説明

車両用フードエアバッグ装置

【課題】フードインナパネルに車両幅方向に延びる開口を形成してエアバッグモジュールを組付ける場合において、フードインナパネルの剛性を容易に確保する。
【解決手段】フードインナパネル20の後端部には、フード幅方向に沿って延在するフードインナリインフォース28が配設されている。このフードインナリインフォース28の長手方向の両端部を、左右一対のフードヒンジリインフォース40に結合し、フードインナパネル20の剛性アップを図った。さらに、エアバッグケース46をフードインナリインフォース28に固定し、補強部材として利用することで更なる剛性アップを図った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突体との衝突時にフード上面側にエアバッグを膨張展開させる車両用フードエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、フードインナパネルの後端部にウインドシールドガラスの下端部に沿って車両幅方向に延びる開口を形成して、当該開口を使ってエアバッグモジュールを取り付けた車両用フードエアバッグ装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−262955公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記先行技術による場合、エアバッグは平面視で略コ字状に形成されており、フード後端部及びカウル部に加えてフロントピラー下部をも覆う比較的大型のエアバッグであるため、フードインナパネル及びフードインナリインフォースに形成する開口も比較的大きなものとなる。このため、フードインナパネルひいてはフード全体の剛性が低下するという課題がある。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、フードインナパネルに車両幅方向に延びる開口を形成してエアバッグモジュールを組付ける場合において、フードインナパネルの剛性を容易に確保することができる車両用フードエアバッグ装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の車両用フードエアバッグ装置は、衝突体との前面衝突時にガスを噴出するガス発生手段及びこのガス発生手段から発生したガスの供給を受けて膨張しフードアウタパネル上へ展開されるエアバッグを収容し、フードインナパネルの後端側にフード幅方向に沿って形成された組付用開口部へ挿入されて取り付けられるエアバッグケースと、このエアバッグケースの周囲に配置されてフードインナパネルにおける組付用開口部の周辺を補強し、かつ長手方向の両端部がフード幅方向の両サイドに配置されたフードヒンジリインフォースに接合されたフードインナリインフォースと、ことを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記フードインナリインフォースに、フード幅方向に沿って延在する長尺状の前記エアバッグケースが固定されている、ことを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記フードアウタパネルの後端側にはフード幅方向に沿って単一のバッグ膨出用開口部が形成されており、当該バッグ膨出用開口部から膨出展開される前記エアバッグは左右非分割の一体構成品として構成されている、ことを特徴としている。
【0008】
請求項4記載の本発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記フードアウタパネルの後端側にはフード幅方向に沿って左右一対のバッグ膨出用開口部が形成されており、各バッグ膨出用開口部に対応して前記エアバッグは左右一対に分割されており、対応するバッグ膨出用開口部から左右のエアバッグがそれぞれ膨出展開される、ことを特徴としている。
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、歩行者等の衝突体と前面衝突すると、ガス発生手段によってガスが噴出される。噴出されたガスは、エアバッグケース内に格納されたエアバッグ内に供給される。これにより、エアバッグが膨張し、フードアウタパネル上へ展開される。その結果、膨張展開したエアバッグに歩行者等の衝突体が受け止められ、衝突時の衝突エネルギーが吸収されて歩行者等の衝突体が車体から受ける反力を下げることができる。
【0010】
ここで、上記エアバッグケースはフードインナパネルの後端側にフード幅方向に沿って形成された組付用開口部へ挿入されて取り付けられているので、フードインナパネルにおける組付用開口部が形成された周辺部位の剛性が低下する。そこで、エアバッグケースの周囲にフードインナリインフォースを配置してフードインナパネルにおける組付用開口部の周辺部を補強しているが、本発明では更にフードインナリインフォースの長手方向の両端部をフード幅方向の両サイドに配置されたフードヒンジリインフォースに接合したので、エアバッグケース及びこれに収容された機能部品の質量をフードヒンジリインフォースにも負担させることができる。しかも、このフードヒンジリインフォースはフードに元々配設されている部材であるため、既存部品への接合という手法となり、比較的容易に成立させることができる。
