説明

車両の駆動力制御装置

【課題】エンジンと有段式自動変速機とを備えた車両において、変速過渡期間における駆動力変化を制御することのできる車両の駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】設定手段104の出力トルク設定手段108および変速段設定手段106によりそれぞれ目標駆動力を得るための目標エンジントルク及び目標変速段が設定され、変速制御手段110により目標変速段へ自動変速機10の変速段が変更させられ、エンジントルク制御手段112により目標エンジントルクが得られるようにエンジン30の出力トルクが制御され、目標駆動力勾配算出手段114により目標駆動力に基づいて目標駆動力勾配が算出される。目標駆動力勾配算出手段114による目標駆動力勾配の算出は自動変速機10の変速におけるトルク相の開始前に行なわれ、変速制御手段110により、トルク相において、車両の駆動力変化が目標駆動力勾配となるように変速が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動力制御装置に関するものであり、特に、自動変速機の変速過渡期間における駆動力を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと有段式自動変速機とを備えた車両において、そのエンジンの出力を調整するためのスロットル弁として、アクセルペダルと電気的に接続され該アクセルペダル開度に応じたスロットル弁開度となるように制御される電子スロットル弁が用いられている。かかる電子スロットル弁においては、アクセルペダルとワイヤなどで機械的に連結されたスロットル弁と異なり、アクセル開度に対応したスロットル弁開度とするのに加えて、一時的に異なるスロットル弁開度とすることができる。このような電子スロットル弁を有する車両において、予め設定されたアクセル開度とスロットル弁開度との関係であるスロットル弁基準特性に従わない電子スロットル制御を一時的に実行する車両の駆動力制御装置が知られている。例えば、特許文献1の車両の駆動力制御装置がそれである。特許文献1の車両の駆動力制御装置では、有段式自動変速機の頻繁な変速を回避するため、所定の変速パターン(変速線図)に従って変速されたとした場合に得られる必要駆動力が、その変速が行われなくても上記スロットル弁開度が調整されることにより出力され得る場合には、上記変速を行わないで上記スロットル弁開度が上記スロットル弁基準特性に関わらず上記必要駆動力が得られるように調整される。
【0003】
一方、本願出願人は、エンジンと有段式自動変速機を備えた車両において、電子スロットル弁を制御することによる車両の駆動力制御装置として、未だ未公開ではあるが先に出願した特願2007−292630号において、前記電子スロットル弁を制御することによりエンジンの出力トルクを制御し、有段式自動変速機の変速過渡期間において駆動力を滑らかに変化させることのできる車両の駆動力制御装置を提案した。かかる車両の駆動力制御装置によれば、有段式自動変速機の変速前後における駆動力差、すなわち駆動力の変動幅が小さくされるので、変速時における快適性が向上する。
【0004】
ところで、有段式自動変速機の変速においては、変速過渡期間における駆動力の変化が発生する。かかる変速過渡期間における駆動力の変化は、変速前後における駆動力差が大きい場合には、ドライバビリティに与える影響が大きくない一方、変速前後における駆動力差が小さい場合にはドライバビリティに与える影響が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2929396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンと有段式自動変速機とを備えた車両において、有段式自動変速機の変速過渡期間における駆動力変化を制御することのできる車両の駆動力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明は、(a)電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁により出力トルクが変化させられるエンジンと有段の自動変速機とを備えた車両の駆動力制御装置であって、(b)目標駆動力を得るための目標エンジントルク及び目標変速段を設定する設定手段と、(c)該設定手段により設定された目標変速段へ前記自動変速機の変速段を変更する変速手段と、(d)前記目標エンジントルクが得られるように前記エンジンの出力トルクを制御するエンジントルク制御手段と、(e)目標駆動力勾配を算出する目標駆動力勾配算出手段と、を備え、(f)前記目標駆動力勾配算出手段は、前記自動変速機の変速におけるトルク相の開始前に目標駆動力勾配の算出を行ない、(g)前記変速手段は、該トルク相において、前記目標駆動力勾配となるように変速を実行すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1にかかる発明によれば、前記設定手段により車両に要求される目標駆動力を得るための目標エンジントルク及び目標変速段が設定され、前記変速手段により前記目標変速段へ前記自動変速機の変速段が変更させられ、前記エンジントルク制御手段により前記目標エンジントルクが得られるように前記エンジンの出力トルクが制御され、前記目標駆動力勾配算出手段により前記目標駆動力に基づいて目標駆動力勾配が算出される。また、前記目標駆動力勾配算出手段による目標駆動力勾配の算出は前記自動変速機の変速におけるトルク相の開始前に行なわれ、前記変速手段により、該トルク相において、前記目標駆動力勾配となるように変速が実行されるので、変速の過渡期間のうちトルク相において車両の駆動力の変化が前記目標駆動力勾配とされ、変速過渡期間におけるドライバビリティが向上される。
【0009】
請求項2にかかる発明は、前記目標駆動力勾配算出手段は前記自動変速機の変速におけるトルク相の開始前のエンジントルク変化を算出し、該エンジントルク変化と変速前後の前記自動変速機の変速比のそれぞれとに基づいて算出される駆動力勾配の平均を前記目標駆動力勾配として用いることを特徴とする。このようにすれば、前記目標駆動力勾配はトルク相の開始前のエンジントルク変化と変速前後の前記自動変速機の変速比のそれぞれとに基づいて算出される駆動力勾配の平均とされるので、変速過渡期間の駆動力変化がドライバビリティに与える影響を低減することができ、変速過渡期間におけるドライバビリティが向上される。
【0010】
請求項3にかかる車両の駆動力制御装置においては、前記自動変速機の変速はダウンシフトであることを特徴とする。このようにすれば、自動変速機の変速がダウンシフトである場合に、トルク相の前の状態において算出される目標駆動力勾配に基づいて変速が実行される。
【0011】
請求項4にかかる車両の駆動力制御装置においては、前記自動変速機の変速はアップシフトであることを特徴とする。このようにすれば、自動変速機の変速がアップシフトである場合に、トルク相の前の状態において算出される目標駆動力勾配に基づいて変速が実行される。
【0012】
請求項5にかかる車両の駆動力制御装置においては、前記自動変速機は複数の油圧式摩擦係合装置を有し、前記変速手段は変速に関与する前記油圧式摩擦係合装置を制御することにより、前記目標駆動力勾配となるように変速を実行することを特徴とする。このようにすれば、前記自動変速機の変速において解放される解放側油圧式摩擦係合装置と係合される係合側油圧式摩擦係合装置とのトルクの分担を制御することにより、車両の駆動力が前記目標駆動力勾配となるように変化させられて変速が実行される。
【0013】
請求項6にかかる車両の駆動力制御装置によれば、前記目標駆動力勾配算出手段は、前記自動変速機の変速におけるトルク相の開始前のエンジントルク変化に基づいて算出される実駆動力勾配と、少なくともアクセル開度の変化量に基づいて算出される要求駆動力勾配とのうち、より大きいものを目標駆動力勾配として算出することを特徴とする。このようにすれば、アクセル開度が急激に変化した後に車両の実際の駆動力が遅れて追従する場合のように、前記実駆動力勾配と前記要求駆動力勾配とが異なる場合においても、これらのうちより大きいものが目標駆動力勾配として算出されるので、変速過渡期間におけるドライバビリティが向上される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明が好適に適用される車両用自動変速機を説明する骨子図である。
【図2】図1の車両用自動変速機において複数の変速段を成立させる際の油圧式摩擦係合要素の作動を説明する作動表である。
【図3】図1の車両用自動変速機において、変速段毎に各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。
【図4】図1の車両用自動変速機を制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図5】図4のシフトレバーの操作位置を説明する図である。
【図6】図4の電子制御装置の変速制御において用いられる変速線図の一例を示す図である。
【図7】図4の油圧制御回路の要部を示す回路図である。
【図8】図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図9】図1の車両用自動変速機において、一対一で対応するように予め設定されているアクセル開度とスロットル弁開度との関係であるスロットル弁基準特性を示す図である。
【図10】図1の車両用自動変速機において、アクセル開度に対して図9のスロットル弁基準特性に従いスロットル弁開度が変化した場合のアクセル開度と駆動力との関係である駆動力特性を例示する図である。
