説明

車両用ニーエアバッグ装置

【課題】グラブドアが開放位置にある場合には、グラブドアを閉位置に戻すことで、ニーエアバッグによる乗員の膝の拘束性能を確保する。
【解決手段】インフレータ16からニーエアバッグ14内に供給されたガスの一部が小型エアバッグ50に供給されるようになっている。この際、グラブドア22が開放位置にある場合には、小型エアバッグ50の膨張により展開したドア部36Aが当接するグラブドア本体30の下壁部30Bと、グラブドア22に形成された凸部22Aとの間で小型エアバッグ50が膨張展開するようになっている。このため、小型エアバッグ50は凸部22Aをグラブドア22の回転軸Lを中心に、グラブドア22を開放位置から閉位置へ移動する方向へ押圧することでグラブドア22が閉じられる。その後、ニーエアバッグ14が乗員の膝24とグラブドア22との間に展開し、乗員の膝24を拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突時にニーエアバッグを膨張展開させて乗員の膝を拘束する車両用ニーエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ニーエアバッグ及びインフレータを有するニーエアバッグモジュールを、グラブボックスのドア(グラブドア)に内蔵した構造が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】独国特許出願公開第4209604号明細書
【特許文献2】米国特許第6276713号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、ニーエアバッグがグラブドアに内蔵されている。このため、グラブドアが開いている状態でニーエアバッグが展開した場合には、ニーエアバッグの展開方向が、グラブドアが閉位置にある場合のニーエアバッグの展開方向からずれる。この結果、乗員の膝の拘束性能を確保するためには、ニーエアバッグを大きく設定したり、膨張展開形状を変更する等の対策が必要となり、装置が大型化する等の不具合がある。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、グラブドアが開放位置にある場合には、グラブドアを閉位置に戻すことで、ニーエアバッグによる乗員の膝の拘束性能を確保できる車両用ニーエアバッグ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の車両用ニーエアバッグ装置は、車両のグラブボックスの乗員側外壁を構成するグラブドアに設けられ、該グラブドアと乗員の膝との間に膨張展開して該膝を拘束可能なニーエアバッグと、前記ニーエアバッグの膨張展開に先行して、開放位置にある前記グラブドアを閉位置へ移動するグラブドア駆動手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
従って、車両のグラブボックスの乗員側外壁を構成するグラブドアに設けられたニーエアバッグがグラブドアと乗員の膝との間に膨張展開することにより、乗員の膝を拘束することができる。また、グラブドア駆動手段がニーエアバッグの膨張展開に先行して、開放位置にあるグラブドアを閉位置へ戻すので、閉位置に戻ったグラブドアからニーエアバッグがグラブドアと乗員の膝との間に膨張展開する。このため、グラブドアが開放位置にある場合には、グラブドアを閉位置に戻すことで、ニーエアバッグによる乗員の膝の拘束性能を確保できる。
【0007】
請求項2は請求項1に記載の車両用ニーエアバッグ装置において、前記グラブドア駆動手段は、前記ニーエアバッグの膨張展開に先行して膨張展開可能とされ、膨張展開することで開放位置にある前記グラブドアを閉位置へ移動するグラブドア閉じ用エアバッグであることを特徴とする。
【0008】
従って、グラブドア閉じ用エアバッグがニーエアバッグの膨張展開に先行して膨張展開することで開放位置にあるグラブドアを閉位置へ戻すのことで、閉位置に戻ったグラブドアからニーエアバッグがグラブドアと乗員の膝との間に膨張展開する。このため、グラブドアが開放位置にある場合には、グラブドアを閉位置に戻すことで、ニーエアバッグによる乗員の膝の拘束性能を確保できる。
【0009】
請求項3は請求項2に記載の車両用ニーエアバッグ装置において、前記グラブドア閉じ用エアバッグは、前記ニーエアバッグに連通されており、前記ニーエアバッグに比べて小型のエアバッグであることを特徴とする。
【0010】
グラブドア閉じ用エアバッグがニーエアバッグに連通されているため、グラブドア閉じ用エアバッグを簡単な構成で膨張展開させることができる。また、グラブドア閉じ用エアバッグがニーエアバッグに比べて小型のエアバッグであるため、グラブドア閉じ用エアバッグがニーエアバッグに先行して展開を完了することで、グラブドアを迅速に閉じることができる。
