説明

車両ドアのウェザーストリップ取付構造

【課題】開閉可能なドアパネルの開閉中心軸と平行な側の一対の縁部の少なくとも一方に沿わせて、該ドアパネル縁部と対向する部材との隙間を埋めるウェザーストリップを取り付ける車両ドアにおいて、経年変化や熱変形によるウェザーストリップの波打ち現象が生じることがなく、Tスタッドも必要としない車両ドアのウェザーストリップの取付構造を得る。
【解決手段】ウェザーストリップに、その長手方向に間隔をおいて形成した複数の係止穴;ドアパネルの内面に、ウェザーストリップの上記複数の係止穴に対応させて形成した複数の固定穴;及びドアパネルとの間にウェザーストリップを挟む挟着ストリップと、この挟着ストリップと一体でウェザーストリップの各係止穴とドアパネルの各固定穴とに跨って挿入係止される複数の挿入係止突起とを有する長尺クリップ;を有する車両ドアのウェザーストリップの取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアにウェザーストリップを取り付ける構造に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉可能な車両ドアでは、その開閉中心軸と平行な側の一対の縁部の少なくとも一方に沿わせてウェザーストリップを取り付けることが行われている。このウェザーストリップは車両ドアを閉じた状態において、該縁部と対向する部材(固定パネルあるいは別の車両ドア)との隙間を埋め、雨水の浸入を防止し、風切音の発生を防ぐ作用をする。
【0003】
従来のウェザーストリップ取付構造は、二つに大別される。一つは、ウェザーストリップにその長手方向に沿わせて複数の係止穴を設ける一方、車両ドアパネルの内面にこのウェザーストリップ側の係止穴に対応させて複数の固定穴を設け、これらの係止穴と固定穴にそれぞれ個別にクリップを挿入係止する構造である(特許文献1)。他の一つは、ドアパネル側にウェザーストリップの長手方向に離間させて複数のTスタッドを溶接固定し、これらのTスタッドに対して、ウェザーストリップを固定する長尺クリップを係止する構造である(特許文献2)。特許文献1では、ウェザーストリップ自体の形状を工夫して隙間が可及的に小さくなるようにし、特許文献2では、長尺クリップによりTスタッドの露見を防いでいる。
【0004】
【特許文献1】特開2001-219749号公報
【特許文献2】特開2001-63383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、ウェザーストリップの係止穴とドアパネルの固定穴に個別にクリップを挿入係止する構造では、経年変化あるいは熱変形によりクリップ間においてウェザーストリップの波打ち現象が生じ、その結果隙間を埋める効果が少なくなるだけでなく外観が悪化する。また、特許文献2のようにドアパネルにTスタッドを溶接固定する構造は、溶接設備、溶接工程、溶接後のTスタッド保護構造等が必要で、コストアップ要因である。
【0006】
従って本発明は、経年変化や熱変形によるウェザーストリップの波打ち現象が生じることがなく、Tスタッドも必要としない車両ドアのウェザーストリップの取付構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、開閉可能なドアパネルの開閉中心軸と平行な側の一対の縁部の少なくとも一方に沿わせて、該ドアパネル縁部と対向する部材との隙間を埋めるウェザーストリップを取り付ける車両ドアにおいて、ウェザーストリップに、その長手方向に間隔をおいて形成した複数の係止穴;ドアパネルの内面に、ウェザーストリップの上記複数の係止穴に対応させて形成した複数の固定穴;及びドアパネルとの間にウェザーストリップを挟む挟着ストリップと、この挟着ストリップと一体でウェザーストリップの各係止穴とドアパネルの各固定穴とに跨って挿入係止される複数の挿入係止突起とを有する長尺クリップ;を有することを特徴としている。
【0008】
長尺クリップの挟着ストリップには、その長手方向に沿ってウェザーストリップとの接触圧力を高める連続係止リブを形成することができる。あるいは、他の部分よりウェザーストリップとの接触圧力を高める不連続係止リブを形成してもよい。
【0009】
長尺クリップの挿入係止突起は、その一態様では、中心軸部と、この中心軸部の先端から対称に開閉可能に延びる一対の開閉脚とを備えており、この一対の開閉脚の自由端部先端は、ドアパネルの固定穴に挿入されたとき該固定穴から突出してドアパネルに係止される。
挿入係止突起は、別の態様では、中心軸部と、この中心軸部の先端から対称に開閉可能に延びる一対の開閉脚と、この一対の開閉脚の自由端部先端に形成したドアパネルの固定穴に係止されるネック部とを備えている。
