説明

車両の運転支援装置

【課題】自動ブレーキの介入後に起こり得る二次災害に対しても適切な安全対策を講じることができる車両の運転支援装置を提供する。
【解決手段】走行制御ユニット5は、衝突防止制御による自動ブレーキの介入によって自車両1が停車したことを判定したときハザードランプ20の点滅を開始し、当該点滅を、予め設定されたドライバの操作入力が行われるまでの間継続する。これにより、自車両1の急停車によってドライバが混乱している場合にも後続車等に対して注意喚起を行うことができ、自動ブレーキの介入後に起こり得る二次災害に対する適切な安全対策を講じることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が先行車等の制御対象に衝突する可能性が高いとき、ドライバのブレーキ操作とは独立した自動ブレーキの介入によって衝突防止を図る衝突防止制御機能を備えた車両の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波レーダ、赤外線レーザレーダ、ステレオカメラや単眼カメラ等を用いて車両前方の車外環境を認識し、認識した車外環境に基づいて自車両の走行制御等を行う運転支援装置について様々な提案がなされている。このような走行制御の機能の一つとして、自車両の前方で先行車を検出(捕捉)したとき、検出した先行車に対する追従走行制御を行う機能が広く知られている。一般に、このような追従走行制御は車間距離制御付クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)の一環として広く実用化されており、ACCでは、自車両の前方に先行車を検出している状態では追従制御が行われ、先行車を検出していない状態ではドライバが設定したセット車速での定速走行制御が行われる。
【0003】
また、この種の車両の運転支援装置においては、自車両が先行車等の制御対象に衝突する可能性が高いときに、ドライバのブレーキ操作とは独立した自動ブレーキの介入を行う衝突防止制御(所謂、プリクラッシュブレーキ制御)機能についても様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、カメラで撮像した前方の道路環境に基づいて自車両前方に認識した制御対象と自車両との相対関係に基づいてブレーキ介入距離を設定し、自車両と制御対象との相対距離がブレーキ介入距離以下であるとき、自動ブレーキの介入を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−262701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような衝突防止制御による自動ブレーキの介入によって自車両が停止された場合、通常、ドライバには、後続車の二次衝突をはじめとする種々の二次災害への対策を講じることが要求される。
【0006】
その一方で、衝突防止制御では、一般に、法規上許容される最大制動力での自動ブレーキによって自車両を急停車させることが多く、このような急停車が行われると、ドライバは、混乱した状態に陥る等して二次災害への冷静な対策を講じることが困難となる虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自動ブレーキの介入後に起こり得る二次災害に対しても適切な安全対策を講じることができる車両の運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前方に認識した制御対象と自車両との衝突可能性を判定する衝突判定手段と、前記衝突判定手段で前記制御対象と自車両との衝突可能性があることが判定された場合に自動ブレーキの介入による制動制御を行う制動制御手段と、前記自動ブレーキの介入によって自車両が停車したとき当該停車状態を保持する停車保持手段と、を備えた車両の運転支援装置であって、前記自動ブレーキの介入による制動制御によって自車両が停車したことを判定したとき、予め設定されたドライバの操作入力が行われるまでの間、ハザードランプを点滅させるハザード制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両の運転支援装置によれば、自動ブレーキの介入後に起こり得る二次災害に対しても適切な安全対策を講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両に搭載した運転支援装置の概略構成図
【図2】相対速度と相対距離とに基づく目標加速度設定用のマップを示す説明図
【図3】自車両と制御対象との相対速度及びラップ率とブレーキ介入距離との関係を示す3次元マップ
【図4】自車両と制御対象との間に設定される各ブレーキ介入距離を示す説明図
