説明

車両ボデー構造

【課題】 バンパリインフォースに対して車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときでも、サイドメンバの横曲げ変形を抑制する。
【解決手段】 バンパリインフォース14に台車36が衝突することにより車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、バンパアーム24の傾斜リブ30がR1方向に傾動し、これに伴ってリヤサイドメンバ部18が根元部20を支点として車両幅方向外側(R2方向)に変形する。これにより、リヤサイドメンバ部18の延在方向(X1方向)が斜め荷重の加わる方向(X2方向)と一致するようになるので、リヤサイドメンバ部18は、バンパアーム24を介して伝わる車両斜め外方向からの斜め荷重を軸荷重として受けることができる。このため、リヤサイドメンバ部18に車両幅方向内側への横曲げモーメントが作用しないので、リヤサイドメンバ部18の横曲げ変形を抑制することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボデー構造に係り、特に、車両幅方向に延びるバンパリインフォースを車両前後方向に延びるサイドメンバにバンパアームを介して固定した車両ボデー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両ボデー構造としては次のものがある(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1に記載の例では、車両の前後方向に沿ってサイドメンバが配置されており、このサイドメンバのバンパ取付け予定部には、ステイを介してバンパが固定状態で取り付けられている。
【0003】
ステイは、車両の前後方向と略平行に延びたリブが車体の幅方向に4個配設された衝撃吸収部を備えている。この衝撃吸収部においては、各リブの肉厚寸法を調節することにより、一のリブの座屈限界値と衝突の際にバンパ本体を介して当該一のリブに加わる圧縮荷重との比が全てのリブについて略等しくなるように設定されている。
【0004】
そして、上記構成により、バンパに障害物が正面から衝突した際には、各リブが倒れることなく一斉に座屈変形されて衝突時の衝撃が吸収される。
【特許文献1】特開2000−318552号公報(図1−図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、バンパに対して車両斜め外方向から衝突荷重が加わったときには、ステイを介してサイドメンバに車両幅方向内側への横曲げモーメントが作用する。従って、車両斜め外方向からの衝突荷重が大きい場合には、サイドメンバの横曲げ変形が大きくなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、バンパリインフォースに対して車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときでも、サイドメンバの横曲げ変形を抑制可能な車両ボデー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両前方部又は後方部に配置され車両幅方向に延びるバンパリインフォースと、車両前後方向に延びると共に長手方向中間部を支点として前記長手方向中間部から前記バンパリインフォース側の端部までが車両幅方向外側に変形可能なサイドメンバと、前記バンパリインフォースを前記サイドメンバの端部に固定するバンパアームと、を備えた車両ボデー構造において、前記バンパアームには、前記バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときに、前記サイドメンバの長手方向中間部から前記バンパリインフォース側の端部までの延在方向が前記斜め荷重の加わる方向と一致するように、前記車両斜め外方向からの斜め荷重を利用して、前記サイドメンバの長手方向中間部から前記バンパリインフォース側の端部までを前記長手方向中間部を支点として車両幅方向外側に変形させる延在方向変換手段が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明では、バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、サイドメンバの長手方向中間部からバンパリインフォース側の端部までの延在方向が斜め荷重の加わる方向と一致するように、延在方向変換手段が、車両斜め外方向からの斜め荷重を利用して、サイドメンバの長手方向中間部からバンパリインフォース側の端部までを長手方向中間部を支点として車両幅方向外側に変形させる。
【0009】
従って、バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、延在方向変換手段の荷重伝達作用により、サイドメンバの長手方向中間部からバンパリインフォース側の端部までの延在方向が斜め荷重の加わる方向と一致するようになる。
【0010】
