車両用フロントアンダーフレーム
【課題】 サスペンションクロスメンバの下方に配設される車体構造物と干渉させることなく、車幅方向からの荷重入力に対してもサスペンションロアアームの取付剛性を十分に向上することのできる車両用フロントアンダーフレームを提供する。
【解決手段】 サスペンションクロスメンバ7の中央部に固設する固定部31の近傍を起点として、端部にサスペンションクロスメンバと共にサスペンションロアアーム15のフロント連結部16がそれぞれ連結する左右一対のフロントアーム部32を延設するとともに、端部にサスペンションロアアーム15のリヤ連結部17がそれぞれ連結する左右一対のリヤアーム部33を斜め後方に延設してフロントアンダーフレーム30を構成する。
【解決手段】 サスペンションクロスメンバ7の中央部に固設する固定部31の近傍を起点として、端部にサスペンションクロスメンバと共にサスペンションロアアーム15のフロント連結部16がそれぞれ連結する左右一対のフロントアーム部32を延設するとともに、端部にサスペンションロアアーム15のリヤ連結部17がそれぞれ連結する左右一対のリヤアーム部33を斜め後方に延設してフロントアンダーフレーム30を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、フロントサスペンション取付部の剛性向上に有効な車両用フロントアンダーフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車体の前部において、フロントサスペンションを構成する左右のサスペンションロアアームは、左右のサイドフレーム、或いは、当該サイドフレーム間に架設するサスペンションクロスメンバ等の車体部材に対し、それぞれ前後2箇所がブラケット等を介して連結されている。
【0003】
ところで、サスペンションロアアームの車体に対する取付剛性は、車両の操縦安定性や制振性等に大きく寄与することが知られている。このため、従来より、サスペンションロアアームの取付部を補剛するためのフロントアンダーフレームについては、様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、左右の縦フレームとこれらに架設する横フレームとで要部が構成されたサブフレーム(フロントアンダーフレーム)を左右のサイドフレームの下方に支持ブラケットを介して連結し、これらサイドフレームと縦フレームとの間にサスペンションロアアームを取付けた技術が開示されている。
【特許文献1】特開20001−310756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術では、サスペンションロアアームの取付位置よりも遙かに前方で横フレームが縦フレーム間に架設されているため、車幅方向の荷重入力に対するサスペンションロアアームの取付剛性を、フロントアンダーフレームの横フレームで十分に確保することが困難な場合がある。また、横フレームをサスペンションロアアームの取付位置にて左右の縦フレーム間に架設しようとすると、サスペンションクロスメンバの下方には排気管等の車体構造物は配設されているため、これら車体構造物と干渉してしまうという問題が生じる。
【0005】
さらに、サスペンションロアアームは前後2箇所で車体部材に連結されているため、横フレームのみでは十分にサスペンションロアアームの取付部の剛性を向上させることが困難である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、サスペンションクロスメンバの下方に配設される車体構造物と干渉させることなく、車幅方向からの荷重入力に対してもサスペンションロアアームの取付剛性を十分に向上することのできる車両用フロントアンダーフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前後方向に延びる左右のサイドフレーム間に架設し、前後方向に延びる左右のサスペンションロアアームを支持するサスペンションクロスメンバの中央部に固設する固定部と、上記固定部の近傍を起点として車幅方向に延設し端部で上記サスペンションクロスメンバと共に前記サスペンションロアアームのフロント連結部をそれぞれ連結する左右一対のフロントアーム部と、上記固定部の近傍を起点として斜め後方に延設し端部で上記サスペンションロアアームのリヤ連結部をそれぞれ連結する左右一対のリヤアーム部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用フロントアンダーフレームによれば、サスペンションクロスメンバの下方に配設される車体構造物と干渉させることなく、車幅方向からの荷重入力に対してもサスペンションロアアームの取付剛性を十分に補剛することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一形態に係わり、図1は車体の前部骨格構造の要部を示す底面図、図2は車体の前部骨格構造の要部を示す正面図、図3は車体の前部骨格構造の要部を示す左側面図、図4はフロントアンダーフレームの斜視図、図5は荷重伝達経路のシミュレーション結果を示す説明図、図6は図2のI−I線に沿う要部断面図、図7は図1のII−II線に沿う要部断面図、図8は図7の変形例を示す要部断面図、図9は図7の変形例を示す要部断面図、図10は図7の変形例を示す要部断面図、図11,12はサスペンションロアアームのフロント連結部に連結するブラケットの補強構造を示す説明図、図13はサスペンションロアアームのリヤ連結部に連結するブラケットの構造を示す説明図である。
【0010】
図1〜3において、符号1は自動車等の車体を示す。この車体1の左右各側部にはサイドシル5がそれぞれ配設され、各サイドシル5の前端部にはサイドフレーム6がそれぞれ連結されている。また、左右のサイドフレーム6間には、サスペンションクロスメンバ7が架設されている。なお、図1中符号8は、サスペンションクロスメンバ7にマウントされるエンジンを示し、符号9はエンジン8から延出してサスペンションクロスメンバ7の下方に配設される排気管(車体構造物)を示す。
【0011】
また、サイドフレーム6との連結部の近傍において、サスペンションクロスメンバ7には、当該サスペンションクロスメンバ7の下面に突設するフロントブラケット20を介して、サスペンションロアアーム15の前部が軸支されている。具体的に説明すると、図3,6に示すように、フロントブラケット20は車体1の前後方向に対向する一対の支持板20aを備えた二股構造をなし、これら支持板20aの間に、サスペンションロアアーム15のフロント連結部16が介装されている。そして、これら支持板20a及びフロント連結部16を車体1の前後方向に貫通する締結部材としてのボルト22aとナット22bの締結により、サスペンションロアアーム15の前部は、車体1の上下方向に揺動自在に軸支される。
【0012】
一方、サイドシル5との連結部の近傍において、サイドフレーム6には、当該サイドフレーム6の下面に突設するリヤブラケット25を介して、サスペンションロアアーム15の後部が軸支されている。具体的に説明すると、図3,7に示すように、リヤブラケット25からは締結部材としてのボルト26aが垂設されており、このボルト26aに、サスペンションロアアーム15のリヤ連結部17が貫通されている。さらに、ボルト26aにはサイドシル5に固設する支持板27が貫通され、当該支持板27から突出するボルト26aとナット26bとの締結により、サスペンションロアアーム15の後部は、車体1の旋回方向に揺動自在に軸支される。
【0013】
このような車体1の前部構造において、左右のサスペンションロアアーム15は、さらに、フロントアンダーフレーム30によって、その取付剛性が補剛されている。
【0014】
フロントアンダーフレーム30は、サスペンションクロスメンバ7の下面中央部に固設する固定部31と、この固定部31の近傍を起点として車幅方向に延設し端部にサスペンションロアアーム15のフロント連結部16が連結する左右一対のフロントアーム部32と、固定部31の近傍を起点として斜め後方に延設し端部にサスペンションロアアーム15のリヤ連結部17が連結する左右一対のリヤアーム部33とを有する。
【0015】
具体的に説明すると、固定部31は、例えば、左右2箇所のボルト締結によって、サスペンションクロスメンバ7に固設されている。
【0016】
各フロントアーム部32は、例えば、固定部31に対してそれぞれ車幅方向に延設する中空の板金部材で構成されている(図1,4参照)。さらに、各フロントアーム部32は、その中途の複数箇所が屈曲することでサスペンションクロスメンバ7の下方に排気管9の配管を許容する空隙35を形成する構成となっている(図2参照)。
【0017】
また、各フロントアーム部32の端部に形成されたブラケット36は、車体1の前後方向に対向する一対の支持板36aを備えた二股構造をなしている(図4,6参照)。そして、これら支持板36aが、フロントブラケット20(支持板20a)及びフロント連結部16を挟み込み、ボルト22a及びナット22bによって一体的に締結されることにより、フロントアーム部32の端部は、サスペンションロアアーム15のフロント連結部16に連結されている。
【0018】
