説明

車両用サブフレーム構造

【課題】例えば蓄電装置を車体フロア下方に搭載する車両において、排気管の配置の邪魔にならず、地上高も低く抑えつつ、強度・剛性が確保でき、さらに蓄電装置を効率的に冷却することができる車両用サブフレーム構造を提供する。
【解決手段】左右一対の縦フレーム35が車体前後方向に延設され、縦フレーム35を互いに連結する横フレーム37が形成された車両用サブフレーム16の構造において、縦フレーム35と横フレーム37とが炭素繊維強化樹脂により成形され、横フレーム37下面に凹部43を形成し、凹部43内を排気管の挿通空間とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、燃料電池などの車両において、車体フレームとは別に該車体フレームに取り付けられる車両用サブフレーム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンを車体フロア下方に搭載する車体構造において、エンジンを冷却するために車両前部からエンジンの前部に亘り、走行風を取り込むことが可能な中空形状で左右一対のサスペンションフレームを配設したものがある。この構造では、サスペンションフレームの剛性を確保するために左右のサスペンションフレームを連結する強度部材が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−25983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述の強度部材は、車体構造の強度・剛性を保つために、左右一対のサスペンションフレームを連結する直線形状のものが望ましい。しかしながら、このように構成すると、車体フロア下方で、車体前後に延設するように配置される排気管と強度部材とが干渉してしまうという問題がある。一方、この排気管を強度部材と干渉しないように強度部材の下方に位置させると地上高が高くなるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、例えば蓄電装置を車体フロア下方に搭載する車両において、排気管の配置の邪魔にならず、地上高も低く抑えつつ、強度・剛性が確保でき、さらに蓄電装置を効率的に冷却することができる車両用サブフレーム構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、左右一対の縦フレーム(例えば、実施形態における縦フレーム35)が車体前後方向に延設され、前記縦フレームを互いに連結する横フレーム(例えば、実施形態における横フレーム37)が形成された車両用サブフレーム(例えば、実施形態における第一リヤサブフレーム16)構造において、前記縦フレームと前記横フレームとが炭素繊維強化樹脂により成形され、前記横フレーム下面に凹部(例えば、実施形態における凹部43)を形成し、該凹部内を排気管の挿通空間(例えば、実施形態における挿通空間E)としたことを特徴とする。
このように構成することで、排気管を凹部内に配置することが可能となる。また、炭素繊維強化樹脂の繊維方向を調整して凹部の強度・剛性を向上することができる。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記横フレームの上面に蓄電装置(例えば、実施形態におけるバッテリ18)が載置され、前記横フレームの上面であって、前記蓄電装置が搭載される領域に対応した位置に吸入口(例えば、実施形態における吸入口39)が形成され、前記横フレームの表面に、前記蓄電装置の高温雰囲気を外部に排出する排出口(例えば、実施形態における排出口41)が形成され、前記吸入口と前記排出口とが、前記横フレームの内部に形成された排気通路(例えば、実施形態における排気通路45)を介して連通されていることを特徴とする。
このように構成することで、吸入口、排出口および排気通路を大きく形成することができる。また、排気通路を炭素繊維強化樹脂からなる横フレーム製造時に、同時に形成することができる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、排気管を凹部内に配置することが可能となるため、地上高を低く抑えることができる。また、炭素繊維強化樹脂の繊維方向を調整して凹部の強度・剛性を向上することができるため、凹部の折曲部の角度を小さく設定し、凹部面積を大きくしても強度・剛性を維持することができ、かつ軽金属よりも軽量化することができる効果がある。
【0008】
請求項2に記載した発明によれば、上記効果に加えて、吸入口、排出口および排気通路を大きく形成することができるため、蓄電装置の冷却効率を向上することができる。また、排気通路を炭素繊維強化樹脂からなる横フレーム製造時に、同時に形成することができるため、生産効率を向上することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る車両用サブフレーム構造を燃料電池自動車に採用した場合の説明を行う。