【図11】変速に伴って時間変化する車両駆動力を説明する図であって、変速の前後において(a)駆動力段差がある場合および(b)駆動力段差がない場合の例をそれぞれ説明する図である。
【図12】図8の実駆動力勾配算出手段による実駆動力勾配の算出を説明する図である。
【図13】図8の要求駆動力勾配算出手段による要求駆動力勾配の算出を説明する図である。
【図14】本発明の車両の駆動力制御装置の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図15】本発明の車両の駆動力制御装置による制御作動が行なわれた場合の、変速の前後におけるタービン回転速度、エンジン出力トルク、解放側油圧、係合側油圧、および出力トルクの時間変化を説明する図である。
【図16】本発明の車両の駆動力制御装置の制御作動の別の例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明に係る車両用自動変速機(以下、「自動変速機」と表す)10の構成を説明する骨子図であり、図2は自動変速機10において複数の変速段を成立させる際の油圧式摩擦係合要素(以下、「係合要素」と表す)の作動を説明する作動表である。本発明が好適に適用される車両は図1のようにエンジン30と油圧制御のロックアップクラッチであるロックアップ機構31を有するトルクコンバータ32と有段の自動変速機10とを備えている。そして、エンジン30は、電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁56(図4参照)を備えており、その電子スロットル弁56によってエンジン30の出力トルクT(以下、「エンジントルクT」と表す)は調整され、電子スロットル弁56の開度θTH(以下、「スロットル弁開度θTH」と表す)が大きくなるほどエンジントルクTは増大する。
【0017】
自動変速機10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース(以下、「ケース」と表す)26内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は入力回転部材に相当するものであり、本実施例では走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動されるトルクコンバータ32のタービン軸である。出力軸24は出力回転部材に相当するものであり、例えば図示しない差動歯車装置(終減速機)や一対の車軸等を順次介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、この自動変速機10はその軸心に対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその軸心の下半分が省略されている。
【0018】
上記第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備え、サンギヤS1、キャリアCA1、およびリングギヤR1によって3つの回転要素が構成されている。キャリヤCA1は入力軸22に連結されて回転駆動され、サンギヤS1は回転不能にケース26に一体的に固定されている。リングギヤR1は中間出力部材として機能し、入力軸22に対して減速回転させられて、回転を第2変速部20へ伝達する。本実施例では、入力軸22の回転をそのままの速度で第2変速部20へ伝達する経路が、予め定められた一定の変速比(=1.0)で回転を伝達する第1中間出力経路PA1であり、第1中間出力経路PA1には、入力軸22から第1遊星歯車装置12を経ることなく第2変速部20へ回転を伝達する直結経路PA1aと、入力軸22から第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1を経て第2変速部20へ回転を伝達する間接経路PA1bとがある。また、入力軸22からキャリヤCA1、そのキャリヤCA1に配設されたピニオンギヤP1、およびリングギヤR1を経て第2変速部20へ伝達する経路が、第1中間出力経路PA1よりも大きい変速比(>1.0)で入力軸22の回転を変速(減速)して伝達する第2中間出力経路PA2である。
【0019】
前記第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、前記第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2およびP3、そのピニオンギヤP2およびP3を自転および公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP2およびP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
【0020】
上記第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18では、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1乃至RM4が構成されている。具体的には、第2遊星歯車装置16のサンギヤS2によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置16のキャリヤCA2および第3遊星歯車装置のキャリヤCA3が互いに一体的に連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置16のリングギヤR2および第3遊星歯車装置18のリングギヤR3が互いに一体的に連結されて第3回転要素RM3が構成され、第3遊星歯車装置18のサンギヤS3によって第4回転要素RM4が構成されている。この第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18は、キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置16のピニオンギヤP2が第3遊星歯車装置18の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
【0021】
上記第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1を介してケース26に選択的に連結されて回転停止され、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1(すなわち第2中間出力経路PA2)に選択的に連結され、さらに第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1(すなわち第1中間出力経路PA1の間接経路PA1b)に選択的に連結されている。第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびCA3)は、第2ブレーキB2を介してケース26に選択的に連結されて回転停止させられるとともに、第2クラッチC2を介して入力軸22(すなわち第1中間出力経路PA1の直結経路PA1a)に選択的に連結されている。第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されている。なお、第2回転要素RM2とケース26との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
【0022】
図3は、上記第1変速部14および第2変速部20の各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図であり、下の横線が回転速度「0」を示し、上の横線が回転速度「1.0」すなわち入力軸22と同じ回転速度を示している。また、第1変速部14の各縦線は、左側から順番にサンギヤS1、リングギヤR1、キャリヤCA1を表しており、それ等の間隔は第1遊星歯車装置12のギヤ比ρ1(=サンギヤS1の歯数/リングギヤR1の歯数)に応じて定められる。第2変速部20の4本の縦線は、左側から右端へ向かって順番に第1回転要素RM1(サンギヤS2)、第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびキャリヤCA3)、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびリングギヤR3)、第4回転要素RM4(サンギヤS3)を表しており、それ等の間隔は第2遊星歯車装置16のギヤ比ρ2および第3遊星歯車装置18のギヤ比ρ3に応じて定められる。
【0023】
そして、この図3に示す共線図から明らかなように、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられると、出力軸24に連結された第3回転要素RM3は「1st」で示す回転速度で回転させられ、最も大きい変速比(=入力軸22の回転速度/出力軸24の回転速度)の第1変速段「1st」が成立させられる。
【0024】
第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1変速段「1st」よりも変速比が小さい第2変速段「2nd」が成立させられる。
【0025】
第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられて、第4回転要素RM4および第1回転要素RM1が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられて第2変速部20が一体回転させられると、第3回転要素RM3は「3rd」で示す回転速度で回転させられ、第2変速段「2nd」よりも変速比が小さい第3変速段「3rd」が成立させられる。
【0026】
第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3変速段「3rd」よりも変速比が小さい第4変速段「4th」が成立させられる。