【0011】
請求項2記載の本発明によれば、フードインナリインフォースにフード幅方向に沿って延在する長尺状のエアバッグケースを固定したので、エアバッグケース、フードインナリインフォース、フードヒンジリインフォースの三者が一体化される。つまり、エアバッグケースを補強部材として利用するという発想である。これにより、エアバッグケースの剛性が有効に活用される。
【0012】
請求項3記載の本発明によれば、フードアウタパネルの後端側にはフード幅方向に沿って単一のバッグ膨出用開口部が形成されており、このバッグ膨出用開口部から左右非分割の一体構成品として構成されたエアバッグが膨出される。
【0013】
請求項4記載の本発明によれば、フードアウタパネルの後端側にはフード幅方向に沿って左右一対のバッグ膨出用開口部が形成されており、各々のバッグ膨出用開口部から左右二分割された一対のエアバッグが膨出展開される。
【0014】
このように請求項3記載の本発明と請求項4記載の本発明とでは、エアバッグの構造が方や非分割一体構造であり、方や左右二分割構造と大きく異なるが、いずれのタイプであっても、フードヒンジリインフォースを使ってフードの剛性をアップさせる本発明は適用可能である。つまり、いずれのタイプであっても請求項1及び請求項2に記載された本発明の補強構造を用いることができる(共用することができる)。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、フードヒンジリインフォースの長手方向の両端部をフード幅方向の両サイドに配置されたフードヒンジリインフォースに接合したので、フードインナパネルに車両幅方向に延びる開口を形成してエアバッグモジュールを組付ける場合において、フードインナパネルの剛性を容易に確保することができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項2記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、フードインナリインフォースにフード幅方向に沿って延在する長尺状のエアバッグケースを固定したので、部品点数の増加を招くことなく、フードインナパネルの剛性を確保することができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項3及び請求項4記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、エアバッグが非分割一体構造のものであるか左右二分割構造のものであるかを問わず適用することができ、その結果、車種ごとに設計変更する必要がなく、大幅なコストダウンを図ることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図4を用いて、本発明に係る車両用フードエアバッグ装置の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0019】
図4には、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10が作動した状態の車両12の外観斜視図が示されている。また、図3には、当該車両用フードエアバッグ装置10を搭載した車両12の外観斜視図が示されている。さらに、図2には、組付状態の車両用フードエアバッグ装置10を車両前後方向に沿って切断した状態を側方から観た縦断面図(図3の2−2線拡大断面図)が示されている。
【0020】
これらの図に示されるように、車両用フードエアバッグ装置10は、エンジンルームを開閉するフード14の後端側に車両幅方向に沿って配設されている。フード14は、フード外板を構成すると共にフード14の意匠面を構成するフードアウタパネル16と、フードアウタパネル16に対して所定距離だけ車両下方側に離間した位置に配設されてフード内板を構成するフードインナパネル20と、を含んで構成されている。
【0021】
図3に示されるように、フードアウタパネル16の後端側には、フード幅方向(車両幅方向)を長辺方向とする細長いバッグ膨出用開口部18が形成されている。なお、バッグ膨出用開口部18は、平面視で略矩形状に形成されている。これに対応して、図2に示されるように、フードインナパネル20におけるバッグ膨出用開口部18と対向する位置には、バッグ膨出用開口部18と同様形状の組付用開口部としてのフードインナ側開口部26が形成されている。このフードインナ開口部26を用いてエアバッグモジュール22がフードインナパネル20に取り付けられている。
【0022】
エアバッグモジュール22は、フードインナ側開口部26よりも一回り大きく形成された高強度のロアプレート24と、ロアプレート24の上面側中央に固定された略箱体形状のエアバッグケース46と、このエアバッグケース46内に配設されたガス発生手段としてのインフレータ58と、エアバッグケース46内に折り畳み状態で収容されたエアバッグ60と、を主要部として構成されている。以下、この順に各要素について補足説明する。
