説明

車両のSCR触媒コンバータを制御するための方法及び装置

本発明は、SCR触媒コンバータ(2)を制御するための方法及び装置を提供する。本発明が述べるのはモデルに基づく制御方法であって、該方法は、一つ以上のNH蓄電池を有するSCR触媒(2)の物理的モデル、及びNOxセンサ(4)の物理的モデルを有する。オブザーバ・フィードバック・ゲインは、前記モデルからの推定センサ出力を、測定された出力に収束することを強制するので、動作点の決定には二義性は存在しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のSCR触媒コンバータを制御するための方法及び装置に関し、特に、車両の燃焼エンジンの分野におけるものである。
【背景技術】
【0002】
多くの燃焼エンジンは、現在および将来の排ガス法に適合しなければならないが、窒素酸化物(NOx)の排出を減らすために、選択的接触還元(SCR)システムを利用している。
【0003】
現在の運転システムにおいては、SCR触媒の上流で、排気ガスに尿素溶液が注入されている。尿素はアンモニア(NH)に変化し、次にアンモニアは、SCR触媒において、NOxを無害な窒素(N)及び水(HO)に変換する。関連する化学反応は、触媒表面においてアンモニアが吸収された後に生じる。
【0004】
一般に、SCR触媒のNOx変換効率が依存するのは、貯蔵された(すなわち吸収された)アンモニアの総量、温度、空間速度、すなわち、時間単位当たりの触媒内におけるガスの回転、NOx内のNO/NOの割合、及びその他の条件である。温度及び空間速度が通常依存するのはエンジンの運転であって、温度及び空間速度に対してSCR制御手段が直接的に影響を与えることは出来ない。貯蔵されたアンモニアの総量は、通常、専用の制御手段によって調節され、該制御手段は、アンモニアの推定レベルを制御する。NO/NOの割合が依存するのは、ディーゼル用酸化触媒(DOC)のパフォーマンス、及び、SCR触媒の上流に載置されたディーゼル排気微粒子フィルタ(DPF)である。現在のコンセプトにおいては、NO/NOの割合は、直接調節することは出来ないが、それは、その割合が主に依存するのが、DOC/DPFの温度、空間速度、及びDPFの煤の堆積物だからである。
【0005】
現在のSCR制御システムが利用しているのは、SCR触媒が一つのNH貯蔵タンクとしてモデル化されたモデルである。貯蔵されたNHの総量は、注入された尿素から、及び、SCR反応によって消費されるNHの総量から算出される。そして、貯蔵されるアンモニアの総量は、所望のNOx変換効率が達成されるように調整される。そして、NOx測定装置を用いた外部制御ループが、注入される尿素の量を調整するために用いられ、該調整は、モデルによって推定されるNOxの変換効率と、測定されたNOxの変換効率とが収束するように調整される。
【0006】
SCR制御手段の周知の仕組みは、例えば、Schaer: “Control of a Selective Catalytic Reduction Process” (PhD thesis Nr. 15221, ETH Zurich) 、又は、Chi, Da Costa: “Modeling and Control of a Urea-SCR Aftertreatment System, SAE 2005-01-0966”、又は、Herman, Wu, Cabush, Shost: “Model Based Control of SCR Dosing and OBD Strategies with Feedback from NH3 Sensors”, SAE 2009-01-0911に記載されている。
【0007】
先行技術のSCR制御手段の周知の仕組みは、閉鎖ループ制御手段を含み、該制御手段は、SCR触媒の下流のNOxセンサに基づく。
【0008】
周知の制御方法は、正確性を欠いており、とりわけNHスリップが考慮されるべき場合は、なおさら正確性を欠いている。
【0009】
先行技術の制御システムは、全SCRの貯蔵レベルを制御することと、全体のNOx変換効率を制御することを目的としている。いくつかのコンセプトは、NHスリップ、すなわち、排気ガスにおいて、NOxと反応することのないNHの分散の算出と制限すら含む。しかし、このことが通常暗示するのは平行制御手段であり、そして該手段は、例えば注入される尿素量の最小値の選択によって、NOx制御手段と結合する。一般に、センサの故障やシャット・オフ/オンによる当該制御手段の有効化及び無効化の基準は、実施の観点から扱いにくい。
【0010】
現在利用できるNOxセンサは、NHに対する大きな交差感受性を示す。
【0011】
先行技術の図2が示しているのは、注入される尿素に依存する典型的なセンサの出力特性である。
【0012】
そのような特性は対関数であり、従って、全単射の関数ではない。