【0011】
請求項4は請求項2または請求項3に記載の車両用ニーエアバッグ装置において、前記グラブドアに形成され、膨張展開する前記グラブドア閉じ用エアバッグから荷重を受けることで、前記開放位置にある前記グラブドアが閉位置へ移動する荷重受部を有することを特徴とする。
【0012】
グラブドアに形成された荷重受部が、膨張展開するグラブドア閉じ用エアバッグから荷重を受けることで、開放位置にあるグラブドアが閉位置へ移動するので、グラブドアの移動機構を簡単にできる。
【0013】
請求項5は請求項4に記載の車両用ニーエアバッグ装置において、前記荷重受部は、前記グラブドアの回転軸を挟んで前記グラブドアの反対側へ突出形成された凸部であることを特徴とする。
【0014】
荷重受部がグラブドアの回転軸を挟んでグラブドアの反対側へ突出形成された凸部であるため、グラブドアから展開するニーエアバッグの展開の邪魔にならない位置で、グラブドア閉じ用エアバッグを展開できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両用ニーエアバッグ装置によれば、グラブドアが開放位置にある場合には、グラブドアを閉位置に戻すことで、ニーエアバッグによる乗員の膝の拘束性能を確保できる。
【0016】
請求項2に記載の車両用ニーエアバッグ装置によれば、グラブドアが開放位置にある場合には、グラブドアを閉位置に戻すことで、ニーエアバッグによる乗員の膝の拘束性能を確保できる。
【0017】
請求項3に記載の車両用ニーエアバッグ装置によれば、請求項2に記載の効果に加えて、グラブドア閉じ用エアバッグを簡単な構成で膨張展開させることができると共に、グラブドアを迅速に閉じることができる。
【0018】
請求項4に記載の車両用ニーエアバッグ装置によれば、請求項2または請求項3に記載の効果に加えて、グラブドアの移動機構を簡単にできる。
【0019】
請求項5に記載の車両用ニーエアバッグ装置によれば、請求項4に記載の効果に加えて、ニーエアバッグの展開の邪魔にならない位置で、グラブドア閉じ用エアバッグを展開できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明における車両用ニーエアバッグ装置の一実施形態を図1〜図6に従って説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0021】
図1には本発明の一実施形態に係る車両用ニーエアバッグ装置を搭載した車両のインストルメントパネル付近が車室内から見た正面図で示されており、図2には図1の2−2断面線に沿った拡大断面図が示されている。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態のグラブドア内蔵型の車両用ニーエアバッグ装置10は、車両12の助手席(図示せず)に対応して設けられたニーエアバッグ装置である。
【0023】
図2に示されるように、車両用ニーエアバッグ装置10のニーエアバッグ14は、車両12のグラブボックス20の乗員側外壁を構成するグラブドア22内に折畳み収納され、該グラブドア22と乗員の膝24(図6参照)との間に膨張展開して該膝24を拘束可能に構成されている。
【0024】
なお、ニーエアバッグ14の折畳み形状はロール折り、蛇腹折り、両者を組み合わせて折り畳んでもよい。
【0025】
図1に示されるように、インストルメントパネル28の助手席側で乗員の膝と対向する位置(より正確には、インストルメントパネル28の下部を構成するインストルメントパネルロア28Aの上部)には、小物を入れるためのグラブボックス20が組み込まれて固定されている。
【0026】
図2に示されるように、グラブボックス20は、ボックス状に形成された樹脂製のグラブボックス本体30と、このグラブボックス本体30の車両後方側に形成された開口部31を開閉するグラブドア20と、によって構成されている。
【0027】
グラブボックス本体30は、上壁部30A、下壁部30B、前壁部30C及び左右一対の側壁部30Eとを一体的に有している。さらに、下壁部30Bの下面には、ガス発生手段としてのインフレータ16を固定するためのボス部30Dが突出形成されている。
【0028】
なお、グラブボックス本体30における下壁部30Bの前後長は上壁部30Aの前後長よりも短く設定されており、これによりグラブボックス本体30の開口部31は、インストルメントパネル28の上部を構成するインストルメントパネルアッパ28B(図1参照)とこれに続くインストルメントパネルロア28Aとの連続性のある意匠面(ラウンドした曲面)に沿うようになっている。