【0023】
ロアプレート24は、フードインナ側開口部26に対して車両下方側から当接配置されることにより、フードインナ側開口部26を閉塞している。また、ロアプレート24におけるフードインナ側開口部26に臨む部位は、車両下方側へ若干凹んだ形状を成しており、この若干凹んだ部分にエアバッグケース46が取り付けられている。
【0024】
エアバッグケース46は上方側が開放されて前壁46A、後壁46B、左右の側壁46C、及び底壁46Dを備えており、金属製とされている。エアバッグケース46の平面視での大きさはフードインナ側開口部26よりも一回り小さく設定されており、フードインナパネル20の下方側からフードインナ側開口部26内へ挿入可能とされている。なお、エアバッグケース46及びロアプレート24の双方が請求項1記載の本発明における「エアバッグケース」に相当する。
【0025】
インフレータ58は略円柱形状に形成されており、フード幅方向を長手方向としてエアバッグケース46内に納められている。なお、インフレータ58はエアバッグケース46の長手方向の中間部(フード中央部付近)に一つだけ設けられていてもよいし、二つ以上に分けて左右二箇所又は左右中央の三箇所に配置する等の構成を採ってもよい。また、インフレータ58は次述するエアバッグ60内に収容された状態でエアバッグケース46内にセットされている。但し、必ずしもインフレータ58をエアバッグ60内に収容しなければならない訳ではなく、ディフューザ等を使ってエアバッグケース46の底壁46Dやロアプレート24に固定してもよい。なお、インフレータ58としては機械着火式、電気着火式のいずれを使用してもよく、又ガス発生剤封入タイプ、高圧ガス封入タイプのいずれでも適用可能である。また、インフレータ58の周壁部の所定位置には、複数のガス噴出孔がインフレータ58の周方向に形成されている。
【0026】
エアバッグ60は、通常はエアバッグケース46内に折り畳み状態で収容されており、膨張展開すると図4図示の如き形状となる。すなわち、エアバッグ60は、複数のセルから成り車両幅方向に沿って扁平に展開する本体部60Aと、この本体部60Aの両サイドに連通されかつフロントピラー66側へ延長された左右一対の延長部60Bと、によって構成されている。エアバッグ60が膨張展開した状態では、本体部60Aによってフード14の後端部14A及びカウル62(更にウインドシールドガラス64の下端部)が覆われると共に、左右一対の延長部60Bによってフロントピラー66の下部が覆われるようになっている。
【0027】
図1及び図2に示されるように、上述したエアバッグケース46の周囲には、これよりも一回り大きい略箱体形状に形成されたフードインナリインフォース28が配設されている。フードインナリインフォース28は、フードインナ側開口部26の周囲に当接状態で配置される底壁部28Aと、この底壁部28Aの前後縁から立設された前後一対の前壁部28B及び後壁部28Cと、左右一対の側壁部28Dとを備えている。
【0028】
底壁部28Aにはフードインナ側開口部26と同程度の大きさの開口部29が形成されており、この開口部29からエアバッグケース46が挿通可能とされている。また、前壁部28B及び後壁部28Cは縦断面形状が略Z形状とされており、フードインナパネル20とフードアウタパネル16との間のスペース31を横断するように配置されている。
【0029】
上述したフードインナリインフォース28は、その底壁部28Aがフードインナパネル20におけるフードインナ側開口部26の周囲に当接配置された状態で、ロアプレート24と共にボルト30及びウエルドナット32等の締結具によって共締めされることでフードインナパネル20に固定されている。なお、ウエルドナット32はフードインナリインフォース28の底壁部28Aの上面に予め溶着されている。従って、組付方向(ボルト30の挿入方向)はフードインナパネル20の下方側からとなる。また、フードインナリインフォース28の前壁部28B及び後壁部28C並びに側壁部28Dの上端部は外側へ向けて屈曲されており、かかる屈曲部位が接着剤(マスチック)36等の固定手段によってフードアウタパネル16の裏面に固定されている。
【0030】
なお、上記フードインナリインフォース28は、フードインナパネル20にフードインナ側開口部26を形成したことによる剛性低下分を補強し、エアバッグモジュール22をフードアウタパネル16及びフードインナパネル20から成るフード14の閉空間(スペース31)に固定するために設置されている。
【0031】
一方、エアバッグケース46の開放側端部、即ちバッグ膨出用開口部18は、金属製のエアバッグドア48によって開放可能に塞がれている。具体的には、バッグ膨出用開口部18はフードアウタパネル16の一般面16Aに対して車両下方側へ一段下がる段差形状に形成されており、エアバッグドア48はこの段差部50に納まる厚さ及び大きさに形成されている。エアバッグドア48の後端部48Aには、当該後端部48Aを含めて略弓の字状に形成された展開ヒンジ部48Bが一体に形成されている。なお、このエアバッグドア48は金属製であったが、樹脂製でもよいし、基材が金属パネルで構成されてその上に樹脂層が設けられた二層構造等のエアバッグドアとしてもよい。