一方、各リヤアーム部33は、例えば、固定部31に対してそれぞれ車体1の斜め後方に拡開しながら延設する中空の板金部材で構成されている(図1,4参照)。さらに、各リヤアーム部33は、その中途の複数箇所が屈曲することでサスペンションクロスメンバ7の下方に排気管9の配管を許容する空隙40を形成している(図3参照)。
【0019】
また、各リヤアーム部33の端部に形成されたブラケット41は、車体1の上下方向に対向する一対の支持板41aを備えた二股構造をなしている(図7参照)。そして、これら支持板41aが、リヤブラケット25とリヤ連結部17との間及びリヤ連結部17と支持板27との間に介装され、ボルト26a及びナット26bによって一体的に締結されることにより、リヤアーム部33の端部は、サスペンションロアアーム15のリヤ連結部17に連結されている。
【0020】
ここで、図5は、車体1上における各フロント連結部16、各リヤ連結部17、及び、固定部31にそれぞれ対応する各固定点101で板材100を剛性部材に固定した解析モデル上において、例えば右側フロント連結部16に相当する固定点101から入力された荷重が板材100上で伝達される経路を示すシミュレーション結果である。図示しないが、その他、同様の解析モデルを用いて各連結部16,17に相当する固定点101から荷重を入力した際のシミュレーションが行われている。そして、本形態において、車体1の左右間での荷重伝達を効率的に実現するため、フロントアンダーフレーム30の各アーム部32,33の延設方向は、各シミュレーション結果から導き出せる荷重の伝達経路に略則した方向に設定されている。
【0021】
このような形態によれば、サスペンションクロスメンバ7の中央部に固設する固定部31の近傍を起点として、端部にサスペンションロアアーム15のフロント連結部16がそれぞれ連結する左右一対のフロントアーム部32を延設するとともに、端部にサスペンションロアアーム15のリヤ連結部17がそれぞれ連結する左右一対のリヤアーム部33を延設してフロントアンダーフレーム30を構成することにより、サスペンションクロスメンバ7の下方に配設される車体構造物と干渉させることなく、車幅方向からの荷重入力に対してもサスペンションロアアーム15の取付剛性を十分に向上することができる。すなわち、フロントアンダーフレーム30は、サスペンションロアアーム15から入力される荷重を車体1の左右間で固定部31を中継して伝達する構成であるため、個々のアーム部32,33の長さを短く構成することができ、各アーム部32,33に排気管9等に対する逃げ部を形成した場合にも、各アーム部32,33の強度を十分に確保することができる。
【0022】
この場合、サスペンションロアアーム15の連結部16,17とブラケット20,25とを連結する締結部材(ボルト22aとナット22b、或いは、ボルト26aとナット26a)を用いて、各アーム部32,33の端部を連結部16,17と一体的に締結する構成とすることで、フロントアンダーフレーム30で補剛する際の部品点数の増加を効果的に抑制することができる。
【0023】
ここで、例えば図8に示すように、リヤ連結部17に対するブラケット41の連結は、支持板27の下面側で行う構成としてもよい。このように構成することにより、特に、オプション等によってフロントアンダーフレーム30を後付けする場合の組付作業性を向上することができる。
【0024】
その際、例えば図9に示すように、ブラケット41を支持板27と一体化させることも可能である。このように構成することにより、サスペンションロアアーム15の取付剛性をフロントアンダーフレーム30で補剛する際の部品点数の増加を効果的に抑制することができる。
【0025】
また、例えば図10に示すように、フロントアンダーフレーム30によってサスペンションロアアーム15の取付剛性が十分に向上される場合には、支持板27を省略することも可能である。
【0026】
さらに、例えば図8或いは図10に示した構成において、ブラケット41に開口するボルト挿通孔41bを、車体1の前方に解放部41cを備えた長孔で構成することも可能である(図13(a),(b)参照)。このように構成することにより、車両衝突時には、フロントアンダーフレーム30を車体1から容易に離脱させることができ、車体1の前部設定されるクラッシャブルゾーンを犠牲にすることなく、サスペンションロアアーム15の取付剛性を補剛することができる。
【0027】
また、ブラケット36自体の強度を向上させるため、例えば図11(a),(b)に示すように、支持板36aの縁辺部にリブ36bを形成してもよく、また、例えば図12(a),(b)に示すように、支持板36a上にビード36cを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】車体の前部骨格構造の要部を示す底面図
【図2】車体の前部骨格構造の要部を示す正面図
