車両用ドア開閉システム
【課題】複数のモータを用いて容易かつ確実に開閉制御を行うことができる車両用ドア開閉システムを提供すること。
【解決手段】各々のドア開閉装置11(11′)が、ストライカ(係合部材)12にハーフラッチ状態またはフルラッチ状態になるように係合されるラッチ13を備えたラッチ機構14と、ラッチ機構14を駆動するモータ16a(16a′)と、ラッチ状態を検出するラッチ状態検出手段21(21′)とを有する、複数のドア開閉装置11,11′と、車両ドアを全開状態から全閉状態にする場合に、全てのラッチ状態検出手段21(21′)がハーフラッチ状態となったことを検出したときに、全てのモータ16a(16a′)を同期的に駆動開始し、ラッチ機構14がハーフラッチ状態からフルラッチ状態になるように駆動する制御手段4とを備えている。
【解決手段】各々のドア開閉装置11(11′)が、ストライカ(係合部材)12にハーフラッチ状態またはフルラッチ状態になるように係合されるラッチ13を備えたラッチ機構14と、ラッチ機構14を駆動するモータ16a(16a′)と、ラッチ状態を検出するラッチ状態検出手段21(21′)とを有する、複数のドア開閉装置11,11′と、車両ドアを全開状態から全閉状態にする場合に、全てのラッチ状態検出手段21(21′)がハーフラッチ状態となったことを検出したときに、全てのモータ16a(16a′)を同期的に駆動開始し、ラッチ機構14がハーフラッチ状態からフルラッチ状態になるように駆動する制御手段4とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア開閉システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワゴン車やミニバン等の車両1においては、図16(A)に示すように跳ね上げ式のバックドア2を備えたものや、図16(B)に示すように跳ね上げ式のバックドア(上ドア)2と跳ね下げ式の下ドア3で構成されるバックドアを備えたものがある。
【0003】
図16(B)に示す車両1においては、上ドア2は、下ドア3が閉状態の時に開閉することができ、下ドア3は、上ドア2が開状態の時に開閉することができ、また、下ドア3を開ける時は、上ドア2が開状態の時に、図17に示すように、閉状態にある下ドア3の解除レバー5を操作することにより両側部のロック機構4のロック解除を行った後手動で開け、下ドア3を閉じる時は、手動で下ドア3を閉じ押し込むことによりロック機構4をロックさせている。
【0004】
上述したバックドアの開閉は、いずれも手動で行っているが、車両のバックドアのロック機構を単一のモータの駆動制御によりロック/ロック解除するモータによるドア開閉方法も知られている(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−250163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の手動によるドア開閉方法では、解除レバーを操作する力と、下ドアを押し込んでロック機構をロックさせる力が必要であり、ユーザーへの加重負担があった。また、ドアの押し込みが不十分な状況においてロックが完全でないにもかかわらず、そのことがユーザーには判りづらい状態が発生していた。また、手動による開閉方法ゆえに高級感に欠けていた。
【0006】
また、上述のモータによるドア開閉方法は、単一のモータによる制御であり、ドアの大型化に対応するために、モータを複数にすると、ドアの開閉がスムーズに動かなかったり、バラバラに聞こえるモータ駆動音による品質低下等の問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上述の課題に鑑み、複数のモータを用いて容易かつ確実に開閉制御を行うことができる車両用ドア開閉システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、車両ドアが全閉状態または全開状態になるように開閉制御する車両用ドア開閉システムにおいて、車両ドアまたは車両ボディに設けられた複数のドア開閉装置であって、各々のドア開閉装置が、車両ボディまたは車両ドアに設けられた係合部材にハーフラッチ状態またはフルラッチ状態になるように係合されるラッチ機構と、該ラッチ機構を駆動するモータと、前記ラッチ機構のラッチ状態を検出するラッチ状態検出手段とを有する、複数のドア開閉装置と、前記車両ドアを全開状態から全閉状態にする場合に、前記複数のドア開閉装置の全てのラッチ状態検出手段がハーフラッチ状態となったことを検出したときに、前記複数のドア開閉装置の全てのモータを同期的に駆動開始し、前記ラッチ機構が前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態になるように駆動する制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明においては、車両用ドア開閉システムは、車両ドアまたは車両ボディに取り付けられた複数のドア開閉装置と、複数のドア開閉装置を制御する制御手段とを備えている。各ドア開閉装置は、車両ボディまたは車両ドアに設けられた係合部材にハーフラッチ状態またはフルラッチ状態になるように係合されるラッチを備えたラッチ機構と、該ラッチ機構を駆動するモータと、ラッチ機構のラッチ状態を検出するラッチ状態検出手段とを有する。制御手段は、車両ドアを全開状態から全閉状態にする場合に、複数のドア開閉装置の全てのラッチ状態検出手段がハーフラッチ状態となったことを検出したときに、複数のドア開閉装置の全てのモータを、ラッチ機構がハーフラッチ状態からフルラッチ状態になるように同期的に駆動開始させる。それにより、車両ドアの開閉を複数のモータを用いて容易かつ確実に開閉制御を行うことができ、ユーザへの荷重負荷が軽減されると共に、ドアの半嵌合(いわゆる、半ドア)をなくすことができる。また、車両ドアの全開状態から全閉状態への制御時、複数のドア開閉装置の全てがハーフラッチ状態になるまで、全閉動作を開始しないので、片半ドア時の原因でもあるユーザの挟まれを防いで人体の安全を確保することができる。また、複数のモータを同期的に駆動制御しているので、単一モータを制御しているかのようなスムーズ感を実現し、違和感を与えることがない。また、複数のモータを必ず同時に駆動制御しているので、モータ作動音のズレ、長時間化を防ぎ、静寂化が可能になる。
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用ドア開閉システムにおいて、前記車両ドアを全閉状態から全開状態にする場合に前記制御手段に開指示信号を出力する開指示信号出力手段をさらに備え、前記制御手段は、さらに、前記開指示信号出力手段からの前記開指示信号の入力に応じて、前記複数のドア開閉装置の全てのモータを同期的に駆動開始し、前記ラッチ機構が前記フルラッチ状態から前記ハーフラッチ状態になるように駆動することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明においては、車両用ドア開閉システムは、車両ドアを全閉状態から全開状態にする場合に制御手段に開指示信号を出力する開指示信号出力手段をさらに備えている、制御手段は、さらに、開指示信号出力手段からの開指示信号の入力に応じて、複数のドア開閉装置の全てのモータを、ラッチ機構がフルラッチ状態からハーフラッチ状態になるように同期的に駆動開始させる。それにより、車両ドアを全閉状態から全開状態にする場合も、複数のモータを必ず同時に駆動制御しているので、モータ作動音のズレ、長時間化を防ぎ、静寂化が可能になり、高品質の車両用ドア開閉システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、車両ドアの開閉を複数のモータを用いて容易かつ確実に開閉制御を行うことができ、ユーザへの荷重負荷が軽減されると共に、ドアの半嵌合(いわゆる、半ドア)をなくすことができ、操作性、利便性が向上する。また、車両ドアの全開状態から全閉状態への制御時、複数のドア開閉装置の全てがハーフラッチ状態になるまで、全閉動作を開始しないので、片半ドア時の原因でもあるユーザの挟まれを防いで人体の安全を確保し、異物挟み込みによる車両故障や変形を防ぐことが可能になる。また、車両ドアの複数箇所に配置された複数のモータを同期的に駆動制御しているので、単一モータを制御しているかのようなスムーズ感を実現し、違和感を与えることがなく、高品質化を実現することができる。また、複数のモータを必ず同時に駆動制御しているので、モータ作動音のズレ、長時間化を防ぎ、静寂化が可能になり、高品質の車両用ドア開閉システムを提供することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、車両ドアを全閉状態から全開状態にする場合も、複数のモータを必ず同時に駆動制御しているので、モータ作動音のズレ、長時間化を防ぎ、静寂化が可能になり、高品質の車両用ドア開閉システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本発明の実施の形態に係る車両用ドア開閉システムは、たとえば図1に示すように、車両1の跳ね上げ式の上ドアと跳ね下げ式の下ドアで構成されるバックドアにおける下ドア3の開閉制御に用いられる。すなわち、本発明の車両用ドア開閉システムは、下ドア3の両側部の内部にそれぞれ配置された2つのドア開閉装置11,11′と、下ドア3の先端部に配置されたハンドルスイッチ釦30aとを備えている。
【0016】
下ドア3は、ユーザ等による手動と、ハンドルスイッチ釦30aの操作による2つのドア開閉装置11、11′の自動開閉制御とによって開閉される。なお、上ドアは、下ドア3が後述する全閉位置(フルラッチ状態)にある場合に、上ドアの内部に配設された他のドア開閉装置によって開閉可能なように構成されているが、上ドアの開閉制御は本発明の説明に含まれないので、その詳細な説明は省略する。
【0017】
車両用ドア開閉システムを構成する2つのドア開閉装置11,11′は、それぞれ、その機械的構成が上述の特許文献1に記載のものとほぼ同一のものであり、以下1つのドア開閉装置11について、特許文献1における説明および図面を一部流用して説明する。
【0018】
図2は、本発明の車両用ドア開閉システムの電気的構成を示すブロック図である。図2に示すように、車両用ドア開閉システムは、同一構成のドア開閉装置11,11′と、コントロールユニット4と、ハンドルスイッチ30とから構成されている。
【0019】
ドア開閉装置11は、モータ16aと、ラッチ状態検出スイッチ(以下ラッチスイッチと呼ぶ。)21と、中立スイッチ29とを有する。ラッチスイッチ21は、ハーフラッチスイッチ21a、フルラッチスイッチ21bおよびカーテシスイッチ21cを含む。ラッチスイッチ21は、請求項におけるラッチ状態検出手段に相当する。
【0020】
ドア開閉装置11′は、モータ16a′と、ラッチ状態検出スイッチ(以下ラッチスイッチと呼ぶ。)21′と、中立スイッチ29′とを有する。ラッチスイッチ21′は、ハーフラッチスイッチ21a′、フルラッチスイッチ21b′およびカーテシスイッチ21c′を有する。ラッチスイッチ21′は、同様に請求項におけるラッチ状態検出手段に相当する。
【0021】
コントロールユニット4は、制御・判定部5と、この制御・判定部5に接続された入力回路6,7,8およびモータ駆動回路9,10を有する。コントロールユニット4は、請求項における制御手段に相当する。制御・判定部5は、判定部5aおよび制御部5bを有する。ハンドルスイッチ30は、入力回路6に接続されている。ハンドルスイッチ30は、請求項における開指示信号出力手段に相当する。