【0029】
また、グラブドア22は、閉位置(閉止時)において乗員側(車両後方側)に位置するアウタパネル34と、閉止時において反乗員側(車両前方側)に位置するインナパネル36とを組み合わせ、内部にニーエアバッグ14の搭載スペース38を確保した蓋体であり、下端部に設けられた回転軸としてのスタッド40を介して、インストルメントパネル28に組み付けられている。また、グラブドア22は、このスタッド40を回転中心としてグラブボックス本体30の開口部31を開閉可能に構成されている。
【0030】
ニーエアバッグ14は、例えばグラブドア22のインナパネル36に取り付けられている。グラブドア22のアウタパネル34のうち、折畳み状態のニーエアバッグ14と対向する位置には、所謂ティアライン42が設けられている。このティアライン42は、ニーエアバッグ14の膨張圧により破断する例えばH形に形成された破断予定部であり、乗員側から視認できないようにアウタパネル34の裏面に設けられている。
【0031】
なお、このグラブドア22のように、外部(乗員側)からティアライン42が視認不能なインビジブルタイプで破断部を構成してもよいし、グラブドア一般部を表裏両面側から薄肉化させて外部(乗員側)から破断部が視認可能なビジブルタイプで破断部を構成してもよい。
【0032】
また、ティアライン42をH形に形成することで、ニーエアバッグ14の膨張展開時に、アウタパネル34のうちティアライン42に沿う部分が上下一対のドア部34Aとなって、乗員側かつ車両上方及び車両下方に夫々展開するようになっている(図6参照)。なお、ニーエアバッグ14の取付け位置は、インナパネル36に限られるものではなく、アウタパネル34であってもよい。
【0033】
図2〜図4に示されるように、インフレータ16は、グラブボックス本体30に配設され、ニーエアバッグ14内に膨張用のガスを供給する。また、インフレータ16は、グラブボックス20におけるグラブボックス本体30の車両下方において、グラブドア22を開閉する際の回転中心に近い位置に配設され、例えば、取付けブラケット46及び固定ねじ44を用いることで、グラブボックス本体30の下壁部30Bのボス部30Dに締結固定されている。
【0034】
インフレータ16は、ワイヤーハーネス48を介してエアバッグECU(図示せず)に接続されており、該エアバッグECUからの作動電流により作動して、ニーエアバッグ14に対して膨張用のガスを供給するように構成されている。エアバッグECUは、衝突センサ(図示せず)からの信号により車両の前面衝突を判定した際に、インフレータ16に対して作動電流を流すように構成されている。なお、ガス供給管18は、可撓性を有しており、インフレータ16とニーエアバッグ14とを連通している。
【0035】
図4に示されるように、ガス供給管18の一端18Aは、例えばクランプ49を用いてインフレータ16に連結されており、ガス供給管18の他端18Bは、グラブドア22の閉止時におけるニーエアバッグ14の下縁部に連結されている。ガス供給管18の材質には、布や軟質の剛性樹脂、ゴム等が用いられる。
【0036】
ニーエアバッグ14の展開タイミングを早めるためには、ガス供給管18の長さはなるべく短い方が好ましく、またインフレータ16はニーエアバッグ14に接近して配設されることが望ましい。
【0037】
図3に示されるように、ニーエアバッグ14にはグラブドア駆動手段であるグラブドア閉じ用エアバッグとしての小型エアバッグ50が連結されている。この小型エアバッグ50は、折り畳まれたニーエアバッグ14のスタッド40に近い側の端部14Aにおけるガス供給管18の連結部近傍に連結路52によって連通されている。
【0038】
従って、インフレータ16からニーエアバッグ14内に供給されたガスの一部が連結路52を通って、小型エアバッグ50に供給されることで、小型エアバッグ50が膨張展開するようになっている。
【0039】
図4に示されるように、小型エアバッグ50は、ニーエアバッグ14に比べて小型となっており、ニーエアバッグ14の膨張展開に先行して膨張展開可能とされている。即ち、小型エアバッグ50は、ニーエアバッグ14に先行して膨張展開が完了するようになっている。
【0040】
図5に示されるように、インナパネル36の下端部における車幅方向中央部には、所謂ティアライン54が設けられている。このティアライン54は、小型エアバッグ50の膨張圧により破断する、例えばコ字形に形成された破断予定部であり、視認できないようにインナパネル36の裏面に設けられている。
【0041】
また、ティアライン54をコ字形に形成することで、小型エアバッグ50の膨張展開時に、インナパネル36のうちティアライン54に沿う部分がドア部36Aとなって、図3及び図2に二点鎖線で示すようにグラブボックス本体30の下壁部30Bの下方側に展開するようになっている。