これにより、サイドメンバは、バンパアームを介して伝わる車両斜め外方向からの斜め荷重を軸荷重として受けることができる。このため、バンパリインフォースに対して車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときでも、サイドメンバに車両幅方向内側への横曲げモーメントが作用しないので、サイドメンバの横曲げ変形を抑制することが可能である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両ボデー構造において、前記延在方向変換手段は、前記サイドメンバ側から前記バンパリインフォース側に向かうに従って車両幅方向内側へ傾斜する傾斜リブで構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明では、延在方向変換手段が、サイドメンバ側からバンパリインフォース側に向かうに従って車両幅方向内側へ傾斜する傾斜リブで構成されている。
【0013】
この構成によれば、傾斜リブに斜め荷重が伝達されると、傾斜リブはサイドメンバ側を支点として車両幅方向内側に変形(傾動)する。従って、傾斜リブが車両幅方向内側に変形(傾動)することに伴い、サイドメンバのバンパリインフォース側は傾斜リブによって車両幅方向外側に反力を受ける。これにより、サイドメンバの長手方向中間部からバンパリインフォース側の端部までを長手方向中間部を支点として車両幅方向外側に変形させることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両ボデー構造において、前記バンパアームにおける前記傾斜リブの車両幅方向内側又は外側には、前記車両斜め外方向からの斜め荷重に対して前記傾斜リブよりも低強度であると共に車軸方向からの荷重を支える補助リブが設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明では、バンパアームにおける傾斜リブの車両幅方向内側又は外側に、車両斜め外方向からの斜め荷重に対して傾斜リブよりも低強度であると共に車軸方向からの荷重を支える補助リブが設けられている。
【0016】
従って、バンパリインフォースに車軸方向に沿って車軸方向荷重が加わったときには、この車軸方向荷重を補助リブによって支えることができる。これにより、傾斜リブを傾斜させたことによる車軸方向荷重に対する剛性低下分を補助リブによって補うことができる。
【0017】
また、補助リブは、車両斜め外方向からの斜め荷重に対して傾斜リブよりも低強度であるので、バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、補助リブからサイドメンバへの伝達荷重を低く抑えることができる。
【0018】
これにより、バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときに、傾斜リブによってサイドメンバの長手方向中間部からバンパリインフォース側の端部までが長手方向中間部を支点として車両幅方向外側に変形させられる動きが、補助リブからの伝達荷重によって阻害されることを抑制できる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両ボデー構造において、前記補助リブは、前記サイドメンバ側から前記バンパリインフォース側に向けて延びると共に長手方向中間部に屈曲部を有する屈曲リブで構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の発明では、補助リブが、サイドメンバ側からバンパリインフォース側に向けて延びると共に長手方向中間部に屈曲部を有する屈曲リブで構成されている。
【0021】
従って、バンパリインフォースに車軸方向に沿って車軸方向荷重が加わったときには、この車軸方向荷重を屈曲リブによって支えることができる。これにより、傾斜リブを傾斜させたことによる車軸方向荷重に対する剛性低下分を屈曲リブによって補うことができる。
【0022】
また、屈曲リブは、長手方向中間部に屈曲部を有しているので、バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、屈曲リブが屈曲部で屈曲することにより屈曲リブからサイドメンバへの伝達荷重を低く抑えることができる。
【0023】
これにより、バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときに、傾斜リブによってサイドメンバの長手方向中間部からバンパリインフォース側の端部までが長手方向中間部を支点として車両幅方向外側に変形させられる動きが、屈曲リブからの伝達荷重によって阻害されることを抑制できる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両ボデー構造において、前記バンパリインフォースの前記バンパアームが位置する部位は、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って車両前後方向中央側へ傾斜していることを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の発明では、バンパリインフォースのバンパアームが位置する部位が、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って車両前後方向中央側へ傾斜している。