【0032】
展開ヒンジ部48Bはエアバッグドア48の幅方向に所定の間隔で設けられている。これに対応して、前述した後壁部28Cにおける展開ヒンジ部48Bと対向する位置にはブラケット52が固定されており、このブラケット52に展開ヒンジ部48Bの下端部48B1がボルト54及びナット56によって固定されている。従って、エアバッグドア48は、衝突体と前面衝突するとバッグ膨張圧によって、ボルト54及びナット56の締結点を展開中心として、展開ヒンジ部48Bの前後逆向きのコ字状を成すヒンジ中間部48B2を塑性変形させながら、車両後方側へ片開きに展開される構成である。
【0033】
ここで、本実施形態では、図1(なお、この図はフード14の底面図である。)に示されるように、フードインナリインフォース28の長手方向の両端部である左右一対の側壁部28Dの上端部(フードインナパネル20の底面側の端部)には、フード幅方向外側へ張出す左右一対のフランジ部28D’が形成されている。そして、これら左右一対のフランジ部28D’が、フードインナパネル20のフード幅方向の両側部にフード前後方向に沿って配置された左右一対のフードヒンジリインフォース40に固定されている。これにより、フードインナリインフォース28とフードヒンジリインフォース40とが構造的に結合されている。
【0034】
なお、フードヒンジリインフォース40はフードヒンジの取付部位を補強するための長尺状の部材であり、断面形状はコ字状とされている。また、フードヒンジリインフォース40は、フードインナパネル20の両端部にフード前後方向に沿って配設された高強度・高剛性の部材であり、断面形状はコ字状とされている。なお、固定の仕方は、例えば、ボルト及びナットによる共締め等が適用可能であるが、これに限らず溶接等の他の固定方法によってもよい。
【0035】
さらに、フードインナリインフォース28の底壁部28A側には、エアバッグケース46の底壁46Dに一体化されて自身もエアバッグケース46の底壁部を構成するロアプレート24が、フードインナパネル20のフードインナ側開口部26の周縁部42(図2参照)を間に介して三枚重ねで重合されており、この状態で前述したようにウエルドナット32にボルト30がフード下方側から螺合されることにより、エアバッグケース46がフードインナリインフォース28に一体化されている。
【0036】
すなわち、本実施形態では、左右一対のフードヒンジリインフォース40にフード幅方向に沿って配置された長尺状のフードインナリインフォース28を結合し、更に当該フードインナリインフォース28にフード幅方向を長手方向として配置されるエアバッグケース46をフードインナパネル20のフードインナ側開口部26の周縁部42に締結手段で締結固定する構成を採っている。
【0037】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0038】
車両12が歩行者等の衝突体と前面衝突すると、インフレータ58が作動して複数のガス噴出孔からガスが噴出される。このため、エアバッグケース46内に折り畳み状態で格納されたエアバッグ60が膨張し、エアバッグドア48を下面側から押圧する。エアバッグドア48に作用するバッグ膨張圧が所定値に達すると、エアバッグドア48は展開ヒンジ部48Bを中心としてフード外方側(ウインドシールドガラス64側)へ展開される。これにより、フード後端側に形成されたバッグ膨出用開口部18が開放されて、図4に示されるように、エアバッグ60が車両平面視で略コ字状になるように膨張展開される。その結果、膨張展開したエアバッグ60の本体部60A或いは延長部60Bに、フード上方側から歩行者等の衝突体が受け止められることにより、前面衝突時の衝突エネルギーが吸収されて歩行者等の衝突体がボディーから受ける反力を下げることができる。
【0039】
ここで、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10では、エアバッグケース46がフードインナパネル20の後端側にフード幅方向に沿って形成されたフードインナ側開口部26へ挿入されて(を利用して)取り付けられているので、フードインナパネル20におけるフードインナ側開口部26が形成された周辺部位の剛性が低下する。そこで、エアバッグケース46の周囲にフードインナリインフォース28を配置してフードインナパネル20におけるフードインナ側開口部26の周縁部42を含む周辺部を補強しているが、本実施形態では更にフードインナリインフォース28の長手方向の両端部である左右一対の側壁部28Dにフランジ部28D’を設けて、フードインナパネル20のフード幅方向の両サイドに配置された左右一対のフードヒンジリインフォース40に接合したので、エアバッグモジュール22の質量をフードヒンジリインフォース40にも負担させることができる。別の言い方をすると、エアバッグモジュール22の質量を左右のフードヒンジリインフォース40で受けることができる。
