説明

車両制御装置及び車両制御システム

【課題】衝突する各車両において被害低減効果を向上できる車両制御装置及び車両制御システムを提供する。
【解決手段】車両制御装置1では、自車両10と他車両との衝突パターンを推定すると共に、他車両で作動可能な衝突対応デバイス3に関する「デバイス制御要求フラグ」を受信する。続いて、衝突パターン及び「デバイス制御要求フラグ」に応じて、自車両10及び他車両で作動させる衝突対応デバイス3のそれぞれを決定する。そして、自車両10において、決定した衝突対応デバイス3を作動させるよう制御すると共に、他車両に対して、決定した衝突対応デバイスを作動させるよう要求する。すなわち、自車両10で作動させる衝突対応デバイス3と他車両で作動させる衝突対応デバイスとの双方が、自車両10と他車両との衝突形態に応じて決定されることとなる。よって、各車両にとって最適な衝突被害低減を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のために用いられる車両制御装置及び車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両制御装置としては、自車両と他車両との衝突が予測される場合に、当該衝突に対応して作動する衝突対応デバイスを制御するものが知られている。例えば、特許文献1に記載された車両制御装置では、ネットワークの親車両が、自車両と自車両周辺の他車両との運行状況等に基づいて各車両のリスク(例えば、短車間距離)の回避方法を演算し、その回避方法を各車両に通知する。そして、各車両は、通知された回避方法に従って、例えばブレーキデバイス等を制御する。
【特許文献1】特開2007−122138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上述したような車両制御装置では、自車両と他車両との衝突形態の違いが衝突対応デバイスの制御に充分に考慮されていない。よって、自車両と他車両との衝突が、例えば正面衝突、追突、出会い頭衝突の何れの場合であっても、同様な制御が行われてしまう。そのため、近年の車両制御装置においては、衝突形態に応じて、自車両及び他車両の各々の状況に適した衝突対応デバイスを作動させ、被害低減効果を向上させることが望まれている。
【0004】
そこで、本発明は、衝突する各車両において被害低減効果を向上させることができる車両制御装置及び車両制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両制御装置は、自車両と他車両との衝突が予測される場合に、当該衝突に対応して作動する衝突対応デバイスを制御するための車両制御装置であって、自車両と他車両との衝突形態を推定する衝突形態推定手段と、他車両で作動可能な衝突対応デバイスに関する情報を取得する情報取得手段と、衝突形態推定手段で推定した衝突形態及び情報取得手段で取得した情報に応じて、自車両で作動させる衝突対応デバイス及び他車両で作動させる衝突対応デバイスをそれぞれ決定するデバイス決定手段と、自車両において、デバイス決定手段で決定した衝突対応デバイスを作動させるよう制御する制御手段と、他車両に対して、デバイス決定手段で決定した衝突対応デバイスを作動させるよう要求する要求手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この車両制御装置によれば、自車両で作動させる衝突対応デバイスと他車両で作動させる衝突対応デバイスとの双方が、自車両と他車両との衝突形態に応じて決定されることとなる。よって、各車両にとって最適な衝突被害低減を実現することができる。すなわち、衝突する各車両において被害低減効果を向上させることが可能となる。
【0007】
このとき、衝突対応デバイスは、ブレーキデバイスを含み、デバイス決定手段は、衝突形態が出会い頭衝突の場合に、自車両及び他車両のうち側面に衝突される一方の車両で作動させる衝突対応デバイスをブレーキデバイスとして決定せず、自車両及び他車両のうち側面に衝突する他方の車両で作動させる衝突対応デバイスをブレーキデバイスとして決定することが好ましい。この場合、出会い頭衝突における被害低減効果を好適に向上させることができる。
【0008】