【0013】
通常の条件のもとでは、NOxセンサの出力は、尿素の注入の増加と共に減少する。しかし、NHスリップが増加し始めると、NOxセンサ出力の特性は変化し、センサ出力は、尿素の注入の増加に伴って増加する。
【0014】
NOxセンサのこの二義的な特性によって、潜在的なNHスリップがNOxと解釈されたり、逆に、NOxがNHスリップと解釈されたりする問題が生じる。これは、制御手段の不安定化を導く。例えば、NHがNOxと解釈されると、制御アルゴリズムは、NOx排出を減少させるために、尿素注入を増加させるであろう。これによって、更なるNHスリップの増加に導かれ、NHがNOxと解釈されるので、今度も尿素注入の更なる増加に導く。
【0015】
従って、センサ信号は二義的であり、その二義性は制御システムを不安定化する。NOxとNHとを識別するために、尿素注入は、例えば二つのレベルの間で切り替えをすることにより、活性化されなくてはならない。周知のシステムは、速度の速い反応に依存しているが、それは将来において大容量の触媒が与えられるものではなく、及び/又は、周知のシステムは、擬似的な定常状態の運転条件に依存しているが、それは、通常運転の間、めったに生じないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の主目的は、車両のSCR触媒コンバータを制御するための方法及び装置を供することであり、該方法及び装置は上記の問題/欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
オブザーバ装置は、NOx又はNHの推定を、測定値に収束させるよう強制する、すなわち、該オブザーバは、前期推定値と前記測定値との間の相違/誤差をフィードバックとして用いることにより、前期推定のゲイン/パラメータを調節する。
【0018】
これにより、本発明の主要な長所は、オブザーバが常にセンサ・モデルの極性を知るということであり、すなわち、該オブザーバは、特性が実際にどちらの側にあるのかに基づいて、貯蔵アンモニアの総量が増加するにつれて、NOx信号が増加するか減少するかを、常に本質的に区別する、ということである。従って、センサの出力の二義性は克服される。
【0019】
従って、制御手段は、推定された/モデル化されたセンサの出力のレベルのみを制御する。仮に、利用できるセンサが実在しないのであれば、対応するオブザーバのフィードバック・ゲインはゼロに切り替えられ、それは、実装を大きく単純化し、同一のECU(車両の電気制御ユニット)を、エンジンの複数の設定、又は、例えばエンジンのスタート・アップ時などの複数の動作状態における利用に適合させる。
【0020】
本発明の更なる態様に従えば、SCR触媒は、複数の直列のセルに分割されるものであると考えられている。そして、全体のNOx変換効率の要求から、又は、NHスリップの制約から、設定点が算出されるという事実にもかかわらず、第一セルの貯蔵レベルのみが制御される。
【0021】
ECUの計算及び記憶のリソースは制限されるので、本発明の方法の有利な実施は、SCR触媒が、ほんのわずかの複数の貯蔵セルのみを備えるものであると考えた上で、前記複数のセルのうちの第一セルにのみ貯蔵されるNHを制御するステップを供する。
【0022】
好適実施例に従えば、当該制御手段は以下の設定点の一つを算出する:
−NOx制御:NOx効率の変換の点で、2番目からn番目までの他の貯蔵セルの貢献を考慮した上で、全SCR触媒の必要とされるNOx変換効率目標を達成するための、第一セル内に貯蔵されるNHの総量。
−NH制御:NH貯蔵レベルの点で、2番目からn番目までの他の貯蔵セルの貢献も考慮した上で、SCR触媒の出口において必要とされるNHレベルを達成するための、第一セル内に貯蔵されるNHの総量。
【0023】
更なる態様に従えば、制御手段は双方の設定点を算出し、そして、実際の設定点は、最小値の選択から得られる。
【0024】
従って、多数のセルを用いた方法が有利である、というのも、仮に気体成分の軸方向分布及び貯蔵されたアンモニアの軸方向分布が考慮されるならば、正確性は大きく改善されるからである。
【0025】
本発明の更なる態様に従えば、ここに記述される方法を実装する制御手段は、NHスリップを検知し避けることができるが、それは仮に、1つのNH感知NOxセンサだけが用いられ、それ以外にいかなる特定のNH測定装置も有さない場合のことである。当該SCR触媒方法は、NOxセンサ・モデルを包含し、該NOxセンサ・モデルは、NH交差感受性を含む。
【0026】
仮に、当該制御手段の逸脱が検知されるならば、存在しないNHスリップが検知されたり、又は、存在するNHが検知されなかったりするので、当該制御手段は、センサの特性における現在の動作点の計算のために、貯蔵されたNH及びNOxセンサの極性を反転させる。