【0026】
従って、バンパリインフォースに衝突物が衝突することにより車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、バンパリインフォースのバンパアームが位置する部位を傾斜させずに車両幅方向に沿わせた構成に比して、バンパリインフォースと衝突物との接触面積を広げることができる。このため、バンパリインフォースに車両斜め外方向から加わった斜め荷重は分布荷重となる。
【0027】
これにより、バンパリインフォースのバンパアームが位置する部位を傾斜させずに車両幅方向に沿わせた構成(この場合は集中荷重となる)に比して、バンパリインフォースの変形量を少なくできる。
【0028】
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両ボデー構造において、前記バンパリインフォースの前記バンパアームが位置する部位は、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って車両前後方向中央側へ傾斜し、前記傾斜リブは、前記サイドメンバの前記バンパリインフォース側の端部における車両幅方向中央部よりも車両幅方向外側に位置していることを特徴とする。
【0029】
請求項6に記載の発明では、傾斜リブが、サイドメンバのバンパリインフォース側の端部における車両幅方向中央部よりも車両幅方向外側に位置している。
【0030】
このとき、請求項6に記載の発明では、バンパリインフォースのバンパアームが位置する部位が、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って車両前後方向中央側へ傾斜している。従って、バンパリインフォースとサイドメンバの端部との距離は、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って短くなる。
【0031】
このため、請求項6に記載のように、傾斜リブが、サイドメンバのバンパリインフォース側の端部における車両幅方向中央部よりも車両幅方向外側に位置していると、傾斜リブがサイドメンバのバンパリインフォース側の端部における車両幅方向中央部よりも車両幅方向内側に位置する場合に比して、傾斜リブの長手方向の長さが短くて済む。
【0032】
従って、バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったことによってバンパリインフォースが斜め荷重と反対側の車両幅方向への移動する量を少なく抑えることができる。これにより、斜め荷重が加わった側のサイドメンバと反対側のサイドメンバの車両幅方向外側への変形を抑制できる。
【発明の効果】
【0033】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、延在方向変換手段の荷重伝達作用により、サイドメンバの長手方向中間部からバンパリインフォース側の端部までの延在方向が斜め荷重の加わる方向と一致するようになる。
【0034】
これにより、サイドメンバは、バンパアームを介して伝わる車両斜め外方向からの斜め荷重を軸荷重として受けることができる。このため、バンパリインフォースに対して車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときでも、サイドメンバに車両幅方向内側への横曲げモーメントが作用しないので、サイドメンバの横曲げ変形を抑制することが可能である。
【0035】
また、請求項2に記載の発明によれば、延在方向変換手段がサイドメンバ側からバンパリインフォース側に向かうに従って車両幅方向内側へ傾斜する傾斜リブで構成されているので、傾斜リブに斜め荷重が伝達されると、傾斜リブはサイドメンバ側を支点として車両幅方向内側に変形(傾動)する。従って、傾斜リブが車両幅方向内側に変形(傾動)することに伴い、サイドメンバのバンパリインフォース側は傾斜リブによって車両幅方向外側に反力を受ける。これにより、サイドメンバの長手方向中間部からバンパリインフォース側の端部までを長手方向中間部を支点として車両幅方向外側に変形させることができる。
【0036】
また、請求項3に記載の発明によれば、バンパアームにおける傾斜リブの車両幅方向内側又は外側に、補助リブが設けられている。従って、傾斜リブを傾斜させたことによる車軸方向荷重に対する剛性低下分を補助リブによって補うことができる。
【0037】
また、補助リブは、車両斜め外方向からの斜め荷重に対して傾斜リブよりも低強度であるので、バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、補助リブからサイドメンバへの伝達荷重を低く抑えることができる。これにより、傾斜リブによってサイドメンバの長手方向中間部からバンパリインフォース側の端部までが長手方向中間部を支点として車両幅方向外側に変形させられる動きが、補助リブからの伝達荷重によって阻害されることを抑制できる。