【0042】
なお、ティアライン54はインナパネル36を表裏両面側から薄肉化させた構成としてもよい。
【0043】
図3に二点鎖線で示すように、ドア部36Aが展開し開口部56が形成されると、小型エアバッグ50は、この開口部56から膨出して、グラブドア22に形成された荷重受部としての凸部22Aと、展開したドア部36Aが当接する下壁部30Bとの間で膨張展開するようになっている。
【0044】
図5に示されるように、凸部22Aは、グラブドア22におけるインナパネル36のスタッド40に近い側の端部の車幅方向中央部、即ち、ティアライン54に対応する位置に設けられており、回転軸Lを挟んでグラブドア22の反対側へ突出形成されている。
【0045】
従って、図3及び図2に示されるように、開口部56から膨出した小型エアバッグ50が、展開したドア部36Aが当接するグラブボックス本体30の下壁部30Bと凸部22Aとの間で膨張展開することによって、小型エアバッグ50が凸部22Aを、グラブドア22が開放位置(図3の位置を含むグラブドア22が僅かでも開いた状態の位置)から閉位置(図2に示すようにグラブドア22が完全に閉じた位置)へ移動する方向(図2、3の矢印A方向)へ押圧するようになっている。
【0046】
このため、グラブドア22が開放位置から閉位置の方向(図2、3の矢印B方向)へ回転し、グラブドア22が完全に閉じられ(閉位置になり)、その後、図6に示されるように、ニーエアバッグ14が乗員の膝24とグラブドア22との間に展開する構成になっている。
【0047】
なお、ニーエアバッグ14をインナパネル36に取り付ける手段は任意であるが、例えば、図示を省略したが、インナパネル36の裏面側(搭載スペース38に近い側)に突出形成されたリブに係止金具を用いてケースを取り付け、該ケース内にニーエアバッグ14を収納し、ケースはニーエアバッグの膨張圧により破断するように構成してもよい。
【0048】
なお、上記グラブドア22の上縁側には図示しない解除ノブが設けられており、乗員が指で操作することにより、グラブボックス本体16の開口部31に設けられた図示しないロック機構との係合状態が解除され、図示しないスプリング等の付勢手段の付勢力によって下端部回りに室内側へ回動する(開く)ようになっている。
【0049】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0050】
本実施形態は、上記のように構成されており、図1に示されるように、車両用ニーエアバッグ装置10のニーエアバッグ14がグラブドア22内に折畳み収納され、インフレータ16がグラブボックス本体30の下壁部下面に配設されているので、インフレータ16をグラブドア22内に配設する場合と比較して、該グラブドア22の質量を抑制すると共に、グラブドア22の厚さを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、車両が例えば前面衝突時し、衝突センサからの信号に基づいて、エアバッグECUが該前面衝突の発生を判定すると、インフレータ16に対して点火電流が流される。インフレータ16は、該点火電流により作動して、多量のガスを発生させる。このガスがニーエアバッグ14に供給されることで、該ニーエアバッグ14が膨張し始める。
【0052】
また、インフレータ16からニーエアバッグ14内に供給されたガスの一部が連結路52を通って小型エアバッグ50に供給されるため、小型エアバッグ50が膨張展開する。図6に示されるように、小型エアバッグ50は、ニーエアバッグ14に比べて小型となっており、ニーエアバッグ14の膨張展開に先行して膨張展開し、ニーエアバッグ14に先行して膨張展開が完了する。
【0053】
また、図5に示されるように、インナパネル36にはティアライン54が設けられており、このティアライン54が小型エアバッグ50の膨張圧により破断するため、インナパネル36のうちティアライン54に沿う部分がドア部36Aとなって、図3及び図2に二点鎖線で示すようにグラブボックス本体30の下壁部30Bの下方に展開する。
【0054】
ドア部36Aが展開し開口部56が形成されると、小型エアバッグ50は、この開口部56から膨出して、グラブドア22に形成された荷重受部としての凸部22Aを下方(図3の矢印A方向)へ押圧する。
【0055】
