説明

車両用エンジンの冷却装置

【課題】車両の軽微な衝突時のラジエータの変形を防ぎつつ、ラジエータの冷却性能の向上を図ることができる車両用エンジンの冷却装置を提供すること。
【解決手段】車両前側に排気装置(排気マニホールド6、触媒コンバータ7)を取り付けたエンジン3を車両幅方向の一側に偏った位置に配設し、車両前後方向においてクロスメンバとエンジン3の間に車両幅方向の他側から排気装置の前方に延びるラジエータ8を配設し、該ラジエータ8の車両後側面にファンシュラウド9を取り付ける一方、ラジエータ8の車両幅方向両端部のうち外側端部が内側端部に対して車両後側に位置するよう該ラジエータ8を車両前後方向と直交する方向に対して傾斜させた車両用エンジン3の冷却装置において、ファンシュラウド9にラジエータ8より車両幅方向内側に突出する延長部9Aを形成し、該延長部9Aにラジエータ8の前面部と車両幅方向に並ぶガイド面9aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータの車両後側面に冷却ファンを備えたファンシュラウドを取り付けて成る車両用エンジンの吸気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6に従来の車両用エンジンの一例を示す。
【0003】
即ち、図6は従来の車両用エンジンの平面図であり、図示のエンジン103の前側には排気マニホールド106や触媒コンバータ107等の排気装置が設けられており、該エンジン103の車両前方(図6の下方)には、車両幅方向一側に延びるラジエータ108が配設されている。ここで、車両の軽微な衝突時にラジエータ108が変形しないようにするため、ラジエータ108の車両幅方向両端部のうち外側端部が内側端部に対して車両後側に位置するよう該ラジエータ108を車両前後方向と直交する方向に対して図示の角度θだけ傾斜させて配置している。
【0004】
ところで、特許文献1には、一体的なシュラウドパネルにラジエータの冷却ファン用シュラウドとコンデンサの冷却ファン用シュラウドとを具備し、必要に応じて両シュラウドを構成することができるようにするとともに、コンデンサを装着しないときには、その冷却ファン用の開口のみを遮蔽するようにした熱交換器のファンシュラウドが提案されている。
【0005】
又、特許文献2には、ラジエータの外周の一部とファンシュラウドとの間でコンデンサの表面温度が高い部位の後方に、コンデンサを通過した空気がラジエータを通過することなく冷却ファンに至るバイパス通路を設けることによって、ラジエータを効果的に冷却するエンジンの冷却装置が提案されている。
【特許文献1】実開昭61−020430号公報
【特許文献2】特開平10−054239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示す車両用エンジン103のように、ラジエータ108をエンジン103の排気マニホールド106や触媒コンバータ107等の排気装置に近接して配設する構成を採用した場合、ラジエータ108が排気装置の熱によって加熱され、その冷却性能が低下するという問題があった。
【0007】
又、ラジエータ108を図6に示すように角度θだけ傾斜させて配置した場合、該ラジエータ108を通過する冷却風量が減少し、このことによってもラジエータ108の冷却性能が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、車両の軽微な衝突時のラジエータの変形を防ぎつつ、ラジエータの冷却性能の向上を図ることができる車両用エンジンの冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、平面視で車両幅方向両端部が中央部に対して車両後方に後退するよう湾曲したクロスメンバを車両前部に配設し、車両前側に排気装置を取り付けたエンジンを前記クロスメンバの車両後方且つ車両幅方向の一側に偏った位置に配設し、車両前後方向において前記クロスメンバと前記エンジンの間に車両幅方向の他側から前記排気装置の前方に延びるラジエータを配設し、該ラジエータの車両後側面に冷却ファンを備えたファンシュラウドを取り付ける一方、前記ラジエータの車両幅方向両端部のうち外側端部が内側端部に対して車両後側に位置するよう該ラジエータを車両前後方向と直交する方向に対して傾斜させた車両用エンジンの冷却装置において、