【0038】
また、請求項4に記載の発明によれば、補助リブが、サイドメンバ側からバンパリインフォース側に向けて延びると共に長手方向中間部に屈曲部を有する屈曲リブで構成されている。従って、傾斜リブを傾斜させたことによる車軸方向荷重に対する剛性低下分を屈曲リブによって補うことができる。
【0039】
また、屈曲リブは、長手方向中間部に屈曲部を有しているので、バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、屈曲リブが屈曲することにより屈曲リブからサイドメンバへの伝達荷重を低く抑えることができる。これにより、傾斜リブによってサイドメンバの長手方向中間部からバンパリインフォース側の端部までが長手方向中間部を支点として車両幅方向外側に変形させられる動きが、屈曲リブからの伝達荷重によって阻害されることを抑制できる。
【0040】
また、請求項5に記載の発明によれば、バンパリインフォースのバンパアームが位置する部位が、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って車両前後方向中央側へ傾斜している。このため、バンパリインフォースに車両斜め外方向から加わった斜め荷重は分布荷重となる。これにより、バンパリインフォースのバンパアームが位置する部位を傾斜させずに車両幅方向に沿わせた構成(この場合は集中荷重となる)に比して、バンパリインフォースの変形量を少なくできる。
【0041】
また、請求項6に記載の発明によれば、傾斜リブが、サイドメンバのバンパリインフォース側の端部における車両幅方向中央部よりも車両幅方向外側に位置している。従って、傾斜リブがサイドメンバのバンパリインフォース側の端部における車両幅方向中央部よりも車両幅方向内側に位置する場合に比して、傾斜リブの長手方向の長さが短くて済む。
【0042】
従って、バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったことによってバンパリインフォースが斜め荷重と反対側の車両幅方向への移動する量を少なく抑えることができる。これにより、斜め荷重が加わった側のサイドメンバと反対側のサイドメンバの車両幅方向外側への変形を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0044】
はじめに、図1,図2を参照しながら、本発明の一実施形態に係る車両ボデー構造10の構成について説明する。なお、本実施形態に係る車両ボデー構造10は、左右対称構造となっている。このため、図1では、本実施形態に係る車両ボデー構造10の右側半分のみが示されている。
【0045】
本発明の一実施形態に係る車両ボデー構造10は、例えば、乗用自動車等の車両12に好適に使用されるものである。本実施形態では、車両ボデー構造10が車両12の後方部に適用されている。
【0046】
本実施形態の車両12の後方部には、車両幅方向に延びるバンパリインフォース14が配置されている。バンパリインフォース14の車両幅方向両側は屈曲しており、バンパリインフォース14のバンパアーム24が位置する部位は、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って車両前後方向中央側へ傾斜している。
【0047】
本実施形態の車両12には、車両前後方向に延びるサイドメンバ16が設けられている。このサイドメンバ16の車両後方に位置する部位は、リヤサイドメンバ部18とされている。このリヤサイドメンバ部18は、根元部20にクロスメンバ19が連結されることにより、根元部20(サイドメンバ16の長手方向中間部)を支点として根元部20から端部22までが車両幅方向外側に変形可能となっている(図3の一点鎖線参照)。
【0048】
そして、本実施形態の車両12では、バンパリインフォース14がリヤサイドメンバ部18の端部22にアルミニウム製のバンパアーム24によって固定されている。
【0049】
バンパアーム24は、その断面が車両幅方向外側のリブ26を車両幅方向内側のリブ28よりも短くした概略台形状の中空部材により形成されている。
【0050】
バンパアーム24内の短いリブ26側には、直線状の傾斜リブ30が設けられており、バンパアーム24内の長いリブ28側には、補助リブとしての屈曲状の屈曲リブ32が設けられている。
【0051】
傾斜リブ30は、本発明に係る延在方向変換手段を構成するものであり、サイドメンバ16側からバンパリインフォース14側に向かうに従って車両幅方向内側へ傾斜されている。傾斜リブ30は、リヤサイドメンバ部18の端部22における車両幅方向中央部よりも車両幅方向外側に位置している。また、本実施形態では、この傾斜リブ30の車軸線とのなす角度αは、図2に示されるように、α=7°に設定されている。
【0052】