さらに別の態様では、挿入係止突起は、中心軸部と、この中心軸部の先端から対称に開閉可能に延び挟着ストリップに結合された一対の開閉脚と、この一対の開閉脚に形成したドアパネルの固定穴に係止されるネック部とを備えている。
【0010】
長尺クリップの挿入係止突起は挟着ストリップと一体に成形することが可能である。または挿入係止突起を別に形成し、挟着ストリップ内に埋め込み固定してもよい。
【0011】
長尺クリップの挟着ストリップには、該挟着ストリップの可撓性を高めるスリットまたは溝部を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両ドアのウェザーストリップ取付構造は、ウェザーストリップを長尺クリップの挟着ストリップによりドアパネルとの間に挟着するのでウェザーストリップの経年変化や熱変形による波打ち現象が生じることがない。また、ドアパネルにTスタッドを溶接しないので、低コストである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1ないし図5は本発明の一実施形態を示している。本発明の対象とする車両ドアのウェザーストリップ14は、本実施形態では、図1に示す4ドアセダンの前方ドア11と前方固定パネル12(F)の間、前方ドア11と後方ドア13の間、及び後方ドア13と後方固定パネル12(R)の間に設けられている(設けることが可能である)。すなわち前方ドア11と後方ドア13はともに、その前方に略垂直な開閉中心軸を有しており、前方ドア11には、この開閉中心軸と平行な側の一対の縁部(縦方向縁部)のうちの開閉中心軸に近い前方縁部に沿わせてウェザーストリップ14が取り付けられており、後方ドア13には、その前後の縁部にそれぞれウェザーストリップ14が取り付けられている。これらのウェザーストリップ14のうち、前方ドア11のウェザーストリップ14は、前方ドア11を閉じた状態において前方固定パネル12(F)との間の隙間を埋める。後方ドア13の前方のウェザーストリップ14は後方ドア13(と前方ドア11)を閉じた状態において前方ドア11の後縁部との間の隙間を埋め、後方のウェザーストリップ14は、後方ドア13を閉じた状態において、後方固定パネル12(R)との間の隙間を埋める。これらのウェザーストリップ14には実質的に同一の取付構造を適用できるので、以下の説明では、後方ドア13の前方縁部に対するウェザーストリップ14の取付構造を説明する。
【0014】
後方ドア13は、周知のように複数の金属板材(パネル)を曲折させたドアパネル13aを備えている。該ドアパネル13aの前側縁部の内側には、断面コ字状(または箱状)の縦方向のウェザーストリップ取付部13bが形成されている。13cは窓ガラスWの縁部を案内するサッシュ部である。ウェザーストリップ取付部13bには、その長手方向(上下方向)に所定間隔をあけて、ドアの厚さ方向に向く複数の円形の固定穴13dが形成されている。
【0015】
ウェザーストリップ14は、巨視的にみて容易に弾性変形可能な弾性材料からなる一様断面材であり、後方ドア13のウェザーストリップ取付部13bに沿う固定縁部14aと、後方ドア13の前方から突出する閉塞縁部14bとを有している。前方ドア11は、後方ドア13と同様に、複数の板材(パネル)を曲折させたドアパネル11aからなっており、その後側縁部11bは、前方ドア11を閉じた状態では、閉塞縁部14bの外側に位置して該閉塞縁部14bに接触する。11cは窓ガラスWの縁部を案内するサッシュ部である。
【0016】
ウェザーストリップ14の固定縁部14aには、長手方向に沿わせて後方ドア13の固定穴13dに対応する複数の係止穴14dが形成されている。この係止穴14dは、ウェザーストリップ14の長手方向に長い長穴からなっており、固定穴13dと同様にドアの厚み方向を向いている。固定縁部14aと閉塞縁部14bの断面形状にはドアパネルの断面形状に応じた自由度がある。
【0017】
ウェザーストリップ14を後方ドア13に固定するための長尺クリップ15は、合成樹脂材料の成形品からなり、挟着ストリップ15aと、この挟着ストリップ15aの長さ方向に間隔をおいて一体に設けた複数の挿入係止突起15bとを有している。挟着ストリップ15aは、後方ドア13のウェザーストリップ取付部13bとの間に固定縁部14aを挟着するものであり、挿入係止突起15bは、ウェザーストリップ14の係止穴14dと後方ドア13の固定穴13dに跨らせて挿入係止され、長尺クリップ15自身及びウェザーストリップ14を後方ドア13に固定する。
【0018】