【0022】
ドア開閉装置11のモータ16aは、モータ駆動回路9に接続され、ラッチスイッチ21および中立スイッチ29は、入力回路7に接続されている。ドア開閉装置11′のモータ16a′は、モータ駆動回路10に接続され、ラッチスイッチ21′および中立スイッチ29′は、入力回路8に接続されている。なお、コントロールユニット4は、マイクロコンピュータ等で構成することができる。
【0023】
次に、ドア開閉装置11の機械的構成について説明する。なお、同一構成のドア開閉装置11′の構成については詳細な説明を省略するが、これ以降必要に応じてドア開閉装置11と同一の構成部品について、ドア開閉装置11の構成部品の符号に「′」を付して説明する。
【0024】
図3は、ドア開閉装置11の概要を示す斜視図である。ドア開閉装置11は、下ドア3によって閉塞される車両ボディ開口側に固定された係合部材としてのストライカ12(図5のみに図示)と係合可能なラッチ13を備えたラッチ機構14を備えている。また、ドア開閉装置11は、ラッチ機構14を作動させるための作動機構15と、作動機構15を駆動可能なアクチュエータとしてのモータ部16とを備えている。モータ部16は、上述のコントロールユニット4によって駆動制御されるモータ16aを含む。
【0025】
図4〜8は、ラッチ機構14、作動機構15およびモータ部16の可動部材のみを用いてそれらの作動状態を示した図である。図4〜8に示すように、ラッチ機構14には、ラッチ13に加え、ラッチ13に係合可能な係止片17が設けられている。
【0026】
ラッチ13は、ラッチ13に形成された穴13Aに図示しないラッチ支軸が貫通された状態でラッチ機構14のハウジング14A(図3のみに図示)に回動可能に支持されている。ラッチ13は、その外周面13Bに開口したU字溝13Cを備えている。U字溝13C内には、下ドアの手動などによる移動に伴いストライカ12が導入され得るようになっている。また、ラッチ13には、係止片17と係合可能な第1および第2係合突起13D,13Eが外周面13Bから外方に突出するように形成されている。
【0027】
ラッチ13には、ラッチレバー18が固定されている。ラッチ支軸は、ラッチレバー18に形成された孔18Aにも貫挿された状態になっている。ラッチレバー18にはラッチ13の回動中心から遠ざかるように延びるアーム部18Bが形成され、アーム部18Bの先端部分には、係合ピン18Cが立設されている。
【0028】
係止片17は、ラッチ支軸に平衡に配設されると共に、ハウジング14Aに回動可能に支持された係止片支軸19に固定されている。係止片支軸19の上端部には、係止片レバー20が固定されている。
【0029】
図5は、ラッチ13および係止片17の平面図である。ラッチ13は、図5における反時計方向に、図示しないバネによって付勢されている。また、係止片17は、同じく図5における時計方向に、図示しないバネによって付勢されている。
【0030】
ストライカ12がU字溝13C内に配置された状態で、ラッチ13の第1係合突起13Dと係止片17とが係合した状態(ハーフラッチ状態。図5の状態)となったとき、下ドアは、半閉状態になるようになっている。
【0031】
また、ストライカ12がU字溝13C内に配置された状態で、ラッチ13の第2係合突起13Eと係止片17とが係合した状態(フルラッチ状態)となったとき、下ドアは、全閉状態になるようになっている。
【0032】
また、ハーフラッチ状態およびフルラッチ状態において、係止片17を反時計方向に回動させて係止片17とラッチ13の係合を解除したときには、ラッチ13が、前記バネの付勢力によって回動された後に、図示しないストッパに当接してオープン状態に保持され得るようになっている。ラッチ13がこのオープン状態にあるときには、下ドアを手動で移動させることなどによるストライカ12のU字溝13Cへの導入やU字溝13Cからの抜き取りが可能な状態になる。なお、ラッチ13が前記オープン状態にあるとき、係止片17は、図示しないストッパに当接して、ラッチ13との係合を可能とする位置に配置されるようになっている。
【0033】
ラッチ機構14は、ラッチ13の位置状態を検出可能なラッチスイッチ21(図3のみに図示。)を備えている。ラッチスイッチ21は、ハーフラッチ状態を検出するハーフラッチスイッチ21aと、フルラッチ状態を検出するフルラッチスイッチ21bと、バックドアの開時に点灯する図示しないカーテシランプをオンオフするカーテシスイッチ21cとを含んでいる。
【0034】
図10は、ハーフラッチスイッチ21a、フルラッチスイッチ21bおよびカーテシスイッチ21cのオンオフ状態の範囲の関係を示す図である。
【0035】
具体的には、ハーフラッチスイッチ21aは、ラッチ13がオープン状態側からクローズ状態側に回動したとき、前記ハーフラッチ状態となる直前にオン状態からオフ状態になってその状態を維持すると共に、ラッチ13がクローズ状態側からオープン状態側に回動したとき、前記ハーフラッチ状態となった直後にオフ状態からオン状態になってその状態を維持するようになっている。
【0036】
また、フルラッチスイッチ21bは、ラッチ13がオープン状態側からクローズ状態側に回動したとき、前記フルラッチ状態となった時点でオフ状態からオン状態になってその状態を維持すると共に、ラッチ13がクローズ状態側からオープン状態側に回動したとき、前記フルラッチ状態でなくなった時点でオン状態からオフ状態になってその状態を維持するようになっている。
【0037】
また、カーテシスイッチ21cは、ラッチ13がオープン状態側からクローズ状態側に回動したとき、前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態となるまでの間にオン状態からオフ状態になってその状態を維持すると共に、ラッチ13がクローズ状態側からオープン状態側に回動したとき、前記ハーフラッチ状態となる直前にオフ状態からオン状態になってその状態を維持するようになっている。
【0038】
コントロールユニット4は、ハーフラッチスイッチ21aがオン状態からオフ状態になった時点を、ラッチ13の状態がハーフラッチ状態になった時点と判断し、フルラッチスイッチ21bがオフ状態からオン状態になった時点を、ラッチ13の状態がフルラッチ状態になった時点と判断する。また、コントロールユニット4は、フルラッチスイッチ21bがオン状態からオフ状態になって、さらにラッチ13の状態がオープン状態側になった時点と判断し、フルラッチスイッチ21bがオフ状態からオン状態になった時点を、ラッチ13の状態がフルラッチ状態になった時点と判断する。
【0039】
なお、フルラッチスイッチ21bおよびハーフラッチスイッチ21aのオン・オフ出力は、ストライカ12がラッチ13のU字溝13Cに導入された状態になるか否かにかかわらず、ラッチ13の位置状態にのみ基づいて行われる。
【0040】
モータ部16は、図示しない減速ギヤ構造を介してモータ16aに連結された出力ピニオンギヤ23を備えている。モータ部16は、コントロールユニット4によって駆動制御されるようになっており、該制御により、出力ピニオンギヤ23は、正逆両方向に回転駆動され得るようになっている。なお、モータ部16は、前記正逆両方向で出力ピニオンギヤ23の出力駆動力および出力駆動速度が同等になっている。
【0041】
作動機構15は、出力ピニオンギヤ23に係合して駆動される作動部材としての作動用ギヤ24を備えている。作動用ギヤ24は、ラッチ支軸や係止片支軸19とは平行でないギヤ支軸25によって回動可能に支持されている。作動用ギヤ24は、平面形状が略扇状を呈しており、その円弧状部分に出力ピニオンギヤ23と係合可能な歯部24Aが形成されている。作動用ギヤ24の外周寄り部分であって周方向の一端側の面上に歯、作動ピン24Bがカシメにより立設固定されている。
【0042】
ギヤ支軸25上には、クローズ用レバー26が回動可能な状態で配設されている。クローズ用レバー26は、作動用ギヤ24の図4における反時計方向への回動に基づき、クローズ用レバー26の被当接部26Aが作動ピン24Bと当接して反時計方向に回動され得るようになっている。
【0043】
また、クローズ用レバー26は、作動用ギヤ24による図4における反時計方向への回動に基づき、クローズ用レバー26のクローズ作動片26Bがラッチレバー18の係合ピン18Cに当接可能になっている。このクローズ作動片26Bが係合ピン18Cに当接した状態で、さらにクローズ用レバー26が図4における反時計方向に回動すると、ラッチ13がクローズ方向(前記オープン状態側から前記フルラッチ状態側への移動方向)に回動されるようになっている。
【0044】
なお、クローズ用レバー26は、図示しないバネによって図4における時計方向に付勢されると共に、作動ピン24Bに当接していない状態では、図示しないストッパに当接して所定位置に保持されるようになっている。
【0045】
作動機構15には、クローズ用レバー26を挟んで作動用ギヤ24と反対側に、ギヤ支軸25とは別の、ギヤ支軸25と平行なオープン用レバー支軸27によって回動可能に支持されたオープン用レバー28が設けられている。オープン用レバー28は、作動用ギヤ24の図4における時計方向への回動に基づき、オープン用レバー28の被当接部28Aが作動ピン24Bと当接して時計方向に回動され得るようになっている。
【0046】
オープン用レバー28には、オープン用レバー支軸27を挟んで被当接部28Aとは反対側の部分に、係止片レバー20と当接可能なオープン作動片28Bが設けられている。オープン作動片28Bは、作動用ギヤ24によるオープン用レバー28の図4における時計方向への回動に基づき、係止片レバー20に当接可能になっている。このオープン作動片28Bが係止片レバー20に当接した状態で、さらにオープン用レバー28が図4における時計方向に回動すると、係止片17がラッチ13との係合解除方向(図4における反時計方向)に回動されるようになっている。
【0047】
なお、オープン用レバー28は、バネ28C(図3にのみ図示)によって図4における反時計方向に付勢されると共に、作動ピン24Bに当接していない状態では、図示しないストッパに当接して所定位置に保持されるようになっている。
【0048】
ドア開閉装置11では、作動ピン24Bと両レバー26,28とが互いに当接しない(非干渉な)作動用ギヤ24の中立位置を基準として作動用ギヤ24をドア全閉側およびドア全閉解除側に回動させるように、コントロールユニット4がモータ部16を制御するようになっている。なお、作動用ギヤ24が、前記中立位置を基準として、クローズ用レバー26を作動させるための回動方向側(図4,6〜8における反時計方向側)に寄った状態を、作動用ギヤ24がドア全閉側に寄った状態、あるいは、ドア全閉側にある状態と呼ぶことにする。また、作動用ギヤ24が、中立位置を基準として、オープン用レバー28を作動させるための回動方向側(図4,6〜8における時計方向側)に寄った状態を、作動用ギヤ24がドア全閉解除側に寄った状態、あるいは、ドア全閉解除側にある状態と呼ぶことにする。
【0049】
なお、作動用ギヤ24が中立位置にあるときは、作動用ギヤ24の作動ピン24Bと両レバー26,28の両被当接部26A,28Aとの間には所定の隙間が確保されるようになっており、作動用ギヤ24が所定の角度以上回動したとき、互いに当接し得るようになっている。
【0050】