また、本発明に係る車両制御システムは、第1の車両と第2の車両との衝突が予測される場合に、当該衝突に対応して作動する衝突対応デバイスを制御するための車両制御システムであって、第1の車両と第2の車両との衝突形態を推定する衝突形態推定手段と、第1の車両で作動可能な衝突対応デバイス及び第2の車両で作動可能な衝突対応デバイスに関する情報を取得する情報取得手段と、衝突形態推定手段で推定した衝突形態及び情報取得手段で取得した情報に応じて、第1の車両で作動させる衝突対応デバイス及び第2の車両で作動させる衝突対応デバイスをそれぞれ決定するデバイス決定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この車両制御システムによれば、第1及び第2の車両の衝突形態に応じて第1及び第2の車両で作動させる衝突対応デバイスのそれぞれが決定されることから、各車両にとって最適な衝突被害低減が実現されることとなる。従って、衝突する各車両において被害低減効果を向上させることが可能となる。
【0010】
このとき、衝突対応デバイスは、ブレーキデバイスを含み、デバイス決定手段は、衝突形態が出会い頭衝突の場合に、第1及び第2の車両のうち側面に衝突される一方の車両で作動させる衝突対応デバイスをブレーキデバイスとして決定せず、第1及び第2の車両のうち側面に衝突する他方の車両で作動させる衝突対応デバイスをブレーキデバイスとして決定することが好ましい。この場合、出会い頭衝突における被害低減効果を好適に向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、衝突する各車両において被害低減効果を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両制御装置を示す概略構成図である。図1に示すように、本実施形態の車両制御装置(車両制御システム)1は、自車両(第1の車両)10に搭載されており、他車両情報検出センサ2、衝突対応デバイス3、車車間通信装置4及びECU5を備えている。
【0014】
他車両情報検出センサ2は、他車両(第2の車両)に関する他車両情報を取得するためのものである。ここでは、他車両情報検出センサ2として、ミリ波レーダが用いられている。他車両情報としては、例えば、自車両10から他車両までの距離、他車両の方位角、及び他車両との相対速度等が挙げられる。
【0015】
衝突対応デバイス3は、衝突に対応して作動するデバイスである。この衝突対応デバイス3としては、衝突防止及び衝突被害低減させるものが用いられており、ここでは、警報デバイス、ブレーキアシストデバイス、ブレーキデバイス、エアバックデバイス、シートベルトデバイス及びヘッドレストデバイスが用いられている。
【0016】
車車間通信装置4は、通信可能エリア内にある他車両との間で、車車間通信用アンテナ4aを介して車車間通信を行うためのものである。ここでの車車間通信装置4は、後述の各フラグを他車両との間で送受信する。なお、車車間通信の通信媒体は、他車両情報検出センサ2であるミリ波レーダの電波そのものを使用することもできる。
【0017】
ECU5は、例えばCPU、ROM、及びRAM等から構成されている。このECU5は、自車両10と他車両との衝突可能性の有無及び衝突形態を推定する。また、ECU5は、その内部に予め格納された作動デバイステーブルT(図6参照)に基づいて、自車両10で作動させる衝突対応デバイス3、及び他車両で作動させる衝突対応デバイス3を決定する。そして、ECU5は、自車両10において、決定した衝突対応デバイスを作動させるよう制御すると共に、他車両に対し、決定した衝突対応デバイス3を作動させるよう車車間通信装置4を介して要求する。
【0018】
次に、説明した車両制御装置1におけるECU5の処理について、図2,3に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0019】
まず、他車両情報検出センサ2から出力された他車両情報に基づいて、自車両10に対する他車両の相対位置及び相対速度を算出する。そして、算出した相対位置及び相対速度に基づいて、自車両10と他車両との衝突予測位置及び衝突余裕時間(Time To Collision:TTC)等の衝突情報を求める(S1)。この衝突情報が所定の条件に該当しない場合、衝突可能性が無いと判断し(S2のNo)、そのまま処理を終了する。その後、他車両情報検出センサ2の次のサンプリング時刻において上記S1の処理が再び開始される。
【0020】
一方、衝突情報が所定の条件に該当した場合、衝突可能性が有りと判断し(S2のYes)、他車両に対して、車車間通信が可能か否かを確認するための「通信要求フラグ」を送信する(S3)。そして、「通信要求フラグ」の送信に応じて、車車間通信が可能であることを通知するための「通信可能フラグ」が、他車両から返信されたか否かを判定する(S4)。
【0021】
