説明

車両用ガラス取付構造

【課題】外観品質に優れかつ作業性が良好な車両用ガラス取付構造を提供する。
【解決手段】車両用ガラス取付構造を、車体に固定される第1のガラス10と、第1のガラスと隣接して配置され車体に固定される第2のガラス20と、第1のガラスから突き出して設けられた第1の係合手段11と、第2のガラスから突き出して設けられた第2の係合手段21と、第1のガラスと前記第2のガラスとの境界部付近に設けられ、第1の係合手段と係合する第1の被係合手段111a、及び、第2の係合手段と係合する第2の被係合手段111bが設けられ、一体に成型された車体側部材111とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両において複数の固定ガラスの端部どうしを隣接させて配置する車両用ガラス取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の自動車において、キャビンのルーフの一部をガラスによって構成するとともに、このルーフガラスの前端縁部とフロントウインドウガラス(以下「フロントガラス」と称する)の上端縁部とを突き合わせた状態で配置することが知られている。
例えば、特許文献1には、ほぼ矩形のルーフガラスの外周縁部に沿って、主要部分が閉断面構造とされた矩形枠状のルーフフレームを設けて、このルーフフレームによってルーフガラスを保持する構造が記載されている。
【特許文献1】特開2005−153650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、例えばフロントガラスとルーフガラスのような2枚の固定ガラス(嵌め殺しガラス)を突き合わせた状態で配置する場合、各ガラスの端部の間隔が不均一であると外観品質が低下し、車両の商品価値が損なわれてしまう。
通常フロントガラスは、ルーフフレームの前部を構成するフロントフレームに形成されたガイド孔に係合突起を挿入して取付基準の設定(位置決め)が行われる。また、ルーフガラスは、ルーフフレームの側部を構成するサイドフレームに形成されたガイド孔に係合突起を挿入して取付基準の設定が行われる。しかし、フロントフレームとサイドフレームとをスポット溶接で接合する際に、その接合誤差に起因して各ガイド孔の位置関係にある程度の誤差が発生することは避けられず、通常は作業者がガラスの間隔を一台ずつ調整する必要があった。
本発明の課題は、外観品質に優れかつ作業性が良好な車両用ガラス取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、車体に固定される第1のガラスと、前記第1のガラスと隣接して配置され前記車体に固定される第2のガラスと、前記第1のガラスから突き出して設けられた第1の係合手段と、前記第2のガラスから突き出して設けられた第2の係合手段と、前記第1のガラスと前記第2のガラスとの境界部付近に設けられ、前記第1の係合手段と係合する第1の被係合手段、及び、前記第2の係合手段と係合する第2の被係合手段が設けられ、一体に形成された車体側部材とを備える車両用ガラス取付構造である。
ここで、係合手段は、典型的にはガラスの裏面に固定された突起であり、被係合手段は、典型的には車体側部材に形成されたガイド孔である。
【0005】
請求項2の発明は、前記第1のガラスがフロントガラスであり、前記第2のガラスが前記フロントガラスの上端部付近から後方へ延びたルーフガラスであり、前記ルーフガラスは、前端部にほぼ沿って配置されたフロントフレーム及び側端部にほぼ沿って配置されたサイドフレームによって支持され、前記車体側部材は両端部が前記ルーフガラスの側端部側へ回りこんで形成された前記フロントフレームであって、車体のAピラー又はルーフサイド部の構造部材に固定されるとともに、前記フロントフレームの側端部及び前記サイドフレームの前端部にそれぞれ接続された補剛部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用ガラス取付構造である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)第1のガラスの第1の係合手段、及び、第2のガラスの第2の係合手段を、ともに一体に形成された車体側部材に設けられた被係合手段に係合させることによって、例えばスポット溶接等の車体組立時の接合誤差によって各ガラスの間隔が影響を受けることがないため、外観品質を向上するとともに、煩雑な位置の調整作業を簡素化して作業性を向上することができる。