即ち、図5に示されるように、凸部22Aはグラブドア22の回転軸Lを挟んでグラブドア22の反対側へ突出形成されているため、図2に示されるように、開口部56から膨出した小型エアバッグ50が、展開したドア部36Aが当接するグラブボックス本体30の下壁部30Bと凸部22Aとの間で膨張展開する。このため、小型エアバッグ50は凸部22Aをグラブドア22の回転軸Lを中心に、グラブドア22を開放位置から閉位置へ移動する方向(図2、3の矢印A方向)へ押圧する。この結果、グラブドア22が開放位置から閉位置の方向(図2、3の矢印B方向)へ回転し、グラブドア22が完全に閉じられる(閉位置になる)。
【0056】
その後、グラブドア22のアウタパネル34に設けられているティアライン42がニーエアバッグ14の膨張圧により破断し、図6に示されるように、該アウタパネル34のうちティアライン42に沿った部分が、一対のドア部34Aとなって、乗員側かつ車両上方及び車両下方に夫々展開し、開口部58が形成される。ニーエアバッグ14は、この開口部58から乗員側へ膨出して、該乗員の膝24とグラブドア22との間に展開する。このようにして展開したニーエアバッグ14により、乗員の膝24を拘束する。
【0057】
従って、本実施形態では、グラブドア22が開放位置にある場合には、小型エアバッグ50によりグラブドア22を閉位置に戻すことで、ニーエアバッグ14による乗員の膝24の拘束性能を確保できる。
【0058】
また、本実施形態では、小型エアバッグ50がニーエアバッグ14に連結路52によって連通されているため、小型エアバッグ50を簡単な構成で膨張展開させることができる。また、小型エアバッグ50がニーエアバッグ14に比べて小型のエアバッグであるため、小型エアバッグ50がニーエアバッグ14に先行して展開を完了することで、グラブドア22を迅速に閉じることができる。
【0059】
また、本実施形態では、グラブドア22に形成された荷重受部としての凸部22Aが、膨張展開する小型エアバッグ50から荷重を受けることで、開放位置にあるグラブドア22が閉位置へ移動するので、グラブドア22の移動機構を簡単にできる。
【0060】
また、本実施形態では、荷重受部がグラブドア22の回転軸Lを挟んでグラブドア22の反対側へ突出形成された凸部22Aであるため、グラブドア22から展開するニーエアバッグ14の邪魔にならない位置で、小型エアバッグ50を展開できる。
【0061】
更に、本実施形態では、車両衝突時にグラブドア22が閉じるため、グラブボックス20内の物が、グラブボックス20から車室内に落ちるのを防止できる。
【0062】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、グラブドア駆動手段をグラブドア閉じ用エアバッグとしての小型エアバッグ50としたが、グラブドア駆動手段はグラブドア閉じ用エアバッグに限定されず、モータやソレノイドとプランジャ等の他のグラブドア駆動手段によって、ニーエアバッグの膨張展開に先行して、開放位置にあるグラブドアを閉位置へ移動する構成としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、グラブドア駆動手段をグラブドア閉じ用エアバッグとしての小型エアバッグ50としたが、グラブドア駆動手段をニーエアバッグ14の一部で構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、グラブドア閉じ用エアバッグとしての小型エアバッグ50を連結路52によってニーエアバッグ14に連通したが、これに代えて、小型エアバッグ50をニーエアバッグ14に直接連通した構成としてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、グラブドア閉じ用エアバッグとしての小型エアバッグ50をニーエアバッグ14に連通したが、これに代えて、グラブドア閉じ用エアバッグをニーエアバッグ14から切り離し、インフレータ16からガスを直接送り込む構成としてもよい。また、グラブドア閉じ用エアバッグ専用のインフレータを別途設けた構成としてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、荷重受部としての凸部22Aをグラブドア22の回転軸Lを挟んでグラブドア22の反対側へ突出形成したが、荷重受部は凸部22Aに限定されず、膨張展開するグラブドア閉じ用エアバッグとしての小型エアバッグ50が展開することで、開放位置にあるグラブドア22が閉位置へ移動する構成であれば他の構成であってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、グラブドア22のアウタパネル34にティアライン42を設け、該ティアライン42がニーエアバッグ14の膨出圧により破断することで、該ニーエアバッグ14がグラブドア22内から乗員側に膨出することとしたが、このようにニーエアバッグ14を膨出させる手段は、ティアライン42に限られるものではない。例えば、アウタパネル34に設けた別体式のドア部が、ニーエアバッグ14の膨張展開時に離脱することで、グラブドア22に開口部が形成されるようにしてもよい。またアウタパネル34がインナパネル36から離脱するように構成してもよい。