【0027】
有利なことに、外部のNHスリップの検知システムは必要ではない、というのも、当該方法、及び、当該方法を実行する当該制御手段を直接利用することが可能だからである。
【0028】
これらの及び更なる目的は、付随する請求項で述べられる方法及び装置によって実現されるが、当該請求項は本記述に不可欠の部分を構成する。
【0029】
本発明は、以下に詳述する記述から十全に明瞭となるが、該記述は、単なる実例であって非限定的な例によってもたらされるものであり、以下に付随する図面を参照して読まれるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1が示すのは、周知の二義的なNOxセンサの出力特性の図である。
【図2】図2が示すのは、本発明に従った、SCR制御方式の図である。
【図3】図3が示すのは、図2の略図に従ったSCRのモデルに基づく制御方式であって、NOx効率目標に基づく制御方式の図である。
【図4】図4が示すのは、図2の略図に従ったSCRのモデルに基づく制御方式であって、NHスリップのレベルの設定点に基づく制御方式の図である。
【図5】図5が示すのは、NOxがNHとして検知される際の、本発明に従って操作されるエラーからの修復の図である。
【図6】図6が示すのは、NHがNOxとして検知される際の、本発明に従って操作されるエラーからの修復の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
複数の図面における同一の参照番号及び参照文字は、同一の又は機能的に等しい部分を意図している。
【0032】
SCR触媒を制御するための当該方法及び装置は、SCR触媒のモデルを、複数の貯蔵セルに分割されたものであるとして考えるという事実を備える。各セルにおいて、貯蔵されたアンモニアの総量と、関連する排気ガスの成分(NOx、NH等)が算出される。付け加えて、当該方法は、各セルの温度であって、計算された温度を考慮することができる。従って、当該方法は、センサ・モデルによって、実際に載置された複数のセンサの挙動を推定するが、該センサはセンサの特性における動作点を識別し、カーブの極性を反転することができる。
【0033】
とても重要な特徴として、NOxセンサのNH感度は、当該モデルによって反映される。
【0034】
図2を参照すると、物理的排気ライン1は、NHスリップを減少させる酸化触媒を任意に含む実際のSCR触媒2、尿素投与モジュール3、NOxセンサ4、NHセンサ5、上流及び下流の温度センサ6、7を備える。
【0035】
NH貯蔵モデル8には、物理的に関連する注入量及び排出量、例えば、入力9における、排気質量流量、触媒の上流におけるNOx(NO及びNO)の濃度及び温度、注入される尿素の総量、及び、下流への排気質量流量等が送られる。
【0036】
複数の推定センサ出力10の各々は、NOx及びNHの出力であるが、それらは、センサ4及び5の測定出力と比較される。そしてその誤差は、所与のゲイン11とともに、オブザーバ・ループの中で用いられるが、それは、推定モデルの状態変数を補正するためであり、それらの状態変数は各セルに貯蔵されるアンモニアの総量であるが、算出されたセンサの出力が測定された出力に収束するように補正する。
【0037】
本発明の画期的な態様の一つは、複数のセルであって、SCR触媒がそれらに分割されているように考えられる複数のセルのうちの、(ガスが直交する方向における)第一セルのアンモニア貯蔵レベルだけを制御するコンセプトである。
【0038】
NOxの制御のための制御手段及びNHスリップの制御のための制御手段は同一である。二つの制御の目標の設定点のみが別々に算出される。実際の設定点は最小値の選択から得られるが、それは、NHスリップの制御手段が、実際には、NHスリップ制限でしかないからである。
【0039】
ここに提案する制御コンセプトには二つの目的がある。片方の目標は、SCR触媒の目標とされるNOx変換効率が達成されなければならないということである。もう片方の目標は、NHスリップの限界が超えられてはならないということである。従って、NHスリップの制限が支配的である。
【0040】
第2から第n番目までの貯蔵セルの動的変化は、第一セルの動的変化に比較して遅いので、後者だけが直接制御される。
【0041】
従って、制御方式は、NOx制御に基づくタイプ、及び/又は、NHスリップ制限タイプであり得る。
−NOx制御:図3が示すのは、NOx制御コンセプトの図表である。全体のNOx変換効率目標31から、及び、現在の貯蔵レベルから算出される2番目からn番目までのセル32の達成された効率から、第一セル37の効率目標は、ブロック33で算出される。この効率目標は、ブロック34内において、第一セルのNH貯蔵レベルのための設定点に換算され、該ブロック34においては、当該システム35の現在の状態(温度、空間速度、NO/NOの割合等)が考慮される。