【0027】
第1クラッチC1および第2クラッチC2係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4変速段「4th」よりも変速比が小さい第5変速段「5th」が成立させられる。
【0028】
第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられて、第2変速部20が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「6th」で示す回転速度すなわち入力軸22と同じ回転速度で回転させられ、第5変速段「5th」よりも変速比が小さい第6変速段「6th」が成立させられる。この第6変速段「6th」の変速比は1である。
【0029】
第2クラッチC2および第3クラッチC3が係合させられて、第1回転要素RM1が第1変速部14を介して入力軸22に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6変速段「6th」よりも変速比が小さい第7変速段「7th」が成立させられる。
【0030】
第2クラッチC2および第1ブレーキB1が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸22と一体回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7変速段「7th」よりも変速比が小さい第8変速段「8th」が成立させられる。なお、後述の説明においては、自動変速機10の「第1変速段」乃至「第8変速段」は、それぞれ「第1速」乃至「第8速」とも表現する。
【0031】
また、第3クラッチC3および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が第1変速部14を介して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられて、第3回転要素RM3は「Rev1」で示す回転速度で逆回転させられ、逆回転方向で変速比が最も大きい第1後進変速段「Rev1」が成立させられる。第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が入力軸22と一体回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられ、第3回転要素RM3は「Rev2」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」よりも変速比が小さい第2後進変速段「Rev2」が成立させられる。第1後進変速段「Rev1」、第2後進変速段「Rev2」は、それぞれ逆回転方向の第1変速段、第2変速段に相当する。
【0032】
図2の作動表は、上記各変速段を成立させる際のクラッチC1乃至C4、ブレーキB1、B2の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。第1変速段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無い。また、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
【0033】
このように本実施例の自動変速機10は、変速比が異なる2つの中間出力経路PA1、PA2を有する第1変速部14および2組の遊星歯車装置16、18を有する第2変速部20により、4つのクラッチC1乃至C4および2つのブレーキB1、B2の係合切換えで前進8速の変速ギヤ段が達成されるため、小型に構成され、車両への搭載性が向上する。また、図2の作動表から明らかなように、クラッチC1乃至C4およびブレーキB1、B2の何れか2つを掴み替えるだけで各変速段の変速を行うことができる。また、上記クラッチC1乃至C4、およびブレーキB1、B2(以下、特に区別しない場合は単に「クラッチC」、「ブレーキB」と表す)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される係合要素すなわち油圧式摩擦係合要素である。
【0034】
図4は、図1の自動変速機10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。本発明の駆動力制御装置としての機能を有する電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御、自動変速機10の変速制御、ロックアップ機構31の係合・解放制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や変速制御用等に分けて構成される。
【0035】
図4において、アクセルペダル50の操作量であるアクセル開度Accがアクセル開度センサ(アクセル操作量センサ)52により検出されるとともに、そのアクセル開度(アクセル操作量)Accを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるものであることからアクセル操作部材に相当し、アクセル開度Accは出力要求量に相当する。
【0036】
また、エンジン30の回転速度Nを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン30の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度Tを検出するための吸入空気温度センサ62、スロットルアクチュエータ54の制御により電気的に開閉制御可能なエンジン30の電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットル弁開度センサ64、車速V(出力軸24の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ66、エンジン30の冷却水温Tを検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度N(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOILを検出するためのAT油温センサ78、車両の加速度(減速度)Gを検出するための加速度センサ80などが設けられており、それらのセンサやスイッチなどから、エンジン回転速度N、吸入空気量Q、吸入空気温度T、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温T、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度N、AT油温TOIL、車両の加速度(減速度)Gなどを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
【0037】
上記シフトレバー72は例えば運転席の近傍に配設され、図5に示すように、5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、または「S」へ手動操作されるようになっている。「P」ポジションは自動変速機10内の動力伝達経路を解放し且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸24の回転を阻止(ロック)するための駐車位置であり、「R」ポジションは自動変速機10の出力軸24の回転方向を逆回転とするための後進走行位置であり、「N」ポジションは自動変速機10内の動力伝達経路を解放するための動力伝達遮断位置であり、「D」ポジションは自動変速機10の第1速乃至第8速の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で自動変速制御を実行させる前進走行位置であり、「S」ポジションは変速可能な高速側の変速段が異なる複数の変速レンジ或いは異なる複数の変速段を切り換えることにより手動変速が可能な前進走行位置である。この「S」ポジションにおいては、シフトレバー72の操作毎に変速範囲或いは変速段をアップ側にシフトさせるための「+」ポジション、シフトレバー72の操作毎に変速範囲或いは変速段をダウン側にシフトさせるための「−」ポジションが備えられている。前記レバーポジションセンサ74はシフトレバー72がどのレバーポジション(操作位置)PSHに位置しているかを検出する。
【0038】
また、前記油圧制御回路98には、例えば上記シフトレバー72にケーブルやリンクなどを介して連結されたマニュアルバルブが備えられ、シフトレバー72の操作に伴ってそのマニュアルバルブが機械的に作動させられることにより油圧制御回路98内の油圧回路が切り換えられる。例えば、「D」ポジションおよび「S」ポジションでは前進油圧Pが出力されて前進用回路が機械的に成立させられ、前進変速段である第1変速段「1st」乃至第8変速段「8th」で変速しながら前進走行することが可能となる。電子制御装置90は、シフトレバー72が「D」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断して自動変速モードを成立させ、第1変速段「1st」乃至第8変速段「8th」の総ての前進変速段を用いて変速制御を行う。
【0039】
