを受信する車載機とで構成されていて該車載機が受信した識別コードが、車載機に予め記憶された識別コードと一致したときに車両に搭載された車載制御機器の作動を可能にするスマートキーレスエントリシステムを有し、上記電源供給手段は、上記スマートキーレスエントリシステムの車載機を介して上記車両停止状態検知手段へ電源を供給するように構成されているものとする。
【0018】
このことで、イグニッションスイッチがオフ状態であっても、スマートキーレスエントリシステムの車載機には、通常、電源が供給されるので、車両停止状態検知手段への電源供給が容易に行える。
【0019】
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか1つの発明において、上記ドア状態検知手段は、上記ドア状態として、ドアの開閉状態又はドアのロック/アンロック状態を検知するように構成されているものとする。
【0020】
このことにより、ドア状態の変化を容易に検知することができるとともに、ステアリングロック用アクチュエータの駆動音が大きくても、その駆動音を確実に目立たなくすることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の車両の盗難防止装置によると、ステアリングがアンロック状態にあり、かつ、イグニッションスイッチがオフ状態にあるときにおいて、ドア状態検知手段によりドア状態が変化したことが検知され、かつ、車両停止状態検知手段により車両の停止状態が検知されたときに、ステアリングをロック状態に切り換えるとともに、イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態になったときに、車両停止状態検知手段への電源供給を停止し、該電源供給停止後にイグニッションスイッチのオフ状態が維持されている状態で、ドア状態検知手段によりドア状態が変化したことが検知されたときには、車両停止状態検知手段へ電源を供給するようにしたことにより、ステアリングロック用アクチュエータの駆動音が大きくても目立たなくなるとともに、イグニッションスイッチがオフ状態にあるときの暗電流の増大を出来る限り抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る車両の盗難防止装置1の構成を示す。この盗難防止装置1は、メカニカルキーを使用しないでドアをロック/アンロックさせかつエンジン5を始動させることが可能なキーレスエントリ装置2と、ステアリング操作に連動する可動部材であるステアリングシャフト7を回動不能にしてステアリング操作を不能にするステアリングロック装置3とを備えている。尚、上記エンジン5は、エンジン制御ユニット(ECU)6により制御される。
【0024】
上記キーレスエントリ装置2は、第1制御ユニット10と第1ドライバ11とを有している。第1制御ユニット10は、情報処理を行うCPU10aと、プログラムやデータを記憶しているROM10bと、CPU10aの主記憶装置として機能するとともにCPU10aにワークエリアを提供するRAM10cと、EEPROM(electrically erasable programable ROM)10dとを含んでいる。このEEPROM10dには、現在のステアリングシャフト7のロック/アンロック状態が記憶されるとともに、所定の識別コードが予め記憶されている。
【0025】
上記第1制御ユニット10は、上記第1ドライバ11、プッシュ式や回動式のイグニッションスイッチ22、上記ECU6、ドアロック制御ユニット41及び後述の第2制御ユニット30と電気的に接続されているとともに、上記第1制御ユニット10のEEPROM10dに記憶されたものと同じ識別コードを無線送信する携帯機21と無線通信可能に構成されている。そして、バッテリ20の電源(電力)が第1制御ユニット10と第1ドライバ11とに供給され、第1ドライバ11が第1制御ユニット10により制御されて、上記電源が第1ドライバ11からステアリングロック装置3における後述の第2制御ユニット30及び第2ドライバ31に供給停止可能に供給される。また、上記電源は、第1制御ユニット10からECU6及びアンチロックブレーキシステム(ABS)51に供給停止可能に供給される。さらに、上記電源は、第1制御ユニット10からドアロック制御ユニット41及び後述の各スイッチ43〜45に供給されるとともに、ドアロック制御ユニット41から、後述のドアロック用アクチュエータ42に供給停止可能に供給される。
【0026】
上記ABS51は、当該車両の制動時の車輪ロックを抑制するように制動装置の制動力を制御するものであって、当該車両の走行速度を検出する車速検出部52を有している。この車速検出部52は、本実施形態では、車両の停止状態を検知する車両停止状態検知手段を構成しており、車速が0(厳密に0でなくても、所定速度(車速が実質的に0であるとすることが可能な最大値であり、例えば4km/h)以下であってもよい)であるとき、車両が停止状態にあることを検知する。上記車速検出部52は、一般的な車速センサで構成してもよく、各車輪の速度をそれぞれ検出する各車輪速センサにより検出される各車輪の速度から車速を推定するものであってもよい。