【0042】
NOx制御の設定点34及びNH制御の設定点36(以下を参照)の最小値が選択され、第一セル37のNHのレベルの実際の値と比較される。そして、該比較におけるオフセットが制御手段38に送られるが、該制御手段は尿素又はNHの量39を調節する。
−NHスリップ制限:NH制限コンセプトの図面は、図4に描かれる。SCR触媒41の一番後ろのNH制限から、最後のセルの貯蔵レベルが、ブロック42において算出され、該算出は、ブロック43における温度及び空間速度やNO/NOの割合のような他の運転条件を用いることによるものである。最後の要素から出発し、NH貯蔵レベルが、各セル44のために算出されるが、該貯蔵レベルは、定常状態の現在の運転条件(温度、空間速度、NO/NOの割合等)の下での最後のセルの所望のNH貯蔵レベルに達するために必要である。最後に、第一セル45の所望の貯蔵レベルが得られるが、該レベルは、NHのレベルの設定点のための最小値の選択46に送られる。NH制御設定点及びNOx制御設定点46(上記を参照)の最小値が選択され、第一セル47のNHレベルの実際の値と比較される。そして、そのオフセットは制御手段48に送られるが、該制御手段は尿素又はNHの量49を調節する。
【0043】
ECUの計算及び記憶のためのリソースは限られているので、当該方法の有利な実施は、SCRを2÷3の貯蔵セルとしてモデル化する。
【0044】
当該方法は、NOx及びNH、又は、NO、NO、NOのような他の窒素化された種に適用することができる。有利なことに、本方法の実施の際は、以下の詳細、変更、修正を実現することが可能である:
−可変のフィードバック・ゲイン。フィードバック・ゲイン(すなわち、測定されたセンサ出力と算出されたセンサ出力との間の差によって強いられる状態変数(貯蔵されたNH又は他の物質の総量)の調整)は、動作点に基づいて、及び/又は、温度、空間速度、貯蔵されたアンモニアその他のような特別な運転条件の下で、変化させることが可能である。通常の運転条件の下では、正のNOxセンサの誤差が、貯蔵されるアンモニアの減少を導くが、それは、算出されたNOxセンサの出力を、測定された出力のレベルまで増加させるためである。しかし、仮に注入される尿素が多すぎて、NOxセンサが主にNHを測定するならば、貯蔵アンモニアのモデルを用いたレベルは、センサの狂いを除外するために増加させられる。この挙動は、非線形のオブザーバ法を用いると自動的に補足されるが、該オブザーバ法は、例えば拡張されたカルマン・フィルタ及び類似のフィルタであって、例えば、Welch, Bishop: “An Introduction to the Kalman Filter”, URL http://www.cs.unc.edu/~welch/media/pdf/kalman_intro.pdfを参照のこと。
【0045】
更なる条件が、フィードバック・ゲインの変化を必要としてもよい:第一に、仮に、センサの出力が、例えば過渡期間などの明確に定義された条件下で不正確であることが既知であるならば、フィードバックを一時的に弱めることができる、すなわち、補正量が減少される。第二に、仮に必要であれば、フィードバック・ゲインを一時的に増加することもできる。仮に、例えば、NHスリップがNHセンサによって検知されるならば、NOxセンサのフィードバックは弱められ、NHセンサのフィードバックは増加されるが、それは、NHセンサを優先化し、制御手段が正確にNHスリップの推定をすることを保証するためである。これは、制御手段が適切な測定をすること(すなわち、尿素注入を減少させること)を可能とするために、必須である。
−制御方法の拡張であって、例えば拡張されたカルマン・フィルタのような同定法を導入することによる拡張。それにより、付加的な状態変数が導入されるが、該状態変数は、ゆるやかにドリフトするパラメータ、例えば、触媒貯蔵容量、又は、尿素注入又はセンサのオフセット、尿素の質等のパラメータに対する定数を表す。オブザーバ・フィードバック・ループは、これらのパラメータも補正し、そして、当該モデルの長期間の変化への適用を可能とするが、該長期間の変化とは、例えば、システムの経年劣化、又は尿素溶液の濃度のドリフトである。
−センサ情報の入手性:ガスセンサは、通常全ての条件で動作できるというわけではない。とりわけ、冷態始動運転の間は、水滴が排気ガス内に存在するが、複数のセンサがシャット・オフされなければならない。これらの条件の下では、フィードバック・ループは、単純にオフにされ、すなわち、制御方式はオープンループで実行し、センサの情報によって補正されることはない。
−当該制御方法は、いかなる窒素化ガスセンサを用いても拡張することができ、該センサの出力は、モデルによって推定することができる。温度センサ又はここでは述べないガスの種類(例えばNO)をオプションとしてもよい。