【図5】衝突防止制御に付随する車両制御ルーチンを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は車両に搭載した運転支援装置の概略構成図、図2は相対速度と相対距離とに基づく目標加速度設定用のマップを示す説明図、図3は自車両と制御対象との相対速度及びラップ率とブレーキ介入距離との関係を示す3次元マップ、図4は自車両と制御対象との間に設定される各ブレーキ介入距離を示す説明図、図5は衝突防止制御に付随する車両制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0012】
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)を示し、この車両1には、走行制御機能として、車間距離制御機能付クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)機能と、衝突防止制御機能(プリクラッシュブレーキ制御機能)と、を備えた運転支援装置2が搭載されている。
【0013】
この運転支援装置2は、例えば、ステレオカメラ3と、ステレオ画像認識装置4と、走行制御ユニット5と、を一体的に備えたステレオカメラアセンブリ2aを中心として主要部が構成されている。そして、このステレオカメラアセンブリ2aの走行制御ユニット5には、エンジン制御ユニット(E/G_ECU)7、ブレーキ制御ユニット(BRK_ECU)8、トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)9、ボディ制御ユニット(B_ECU)10等の各種車載制御ユニットが相互通信可能に接続されている。
【0014】
ステレオカメラ3は、ステレオ光学系として例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた左右1組のCCDカメラで構成されている。これら1組のCCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔をもって取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、撮像した画像情報をステレオ画像認識装置4に出力する。
【0015】
ステレオ画像認識装置4には、ステレオカメラ3からの画像情報が入力されるとともに、例えば、T/M_ECU9から自車速V等が入力される。このステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3からの画像情報に基づいて自車両1前方の立体物データや白線データ等の前方情報を認識し、これら認識情報等に基づいて自車走行路を推定する。さらに、ステレオ画像認識装置4は、認識した立体物データ等に基づいて自車走行路上の先行車検出を行う。
【0016】
ここで、ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3からの画像情報の処理を、例えば以下のように行う。先ず、ステレオカメラ3で自車進行方向を撮像した1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって距離情報を生成する。そして、この距離情報に対して周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め記憶しておいた三次元的な道路形状データや立体物データ等と比較することにより、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両等の立体物データ等を抽出する。さらに、ステレオ画像認識装置4は、白線データや側壁データ等に基づいて自車走行路を推定し、自車走行路上に存在する立体物であって、自車両1と略同じ方向に所定の速度(例えば、0Km/h以上)で移動するものを先行車として抽出(検出)する。そして、先行車を検出した場合には、その先行車情報として、先行車距離D(=車間距離)、先行車速度Vf(=(車間距離Dの変化の割合)+(自車速V))、先行車加速度af(=先行車速Vfの微分値)等を演算する。なお、先行車の中で、特に、速度Vfが所定値以下(例えば、4Km/h以下)で、且つ、加速していないものは、略停止状態の先行車として認識される。このように、本実施形態において、ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3とともに、先行車検出手段としての機能を実現する。
【0017】
なお、ステレオ画像認識装置4で認識される白線とは、道路上に車線を規定するために敷設された境界線(車線区画線)を意味し、実線、破線を問わず、さらに、黄線等をも含む広義のものを意味する。
【0018】
走行制御ユニット5には、例えば、ステレオ画像認識装置4らか車外前方に関する各種認識情報が入力されるとともに、T/M_ECU9から自車速V等が入力される。
【0019】