(2)フロントガラス及びルーフガラスの位置決めをともにルーフガラスの全幅にわたって設けられるフロントフレームで行い、Aピラー又はルーフサイドの構造部材からフロントフレーム及びサイドフレームにわたして設けられた補剛部材を設けることによって、フロントフレームとサイドフレームとの接合部の強度を向上し、これらの接合部をルーフフレームの側端部に設けた場合であっても車両の側面衝突性能に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、外観品質に優れかつ作業性が良好な車両用ガラス取付構造を提供する課題を、ルーフフレームにおけるフロントフレームをルーフガラスの側部まで回りこませ、このフロントフレームにフロントガラス用及びルーフガラス用のガイド孔をともに形成することによって解決した。
【実施例】
【0008】
以下、本発明を適用した車両用ガラス取付構造の実施例について説明する。
実施例において、車両は、例えば乗用車等の自動車であって、本発明の車両用ガラス取付構造は、突き合わせ配置されたフロントガラス及びルーフガラスに用いられている。
図1は、実施例の車両の模式的分解斜視図である。
図2は、ルーフガラスフレームの前端部左側(図1におけるII部)の要部拡大平面図である。
図3は、ルーフガラスフレームの分解図である。
図4は、図2のIV−IV部矢視断面図である。
図5は、図2のV−V部矢視断面図である。
図6は、図2のVI−VI部矢視断面図である。
図7は、図2のVII−VII部矢視断面図である。
なお、図4から図7においては、図2においては図示しないルーフガラスフレーム以外の構成要素も二点鎖線によって図示している。
【0009】
車両1は、フロントガラス(ウインドシールド)10、ルーフガラス20、Aピラー30、ルーフサイド40、ルーフガラスフレーム100、ルーフトリム210、カーテンエアバッグ220等を備えて構成されている。
【0010】
フロントガラス10は、車室前方に設けられたほぼ矩形状の曲面ガラスである。フロントガラス10は、上端部が下端部よりも車両後方側となるように傾斜して配置されている。フロントガラス10の下端部は、エンジンフード後部に設けられたカウル部と隣接して配置されている。また、フロントガラス10の上端部は、ルーフガラス20の前端部と隣接して配置されている。フロントガラス10は、本発明にいう第1のガラスである。
また、フロントガラス10の上端部における左右側端部には、係合突起11が設けられている(図4参照)。係合突起11は、例えば樹脂製の別部材をフロントガラス10に接着したものであり、フロントガラス10から車室内側へ突き出している。係合突起11は、本発明にいう第1の係合手段として機能する。
【0011】
ルーフガラス20は、車室のルーフパネルの前半部分を構成するほぼ矩形状の曲面ガラスである。ルーフガラス20は、ほぼ水平に配置されている。ルーフガラス20の前端縁部は、フロントガラス10の上端縁部と突き合わせた状態で配置されている。すなわち、フロントガラス10の上端縁部とルーフガラス20の前端縁部とは、ほぼ一定かつ微小な間隔を隔てて隣接して配置され、これらの間には例えばゴム製のウェザーストリップWSが設けられている(図4、図5参照)。ルーフガラス20は、本発明にいう第2のガラスである。
また、ルーフガラス20の前端部における左右側端部には、係合突起21が設けられている(図5参照)。係合突起21は、例えば樹脂製の別部材をルーフガラス20に接着したものであり、ルーフガラス20から車室内側へ突き出している。係合突起21は、本発明にいう第2の係合手段として機能する。
【0012】
Aピラー30は、フロントガラス10の左右側端部にほぼ沿って配置された柱状の車体構造部材である。Aピラー30は、アウタパネル31、インナパネル32(図6、7参照)等を備えて構成されている。
アウタパネル31は、車両外板を構成する部分である。
インナパネル32は、アウタパネル31の内側に配置された構造部材である。インナパネル32は、その後端部がルーフサイド40の前端部側まで延長して形成され、この部分はルーフサイド40のアウタパネル41の内側に配置されている。
【0013】
ルーフサイド40は、ルーフガラス20の左右側端部にほぼ沿って配置された車体構造部材であって、ドア開口の上部を構成する部分でもある。ルーフサイド40は、アウタパネル41、サイドレール42、リンホースメント43等を備えて構成されている(図7参照)。
アウタパネル41は、車両外板を構成する部分である。
サイドレール42は、アウタパネル41の内側に配置された構造部材であって、図7に示すように、アウタパネル41とともに閉断面を形成する。
リンホースメント43は、ルーフサイド40の補剛のため、図7に示すようにアウタパネル41とサイドレール42との間に挟みこまれるパネル状の部材である。
【0014】
ルーフガラスフレーム100は、ルーフガラス20の外周縁部を支持する枠状の構造部材である。ルーフガラスフレーム100は、ルーフガラス20の形状に対応して、上方から見た平面形がほぼ矩形状に形成されている。