なお、本実施形態における各装置の取付方向や位置を示す定義は、車両進行方向を前方とし、車両進行方向に向かって右方向及び左方向を定義するものとする。
燃料電池自動車は、水素と酸素との電気化学反応によって発電を行う燃料電池スタックを車体のフロア下に搭載するもので、燃料電池により生じた電力で駆動モータを駆動して走行する。燃料電池は、単位電池(単位燃料電池)を多数積層してなる周知の固体高分子膜型燃料電池(PEMFC)であり、そのアノード側に燃料ガスとして水素ガスを供給し、カソード側に酸化剤ガスとして酸素を含む空気を供給することで、電気化学反応により電力を生成すると共に水を生成する。
【0010】
図1、図2に示すように、燃料電池自動車には車体前部から車体後部に亘りフロアパネル1の下方に車体骨格部材を形成する左右一対のサイドフレーム2が設けられている。左右のサイドフレーム2の外側壁3にはアウトリガー4を介してサイドシル5が接合されている。サイドシル5の後端部はイクステンション6を介してサイドフレーム2の後部に合流するように接続されている。
また、サイドフレーム2には車幅方向に車体骨格部材であるクロスメンバ7,8,9が接続されている。
【0011】
車体前部のモータルーム10にはフロントサブフレーム11が設けられ、ここに燃料電池スタック12に空気を供給するコンプレッサ13と、走行用の駆動モータ14とからなるポンプモータユニット15が配置されている。
車体後部には前側の第一リヤサブフレーム16と後側の第二リヤサブフレーム17とが設けられている。第一リヤサブフレーム16にはバッテリ18が配置されており、第二リヤサブフレーム17には燃料電池スタック12の燃料である水素を貯留する水素タンク19が配置されている。本実施形態において、第一リヤサブフレーム16は炭素繊維強化樹脂(Carbon Fiber Reinforced Plastics、以下CFRPと呼ぶ。)で構成されている。
【0012】
このように構成されたサイドフレーム2上であって、サイドシル5,5間に亘る部位にフロアパネル1が接合されている。フロアパネル1の前端部は前側に立ち上がりダッシュロア1aへと連なり、フロアパネル1の後端部は第二リヤサブフレーム17の水素タンク19上部を覆う位置まで延出している。
【0013】
フロアパネル1にはダッシュロア1aの下端部から車体後部に向かう左右のフロントシート20、リヤシート21間に、上方に膨出するフロアトンネル22が形成されている。このフロアトンネル22には左右のフロントシート20,20間に車体前後方向に延出し更に上方に膨出するセンターコンソール23が形成されている。そして、フロアトンネル22の下方にはサブフレーム40が取り付けられ、燃料電池スタック12、補機類25およびコンタクタボックス26などがサブフレーム40上で、センターコンソール23内、つまり車室外側であるフロアパネル1下に配置されている。このように構成することによって、燃料電池を乗員の居住空間とフロアパネル1(センターコンソール23)によって隔絶することができる。
【0014】
図3に示すように、第一リヤサブフレーム16上にバッテリ18が配置されている。第一リヤサブフレーム16の左右の縦フレーム35の前端部は、左右のサイドフレーム2,2間に設けられた前リヤサブクロスフレーム31にボルト36aなどにより接合され、第一リヤサブフレーム16の左右の縦フレーム35の後端部は、同じく左右のサイドフレーム2,2間に設けられた後リヤサブクロスフレーム32にボルト36aなどにより接合されている。図3では、図示の関係上、前リヤサブクロスフレーム31および後リヤサブクロスフレーム32の左右両端部のみ図示し、その途中を省略している。また、サイドフレーム2、前リヤサブクロスフレーム31および後リヤサブクロスフレーム32の上面には、図示しないリヤフロアが配置される。
【0015】
図4に示すように、第一リヤサブフレーム16は、車体の前後方向に左右の縦フレーム35が延設されており、縦フレーム35の前後方向略中間部に、左右の縦フレーム35,35を連接する横フレーム37が設けられている。縦フレーム35の四隅には、前リヤサブクロスフレーム31および後リヤサブクロスフレーム32への車体取付孔36が形成されている。また、横フレーム37の上面略中央部には、吸入口39が略矩形状に形成されており、上面略右端部には、排出口41が略矩形状に形成されている。ここで縦フレーム35と横フレーム37とはそれぞれの部品を接着により接合してもよいし、一体成形してもよい。
【0016】
図5に示すように、横フレーム37の下面略左端部には、凹部43が形成されている。凹部43内は、排気管の挿入空間Eとして形成され、この凹部43内に排気管などが車体の前後方向に延設される。このとき、排気管などの下面と地上面との間には地上高Hが確保されている。
図6に示すように、横フレーム37の内部には、吸入口39と排出口41とを連通するように排気通路45が形成されている。吸入口39の直上に設置されるバッテリ18の熱を吸入口39から取り込み、排気通路45を経て排出口41から排出できるように構成されている。