【0027】
上記ドアロック制御ユニット41は、車両のドアをロック/アンロックするドアロック用アクチュエータ42の駆動を制御するものであって、第1制御ユニット10からの指令に基づいて、ドアロック用アクチュエータ42を、上記電源を供給することにより駆動する。また、ドアロック制御ユニット41には、ドアの開閉状態を検知するドア開閉状態検知スイッチ43と、ドアのロック/アンロック状態を検知するドアロック/アンロック状態検知スイッチ44と、ドアのアウタドアハンドル又はその近傍に設けられたドアロック/アンロックスイッチ45とが接続されていて、該各スイッチ43〜45からの情報がドアロック制御ユニット41に入力され、更にドアロック制御ユニット41から第1制御ユニット10に入力される。
【0028】
上記ドアロック/アンロック状態検知スイッチ44は、車両のドアにおける車室側に設けられかつ該ドアをロック/アンロックするべく該車両の乗員により操作されるロックノブ又は該ロックノブに連動する連動部材(例えばロックノブとロック機構とを連結するリンク部材)の作動位置を検知することで、ドアのロック/アンロック状態を検知するようになっており、当該車両の乗員がロックノブを直接操作したときであっても、ドアロック用アクチュエータ42が駆動したときであっても、ロックノブ及び連動部材が作動して、ドアのロック/アンロック状態を検知することができる。
【0029】
上記第1制御ユニット10は、車両に搭載されかつ上記携帯機21からの識別コードを受信する車載機を構成していて、第1制御ユニット10が受信した識別コードが、上記EEPROM10dに予め記憶された識別コードと一致したときにドアのロック/アンロックを可能にし、この状態で乗員が上記ドアロック/アンロックスイッチ45を操作すると、このドアロック/アンロックスイッチ45から第1制御ユニット10に、ドアをロックさせるロック指示又はアンロックさせるアンロック指示が送信されて、第1制御ユニット10がこの指示を受信して、その指示に応じてドアロック制御ユニット41を介してドアロック用アクチュエータ42を駆動してドアをロック/アンロックする。尚、ドアをロック/アンロックのための操作スイッチを有する携帯機から、乗員の操作スイッチの操作によりロック指示又はアンロック指示を第1制御ユニット10に送信するようにしてもよい。
【0030】
また、第1制御ユニット10は、上記携帯機21が車室内に存在する状態で、第1制御ユニット10が受信した識別コードが、EEPROM10dに予め記憶された識別コードと一致したときには、上記イグニッションスイッチ22をオン状態にすることを可能にする。すなわち、エンジン5を含む車載制御機器を作動させることを可能にする。このように、第1制御ユニット10及び携帯機21は、第1制御ユニット10が受信した識別コードが、第1制御ユニット10に予め記憶された識別コードと一致したときに車両に搭載された車載制御機器の作動を可能にするスマートキーレスエントリシステムを構成している。
【0031】
上記スマートキーレスエントリシステムにおいては、上記車両の乗員が該車両に乗り込むために上記携帯機21を所持しながらドアロック/アンロックスイッチ45を操作すると、ドアがアンロック状態となり、ドアを開けて車室内に入ると、イグニッションスイッチ22をオン状態にすることが可能になる。そして、イグニッションスイッチ22を操作してオン状態にすることで、エンジン5が始動する。
【0032】
一方、車両が停止した後に乗員がイグニッションスイッチ22をオフ状態にして、携帯機21を所持しながら車両から降りてドアを閉め、ドアロック/アンロックスイッチ45を操作すると、ドアがロック状態となる。
【0033】
尚、携帯機21の故障や電池切れ等に対応できるように、メカニカルキーを、車両のドアにおける外側に設けたキースロットに差し込んで回すことで、ドアのロック/アンロックが可能になっており、また、そのメカニカルキーを、ステアリングコラムに設けたキースロットに差し込んで回すことで、エンジン5を始動することが可能になっている。
【0034】
上記ステアリングロック装置3は、第2制御ユニット30と、第2ドライバ31と、ステアリングロック用アクチュエータとしての電動モータ32を含む駆動機構33と、ロック部材34とを有している。第2制御ユニット30は、情報処理を行うCPU30aと、プログラムやデータを記憶しているROM30bと、CPU30aの主記憶装置として機能するとともにCPU30aにワークエリアを提供するRAM30cと、EEPROM30dとを含んでいる。このEEPROM30dには、現在のステアリングシャフト7のロック/アンロック状態が記憶される。
【0035】