上記電子制御装置90は、例えば図6に示す車速Vおよびアクセル開度Accをパラメータとして予め記憶された関係(マップ、変速線図)から実際の車速Vおよびアクセル開度Accに基づいて変速判断を行い、その判断した変速段が得られるように変速制御を行う変速制御手段110(図8参照)を機能的に備えており、例えば車速Vが低くなったりアクセル開度Accが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の変速段が成立させられる。この変速制御においては、その変速判断された変速段が成立させられるように変速用の油圧制御回路98内のリニアソレノイドバルブSL1乃至SL6の励磁、非励磁や電流制御が実行されてクラッチCやブレーキBの係合、解放状態が切り換えられるとともに変速過程の過渡油圧などが制御される。すなわち、電磁弁である前記リニアソレノイドバルブSL1乃至SL6の励磁、非励磁をそれぞれ制御することによりクラッチCおよびブレーキBの係合、解放状態を切り換えて第1変速段「1st」乃至第8変速段「8th」の何れかの前進変速段を成立させる。なお、スロットル弁開度θTHや吸入空気量Q、路面勾配などに基づいて変速制御を行うなど、種々の態様が可能である。
【0040】
上記図6の変速線図において、実線はアップシフトが判断されるための変速線(アップシフト線)であり、破線はダウンシフトが判断されるための変速線(ダウンシフト線)である。また、この図6の変速線図における変速線は、実際のアクセル開度Acc(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点車速)VSを越えたか否かを判断するためのものであり、上記値VSすなわち変速点車速の連なりとして予め記憶されていることにもなる。なお、図6の変速線図は自動変速機10で変速が実行される第1変速段乃至第8変速段のうちで第1変速段乃至第6変速段における変速線が例示されている。
【0041】
図7は、油圧制御回路98のうちリニアソレノイドバルブSL1乃至SL6に関する部分を示す回路図で、クラッチC1乃至C4、およびブレーキB1、B2の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)34、36、38、40、42、44には、油圧供給装置46から出力されたライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1乃至SL6により調圧されて供給されるようになっている。油圧供給装置46は、前記エンジン30によって回転駆動される機械式のオイルポンプ48(図1参照)や、ライン油圧PLを調圧するレギュレータバルブ等を備えており、エンジン負荷等に応じてライン油圧PLを制御するようになっている。リニアソレノイドバルブSL1乃至SL6は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置90(図4参照)からの指令値に基づき独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータ34〜44の油圧が独立に調圧制御されるようになっている。そして、自動変速機10の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチ・ツウ・クラッチ変速が実行される。例えば、図2の係合作動表に示すように5速から4速へのダウンシフトでは、クラッチC2が解放されると共にクラッチC4が係合され、変速ショックを抑制するようにクラッチC2の解放過渡油圧とクラッチC4の係合過渡油圧とが適切に制御される。なお、以下の説明ではリニアソレノイドバルブSL1乃至SL6を個々に区別して説明する必要がない場合には単に「リニアソレノイドバルブSL」と表現する。
【0042】
図8は、電子制御装置90の制御機能の要部すなわち自動変速機10の変速に際して目標駆動力勾配を算出し、算出された目標駆動力勾配となるように変速を実行する制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【0043】
このうち、アクセル開度検出手段102は、アクセル開度センサ52によって検出されるアクセルペダル50の操作量であるアクセル開度Accを読み込むとともに、アクセル開度Accに基づいて、そのアクセル開度Accの変化率であるアクセル踏込速度VACを算出する。なお、アクセル踏込速度VACは例えば、アクセルペダル50の踏込方向すなわちアクセル開度Accの増大方向を正として算出する。すなわち、算出されるアクセル踏込速度VACの値に基づいてアクセル開度Accが増大方向に変化しているか否かを判定することができる。
【0044】
変速制御手段110は、自動変速機10の変速を所定の手順にしたがって自動的に制御する。具体的には、自動変速機10の変速段と後述する変速段設定手段106によって設定された変速段とが異なる場合には、自動変速機10の変速段が後述する変速段設定手段106によって設定された変速段となる変速を実行させるための変速出力を油圧制御回路98に対して行う。かかる変速出力により、自動変速機10のギヤ段を自動的に切り換える。例えば、自動変速機10の変速段が第3変速段とされているときにおいて、実際の車速Vが図6の点aから点bへと低下し前記変速段設定手段106が「3rd」から「2nd」へのダウンシフトを実行すべき変速点車速V3−2を越えたとして第2変速段により走行する判断した場合には、変速制御手段110は第3変速段から第2変速段へのダウンシフトの変速制御を実行する。すなわち、第3クラッチC3を解放開始させ、その係合トルクがある程度維持されているときに第1ブレーキB1の係合を開始させてその係合トルクを発生させ、この状態で第3変速段の変速比γから第2変速段の変速比γへ移行させつつ、第3クラッチC3の解放と第1ブレーキB1の係合とを完了させる指令を油圧制御回路98に出力する。なお、変速制御手段110が本発明の変速手段に対応する。
【0045】
エンジン制御手段112は、エンジン30の出力トルクTを制御するものであって、具体的には、後述する出力トルク設定手段108によって設定されるスロットル開度θTHとなるように、スロットルアクチュエータ54を制御する。これにより、出力トルク設定手段108において設定されるエンジン出力トルクを得ることができる。エンジン制御手段112が本発明のエンジントルク制御手段に対応する。
【0046】
設定手段104は、アクセル開度検出手段102によって検出されるアクセル開度Accやアクセル踏込速度VACなどに基づいて、エンジン30によって出力されるエンジン出力トルクを設定する出力トルク設定手段108と、自動変速機10の取るべき変速段を設定する変速段設定手段106とを機能的に含んで構成される。設定手段104が本発明の設定手段に対応する。
【0047】
このうち、変速段設定手段106は、例えば図6に示す予め記憶された変速線図から実際の車速Vおよびアクセル開度Accに基づいて、自動変速機10において用いられる変速段を設定する。ここで車速Vとしては、例えば図示しないセンサによって検出される自動変速機10の出力軸の回転速度、終減速機の減速比、および駆動輪の径などに基づいて算出されればよい。
【0048】
設定手段104の出力トルク設定手段108は、アクセル開度検出手段102によって検出されるアクセル開度Accやアクセル踏込速度VACなどに基づいて、自動変速機10の変速の前後における駆動力の変化、すなわち駆動力段差が小さくなるように、エンジン30によって出力されるエンジン出力トルクを設定する。
【0049】
具体的には例えば、出力トルク設定手段108は、前記変速段設定手段106により自動変速機10の変速段が設定され、変速が判断された場合において、その変速の実行前に、変速後における駆動力を予測し、その予測された駆動力を目標駆動力として設定する。そして、設定された目標駆動力を得るために必要なエンジンの出力トルクTを設定する。このようにすれば、前記駆動力段差を小さくすることができる。
【0050】
出力トルク設定手段108は更に、後述するエンジン制御手段112によって制御されるスロットル弁(スロットルバルブ)56の開度であるスロットル開度θTHを設定する。スロットル開度θTHは、予めアクセル開度Accに対して対応づけされた値となるように、すなわちアクセル開度Accと一対一の関係にされている。しかしながら、本実施例において用いられる電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁56の場合、前記アクセル開度Accに対して予め対応づけされたスロットル開度θTHとは異なるスロットル開度とすることができる。このようにすることにより、エンジン30の出力トルクを増加もしくは減少させる。
【0051】
図9は、前記アクセル開度Accに対するスロットル開度θTHの予め対応づけられる関係であるスロットル弁基準特性LASの一例を示す図である。本実施例のスロットル弁は電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁56であるので前記スロットル弁基準特性LASに従わずにスロットル弁開度θTHを増大もしくは減少させることが可能である。例えば、図9において前記アクセル開度Accに対するスロットル弁開度θTHの関係を、スロットル弁基準特性LASよりも矢印ARUP側に変更することにより、スロットル弁基準特性LASに対応したエンジントルクTより実際のエンジントルクTを増大させるトルクアップ制御を実行することができる。逆に、前記アクセル開度Accに対するスロットル弁開度θTHの関係を、スロットル弁基準特性LASよりも矢印ARDN側に変更することにより、スロットル弁基準特性LASに対応したエンジントルクTより実際のエンジントルクTを減少させるトルクダウン制御を実行することができる。
【0052】
図10は、図9に示したスロットル弁基準特性LAS(図9)に従いアクセル開度Accに応じてスロットル弁開度θTHが変化した場合の、アクセル開度Accと駆動力FDRとの関係を例示するベース駆動力特性を表わした図である。図10に示すように、ベース駆動力特性は自動変速機10の変速段ごとに異なり、自動変速機10の変速段が低いほど駆動力FDRが大きくなる。駆動力FDRは、スロットル弁開度θTH(アクセル開度Acc)及び自動変速機10の変速段が変化しなくても、エンジン回転速度N又は車速Vとトルクコンバータ32の入出力軸の回転速度比から算出できるトルク比とをパラメータとして変化する。なお、図10のベース駆動力特性図は、自動変速機10における第1変速段(第1速)乃至第8変速段(第8速)のうち、第5変速段(第5速)乃至第8変速段(第8速)におけるベース駆動力特性を例示したものである。