前記ファンシュラウドに前記ラジエータより車両幅方向内側に突出する延長部を形成し、該延長部に前記ラジエータの前面部と車両幅方向に並ぶガイド面を形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記延長部のガイド面を前記ラジエータの車両幅方向側面部に沿う縦壁部を介して前記ファンシュラウドに連結するとともに、該ガイド面と前記縦壁部の間を、略水平方向に延びるとともに鉛直方向に所定間隔を隔てて配設された複数のリブを介して連結したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記延長部に複数の開口部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、ファンシュラウドにラジエータより車両幅方向内側に突出する延長部を形成したため、該延長部でラジエータの排気装置に隣接する部分を熱的に遮蔽することができ、排気装置からラジエータへの熱伝達を防ぐことができる。
【0013】
又、ラジエータを車両前後方向に対して傾斜させた場合には該ラジエータを通過する冷却風量が減少するが、本発明では、ファンシュラウドの延長部にラジエータの前面部と車両幅方向に並ぶガイド面を形成したため、このガイド面で捕捉した冷却風をラジエータに導いて該ラジエータを通過する冷却風量を増加させることができる。
【0014】
更に、延長部のガイド面をラジエータの前面部と車両幅方向に並べる構造としたため、該ガイド面とクロスメンバ間の空間の減少を防ぐことができ、車両の軽微な衝突時にガイド面がクロスメンバと衝突してラジエータを車両後方に移動させるような事態の発生が防がれる。
【0015】
従って、車両の軽微な衝突時のラジエータの変形を防ぎつつ、排気装置からラジエータへの熱伝達を防ぐとともに、ラジエータを通過する冷却風量を増加させることによって該ラジエータの冷却性能の向上を図ることができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、ラジエータの縦壁部を介してファンシュラウドに連結されたガイド面の剛性を複数のリブによって高めることができ、排気装置から受ける熱によるガイド面の変形を防ぐことができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、ファンシュラウドの延長部に複数の開口部を形成することによって、該延長部のガイド面に進入する走行風の一部を開口部を通して排気装置に導き、該排気装置を走行風によって冷却することができるため、排気装置の温度上昇、延いてはラジエータの温度上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係る冷却装置を備えたエンジンを搭載した車両前半部の平面図、図2及び図3は本発明に係る冷却装置を備えた車両用エンジンの平面図、図4は同車両用エンジンの正面図、図5はファンシュラウドの後方斜視図である。
【0020】
図1に示す車両1はワンボックスカーであって、その前部のエンジンルーム2内には、エンジン3とこれに接続された変速機4が横置き状態で配置され、変速機4からは不図示の出力軸が車両幅方向に延びている。
【0021】
ところで、図2に示すように、車両1の前部には、平面視で車両幅方向両端部が中央部に対して車両後方に後退するよう湾曲したクロスメンバ(バンパメンバ)5が配設されており、該クロスメンバ5の車両後方且つ車両幅方向の一側に偏った位置に前記エンジン3が配設されている。ここで、図2及び図3に示すように、エンジン3の前面側には排気マニホールド6やこれに連なる触媒コンバータ7等の排気装置が設けられている。
【0022】
又、車両前後方向において前記クロスメンバ5と前記エンジン3の間には、ラジエータ8が車両幅方向の左側からエンジン3の前記排気装置の前方に延びるよう配設されており、該ラジエータ8の車両後側面には、不図示の冷却ファンを備えたファンシュラウド9が取り付けられている。ここで、図1に示すように、ラジエータ8は、その車両幅方向両端部のうち外側端部(左端部)が内側端部(右端部)に対して車両後側に位置するよう車両前後方向と直交する方向に対して図示の角度θだけ傾斜して配置されている。