「通信可能フラグ」が返信された場合、他車両が車車間通信可能であると判断し、他車両に対して、他車両の衝突対応デバイスが制御可能であるか否かを打診するための「デバイス制御要求フラグ」を送信する(S5)。そして、「デバイス制御要求フラグ」の送信に応じて、当該他車両において自車両10が制御可能な衝突対応デバイス3に関する「制御可能デバイスフラグ」が、他車両から返信されたか否かを判定する(S6)。
【0022】
「制御可能デバイスフラグ」が返信された場合、他車両の自車両10に対する相対位置及び相対速度を再度算出し、衝突情報を再度求める(S7)。再度求められた衝突情報が所定の条件に該当しない場合、衝突可能性が高くないと判断し(S8のNo)、そのまま処理を終了する。その後、他車両情報検出センサ2の次のサンプリング時刻において上記S1の処理が再び開始される。
【0023】
一方、再度求められた衝突情報が所定の条件に該当した場合、衝突可能性が高いと判断し(S8のYes)、その衝突情報に基づいて自車両10と他車両との衝突パターン(衝突形態)を推定する(S9)。ここでは、衝突パターンとして、対向車の他車両50と自車両10とが正面衝突する場合(図4(a)参照)、先行する他車両50に自車両10が追突する場合(図4(b)参照)、自車両10が出会い頭衝突する場合(図5参照)の何れであるのかを推定する。さらに、自車両10が出会い頭衝突する場合には、図5(a)に示すように自車両10の前面が他車両50の前面に衝突するのか、図5(b)に示すように自車両10の前面が他車両50の側面に衝突するのか、或いは、図5(c)に示すように自車両10の側面が他車両50の前面に衝突するのか、を推定する。
【0024】
続いて、推定した衝突パターンと、返信された「制御可能デバイスフラグ」と、作動デバイステーブルTとに基づいて、自車両10及び他車両50のそれぞれにおいて、作動可能な衝突対応デバイス3のうち何のデバイスを作動させ、且つそのデバイスをどのように制御するか(以下、「デバイス制御」という)を選択し決定する(S10)。
【0025】
図6は、衝突パターンに応じた作動デバイステーブルの一例を示す図である。この作動デバイステーブルTでは、衝突パターンに応じた被害低減の観点から、衝突パターンごとにデバイス制御の実行の有無が予め設定されている(詳しくは、後述)。図中において、「○」は該当するデバイス制御を実行することを意味し、「−」は該当するデバイス制御を実行しないことを意味している。
【0026】
また、図中のALMは、警報デバイスの作動を表す略称である。PBAは、ブレーキアシストデバイスの作動を表す略称である。PSBは、シートベルトデバイスを早期に巻き取りとるプリクラッシュシートベルトの略称である。PBは、緊急時に自動でブレーキデバイスを作動させるプリクラッシュブレーキの略称である。SABは、サイドエアバックデバイスの早期展開作動を表す略称である。IHRは、緊急時にヘッドレストデバイスを適切な位置まで移動させるインテリジェントヘッドレストの略称である。なお、これらの略称については、以下の説明において同様である。
【0027】
図6に示す作動デバイステーブルTによれば、例えば、推定した衝突パターンが、自車両10の前面に他車両50の側面が衝突する出会い頭衝突の場合、自車両10においてALM、PBA、PSB及びPBを実行するよう決定され、他車両50においてALM、PSB及びSABを実行するよう決定される。また、例えば、推定した衝突パターンが、自車両10の側面に他車両50の前面が衝突する出会い頭衝突の場合、自車両10においてALM、PSB及びSABを実行するよう決定され、他車両50においてALM、PBA、PSB及びPBを実行するよう決定される。つまり、自車両10及び他車両50のうち側面に衝突される一方側では、作動させる衝突対応デバイス3にブレーキデバイスが含まれず、側面に衝突する他方側では、作動させる衝突対応デバイス3にブレーキデバイスが含まれることになる。
【0028】
続いて、他車両50に対し、上記S10にて決定された他車両50のデバイス制御を規定する「デバイス制御指令フラグ」を送信する(S11)。これにより、他車両50に対して、上記S10にて決定した衝突対応デバイス3を作動させるよう要求することができる。
【0029】
続いて、「デバイス制御指令フラグ」の送信に応じて、他車両50から「デバイス制御受付フラグ」が返信された場合(S12のYes)、他車両50が要求したデバイス制御を行うことができる(他車両50の介入制御が可能である)と判断する。この「デバイス制御受付フラグ」とは、「デバイス制御指令フラグ」で規定したデバイス制御を、他車両50が受理し承認した場合に、他車両50が送信するフラグである。
【0030】
