説明

車両の駆動装置

【課題】遊星歯車機構に自動調芯機能を持たせ、耐久性に優れ、電動機の性能に影響を及ぼさずに、コンパクト且つ安価な車両の駆動装置を提供する。
【解決手段】サンギヤ42、ロータ13と一体回転可能なリングギヤ41、及びサンギヤ42及びリングギヤ41と噛合するピニオンギヤ43とを有する遊星歯車機構40は、ロータ13の内周側に配置される。また、ロータ13の支持部材17は、第1軸受部31によって第2回転軸28に回転自在に支持されるとともに、第1軸受部31を中心としてロータ13とステータ12の径方向隙間Cの範囲内で傾倒可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動装置に関し、特に、ハイブリッド車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原動機として内燃機関と電動機とを備え、これらの駆動トルクを走行状況に応じて適宜切り換え、ドライブトレインに供給するようにしたハイブリッド車両が知られている。このような複数の原動機からの動力を分配する動力分配機構として、遊星歯車列を用いたハイブリッド駆動装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。図4は、特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置の要部縦断面図であり、このハイブリッド駆動装置100においては、モータジェネレータ102のロータ軸103が、軸方向に離間して配置される一対の軸受104,104によってハウジング105に回転自在に支持されている。ロータ軸103の径方向内側には、動力分配機構としての遊星歯車列106が配設されている。遊星歯車列106は、取付ボルト107によりハブ108を介してロータ軸103に固定されるリングギヤ109と、回転軸110に連結されるサンギヤ111と、サンギヤ111及びリングギヤ109と噛合しキャリア112により自転可能、かつ、公転可能に支持されるピニオンギヤ113とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4247748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、遊星歯車機構においては、サンギヤとキャリアとリングギヤとの間に芯ズレが生じることで、所定の位相を通過するピニオンギヤの負荷が大きくなる。このため、遊星歯車機構に自動調芯機能を持たせて、各ピニオンギヤに作用する負荷が分担されるように設定することが一般的に行われている。
【0005】
特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置100は、組付け性の向上を目的とし、ロータ軸103が軸方向に離間して配置される一対の軸受104,104によってハウジング105に2点支持されており、リングギヤ109は、取付ボルト107によってロータ軸103に固定されていることを開示するのみであり、遊星歯車列106を設計する際に必要な自動調芯機能に関する設定について記載されていない。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動機の性能を維持しつつ、遊星歯車機構に自動調芯機能を持たせて、遊星歯車機構の耐久性を向上することができ、コンパクト且つ安価な車両の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
ロータコア(例えば、後述の実施形態におけるロータコア18)、及び外周面(例えば、後述の実施形態における外周面17a)に該ロータコアが支持される支持部材(例えば、後述の実施形態における支持部材17)を有するロータ(例えば、後述の実施形態におけるロータ13)と、前記ロータコアと径方向隙間(例えば、後述の実施形態における径方向隙間C)を介して対向配置されるステータ(例えば、後述の実施形態におけるステータ12)と、を有する電動機(例えば、後述の実施形態における電動機11)と、
第1回転軸(例えば、後述の実施形態における第1回転軸27)と一体回転可能なサンギヤ(例えば、後述の実施形態におけるサンギヤ42)、前記支持部材の内周面に設けられ、前記ロータと一体回転可能なリングギヤ(例えば、後述の実施形態におけるリングギヤ41)、前記サンギヤ及び前記リングギヤと噛合するピニオンギヤ(例えば、後述の実施形態におけるピニオンギヤ43)、及び、第2回転軸(例えば、後述の実施形態における第2回転軸28)と一体回転可能で、前記ピニオンギヤを自転可能、かつ、公転可能に支持するキャリア(例えば、後述の実施形態におけるキャリア44)、を有し、前記ロータの内周側に配置される遊星歯車機構(例えば、後述の実施形態における遊星歯車機構40)と、
を備える車両の駆動装置(例えば、後述の実施形態における駆動装置10)であって、
前記支持部材は、第1軸受部(例えば、後述の実施形態における第1軸受部31)によって前記第1回転軸又は第2回転軸に回転自在に支持されるとともに、前記第1軸受部を中心として前記径方向隙間の範囲内で傾倒可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、