また、作動ピン24Bと両レバー26,28とが非干渉な状態では、両レバー26,28は、それぞれ前記所定位置に保持され、ラッチ機構14側に干渉しないようになっている。そのため、この状態では、バックドアの手動等による閉方向への移動に基づいて、U字溝13C内に導入されたストライカ12を押し付けて、ラッチ13をハーフラッチ状態およびフルラッチ状態とすることが可能になっている。
【0051】
本実施形態では、作動用ギヤ24がドア全閉側およびドア全閉解除側のどちら側に寄った状態にあるかが、作動機構15に設けられた中立位置検出センサとしての中立スイッチ29によって検出され得るようになっている。中立スイッチ29は、作動機構15の基台側に固定されたベース部29A(図3にのみ図示)に回動可能に支持されたロータ29Bを備えている。ロータ29Bには、作動用ギヤ24に設けられたセンサピン24Eと係合可能な係合部29Cが設けられている。中立スイッチ29は、センサピン24Eと係合部29Cの係合時の作動用ギヤ24の回動に基づくロータ29Bの向きの変化によって前記検出を行うようになっている。
【0052】
作動用ギヤ24がほぼ中立位置にあるときには、係合部29Cとセンサピン24Eとが係合するようになっている(図3、6の状態)。作動用ギヤ24が中立位置に対してドア全閉側に寄った状態では、係合部29Cが上方を向くようにロータ29Bが回動されて(図5の状態)、中立スイッチ29がコントロールユニット4に対してオフ信号を出力した状態(第1の状態としての中立スイッチオフ状態)となるようになっている(図9参照)。また、作動用ギヤ24が中立位置に対してドア全閉解除側に寄った状態では、係合部29Cが下方を向くようにロータ29Bが回動されて(図7の状態)、中立スイッチ29がコントロールユニット4に対してオフ信号を出力しない状態(第2の状態としての中立スイッチオン状態)となるようになっている(同じく図9参照)。
【0053】
コントロールユニット4は、中立スイッチ29のオン状態とオフ状態との切り替わりの時点を、作動用ギヤ24が中立位置にあった時点であると判断する。すなわち、中立スイッチ29は、オン状態とオフ状態との切り替わりにより、中立位置の検出が可能な構成となっている。
【0054】
さらに、コントロールユニット4は、中立スイッチ29の状態がオフ状態からオン状態に切り替わった時点を、作動用ギヤ24がドア全閉解除側から中立位置に至った時点であると判断する。また、コントロールユニット4は、中立スイッチ29の状態がオン状態からオフ状態に切り替わった時点を、作動用ギヤ24がドア全閉側から中立位置に至った時点であると判断する。
【0055】
なお、作動用ギヤ24がドア全閉側およびドア全閉解除側に寄ってセンサピン24Eが係合部29Cから離脱した状態では、ロータ29Bの向きは、その離脱時の状態のまま、すなわち、センサピン24Eと係合部29Cとの再係合が可能な状態に保持されるようになっている。
【0056】
次に、上述の構成を有する車両用ドア開閉システムの動作について、さらに図11〜15を参照しながら説明する。図11は、本発明の車両用ドア開閉システムの状態遷移図、図12(A)および(B)は、それぞれ全開状態からクローズ方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部を示す作動説明図、図13(A)および(B)は、それぞれ全閉状態からオープン方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部を示す作動説明図、図14は、全開状態からクローズ方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部の信号タイミングチャート、図15は、全閉状態からオープン方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部の信号タイミングチャートである。
【0057】
まず、バックドアの下ドア3を全開状態から全閉状態にする動作について説明する。バックドアの下ドア3が全開状態にある場合(図11のステップS1)(図14のタイミングブロックA)、ラッチ13(13′)が前記オープン状態にあると共に、作動用ギヤ24(24′)がほぼ中立状態になっている。
【0058】
この状態では、ラッチスイッチ21(21′)のハーフラッチスイッチ21a(21a′)はオン状態、フルラッチスイッチ21b(21b′)はオフ状態、カーテシスイッチ21c(21c′)はオン状態になっている。また、作動用ギヤ24(24′)が、前記中立位置に対してドア全閉側にやや寄った状態で静止した状態となっており、中立スイッチ29は、オフ状態となっている。
【0059】
このような状態で、ユーザにより下ドア3の手動等による閉方向への移動が行われ、U字溝13C(13C′)内に導入されたストライカ12(12′)によってラッチ13(13′)が前記クローズ方向に回動されると、ラッチ13(13′)は、第1係合突起13D(13D′)と係止片17(17′)とが係合して、図5に示すようなハーフラッチ状態に至る。
【0060】
このとき、ドア開閉装置11のハーフラッチスイッチ21aおよびドア開閉装置11′のハーフラッチスイッチ21a′の両方がオン状態からオフ状態に切り替わった時点で、コントロールユニット4の判定部5aは、全てのドア開閉装置のラッチがハーフラッチ状態の位置になったと判断し(ステップS2)、次のステップS3に進む。すなわち、ステップS2では、全てのドア開閉装置のハーフラッチ位置検出を条件1とし、この条件1を満足した場合に、次のステップに進むことができるようになっている。したがって、2つのドア開閉装置11,11′のうち一方だけがハーフラッチ位置検出が確認されても、もう一方のドア開閉装置のハーフラッチ位置も確認されなければ、次のステップに進むことができず、2つのドア開閉装置11,11′の両方のハーフラッチ位置検出が確認された時点で、次のステップに進むことができるようになっている。
【0061】
前記の条件1が満足されると、次に、コントロールユニット4の制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を同期全閉作動待機状態とし、所定時間(たとえば、0.3秒)待機する(ステップS3)(図14のタイミングブロックB)。
【0062】
次に、判定部5aが、待機時間終了(条件2)と判断すると(ステップS4)、次に、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を同期全閉作動状態とする(ステップS5)(図14のタイミングブロックC)。すなわち、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′のモータ16aおよび16a′の正転駆動を同期して開始する。
【0063】
それにより、図12に示すように、作動用ギヤ24(24′)が反時計方向に回動を始め、その回動角度が所定の角度に達したとき、作動ピン24B(24B′)がクローズ用レバー26(26′)の被当接部26A(26A′)に当接して、クローズ用レバー26(26′)が回動を始める。
【0064】
このクローズ用レバー26(26′)の回動角度が、所定の角度に達した後にさらに回動されると、クローズ作動片26B(26B′)が係合ピン18C(18C′)に当接した状態で、ラッチ13(13′)が、フルラッチ状態側に回動される。クローズ作動片26B(26B′)が、図12(B)の点線で示す位置まで回動されると、それに応じて係合ピン18C(18C′)が点線で示す位置まで回動される(図6の状態)。その結果、ラッチ13(13′)の回動により、下ドア3が全閉状態となるようにストライカ12(12′)(図6では図示を省略)が引き込まれる。なお、カーテシスイッチ21c(21c′)は、ラッチ13(13′)の回動の間にオン状態からオフ状態に切り替わる。
【0065】
ラッチ13(13′)が、下ドア3を全閉状態に保持可能な前記フルラッチ状態を超えた位置になると、フルラッチスイッチ21b(21b′)は、オフ状態からオン状態に切り替わる。なお、モータ部16(16′)のモータ16a(16a′)は、フルラッチスイッチ21b(21b′)がオン状態となるまでラッチ13(13′)を回動させるべく駆動するため、第2係合突起13E(13E′)と係止片17(17′)との係合が確実に行われる。フルラッチスイッチ21b(21b′)がオン状態となったことを判定部5aが検出すると、それに応じて、制御部5bは、モータ16a(16a′)を停止するように制御する。すなわち、制御部5bは、モータ16とモータ16′を非同期的に駆動停止させる。
【0066】
このとき、ドア開閉装置11のフルラッチスイッチ21bおよびドア開閉装置11′のフルラッチスイッチ21b′の両方がオフ状態からオン状態に切り替わった時点で、コントロールユニット4の判定部5aは、全てのドア開閉装置のラッチ13がフルラッチ状態の位置になり、全ての全閉作動が終了した(条件3)と判断し(ステップS6)、次のステップに進む。
【0067】
次に、コントロールユニット4の制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を全閉復帰待機状態とし、所定時間(たとえば、0.3秒)待機する(ステップS7)(図14のタイミングブロックD)。
【0068】
次に、判定部5aが、全閉復帰待機時間終了(条件4)と判断すると(ステップS8)、次に、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を同期全閉復帰作動(中立位置回帰作動)状態とする(ステップS9)(図14のタイミングブロックE)。すなわち、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′のモータ16aおよび16a′の逆転駆動を同期して開始する。これにより、第2係合突起13E(13E′)と係止片17(17′)とが確実に係合し、ラッチ13(13′)が前記フルラッチ状態となると共に、クローズ作動片26B(26B′)と係合ピン18C(18C′)との係合が解除されて、ラッチ機構14(14′)や作動機構15(15′)に過度に作用していた応力が緩和される(図7の状態)。
【0069】
モータ16a(16a′)の逆転駆動により、作動用ギヤ24(24′)が時計方向に回動を始め、前記中立位置に至った状態まで回動されると、中立スイッチ29(29′)が、オフ状態からオン状態に切り替わると共に、この切り替わりが発生したことが判定部5aに伝えられる。
【0070】
判定部5aは、この切り替わりの発生により、作動用ギヤ24(24′)が前記中立位置に至った中立位置回帰終了(条件5)と判断し、それに応じて、制御部5bは、モータ16a(16a′)を停止するように制御する(ステップS10)。このとき、作動用ギヤ24(24′)は、制御部5bによる制御のタイムラグやモータ部16(16′)および作動用ギヤ24(24′)自身の機械的慣性により、前記中立位置をやや超えた位置で停止する。この状態では、作動用ギヤ24(24′)が、前記中立位置に対してドア全閉解除側にやや寄った状態となっている。この中立位置をやや超えた位置においては、作動ピン24B(24B′)がオープン用レバー28(28′)の被当接部28A(28A′)と当接したとしても、オープン作動片28B(28B′)と係止片レバー20(20′)とが干渉する前であるため、係止片17(17′)をオープン動作させることはない。
【0071】