また、走行制御ユニット5には、例えば、クルーズコントロール用スイッチ15を通じて設定されるドライバの各種設定情報が、E/G_ECU7を介して入力される。本実施形態において、クルーズコントロール用スイッチ15は、例えば、ステアリングに配置されたプッシュスイッチ及びトグルスイッチ等からなる操作スイッチであり、ACCの作動をON/OFFするメインスイッチであるクルーズスイッチ「CRUISE」、ACCを解除するためのキャンセルスイッチ「CANCEL」、その時の自車両の速度をセット車速Vsetとして設定するためのセットスイッチ「SET/−」、先行車と自車両との車間距離のモードを設定するための車間距離設定スイッチ、前回の記憶してあるセット車速Vsetを再セットするためのリジュームスイッチ「RES/+」を有している。なお、本実施形態において、車間距離のモードとしては「長」、「中」、「短」の何れかが設定され、走行制御ユニット5は、例えば、自車速Vに応じて、モード毎に異なる追従目標距離Dtrgを設定する。
【0020】
そして、クルーズコントロール用スイッチ15のクルーズスイッチがオンされ、セットスイッチ等を通じてドライバが希望するセット車速Vsetが設定されるとともに、車間距離設定スイッチを通じて追従目標距離Dtrgの設定のためのモードが設定されると、走行制御ユニット5は、ACCを実行する。
【0021】
このACCとして、走行制御ユニット5は、ステレオ画像認識装置4で先行車が検出されていない場合には、自車速Vをセット車速Vsetに収束させる定速走行制御を行う。また、走行制御ユニット5は、定速走行制御中にステレオ画像認識装置4にて先行車を認識した場合には、当該先行車との車間距離Dを追従目標距離Dtrgに収束させる追従走行制御(追従停止、追従発進も含む)を行う。
【0022】
すなわち、定速走行制御が開始されると、走行制御ユニット5は、自車速Vをセット車速Vsetに収束させるための目標加速度a1を演算する。
【0023】
具体的に説明すると、走行制御ユニット5は、例えば、自車速Vとセット車速Vsetとの車速偏差Vsrel(=Vset−V)を演算し、予め設定されたマップ等を参照することにより、車速偏差Vsrelと自車速Vとに応じた目標加速度a1を演算する。なお、例えば、車速偏差Vsrelが正値である場合、目標加速度a1は、自車速Vに応じた上限値の範囲内において、車速偏差Vsrelが大きくなるほど大きな値が設定される。一方、例えば、車速偏差Vsrelが負値である場合、目標加速度a1は、自車速Vに応じた下限値の範囲内において、速度偏差Vsrelが小さくなるほど小さな値が設定される(車速偏差Vsrelが負側に大きくなるほど減速側に大きな値が設定される)。
【0024】
また、定速走行制御中から追従走行制御に移行すると、走行制御ユニット5は、上述の目標加速度a1に加え、車間距離Dを追従目標距離Dtrgに収束させるための目標加速度a2を演算する。
【0025】
具体的に説明すると、走行制御ユニット5には、例えば、車間距離のモード「短」及び「長」に対応する追従目標距離Dtrg設定用のマップが予め設定されて格納されている。そして、走行制御ユニット5は、モードが「短」或いは「長」である場合には該当するマップを用いて自車速Vに応じた追従目標距離Dtrgを設定し、モードが「中」の場合にはモードが「短」及び「長」のときにそれぞれ演算される値の中間値を追従目標距離Dtrgとして設定する。また、走行制御ユニット5は、例えば、追従目標距離Dtrgと車間距離Dとの距離偏差ΔD(=Dtrg−D)を演算するとともに、先行車速度Vfと自車速Vとの相対速度Vfrel(=Vf−V)を演算し、これらをパラメータとして予め設定されたマップを参照して目標加速度a2を演算する。ここで、図2に示すように、マップ上には、相対速度Vfrelと距離偏差ΔDとに応じて、目標加速度a2を加速側の値(正値)とする加速領域と、目標加速度a2を減速側の値(負値)とする減速領域とが設定されている。そして、加速領域において、目標加速度a2は、相対速度Vfrelが大きく且つ距離偏差ΔDが大きくなるほど大きな値(加速側に大きな値)が演算される。一方、減速領域において、目標加速度a2は、相対速度Vfrelが小さく(相対速度Vfrelが負側に大きく)且つ距離偏差ΔDが小さくなるほど小さな値(減速側に大きな値)が演算される。さらに、このように演算された目標加速度a2には、例えば、先行車加速度afと自車速Vとをパラメータとして可変設定される上限値に基づいて上限値処理(クリップ処理)が行われる。
【0026】
そして、走行制御ユニット5は、定速走行制御時においては目標加速度a1を最終的な目標加速度aとして設定し、追従走行制御時においては目標加速度a1,a2のうちの何れか小値を最終的な目標加速度aとして設定する。
【0027】
なお、定速走行制御或いは追従走行制御中において、例えば、自車両1がカーブに浸入した場合やコースト走行を行っている場合等には、上述の目標加速度a1,a2の他にそれぞれ別途の目標加速度を演算することも可能であり、この場合、これらを含めた目標加速度のうち最小値を最終的な目標加速度aとして設定してもよい。
【0028】
目標加速度aを設定すると、走行制御ユニット5は、E/G_ECU7を通じて電子制御スロットル弁17の開度制御(エンジンの出力制御)を行うことにより、目標加速度aに応じた加速度を発生させる。さらに、走行制御ユニット5は、エンジンの出力制御のみでは十分な加速度(減速度)が得られないと判断した場合に、BRK_ECU8を通じてブレーキブースタ18からの出力液圧制御(自動ブレーキの介入制御)を行う。
