説明

車両用パネル部材等の取付け部材取付け構造

【課題】車両の内装材を構成するパネル部材等の取付け部材を被取付け部材側に取付けるために、取付け部材側の係止片に設けた係合爪部を被取付け部材側の係合孔に係合した際に、係止片の位置規制を係合孔内で確実に行うことができるように構成した。
【解決手段】ラゲージサイドパネル10を取付け部材側であるロア側パネル11と被取付け部材側であるアッパー側パネル12とで構成し、ロア側パネル11側に弾性変形可能な係止片14を設け、アッパー側パネル12側に係止片14に形成した係合爪部14aを係合する係合孔15を設けて、係合孔15に係合爪部14aを係合することにより、ロア側パネル11をアッパー側パネル12に取付ける場合、アッパー側パネル12における係合孔15近傍に、係合爪部14aの係合過程において係合孔15の弾性変形を助長する逃げ孔18を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラゲージサイドパネルを上下分割構成として、これら上下分割パネル同士を取付けるようになした車両用パネル部材等の取付け部材取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種の取付け構造は、例えば、図5及び図6に示すような構成を採っている。
【0003】
即ち、車両用パネル部材、例えばラゲージサイドパネル1は、車両上下方向に2分割した分割パネル1aと分割パネル1bとを取付け手段2を用いて組立てられて構成している。
【0004】
取付け手段2は、一方の分割パネル1a側に、門型の係止片基部3を突出形成し、係止片基部3の内壁に一方の分割パネル1a側に延在する係止片4を形成して、係止片4の先端部に係合爪部4a設け、更に、他方のパネル1b側に係合孔5を設けて、係合孔5に係止片4を挿入して、係合爪部4aを係合孔5に係合することによって構成していた。
【0005】
そして、一方の分割パネル1aを他方の分割パネル1bに取付けるには、係合爪部4aを係合孔5の内壁を摺動させながら係合孔5に挿入して、係止片4を係合爪部4aに対して反対側に撓ませ、係合爪部4aが係合孔5を挿通した後に、係止片4の撓みが元に戻って、係合爪部4aを係合孔5に係合することによって行う。
【0006】
しかし、このような門型の係止片基部3に設けた係止片4を係合孔5に係合して、一方の分割パネル1aを他方の分割パネル1bに取付ける取付け構造では、一方の分割パネル1aと他方の分割パネル1bにおける取付け間隙寸法wが非常に大きい場合や逆に小さ過ぎで門型の係止片基部3に設けた係止片4を所定の大きさに形成できないときがあって、使用不可の場合がある。
【0007】
そこで、従来、このような対策として、図7に示すような方法がまた採用されている。
【0008】
即ち、一方の分割パネル1bの端部から延在するように屈曲形成部1a―1を形成し、屈曲形成部1a―1の肉厚先端部分に係止片4を形成し、係止片4の先端部分に係合爪部4aを形成し、係合爪部4aを他方の分割パネル1b側の係合孔5に係合することによって、一方の分割パネル1aを他方の分割パネル1bに取付けるようにしていた。
【0009】
そして、この方式によれば、係止片4を形成する屈曲形成部1a―1の高さ寸法xが、上記従来技術における取付け間隙寸法wより大きく取ることによって、上記従来技術の課題を解決しているものである。
【0010】
加えて、屈曲形成部1a―1における係合爪部4aに対して反対側に位置するように、他方の分割パネル1bに位置決めリブ6を設けてある。位置決めリブ6は、一方の分割パネル1a側に行くに従って幅広となる断面三角形状を呈しており、屈曲形成部1a―1に当接して、係止片4延いては係合爪部4aと係合孔5との係合関係を保持するための位置規制を行っている。
【特許文献1】特開2003−237491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように構成する図7に示す従来技術においては、位置決めリブ6の屈曲形成部1a―1における当接位置7を、係合爪部4a側に近接させてしまうと、屈曲形成部1a―1を通して係止片4が余り弾性変形できないことになって、係合爪部4aの係合孔5への係合が不可能となってしまう。
【0012】
このために、位置決めリブ6は、一方の分割パネル1a側に行くに従って幅広となる断面三角形状に形成して、前記当接位置7を一方の分割パネル1a側に位置させるように構成する必要がある。
【0013】
この結果、位置決めリブ6の屈曲形成部1a―1との当接位置7と他方の分割パネル1bとの距離yが長くなって、係合爪部4aにおける係合孔5とのラップ代zが小さくなってしまい、係止片4と係合孔4aとの間に隙間が形成され、他方の分割パネル1bに対する一方の分割パネル1aの位置規制が確実に行えないおそれがあった。