【0046】
ここに示す制御コンセプトが固有的に用いるのは、貯蔵モデルと、NOx(NH)センサ信号が正しい方法で解釈されているか否かを検知する制御手段である。これによって、本発明の主要な長所は、制御手段が、センサ推定モデルの極性、すなわち、貯蔵されているアンモニアの総量が増加するに伴って、NOx信号が増加するか減少するかを、常に「知る」という点である。従って、当該モデルは、それが実際には図5及び6の特性のどちらの側にあるのかを、常に固有的に「知る」。
【0047】
誤った出力の検知及びその修復方法は、以下のように説明することができる:
ケース1:“NOx側への逸脱”、すなわち、NHがNOxとして検知される:
誤った両極性(誤った動作点)の検知は以下の条件に依存し、該条件は(温度依存性の)時間間隔の間、満たされなければならない:
−貯蔵されたNHのための設定点は、一貫して増加する。
−NHスリップが存在しないと推定される。
−制御手段のフィードバックは負である。すなわち、NHの貯蔵レベルが減少すると、NOxセンサの信号は、増加する。
【0048】
極性を修復するためには、算出されたNOxセンサの信号が、右手側の測定された信号に一致するまで(図6の矢印を参照)、貯蔵されたNHの総量を傾斜路により増加させる。
ケース2:“NH側への逸脱”、すなわち、NOxがNHとして検知される:
誤った両極性の検知は以下の条件に依存し、該条件は(温度依存性の)時間間隔の間、満たされなければならない:
−貯蔵されたNHのための設定点は、一貫して減少する。
−当該モデルにおいて、大きなNHスリップが生じている。
−制御手段のフィードバックは正である。すなわち、NHの貯蔵レベルが増加すると、NOx信号は、減少する。
【0049】
修復のためには、算出されたNOxセンサ信号が、左手側の測定された信号に釣り合うまで(図5の矢印を参照)、貯蔵されたNHの総量を傾斜路により減少させる。
【0050】
いったん修復が効果的になると、上記のNOx制御手段又はNHスリップの限定は、当該システムに、所望のNOx変換効率をもたらすか、又は、NH排出を最大レベルまで限定する。
【0051】
本発明は、コンピュータ・プログラムにおいて有利に実行することができ、該コンピュータ・プログラムは、プログラム・コード手段を備え、該プログラム・コード手段は、当該プログラムがコンピュータ上で実行される際、当該方法の一つ以上のステップを実行するためのものである。このような理由で、本特許出願は、当該コンピュータ・プログラム及びコンピュータ読取り可能な記録媒体を対象とし、該コンピュータ読取り可能な記録媒体は記録されたメッセージを備え、当該コンピュータ読取り可能な記録媒体はプログラム・コード手段を備え、該プログラム・コード手段は、当該プログラムがコンピュータ上で実行される際、当該方法の一つ以上のステップを実行するためのものである。
【0052】
ここで主題となる発明の、多くの変化、修正、変更、及びその他の使用及び利用は、当業者にとって、その好適実施例を開示する当該明細書及び付随する図面を検討した後、明白となるであろう。そのような変化、修正、変更、及びその他の使用及び利用の全ては、本発明の精神と範囲を離れることなく、本発明の対象となるものとみなされる。
【0053】
更なる実行の詳細は述べられないが、それは、当業者であれば、上記記述の教示を根源とする発明を実行することが可能だからである。
【符号の説明】
【0054】
1 物理的排気ライン
2 SCR触媒
3 尿素投与モジュール
4 NOxセンサ
5 NHセンサ
6 温度センサ
7 温度センサ
8 NH貯蔵モデル
9 入力
10 センサ出力
11 ゲイン
31 NOx変換効率目標
32 セル
33 ブロック
34 設定点
35 システム
36 設定点
37 第一セル
38 制御手段
39 尿素又はNHの量
41 SCR触媒
42 ブロック
43 ブロック
44 セル
45 セル
46 選択
47 第一セル
48 制御手段
49 尿素又はNHの量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のSCR触媒コンバータを制御するための方法において、窒素化ガスの推定センサの出力を参照値として利用するステップを含み、該利用は、前記推定センサの出力が測定値へ収束することを強制することによることを特徴とする方法。
【請求項2】