【0029】
ここで、追従走行制御により、自車両1が先行車に追従して停車すると、走行制御ユニット5は、例えば、図示しない電動パーキングブレーキを作動させて停車状態を保持する。そして、走行制御ユニット5は、例えば、ドライバによってアクセルペダル操作が行われたこと或いはクルーズコントロール用スイッチ15のクルーズスイッチが再操作されたことを条件として電動パーキングブレーキを解除し、ACCを再開する。
【0030】
次に、衝突防止制御について説明する。衝突防止制御において、走行制御ユニット5は、自車走行路上にステレオ画像認識装置4で認識された立体物が存在する場合には、これら立体物のうち直近の立体物を制御対象として認識する。この制御対象としては、上述のACCで認識される先行車のみならず自車走行路上で停止している各種立体物等も含まれる。制御対象を認識すると、走行制御ユニット5は、ブレーキ介入距離として、例えば、制御対象を基準とする第1,第2のブレーキ距離D1,D2を設定する(図4参照)。
【0031】
ここで、第1のブレーキ介入距離D1は、制御対象との衝突回避が制動によっても操舵によっても困難となる限界距離(衝突回避限界距離)であり、例えば、予め実験やシミュレーション等に基づいて設定されている。この衝突回避限界距離は、例えば、自車速Vと制御対象速度Voとの相対速Vorel(=Vo−V)に応じて変化し、さらに、自車両1と制御対象との相対速Vorel及びラップ率Rlによって変化する。走行制御ユニット5には、例えば、図3に示すように、自車両1と制御対象との相対速Vorel及びラップ率Rlと第1のブレーキ介入距離D1との関係を示すマップが予め設定されて格納されており、走行制御ユニット5は、このマップを参照して第1のブレーキ介入距離D1を設定する。
【0032】
また、第2のブレーキ介入距離D2は、第1のブレーキ介入距離D1よりも所定に長い距離に設定される。具体的には、第2のブレーキ介入距離D2は、例えば、予め実験やシミュレーション等に基づいて設定されるもので、相対速Vorelに応じた所定距離だけ衝突回避限界距離よりも自車両1側に延長された距離が設定されている。走行制御ユニット5には、例えば、図3に示すように、自車両1と制御対象との相対速Vorel及びラップ率Rlと第2のブレーキ介入距離D2との関係を示すマップが予め設定されて格納されており、走行制御ユニット5は、このマップを参照して第2のブレーキ介入距離D2を設定する。
【0033】
そして、走行制御ユニット5は、制御対象との相対距離Doが第1のブレーキ介入距離D1以下となったとき、自動ブレーキの介入による制動制御(以下、本格制動制御ともいう)を実行する。この本格制動制御において、走行制御ユニット5は、例えば、制動制御により発生すべき減速度(目標減速度Gt)、及び、この目標減速度Gtを発生させる際に許容する減速度の変化量(減速度変化量ΔG1)として予め設定された固定値をそれぞれセットし、これらに基づいて減速度指示値Gを演算する。そして、走行制御ユニット5は、演算した減速度指示値GをBRK_ECU8に出力してブレーキブースタ18からの出力液圧制御を行うことにより、自動ブレーキを作動(介入)させる。
【0034】
また、走行制御ユニット5は、制御対象との相対距離Doが第1のブレーキ介入距離D1よりも大きく且つ第2のブレーキ介入距離D2以下であるとき、本格制動制御に先立ち、自動ブレーキの介入による制動制御(以下、拡大制動制御ともいう)を実行する。この拡大制動制御において、走行制御ユニット5は、例えば、目標減速度Gt及び減速度変化量ΔG1をそれぞれ可変設定し、これらに基づいて減速度指示値Gを演算する。そして、走行制御ユニット5は、演算した減速度指示値GをBRK_ECU8に出力してブレーキブースタ18からの出力液圧制御を行うことにより、自動ブレーキを作動(介入)させる。
【0035】
そして、自動ブレーキの介入によって自車両1が停車すると、走行制御ユニット5は、例えば、図示しない電動パーキングブレーキを作動させて停車状態を保持する。
【0036】
ここで、このような衝突防止制御は、単独で実行可能であることは勿論のこと、ACCと併用することも可能である。この場合、衝突防止制御における自動ブレーキは制御対象との衝突を回避するための緊急避難的なものであるため、衝突防止制御における減速度指示値Gが設定された場合(すなわち、制御対象との相対距離Doが第2のブレーキ介入距離D2以下となった場合)、基本的には、当該減速度指示値GはACCの目標加速度a(負側の目標加速度a)よりも大きな減速度を発生させる値となる。従って、衝突防止制御における自動ブレーキは、原則として、ACCの追従制御における自動ブレーキよりも優先的に介入される。
【0037】
このような走行制御機能を備えた運転支援装置2において、走行制御ユニット5は、衝突防止制御に付随する車両制御として、当該衝突防止制御による自動ブレーキの介入によって自車両1が停車した場合には、予め設定されたドライバの操作入力が行われるまでの間、B_ECU10を通じてハザードランプ20を点滅させる。加えて、本実施形態の走行制御ユニット5は、衝突防止制御による自動ブレーキの介入によって自車両1が停車した場合には、E/G_ECU7を通じてエンジンを停止させる。