【0053】
このように、同じアクセル開度Accに対しても自動変速機10の変速段によって発生する駆動力FDRが異なることから、アクセル開度Accが一定値のまま自動変速機10の変速が行なわれる場合において、変速前と変速後では駆動力FDRが異なり、駆動力差が生ずる。出力トルク設定手段108は、かかる駆動力差を減少させるものであって、前記駆動力差によって生ずるドライバビリティの悪化を低減させる。
【0054】
図11は、(a)前記出力トルク設定手段108によってエンジン30の出力トルクが設定されない場合と、(b)前記出力トルク設定手段108によってエンジン30の出力トルクが設定される場合とのそれぞれについて、自動変速機10の変速の前後および過渡期間における駆動力の時間変化を表わした図である。図11(a)においては、変速前の駆動力と変速後の駆動力との間に差が生じている一方、図11(b)においては、変速前において、変速前駆動力と変速後駆動力とが等しくなるように、すなわち駆動力差が小さくなるように前記出力トルク設定手段108によってエンジン30の出力トルクが変化させられる。
【0055】
ところで、自動変速機10の変速における駆動力変化は、従来、ドライバーによる運転操作によらず一定の駆動力勾配により駆動力が変化するように制御されていた。かかる一定勾配の駆動力変化を実行する変速制御によれば、駆動力に壁感を与え、ドライバビリティが低下するという問題があった。特に前述のように出力トルク設定手段108によって、自動変速機10の変速前において、変速前駆動力と変速後駆動力とが等しくなるようにエンジン30の出力トルクが制御させられる場合においては、駆動力差によるドライバビリティの低下が減少することから、前記駆動力変化による駆動力の壁感のドライバビリティへの影響が大きくなることがあった。
【0056】
そこで、本実施例の車両の駆動力制御装置に対応する電子制御装置90は、自動変速機10の変速における駆動力変化を制御するため、目標駆動力勾配算出手段114を含む。
【0057】
目標駆動力勾配算出手段114は、変速過渡期間における駆動力変化の勾配の目標値である目標駆動力勾配ΔPtgtを算出する。目標駆動力勾配算出手段114は、エンジン30の出力トルク変化に基づいて実駆動力勾配ΔPacを算出する後述する実駆動力勾配算出手段116と、予め記憶された関係から少なくともアクセル開度Accの変化量VACに基づいて要求駆動力勾配ΔPrqを算出する要求駆動力勾配算出手段118とを機能的に有している。目標駆動力勾配算出手段114は、前記実駆動力勾配算出手段116によって算出される実駆動力勾配ΔPacと、前記要求駆動力勾配算出手段118によって算出される要求駆動力勾配ΔPrqとのいずれかより大きい方を目標駆動力勾配ΔPtgtとする。このようにすれば、実駆動力勾配ΔPacと要求駆動力勾配ΔPrqとのより大きい方が目標駆動力勾配ΔPtgtとされるので、アクセル開度Accの変化が発生してから実際の駆動力の変化に遅れが生ずる場合であっても、実際の駆動力の変化に基づいて車両の目標駆動力勾配を算出することができる。
【0058】
このうち、実駆動力勾配算出手段116は、次のように要求駆動力勾配ΔPrqを算出する。まず、実駆動力勾配算出手段116は、所定のサンプルタイムAにおけるエンジン出力トルクT(Nm)の変化量ΔTを算出する。このエンジン出力トルクTの大きさは、例えばスロットル開度θTHやエンジン回転速度Nなどのパラメータに対し、これらのパラメータとエンジン出力トルクTとの予め記憶された関係を適用することによって得られる。前記所定のサンプルタイムAは、駆動力勾配の予測をするのに十分な時間として、例えば150(ms)のように設定される。
【0059】
続いて実駆動力勾配算出手段116は、算出された前記サンプルタイムAにおけるエンジン出力トルクの変化量ΔTから、自動変速機10の変速前の変速段に換算された前記駆動力である変速前ギヤ段換算駆動力の変化量ΔPを算出し、前記サンプルタイムAにおける変速前ギヤ段換算駆動力の変化量に基づいて、例えば、単位時間あたりの変化量に換算することにより変速前ギヤ段換算駆動力の勾配を算出する。また、同様に、前記サンプルタイムAにおけるエンジン出力トルクの変化量ΔTから変速後の変速段に換算された駆動力である変速後ギヤ段換算駆動力の変化量を算出し、前記サンプルタイムAにおける変速後ギヤ段換算駆動力の変化量に基づいて、例えば、単位時間あたりの変化量に換算することにより変速後ギヤ段換算駆動力の勾配を算出する。前記変速前ギヤ段換算駆動力の変化量および変速後ギヤ段換算駆動力の変化量の算出は、例えば、前記エンジン出力トルクの変化量ΔTに自動変速機10の変速前および変速後のギヤ段におけるギヤ比を乗ずることによって得られる。
【0060】
さらに実駆動力勾配算出手段116は、前述のように算出された変速前ギヤ段換算駆動力の勾配および変速後ギヤ段換算駆動力の勾配に基づいて、前記実駆動力勾配ΔPacを算出する。具体的には例えば、変速前ギヤ段換算駆動力の勾配および変速後ギヤ段換算駆動力の勾配の平均を実駆動力勾配ΔPacとして算出する。このように実駆動力勾配算出手段116によって算出される実駆動力勾配ΔPacが、本発明のエンジントルク変化と変速前後の自動変速機の変速比のそれぞれとに基づいて算出される駆動力勾配の平均に対応する。
【0061】
図12は、実駆動力勾配算出手段116による実駆動力勾配の算出を説明する図である。実駆動力変化量算出タイミングにおいて、実駆動力勾配算出手段116は予め定められた前記実駆動力変化量算出タイミングまでのサンプルタイムA分の時間間隔における実エンジントルク、すなわちエンジン出力トルクTの変化量ΔTを図12上段に示すように算出する。続いて、算出されたエンジン出力トルクの変化量ΔTに、自動変速機10の変速前および変速後の変速段のギヤ比をそれぞれ乗じることによって、変速前ギヤ段換算駆動力および変速後ギヤ段換算駆動力をそれぞれ図12下段に示すように算出し、それらの勾配を算出する。すなわち、図12下段において、変速前ギヤ段換算駆動力は一点鎖線で、変速後ギヤ段換算駆動は二点鎖線でそれぞれ示されている。また、実駆動力勾配算出手段116は、図12下段において一点鎖線で表わされた変速前ギヤ段換算駆動力の勾配と、二点鎖線で表わされた変速後ギヤ段換算駆動の勾配との平均を実駆動力勾配ΔPacとして算出する。この実駆動力勾配ΔPacは、図12下段において実線で表わされている。
【0062】
図8に戻って、要求駆動力勾配算出手段118は、運転者によって車両に要求される駆動力である要求駆動力の所定の単位時間における変化、すなわち勾配ΔPrqを算出する。具体的には例えば、要求駆動力勾配算出手段118は、図示しない車速センサによって検出される車速V、および、アクセル開度センサ52によって検出されるアクセル開度Accなどに基づいて要求駆動力を算出する。そして、前記サンプルタイムAにおける前記要求駆動力の変化量に基づいて、例えば、単位時間あたりの変化量に換算することにより目標駆動力勾配ΔPrqとして算出する。なお、前記要求駆動力の算出は、例えば、予め車速Vおよびアクセル開度Accなどのパラメータに対する要求駆動力の関係を実験あるいはシミュレーションなどにより得ておき、実際の走行状態において検出される車速Vおよびアクセル開度Accにその関係を適用することにより算出することができる。
【0063】
図13は、要求駆動力勾配算出手段118による要求駆動力勾配ΔPrqの算出を説明する図である。要求駆動力変化量算出タイミングにおいて、要求駆動力勾配算出手段118は予め定められた前記要求駆動力変化量算出タイミングまでのサンプルタイムA分の時間間隔における要求駆動力の変化量を図13の太線に示すように算出し、算出された要求駆動力の変化の勾配、すなわち図13の太線の傾きを要求駆動力勾配ΔPrqとして算出する。
【0064】
図8に戻って、油圧変更手段120は、自動変速機10の変速に関与する油圧式摩擦係合装置、具体的には、第1クラッチC1乃至第4クラッチC4および第1ブレーキB1および第2ブレーキB2のうち、変速によって解放される解放側油圧式摩擦係合装置に供給される作動油圧の時間変化を、予め定められた時間変化から変更する。この変更は、自動変速機10の変速の過渡期間における車両の駆動力の勾配が、前記目標駆動力勾配算出手段114によって算出される目標駆動力勾配となるように変速のトルク相において行なわれる。変速のトルク相において、その変速において解放される解放側油圧式摩擦係合装置に供給される作動油圧(解放側油圧)の時間変化を、より長い時間かけて変化するように変更することにより、解放側油圧式摩擦係合装置から、その変速によって係合される係合側油圧式摩擦係合装置へのトルク分担の変化に時間を要することとなるので、変速における駆動力変化を緩やかなものとすることができる。逆に解放側油圧式摩擦係合装置に供給される作動油圧の時間変化を、より短い時間かけて変化するように変更することにより、変速における駆動力変化を急なものとすることができる。
【0065】
具体的には油圧変更手段120は、前記目標駆動力勾配算出手段114によって算出される目標駆動力勾配ΔPtgtとなるように変更後の作動油圧の時間変化を算出し、変速制御手段110に対し、算出された変更後の作動油圧の時間変化により摩擦係合要素への作動油圧の供給を行なわせる。具体的には例えば、解放側油圧式摩擦係合装置に供給される作動油圧の減少の度合い(勾配)である解放側油圧ドレン勾配ΔPdを設定する。なお、油圧変更手段120による変更が行なわれない場合においては、自動変速機10の変速において変速に関与する油圧式摩擦係合装置の作動油圧は、例えば予め記憶された所定のパターンにより、時間変化させられる。前記変速制御手段110および油圧変更手段120が本発明の変速手段に対応する。