【0014】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、車両の内装材を構成するパネル部材等の取付け部材を被取付け部材側に取付けるために、取付け部材側の係止片に設けた係合爪部を被取付け部材側の係合孔に係合した際に、係止片の位置規制を係合孔内で確実に行うことができるように構成した車両用パネル部材等の取付け部材取付け構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、車両の内装材を構成するパネル部材等の取付け部材を被取付け部材側に取付ける場合、前記取付け部材側に弾性変形可能な係止片を設けると共に、前記被取付け部材側に前記係止片に形成した係合爪部を係合する係合孔を設けて、この係合孔に前記係合爪部を係合することにより、前記取付け部材を前記被取付け部材に取付けるように構成した車両用パネル部材等の取付け部材取付け構造であって、前記被取付け部材における前記係合孔近傍に、前記係合爪部の係合過程において前記係合孔の弾性変形を助長する逃げ孔を形成したことを特徴とするものである。
【0016】
かかる構成により、取付け部材側の係止片に設けた係合爪部を被取付け部材側の係合孔に係合させる際に、逃げ孔を設けたことにより、係合爪部が係合孔を通過可能にするために係合孔が弾性変形することの助長されて拡開することになり、そして、係合爪部が通過して係合孔に係合した後は、係合孔の形状は元に復帰して、係合孔による係合爪部の係合規制を堅固に行い、被取付け部材に対する取付け部材の位置規制が確実に行うことができる。
【0017】
又、本発明は、前記係止片における前記係合爪部との対向面に、前記係止片の前記係合孔内において位置規制を行う位置規制リブを形成したことを特徴とするものである。
【0018】
かかる構成により、位置規制リブが係合孔内において係止片の位置規制を更に堅固に行うことができ、被取付け部材に対する取付け部材の位置規制が更に確実に行うことができしかも、位置規制リブによる係止片の位置規制は、係合孔内において行うことから、位置規制部(従来の当接位置7に相当)を係合爪部と係合孔との係合位置に近接することができ、被取付け部材に対する取付け部材の位置規制を確実なものとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
上記のように構成する本発明は、取付け部材側の係止片に設けた係合爪部を被取付け部材側の係合孔に係合させる際に、逃げ孔を設けたことにより、係合孔が係合爪部を通過可能にするために弾性変形して拡開することになり、そして、係合爪部が通過して係合孔に係合した後は、係合孔の形状は元に復帰して、係合孔による係合爪の係合規制を堅固に行い、被取付け部材に対する取付け部材の位置規制が確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1ないし図4を用いて、本発明を実施するための最良の形態における実施例について、従来技術に対応する部位には同一符号を付すことにより説明する。
(実施例1)
【0021】
図1は本発明の実施の形態を採用した自動車のラゲージサイドパネルを裏面側から描画した概略斜視図、図2は図1のA円内を拡大して描画した正面図、図3は係合爪部が係合孔に挿入されていく過程を描画した図2のB−B断面図、図4は係合爪部が係合孔内を挿通して係合した状態を描画した図2のB−B断面図である。
【0022】
先ず、図1には、自動車用の内装材であるパネル部材としての、ラゲージサイドパネル10が示されている。
【0023】
ラゲージサイドパネル10は、その製作性或いはデザイン上等から、上下二分割構成のロア側パネル11とアッパー側パネル12とで構成している。
【0024】
ロア側パネル11は、分割側先端部に複数個の係止片14を間欠的に上方に突出するように形成し、係止片14の先端に面方向に突出する係合爪部14aを形成して、取付け部材を構成している。
【0025】
アッパー側パネル12は、分割側先端部に垂下するように係止片14に対応して取付け片部13を複数個間欠的に形成してあり、取付け片部13に係合爪部14aが係合する係合孔15を形成して、被取付け部材を構成している。
【0026】
更に、取付け片部13における係合孔15より先端側近傍に位置するように、係合孔15への係合爪部14aの係合過程において、係合孔15の弾性変形を助長する逃げ孔18が形成されている。
【0027】
又、係止片14からロア側パネル11にかけて、係合爪部14aに対向するように位置決めリブ16が形成されている。
【0028】
位置決めリブ16は、ロア側パネル11より係止片14の先端側に行くに従って、徐々に幅広となるように形成されている。
【0029】
上記のような構成において、ロア側パネル11をアッパー側パネル12に取付けて、単一のラゲージサイドパネル11を形成するには、アッパー側パネル12の取付け片部13に設けた係合孔15に、ロア側パネル11に設けた係止片14の係合爪部14aを係合して行うのであるが、この係合過程において、図3に示すように、係合爪部14aが係合孔15に嵌合されると、係合孔14aの幅寸法が元々a寸法であるところ(破線視参照)、逃げ孔18によって、係合孔15が弾性変形を助長されて、係合爪部14及び位置決めリブ16の高さ寸法に見合うだけのa′寸法まで押し広げられ、係合爪部14の挿通を許容することになる。
【0030】
その後、係合爪部14aが係合孔15を挿通すると、図4に示すように、係合孔15の幅寸法が弾性復帰力により元の寸法aまで戻り、係合爪部14aは係合孔15に係合して、ロア側パネル11は、アッパー側パネルに装着され、単一のラゲージサイドパネル11を構成することになる。
【0031】
この時、位置決めリブ16は、係合爪部14aに対して対向する当接位置17において、係合孔15の内壁に当接して、係合爪部14aによる係合孔15の内壁との当接と相俟って、係止片14の位置決めを行い、延いては、ロア側パネル11のアッパー側パネル12に対する位置規制部を構成することになる。