【0038】
ここで、ハザードランプ20の点滅を解除するためのドライバの操作入力としては、ドライバが冷静な判断の下にとり得る安全対策に関連する操作入力を設定することが望ましい。
【0039】
具体的には、例えば、衝突防止制御による自動ブレーキの介入によって自車両1が停車した後の停車保持中に、ドライバによってエンジンの再始動操作(スタータスイッチ等の操作)がなされたとき、或いは、ウインカスイッチ(図示せず)の操作がなされたとき、ドライバによる速やかな走行再開や路肩等への退避走行等が行われようとしていることが判定できる。そこで、このような場合、走行制御ユニット5は、ハザードランプ20の点滅を解除する。
【0040】
また、例えば、衝突防止制御による自動ブレーキの介入によって自車両1が停車した後の停車保持中にドライバによってハザードスイッチ(図示せず)の操作がなされたとき、ドライバは自らの意思でハザードランプ20の点滅を解除しようとしていることが判断できる。そこで、このような場合、走行制御ユニット5は、ハザードランプ20の点滅を解除する。
【0041】
なお、走行制御ユニット5は、自車両1の停車後に限らず、衝突防止制御による自動ブレーキの介入中においても、ハザードランプ20の点滅制御を拡張して行うことも可能である。
【0042】
このように、本実施形態において、走行制御ユニット5は、衝突判定手段、制動制御手段、停車保持手段、ハザード制御手段、及び、エンジン停止手段としての各機能を実現する。
【0043】
次に、走行制御ユニット5において実行される衝突防止制御に付随する車両制御について、図5に示す車両制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。
【0044】
このルーチンは、設定時間毎に繰り返し実行されるもので、ルーチンがスタートすると、走行制御ユニット5は、先ず、ステップS101において、現在、衝突防止制御による自動ブレーキの介入中であるか否かを調べる。
【0045】
そして、ステップS101において、自動ブレーキの介入中であると判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS109に進む。
【0046】
一方、ステップS101において、自動ブレーキの介入中ではないと判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS102に進み、現在、自車両1が自動ブレーキの介入によって停車された直後の状態にあるか否かを調べる。
【0047】
そして、ステップS102において、現在、自動ブレーキの介入による停車直後ではないと判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS105に進む。
【0048】
一方、ステップS102において、現在、自動ブレーキの介入による停車直後であると判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS103に進み、ハザードランプ20の点滅を指示するハザードフラグFを「1」にセットし、続くステップS104で、E/G_ECU7を通じてエンジンを停止した後、ステップS105に進む。
【0049】
ステップS102或いはステップS104からステップS105に進むと、走行制御ユニット5は、ハザードフラグFが「1」にセットされているか否かを調べ、ハザードフラグFが「0」にリセットされている場合には、そのままルーチンを抜ける。
【0050】
一方、ステップS105において、ハザードフラグFが「1」にセットされていると判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS106に進み、ドライバによるエンジンの再始動操作が行われたか否かを調べる。
【0051】
そして、ステップS106において、走行制御ユニット5は、ドライバによるエンジンの再始動操作が行われたと判定した場合にはステップS110に進み、エンジンの再始動操作が行われていないと判定した場合にはステップS107に進む。
【0052】
ステップS106からステップS107に進むと、走行制御ユニット5は、ドライバによるウインカスイッチの操作が行われたか否かを調べる。
【0053】
そして、ステップS107において、走行制御ユニット5は、ドライバによるウインカスイッチの操作が行われたと判定した場合にはステップS110に進み、ウインカスイッチの操作が行われていないと判定した場合にはステップS108に進む。
【0054】
ステップS107からステップS108に進むと、走行制御ユニット5は、ドライバによるハザードスイッチの操作が行われたか否かを調べる。
【0055】