【図3】車体の前部骨格構造の要部を示す左側面図
【図4】フロントアンダーフレームの斜視図
【図5】荷重伝達経路のシミュレーション結果を示す説明図
【図6】図2のI−I線に沿う要部断面図
【図7】図1のII−II線に沿う要部断面図
【図8】図7の変形例を示す要部断面図
【図9】図7の変形例を示す要部断面図
【図10】図7の変形例を示す要部断面図
【図11】サスペンションロアアームのフロント連結部に連結するブラケットの補強構造を示す説明図
【図12】サスペンションロアアームのフロント連結部に連結するブラケットの補強構造を示す説明図
【図13】サスペンションロアアームのリヤ連結部に連結するブラケットの構造を示す説明図
【符号の説明】
【0029】
1 … 車体
6 … サイドフレーム
7 … サスペンションクロスメンバ
9 … 排気管(車体構造物)
15 … サスペンションロアアーム
16 … フロント連結部
17 … リヤ連結部
22a … ボルト(締結部材)
22b … ナット(締結部材)
26a … ボルト(締結部材)
26b … ナット(締結部材)
30 … フロントアンダーフレーム
31 … 固定部
32 … フロントアーム部
33 … リヤアーム部
代理人 弁理士 伊 藤 進
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、フロントサスペンション取付部の剛性向上に有効な車両用フロントアンダーフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車体の前部において、フロントサスペンションを構成する左右のサスペンションロアアームは、左右のサイドフレーム、或いは、当該サイドフレーム間に架設するサスペンションクロスメンバ等の車体部材に対し、それぞれ前後2箇所がブラケット等を介して連結されている。
【0003】
ところで、サスペンションロアアームの車体に対する取付剛性は、車両の操縦安定性や制振性等に大きく寄与することが知られている。このため、従来より、サスペンションロアアームの取付部を補剛するためのフロントアンダーフレームについては、様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、左右の縦フレームとこれらに架設する横フレームとで要部が構成されたサブフレーム(フロントアンダーフレーム)を左右のサイドフレームの下方に支持ブラケットを介して連結し、これらサイドフレームと縦フレームとの間にサスペンションロアアームを取付けた技術が開示されている。
【特許文献1】特開20001−310756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術では、サスペンションロアアームの取付位置よりも遙かに前方で横フレームが縦フレーム間に架設されているため、車幅方向の荷重入力に対するサスペンションロアアームの取付剛性を、フロントアンダーフレームの横フレームで十分に確保することが困難な場合がある。また、横フレームをサスペンションロアアームの取付位置にて左右の縦フレーム間に架設しようとすると、サスペンションクロスメンバの下方には排気管等の車体構造物は配設されているため、これら車体構造物と干渉してしまうという問題が生じる。
【0005】
さらに、サスペンションロアアームは前後2箇所で車体部材に連結されているため、横フレームのみでは十分にサスペンションロアアームの取付部の剛性を向上させることが困難である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、サスペンションクロスメンバの下方に配設される車体構造物と干渉させることなく、車幅方向からの荷重入力に対してもサスペンションロアアームの取付剛性を十分に向上することのできる車両用フロントアンダーフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前後方向に延びる左右のサイドフレーム間に架設し、前後方向に延びる左右のサスペンションロアアームを支持するサスペンションクロスメンバの中央部に固設する固定部と、上記固定部の近傍を起点として車幅方向に延設し端部で上記サスペンションクロスメンバと共に前記サスペンションロアアームのフロント連結部をそれぞれ連結する左右一対のフロントアーム部と、上記固定部の近傍を起点として斜め後方に延設し端部で上記サスペンションロアアームのリヤ連結部をそれぞれ連結する左右一対のリヤアーム部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用フロントアンダーフレームによれば、サスペンションクロスメンバの下方に