上記第2制御ユニット30は、第1制御ユニット10、第1ドライバ11及び第2ドライバ31と電気的に接続されており、第1制御ユニット10へ、EEPROM30dに記憶されているロック/アンロック状態の情報を送信する。第1制御ユニット10は、この情報をEEPROM10dに記憶する。上記第2ドライバ31は、第2制御ユニット30により制御されて、第2ドライバ31から電動モータ32に上記電源が供給停止可能に供給される。そして、上記電源が電動モータ32に供給されている間、電動モータ32が駆動されることになる。
【0036】
上記ロック部材34は、上記ステアリングシャフト7に設けた被係合部7a(凹部)に係脱してステアリングシャフト7(つまりステアリング)をロック状態とアンロック状態とに択一的に切り換えるものであり、電動モータ32は、そのロック部材34を、ステアリングシャフト7のロック/アンロック状態が切り換わるように駆動するものである。尚、駆動機構33は、電動モータ32の出力をロック部材34に伝達するギヤ等を含むものである。
【0037】
上記バッテリ20の電源は、イグニッションスイッチ22がオフ状態にあるときには、第1制御ユニット10、第1ドライバ11、ドアロック制御ユニット41及び各スイッチ43〜45に供給されるが、第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51には基本的に供給されない。但し、後述の如く上記電動モータ32を駆動するタイミングとなったときには、上記電源が第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51に供給され、更に第2ドライバ31が第2制御ユニット30により制御されて電動モータ32に上記電源が供給され、電動モータ32の駆動が完了すると、第1制御ユニット30は、その完了した旨の情報(後述のEEPROM10dの更新情報)を第2制御ユニット30から受信して、第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51への電源供給を停止する。尚、イグニッションスイッチ22がオフ状態にあるときには、上記電源はECU6には常に供給されず、イグニッションスイッチ22がオン状態になったときに供給される。また、イグニッションスイッチ22がオン状態になったときには、第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51に上記電源が供給される。
【0038】
上記第1制御ユニット10は、後述のタイミングでステアリングシャフト7をロック状態及びアンロック状態のうちの一方から他方へ切り換える指令を第2制御ユニット30へ出力し、第2制御ユニット30は、その指令を受けて第2ドライバ31を介して電動モータ32を駆動して、ロック部材34を、被係合部7aに係合するロック位置及び被係合部7aから離脱したアンロック位置のうちの一方から他方へ移動させる。このことで、第1及び第2制御ユニット10,30は、電動モータ32(ステアリングロック用アクチュエータ)の駆動を制御する駆動制御手段を構成する。そして、第2制御ユニット30は、ステアリングシャフト7のロック/アンロック状態の切換えが完了したとき、電動モータ32への電源供給を停止するとともに、EEPROM10dに記憶しているロック/アンロック状態の情報を更新し、その更新情報を第1制御ユニット10へ送信する。
【0039】
上記第1及び第2制御ユニット10,30は、ステアリングシャフト7をアンロック状態からロック状態へ切り換える際には、以下の如く動作する。
【0040】
すなわち、第1制御ユニット10は、ステアリングシャフト7がアンロック状態にあり、かつ、イグニッションスイッチ22がオフ状態にあるときにおいて、ドア開閉状態検知スイッチ43によりドアの開閉状態が変化したこと(本実施形態では、ドアが開状態から閉状態になったこと)が検知されたときに、上記車速検出部52により車両の停止状態が検知されたことを条件に、ステアリングシャフト7をロック状態へ切り換える指令を第2制御ユニット30へ出力し、第2制御ユニット30は、電動モータ32を駆動してステアリングシャフト7をアンロック状態からロック状態へ切り換える。尚、ドアの開閉状態の変化の検知としては、ドアが閉状態から開状態になったことの検知であってもよい。
【0041】
より詳細には、第1制御ユニット10は、イグニッションスイッチ22がオン状態からオフ状態になったときに、第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51への電源供給を停止し、この電源供給停止後においてイグニッションスイッチ22のオフ状態が維持されている状態で、ドア開閉状態検知スイッチ43によりドアの開閉状態が変化したこと(ドアが開状態から閉状態になったこと)が検知されたときに、上記バッテリ20の電源を第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51に供給する。これにより、ABS51が作動して車速検出部52によって車速が検出され、ABS51からの車速情報が第1制御ユニット10に入力されることになる。そして、第1制御ユニット10は、この車速情報から車両が停止状態にあると判定すると、ステアリングシャフト7をロック状態へ切り換える指令を第2制御ユニット30へ出力し、第2制御ユニット30は、第2ドライバ31を介して電動モータ32を駆動してステアリングシャフト7をアンロック状態からロック状態へ切り換える。