【0040】
この点について補足すると、上記のようにフードヒンジリインフォース40はフードインナパネル20の両サイドにフード前後方向に沿って延在する高強度・高剛性の部材であるが、これら左右一対のフードヒンジリインフォース40にフード幅方向に延在するフードインナリインフォース28を結合させることにより、平面視でコ字状に一体化された高剛性のフレームが構成される。そして、このフレームにエアバッグモジュール22を支持させることとすれば、エアバッグモジュール22を支持するために要求される剛性は充分に満たされる。このことは、フードインナリインフォース28の荷重負担分が減ることを意味するので、その分フードインナリインフォース28の板厚を薄くできる等、フードインナリインフォース28の軽量化ひいては車両12の全体の軽量化を図ることにも繋がる。さらに、平面視でコ字状に一体化された高剛性のフレームが構成されることにより、フード14の捩り剛性も向上される。付言すると、本実施形態から概念化された本発明は、そういった補強構造を提案しているとみることもできる。
【0041】
しかも、このフードヒンジリインフォース40はフード14に元々配設されている部材であるので、既存部品への接合という手法となり、比較的容易に成立させることができる。
【0042】
上記より、実施形態によれば、フードインナパネル20に車両幅方向に延びるフードインナ側開口部26を形成してエアバッグモジュール22を(フード下方側から)組付ける場合において、フードインナパネル20の剛性を容易に確保することができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、フードインナリインフォース28にフード幅方向に沿って延在する長尺状のエアバッグケース46を固定したので、エアバッグケース46、フードインナリインフォース28、及びフードヒンジリインフォース40の三者が一体化される。つまり、エアバッグケース46を補強部材として利用するという発想である。これにより、エアバッグケース46の剛性が有効に活用される。その結果、本実施形態によれば、部品点数の増加を招くことなく、フードインナパネル20の剛性を確保することができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
以下、図5及び図6を用いて、本発明に係る車両用フードエアバッグ装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0045】
この第2実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置70では、エアバッグ60が左右二分割されている点に特徴がある。具体的には、図5に示されるように、フードアウタパネル16の後端側の両サイドには、左右一対のバッグ膨出用開口部72が形成されており、各々エアバッグドア74によって開放可能に閉止されている。図6に示されるように、エアバッグ60は、左側エアバッグ60Lと右側エアバッグ60Rとによって構成されている。左側エアバッグ60Lは車両正面視で左側のバッグ膨出用開口部72から膨出されるようになっており、又右側エアバッグ60Rは車両正面視で右側のバッグ膨出用開口部72から膨出されるようになっている。なお、エアバッグモジュール22(エアバッグケース46を除く)は、左側エアバッグ60L、右側エアバッグ60Rのそれぞれに対応して二個設けられている。
【0046】
ここで、前記の如く、エアバッグモジュール22は左右それぞれに設けられているが、エアバッグケース46については前述した第1実施形態と同様のものが用いられている。つまり、一つのエアバッグケース46の中に左右一対のインフレータ58及びエアバッグ60L、60Rが収容されている。また、第1実施形態で説明したエアバッグケース46をそのまま適用できることから、フードインナリインフォース28についても全く同様のものが用いられている。すなわち、第2実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置70に対しても、前述した第1実施形態と全く同様の補強構造を適用することができる点が最大の特長であり、左右一対のフードヒンジリインフォース40にフードインナリインフォース28の長手方向の両端部を結合させ、更にフードインナリインフォース28にエアバッグケース46をボルト30及びウエルドナット32で締結することで三部材を一体的な補強フレームとして利用することができるのである。
【0047】
(作用・効果)
上記構成によれば、前述した第1実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10のように非分割一体構造のエアバッグ60を用いた場合でも、第2実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置70のように左右二分割構造のエアバッグ60L、60Rを用いた場合でも、左右のフードヒンジリインフォース40を使ってフード14の剛性をアップさせる本構造を適用することができる。つまり、いずれのタイプであってもこの補強構造を共用することができる。その結果、車種ごとに設計変更する必要がなく、コストダウンを図ることができる。