この構成により、傾斜リブ30は、バンパリインフォース14に車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときに車両内側(R1方向)へ傾動し、リヤサイドメンバ部18の延在方向(X1方向)が斜め荷重の加わる方向(X2方向)と一致するように、車両斜め外方向からの斜め荷重を利用し、リヤサイドメンバ部18を根元部20を支点として車両幅方向外側(R2方向)に変形させる。
【0053】
屈曲リブ32は、主として、車軸方向(車軸線とのなす角度β=0°)で台車36が衝突する場合に台車36に対して反力を作用させるための部材である。この屈曲リブ32は、車両斜め外方向からの斜め荷重に対して傾斜リブ30よりも低強度であると共に車軸方向からの荷重を支える構成となっている。つまり、屈曲リブ32は、サイドメンバ16側からバンパリインフォース14側に向けて延びると共に長手方向中間部に屈曲部34を有する構成となっている。
【0054】
この屈曲リブ32に設けられた屈曲部34は、後に詳述するように、バンパリインフォース14に車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときに屈曲して、屈曲リブ32からサイドメンバ16への伝達荷重を低く抑えるためのものである。この屈曲リブ32は、リヤサイドメンバ部18の端部22における車両幅方向中央部よりも車両幅方向内側に位置している。
【0055】
なお、本実施形態において、バンパリインフォース14の車両幅方向外側に形成された屈曲形状の有無は、後に詳述する傾斜リブ30によってリヤサイドメンバ部18を車両幅方向外側(R2方向)に変形(傾動)させるメカニズムとは無関係となっている。
【0056】
また、本実施形態において、車軸方向に台車36を衝突させた場合、このときの台車36からの衝突荷重は、屈曲リブ32及びリブ28が分担して受ける構成となっている。
【0057】
このとき、屈曲リブ32及びリブ28は、車軸線とのなす角度β=0°の荷重入力でバンパリインフォース14に対して反力を作用する強度を有しつつ、車軸線とのなす角度β=10°の荷重入力では、リヤサイドメンバ部18に余計な横曲げモーメントを作用させないように座屈する構成となっている。
【0058】
次に、図3を参照しながら、上記構成からなる車両ボデー構造10の動作について説明する。
【0059】
なお、本実施形態では、図3に示されるように、一例として、バンパリインフォース14の車両幅方向外側部分に、車軸線とのなす角度がβ=10°となるように斜め後方から台車36(障害物)を衝突させる。
【0060】
図3に示されるように、バンパリインフォース14の車両幅方向外側部分に、車軸線とのなす角度がβ=10°となるように斜め後方から台車36(障害物)が衝突すると、バンパリインフォース14の車両幅方向外側部分を介して傾斜リブ30に衝突荷重が伝達される。
【0061】
傾斜リブ30は、衝突荷重が伝達されると、リヤサイドメンバ部18側を支点として車両幅方向内側、すなわち、図3のR1方向に時計回りに変形(傾動)する。
【0062】
そして、傾斜リブ30がR1方向に時計回りに変形(傾動)すると、リヤサイドメンバ部18のバンパリインフォース14側は傾斜リブ30によって車両幅方向外側に反力を受ける。これにより、サイドメンバ16のうちリヤサイドメンバ部18が根元部20を支点として車両幅方向外側(R2方向)に変形する(根元部20を支点として車両外側に振られる)。
【0063】
これにより、リヤサイドメンバ部18と台車36とが正対してリヤサイドメンバ部18の延在方向(X1方向)が斜め荷重の加わる方向(X2方向)と一致する。このため、リヤサイドメンバ部18は、台車36からの衝突荷重を軸荷重として受ける。
【0064】
その後、台車36との衝突後半には、リヤサイドメンバ部18は、その弾性により元の車軸線に沿った形状に復帰する。
【0065】
次に、上記構成からなる車両ボデー構造10の作用及び効果について説明する。
【0066】
本実施形態において、傾斜リブ30は、上述の如く、バンパリインフォース14に車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときに車両内側(R1方向)へ傾動し、リヤサイドメンバ部18の延在方向(X1方向)が斜め荷重の加わる方向(X2方向)と一致するように、車両斜め外方向からの斜め荷重を利用し、リヤサイドメンバ部18を根元部20を支点として車両幅方向外側(R2方向)に変形させる。
【0067】
従って、バンパリインフォース14に台車36が衝突することにより車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、傾斜リブ30の荷重伝達作用により、リヤサイドメンバ部18の延在方向(X1方向)が斜め荷重の加わる方向(X2方向)と一致するようになる。
【0068】
これにより、リヤサイドメンバ部18は、バンパアーム24を介して伝わる車両斜め外方向からの斜め荷重を軸荷重として受けることができる。このため、本実施形態のように、バンパリインフォース14に対して車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときでも、リヤサイドメンバ部18に車両幅方向内側への横曲げモーメントが作用しないので、リヤサイドメンバ部18の横曲げ変形を抑制することが可能である。