図2に示すように、ルーフガラスフレーム100は、フロントフレーム110、サイドフレーム120、及び、図2においては図示しないリアフレーム等を備えて構成されている。
さらに、ルーフガラスフレーム100には、エクステンション130が設けられている。
【0015】
フロントフレーム110は、ルーフガラスフレーム100の前端部を構成し、ルーフガラス20の前端部に沿いかつその全幅にわたって配置されている。また、フロントフレーム110の左右両側端部は、一部がルーフガラス20の側端部側に回りこんで形成されている。
フロントフレーム110は、アッパパネル111及びロワパネル(フロントレール)112(図6参照)等によって構成されている。
アッパパネル111は、フロントフレーム110の上面部を構成するパネルであって、例えば鋼板をプレス成型することによって一体に形成されている。
ルーフガラス20の前端部は、図5に示すように、シールS及びダムラバーDを介して、アッパパネル111の上面部に載せられ支持される。
ロワパネル112は、フロントフレーム110の下面部を構成するパネルである。フロントフレーム110の中央部付近及び両端部(図6参照)付近においては、ロワパネル112はアッパパネル111とともに閉断面を形成する。
【0016】
また、アッパパネル111には、ガイド孔111a、及び、ガイド孔111bが形成され、本発明にいう車体側部材として機能する。
図2及び図4に示すガイド孔111aは、フロントガラス10の係合突起11が挿入されることによって、フロントガラス10の取付基準を設定するものである。ガイド孔111aは、本発明にいう第1の被係合手段として機能する。ガイド孔111aは、アッパパネル111の前端縁部における左右両端部から前方へ突き出したタブ部に形成された貫通孔である。左右のガイド孔111aは、一方(例えば図示しない右側のガイド孔111a)が真円に形成され、他方(例えば図2等に図示した左側のガイド孔111a)が車幅方向にほぼ沿って延びた長孔として形成され、車幅方向の寸法公差を吸収可能となっている。
【0017】
図2及び図5に示すガイド孔111bは、ルーフガラス20の係合突起21が挿入されることによって、ルーフガラス20の取付基準を設定するものである。ガイド孔111bは、本発明にいう第2の被係合手段として機能する。ガイド孔111bは、アッパパネル111の左右側端部がルーフガラス20の側端部側へ回りこむコーナ部であって、アッパパネル111の幅方向におけるほぼ中央部に形成されている。左右のガイド孔111bは、一方(例えば図示しない右側のガイド孔111b)が真円に形成され、他方(例えば図2等に図示した左側のガイド孔111b)が車幅方向にほぼ沿って延びた長孔として形成され、車幅方向の寸法公差を吸収可能となっている。
【0018】
サイドフレーム120は、ルーフガラスフレーム100の側端部を構成し、ルーフガラス20の側端部に沿いかつその全長にわたって配置されている。
サイドフレーム120は、アッパパネル121及びロワパネル122(図6、図7参照)等によって構成されている。
アッパパネル121は、サイドフレーム120の上面部を構成するパネルである。アッパパネル121の前端部は、図5に示すように、フロントフレーム110のアッパパネル111の上面部に重ねられ、スポット溶接等によって接合される。
ルーフガラス20の側端部は、図6等に示すように、シールS及びダムラバーDを介して、アッパパネル121の上面部に載せられ支持される。
ロワパネル122は、サイドフレーム120の下面部を構成するパネルである。図7に示すように、アッパパネル121とロワパネル122とは、車幅方向における両端部がスポット溶接等で接合されることによって閉断面を形成する。このスポット溶接によってサイドフレーム120の車幅方向外側に形成されるフランジ部は、ルーフサイド40から車幅方向内側に突き出したフランジ部に載せられた状態で支持され固定されている。
【0019】
エクステンション130は、フロントフレーム110及びサイドフレーム120の接合部に設けられる板金パネル製の補剛部材である。
エクステンション130は、車幅方向外側の端部がAピラー30のインナパネル32に固定され、ここから車幅方向内側へ突き出して配置されている。
エクステンション130は、図5等に示すように、前端部がフロントフレーム110におけるアッパパネル111の前端部とスポット溶接等によって接合されている。また、エクステンション130の後端部は、サイドフレーム120のロワパネル122の前端部とスポット溶接等によって接合されている。
【0020】
ルーフトリム210は、装飾及び乗員保護のため設けられる内装部材であって、ルーフガラスフレーム100の周縁部にほぼ沿って設けられ、例えば樹脂製の基材表面に起毛等の表面処理を施して形成されている。