【0042】
そして、第2制御ユニット30は、ステアリングシャフト7のロック状態への切換えが完了したとき、電動モータ32への電源供給を停止するとともに、EEPROM10dに「ロック状態」として更新記憶し、その更新情報を第1制御ユニット10へ送信する。この更新情報を受信した第1制御ユニット10は、第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51への電源供給を停止する。
【0043】
尚、上記停止状態にあるか否かの判定時に、車両が走行していたり車速検出部52に故障等が生じていたりした場合には、第1制御ユニット10は、車両が停止状態にないと判定し、そのときには、上記ABS51等への電源供給開始から所定時間(イグニッションスイッチ22をオフ状態にして走行すると考えられる最大時間又はバッテリ20のダメージを抑制可能な時間であり、例えば30分程度)が経過するまでの間、車両が停止状態になるのを待ち、停止状態になれば、ステアリングシャフト7をロック状態へ切り換える指令を第2制御ユニット30へ出力するが、上記所定時間が経過しても車両が停止状態にならない場合には、上記ABS51等への電源供給を停止する。
【0044】
一方、第1制御ユニット10は、ステアリングシャフト7がアンロック状態にあり、かつ、イグニッションスイッチ22がオフ状態にあるときにおいて、ドア開閉状態検知スイッチ43によりドアの開閉状態が変化したことが検知されないときには、ステアリングシャフト7をロック状態へ切り換える指令を第2制御ユニット30へ出力しない、つまり、ステアリングシャフト7をロック状態に切り換えない。
【0045】
尚、上述の如く車両の乗員が該車両に乗り込むために携帯機21を所持しながらドアロック/アンロックスイッチ45を操作すると、ドアがアンロック状態になるが、第1制御ユニット10は、このタイミングか、又は、その後にドアが閉状態から開状態になるのと略同時に、上記電源を第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51に供給するとともに、ステアリングシャフト7をロック状態からアンロック状態へ切り換える指示を第2制御ユニット30へ出力する。また、ステアリングシャフト7がロック状態にあるときにおいて、イグニッションスイッチ22がオン状態になったときには、上記電源を第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51に供給するとともに、ステアリングシャフト7をアンロック状態へ切り換える指示を第2制御ユニット30へ出力して、ステアリングシャフト7をアンロック状態へ切り換えるようにする。
【0046】
本実施形態では、第1制御ユニット10が、車載機に加えて、イグニッションスイッチ22がオン状態にあるときに、ABS51の車速検出部52へ、該車速検出部52を作動させるための電源を供給する電源供給手段を構成していて、電源を車載機を介して車速検出部52へ供給していることになる。また、ドア開閉状態検知スイッチ43が、車両のドア状態としてドアの開閉状態を検知するドア状態検知手段を構成することになる。
【0047】
上記第1制御ユニット10におけるステアリングシャフト7のロック状態への切換え処理動作を図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0048】
最初のステップS1で、イグニッションスイッチがオフ状態であるか否かを判定し、このステップS1の判定がNOであるときには、ステップS1の処理を繰り返す一方、ステップS1の判定がYESになると、ステップS2に進んで、第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51への電源供給を停止し、しかる後にステップS3に進む。
【0049】
上記ステップS3では、ドアが開状態から閉状態になったか否かを判定し、このステップS3の判定がNOであるときには、上記ステップS1に戻る一方、ステップS3の判定がYESであるときには、ステップS4に進んで、第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51へ上記電源を供給し、しかる後にステップS5に進む。
【0050】
上記ステップS5では、車両が停止状態にあるか否かを判定し、このステップS5の判定がNOであるときには、ステップS6に進む一方、ステップS5の判定がYESであるときには、ステップS7に進む。
【0051】
上記ステップS6では、上記ステップS4の電源供給開始から上記所定時間が経過したか否かを判定し、このステップS6の判定がNOであるときには、上記ステップS5に戻る一方、ステップS6の判定がYESであるときには、上記ステップS2に戻る。