この状態は、下ドア3が完全に閉じられた全閉状態となる(ステップS11)(図14のタイミングブロックF)。
【0072】
次に、バックドアの下ドア3を全閉状態から全開状態にする動作について説明する。バックドアの下ドア3が全閉状態にある場合(図11のステップS11)(図15のタイミングブロックH)、ラッチ13(13′)が前記クローズ状態にあると共に、作動用ギヤ24(24′)がほぼ中立状態になっている。
【0073】
この状態では、ラッチスイッチ21(21′)のハーフラッチスイッチ21a(21a′)はオフ状態、フルラッチスイッチ21b(21b′)はオフ状態、カーテシスイッチ21c(21c′)はオフ状態になっている。また、作動用ギヤ24(24′)が、前記中立位置に対してドア全開側にやや寄った状態で静止した状態となっており、中立スイッチ29は、オン状態となっている。
【0074】
このような状態で、ユーザーによる下ドア3を全閉解除状態(開状態)とするためのハンドルスイッチ釦30aの操作がなされ、ハンドルスイッチ30がオフ状態からオン状態にされると(ステップS12の条件6)、次に、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′に対して全閉解除するためのモータ16aおよび16a′の駆動制御を同期して開始するようにモータ駆動回路9および10に指示し、同期全開作動状態とする(ステップS13)(図15のタイミングブロックI)。すなわち、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′のモータ16aおよび16a′の逆転駆動を同期して開始する。
【0075】
それにより、図13に示すように、作動用ギヤ24(24′)が時計方向に回動を始め、その回動角度が所定の角度に達したとき、作動ピン24B(24B′)がオープン用レバー28(28′)の被当接部28A(28A′)に当接して、オープン用レバー28(28′)が回動を始める。
【0076】
このオープン用レバー28(28′)の回動角度が、所定の角度に達した後にさらに回動されると、オープン作動片28B(28B′)が係止片レバー20(20′)に当接した状態で、係止片17(17′)がラッチ13(13′)との係合解除方向に回動される。オープン作動片28B(28B′)が図12(B)の点線で示す位置まで回動すると、係止片レバー20(20′)が点線で示す位置まで回動される(図8の状態)。その結果、係止片17(17′)とラッチ13(13′)との係合が解除され、ラッチ13(13′)は、前記バネの付勢力などによってオープン状態側に回動される。その結果、ストライカ12(12′)が、U字溝13C(13C′)から抜き取り可能な状態となり、下ドア3を全閉解除状態とすることが可能になる。
【0077】
このようにして、ラッチ13(13′)が、前記フルラッチ状態側から前記オープン状態側に回動されるとき、その回動途中で、まずフルラッチスイッチ21b(21b′)がオフ状態からオン状態に切り替わり、その後カーテシスイッチ21c(21c′)がオフ後退からオン状態に切り替わり、最後にハーフラッチスイッチ21a(21a′)がオフ状態からオン状態に切り替わる。カーテシスイッチ21c(21c′)がオン状態となったことを判定部5aが検出すると、それに応じて、制御部5bは、モータ16a(16a′)を停止するように制御する。すなわち、制御部5bは、モータ16とモータ16′を非同期的に駆動停止させる。
【0078】
このとき、ドア開閉装置11のカーテシスイッチ21cとドア開閉装置11′のカーテシスイッチ21c′の両方がオフ状態からオン状態に切り替わった時点で、判定部5aは、全てのドア開閉装置のラッチがオープン状態になり、下ドア3が手動等による開方向への移動が可能な状態になって、全ての全開作動が終了した(条件7)と判断し(ステップS14)、次のステップに進む。
【0079】
次に、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を全開復帰待機状態とし、所定時間(たとえば、0.3秒)待機する(ステップS15)(図15のタイミングブロックJ)。
【0080】
次に、判定部5aが、全開復帰待機時間終了(条件8)と判断すると(ステップS16)、次に、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を同期全開復帰作動(中立位置回帰作動)状態とする(ステップS17)(図15のタイミングブロックK)。すなわち、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′のモータ16aおよび16a′の正転駆動を同期して開始する。
【0081】
モータ16a(16a′)の正転駆動により、作動用ギヤ24(24′)が反時計方向に回動を始め、前記中立位置に至った状態まで回動されると、中立スイッチ29(29′)が、オン状態からオフ状態に切り替わると共に、この切り替わりが発生したことが判定部5aに伝えられる。
【0082】
判定部5aは、この切り替わりの発生により、作動用ギヤ24(24′)が前記中立位置に至った中立位置回帰終了(条件9)と判断し、それに応じて、制御部5bは、モータ16a(16a′)を停止するように制御する(ステップS18)。このとき、作動用ギヤ24(24′)は、制御部5bによる制御のタイムラグやモータ部16(16′)および作動用ギヤ24(24′)自身の機械的慣性により、前記中立位置をやや超えた位置で停止する。この状態では、作動用ギヤ24(24′)が、前記中立位置に対してドア全閉側にやや寄った状態となっている。この中立位置をやや超えた位置においては、作動ピン24B(24B′)がクローズ用レバー26(26′)の被当接部26A(26A′)と当接したとしても、クローズ作動片26B(26B′)と係合ピン18C(18C′)とが干渉する前であるため、ラッチ13をクローズ動作させることはない。
【0083】
この状態は、ドア開閉装置11(11′)の全開状態側への全ての動作が終了し、下ドア3が手動等による開方向への移動が可能な全開状態であり、ステップS1に戻った状態となっている(図15のタイミングブロックL)。
【0084】
以上説明したように、本発明の車両用ドア開閉システムによれば、バックドアの開閉を複数のモータを用いて容易かつ確実に開閉制御を行うことができ、ユーザへの荷重負荷が軽減されると共に、ドアの半嵌合(いわゆる、半ドア)をなくすことができ、操作性、利便性が向上する。また、バックドアの開から閉への制御時、複数のドア開閉装置の全てがハーフラッチ状態になるまで、全閉動作を開始しないので、片半ドア時の原因でもあるユーザの挟まれを防いで人体の安全を確保し、異物挟み込みによる車両故障や変形を防ぐことが可能になる。また、バックドアの複数箇所に配置された複数のモータを同期的に駆動制御しているので、単一モータを制御しているかのようなスムーズ感を実現し、違和感を与えることがなく、高品質化を実現することができる。また、複数のモータを必ず同時に駆動制御しているので、モータ作動音のズレ、長時間化を防ぎ、静寂化が可能になり、高品質の車両用ドア開閉システムを提供することができる。
【0085】
以上の通り、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0086】
たとえば、上述の実施の形態では、車両ボディ側にストライカが配置され、車両ドア側にドア開閉装置が設けられている場合について説明したが、これに代えて、車両ドア側にストライカを配置し、車両ボディ側にドア開閉装置を設けても良い。
【0087】
また、上述の実施形態では、所定時間の間作動待機状態となるようになっているが、これに代えて、作動待機状態を持たない作動としても良い。
【0088】
また、上述の実施の形態では、車両の跳ね上げ式の上ドアと跳ね下げ式の下ドアで構成されるバックドアにおける下ドアの開閉制御に用いられる場合について説明したが、本発明はこれに限らず、複数のモータを用いてドアの開閉を行うものであれば、車両のいずれのドアの開閉にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用ドア開閉システムが適用される車両の要部を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用ドア開閉システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両用ドア開閉システムを構成するドア開閉装置の機械的概要を示す斜視図である。
【図4】作動用ギヤがほぼ中立位置にある状態のドア開閉装置の要部を示す状態説明図である。
【図5】ドア開閉装置のラッチ機構の要部を示す平面図である。
【図6】ドア開閉装置の要部を示す作動説明図である。
【図7】ドア開閉装置の要部を示す作動説明図である。
【図8】ドア開閉装置の要部を示す作動説明図である。
【図9】ドア開閉装置の中立スイッチの作動説明図である。
【図10】ドア開閉装置のラッチ状態検出スイッチの作動説明図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る車両用ドア開閉システムの動作を説明する状態遷移図である。
【図12】(A)および(B)は、それぞれ全開状態からクローズ方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部を示す作動説明図である。
【図13】(A)および(B)は、それぞれ全閉状態からオープン方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部を示す作動説明図である。
【図14】全開状態からクローズ方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部の信号タイミングチャートである。
【図15】全閉状態からオープン方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部の信号タイミングチャートである。
【図16】(A)および(B)は、それぞれ、従来の車両におけるバックドアの開閉方式を説明する図である。
【図17】図16(B)の開閉方式におけるロック機構の配置を説明する図である。
【符号の説明】
【0090】
4 コントロールユニット(制御手段)
11,11′ ドア開閉装置
12 ストライカ(係合部材)
13 ラッチ
14 ラッチ機構
16a,16a′ モータ
21、21′ ラッチスイッチ(状態検出手段)
30 ハンドルスイッチ(開指示信号出力手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア開閉システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワゴン車やミニバン等の車両1においては、図16(A)に示すように跳ね上げ式のバックドア2を備えたものや、図16(B)に示すように跳ね上げ式のバックドア(上ドア)2と跳ね下げ式の下ドア3で構成されるバックドアを備えたものがある。
【0003】
図16(B)に示す車両1においては、上ドア2は、下ドア3が閉状態の時に開閉することができ、下ドア3は、上ドア2が開状態の時に開閉することができ、また、下ドア3を開ける時は、上ドア2が開状態の時に、図17に示すように、閉状態にある下ドア3の解除レバー5を操作することにより両側部のロック機構4のロック解除を行った後手動で開け、下ドア3を閉じる時は、手動で下ドア3を閉じ押し込むことによりロック機構4をロックさせている。