配設される車体構造物と干渉させることなく、車幅方向からの荷重入力に対してもサスペンションロアアームの取付剛性を十分に補剛することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一形態に係わり、図1は車体の前部骨格構造の要部を示す底面図、図2は車体の前部骨格構造の要部を示す正面図、図3は車体の前部骨格構造の要部を示す左側面図、図4はフロントアンダーフレームの斜視図、図5は荷重伝達経路のシミュレーション結果を示す説明図、図6は図2のI−I線に沿う要部断面図、図7は図1のII−II線に沿う要部断面図、図8は図7の変形例を示す要部断面図、図9は図7の変形例を示す要部断面図、図10は図7の変形例を示す要部断面図、図11,12はサスペンションロアアームのフロント連結部に連結するブラケットの補強構造を示す説明図、図13はサスペンションロアアームのリヤ連結部に連結するブラケットの構造を示す説明図である。
【0010】
図1〜3において、符号1は自動車等の車体を示す。この車体1の左右各側部にはサイドシル5がそれぞれ配設され、各サイドシル5の前端部にはサイドフレーム6がそれぞれ連結されている。また、左右のサイドフレーム6間には、サスペンションクロスメンバ7が架設されている。なお、図1中符号8は、サスペンションクロスメンバ7にマウントされるエンジンを示し、符号9はエンジン8から延出してサスペンションクロスメンバ7の下方に配設される排気管(車体構造物)を示す。
【0011】
また、サイドフレーム6との連結部の近傍において、サスペンションクロスメンバ7には、当該サスペンションクロスメンバ7の下面に突設するフロントブラケット20を介して、サスペンションロアアーム15の前部が軸支されている。具体的に説明すると、図3,6に示すように、フロントブラケット20は車体1の前後方向に対向する一対の支持板20aを備えた二股構造をなし、これら支持板20aの間に、サスペンションロアアーム15のフロント連結部16が介装されている。そして、これら支持板20a及びフロント連結部16を車体1の前後方向に貫通する締結部材としてのボルト22aとナット22bの締結により、サスペンションロアアーム15の前部は、車体1の上下方向に揺動自在に軸支される。
【0012】
一方、サイドシル5との連結部の近傍において、サイドフレーム6には、当該サイドフレーム6の下面に突設するリヤブラケット25を介して、サスペンションロアアーム15の後部が軸支されている。具体的に説明すると、図3,7に示すように、リヤブラケット25からは締結部材としてのボルト26aが垂設されており、このボルト26aに、サスペンションロアアーム15のリヤ連結部17が貫通されている。さらに、ボルト26aにはサイドシル5に固設する支持板27が貫通され、当該支持板27から突出するボルト26aとナット26bとの締結により、サスペンションロアアーム15の後部は、車体1の旋回方向に揺動自在に軸支される。
【0013】
このような車体1の前部構造において、左右のサスペンションロアアーム15は、さらに、フロントアンダーフレーム30によって、その取付剛性が補剛されている。
【0014】
フロントアンダーフレーム30は、サスペンションクロスメンバ7の下面中央部に固設する固定部31と、この固定部31の近傍を起点として車幅方向に延設し端部にサスペンションロアアーム15のフロント連結部16が連結する左右一対のフロントアーム部32と、固定部31の近傍を起点として斜め後方に延設し端部にサスペンションロアアーム15のリヤ連結部17が連結する左右一対のリヤアーム部33とを有する。
【0015】
具体的に説明すると、固定部31は、例えば、左右2箇所のボルト締結によって、サスペンションクロスメンバ7に固設されている。
【0016】
各フロントアーム部32は、例えば、固定部31に対してそれぞれ車幅方向に延設する中空の板金部材で構成されている(図1,4参照)。さらに、各フロントアーム部32は、その中途の複数箇所が屈曲することでサスペンションクロスメンバ7の下方に排気管9の配管を許容する空隙35を形成する構成となっている(図2参照)。
【0017】
また、各フロントアーム部32の端部に形成されたブラケット36は、車体1の前後方向に対向する一対の支持板36aを備えた二股構造をなしている(図4,6参照)。そして、これら支持板36aが、フロントブラケット20(支持板20a)及びフロント連結部16を挟み込み、ボルト22a及びナット22bによって一体的に締結されることにより、フロントアーム部32の端部は、サスペンションロアアーム15のフロント連結部16に連結されている。
【0018】