そして、上記S10で決定した自車両10のデバイス制御に従って自車両10の衝突対応デバイス3が作動するようデバイス制御を実行する。これと共に、上記S10で決定した他車両50のデバイス制御に従って他車両50の衝突対応デバイス3が作動するようデバイス制御を実行する(S13)。
【0031】
一方、「デバイス制御受付フラグ」が返信されない場合(S12のNo)、要求したデバイス制御を他車両50が行うことができない(他車両50の介入制御が不能である)と判断し、そのまま、後述のS17の処理へ移行する。
【0032】
ここで、上記S4にて「通信可能フラグ」が返信されない場合、及び上記S6にて「制御可能デバイスフラグ」が返信されない場合、他車両50の自車両10に対する相対位置及び相対速度を再度算出し、衝突情報を再度求める(S14)。再度求められた衝突情報が所定の条件に該当しない場合、衝突可能性が高くないと判断し(S15のNo)、そのまま処理を終了する。その後、他車両情報検出センサ2の次のサンプリング時刻において上記S1の処理が再び開始される。
【0033】
一方、再度求められた衝突情報が所定の条件に該当した場合、衝突可能性が高いと判断し(S15のYes)、その衝突情報に基づいて自車両10と他車両50との衝突パターンを推定する(S16)。続いて、推定した衝突パターンと作動デバイステーブルTとに基づいて、自車両10のデバイス制御のみで最適な衝突被害低減効果が得られるように、自車両10におけるデバイス制御を決定する(S17)。そして、決定したデバイス制御に従って自車両10の衝突対応デバイス3を作動させるよう制御する(S18)。
【0034】
次に、衝突パターンに基づくデバイス制御の実行について、衝突パターンごとに詳細に説明する。
【0035】
1.対向他車両と自車両との正面衝突
(a)自車両及び他車両の衝突対応デバイスが制御可能な場合
自車両10及び他車両50のそれぞれにおいて、ALM、PBA、PSB及びPBを実行する。これは、両車両10,50とも、減速すると互いの衝突被害低減効果が高まるためである。ここでは、正面からの衝突であることからSABによる衝突被害低減効果は低いと考えられるため、SABは未実行としている。また、IHRは、後部からの追突によるむち打ち被害低減に特に効果的なものであるため、未実行としている。
【0036】
(b)自車両の衝突対応デバイスのみが制御可能な場合
自車両10において、ALM、PBA、PSB及びPBを実行する。これは、自車両10の衝突対応デバイス3のみが制御可能な場合でも、減速すると互いの衝突被害低減効果が高まるためである。
【0037】
2.先行する他車両への自車両の追突
(a)自車両及び他車両の衝突対応デバイスが制御可能な場合
自車両10においては、ALM、PBA、PSB及びPBを実行する。自車両10が減速すると、互いの衝突被害低減効果が高まるためである。一方、他車両50においては、ALM及びIHRを実行し、それ以外のデバイス制御は、衝突被害低減効果が低いと考えられるため、未実行とする。
【0038】
(b)自車両の衝突対応デバイスのみが制御可能な場合
自車両10において、ALM、PBA、PSB及びPBを実行する。自車両10の衝突対応デバイス3のみが制御可能な場合でも、減速すると互いの衝突被害低減効果が高まるためである。
【0039】
3−1.出会い頭衝突(自車両の前面と他車両の前面とが衝突するとき)
(a)自車両及び他車両の衝突対応デバイスが制御可能な場合
上記「1.(a)」と同様の理由から、自車両10及び他車両50のそれぞれにおいて、ALM、PBA、PSB及びPBを実行すると共に、SAB及びIHRを未実行とする。
【0040】
(b)自車両の衝突対応デバイスのみが制御可能な場合
自車両10において、ALM、PBA、PSB及びPBを実行する。自車両10の衝突対応デバイス3のみが制御可能な場合でも、減速すると互いの衝突被害低減効果が高まるためである。
【0041】
3−2.出会い頭衝突(自車両の前面と他車両の側面とが衝突するとき)
(a)自車両及び他車両の衝突対応デバイスが制御可能な場合
自車両10においては、ALM、PBA、PSB及びPBを実行する。自車両10が減速すると、互いの衝突被害低減効果が高まるためである。一方、他車両50においては、ALM、PSB及びSABを実行する。他車両50がブレーキをかけると衝突被害が増大する可能性があるため、PBA、PBは未実行とする。また、SABを実行することで、側突に対する衝突被害低減効果を高めることができる。
【0042】
(b)自車両の衝突対応デバイスのみが制御可能な場合
自車両10において、ALM、PBA、PSB及びPBを実行する。自車両10の衝突対応デバイス3のみが制御可能な場合でも、減速すると互いの衝突被害低減効果が高まるためである。