【0004】
上述したバックドアの開閉は、いずれも手動で行っているが、車両のバックドアのロック機構を単一のモータの駆動制御によりロック/ロック解除するモータによるドア開閉方法も知られている(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−250163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の手動によるドア開閉方法では、解除レバーを操作する力と、下ドアを押し込んでロック機構をロックさせる力が必要であり、ユーザーへの加重負担があった。また、ドアの押し込みが不十分な状況においてロックが完全でないにもかかわらず、そのことがユーザーには判りづらい状態が発生していた。また、手動による開閉方法ゆえに高級感に欠けていた。
【0006】
また、上述のモータによるドア開閉方法は、単一のモータによる制御であり、ドアの大型化に対応するために、モータを複数にすると、ドアの開閉がスムーズに動かなかったり、バラバラに聞こえるモータ駆動音による品質低下等の問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上述の課題に鑑み、複数のモータを用いて容易かつ確実に開閉制御を行うことができる車両用ドア開閉システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、車両ドアが全閉状態または全開状態になるように開閉制御する車両用ドア開閉システムにおいて、車両ドアまたは車両ボディに設けられた複数のドア開閉装置であって、各々のドア開閉装置が、車両ボディまたは車両ドアに設けられた係合部材にハーフラッチ状態またはフルラッチ状態になるように係合されるラッチ機構と、該ラッチ機構を駆動するモータと、前記ラッチ機構のラッチ状態を検出するラッチ状態検出手段とを有する、複数のドア開閉装置と、前記車両ドアを全開状態から全閉状態にする場合に、前記複数のドア開閉装置の全てのラッチ状態検出手段がハーフラッチ状態となったことを検出したときに、前記複数のドア開閉装置の全てのモータを同期的に駆動開始し、前記ラッチ機構が前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態になるように駆動する制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明においては、車両用ドア開閉システムは、車両ドアまたは車両ボディに取り付けられた複数のドア開閉装置と、複数のドア開閉装置を制御する制御手段とを備えている。各ドア開閉装置は、車両ボディまたは車両ドアに設けられた係合部材にハーフラッチ状態またはフルラッチ状態になるように係合されるラッチを備えたラッチ機構と、該ラッチ機構を駆動するモータと、ラッチ機構のラッチ状態を検出するラッチ状態検出手段とを有する。制御手段は、車両ドアを全開状態から全閉状態にする場合に、複数のドア開閉装置の全てのラッチ状態検出手段がハーフラッチ状態となったことを検出したときに、複数のドア開閉装置の全てのモータを、ラッチ機構がハーフラッチ状態からフルラッチ状態になるように同期的に駆動開始させる。それにより、車両ドアの開閉を複数のモータを用いて容易かつ確実に開閉制御を行うことができ、ユーザへの荷重負荷が軽減されると共に、ドアの半嵌合(いわゆる、半ドア)をなくすことができる。また、車両ドアの全開状態から全閉状態への制御時、複数のドア開閉装置の全てがハーフラッチ状態になるまで、全閉動作を開始しないので、片半ドア時の原因でもあるユーザの挟まれを防いで人体の安全を確保することができる。また、複数のモータを同期的に駆動制御しているので、単一モータを制御しているかのようなスムーズ感を実現し、違和感を与えることがない。また、複数のモータを必ず同時に駆動制御しているので、モータ作動音のズレ、長時間化を防ぎ、静寂化が可能になる。
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用ドア開閉システムにおいて、前記車両ドアを全閉状態から全開状態にする場合に前記制御手段に開指示信号を出力する開指示信号出力手段をさらに備え、前記制御手段は、さらに、前記開指示信号出力手段からの前記開指示信号の入力に応じて、前記複数のドア開閉装置の全てのモータを同期的に駆動開始し、前記ラッチ機構が前記フルラッチ状態から前記ハーフラッチ状態になるように駆動することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明においては、車両用ドア開閉システムは、車両ドアを全閉状態から全開状態にする場合に制御手段に開指示信号を出力する開指示信号出力手段をさらに備えている、制御手段は、さらに、開指示信号出力手段からの開指示信号の入力に応じて、複数のドア開閉装置の全てのモータを、ラッチ機構がフルラッチ状態からハーフラッチ状態になるように同期的に駆動開始させる。それにより、車両ドアを全閉状態から全開状態にする場合も、複数のモータを必ず同時に駆動制御しているので、モータ作動音のズレ、長時間化を防ぎ、静寂化が可能になり、高品質の車両用ドア開閉システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、車両ドアの開閉を複数のモータを用いて容易かつ確実に開閉制御を行うことができ、ユーザへの荷重負荷が軽減されると共に、ドアの半嵌合(いわゆる、半ドア)をなくすことができ、操作性、利便性が向上する。また、車両ドアの全開状態から全閉状態への制御時、複数のドア開閉装置の全てがハーフラッチ状態になるまで、全閉動作を開始しないので、片半ドア時の原因でもあるユーザの挟まれを防いで人体の安全を確保し、異物挟み込みによる車両故障や変形を防ぐことが可能になる。また、車両ドアの複数箇所に配置された複数のモータを同期的に駆動制御しているので、単一モータを制御しているかのようなスムーズ感を実現し、違和感を与えることがなく、高品質化を実現することができる。また、複数のモータを必ず同時に駆動制御しているので、モータ作動音のズレ、長時間化を防ぎ、静寂化が可能になり、高品質の車両用ドア開閉システムを提供することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、車両ドアを全閉状態から全開状態にする場合も、複数のモータを必ず同時に駆動制御しているので、モータ作動音のズレ、長時間化を防ぎ、静寂化が可能になり、高品質の車両用ドア開閉システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本発明の実施の形態に係る車両用ドア開閉システムは、たとえば図1に示すように、車両1の跳ね上げ式の上ドアと跳ね下げ式の下ドアで構成されるバックドアにおける下ドア3の開閉制御に用いられる。すなわち、本発明の車両用ドア開閉システムは、下ドア3の両側部の内部にそれぞれ配置された2つのドア開閉装置11,11′と、下ドア3の先端部に配置されたハンドルスイッチ釦30aとを備えている。
【0016】
下ドア3は、ユーザ等による手動と、ハンドルスイッチ釦30aの操作による2つのドア開閉装置11、11′の自動開閉制御とによって開閉される。なお、上ドアは、下ドア3が後述する全閉位置(フルラッチ状態)にある場合に、上ドアの内部に配設された他のドア開閉装置によって開閉可能なように構成されているが、上ドアの開閉制御は本発明の説明に含まれないので、その詳細な説明は省略する。
【0017】
車両用ドア開閉システムを構成する2つのドア開閉装置11,11′は、それぞれ、その機械的構成が上述の特許文献1に記載のものとほぼ同一のものであり、以下1つのドア開閉装置11について、特許文献1における説明および図面を一部流用して説明する。
【0018】
図2は、本発明の車両用ドア開閉システムの電気的構成を示すブロック図である。図2に示すように、車両用ドア開閉システムは、同一構成のドア開閉装置11,11′と、コントロールユニット4と、ハンドルスイッチ30とから構成されている。
【0019】
ドア開閉装置11は、モータ16aと、ラッチ状態検出スイッチ(以下ラッチスイッチと呼ぶ。)21と、中立スイッチ29とを有する。ラッチスイッチ21は、ハーフラッチスイッチ21a、フルラッチスイッチ21bおよびカーテシスイッチ21cを含む。ラッチスイッチ21は、請求項におけるラッチ状態検出手段に相当する。
【0020】
ドア開閉装置11′は、モータ16a′と、ラッチ状態検出スイッチ(以下ラッチスイッチと呼ぶ。)21′と、中立スイッチ29′とを有する。ラッチスイッチ21′は、ハーフラッチスイッチ21a′、フルラッチスイッチ21b′およびカーテシスイッチ21c′を有する。ラッチスイッチ21′は、同様に請求項におけるラッチ状態検出手段に相当する。
【0021】
コントロールユニット4は、制御・判定部5と、この制御・判定部5に接続された入力回路6,7,8およびモータ駆動回路9,10を有する。コントロールユニット4は、請求項における制御手段に相当する。制御・判定部5は、判定部5aおよび制御部5bを有する。ハンドルスイッチ30は、入力回路6に接続されている。ハンドルスイッチ30は、請求項における開指示信号出力手段に相当する。
【0022】
ドア開閉装置11のモータ16aは、モータ駆動回路9に接続され、ラッチスイッチ21および中立スイッチ29は、入力回路7に接続されている。ドア開閉装置11′のモータ16a′は、モータ駆動回路10に接続され、ラッチスイッチ21′および中立スイッチ29′は、入力回路8に接続されている。なお、コントロールユニット4は、マイクロコンピュータ等で構成することができる。
【0023】
次に、ドア開閉装置11の機械的構成について説明する。なお、同一構成のドア開閉装置11′の構成については詳細な説明を省略するが、これ以降必要に応じてドア開閉装置11と同一の構成部品について、ドア開閉装置11の構成部品の符号に「′」を付して説明する。
【0024】
図3は、ドア開閉装置11の概要を示す斜視図である。ドア開閉装置11は、下ドア3によって閉塞される車両ボディ開口側に固定された係合部材としてのストライカ12(図5のみに図示)と係合可能なラッチ13を備えたラッチ機構14を備えている。また、ドア開閉装置11は、ラッチ機構14を作動させるための作動機構15と、作動機構15を駆動可能なアクチュエータとしてのモータ部16とを備えている。モータ部16は、上述のコントロールユニット4によって駆動制御されるモータ16aを含む。
【0025】
図4〜8は、ラッチ機構14、作動機構15およびモータ部16の可動部材のみを用いてそれらの作動状態を示した図である。図4〜8に示すように、ラッチ機構14には、ラッチ13に加え、ラッチ13に係合可能な係止片17が設けられている。
【0026】
ラッチ13は、ラッチ13に形成された穴13Aに図示しないラッチ支軸が貫通された状態でラッチ機構14のハウジング14A(図3のみに図示)に回動可能に支持されている。ラッチ13は、その外周面13Bに開口したU字溝13Cを備えている。U字溝13C内には、下ドアの手動などによる移動に伴いストライカ12が導入され得るようになっている。また、ラッチ13には、係止片17と係合可能な第1および第2係合突起13D,13Eが外周面13Bから外方に突出するように形成されている。
【0027】
ラッチ13には、ラッチレバー18が固定されている。ラッチ支軸は、ラッチレバー18に形成された孔18Aにも貫挿された状態になっている。ラッチレバー18にはラッチ13の回動中心から遠ざかるように延びるアーム部18Bが形成され、アーム部18Bの先端部分には、係合ピン18Cが立設されている。