前記リングギヤは、前記支持部材と別体で形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成に加えて、
前記リングギヤは、前記支持部材と一体に形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかの構成に加えて、
前記第1軸受部及び前記遊星歯車機構は、前記ロータの軸方向中心(例えば、後述の実施形態における軸方向中心CL)に対して互いに反対側に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4の構成に加えて、
前記第1回転軸と前記第2回転軸とを相対回転可能に支持する第2軸受部(例えば、後述の実施形態における第2軸受部46)は、軸方向において前記第1軸受部と前記遊星歯車機構との間に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5の構成に加えて、
前記ロータの内周側、且つ前記第1軸受部に対して前記遊星歯車機構と軸方向反対側に、前記ロータの回転を検出可能な回転数検出手段(例えば、後述の実施形態におけるレゾルバ55)を更に備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項4から請求項6のいずれかの構成に加えて、
前記支持部材は、前記第1軸受部によって、前記第1回転軸の径方向外側に配置された前記第2回転軸に回転自在に支持され、
前記第2回転軸には、前記第1軸受部と前記遊星歯車機構との間で、前記遊星歯車機構に潤滑油を供給する給油穴(例えば、後述の実施形態における径方向穴28a)が形成され、
前記潤滑油は、前記第1回転軸に形成された他の給油穴(例えば、後述の実施形態における軸方向穴27a、径方向穴27b)から前記給油穴を介して前記遊星歯車機構に供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、各ピニオンギヤに作用する負荷ができるだけ均等になるように第1軸受部を中心として支持部材をロータとステータの径方向隙間の範囲内で傾倒させることで、遊星歯車機構の自動調芯機能を作用させることができ、遊星歯車機構の耐久性を向上させると共に、電動機の性能に影響を及ぼさずに、安価且つコンパクトな駆動装置とすることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、リングギヤと支持部材とをクリアランスのある結合、例えば、スプライン嵌合によって結合すれば、第1軸受部を中心とする支持部材の傾倒による自動調芯機能に加えて、更に、支持部材とリングギヤ間のクリアランスによる自動調芯機能を付加することができ、これにより、電動機の性能に影響を及ぼさずに、各ギヤに作用する負荷をより均等にして遊星歯車機構の耐久性を向上させることができる。また、遊星歯車機構の自動調芯機能が、支持部材の傾倒と、リングギヤと支持部材間のクリアランスとの両方によって分担されるので、支持部材の傾倒によるロータとステータ間の径方向隙間の変化が抑えられて、電動機の性能を向上することができる。更に、ロータコアの圧入による支持部材の変形が、リングギヤに及ぼす影響を防止することができ、リングギヤの歯型精度が高精度に維持される。また、動力伝達機構のギヤレシオ変更に際して、リングギヤの交換により容易に対応することができ、リングギヤが支持部材と一体に形成される場合と比較して、低コストで対応することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、リングギヤを、支持部材と一体に形成して、部品点数を削減することができ、駆動装置の製造コストを抑制することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、第1軸受部と遊星歯車機構とを、ロータの軸方向中心に対して互いに反対側に配置することで、第1軸受部と遊星歯車機構との軸方向距離を大きくすることができる。このため、第1軸受部を中心とする支持部材の僅かな傾倒が、遊星歯車機構において大きな径方向移動とすることができ、遊星歯車機構の自動調芯機能を増大することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、第2軸受部を、軸方向において第1軸受部と遊星歯車機構との間に配置することで、2つの軸受部が集中配置されるので、遊星歯車機構の軸方向サイズを短縮してコンパクト化が図れると共に、第1軸受部と遊星歯車機構との軸方向距離を大きくとることで自動調芯機能を増大することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、ロータの内周側、且つ第1軸受部に対して遊星歯車機構と軸方向反対側に、回転数検出手段を配置して、回転数検出手段を有する駆動装置のコンパクト化が図られる。
【0020】
請求項7の発明によれば、第1軸受部と遊星歯車機構との間に給油穴を設けることにより、駆動装置をコンパクトに維持しながら、遊星歯車機構に潤滑油を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る車両の駆動装置の断面図である。