【0032】
なお、係合孔15の形状は、平面視扁平U字状に形成され、その両端部が逃げ孔18方向に切り欠かれていて、両切欠き部15a、15bの存在により、ヒンジともいうべき薄肉部分19が形成されて、係合孔15の弾性変形がしやすくしている。
【0033】
以上のように構成する本発明にかかる実施の形態においては、ロア側パネル11側の係止片14に設けた係合爪部14aをアッパー側パネル12側の係合孔15に係合させる際に、取付け片部13に逃げ孔18を設けたことにより、係合孔15が係合爪部14aを通過可能にするために弾性変形して拡開することになり、そして、係合爪部14aが通過して係合孔15に係合した後は、係合孔15の形状は元に復帰して、係合孔15による係合爪部14aの係合規制を堅固に行い、アッパー側パネル12に対するロア側パネル11の位置規制が確実に行うことができる。
【0034】
又、係止片14における係合爪部14aとの対向面に、係止片14の係合孔15内において位置規制を行う位置規制リブ16を形成したことにより、位置規制リブ16が係合孔15内において係止片14の位置規制を更に堅固に行うことができ、アッパー側パネル12に対するロア側パネル11の位置規制が更に確実に行うことができしかも、位置規制リブ16による係止片14の位置規制は、係合孔15内において行うことから、位置規制部17を係合爪部14aと係合孔15との係合位置に近接することができ、アッパー側パネル12に対するロア側パネル11の位置規制を確実なものとすることができる。
【0035】
なお、上記実施の形態においては、本発明をラゲージサイドパネル10に採用して、ロア側パネル11を取付け部材とし、アッパー側パネル12を被取付け部材としているが、これに限定されるものでなく、アッパー側パネル12を取付け部材とし、ロア側パネル11を被取付け部材してもよい。
【0036】
又、本発明は、ラゲージサイドパネル11に限定されるものでなく、他の内装材例えばドアトリムやリアサイドトリム等のトリム材にも適用でき、更には、取付け部材がキッキングプレート等の内装材であり、被取付け部材が車体パネルの場合等にも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明は、取付け部材側の係止片に設けた係合爪部を被取付け部材側の係合孔に係合させる際に、逃げ孔を設けたことにより、係合孔が係合爪部を通過可能にするために弾性変形して拡開することになり、そして、係合爪部が通過して係合孔に係合した後は、係合孔の形状は元に復帰して、係合孔による係合爪部の係合規制を堅固に行い、被取付け部材に対する取付け部材の位置規制が確実に行うことができるために、ラゲージサイドパネルを上下分割構成として、これら上下分割パネル同士を取付けるようになした車両用パネル部材等の取付け部材取付け構造等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態を採用した自動車のラゲージサイドパネルを裏面側から描画した概略斜視図である。
【図2】図1のA円内を拡大して描画した正面図である。
【図3】図2のB−B断面図で、係合爪部が係合孔に挿入されていく過程を描画している。
【図4】同じく、図2のB−B断面図で、係合爪部が係合孔内を挿通して係合した状態を描画している。
【図5】従来技術の一例における図4と同様の断面図である。
【図6】図5に示す係止片が形成された係止片基部の斜視図である。
【図7】従来技術の他の例における同様の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ラゲージサイドパネル(内装部材)
11 ロア側パネル(取付け部材)
12 アッパー側パネル(被取付け部材)
14 係止片
14a 係合爪部
15 係合孔
17 当接位置(位置規制部)
18 逃げ孔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装材を構成するパネル部材等の取付け部材を被取付け部材側に取付ける場合、前記取付け部材側に弾性変形可能な係止片を設けると共に、前記被取付け部材側に前記係止片に形成した係合爪部を係合する係合孔を設けて、この係合孔に前記係合爪部を係合することにより、前記取付け部材を前記被取付け部材に取付けるように構成した車両用パネル部材等の取付け部材取付け構造であって、前記被取付け部材における前記係合孔近傍に、前記係合爪部の係合過程において前記係合孔の弾性変形を助長する逃げ孔を形成したことを特徴とする車両用パネル部材等の取付け部材取付け構造。
【請求項2】
前記係止片における前記係合爪部との対向面に、係止片の前記係合孔内において位置規制を行う位置規制リブを形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用パネル部材等の取付け部材取付け構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−149825(P2008−149825A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338518(P2006−338518)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】