【0069】
特に、リヤサイドメンバ部18が車両幅方向内側へ変形する場合には、リヤサイドメンバ部18に加わる横曲げモーメントは、バンパアーム24側へ行くほど大きくなるが、本実施形態では、上述の如く、衝突時におけるリヤサイドメンバ部18の横曲げモーメントを抑制できるので、リヤサイドメンバ部18のバンパアーム24側で横曲げによる座屈が生じることも防止できる。
【0070】
また、本実施形態では、バンパアーム24に、長手方向中間部に屈曲部34を有する屈曲リブ32が設けられている。
【0071】
従って、バンパリインフォース14に車軸方向(β=0°)に沿って車軸方向荷重が加わったときには、この車軸方向荷重を屈曲リブ32によって支えることができる。これにより、傾斜リブ30を傾斜させたことによる車軸方向荷重に対する剛性低下分を屈曲リブ32によって補うことができる。
【0072】
また、屈曲リブ32は、長手方向中間部に屈曲部34を有しているので、バンパリインフォース14に車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、屈曲リブ32が屈曲部34で屈曲することにより屈曲リブ32からリヤサイドメンバ部18への伝達荷重を低く抑えることができる。
【0073】
これにより、バンパリインフォース14に車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときに、傾斜リブ30によってリヤサイドメンバ部18が根元部20を支点として車両幅方向外側(R2方向)に変形させられる動きが、屈曲リブ32からの伝達荷重によって阻害されることを抑制できる。
【0074】
さらに、本実施形態では、バンパリインフォース14のバンパアーム24が位置する部位が、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って車両前後方向中央側へ傾斜している。
【0075】
従って、バンパリインフォース14に台車36が衝突することにより車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときには、バンパリインフォース14のバンパアーム24が位置する部位を傾斜させずに車両幅方向に沿わせた構成に比して、バンパリインフォース14と台車36との接触面積を広げることができる。このため、バンパリインフォース14に車両斜め外方向から加わった斜め荷重は分布荷重となる。
【0076】
これにより、バンパリインフォース14のバンパアーム24が位置する部位を傾斜させずに車両幅方向に沿わせた構成(この場合は集中荷重となる)に比して、バンパリインフォース14の変形量を少なくできる。
【0077】
また、本実施形態では、傾斜リブ30が、サイドメンバ16のバンパリインフォース14側の端部22における車両幅方向中央部よりも車両幅方向外側に位置している。
【0078】
このとき、本実施形態では、バンパリインフォース14のバンパアーム24が位置する部位が、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って車両前後方向中央側へ傾斜している。従って、バンパリインフォース14とリヤサイドメンバ部18の端部22との距離は、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って短くなる。
【0079】
このため、本実施形態のように、傾斜リブ30が、リヤサイドメンバ部18の端部22における車両幅方向中央部よりも車両幅方向外側に位置していると、傾斜リブ30がリヤサイドメンバ部18の端部22における車両幅方向中央部よりも車両幅方向内側に位置する場合に比して、傾斜リブ30の長手方向の長さが短くて済む。
【0080】
従って、バンパリインフォース14に車両斜め外方向から斜め荷重が加わったことによってバンパリインフォース14が斜め荷重と反対側の車両幅方向(この場合車両左側)への移動する量を少なく抑えることができる。これにより、斜め荷重が加わった側のリヤサイドメンバ部18(この場合右側のリヤサイドメンバ部18)と反対側の図示しないリヤサイドメンバ部(この場合左側のリヤサイドメンバ部)の車両幅方向外側(この場合車両左側)への変形を抑制できる。
【0081】
次に、本発明の一実施形態に係る車両ボデー構造10の変形例について説明する。
【0082】
上記実施形態では、台車36の衝突角度が多少ずれても(ずれを±3°に設定)、確実に傾斜リブ30をR1方向に変形(傾動)させるために傾斜リブ30の車軸線とのなす角度をα=7°としたが、台車36の衝突角度の想定角度やその他の要因に応じて傾斜リブ30の車軸線とのなす角度を種々改変して設定しても良いことは勿論である。
【0083】
また、上記実施形態では、車軸線とのなす角度がβ=10°となるように斜め後方から台車36(障害物)を衝突させる場合に対して傾斜リブ30の車軸線とのなす角度をα=7°に設定したが、その他にも任意の衝突角度に対して傾斜リブ30を任意の傾斜角度としても良いことは勿論である。