【0043】
3−3.出会い頭衝突(自車両の側面と他車両の前面とが衝突するとき)
(a)自車両及び他車両の衝突対応デバイスが制御可能な場合
自車両10においては、ALM、PSB及びSABを実行する。自車両10がブレーキをかけると衝突被害が増大する可能性があるため、PBA、PBは未実行とする。また、SABを実行することで、側突に対する衝突被害低減効果を高めることができる。一方、他車両50においては、当該他車両50が減速すると互いの衝突被害低減効果が高まるため、ALM、PBA、PSB及びPBを実行する。
【0044】
(b)自車両の衝突対応デバイスのみが制御可能な場合
自車両10において、ALM、PSB及びSABを実行する。自車両10がブレーキをかけると衝突被害が増大する可能性があるため、PBA、PBは未実行とする。また、SABを実行することで、側突に対する衝突被害低減効果を高めることができる。
【0045】
以上において、他車両情報検出センサ2及び衝突パターンを推定するECU5が、衝突形態推定手段を構成する。車車間通信装置4及び制御可能デバイスフラグを送受信するECU5が、情報取得手段を構成する。衝突対応デバイス3を決定するECU5が、デバイス決定手段を構成する。自車両10において決定された衝突対応デバイス3を作動させるよう制御するECU5が、制御手段を構成する。他車両50に対して決定された衝突対応デバイス3を作動させるよう要求するECU5が、要求手段を構成する。
【0046】
以上、本実施形態では、自車両10と他車両50との衝突可能性及び衝突パターン(各車両10,50のどの部位に衝突するか)が推定される。さらに、他車両50に対して、車車間通信及び介入制御が可能か否かを確認するプロセスを経た後、かかるプロセスによって場合分けされる。その上で、推定された衝突パターンに応じて、自車両10及び他車両50のそれぞれでデバイス制御が決定され実行される。これにより、例えば、他車両50の介入制御が可能な場合、要求するデバイス制御の減速度による他車両50の挙動が予測された上で、衝突パターンに応じた減速制御が自車両10で実施されることになる。
【0047】
従って、本実施形態によれば、衝突する各車両10,50のそれぞれにとって最適な衝突被害低減を実現することができ、被害低減効果及び衝突低減効果を向上させることが可能となる。すなわち、本実施形態では、衝突被害低減効果のより高いプリクラッシュセーフティシステムを実現することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上述したように、衝突パターンが出会い頭衝突の場合、側面に衝突される側の自車両10/他車両50でブレーキデバイスが作動されず、側面に衝突する側の他車両50/自車両10でブレーキデバイスが作動される。これは、側面に衝突される自車両10/他車両50が減速すると、衝突被害が増大する可能性がある一方、側面に衝突する他車両50/自車両10が減速すると、衝突被害低減効果が高まるためである。従って、出会い頭衝突における被害低減効果を好適に向上させることができる。
【0049】
ところで、車車間通信が導入されて遍く普及するまでの期間においては、車車間通信ありの車両と車車間通信無しの車両とが混在する状況が想定される。しかし、従来の車両制御装置では、かかる状況が充分に考慮されていない。この点、本実施形態では、上述したように、他車両50が車車間通信可能か否かを確認し、他車両50が自車両10から制御可能か否かを確認している(上記S4,S6)。さらに、他車両50が車車間通信及びデバイス制御が可能か否かに応じて、衝突被害を最小限にするためにデバイス制御をどうすればよいかという場合分けがなされている(上記S10,S17)。従って、本実施形態では、車車間通信ありの車両と車車間通信無しの車両とが混在する状況に好適に適用することが可能となる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0051】
例えば、上記実施形態では、他車両情報検出センサ2としてミリ波レーダを用いたが、レーザセンサやステレオカメラ等を用いてもよい。他車両情報検出センサ2としては、他車両50(障害物)までの距離等が取得できるセンサであれば、あらゆるセンサを用いることができる。
【0052】
また、上記実施形態では、衝突対応デバイス3として、警報デバイス、ブレーキアシストデバイス、ブレーキデバイス、エアバックデバイス、シートベルトデバイス及びヘッドレストデバイスを用いたが、衝突に対応して作動するデバイスであれば、種々のデバイスを衝突対応デバイスとして用いてもよい。
【0053】