【0023】
更に、図1に示すように、前記エンジン3の前方であって、前記ラジエータ8の右側方には遮蔽板10が配設されている。又、図1に示す車両1の前面の車両幅方向中央部にはフロントグリル11が設けられており、このフロントグリル11には、エンジンルーム2内に冷却風(走行風)を導入するための開口部11aが形成されている。尚、図2において、12L,12Rは左右一対のランプサポートメンバであり、又、図3において、13L,13Rは左右一対のランプサポートブラケットであり、これらのランプサポートブラケット13L,13Rの上下部同士は図4に示す水平なアッパメンバ14とロアメンバ15によって互いに連結されている。
【0024】
ところで、前記エンジン3は直列4気筒エンジンであって、図2及び図3に示すように、その上部にはエアクリーナ16が配設され、その左側部にはレゾネータ17が配設されている。そして、エアクリーナ16の前端右側部には、車両幅方向に延びる吸気ダクト18が接続されており、該吸気ダクト18は、その端部が車両斜め前方に向かって開口している。
【0025】
又、エンジン3の後面側には吸気マニホールド19が取り付けられており、該吸気マニホールド19にはスロットルボディ20が接続されている。そして、スロットルボディ20と前記エアクリーナ16とは可撓性を有する吸気ホース21で連結されており、該吸気ホース21から分岐した分岐部21aは前記レゾネータ17に接続されている。
【0026】
他方、前記ラジエータ8は、図4に示すように、熱交換器部分を構成するコア8Aの上下にアッパタンク8Bとロアタンク8Cを取り付けて構成されており、図3に示すように、アッパタンク8Bにはエンジン3から延びる冷却水入口配管22が接続され、ロアタンク8Cから延びる冷却水出口配管23はエンジン3に接続されている。又、図3に示すように、ラジエータ8の車両後方にはサブタンク24が配置されており、このサブタンク24は配管25によってラジエータ8に接続されている。
【0027】
而して、本実施の形態は、図3及び図4に示すように、前記ファンシュラウド9にラジエータ8より車両幅方向内側に突出する延長部9Aが形成し、該延長部9Aに前記ラジエータ8の前面部と車両幅方向に並ぶガイド面9aを形成したことを特徴としている。ここで、延長部9Aのガイド面9aは、ラジエータ8の車両幅方向側面部8aに沿う縦壁部9bを介してファンシュラウド9に連結されるとともに、該ガイド面9aと前記縦壁部9bの間は、図5に示すように、略水平方向に延びるとともに鉛直方向に所定間隔を隔てて配設された複数のリブ9cを介して連結されている。
【0028】
又、図4に示すように、前記延長部9Aには、矩形孔状の複数の開口部9dが上下方向に適当な間隔で形成されている。
【0029】
以上において、本実施の形態では、ファンシュラウド9にラジエータ8より車両幅方向内側に突出する延長部9Aを形成したため、該延長部9Aでラジエータ8の排気装置(排気マニホールド6や触媒コンバータ7)に隣接する部分を熱的に遮蔽することができ、排気装置からラジエータ8への熱伝達を防ぐことができる。
【0030】
又、ラジエータ8を本実施の形態のように車両前後方向に対して傾斜させた場合には該ラジエータ8を通過する冷却風量が減少するが、本実施の形態では、ファンシュラウド9の延長部9Aにラジエータ8の前面部と車両幅方向に並ぶガイド面9aを形成したため、このガイド面9aで捕捉した冷却風を図3に矢印aにて示すようにラジエータ8に導いて該ラジエータ8を通過する冷却風量を増加させることができる。
【0031】
更に、延長部9Aのガイド面9aをラジエータ8の前面部と車両幅方向に並べ、ラジエータ8から車両前方に大幅に突出しない構造としたため、該ガイド面9aとクロスメンバ5間の空間の減少を防ぐことができ、車両1の軽微な衝突時にガイド面9aがクロスメンバ5と衝突してラジエータ8を車両後方に移動させるような事態の発生が防がれる。
【0032】
従って、本実施の形態によれば、車両1の軽微な衝突時のラジエータ8の変形を防ぎつつ、排気装置からラジエータ8への熱伝達を防ぐとともに、ラジエータ8を通過する冷却風量を増加させることによって該ラジエータ8の冷却性能の向上を図ることができる。