長尺クリップ15の挟着ストリップ15aの裏面(ウェザーストリップ14と接触する面)には、特に図5に明らかなように、両側縁部に長手方向に沿って連続する係止リブ15a1が突出形成されている。この連続係止リブ15a1は、ウェザーストリップ14との接触圧力を高め、ウェザーストリップ14が波打つのを防止する。
【0019】
長尺クリップ15の挿入係止突起15bは、中心軸部15b1と、この中心軸部15b1の先端から対称に開閉可能に延びる一対の開閉脚15b2とを有する矢印形状(正面視横長形状)をしている。開閉脚15b2(挿入係止突起15b)は、ウェザーストリップ14の係止穴14dと、後方ドア13の固定穴13dに挿入可能な弾性を有しており、固定穴13dへ完全に挿入された状態では、一対の開閉脚15b2の自由端部先端は、固定穴13dから突出して後方ドア13に係止される。
【0020】
すなわち、上記構成の本車両ドアのウェザーストリップ取付構造は、ウェザーストリップ14の固定縁部14aに長尺クリップ15を沿わせて挿入係止突起15bを係止穴14dに挿入し、その上でさらに挿入係止突起15bを後方ドア13の固定穴13dに挿入すると、取付作業が終了する。この取付状態では、長尺クリップ15の連続係止リブ15a1がウェザーストリップ14の波打ちを防止し、また、ウェザーストリップ14の長手方向に長い係止穴14dがウェザーストリップ14と挿入係止突起15bとの若干の相対移動を可能とするため、より確実に波打ちを防止することができる。図示例では、後方ドア(ドアパネル)13の全ての固定穴13dを丸穴としたが、複数の挿入係止突起15bとの間の位置誤差を吸収するため、一部を挿入係止突起15bの配列方向に長い穴とすることも可能である。
【0021】
図6は、本発明の別の実施形態を示している。この実施形態では、長尺クリップ15の挟着ストリップ15aに形成する係止リブを不連続係止リブ15a2とし、この不連続係止リブ15a2部分のウェザーストリップ14との接触圧力を他の部分より高めている。係止リブを不連続とする場合、少なくとも挿入係止突起15bの長手方向位置と同じ位置に設けるのがよい。
【0022】
図7は、長尺クリップ15に形成する挿入係止突起15bの別の実施形態である。この挿入係止突起15bは、先の実施形態と同様に、中心軸部15b1と、この中心軸部の先端から対称に開閉可能に延びる一対の開閉脚15b2とを備えており、さらにこの一対の開閉脚15b2の自由端部先端に後方ドア13の固定穴13dに係止されるネック部15b3を形成している。
また、図8は、挿入係止突起15bのさらに別の実施形態であり、中心軸部15b1の先端から対称に開閉可能に延びる一対の開閉脚15b2の基部を挟着ストリップ15aに結合(一体成形)している。一対の開閉脚15b2は、図7の実施形態と同様のネック部15b3が形成されている。
これらの実施形態によると、一対の開閉脚15b2の間隔を狭めるように弾性変形させることで、長尺クリップ15を後方ドア13から抜き、ウェザーストリップ14を外すことができる。
【0023】
図9は、長尺クリップ15の挿入係止突起15bを挟着ストリップ15aとは別材料から構成し(例えば挿入係止突起15bを挟着ストリップ15aより硬質材料から構成し)、挟着ストリップ15a内に埋め込み固定した実施形態である。この実施形態によれば、挿入係止突起15bとして必要な強度(硬さ)と、挟着ストリップ15aとして必要な柔軟性とを独立して得ることができる。
【0024】
図10は、長尺クリップ15の挟着ストリップ15aの可撓性(柔軟性)を高めるため、挟着ストリップ15aの両側縁部に適当間隔でスリット15cを入れた実施形態を示している。スリットの代わりに肉厚を薄くする溝部を形成することも可能である。
【0025】
図11は、後方ドア13の後方縁部のウェザーストリップ14の取付構造を示している。取付構造自体は、以上の実施例と同様であるが、後方ドア13の後方縁部は、回動中心軸から離れた側の縁部であり、従ってそのウェザーストリップ14は、後方ドア13を閉じた状態において、後方固定パネル12(R)の外側に接触する。
【0026】
以上の実施形態は、4ドアセダンのサイドドアに本発明を適用したものであるが、本発明は、ドアの種類、開閉中心軸の方向(縦方向か横方向か)を問わず、例えばバックドア、ボンネットドア、トランクドアにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による車両ドアのウェザーストリップ取付構造の一実施形態を示す車両の側面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】図2のIII部拡大図である。
【図4】図1の要部の分解斜視図である。
【図5】長尺クリップ単体の斜視図である。
【図6】長尺クリップの別の実施形態を示す側面図である。