【0017】
図7に示すように、バッテリ18の上部にはカバー47が取り付けられる。カバー47には、前方からの走行風をバッテリ18内へ取り込みやすくするための、風取込口49が形成されている。風取込口49は、カバー47の前縁であって、バッテリ18の左右方向の略全幅に渡って形成されており、カバー47の上面に対して30〜60°程度の角度で立ち上がった形状で構成されている。風取込口49より取り込まれた走行風は、バッテリ18の内部および周縁部に取り込まれ、バッテリ18を冷却した後に、バッテリ18の下部で横フレーム37上面に形成された吸入口39へと導かれる。
【0018】
本実施形態において、第一リヤサブフレーム16はCFRPで形成されている。CFRPは繊維方向を調整することで強度・剛性を向上することができるため、凹部43を形成することで低下した強度・剛性を確保して、全体としての強度・剛性を向上させている。つまり、凹部43の隅部の角度Rを小さくし(図5参照)、凹部43の面積を大きくしても強度・剛性を維持できるようにした。このように構成することで、凹部43において図示しない排気管を拡径することや、凹部43にその他の配管を通すことができるため、車高を低く抑えることができる。また、CFRPは軽金属よりも軽量であるため、車体の軽量化を図ることができ、燃費を向上することができる。
【0019】
また、バッテリ18は使用時に高熱になるため、熱を放出する必要があるが、本実施形態において、バッテリ18の熱を外部に排気する排気通路45を第一リヤサブフレーム16の横フレーム37に形成した。また、第一リヤサブフレーム16はCFRPで構成されているため、繊維方向を調整し、強度・剛性を確保しつつ吸入口39、排出口41および排気通路45を大きく形成した。このように構成することで、冷却効率を向上することができる。また、排気通路45は、横フレーム37内に形成されるが、CFRPで構成されているため、押出成形時に排気通路45を確保しておけば容易に形成することができる。つまり、排気ダクトを別途製作して設置する必要がなく、生産効率が向上するとともに、省スペース化を図ることができる。
【0020】
尚、この発明は上述した実施形態に限られるものではなく、以下の態様を採用してもよい。
上記実施形態では、第一リヤサブフレームと第二リヤサブフレームとを分割して設置したが、第一リヤサブフレームと第二リヤサブフレームとを一体化してもよい。
上記実施形態では、第一リヤサブフレームにバッテリを設置した場合の説明をしたが、バッテリに限らず、冷却を必要とする動力エネルギー源を設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態における車両の側面説明図である。
【図2】本発明の実施形態における車両の平面説明図である。
【図3】本発明の実施形態における第一リヤサブフレームの取付斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における第一リヤサブフレームの平面図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図7】本発明の実施形態におけるバッテリとカバーの斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
16…第一リヤサブフレーム(サブフレーム) 18…バッテリ(蓄電装置) 35…縦フレーム 37…横フレーム 39…吸入口 41…排出口 43…凹部 45…排気通路 E…挿通空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の縦フレームが車体前後方向に延設され、
前記縦フレームを互いに連結する横フレームが形成された車両用サブフレーム構造において、
前記縦フレームと前記横フレームとが炭素繊維強化樹脂により成形され、
前記横フレーム下面に凹部を形成し、該凹部内を排気管の挿通空間としたことを特徴とする車両用サブフレーム構造。
【請求項2】
前記横フレームの上面に蓄電装置が載置され、
前記横フレームの上面であって、前記蓄電装置が搭載される領域に対応した位置に吸入口が形成され、
前記横フレームの表面に、前記蓄電装置の高温雰囲気を外部に排出する排出口が形成され、
前記吸入口と前記排出口とが、前記横フレームの内部に形成された排気通路を介して連通されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用サブフレーム構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−94145(P2008−94145A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275049(P2006−275049)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】