【0084】
また、上記実施形態では、傾斜リブ30が、リヤサイドメンバ部18の端部22における車両幅方向中央部よりも車両幅方向外側に位置していたが、リヤサイドメンバ部18の端部22における車両幅方向中央部よりも車両幅方向内側に位置していても良い。この場合に、屈曲部34は、傾斜リブ30の車両幅方向外側に位置していても良い。
【0085】
また、上記実施形態では、屈曲リブ32が屈曲部34を有する屈曲状に形成されていたが、その他にも屈曲リブ32を次のように形成しても良い。
【0086】
つまり、屈曲リブ32は、車両斜め外方向からの斜め荷重に対して傾斜リブ30よりも低強度であると共に車軸方向からの荷重を支えることができる構成であれば、直線状や曲線状とした上で傾斜リブ30よりも薄肉にした形状や、その長手方向中間部を薄肉にした形状や、その長手方向端部を薄肉にした形状等であっても良い。
【0087】
また、上記実施形態では、車両ボデー構造10が車両12の後方部に適用された例について説明したが、本発明の一実施形態に係る車両ボデー構造10を車両12の前方部に適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る車両ボデー構造の構成を示す図である。
【図2】図2は図1のバンパアーム周辺の要部拡大図である。
【図3】図3は本発明の一実施形態に係る車両ボデー構造の作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0089】
10 車両ボデー構造
14 バンパリインフォース
16 サイドメンバ
18 リヤサイドメンバ部
20 根元部(長手方向中間部)
22 端部
24 バンパアーム
30 傾斜リブ(延在方向変換手段)
32 屈曲リブ(補助リブ)
34 屈曲部
36 台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方部又は後方部に配置され車両幅方向に延びるバンパリインフォースと、
車両前後方向に延びると共に長手方向中間部を支点として前記長手方向中間部から前記バンパリインフォース側の端部までが車両幅方向外側に変形可能なサイドメンバと、
前記バンパリインフォースを前記サイドメンバの端部に固定するバンパアームと、を備えた車両ボデー構造において、
前記バンパアームには、前記バンパリインフォースに車両斜め外方向から斜め荷重が加わったときに、前記サイドメンバの長手方向中間部から前記バンパリインフォース側の端部までの延在方向が前記斜め荷重の加わる方向と一致するように、前記車両斜め外方向からの斜め荷重を利用して、前記サイドメンバの長手方向中間部から前記バンパリインフォース側の端部までを前記長手方向中間部を支点として車両幅方向外側に変形させる延在方向変換手段が設けられていることを特徴とする車両ボデー構造。
【請求項2】
前記延在方向変換手段は、前記サイドメンバ側から前記バンパリインフォース側に向かうに従って車両幅方向内側へ傾斜する傾斜リブで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両ボデー構造。
【請求項3】
前記バンパアームにおける前記傾斜リブの車両幅方向内側又は外側には、前記車両斜め外方向からの斜め荷重に対して前記傾斜リブよりも低強度であると共に車軸方向からの荷重を支える補助リブが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両ボデー構造。
【請求項4】
前記補助リブは、前記サイドメンバ側から前記バンパリインフォース側に向けて延びると共に長手方向中間部に屈曲部を有する屈曲リブで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両ボデー構造。
【請求項5】
前記バンパリインフォースの前記バンパアームが位置する部位は、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って車両前後方向中央側へ傾斜していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両ボデー構造。
【請求項6】
前記バンパリインフォースの前記バンパアームが位置する部位は、車両幅方向内側から外側へ向かうに従って車両前後方向中央側へ傾斜し、
前記傾斜リブは、前記サイドメンバの前記バンパリインフォース側の端部における車両幅方向中央部よりも車両幅方向外側に位置していることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両ボデー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−55344(P2007−55344A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240873(P2005−240873)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】