一方、各リヤアーム部33は、例えば、固定部31に対してそれぞれ車体1の斜め後方に拡開しながら延設する中空の板金部材で構成されている(図1,4参照)。さらに、各リヤアーム部33は、その中途の複数箇所が屈曲することでサスペンションクロスメンバ7の下方に排気管9の配管を許容する空隙40を形成している(図3参照)。
【0019】
また、各リヤアーム部33の端部に形成されたブラケット41は、車体1の上下方向に対向する一対の支持板41aを備えた二股構造をなしている(図7参照)。そして、これら支持板41aが、リヤブラケット25とリヤ連結部17との間及びリヤ連結部17と支持板27との間に介装され、ボルト26a及びナット26bによって一体的に締結されることにより、リヤアーム部33の端部は、サスペンションロアアーム15のリヤ連結部17に連結されている。
【0020】
ここで、図5は、車体1上における各フロント連結部16、各リヤ連結部17、及び、固定部31にそれぞれ対応する各固定点101で板材100を剛性部材に固定した解析モデル上において、例えば右側フロント連結部16に相当する固定点101から入力された荷重が板材100上で伝達される経路を示すシミュレーション結果である。図示しないが、その他、同様の解析モデルを用いて各連結部16,17に相当する固定点101から荷重を入力した際のシミュレーションが行われている。そして、本形態において、車体1の左右間での荷重伝達を効率的に実現するため、フロントアンダーフレーム30の各アーム部32,33の延設方向は、各シミュレーション結果から導き出せる荷重の伝達経路に略則した方向に設定されている。
【0021】
このような形態によれば、サスペンションクロスメンバ7の中央部に固設する固定部31の近傍を起点として、端部にサスペンションロアアーム15のフロント連結部16がそれぞれ連結する左右一対のフロントアーム部32を延設するとともに、端部にサスペンションロアアーム15のリヤ連結部17がそれぞれ連結する左右一対のリヤアーム部33を延設してフロントアンダーフレーム30を構成することにより、サスペンションクロスメンバ7の下方に配設される車体構造物と干渉させることなく、車幅方向からの荷重入力に対してもサスペンションロアアーム15の取付剛性を十分に向上することができる。すなわち、フロントアンダーフレーム30は、サスペンションロアアーム15から入力される荷重を車体1の左右間で固定部31を中継して伝達する構成であるため、個々のアーム部32,33の長さを短く構成することができ、各アーム部32,33に排気管9等に対する逃げ部を形成した場合にも、各アーム部32,33の強度を十分に確保することができる。
【0022】
この場合、サスペンションロアアーム15の連結部16,17とブラケット20,25とを連結する締結部材(ボルト22aとナット22b、或いは、ボルト26aとナット26a)を用いて、各アーム部32,33の端部を連結部16,17と一体的に締結する構成とすることで、フロントアンダーフレーム30で補剛する際の部品点数の増加を効果的に抑制することができる。
【0023】
ここで、例えば図8に示すように、リヤ連結部17に対するブラケット41の連結は、支持板27の下面側で行う構成としてもよい。このように構成することにより、特に、オプション等によってフロントアンダーフレーム30を後付けする場合の組付作業性を向上することができる。
【0024】
その際、例えば図9に示すように、ブラケット41を支持板27と一体化させることも可能である。このように構成することにより、サスペンションロアアーム15の取付剛性をフロントアンダーフレーム30で補剛する際の部品点数の増加を効果的に抑制することができる。
【0025】
また、例えば図10に示すように、フロントアンダーフレーム30によってサスペンションロアアーム15の取付剛性が十分に向上される場合には、支持板27を省略することも可能である。
【0026】
さらに、例えば図8或いは図10に示した構成において、ブラケット41に開口するボルト挿通孔41bを、車体1の前方に解放部41cを備えた長孔で構成することも可能である(図13(a),(b)参照)。このように構成することにより、車両衝突時には、フロントアンダーフレーム30を車体1から容易に離脱させることができ、車体1の前部設定されるクラッシャブルゾーンを犠牲にすることなく、サスペンションロアアーム15の取付剛性を補剛することができる。
【0027】
また、ブラケット36自体の強度を向上させるため、例えば図11(a),(b)に示すように、支持板36aの縁辺部にリブ36bを形成してもよく、また、例えば図12(a),(b)に示すように、支持板36a上にビード36cを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】車体の前部骨格構造の要部を示す底面図