【図7】長尺クリップの挿入係止突起の別の形態例を示す横断面図である。
【図8】長尺クリップの挿入係止突起のさらに別の形態例を示す横断面図である。
【図9】長尺クリップの挿入係止突起を挟着ストリップとは別材料から構成した例を示す横断面図である。
【図10】長尺クリップの別の実施形態を示す正面図である。
【図11】図1のXI-XI線に沿う、図2に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0028】
11 前方ドア
11a 13a ドアパネル
12 固定パネル
13 後方ドア
13b ウェザーストリップ取付部
13d 固定穴
14 ウェザーストリップ
14a 固定縁部
14b 閉塞縁部
14d 係止穴
15 長尺クリップ
15a 挟着ストリップ
15a1 連続係止リブ
15a2 不連続係止リブ
15b 挿入係止突起
15b1 中心軸部
15b2 開閉脚
15b3 ネック部
15c スリット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能なドアパネルの開閉中心軸と平行な側の一対の縁部の少なくとも一方に沿わせて、該ドアパネル縁部と対向する部材との隙間を埋めるウェザーストリップを取り付ける車両ドアにおいて、
上記ウェザーストリップに、その長手方向に間隔をおいて形成した複数の係止穴;
上記ドアパネルの内面に、ウェザーストリップの上記複数の係止穴に対応させて形成した複数の固定穴;及び
上記ドアパネルとの間に上記ウェザーストリップを挟む挟着ストリップと、この挟着ストリップと一体で上記ウェザーストリップの各係止穴とドアパネルの各固定穴とに跨って挿入係止される複数の挿入係止突起とを有する長尺クリップ;
を有することを特徴とする車両ドアのウェザーストリップ取付構造。
【請求項2】
請求項1記載のウェザーストリップ取付構造において、長尺クリップの上記挟着ストリップには、その長手方向に沿ってウェザーストリップとの接触圧力を高める連続係止リブが形成されている車両ドアのウェザーストリップ取付構造。
【請求項3】
請求項1記載のウェザーストリップ取付構造において、長尺クリップの上記挟着ストリップには、他の部分よりウェザーストリップとの接触圧力を高める不連続係止リブが形成されている車両ドアのウェザーストリップ取付構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のウェザーストリップ取付構造において、上記挿入係止突起は、中心軸部と、この中心軸部の先端から対称に開閉可能に延びる一対の開閉脚とを有し、この一対の開閉脚の自由端部先端は、ドアパネルの固定穴に挿入されたとき該固定穴から突出してドアパネルに係止される車両ドアのウェザーストリップ取付構造。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のウェザーストリップ取付構造において、上記挿入係止突起は、中心軸部と、この中心軸部の先端から対称に開閉可能に延びる一対の開閉脚と、この一対の開閉脚の自由端部先端に形成したドアパネルの固定穴に係止されるネック部とを有している車両ドアのウェザーストリップ取付構造。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のウェザーストリップ取付構造において、上記挿入係止突起は、中心軸部と、この中心軸部の先端から対称に開閉可能に延び挟着ストリップに結合された一対の開閉脚と、この一対の開閉脚に形成したドアパネルの固定穴に係止されるネック部とを有している車両ドアのウェザーストリップ取付構造。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載のウェザーストリップ取付構造において、上記長尺クリップの挿入係止突起は挟着ストリップとは別に形成され、該挟着ストリップ内に埋め込み固定されている車両ドアのウェザーストリップ取付構造。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項記載のウェザーストリップ取付構造において、長尺クリップの挟着ストリップには、該挟着ストリップの可撓性を高めるスリットまたは溝部が形成されている車両ドアのウェザーストリップ取付構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−56409(P2006−56409A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240967(P2004−240967)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】