【図2】図1における要部拡大図である。
【図3】変形例の動力伝達機構の要部拡大図である。
【図4】従来のハイブリッド駆動装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は車両の駆動装置の断面図であり、図2は要部拡大図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の車両の駆動装置10は、電動機11と、遊星歯車機構40とを備え、互いに同芯の第1回転軸27と第2回転軸28の周囲に配置される。電動機11は、僅かな径方向隙間Cを介して対向配置されるステータ12とロータ13とを備える。ステータ12は、円環状のステータコア14の不図示のスロットに複数のコイル15が巻回されて構成されており、ステータコア14は、ハウジング50にボルト16よって固定されている。ロータ13は、支持部材17と、この支持部材17の外周面17aに固定されるロータコア18と、このロータコア18に埋設された複数の不図示の永久磁石と、を有する。
【0023】
支持部材17は、ロータ13の軸方向中心CLに対して軸方向一方側(図1中左側)寄りに略円環状に形成されるハブ部20と、ハブ部20の外周端から左右に延設され、支持部材17の外周面17aを構成するリング状のロータコア保持部21とを備える。このため、ロータコア18は、軸方向一方側に配置されたリング22とともにロータコア保持部21に圧入・固定されることで、保持部21の外向きフランジ部21bとリング22との間に位置決めされる。支持部材17は、ハブ部20の内周面に第1軸受部31を内嵌させることによって、第1軸受部31を介して第2回転軸28に対して回転自在に支持されている。また、第1軸受部31は、単一の軸受又は2つの軸受の組み合わせによって、支持部材17が第1軸受部31を中心としてロータ13とステータ12の径方向隙間Cの範囲内で傾倒可能となるように構成されている。
【0024】
ロータコア保持部21の内径側で、ハブ部20の軸方向他方側(図1中右側)に形成される空間SPには、遊星歯車機構40が収容されている。遊星歯車機構40は、支持部材17の内周面に設けられ、ロータ13と一体回転可能なリングギヤ41と、第1回転軸27に連結されて一体回転可能なサンギヤ42と、リングギヤ41及びサンギヤ42と噛合するピニオンギヤ43と、第2回転軸28と一体回転可能で、ピニオンギヤ43を自転可能、かつ、公転可能に支持するキャリア44とを備える。このように構成された遊星歯車機構40は、ロータ13の軸方向中心CLに対して第1軸受部31と反対側に配置されている。
【0025】
リングギヤ41は、外周面に形成される雄スプライン41aが、ロータコア保持部21の内周面に形成される雌スプライン21aとスプライン嵌合して、支持部材17に連結している。これにより、リングギヤ41は、支持部材17とリングギヤ41との間に若干のクリアランスを有する状態で支持部材17に結合されて一体回転する。
【0026】
ピニオンギヤ43は、第2回転軸28L、28Rと一体に形成されるキャリア44で両端が支持される支持軸45の周囲に設けられ、リングギヤ41及びサンギヤ42と噛合して自転、且つ公転可能に支持されている。
【0027】
第2回転軸28は、第1回転軸27に外嵌する第2軸受部46及び第3軸受部47と、ハウジング50に内嵌する第4軸受部48及び第5軸受部49によって、第1回転軸27と相対回転自在に第1回転軸27の径方向外側に支持されている。第2軸受部46は、軸方向において、第1軸受部31と遊星歯車機構40との間に配置される。
【0028】
第1回転軸27には、軸芯を通る軸方向穴27a及びこの軸方向穴27aと第1回転軸27の外周面とを連通する径方向穴27bが設けられ、また、第1回転軸27の径方向外側に配置された中空の第2回転軸28には、径方向に貫通する径方向穴28a,28bが設けられている。これにより、第1回転軸27の他の給油穴としての、軸方向穴27a、径方向穴27bを通過した潤滑油は、遊星歯車機構40を潤滑するとともに、第2回転軸28の径方向穴28bを通って、第1軸受部31を潤滑する。また、第1回転軸27の外周面と第2回転軸28の内周面との間を通過する潤滑油が第2軸受部46を潤滑するとともに、第2回転軸28の第1軸受部31と遊星歯車機構40との間に設けられた径方向穴28aから吐出して、遊星歯車機構40の各部を潤滑する。具体的には、径方向穴28aから吐出した潤滑油は、キャリア44に取り付けられた油指向板32に当って、支持軸45の内部に形成された油穴45aに供給されて、遊星歯車機構40の各部を潤滑する。
【0029】
また、ロータ13(ロータコア保持部21)の内周側、且つ第1軸受部31に対して遊星歯車機構40と軸方向反対側(図中、支持部材17の左側)には、ロータ13の回転を検出可能な回転数検出手段としてのレゾルバ55が配設されている。レゾルバ55は、支持部材17のハブ部20から軸方向一方側(図中左側)に延設される基部20aの外周面に固定されるレゾルバロータ56と、このレゾルバロータ56の周囲を囲むようにハウジング50に固定されるレゾルバステータ57とで構成される。