【図2】車体の前部骨格構造の要部を示す正面図
【図3】車体の前部骨格構造の要部を示す左側面図
【図4】フロントアンダーフレームの斜視図
【図5】荷重伝達経路のシミュレーション結果を示す説明図
【図6】図2のI−I線に沿う要部断面図
【図7】図1のII−II線に沿う要部断面図
【図8】図7の変形例を示す要部断面図
【図9】図7の変形例を示す要部断面図
【図10】図7の変形例を示す要部断面図
【図11】サスペンションロアアームのフロント連結部に連結するブラケットの補強構造を示す説明図
【図12】サスペンションロアアームのフロント連結部に連結するブラケットの補強構造を示す説明図
【図13】サスペンションロアアームのリヤ連結部に連結するブラケットの構造を示す説明図
【符号の説明】
【0029】
1 … 車体
6 … サイドフレーム
7 … サスペンションクロスメンバ
9 … 排気管(車体構造物)
15 … サスペンションロアアーム
16 … フロント連結部
17 … リヤ連結部
22a … ボルト(締結部材)
22b … ナット(締結部材)
26a … ボルト(締結部材)
26b … ナット(締結部材)
30 … フロントアンダーフレーム
31 … 固定部
32 … フロントアーム部
33 … リヤアーム部
代理人 弁理士 伊 藤 進
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる左右のサイドフレーム間に架設し、前後方向に延びる左右のサスペンションロアアームを支持するサスペンションクロスメンバの中央部に固設する固定部と、
上記固定部の近傍を起点として車幅方向に延設し端部で上記サスペンションクロスメンバと共に前記サスペンションロアアームのフロント連結部をそれぞれ連結する左右一対のフロントアーム部と、
上記固定部の近傍を起点として斜め後方に延設し端部で上記サスペンションロアアームのリヤ連結部をそれぞれ連結する左右一対のリヤアーム部とを備えたことを特徴とする車両用フロントアンダーフレーム。
【請求項2】
上記各アーム部は、上記サスペンションクロスメンバの下方に配設される車体構造物に対する逃げ形状を有することを特徴とする請求項1記載の車両用フロントアンダーフレーム。
【請求項3】
上記サスペンションロアアームのフロント連結部を上記サスペンションクロスメンバに連結する締結部材を用いて、上記フロントアーム部の端部を上記フロント連結部と一体的に締結し、
上記サスペンションロアアームのリヤ連結部を車体に連結する締結部材を用いて、上記ロアアーム部の端部を上記リヤ連結部と一体的に締結したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用フロントアンダーフレーム。
【請求項1】
前後方向に延びる左右のサイドフレーム間に架設し、前後方向に延びる左右のサスペンションロアアームを支持するサスペンションクロスメンバの中央部に固設する固定部と、
上記固定部の近傍を起点として車幅方向に延設し端部で上記サスペンションクロスメンバと共に前記サスペンションロアアームのフロント連結部をそれぞれ連結する左右一対のフロントアーム部と、
上記固定部の近傍を起点として斜め後方に延設し端部で上記サスペンションロアアームのリヤ連結部をそれぞれ連結する左右一対のリヤアーム部とを備えたことを特徴とする車両用フロントアンダーフレーム。
【請求項2】
上記各アーム部は、上記サスペンションクロスメンバの下方に配設される車体構造物に対する逃げ形状を有することを特徴とする請求項1記載の車両用フロントアンダーフレーム。
【請求項3】
上記サスペンションロアアームのフロント連結部を上記サスペンションクロスメンバに連結する締結部材を用いて、上記フロントアーム部の端部を上記フロント連結部と一体的に締結し、
上記サスペンションロアアームのリヤ連結部を車体に連結する締結部材を用いて、上記ロアアーム部の端部を上記リヤ連結部と一体的に締結したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用フロントアンダーフレーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−281953(P2006−281953A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103973(P2005−103973)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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