【0028】
係止片17は、ラッチ支軸に平衡に配設されると共に、ハウジング14Aに回動可能に支持された係止片支軸19に固定されている。係止片支軸19の上端部には、係止片レバー20が固定されている。
【0029】
図5は、ラッチ13および係止片17の平面図である。ラッチ13は、図5における反時計方向に、図示しないバネによって付勢されている。また、係止片17は、同じく図5における時計方向に、図示しないバネによって付勢されている。
【0030】
ストライカ12がU字溝13C内に配置された状態で、ラッチ13の第1係合突起13Dと係止片17とが係合した状態(ハーフラッチ状態。図5の状態)となったとき、下ドアは、半閉状態になるようになっている。
【0031】
また、ストライカ12がU字溝13C内に配置された状態で、ラッチ13の第2係合突起13Eと係止片17とが係合した状態(フルラッチ状態)となったとき、下ドアは、全閉状態になるようになっている。
【0032】
また、ハーフラッチ状態およびフルラッチ状態において、係止片17を反時計方向に回動させて係止片17とラッチ13の係合を解除したときには、ラッチ13が、前記バネの付勢力によって回動された後に、図示しないストッパに当接してオープン状態に保持され得るようになっている。ラッチ13がこのオープン状態にあるときには、下ドアを手動で移動させることなどによるストライカ12のU字溝13Cへの導入やU字溝13Cからの抜き取りが可能な状態になる。なお、ラッチ13が前記オープン状態にあるとき、係止片17は、図示しないストッパに当接して、ラッチ13との係合を可能とする位置に配置されるようになっている。
【0033】
ラッチ機構14は、ラッチ13の位置状態を検出可能なラッチスイッチ21(図3のみに図示。)を備えている。ラッチスイッチ21は、ハーフラッチ状態を検出するハーフラッチスイッチ21aと、フルラッチ状態を検出するフルラッチスイッチ21bと、バックドアの開時に点灯する図示しないカーテシランプをオンオフするカーテシスイッチ21cとを含んでいる。
【0034】
図10は、ハーフラッチスイッチ21a、フルラッチスイッチ21bおよびカーテシスイッチ21cのオンオフ状態の範囲の関係を示す図である。
【0035】
具体的には、ハーフラッチスイッチ21aは、ラッチ13がオープン状態側からクローズ状態側に回動したとき、前記ハーフラッチ状態となる直前にオン状態からオフ状態になってその状態を維持すると共に、ラッチ13がクローズ状態側からオープン状態側に回動したとき、前記ハーフラッチ状態となった直後にオフ状態からオン状態になってその状態を維持するようになっている。
【0036】
また、フルラッチスイッチ21bは、ラッチ13がオープン状態側からクローズ状態側に回動したとき、前記フルラッチ状態となった時点でオフ状態からオン状態になってその状態を維持すると共に、ラッチ13がクローズ状態側からオープン状態側に回動したとき、前記フルラッチ状態でなくなった時点でオン状態からオフ状態になってその状態を維持するようになっている。
【0037】
また、カーテシスイッチ21cは、ラッチ13がオープン状態側からクローズ状態側に回動したとき、前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態となるまでの間にオン状態からオフ状態になってその状態を維持すると共に、ラッチ13がクローズ状態側からオープン状態側に回動したとき、前記ハーフラッチ状態となる直前にオフ状態からオン状態になってその状態を維持するようになっている。
【0038】
コントロールユニット4は、ハーフラッチスイッチ21aがオン状態からオフ状態になった時点を、ラッチ13の状態がハーフラッチ状態になった時点と判断し、フルラッチスイッチ21bがオフ状態からオン状態になった時点を、ラッチ13の状態がフルラッチ状態になった時点と判断する。また、コントロールユニット4は、フルラッチスイッチ21bがオン状態からオフ状態になって、さらにラッチ13の状態がオープン状態側になった時点と判断し、フルラッチスイッチ21bがオフ状態からオン状態になった時点を、ラッチ13の状態がフルラッチ状態になった時点と判断する。
【0039】
なお、フルラッチスイッチ21bおよびハーフラッチスイッチ21aのオン・オフ出力は、ストライカ12がラッチ13のU字溝13Cに導入された状態になるか否かにかかわらず、ラッチ13の位置状態にのみ基づいて行われる。
【0040】
モータ部16は、図示しない減速ギヤ構造を介してモータ16aに連結された出力ピニオンギヤ23を備えている。モータ部16は、コントロールユニット4によって駆動制御されるようになっており、該制御により、出力ピニオンギヤ23は、正逆両方向に回転駆動され得るようになっている。なお、モータ部16は、前記正逆両方向で出力ピニオンギヤ23の出力駆動力および出力駆動速度が同等になっている。
【0041】
作動機構15は、出力ピニオンギヤ23に係合して駆動される作動部材としての作動用ギヤ24を備えている。作動用ギヤ24は、ラッチ支軸や係止片支軸19とは平行でないギヤ支軸25によって回動可能に支持されている。作動用ギヤ24は、平面形状が略扇状を呈しており、その円弧状部分に出力ピニオンギヤ23と係合可能な歯部24Aが形成されている。作動用ギヤ24の外周寄り部分であって周方向の一端側の面上に歯、作動ピン24Bがカシメにより立設固定されている。
【0042】
ギヤ支軸25上には、クローズ用レバー26が回動可能な状態で配設されている。クローズ用レバー26は、作動用ギヤ24の図4における反時計方向への回動に基づき、クローズ用レバー26の被当接部26Aが作動ピン24Bと当接して反時計方向に回動され得るようになっている。
【0043】
また、クローズ用レバー26は、作動用ギヤ24による図4における反時計方向への回動に基づき、クローズ用レバー26のクローズ作動片26Bがラッチレバー18の係合ピン18Cに当接可能になっている。このクローズ作動片26Bが係合ピン18Cに当接した状態で、さらにクローズ用レバー26が図4における反時計方向に回動すると、ラッチ13がクローズ方向(前記オープン状態側から前記フルラッチ状態側への移動方向)に回動されるようになっている。
【0044】
なお、クローズ用レバー26は、図示しないバネによって図4における時計方向に付勢されると共に、作動ピン24Bに当接していない状態では、図示しないストッパに当接して所定位置に保持されるようになっている。
【0045】
作動機構15には、クローズ用レバー26を挟んで作動用ギヤ24と反対側に、ギヤ支軸25とは別の、ギヤ支軸25と平行なオープン用レバー支軸27によって回動可能に支持されたオープン用レバー28が設けられている。オープン用レバー28は、作動用ギヤ24の図4における時計方向への回動に基づき、オープン用レバー28の被当接部28Aが作動ピン24Bと当接して時計方向に回動され得るようになっている。
【0046】
オープン用レバー28には、オープン用レバー支軸27を挟んで被当接部28Aとは反対側の部分に、係止片レバー20と当接可能なオープン作動片28Bが設けられている。オープン作動片28Bは、作動用ギヤ24によるオープン用レバー28の図4における時計方向への回動に基づき、係止片レバー20に当接可能になっている。このオープン作動片28Bが係止片レバー20に当接した状態で、さらにオープン用レバー28が図4における時計方向に回動すると、係止片17がラッチ13との係合解除方向(図4における反時計方向)に回動されるようになっている。
【0047】
なお、オープン用レバー28は、バネ28C(図3にのみ図示)によって図4における反時計方向に付勢されると共に、作動ピン24Bに当接していない状態では、図示しないストッパに当接して所定位置に保持されるようになっている。
【0048】
ドア開閉装置11では、作動ピン24Bと両レバー26,28とが互いに当接しない(非干渉な)作動用ギヤ24の中立位置を基準として作動用ギヤ24をドア全閉側およびドア全閉解除側に回動させるように、コントロールユニット4がモータ部16を制御するようになっている。なお、作動用ギヤ24が、前記中立位置を基準として、クローズ用レバー26を作動させるための回動方向側(図4,6〜8における反時計方向側)に寄った状態を、作動用ギヤ24がドア全閉側に寄った状態、あるいは、ドア全閉側にある状態と呼ぶことにする。また、作動用ギヤ24が、中立位置を基準として、オープン用レバー28を作動させるための回動方向側(図4,6〜8における時計方向側)に寄った状態を、作動用ギヤ24がドア全閉解除側に寄った状態、あるいは、ドア全閉解除側にある状態と呼ぶことにする。
【0049】
なお、作動用ギヤ24が中立位置にあるときは、作動用ギヤ24の作動ピン24Bと両レバー26,28の両被当接部26A,28Aとの間には所定の隙間が確保されるようになっており、作動用ギヤ24が所定の角度以上回動したとき、互いに当接し得るようになっている。
【0050】
また、作動ピン24Bと両レバー26,28とが非干渉な状態では、両レバー26,28は、それぞれ前記所定位置に保持され、ラッチ機構14側に干渉しないようになっている。そのため、この状態では、バックドアの手動等による閉方向への移動に基づいて、U字溝13C内に導入されたストライカ12を押し付けて、ラッチ13をハーフラッチ状態およびフルラッチ状態とすることが可能になっている。
【0051】
本実施形態では、作動用ギヤ24がドア全閉側およびドア全閉解除側のどちら側に寄った状態にあるかが、作動機構15に設けられた中立位置検出センサとしての中立スイッチ29によって検出され得るようになっている。中立スイッチ29は、作動機構15の基台側に固定されたベース部29A(図3にのみ図示)に回動可能に支持されたロータ29Bを備えている。ロータ29Bには、作動用ギヤ24に設けられたセンサピン24Eと係合可能な係合部29Cが設けられている。中立スイッチ29は、センサピン24Eと係合部29Cの係合時の作動用ギヤ24の回動に基づくロータ29Bの向きの変化によって前記検出を行うようになっている。
【0052】
作動用ギヤ24がほぼ中立位置にあるときには、係合部29Cとセンサピン24Eとが係合するようになっている(図3、6の状態)。作動用ギヤ24が中立位置に対してドア全閉側に寄った状態では、係合部29Cが上方を向くようにロータ29Bが回動されて(図5の状態)、中立スイッチ29がコントロールユニット4に対してオフ信号を出力した状態(第1の状態としての中立スイッチオフ状態)となるようになっている(図9参照)。また、作動用ギヤ24が中立位置に対してドア全閉解除側に寄った状態では、係合部29Cが下方を向くようにロータ29Bが回動されて(図7の状態)、中立スイッチ29がコントロールユニット4に対してオフ信号を出力しない状態(第2の状態としての中立スイッチオン状態)となるようになっている(同じく図9参照)。
【0053】
コントロールユニット4は、中立スイッチ29のオン状態とオフ状態との切り替わりの時点を、作動用ギヤ24が中立位置にあった時点であると判断する。すなわち、中立スイッチ29は、オン状態とオフ状態との切り替わりにより、中立位置の検出が可能な構成となっている。
【0054】
さらに、コントロールユニット4は、中立スイッチ29の状態がオフ状態からオン状態に切り替わった時点を、作動用ギヤ24がドア全閉解除側から中立位置に至った時点であると判断する。また、コントロールユニット4は、中立スイッチ29の状態がオン状態からオフ状態に切り替わった時点を、作動用ギヤ24がドア全閉側から中立位置に至った時点であると判断する。