【0066】
ここで、油圧変更手段120による作動油圧の時間変化の変更は、自動変速機10の変速のトルク相において行なわれるものであって、変速の過渡期間における車両の駆動力の勾配が、前記目標駆動力勾配算出手段114によって算出される目標駆動力勾配ΔPtgtとなるように行なうものであるので、目標駆動力勾配算出手段114による目標駆動力勾配ΔPtgtの算出は、自動変速機10の変速のトルク相の開始前に行なわれることが望ましい。
【0067】
アクセル踏戻判定手段122は、変速制御手段110により自動変速機10の変速判断がされてから、油圧変更手段120による油圧式摩擦係合装置の作動油圧の変更が実施されるまでの間において、運転者によるアクセルペダル50の踏み増し、もしくは踏み戻し操作が行なわれたか否かを判定する。具体的には例えば、アクセル踏込速度VACが、前記変速制御手段110によって自動変速機10の変速判断がされる際のアクセル踏込速度VACの大きさから所定の閾値を超えて変動した場合には、運転者によるアクセルペダル50の踏み増し、もしくは踏み戻し操作が行なわれたと判断する。ここで、前記所定の閾値は、目標駆動力勾配算出手段114の実駆動力勾配算出手段116により算出される実駆動力勾配ΔPacとなるように前記油圧変更手段120によって車両の駆動力勾配した場合においてもドライバビリティの向上の度合いが低いとされる程度に、前記実駆動力勾配ΔPacとアクセルペダル50の踏み増しもしくは踏み戻し操作が行なわれた結果実際に発生しうる駆動力勾配とが異なる場合にアクセル踏込速度VACの大きさがその閾値を超えるように定められるものであって、その値は実験的にあるいはシミュレーションなどにより定められる。
【0068】
ここで目標駆動力勾配算出手段114は前述のように、実駆動力勾配算出手段116によって算出される実駆動力勾配ΔPacと、要求駆動力勾配算出手段118によって算出される要求駆動力勾配ΔPrqとのうち、より大きい方を目標駆動力勾配ΔPtgtとして算出する。しかしながら、前記アクセル踏戻判定手段122によって、変速制御手段110により自動変速機10の変速判断がされてから、油圧変更手段120による油圧式摩擦係合装置の作動油圧の変更が実施されるまでの間において、運転者によるアクセルペダル50の踏増し、もしくは踏戻し操作が行なわれたと判断された場合には、目標駆動力勾配算出手段114の要求駆動力勾配算出手段118は、その踏増しもしくは踏戻し操作におけるアクセル開度Accなどに基づいて要求駆動力勾配ΔPrqを算出するとともに、前記目標駆動力勾配算出手段114は算出された要求駆動力勾配ΔPrqを目標駆動力勾配ΔPtgtとする。このようにすれば、変速制御手段110により自動変速機10の変速判断がされてから、油圧変更手段120による油圧式摩擦係合装置の作動油圧の変更が実施されるまでの間に、運転者によるアクセルペダル50の踏増し、もしくは踏戻し操作が行なわれた場合であっても、前記踏増しもしくは踏戻し操作におけるアクセル開度Accなどに基づいて算出される要求駆動力勾配ΔPrqが目標駆動力勾配ΔPtgtとされるので、その目標駆動力勾配ΔPtgtとなるように前記油圧変更手段120による作動油圧の変更が行なわれることにより、ドライバビリティが向上される。
【0069】
図14は、本実施例における車両の駆動力制御装置、すなわち電子制御装置90の制御作動の一例を説明するフローチャートであって、自動変速機10のダウン変速が行なわれる場合の作動を説明するものである。まず、設定手段104および変速制御手段110などに対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、実際の車速Vおよびアクセル開度Accに基づいて、自動変速機10において用いられる変速段が設定され、設定され変速段と現在の変速段とが異なる場合には変速の実行が判断される。また、変速後における目標駆動力が算出され、その目標駆動力を得るためのスロットル開度θTHが算出される。
【0070】
SA2およびSA3は変速制御手段110、エンジン制御手段112などに対応する。まず、SA2においては、SA1で実行が判断された変速が開始される。具体的には、SA1で用いるとされた変速段を成立させるために、例えば図2に示す係合表などにより、解放すべき油圧式摩擦係合装置および係合すべき油圧式摩擦係合装置が決定される。そして、予め定められた時間や油圧により、これらの油圧式摩擦係合装置に供給される作動油圧が変化させられる。また、SA1で算出されたスロットル開度θTHとなるようにスロットルバルブ56の開度が制御され、エンジン出力トルクが制御される。
【0071】
SA3においては、SA2で開始された変速において、自動変速機10の回転要素の回転速度の変化が行なわれるイナーシャ相が開始される。このイナーシャ相においては、自動変速機10の入力軸回転速度に対応するトルクコンバータ32のタービンの回転速度Nの大きさが、自動変速機10の変速前の変速段に対応する同期回転速度から、変速後の変速段に対応する同期回転速度へ変化させられる。
【0072】
SA4乃至SA6は目標駆動力勾配算出手段114に対応する。このうち、実駆動力勾配算出手段116に対応するSA4においては、実駆動力勾配ΔPtgtが算出される。具体的にはまず、所定のサンプルタイムAにおけるエンジン出力トルクT(Nm)の変化量ΔTが算出される。ここで、エンジン出力トルクTの値は、例えばスロットル開度θTHやエンジン回転速度Nなどのパラメータに対し、これらのパラメータとエンジン出力トルクTとの予め記憶された関係を適用することによって得られる。そして、算出されたエンジン出力トルクの変化量ΔTから、変速前ギヤ段換算駆動力の変化量および変速後ギヤ段換算駆動力の変化量がそれぞれ算出され、変速前ギヤ段換算駆動力および変速後ギヤ段換算駆動力の勾配が算出される。なお、変速前ギヤ段換算駆動力の変化量および変速後ギヤ段換算駆動力の変化量は、例えば、前記エンジン出力トルクの変化牢ΔTに、変速前の変速段の変速比、および変速後の変速段の変速比をそれぞれ乗ずることなどによって得られる。さらにSA4においては、算出された変速前ギヤ段換算駆動力の勾配および変速後ギヤ段換算駆動力の勾配に基づいて、前記実駆動力勾配ΔPacが算出される。具体的には例えば、変速前ギヤ段換算駆動力の勾配および変速後ギヤ段換算駆動力の勾配の平均が実駆動力勾配ΔPacとして算出される。
【0073】
要求駆動力勾配算出手段118に対応するSA5においては、運転者によって車両に要求される要求駆動力の勾配である要求駆動力勾配ΔPrqが算出される。具体的には例えば、SA5においては、前記サンプルタイムAにおける前記要求駆動力の変化量に基づいて、例えば、単位時間あたりの変化量に換算することにより目標駆動力勾配ΔPrqが算出される。なお、前記要求駆動力の算出は、例えば、車速V、アクセル開度Accなどに基づいて行なわれる。
【0074】
SA6においては、SA4で算出された実駆動力勾配ΔPacと、SA5で算出された要求駆動力勾配ΔPrqとのうち、より大きいものが目標駆動力勾配ΔPrgtとされる。なお、後述するようにSA8の判断が肯定されてSA5が実行された後にSA6が実行される場合には、SA5で算出された要求駆動力勾配ΔPrqが目標駆動力勾配ΔPtgtとされる。
【0075】
油圧変更手段120に対応するSA7においては、自動変速機10の変速の過渡期間における車両の実際の駆動力の勾配をSA6で算出された目標駆動力勾配ΔPtgtとするための、自動変速機10の変速に関与する油圧式摩擦係合装置の作動油圧の変更量が、例えば前記目標駆動力勾配ΔPtgtと実際の車両の駆動力勾配との差を解消するための予め記憶されたフィードバック制御式から算出される。具体的には、変速において係合状態から解放される解放側油圧式摩擦係合装置に供給される作動油圧の時間変化である解放側油圧ドレン勾配ΔPdが変更される。
【0076】
アクセル踏戻判定手段122に対応するSA8においては、SA1において変速が判断されてからの間に、運転者によるアクセルペダル50の踏み増し、もしくは踏み戻し操作が行なわれたか否かが判定される。この判断は、アクセル踏込み速度VACの値が、SA1の判断を行なった際の値から所定の閾値を超えて変化したか否かなどに基づいて行なわれる。すなわち、アクセル踏込み速度VACの値が、所定の閾値を超えてSA1の判断を行なった際の値を上回った場合には踏み増しが行なわれたと判断され、アクセル踏込み速度VACの値が、所定の閾値を超えてSA1の判断を行なった際の値を下回った場合には踏み戻しが行なわれたと判断される。そして、踏み増し、もしくは踏み戻しのいずれかが行なわれたと判断された場合には本ステップの判断が肯定され、SA5が再度実行される。一方、踏み増しおよび踏み戻しのいずれも行なわれなかったと判断された場合には、本ステップの判断は否定され、SA9が実行される。
【0077】
油圧変更手段120、変速制御手段110などに対応するSA9においては、SA7で算出された変更量を反映した作動油圧の時間変化である解放側油圧ドレン勾配ΔPdにしたがって作動油圧が低下させられ、解放側油圧式摩擦係合装置の解放が行なわれる。
【0078】
SA10においては、SA9において所定の変速における解放側油圧式摩擦係合装置の解放が開始されるとともに、変速における係合側油圧式摩擦係合装置の係合が行なわれた結果、解放側油圧式摩擦係合装置から、変速において係合される係合側油圧式摩擦係合装置へのトルクの分担が完了し、変速が終了される。
【0079】