【0052】
上記ステップS5の判定がYESであるときに進むステップS7では、ステアリングシャフト7をロック状態へ切り換える指令を第2制御ユニット30へ出力し、次のステップS8で、第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51への電源供給を停止し、本切換え処理を終了する。
【0053】
上記第1及び第2制御ユニット10,30の処理動作により、車両が停止した後に乗員がイグニッションスイッチ22をオフ状態にすると(この段階では、ステアリングシャフト7がアンロック状態にある)、ABS51等への電源供給が停止する(図3のT1参照)。その後にドアを開けて携帯機21を所持しながら車両から降りてドアを閉めると、ABS51等へ電源が供給される(図3のT2参照)。そして、ABS51の車速検出部52からの車速情報により車両が停止していると判定されると、ステアリングシャフト7がアンロック状態からロック状態へ切り換わり、その切換えが完了すると、ABS51等への電源供給が停止する(図3のT3参照)。ここで、ABS51等への電源供給及び車両停止状態の検知にかかる時間(図3のT2とT3との間の時間)は非常に短く、ドアを閉めるのと略同時に、電動モータ32が駆動され、この結果、電動モータ32の駆動音が、ドアが閉まる音と重なり、電動モータ32の駆動音が大きくても目立たなくなる。尚、ドアが閉状態から開状態になったことが検知されたときに、バッテリ20の電源を第2制御ユニット30、第2ドライバ31及びABS51に供給して、ABS51から車速情報を入手しておき、その後に、ドアが開状態から閉状態になったことが検知されたときに、ステアリングシャフト7をロック状態へ切り換えるようにしてもよい。こうすれば、電動モータ32の駆動音が、ドアが閉まる音とより確実に重なるようになる。
【0054】
また、車両が停止した後に乗員がイグニッションスイッチ22をオフ状態にして車室内で仮眠する場合には、イグニッションスイッチ22がオフ状態でドアの開閉が長時間なされない。この場合、ドアの開閉状態の変化時にABS51から車速情報を入手するためにABS51へ電源を供給し続けたのでは、暗電流が増大してしまう。しかし、本実施形態では、イグニッションスイッチ22がオフ状態になると、ABS51等への電源供給を停止するので、ドアの開閉が長時間なされなかった場合でも、暗電流の増大を抑制することができる。そして、ドアの開閉状態の変化時にはABS51へ電源を供給して車速情報を入手することができ、車両停止状態の判定を適切に行うことができる。また、ステアリングシャフト7のロック状態への切換え完了後には、ABS51等への電源供給を停止するので、切換え完了後においても、暗電流の増大を抑制することができる。
【0055】
尚、上記実施形態では、ドア開閉状態検知スイッチ43により、ドア状態としてドアの開閉状態を検知するようにしたが、ドアロック/アンロック状態検知スイッチ44により、ドア状態としてドアのロック/アンロック状態を検知するようにしてもよい。この場合、ステアリングシャフト7がアンロック状態にあり、かつ、イグニッションスイッチ22がオフ状態にあるときにおいて、ドアロック/アンロック状態検知スイッチ44によりドアのロック/アンロック状態が変化したこと(ロック状態からアンロック状態への変化であってもよく、アンロック状態からロック状態への変化であってもよい)が検知されたときに、ABS51等へ電源を供給し、ABS51からの車速情報により車両の停止状態が検知されたときに、ステアリングシャフト7をロック状態に切り換えるようにすればよい。
【0056】
また、上記実施形態では、車両停止状態検知手段を、ABS51の車速検出部52により構成したが、他のシステムや装置に設けられている車速検出部で構成してもよく、本盗難防止装置専用に設けた車速センサ等で構成してもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態の車両は、スマートキーレスエントリシステムを有しているが、スマートキーレスエントリシステムを有していない車両であっても、ステアリングロック用アクチュエータによりステアリングのロック/アンロック状態を切り換える盗難防止装置を搭載する車両であれば、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ステアリングロック用アクチュエータによりステアリングのロック/アンロック状態を切り換えるようにした車両の盗難防止装置に有用であり、特にスマートキーレスエントリシステムを有する車両の盗難防止装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の盗難防止装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1制御ユニットにおけるステアリングシャフトのロック状態への切換え処理動作を示すフローチャートである。