オブザーバにおいて、貯蔵されたアンモニアの総量又は他の状態変数を、可変のフィードバック・ゲインを用いて調整することにより、前記収束が強制され、前記可変のフィードバック・ゲインは、温度、空間速度、貯蔵されたアンモニア又は他の運転条件に依存することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒貯蔵容量、尿素注入又はセンサのオフセット、又は尿素の質のようなゆるやかにドリフトするパラメータに対して、定数を調整することにより、前記収束が強制されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オブザーバ内のフィードバック・ゲインの量又は正負が、逸脱を検知するため、及び、前記逸脱からの修復ステップを開始するために用いられ、前記逸脱は、NOxセンサ信号の誤った解釈に起因するものであり、該誤った解釈は、センサ特性のNH/NOxの二義性によって生じることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記修復ステップは、貯蔵されたアンモニアの総量又は前記オブザーバ内の他の数量を調整するためのものであり、該調整は、NOxセンサ特性の正しい側に収束させるためのものであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記窒素化ガスが、NOx、及び/又はNH、及び/又はNO、及び又はNO、及び/又はNOであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記SCR触媒コンバータを、2以上の貯蔵セルに連続的に分割されているものとして扱うステップと、前記複数のセルの一つ、好ましくは第一のセルにのみ貯蔵されたNHを制御するステップとを更に有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
注入された尿素の量、又はNHの量、又はNHに変換されるいかなる他の還元剤をも制御するステップを更に有し、該制御は、触媒変換効率の算出によるものであることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
注入された尿素の量、又はNHの量、又はNHに変換されるいかなる他の還元剤、又は尿素注入を制御するステップを更に有し、該制御は、前記SCR触媒コンバータ内のNHスリップ・レベルの算出によるものであることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記注入された尿素の量、又はNHの量、又はNHに変換されるいかなる他の還元剤が、NH貯蔵レベル及び触媒変換効率を目標値として与えることによって算出される双方の設定点によって制御されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の設定点が個別に算出され、実際の制御の設定点が、前記複数の設定点の最小値の選択から得られることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
仮に利用できるセンサが存在しない、又は、NOx又はNHセンサの出力が信頼できない又は部分的に信頼できない場合に、対応するフィードバック・ゲインが調整される、又は、ゼロに切り替えられることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法を実行する手段を備える、車両のSCR触媒コンバータを制御する装置。
【請求項14】
コンピュータ・プログラム・コード手段を備えるコンピュータ・プログラムにおいて、該コンピュータ・プログラム・コード手段は、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の全てのステップを実行するよう適合されており、前記プログラムはコンピュータ上で実行されることを特徴とする、コンピュータ・プログラム。
【請求項15】
自身に記録されたプログラムを有するコンピュータ読取り可能な記録媒体において、前記コンピュータ読取り可能な記録媒体は、コンピュータ・プログラム・コード手段を備え、該コンピュータ・プログラム・コード手段は、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の全てのステップを実行するよう適合されており、前記プログラムはコンピュータ上で実行されることを特徴とする、コンピュータ読取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−515897(P2013−515897A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545321(P2012−545321)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070475
【国際公開番号】WO2011/076839
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(507304915)エフピーティ モトーレンフォアシュンク アクチェンゲゼルシャフト (10)
【Fターム(参考)】