図15は、自動変速機10のダウン変速が行なわれる場合において、本実施例の車両の駆動力制御装置、すなわち電子制御装置90により駆動力制御が実施される場合のタービン回転速度N、エンジン出力トルクN、解放側油圧式摩擦係合装置に供給される作動油圧(解放側油圧)、係合側油圧式摩擦係合装置に供給される作動油圧(係合側油圧)、および自動変速機10の出力トルクTOUTの時間変化の一例を説明するタイムチャートである。
【0080】
まず、時刻t1においては、設定手段104による自動変速機10の変速段の設定および、変速制御手段110による自動変速機10の変速の判断が行なわれるとともに、その変速の実行が開始される。
【0081】
変速の実行が開始された時刻t1乃至時刻t2において、解放側油圧については、その油圧を急速に低下させるクイックドレーン制御を行った後、待機圧まで上昇させて所定時間待機させる。そして待機後において油圧を徐々に低下させる。一方係合側油圧については、パッククリアランスを速やかに詰める為に作動油が急速充填されるような高い油圧指令値が出力された後、待機圧まで低下させられる。
【0082】
時刻t2においては、解放側油圧の低下に伴って、タービン回転速度Nが自動変速機10の変速前の変速段における同期回転速度から上昇を開始する。このタービン回転速度Nは、時刻t3において変速後の変速段における同期回転速度に同期するまでの間、徐々に上昇する。この時刻t2乃至時刻t3においては、解放側油圧は予め設定された勾配により引き続き低下させられる。また、係合側油圧は時刻t2以降引き続き待機圧において待機させられた後、後述する時刻t3以降において上昇させられる直前にパッククリアランスを詰めるために再度高い油圧指令値が出力される。また、出力トルクTOUTの値は、解放側油圧が低下させられるのに伴って、時刻t2乃至時刻t3において低下する。
【0083】
時刻t3においては、タービン回転速度Nが変速後の変速段における同期回転速度に同期する。このように、時刻t1から時刻t3に掛けては、自動変速機10の回転要素の回転速度の変化を伴うイナーシャ相である。なお、変速におけるトルク相の開始前、すなわち時刻t1から時刻t3までの間に、目標駆動力勾配ΔPtgtの算出、および車両の駆動力変化を算出された目標駆動力勾配ΔPtgtとするための解放側油圧ドレン勾配ΔPdの算出が行なわれる。
【0084】
時刻t3乃至時刻t4は変速の過渡期間内で回転要素の回転速度変化が生じない範囲でトルク分担の変更が行なわれる。すなわち時刻t3乃至時刻t4の時間はトルク相に対応する。このトルク相においては、解放側油圧が前記時刻t3までの間に算出された解放側油圧のドレン勾配となるように減少させられる。すなわち、トルク相の長さ(時間)は、前記解放側油圧のドレン勾配ΔPdの値によって変化する。また、係合側油圧は、同期を予測して時刻t3の直前に立ち上がり、タービン回転速度が同期回転速度に維持されるようにフィードバック制御式にしたがって油圧を増加させる。このようにして、解放側油圧式摩擦係合要素から係合側油圧式摩擦係合要素へトルク分担が行なわれる。これに伴ってエンジン出力トルクTは減少させられるとともに、自動変速機10の出力トルクTOUTの値は上昇させられる。なお、このとき、自動変速機10の出力トルクTOUTは時刻t3までに算出された目標駆動力勾配ΔPtgtとなるように上昇させられる。
【0085】
前述の実施例によれば、設定手段104(SA1)の出力トルク設定手段108および変速段設定手段106によりそれぞれ車両に要求される目標駆動力を得るための目標エンジントルク及び目標変速段が設定され、変速制御手段110(SA2)により目標変速段へ自動変速機10の変速段が変更させられ、エンジントルク制御手段112により目標エンジントルクが得られるようにエンジン30の出力トルクが制御され、目標駆動力勾配算出手段114(SA4乃至SA6)により目標駆動力に基づいて目標駆動力勾配ΔPtgtが算出される。また、目標駆動力勾配算出手段112による目標駆動力勾配ΔPtgtの算出は自動変速機10の変速におけるトルク相の開始前に行なわれ、変速制御手段110により、トルク相において、車両の駆動力変化が目標駆動力勾配ΔPtgtとなるように変速が実行されるので、変速の過渡期間であるトルク相において車両の駆動力の変化が前記目標駆動力勾配ΔPtgtとされ、変速過渡期間におけるドライバビリティが向上される。
【0086】
また、前述の実施例によれば、目標駆動力勾配算出手段114の実駆動力勾配算出手段116(SA4)は、自動変速機10の変速におけるトルク相の開始前のエンジントルク変化ΔTを算出し、エンジントルク変化ΔTと変速前後の自動変速機10の変速比のそれぞれとに基づいて算出される駆動力勾配の平均である実駆動力勾配ΔPacを目標駆動力勾配ΔPtgtとして用いるので、変速過渡期間の駆動力変化がドライバビリティに与える影響を低減することができ、変速過渡期間におけるドライバビリティが向上される。
【0087】
また、前述の実施例によれば、自動変速機10の変速はダウンシフトであるので、トルク相の前の状態において算出される目標駆動力勾配ΔPtgtに基づいて変速が実行される。
【0088】
また、前述の実施例によれば、自動変速機10は複数の油圧式摩擦係合装置である第1クラッチC1乃至第4クラッチC4および第1ブレーキB1および第2ブレーキB2を有し、変速制御手段110は変速に関与する油圧式摩擦係合装置を制御することにより、車両の駆動力変化が目標駆動力勾配ΔPtgtとなるように変速を実行するので、自動変速機10の変速において解放される解放側油圧式摩擦係合装置と係合側油圧式摩擦係合装置とのトルクの分担を制御することにより、車両の駆動力変化が前記目標駆動力勾配ΔPtgtとなるように変化させられて変速が実行される。
【0089】
また、前述の実施例によれば、目標駆動力勾配算出手段114は、自動変速機10の変速におけるトルク相の開始前のエンジントルク変化ΔTに基づいて実駆動力勾配ΔPacを算出する実駆動力勾配算出手段116(SA4)と、少なくともアクセル開度の変化量に対応するアクセル踏込速度VACに基づいて要求駆動力勾配ΔPrqを算出する要求駆動力勾配算出手段118(SA5)とを含み、算出される実駆動力勾配ΔPacと要求駆動力勾配ΔPrqとのうち、より大きいものを目標駆動力勾配ΔPtgtとして算出するので、アクセル開度Accが急激に変化した後に車両の実際の駆動力が遅れて追従する場合のように、実駆動力勾配ΔPacと要求駆動力勾配ΔPrqとが異なる場合においても、これらのうちより大きいものが目標駆動力勾配ΔPtgtとして算出されるので、変速過渡期間におけるドライバビリティが向上される。
【0090】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0091】
図16は、本発明における車両の駆動力制御装置の制御作動の別の例を説明するフローチャートであって、自動変速機10がアップ変速を行なう場合の制御作動の例である。
【0092】
まず、設定手段104の変速段設定手段106および変速制御手段110などに対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SB1においては、前述の実施例における図14のSA1と同様に、実際の車速Vおよびアクセル開度Accに基づいて、自動変速機10において用いられる変速段が設定され、設定され変速段と現在の変速段とが異なる場合には変速の実行が判断される。また、変速後における目標駆動力が算出され、その目標駆動力を得るためのスロットル開度θTHが算出される。
【0093】
SB2は変速制御手段110、エンジン制御手段112などに対応する。SB2においては、SB1で実行が判断された変速が開始される。具体的には、SB1で用いるとされた変速段を成立させるために、例えば図2に示す係合表などにより、解放すべき油圧式摩擦係合装置および係合すべき油圧式摩擦係合装置が決定される。そして、予め定められた時間や油圧により、これらの油圧式摩擦係合装置に供給される作動油圧が変化させられる。また、SB1で算出されたスロットル開度θTHとなるようにスロットルバルブ56の開度が制御され、エンジン出力トルクが制御される。
【0094】
SB3乃至SB5は目標駆動力勾配算出手段114に対応する。このうち、実駆動力勾配算出手段116に対応するSB3においては、実駆動力勾配ΔPtgtが算出される。具体的には、前述の実施例の図14におけるSA4と同様であり、まず、所定のサンプルタイムAにおけるエンジン出力トルクT(Nm)の変化量ΔTが算出される。そして、算出されたエンジン出力トルクの変化量ΔTから、変速前ギヤ段換算駆動力の変化量および変速後ギヤ段換算駆動力の変化量がそれぞれ算出され、変速前ギヤ段換算駆動力および変速後ギヤ段換算駆動力の勾配が算出される。さらに、算出された変速前ギヤ段換算駆動力の勾配および変速後ギヤ段換算駆動力の勾配に基づいて、前記実駆動力勾配ΔPacが算出される。具体的には例えば、変速前ギヤ段換算駆動力の勾配および変速後ギヤ段換算駆動力の勾配の平均が実駆動力勾配ΔPacとして算出される。
【0095】
要求駆動力勾配算出手段118に対応するSB4においては、運転者によって車両に要求される要求駆動力の勾配である要求駆動力勾配ΔPrqが算出される。具体的には例えば、前述の実施例の図14におけるSA5と同様に、すなわち、前記サンプルタイムAにおける前記要求駆動力の変化量に基づいて、例えば、単位時間あたりの変化量に換算することにより目標駆動力勾配ΔPtgtが算出される。なお、前記要求駆動力の算出は、例えば、車速V、アクセル開度Accなどに基づいて行なわれる。
【0096】
SB5においては、SB3で算出された実駆動力勾配ΔPacと、SB4で算出された要求駆動力勾配ΔPrqとのうち、より大きいものが目標駆動力勾配ΔPtgtとされる。なお、後述するようにSB7の判断が肯定されてSB4が実行された後にSB5が実行される場合には、SB4で算出された要求駆動力勾配ΔPrqが目標駆動力勾配ΔPtgtとされる。