【0033】
又、本実施の形態によれば、ラジエータ8の縦壁部8aを介してファンシュラウド9に連結されたガイド面9aの剛性を複数のリブ9cによって高めることができるため、排気装置から受ける熱によるガイド面9aの変形を防ぐことができる。
【0034】
更に、本実施の形態では、図4に示すようにファンシュラウド9の延長部9Aに複数の開口部9dを形成したため、延長部9Aのガイド面9aに進入する走行風の一部を図3に矢印bにて示すように開口部9dを通して排気装置に導き、該排気装置を走行風によって冷却することができる。このため、排気装置の温度上昇、延いてはラジエータ8の温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る冷却装置を備えたエンジンを搭載した車両前半部の平面図である。
【図2】本発明に係る冷却装置を備えた車両用エンジンの平面図である。
【図3】本発明に係る冷却装置を備えた車両用エンジンの平面図である。
【図4】本発明に係る冷却装置を備えた車両用エンジンの正面図である。
【図5】本発明に係る冷却装置を備えた車両用エンジンのファンシュラウドの後方斜視図である。
【図6】従来の車両用エンジンの平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 車両
2 エンジンルーム
3 エンジン
4 変速機
5 クロスメンバ
6 排気マニホールド
7 触媒コンバータ
8 ラジエータ
8A ラジエータのコア
8B ラジエータのアッパタンク
8C ラジエータのロアタンク
8a ラジエータの車両幅方向側面部
9 ファンシュラウド
9A ファンシュラウドの延長部
9a 延長部のガイド面
9b 延長部の縦壁部
9c 延長部のリブ
9d 延長部の開口部
10 遮蔽板
11 フロントグリル
11a フロントグリルの開口部
12L,12R ランプサポートメンバ
13L,13R ランプサポートブラケット
14 アッパメンバ
15 ロアメンバ
16 エアクリーナ
17 レゾネータ
18 吸気ダクト
19 吸気マニホールド
20 スロットルボディ
21 吸気ホース
21a 吸気ホースの分岐部
22 冷却水入口配管
23 冷却水出口配管
24 サブタンク
25 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で車両幅方向両端部が中央部に対して車両後方に後退するよう湾曲したクロスメンバを車両前部に配設し、車両前側に排気装置を取り付けたエンジンを前記クロスメンバの車両後方且つ車両幅方向の一側に偏った位置に配設し、車両前後方向において前記クロスメンバと前記エンジンの間に車両幅方向の他側から前記排気装置の前方に延びるラジエータを配設し、該ラジエータの車両後側側面に冷却ファンを備えたファンシュラウドを取り付ける一方、前記ラジエータの車両幅方向両端部のうち外側端部が内側端部に対して車両後側に位置するよう該ラジエータを車両前後方向と直交する方向に対して傾斜させた車両用エンジンの冷却装置において、
前記ファンシュラウドに前記ラジエータより車両幅方向内側に突出する延長部を形成し、該延長部に前記ラジエータの前面部と車両幅方向に並ぶガイド面を形成したことを特徴とする車両用エンジンの冷却装置。
【請求項2】
前記延長部のガイド面を前記ラジエータの車両幅方向側面部に沿う縦壁部を介して前記ファンシュラウドに連結するとともに、該ガイド面と前記縦壁部の間を、略水平方向に延びるとともに鉛直方向に所定間隔を隔てて配設された複数のリブを介して連結したことを特徴とする請求項1記載の車両用エンジンの冷却装置。
【請求項3】
前記延長部に複数の開口部を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用エンジンの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−61840(P2009−61840A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229733(P2007−229733)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】