【0048】
〔本実施形態の補足説明〕
上述した第2実施形態では、エアバッグ60を左右に分けたことに伴ってインフレータ58も左右に分割することとしたが、これに限らず、インフレータ58はエアバッグケース46の中央部一箇所に設けてホース等のガス供給管で左右のエアバッグ60にガスを分岐させて供給するようにしてもよい。
【0049】
また、上述した各実施形態では、平面視で細長い箱体形状のフードインナリインフォース26を用いたが、これに限らず、フードインナリインフォースを前側と後側の二本に分けて各々の長手方向の両端部を左右のフードヒンジリインフォース40に結合させる構成を採っても剛性アップ効果はある程度得られるので適用可能であり、この構成も本発明に含まれる。
【0050】
さらに、上述した各実施形態、例えば第1実施形態では、エアバッグ60が膨張展開すると、フード14の後端部14A及びカウル62のみならず、(ウインドシールドガラス64の下端部や)左右のフロントピラー66の下部をも覆う構成としたが、少なくともフード14の後端部14A(フードアウタパネル16の後端部16A)及びカウル62を覆う構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置の要部を示すフードの底面図である。
【図2】第1実施形態に係り、組付状態の車両用フードエアバッグ装置を車両前後方向に沿って切断した状態を側方から観た縦断面図(図3の2−2線拡大断面図)である。
【図3】第1実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置の非作動状態を示す車両の外観斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置の作動状態を示す車両の外観斜視図である。
【図5】第2実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置の非作動状態を示す図3に対応する車両の外観斜視図である。
【図6】第2実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置の作動状態を示す図4に対応する車両の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
10 車両用フードエアバッグ装置
12 車両
14 フード
14A 後端部
16 フードアウタパネル
18 バッグ膨出用開口部
20 フードインナパネル
24 ロアプレート(エアバッグケース)
26 フードインナ開口部(組付用開口部)
28 フードインナリインフォース
40 フードヒンジリインフォース
46 エアバッグケース
58 インフレータ(ガス発生手段)
60 エアバッグ
60L 左側エアバッグ
60R 右側エアバッグ
70 車両用フードエアバッグ装置
72 バッグ膨出用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突体との前面衝突時にガスを噴出するガス発生手段及びこのガス発生手段から発生したガスの供給を受けて膨張しフードアウタパネル上へ展開されるエアバッグを収容し、フードインナパネルの後端側にフード幅方向に沿って形成された組付用開口部へ挿入されて取り付けられるエアバッグケースと、
このエアバッグケースの周囲に配置されてフードインナパネルにおける組付用開口部の周辺を補強し、かつ長手方向の両端部がフード幅方向の両サイドに配置されたフードヒンジリインフォースに接合されたフードインナリインフォースと、
を有することを特徴とする車両用フードエアバッグ装置。
【請求項2】
前記フードインナリインフォースに、フード幅方向に沿って延在する長尺状の前記エアバッグケースが固定されている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項3】
前記フードアウタパネルの後端側にはフード幅方向に沿って単一のバッグ膨出用開口部が形成されており、
当該バッグ膨出用開口部から膨出展開される前記エアバッグは左右非分割の一体構成品として構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項4】
前記フードアウタパネルの後端側にはフード幅方向に沿って左右一対のバッグ膨出用開口部が形成されており、
各バッグ膨出用開口部に対応して前記エアバッグは左右一対に分割されており、対応するバッグ膨出用開口部から左右のエアバッグがそれぞれ膨出展開される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−196796(P2007−196796A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16508(P2006−16508)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】