【0097】
油圧変更手段120に対応するSB6においては、自動変速機10の変速の過渡期間における車両の駆動力の勾配をSB5で算出された目標駆動力勾配ΔPtgtとするための、自動変速機10の変速に関与する油圧式摩擦係合装置の作動油圧の変更量が算出される。具体的には、変速において係合状態から解放される解放側油圧式摩擦係合装置に供給される作動油圧の時間変化である解放側油圧ドレン勾配ΔPdが変更される。
【0098】
アクセル踏戻判定手段122に対応するSB7においては、SB1において変速が判断されてからの間に、運転者によるアクセルペダル50の踏み増し、もしくは踏み戻し操作が行なわれたか否かが判定される。この判断は、前述の実施例の図14におけるSA8と同様に、アクセル踏込み速度VACの値が、SB1の判断を行なった際の値から所定の閾値を超えて変化したか否かなどに基づいて行なわれる。すなわち、アクセル踏込み速度VACの値が、所定の閾値を超えてSB1の判断を行なった際の値を上回った場合には踏み増しが行なわれたと判断され、アクセル踏込み速度VACの値が、所定の閾値を超えてSB1の判断を行なった際の値を下回った場合には踏み戻しが行なわれたと判断される。そして、踏み増し、もしくは踏み戻しのいずれかが行なわれたと判断された場合には本ステップの判断が肯定され、SB4が再度実行される。一方、踏み増しおよび踏み戻しのいずれも行なわれなかったと判断された場合には、本ステップの判断は否定され、SB8が実行される。
【0099】
油圧変更手段120、変速制御手段110などに対応するSB8においては、SB6で算出された変更量を反映した作動油圧の時間変化である解放側油圧ドレン勾配ΔPdにしたがって作動油圧が低下させられ、解放側油圧式摩擦係合装置の解放が行なわれる。すなわち、本実施例においては、SB8において、解放側油圧式摩擦係合装置の解放が開始されるとともに、係合側油圧式摩擦係合装置の係合が行なわれる。言いかえれば、SB8により変速のトルク相が実質的に開始され、解放側油圧式摩擦係合装置から、係合側油圧式摩擦係合装置へのトルクの分担が変更される。
【0100】
変速制御手段110などに対応するSB9においては、SB8によって解放側油圧式摩擦係合装置から、係合側油圧式摩擦係合装置へのトルクの分担の変更が完了し、自動変速機10の回転要素の回転速度の変化が行なわれるイナーシャ相が開始される。このイナーシャ相においては、自動変速機10の入力軸回転速度に対応するトルクコンバータ32のタービンの回転速度Nの大きさが、自動変速機10の変速前の変速段に対応する同期回転速度から、変速後の変速段に対応する同期回転速度へ変化させられる。
【0101】
SB10においては、SB9において開始されたイナーシャ相が終了され、変速が完了する。すなわち、自動変速機10の入力軸回転速度に対応するトルクコンバータ32のタービンの回転速度Nが、自動変速機10の変速後の変速段に対応する同期回転速度への同期が完了させられる。
【0102】
前述の実施例によれば、自動変速機10の変速はアップシフトであるので、トルク相の前の状態において算出される目標駆動力勾配ΔPtgtに基づいて変速が実行される。すなわち、自動変速機10の変速がアップシフトの場合であっても、前述の実施例と同様の効果が得られる。
【0103】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0104】
例えば、前述の実施例においては、有段式の自動変速機10として図1などに示す前進8段後進1段の自動変速機が用いられたが、これに限定されない。複数の油圧式摩擦係合装置の係合状態および解放状態が切換制御されることによって複数の変速段を切換可能な自動変速機であればよく、特に、リニアソレノイドバルブなどを用いることにより前記油圧式摩擦係合装置に供給される作動油の油圧が直接制御されることにより、油圧式摩擦係合装置の係合状態および解放状態が切換えられるものであればよい。
【0105】
また、前述の実施例においては、エンジン出力トルクTの大きさは、スロットル開度センサ64によって検出されるスロットル開度θTHや図示しないエンジン回転速度センサによって検出されるエンジン回転速度Nなどのパラメータに対し、これらのパラメータとエンジン出力トルクTとの予め記憶された関係を適用することによって得られるものとされたが、これに限定されない。例えば、トルクセンサを用いて直接エンジン出力トルクTや、エンジン出力トルクTと一意に対応する値を検出することによって得るようにしてもよい。
【0106】
また、前述の実施例においては、目標駆動力勾配算出手段114は、実駆動力勾配算出手段116によって算出される実駆動力勾配ΔPqcと要求駆動力勾配算出手段118によって算出される要求駆動力勾配ΔPrqとのうち、より大きいものを目標駆動力勾配ΔPtgtとしたが、実駆動力勾配ΔPrqを目標駆動力勾配ΔPtgtとすることによっても一定の効果が得られる。
【0107】
また、前述の実施例においては、変速段設定手段106によりアクセル開度Accなどに基づいて自動変速機の変速段が設定された後に、設定された変速段などに基づいて出力トルク設定手段108により目標駆動力が設定されるものとされたが、これに限定されない。すなわち、出力トルク設定手段108によりアクセル開度Accなどに基づいて目標駆動力およびエンジントルクTが設定され、設定された目標駆動力などに基づいて変速段設定手段106により自動変速機10の変速段が設定される構成であってもよい。
【0108】
また、前述の実施例においては、実駆動力勾配算出手段116および要求駆動力勾配算出手段118は、それぞれ、実駆動力勾配ΔPacおよび要求駆動力勾配ΔPrqを算出すべき算出タイミングにおいて、その算出タイミングを終点とするサンプルタイムA分の時間間隔におけるエンジン出力トルクTの変化量ΔTあるいは要求駆動力の変化量に基づいて実駆動力勾配ΔPacおよび要求駆動力勾配ΔPrqを算出するものとされたが、このような態様に限られない。例えば、前記サンプルタイムAよりも短い周期により実駆動力勾配ΔPacおよび要求駆動力勾配ΔPrqを繰り返し算出するものとしておき、実駆動力勾配ΔPqcおよび要求駆動力勾配ΔPrqを算出すべき算出タイミングにおいては直前に算出された実駆動力勾配ΔPqcおよび要求駆動力勾配ΔPrqを用いるようにしてもよい。
【0109】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0110】
10:自動変速機
30:エンジン
56:電子スロットル弁
90:電子制御装置(車両の駆動力制御装置)
104:設定手段
110:変速制御手段(変速手段)
112:エンジン制御手段(エンジントルク制御手段)
114:目標駆動力勾配算出手段
116:実駆動力勾配算出手段
118:要求駆動力勾配算出手段
C1〜C4:クラッチ(油圧式摩擦係合装置)
B1〜B2:ブレーキ(油圧式摩擦係合装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に開閉制御可能な電子スロットル弁により出力トルクが変化させられるエンジンと有段の自動変速機とを備えた車両の駆動力制御装置であって、
目標駆動力を得るための目標エンジントルク及び目標変速段を設定する設定手段と、
該設定手段により設定された目標変速段へ前記自動変速機の変速段を変更する変速手段と、
前記目標エンジントルクが得られるように前記エンジンの出力トルクを制御するエンジントルク制御手段と、
目標駆動力勾配を算出する目標駆動力勾配算出手段と、を備え、
前記目標駆動力勾配算出手段は、前記自動変速機の変速におけるトルク相の開始前に目標駆動力勾配の算出を行ない、
前記変速手段は、該トルク相において、前記目標駆動力勾配となるように変速を実行すること、
を特徴とする車両の駆動力制御装置。
【請求項2】
前記目標駆動力勾配算出手段は前記自動変速機の変速におけるトルク相の開始前のエンジントルク変化を算出し、該エンジントルク変化と変速前後の前記自動変速機の変速比のそれぞれとに基づいて算出される駆動力勾配の平均を前記目標駆動力勾配として用いること
を特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項3】
前記自動変速機の変速はダウンシフトであること
を特徴とする請求項1または2に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項4】
前記自動変速機の変速はアップシフトであること
を特徴とする請求項1または2に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項5】
前記自動変速機は複数の油圧式摩擦係合装置を有し、
前記変速手段は変速に関与する前記油圧式摩擦係合装置を制御することにより、前記目標駆動力勾配となるように変速を実行すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項6】
前記目標駆動力勾配算出手段は、前記自動変速機の変速におけるトルク相の開始前のエンジントルク変化に基づいて算出される実駆動力勾配と、少なくともアクセル開度の変化量に基づいて算出される要求駆動力勾配とのうち、より大きいものを目標駆動力勾配として算出すること
を特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−266052(P2010−266052A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120118(P2009−120118)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】