また、本発明は、上述したECU5の処理と同様な処理をインフラ側で実行させ、複数の車両の衝突が予測される場合に、これら車両において作動させる衝突対応デバイス3をインフラ側から要求し制御してもよい。また、複数の車両のうちの一の車両を親車両とし、この親車両において上述したECU5の処理と同様な処理を実行させ、複数の車両の衝突が予測される場合に、これら車両において作動させる衝突対応デバイス3を親車両から要求し制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両制御装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の車両制御装置におけるECUの処理を示すフローチャートである。
【図3】図2の続きを示すフローチャートである。
【図4】衝突パターンの一例を示す図である。
【図5】衝突パターンの他の一例を示す図である。
【図6】作動デバイステーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1…車両制御装置(車両制御システム)、2…他車両情報検出センサ(衝突形態推定手段)、3…衝突対応デバイス、4…車車間通信装置(情報取得手段)、5…ECU(衝突形態推定手段,情報取得手段,デバイス決定手段,制御手段,要求手段)、10…自車両(第1の車両)、50…他車両(第2の車両)。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と他車両との衝突が予測される場合に、当該衝突に対応して作動する衝突対応デバイスを制御するための車両制御装置であって、
前記自車両と前記他車両との衝突形態を推定する衝突形態推定手段と、
前記他車両で作動可能な衝突対応デバイスに関する情報を取得する情報取得手段と、
前記衝突形態推定手段で推定した前記衝突形態及び前記情報取得手段で取得した前記情報に応じて、前記自車両で作動させる衝突対応デバイス及び前記他車両で作動させる衝突対応デバイスをそれぞれ決定するデバイス決定手段と、
前記自車両において、前記デバイス決定手段で決定した衝突対応デバイスを作動させるよう制御する制御手段と、
前記他車両に対して、前記デバイス決定手段で決定した衝突対応デバイスを作動させるよう要求する要求手段と、を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記衝突対応デバイスは、ブレーキデバイスを含み、
前記デバイス決定手段は、前記衝突形態が出会い頭衝突の場合に、
前記自車両及び前記他車両のうち側面に衝突される一方の車両で作動させる衝突対応デバイスを前記ブレーキデバイスとして決定せず、
前記自車両及び前記他車両のうち側面に衝突する他方の車両で作動させる衝突対応デバイスを前記ブレーキデバイスとして決定することを特徴とする請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
第1の車両と第2の車両との衝突が予測される場合に、当該衝突に対応して作動する衝突対応デバイスを制御するための車両制御システムであって、
前記第1の車両と前記第2の車両との衝突形態を推定する衝突形態推定手段と、
前記第1の車両で作動可能な衝突対応デバイス及び前記第2の車両で作動可能な衝突対応デバイスに関する情報を取得する情報取得手段と、
前記衝突形態推定手段で推定した前記衝突形態及び前記情報取得手段で取得した前記情報に応じて、前記第1の車両で作動させる衝突対応デバイス及び前記第2の車両で作動させる衝突対応デバイスをそれぞれ決定するデバイス決定手段と、を備えたことを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
前記衝突対応デバイスは、ブレーキデバイスを含み、
前記デバイス決定手段は、前記衝突形態が出会い頭衝突の場合に、
前記第1及び第2の車両のうち側面に衝突される一方の車両で作動させる衝突対応デバイスを前記ブレーキデバイスとして決定せず、
前記第1及び第2の車両のうち側面に衝突する他方の車両で作動させる衝突対応デバイスを前記ブレーキデバイスとして決定することを特徴とする請求項3記載の車両制御システム。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−3237(P2010−3237A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163495(P2008−163495)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】