【図3】車両の乗員がイグニッションスイッチをオフ状態にして降車したときのタイムチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 盗難防止装置
2 キーレスエントリ装置
3 ステアリングロック装置
5 エンジン(車載制御機器)
7 ステアリングシャフト(ステアリング操作に連動する可動部材)
10 第1制御ユニット(駆動制御手段)(電源供給手段)(車載機)
21 携帯機
22 イグニッションスイッチ
30 第2制御ユニット(駆動制御手段)
32 電動モータ(ステアリングロック用アクチュエータ)
34 ロック部材
43 ドア開閉状態検知スイッチ(ドア状態検知手段)
44 ドアロック/アンロック状態検知スイッチ(ドア状態検知手段)
51 ABS(アンチロックブレーキシステム)
52 車速検出部(車両停止状態検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング操作に連動する可動部材に対して係脱して該ステアリングをロック状態とアンロック状態とに択一的に切り換えるロック部材と、該ロック部材を、上記ステアリングのロック/アンロック状態が切り換わるように駆動するステアリングロック用アクチュエータと、該アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段とを備えた車両の盗難防止装置であって、
上記車両の乗員が操作するイグニッションスイッチと、
上記車両の停止状態を検知する車両停止状態検知手段と、
上記イグニッションスイッチがオン状態にあるときに、上記車両停止状態検知手段へ、該車両停止状態検知手段を作動させるための電源を供給する電源供給手段と、
上記車両のドア状態を検知するドア状態検知手段とを備え、
上記駆動制御手段は、上記ステアリングがアンロック状態にあり、かつ、上記イグニッションスイッチがオフ状態にあるときにおいて、上記ドア状態検知手段により上記ドア状態が変化したことが検知され、かつ、上記車両停止状態検知手段により上記車両の停止状態が検知されたときに、上記ステアリングロック用アクチュエータを駆動して、上記ステアリングをロック状態に切り換えるように構成されており、
上記電源供給手段は、上記イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態になったときに、上記車両停止状態検知手段への電源供給を停止し、該電源供給停止後において上記イグニッションスイッチのオフ状態が維持されている状態で、上記ドア状態検知手段により上記ドア状態が変化したことが検知されたときに、上記車両停止状態検知手段へ電源を供給するように構成されていることを特徴とする車両の盗難防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の盗難防止装置において、
上記電源供給手段は、上記ステアリングのロック状態への切換え完了後に、上記車両停止状態検知手段への電源供給を停止するように構成されていることを特徴とする車両の盗難防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両の盗難防止装置において、
上記車両は、制動時の車輪ロックを抑制するように制動装置の制動力を制御するアンチロックブレーキシステムを有し、
上記車両停止状態検知手段は、上記アンチロックブレーキシステムにおいて車速を検出する車速検出部により構成されていることを特徴とする車両の盗難防止装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の盗難防止装置において、
上記車両は、該車両の乗員が携帯しかつ識別コードを無線送信する携帯機と、該車両に搭載されかつ該携帯機からの識別コードを受信する車載機とで構成されていて該車載機が受信した識別コードが、車載機に予め記憶された識別コードと一致したときに車両に搭載された車載制御機器の作動を可能にするスマートキーレスエントリシステムを有し、
上記電源供給手段は、上記スマートキーレスエントリシステムの車載機を介して上記車両停止状態検知手段へ電源を供給するように構成されていることを特徴とする車両の盗難防止装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両の盗難防止装置において、
上記ドア状態検知手段は、上記ドア状態として、ドアの開閉状態又はドアのロック/アンロック状態を検知するように構成されていることを特徴とする車両の盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−61932(P2009−61932A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231805(P2007−231805)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】