カーテンエアバッグ220は、車両の側面衝突時にドアガラスに沿って膨張展開し、乗員を拘束するものであって、ルーフサイド40とルーフトリム210との間に収容されている。
【0021】
以上説明した実施例によると、以下の効果を得ることができる。
(1)フロントガラス10の係合突起11、及び、ルーフガラス20の係合突起21を、ともに一体もののアッパパネル111に設けられたガイド孔111a,111bにそれぞれ係合させて各ガラスの取付基準を設定することによって、例えばスポット溶接等の車体組立時の接合誤差によってフロントガラス10とルーフガラス20の間隔が影響を受けることがないため、外観品質を向上するとともに、煩雑な位置の調整作業を簡素化して作業性を向上することができる。
(2)Aピラー30のインナパネル32からフロントフレーム110及びサイドフレーム120にわたして設けられたエクステンション130を設けることによって、フロントフレーム110とサイドフレーム120との接合部の強度を向上し、これらの接合部をルーフフレーム100の側端部に設けた場合であっても、車両の側面衝突性能に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0022】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)上述した実施例は、例えば、フロントガラスとルーフガラスとを取り付けるものであるが、本発明はこれに限らず、車両に設けられ端部が突き合わせ状態で配置される複数の固定ガラスであれば他の箇所であっても適用することができる。
(2)各部材の形状、構造、材質、パネル構成等は適宜変更することができる。例えば、実施例ではフロントフレームで各ガラスの位置決めを行っているが、各ガラスの位置決めを前方側に延伸されたサイドフレーム側で行っても良い。また、位置決めのための係合手段及び被係合手段も、実施例のような係合突起とガイド孔に限らず、適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した車両用ガラス取付構造の実施例を備える車両の模式的分解斜視図である。
【図2】図1の車両のルーフフレームの要部拡大平面図である。
【図3】図2のルーフフレームの分解図である。
【図4】図2のIV−IV部矢視断面図である。
【図5】図2のV−V部矢視断面図である。
【図6】図2のVI−VI部矢視断面図である。
【図7】図2のVII−VII部矢視断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 車両 10 フロントガラス
11 係合突起 20 ルーフガラス
21 係合突起 30 Aピラー
31 アウタパネル 32 インナパネル
40 ルーフサイド 41 アウタパネル
42 サイドレール 43 リンホースメント
100 ルーフガラスフレーム
110 フロントフレーム 111 アッパパネル
111a ガイド孔 111b ガイド穴
112 ロワパネル 120 サイドフレーム
121 アッパパネル 122 ロワパネル
130 エクステンション WS ウェザーストリップ
S シール D ダムラバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定される第1のガラスと、
前記第1のガラスと隣接して配置され前記車体に固定される第2のガラスと、
前記第1のガラスから突き出して設けられた第1の係合手段と、
前記第2のガラスから突き出して設けられた第2の係合手段と、
前記第1のガラスと前記第2のガラスとの境界部付近に設けられ、前記第1の係合手段と係合する第1の被係合手段、及び、前記第2の係合手段と係合する第2の被係合手段が設けられ、一体に形成された車体側部材と
を備える車両用ガラス取付構造。
【請求項2】
前記第1のガラスがフロントガラスであり、
前記第2のガラスが前記フロントガラスの上端部付近から後方へ延びたルーフガラスであり、
前記ルーフガラスは、前端部にほぼ沿って配置されたフロントフレーム及び側端部にほぼ沿って配置されたサイドフレームによって支持され、
前記車体側部材は両端部が前記ルーフガラスの側端部側へ回りこんで形成された前記フロントフレームであって、
車体のAピラー又はルーフサイド部の構造部材に固定されるとともに、前記フロントフレームの側端部及び前記サイドフレームの前端部にそれぞれ接続された補剛部材を備えること
を特徴とする請求項1に記載の車両用ガラス取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−234408(P2009−234408A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82580(P2008−82580)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】