【0030】
このように構成された駆動装置10では、例えば、第1回転軸27が不図示の内燃機関の出力軸に接続されると共に、リングギヤ41が電動機11に連結されて、内燃機関と電動機11の動力が合成されて、第2回転軸28から出力されるハイブリッド車両の駆動装置10として適用される。即ち、内燃機関によって第1回転軸27が回転駆動されると、第1回転軸27に固定されているサンギヤ42が回転する。また、電動機11のロータ13が回転すると、支持部材17を介してリングギヤ41が回転する。これにより、内燃機関と電動機11の動力が、遊星歯車機構40に入力し、リングギヤ41とサンギヤ42とに噛合するピニオンギヤ43が、自転しつつ公転して、この公転回転が、キャリア44を介して第2回転軸28から出力される。
【0031】
ここで、サンギヤ42とリングギヤ41との間に芯ズレが生じると、所定の位相を通過するピニオンギヤ43の負荷が大きくなり、各ピニオンギヤ43の負荷率にばらつきが生じる。このため、支持部材17が第1軸受部31を中心としてロータ13とステータ12の径方向隙間Cの範囲内で傾倒することにより、また、スプライン嵌合する支持部材17の雌スプライン21aとリングギヤ41の雄スプライン41a間のクリアランスの範囲内で支持部材17とリングギヤ41が径方向に相対移動することにより、遊星歯車機構40に自動調芯機能が働き、各ピニオンギヤ43に作用する負荷ができるだけ均等に分担され、滑らかな回転により動力が伝達される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る車両の駆動装置10によれば、電動機11のロータ13は、ロータコア18が取り付けられる支持部材17を有し、サンギヤ42、ロータ13と一体回転可能なリングギヤ41、ピニオンギヤ43、及びキャリア44を有する遊星歯車機構40は、ロータ13の内周側に配置される。そして、支持部材17は、第1軸受部31によって第2回転軸28に回転自在に支持されるとともに、第1軸受部31を中心として径方向隙間Cの範囲内で傾倒可能である。これにより、遊星歯車機構40の各ピニオンギヤ43に作用する負荷をできるだけ均等にして、特別な自動調芯装置を配設することなく、遊星歯車機構40の自動調芯を行うことができ、遊星歯車機構40の耐久性を向上させると共に、電動機の性能に影響を及ぼさずに、安価且つコンパクトな駆動装置10とすることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る車両の駆動装置10によれば、リングギヤ41は、支持部材17と別体で形成されるので、リングギヤ41と支持部材17とをクリアランスのあるスプライン嵌合によって結合することで、第1軸受部31を中心とする支持部材17の傾倒による自動調芯機能に加えて、更に、支持部材17とリングギヤ41間のクリアランスによる自動調芯機能を付加することができ、電動機11の性能に影響を及ぼさずに、各ギヤ41、42、43に作用する負荷をより均等にして耐久性を向上させることができる。また、遊星歯車機構40の自動調芯機能が、支持部材17の傾倒と、リングギヤ41と支持部材17間のクリアランスとの両方によって分担されるので、支持部材17の傾倒によるロータ13とステータ12間の径方向隙間Cの変化が抑えられて、電動機11の性能を向上することができる。更に、ロータコア18の圧入による支持部材17の変形が、リングギヤ41に及ぼす影響を防止することができ、リングギヤ41の歯型精度が高精度に維持される。また、遊星歯車機構40のギヤレシオ変更は、リングギヤ41の交換により容易に対応することができ、リングギヤ41が支持部材17と一体に形成される場合と比較して、低コストで対応することができる。
【0034】
さらに、本実施形態に係る車両の駆動装置10によれば、第1軸受部31及び遊星歯車機構40は、ロータ13の軸方向中心CLに対して互いに反対側に配置されるので、第1軸受部31と遊星歯車機構40との軸方向距離を大きくすることができる。このため、第1軸受部31を中心とする支持部材17の僅かな傾倒が、遊星歯車機構40において大きな径方向移動とすることができ、遊星歯車機構40の自動調芯機能を増大することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る車両の駆動装置10によれば、第1回転軸27と第2回転軸28とを相対回転可能に支持する第2軸受部46が、軸方向において第1軸受部31と遊星歯車機構40との間に配置されるので、2つの軸受部31、46が集中配置されて駆動装置10の軸方向サイズを短縮してコンパクト化が図られると共に、第1軸受部31と遊星歯車機構40との軸方向距離を大きくとることで自動調芯機能を増大することができる。
【0036】
さらに、本実施形態に係る車両の駆動装置10によれば、ロータ13の内周側、且つ第1軸受部31に対して遊星歯車機構40と軸方向反対側に、レゾルバ55を備えるので、レゾルバ55を有する駆動装置10のコンパクト化が図られる。
【0037】