【0055】
なお、作動用ギヤ24がドア全閉側およびドア全閉解除側に寄ってセンサピン24Eが係合部29Cから離脱した状態では、ロータ29Bの向きは、その離脱時の状態のまま、すなわち、センサピン24Eと係合部29Cとの再係合が可能な状態に保持されるようになっている。
【0056】
次に、上述の構成を有する車両用ドア開閉システムの動作について、さらに図11〜15を参照しながら説明する。図11は、本発明の車両用ドア開閉システムの状態遷移図、図12(A)および(B)は、それぞれ全開状態からクローズ方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部を示す作動説明図、図13(A)および(B)は、それぞれ全閉状態からオープン方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部を示す作動説明図、図14は、全開状態からクローズ方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部の信号タイミングチャート、図15は、全閉状態からオープン方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部の信号タイミングチャートである。
【0057】
まず、バックドアの下ドア3を全開状態から全閉状態にする動作について説明する。バックドアの下ドア3が全開状態にある場合(図11のステップS1)(図14のタイミングブロックA)、ラッチ13(13′)が前記オープン状態にあると共に、作動用ギヤ24(24′)がほぼ中立状態になっている。
【0058】
この状態では、ラッチスイッチ21(21′)のハーフラッチスイッチ21a(21a′)はオン状態、フルラッチスイッチ21b(21b′)はオフ状態、カーテシスイッチ21c(21c′)はオン状態になっている。また、作動用ギヤ24(24′)が、前記中立位置に対してドア全閉側にやや寄った状態で静止した状態となっており、中立スイッチ29は、オフ状態となっている。
【0059】
このような状態で、ユーザにより下ドア3の手動等による閉方向への移動が行われ、U字溝13C(13C′)内に導入されたストライカ12(12′)によってラッチ13(13′)が前記クローズ方向に回動されると、ラッチ13(13′)は、第1係合突起13D(13D′)と係止片17(17′)とが係合して、図5に示すようなハーフラッチ状態に至る。
【0060】
このとき、ドア開閉装置11のハーフラッチスイッチ21aおよびドア開閉装置11′のハーフラッチスイッチ21a′の両方がオン状態からオフ状態に切り替わった時点で、コントロールユニット4の判定部5aは、全てのドア開閉装置のラッチがハーフラッチ状態の位置になったと判断し(ステップS2)、次のステップS3に進む。すなわち、ステップS2では、全てのドア開閉装置のハーフラッチ位置検出を条件1とし、この条件1を満足した場合に、次のステップに進むことができるようになっている。したがって、2つのドア開閉装置11,11′のうち一方だけがハーフラッチ位置検出が確認されても、もう一方のドア開閉装置のハーフラッチ位置も確認されなければ、次のステップに進むことができず、2つのドア開閉装置11,11′の両方のハーフラッチ位置検出が確認された時点で、次のステップに進むことができるようになっている。
【0061】
前記の条件1が満足されると、次に、コントロールユニット4の制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を同期全閉作動待機状態とし、所定時間(たとえば、0.3秒)待機する(ステップS3)(図14のタイミングブロックB)。
【0062】
次に、判定部5aが、待機時間終了(条件2)と判断すると(ステップS4)、次に、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を同期全閉作動状態とする(ステップS5)(図14のタイミングブロックC)。すなわち、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′のモータ16aおよび16a′の正転駆動を同期して開始する。
【0063】
それにより、図12に示すように、作動用ギヤ24(24′)が反時計方向に回動を始め、その回動角度が所定の角度に達したとき、作動ピン24B(24B′)がクローズ用レバー26(26′)の被当接部26A(26A′)に当接して、クローズ用レバー26(26′)が回動を始める。
【0064】
このクローズ用レバー26(26′)の回動角度が、所定の角度に達した後にさらに回動されると、クローズ作動片26B(26B′)が係合ピン18C(18C′)に当接した状態で、ラッチ13(13′)が、フルラッチ状態側に回動される。クローズ作動片26B(26B′)が、図12(B)の点線で示す位置まで回動されると、それに応じて係合ピン18C(18C′)が点線で示す位置まで回動される(図6の状態)。その結果、ラッチ13(13′)の回動により、下ドア3が全閉状態となるようにストライカ12(12′)(図6では図示を省略)が引き込まれる。なお、カーテシスイッチ21c(21c′)は、ラッチ13(13′)の回動の間にオン状態からオフ状態に切り替わる。
【0065】
ラッチ13(13′)が、下ドア3を全閉状態に保持可能な前記フルラッチ状態を超えた位置になると、フルラッチスイッチ21b(21b′)は、オフ状態からオン状態に切り替わる。なお、モータ部16(16′)のモータ16a(16a′)は、フルラッチスイッチ21b(21b′)がオン状態となるまでラッチ13(13′)を回動させるべく駆動するため、第2係合突起13E(13E′)と係止片17(17′)との係合が確実に行われる。フルラッチスイッチ21b(21b′)がオン状態となったことを判定部5aが検出すると、それに応じて、制御部5bは、モータ16a(16a′)を停止するように制御する。すなわち、制御部5bは、モータ16とモータ16′を非同期的に駆動停止させる。
【0066】
このとき、ドア開閉装置11のフルラッチスイッチ21bおよびドア開閉装置11′のフルラッチスイッチ21b′の両方がオフ状態からオン状態に切り替わった時点で、コントロールユニット4の判定部5aは、全てのドア開閉装置のラッチ13がフルラッチ状態の位置になり、全ての全閉作動が終了した(条件3)と判断し(ステップS6)、次のステップに進む。
【0067】
次に、コントロールユニット4の制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を全閉復帰待機状態とし、所定時間(たとえば、0.3秒)待機する(ステップS7)(図14のタイミングブロックD)。
【0068】
次に、判定部5aが、全閉復帰待機時間終了(条件4)と判断すると(ステップS8)、次に、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を同期全閉復帰作動(中立位置回帰作動)状態とする(ステップS9)(図14のタイミングブロックE)。すなわち、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′のモータ16aおよび16a′の逆転駆動を同期して開始する。これにより、第2係合突起13E(13E′)と係止片17(17′)とが確実に係合し、ラッチ13(13′)が前記フルラッチ状態となると共に、クローズ作動片26B(26B′)と係合ピン18C(18C′)との係合が解除されて、ラッチ機構14(14′)や作動機構15(15′)に過度に作用していた応力が緩和される(図7の状態)。
【0069】
モータ16a(16a′)の逆転駆動により、作動用ギヤ24(24′)が時計方向に回動を始め、前記中立位置に至った状態まで回動されると、中立スイッチ29(29′)が、オフ状態からオン状態に切り替わると共に、この切り替わりが発生したことが判定部5aに伝えられる。
【0070】
判定部5aは、この切り替わりの発生により、作動用ギヤ24(24′)が前記中立位置に至った中立位置回帰終了(条件5)と判断し、それに応じて、制御部5bは、モータ16a(16a′)を停止するように制御する(ステップS10)。このとき、作動用ギヤ24(24′)は、制御部5bによる制御のタイムラグやモータ部16(16′)および作動用ギヤ24(24′)自身の機械的慣性により、前記中立位置をやや超えた位置で停止する。この状態では、作動用ギヤ24(24′)が、前記中立位置に対してドア全閉解除側にやや寄った状態となっている。この中立位置をやや超えた位置においては、作動ピン24B(24B′)がオープン用レバー28(28′)の被当接部28A(28A′)と当接したとしても、オープン作動片28B(28B′)と係止片レバー20(20′)とが干渉する前であるため、係止片17(17′)をオープン動作させることはない。
【0071】
この状態は、下ドア3が完全に閉じられた全閉状態となる(ステップS11)(図14のタイミングブロックF)。
【0072】
次に、バックドアの下ドア3を全閉状態から全開状態にする動作について説明する。バックドアの下ドア3が全閉状態にある場合(図11のステップS11)(図15のタイミングブロックH)、ラッチ13(13′)が前記クローズ状態にあると共に、作動用ギヤ24(24′)がほぼ中立状態になっている。
【0073】
この状態では、ラッチスイッチ21(21′)のハーフラッチスイッチ21a(21a′)はオフ状態、フルラッチスイッチ21b(21b′)はオフ状態、カーテシスイッチ21c(21c′)はオフ状態になっている。また、作動用ギヤ24(24′)が、前記中立位置に対してドア全開側にやや寄った状態で静止した状態となっており、中立スイッチ29は、オン状態となっている。
【0074】
このような状態で、ユーザーによる下ドア3を全閉解除状態(開状態)とするためのハンドルスイッチ釦30aの操作がなされ、ハンドルスイッチ30がオフ状態からオン状態にされると(ステップS12の条件6)、次に、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′に対して全閉解除するためのモータ16aおよび16a′の駆動制御を同期して開始するようにモータ駆動回路9および10に指示し、同期全開作動状態とする(ステップS13)(図15のタイミングブロックI)。すなわち、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′のモータ16aおよび16a′の逆転駆動を同期して開始する。
【0075】
それにより、図13に示すように、作動用ギヤ24(24′)が時計方向に回動を始め、その回動角度が所定の角度に達したとき、作動ピン24B(24B′)がオープン用レバー28(28′)の被当接部28A(28A′)に当接して、オープン用レバー28(28′)が回動を始める。
【0076】
このオープン用レバー28(28′)の回動角度が、所定の角度に達した後にさらに回動されると、オープン作動片28B(28B′)が係止片レバー20(20′)に当接した状態で、係止片17(17′)がラッチ13(13′)との係合解除方向に回動される。オープン作動片28B(28B′)が図12(B)の点線で示す位置まで回動すると、係止片レバー20(20′)が点線で示す位置まで回動される(図8の状態)。その結果、係止片17(17′)とラッチ13(13′)との係合が解除され、ラッチ13(13′)は、前記バネの付勢力などによってオープン状態側に回動される。その結果、ストライカ12(12′)が、U字溝13C(13C′)から抜き取り可能な状態となり、下ドア3を全閉解除状態とすることが可能になる。