【0068】
同様に、小型エアバッグ50を膨出させる手段は、ティアライン54に限られるものではない。
【0069】
また、上記実施形態では、広義にはガス発生手段として把握される要素であるインフレータ16をグラブボックス本体30に配設したが、これに代えて、インフレータ16をグラブドア22に設けてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、前面衝突時に車両用ニーエアバッグ装置10が作動するものとして説明したが、これに限らず、プリクラッシュセンサ等の衝突予知手段を車両に搭載させて、衝突予知手段によって衝突することが予知された場合に車両用ニーエアバッグ装置を作動させるようにしてもよい。
【0071】
また、グラブドア内蔵型の車両用ニーエアバッグ装置といった場合の「内蔵」の語について補足すると、ニーエアバッグ装置の主要な構成要素のすべてがグラブドアの内部に配設されている必要はなく、少なくともニーエアバッグがグラブドアの内部に配設されていれば「内蔵」に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ニーエアバッグ装置を搭載した車両のインストルメントパネル付近を示す車室内から見た正面図である。
【図2】図1の2−2断面線に沿った拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用ニーエアバッグ装置のグラブドアを開いた状態を示す図2に対応する断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用ニーエアバッグ装置のグラブドアを開いた状態において、小型エアバッグの展開初期状態を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両用ニーエアバッグ装置のグラブドアを示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両用ニーエアバッグ装置のニーエアバッグ展開状態を示す図2に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0073】
10 車両用ニーエアバッグ装置
14 ニーエアバッグ
16 インフレータ
20 グラブボックス
22 グラブドア
22A グラブドアの凸部(荷重受部)
24 乗員の膝
28 インストルメントパネル
30 グラブボックス本体
36 グラブドアのインナパネル
50 小型エアバッグ(グラブドア駆動手段、グラブドア閉じ用エアバッグ)
52 連結路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のグラブボックスの乗員側外壁を構成するグラブドアに設けられ、該グラブドアと乗員の膝との間に膨張展開して該膝を拘束可能なニーエアバッグと、
前記ニーエアバッグの膨張展開に先行して、開放位置にある前記グラブドアを閉位置へ移動するグラブドア駆動手段と、
を有することを特徴とする車両用ニーエアバッグ装置。
【請求項2】
前記グラブドア駆動手段は、前記ニーエアバッグの膨張展開に先行して膨張展開可能とされ、膨張展開することで開放位置にある前記グラブドアを閉位置へ移動するグラブドア閉じ用エアバッグであることを特徴とする車両用ニーエアバッグ装置。
【請求項3】
前記グラブドア閉じ用エアバッグは、前記ニーエアバッグに連通されており前記ニーエアバッグに比べて小型のエアバッグであることを特徴とする請求項2に記載の車両用ニーエアバッグ装置。
【請求項4】
前記グラブドアに形成され、膨張展開する前記グラブドア閉じ用エアバッグから荷重を受けることで、前記開放位置にある前記グラブドアが閉位置へ移動する荷重受部を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両用ニーエアバッグ装置。
【請求項5】
前記荷重受部は、前記グラブドアの回転軸を挟んで前記グラブドアの反対側へ突出形成された凸部であることを特徴とする請求項4に記載の車両用ニーエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−56850(P2009−56850A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223879(P2007−223879)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】