さらに、本実施形態に係る車両の駆動装置によれば、支持部材17は、第1軸受部31によって、第1回転軸27の径方向外側に配置された第2回転軸28に回転自在に支持され、第2回転軸28には、第1軸受部31と遊星歯車機構40との間で、遊星歯車機構40に潤滑油を供給する径方向穴28aが形成され、潤滑油は、第1回転軸27に形成された軸方向穴27a及び径方向穴27bから第2回転軸28の径方向穴28aを介して遊星歯車機構40に供給される。これにより、駆動装置10をコンパクトにすると共に、遊星歯車機構40に潤滑油を供給することができる。
【0038】
(変形例)
なお、本実施形態の変形例として、リングギヤ41が支持部材17と一体に形成されてもよい。この場合、図3に示すように、リングギヤ41の歯型が、支持部材17のロータコア保持部21の内周面に形成されている。これにより、部品点数を削減すると共に、駆動装置10の製造コストを抑制することができる
その他の構成及び効果については、上記実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0039】
尚、本発明は、前述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
本実施形態では、支持部材が第1軸受部によって第2回転軸に支持される構造としたが、本発明は、支持部材が第1軸受部によって第1回転軸に支持される構造であってもよい。
また、本実施形態では、適用車両としてハイブリッド車両について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、電気自動車であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 駆動装置
11 電動機
12 ステータ
13 ロータ
17 支持部材
17a 外周面
18 ロータコア
27 第1回転軸
27a 軸方向穴(他の給油穴)
27b 径方向穴(他の給油穴)
28 第2回転軸
28a 径方向穴(給油穴)
31 第1軸受部
40 遊星歯車機構
41 リングギヤ
42 サンギヤ
43 ピニオンギヤ
44 キャリア
46 第2軸受部
55 レゾルバ(回転数検出手段)
C 径方向隙間
CL ロータの軸方向中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコア、及び外周面に該ロータコアが支持される支持部材を有するロータと、前記ロータコアと径方向隙間を介して対向配置されるステータと、を有する電動機と、
第1回転軸と一体回転可能なサンギヤ、前記支持部材の内周面に設けられ、前記ロータと一体回転可能なリングギヤ、前記サンギヤ及び前記リングギヤと噛合するピニオンギヤ、及び、第2回転軸と一体回転可能で、前記ピニオンギヤを自転可能、かつ、公転可能に支持するキャリア、を有し、前記ロータの内周側に配置される遊星歯車機構と、
を備える車両の駆動装置であって、
前記支持部材は、第1軸受部によって前記第1回転軸又は第2回転軸に回転自在に支持されるとともに、前記第1軸受部を中心として前記径方向隙間の範囲内で傾倒可能であることを特徴とする車両の駆動装置。
【請求項2】
前記リングギヤは、前記支持部材と別体で形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動装置。
【請求項3】
前記リングギヤは、前記支持部材と一体に形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動装置。
【請求項4】
前記第1軸受部及び前記遊星歯車機構は、前記ロータの軸方向中心に対して互いに反対側に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の駆動装置。
【請求項5】
前記第1回転軸と前記第2回転軸とを相対回転可能に支持する第2軸受部は、軸方向において前記第1軸受部と前記遊星歯車機構との間に配置されることを特徴とする請求項4に記載の車両の駆動装置。
【請求項6】
前記ロータの内周側、且つ前記第1軸受部に対して前記遊星歯車機構と軸方向反対側に、前記ロータの回転を検出可能な回転数検出手段を更に備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の車両の駆動装置。
【請求項7】
前記支持部材は、前記第1軸受部によって、前記第1回転軸の径方向外側に配置された前記第2回転軸に回転自在に支持され、
前記第2回転軸には、前記第1軸受部と前記遊星歯車機構との間で、前記遊星歯車機構に潤滑油を供給する給油穴が形成され、
前記潤滑油は、前記第1回転軸に形成された他の給油穴から前記給油穴を介して前記遊星歯車機構に供給されることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の車両の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−37016(P2012−37016A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180131(P2010−180131)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】