【0077】
このようにして、ラッチ13(13′)が、前記フルラッチ状態側から前記オープン状態側に回動されるとき、その回動途中で、まずフルラッチスイッチ21b(21b′)がオフ状態からオン状態に切り替わり、その後カーテシスイッチ21c(21c′)がオフ後退からオン状態に切り替わり、最後にハーフラッチスイッチ21a(21a′)がオフ状態からオン状態に切り替わる。カーテシスイッチ21c(21c′)がオン状態となったことを判定部5aが検出すると、それに応じて、制御部5bは、モータ16a(16a′)を停止するように制御する。すなわち、制御部5bは、モータ16とモータ16′を非同期的に駆動停止させる。
【0078】
このとき、ドア開閉装置11のカーテシスイッチ21cとドア開閉装置11′のカーテシスイッチ21c′の両方がオフ状態からオン状態に切り替わった時点で、判定部5aは、全てのドア開閉装置のラッチがオープン状態になり、下ドア3が手動等による開方向への移動が可能な状態になって、全ての全開作動が終了した(条件7)と判断し(ステップS14)、次のステップに進む。
【0079】
次に、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を全開復帰待機状態とし、所定時間(たとえば、0.3秒)待機する(ステップS15)(図15のタイミングブロックJ)。
【0080】
次に、判定部5aが、全開復帰待機時間終了(条件8)と判断すると(ステップS16)、次に、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′を同期全開復帰作動(中立位置回帰作動)状態とする(ステップS17)(図15のタイミングブロックK)。すなわち、制御部5bは、ドア開閉装置11および11′のモータ16aおよび16a′の正転駆動を同期して開始する。
【0081】
モータ16a(16a′)の正転駆動により、作動用ギヤ24(24′)が反時計方向に回動を始め、前記中立位置に至った状態まで回動されると、中立スイッチ29(29′)が、オン状態からオフ状態に切り替わると共に、この切り替わりが発生したことが判定部5aに伝えられる。
【0082】
判定部5aは、この切り替わりの発生により、作動用ギヤ24(24′)が前記中立位置に至った中立位置回帰終了(条件9)と判断し、それに応じて、制御部5bは、モータ16a(16a′)を停止するように制御する(ステップS18)。このとき、作動用ギヤ24(24′)は、制御部5bによる制御のタイムラグやモータ部16(16′)および作動用ギヤ24(24′)自身の機械的慣性により、前記中立位置をやや超えた位置で停止する。この状態では、作動用ギヤ24(24′)が、前記中立位置に対してドア全閉側にやや寄った状態となっている。この中立位置をやや超えた位置においては、作動ピン24B(24B′)がクローズ用レバー26(26′)の被当接部26A(26A′)と当接したとしても、クローズ作動片26B(26B′)と係合ピン18C(18C′)とが干渉する前であるため、ラッチ13をクローズ動作させることはない。
【0083】
この状態は、ドア開閉装置11(11′)の全開状態側への全ての動作が終了し、下ドア3が手動等による開方向への移動が可能な全開状態であり、ステップS1に戻った状態となっている(図15のタイミングブロックL)。
【0084】
以上説明したように、本発明の車両用ドア開閉システムによれば、バックドアの開閉を複数のモータを用いて容易かつ確実に開閉制御を行うことができ、ユーザへの荷重負荷が軽減されると共に、ドアの半嵌合(いわゆる、半ドア)をなくすことができ、操作性、利便性が向上する。また、バックドアの開から閉への制御時、複数のドア開閉装置の全てがハーフラッチ状態になるまで、全閉動作を開始しないので、片半ドア時の原因でもあるユーザの挟まれを防いで人体の安全を確保し、異物挟み込みによる車両故障や変形を防ぐことが可能になる。また、バックドアの複数箇所に配置された複数のモータを同期的に駆動制御しているので、単一モータを制御しているかのようなスムーズ感を実現し、違和感を与えることがなく、高品質化を実現することができる。また、複数のモータを必ず同時に駆動制御しているので、モータ作動音のズレ、長時間化を防ぎ、静寂化が可能になり、高品質の車両用ドア開閉システムを提供することができる。
【0085】
以上の通り、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0086】
たとえば、上述の実施の形態では、車両ボディ側にストライカが配置され、車両ドア側にドア開閉装置が設けられている場合について説明したが、これに代えて、車両ドア側にストライカを配置し、車両ボディ側にドア開閉装置を設けても良い。
【0087】
また、上述の実施形態では、所定時間の間作動待機状態となるようになっているが、これに代えて、作動待機状態を持たない作動としても良い。
【0088】
また、上述の実施の形態では、車両の跳ね上げ式の上ドアと跳ね下げ式の下ドアで構成されるバックドアにおける下ドアの開閉制御に用いられる場合について説明したが、本発明はこれに限らず、複数のモータを用いてドアの開閉を行うものであれば、車両のいずれのドアの開閉にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用ドア開閉システムが適用される車両の要部を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用ドア開閉システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両用ドア開閉システムを構成するドア開閉装置の機械的概要を示す斜視図である。
【図4】作動用ギヤがほぼ中立位置にある状態のドア開閉装置の要部を示す状態説明図である。
【図5】ドア開閉装置のラッチ機構の要部を示す平面図である。
【図6】ドア開閉装置の要部を示す作動説明図である。
【図7】ドア開閉装置の要部を示す作動説明図である。
【図8】ドア開閉装置の要部を示す作動説明図である。
【図9】ドア開閉装置の中立スイッチの作動説明図である。
【図10】ドア開閉装置のラッチ状態検出スイッチの作動説明図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る車両用ドア開閉システムの動作を説明する状態遷移図である。
【図12】(A)および(B)は、それぞれ全開状態からクローズ方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部を示す作動説明図である。
【図13】(A)および(B)は、それぞれ全閉状態からオープン方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部を示す作動説明図である。
【図14】全開状態からクローズ方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部の信号タイミングチャートである。
【図15】全閉状態からオープン方向へ作動する場合のドア開閉装置の要部の信号タイミングチャートである。
【図16】(A)および(B)は、それぞれ、従来の車両におけるバックドアの開閉方式を説明する図である。
【図17】図16(B)の開閉方式におけるロック機構の配置を説明する図である。
【符号の説明】
【0090】
4 コントロールユニット(制御手段)
11,11′ ドア開閉装置
12 ストライカ(係合部材)
13 ラッチ
14 ラッチ機構
16a,16a′ モータ
21、21′ ラッチスイッチ(状態検出手段)
30 ハンドルスイッチ(開指示信号出力手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアが全閉状態または全開状態になるように開閉制御する車両用ドア開閉システムにおいて、
車両ドアまたは車両ボディに設けられた複数のドア開閉装置であって、各々のドア開閉装置が、車両ボディまたは車両ドアに設けられた係合部材にハーフラッチ状態またはフルラッチ状態になるように係合されるラッチ機構と、該ラッチ機構を駆動するモータと、前記ラッチ機構のラッチ状態を検出するラッチ状態検出手段とを有する、複数のドア開閉装置と、
前記車両ドアを全開状態から全閉状態にする場合に、前記複数のドア開閉装置の全てのラッチ状態検出手段がハーフラッチ状態となったことを検出したときに、前記複数のドア開閉装置の全てのモータを同期的に駆動開始し、前記ラッチ機構が前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態になるように駆動する制御手段と、
を備えていることを特徴とする車両用ドア開閉システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ドア開閉システムにおいて、
前記車両ドアを全閉状態から全開状態にする場合に前記制御手段に開指示信号を出力する開指示信号出力手段をさらに備え、
前記制御手段は、さらに、前記開指示信号出力手段からの前記開指示信号の入力に応じて、前記複数のドア開閉装置の全てのモータを同期的に駆動開始し、前記ラッチ機構が前記フルラッチ状態から前記ハーフラッチ状態になるように駆動することを特徴とする車両用ドア開閉システム。
【請求項1】
車両ドアが全閉状態または全開状態になるように開閉制御する車両用ドア開閉システムにおいて、
車両ドアまたは車両ボディに設けられた複数のドア開閉装置であって、各々のドア開閉装置が、車両ボディまたは車両ドアに設けられた係合部材にハーフラッチ状態またはフルラッチ状態になるように係合されるラッチ機構と、該ラッチ機構を駆動するモータと、前記ラッチ機構のラッチ状態を検出するラッチ状態検出手段とを有する、複数のドア開閉装置と、
前記車両ドアを全開状態から全閉状態にする場合に、前記複数のドア開閉装置の全てのラッチ状態検出手段がハーフラッチ状態となったことを検出したときに、前記複数のドア開閉装置の全てのモータを同期的に駆動開始し、前記ラッチ機構が前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態になるように駆動する制御手段と、
を備えていることを特徴とする車両用ドア開閉システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ドア開閉システムにおいて、
前記車両ドアを全閉状態から全開状態にする場合に前記制御手段に開指示信号を出力する開指示信号出力手段をさらに備え、
前記制御手段は、さらに、前記開指示信号出力手段からの前記開指示信号の入力に応じて、前記複数のドア開閉装置の全てのモータを同期的に駆動開始し、前記ラッチ機構が前記フルラッチ状態から前記ハーフラッチ状態になるように駆動することを特徴とする車両用ドア開閉システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−144416(P2008−144416A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330921(P2006−330921)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]