そして、ステップS108において、走行制御ユニット5は、ドライバによるハザードスイッチの操作が行われたと判定した場合にはステップS110に進み、ハザードスイッチの操作が行われていないと判定した場合にはステップS109に進む。
【0056】
そして、ステップS101或いはステップS108からステップS109に進むと、走行制御ユニット5は、B_ECU10を通じてハザードランプ20の点滅制御を行った後、ルーチンを抜ける。
【0057】
一方、ステップS106、ステップS107、或いは、ステップS108からステップS110に進むと、走行制御ユニット5は、ハザードフラグFを「0」にリセットした後、ルーチンを抜ける。
【0058】
このような実施形態によれば、衝突防止制御による自動ブレーキの介入によって自車両1が停車したことを判定したときハザードランプ20の点滅を開始し、当該点滅を、予め設定されたドライバの操作入力が行われるまでの間継続することにより、自車両1の急停車によってドライバが混乱している場合にも後続車等に対して注意喚起を行うことができ、自動ブレーキの介入後に起こり得る二次災害に対する適切な安全対策を講じることができる。
【0059】
この場合において、ハザードランプ20の点滅を解除するためのドライバの操作入力として、例えば、エンジンの再始動操作やウインカスイッチの操作等のように、ドライバが冷静な判断の下にとり得る安全対策(速やかな走行再開や路肩等への退避走行等)に関連する操作入力を設定することにより、ハザードランプ20の点滅の解除についても適切なタイミングで行うことができる。換言すれば、例えば、自車両1の急停車によって混乱したドライバが車外状況を確認等をすべく降車した場合にも、所定の操作入力が行われるまではハザードランプ20の点滅による後続車等への注意喚起が継続されることにより、自動ブレーキの介入後に起こり得る二次災害を好適に抑制することができる。
【0060】
加えて、衝突防止制御による自動ブレーキの介入によって自車両1が停車したことを判定したとき、エンジンを停止することにより、例えば、自車両1の急停車によって混乱したドライバが誤ってアクセルペダルを踏み込んだ場合にも自車両1の停車状態を維持することができ、自動ブレーキの介入後に起こり得る二次災害に対する適切な安全対策を講じることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 … 車両(自車両)
2 … 運転支援装置
2a … ステレオカメラアセンブリ
3 … ステレオカメラ
4 … ステレオ画像認識装置
5 … 走行制御ユニット(衝突判定手段、制動制御手段、停車保持手段、ハザード制御手段、エンジン停止手段)
15 … クルーズコントロール用スイッチ
17 … 電子制御スロットル弁
18 … ブレーキブースタ
20 … ハザードランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に認識した制御対象と自車両との衝突可能性を判定する衝突判定手段と、前記衝突判定手段で前記制御対象と自車両との衝突可能性があることが判定された場合に自動ブレーキの介入による制動制御を行う制動制御手段と、前記自動ブレーキの介入によって自車両が停車したとき当該停車状態を保持する停車保持手段と、を備えた車両の運転支援装置であって、
前記自動ブレーキの介入による制動制御によって自車両が停車したことを判定したとき、予め設定されたドライバの操作入力が行われるまでの間、ハザードランプを点滅させるハザード制御手段を備えたことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
前記自動ブレーキの介入による制動制御によって自車両が停車したことを判定したとき、エンジンを停止するエンジン停止手段を備えたことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項3】
前記ハザード制御手段は、ドライバによってエンジンの再始動操作がなされたとき、前記ハザードランプの点滅を解除することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の運転支援装置。
【請求項4】
前記ハザード制御手段は、ドライバによってウインカスイッチの操作がなされたとき、前記ハザードランプの点滅を解除することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項5】
前記ハザード制御手段は、ドライバによってハザードスイッチの操作がなされたとき、前記ハザードランプの点滅を解除することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の車両の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−71677(P2012−71677A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217676(P2010−217676)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】