説明

車両用ランプ制御システム

【課題】 運転者の顔向き動作と車両の走行状況に関連する車両信号を検出した上で照明範囲を適切に制御して運転者における視認性を高め、車両の安全走行を確保した車両用ランプ制御システムを提供する。
【解決手段】 運転者の顔向き動作を検出する顔向き検出部12と、車両の走行状況に伴う車両信号を検出する車両信号検出センサー61〜65と、運転者の顔向き動作と車両信号に基づいて車両の走行状況を判定する走行状況判定部21と、走行状況判定部21の判定結果に基づいて照明用のランプLSL,RSL,LSBL,RSBLの照明範囲を変更制御するランプ制御部22とを備える。顔向き動作のみ、あるいは車両信号のみで走行状況を判定する場合に比較してより高い信頼度で車両の走行状況を判定でき、走行状況に最適な照明が確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両の前照灯や補助灯等の照明に用いられる車両ランプの照明範囲を適切に制御して安全走行を確保するようにした車両用ランプ制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行の安全性を高めるために、自動車の走行中に運転者の顔の向きを検出し、顔の向きが変化したときに自車の前照灯(ヘッドランプ)の照明範囲を顔の向きに追従するように制御し、あるいは自動車に設けたベンディングランプやコーナランプ等の補助灯の点灯を制御し、これにより運転者の顔の向いた方向の領域の照明を確保するようにしたランプ制御システムが提案されている。例えば、特許文献1には、運転者の顔を撮像し、得られた顔画像を画像解析することで顔の向きと視線方向を検出し、検出した顔の向きや視線の方向から運転者の視認意図を判断し、この判断に基づいて補助灯の照射方向を可変する技術が提案されている。また、特許文献2には、同様に撮像した顔画像から運転者の顔の向きを検出し、さらに検出した顔の向きとそのときの車両方向(車両の直進方向)とのなす角を検出した上で前照灯の照明光軸を顔の向きの方向に偏向補正する技術が提案されている。
【特許文献1】特開平9−76815号公報
【特許文献2】特開2007−261312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1,2の技術はいずれも検出した運転者の顔の向きに基づいてランプ制御を行う技術であるため、これらの技術を実際に適用した場合には種々の問題が生じることがある。例えば、特許文献1では顔の向きや顔向き角度の大きさに基づいて補助灯の照射方向を可変しているため、運転者が脇見をした場合のように走行方向とは異なる方向を見た場合にもこれに追従して補助灯の照射方向が変化されてしまう場合がある。特許文献1では顔の向きの変化が過大な場合にはサイドミラーの確認動作であると判断して補助灯の制御を排除することも行っているが、これでは運転者が当該方向にある障害物を確認しようとしたような場合には補助灯の制御が停止されてしまい当該障害物を確認することが難しくなる。また、特許文献2では顔の向きと車両(進行)方向とのなす角に基づいて前照灯の照明軸を補正しているため特許文献1と同様に運転者が脇見をしたような場合にも前照灯の照明軸が変化してしまう。このように、自動車の安全走行とは直接に関係の無い運転者の顔の向きの変化によってランプの照射方向が変化されると、運転者が煩わしさを感じたり、無駄なエネルギー消費になってしまう。その一方で、運転者の顔向き動作に正確に追従した照明範囲の制御が行われなくなり、特に運転者が視認しようとする領域や自動車の走行先領域の照明が不十分なものになり、走行の安全性を確保する上での障害になってしまう。
【0004】
本発明の目的は、運転者の顔向き動作と車両の走行状況に関連する車両信号をそれぞれ検出した上で照明範囲を適切に制御することで運転者における視認性を高め、車両の安全走行を確保することを可能にした車両用ランプ制御システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両用ランプ制御システムは、車両の運転者の顔向き動作を検出する顔向き検出手段と、車両の走行状況に伴なう車両信号を検出する車両信号検出手段と、運転者の顔向き動作と車両信号に基づいて車両の走行状況を判定する走行状況判定手段と、走行状況判定手段の判定結果に基づいて車両に設けられた照明用のランプの照明範囲を変更制御するランプ制御手段とを備えることを特徴とする。ここで、本発明における顔向き動作の検出は、運転者の顔の正面が車両の直進方向に対してなす角度の変化により検出する。また、本発明におけるランプの照明範囲の変更制御は、車両全体としての照明面積を変化制御することであり、特許文献2のように単にランプの照明方向を変更するものではない。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運転者の顔向き動作と、車両の走行状況の変化に伴って検出される車両信号とで車両の走行状況を判定しているので、顔向き動作のみ、あるいは車両信号のみで走行状況を判定する場合に比較してより高い信頼度で車両の走行状況を判定できる。そして、この走行状況の判定に基づいて補助ランプの点灯・消灯を制御して既存のヘッドランプやバックアップランプの照明範囲に補助ランプの照明範囲を加えることで車両全体としてのランプの照明範囲を変更制御することにより、車両の走行状況に最適な照明状態、特に、運転者が視認しようとする、あるいは視認すべき領域を照明するように照明範囲が自動制御されることになり、運転者に照明のための操作を要求することなく最適な照明環境を設定し、運転者における視認性を高めて走行の安全性を確保することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施の形態として、顔向き検出手段は、例えば、運転者の正面に配置された撮像装置により運転者の顔を撮像し、得られた顔画像を画像解析して運転者の顔向きを検出するように構成してもよい。画像解析の手法は特に限定されるものでない。あるいは、その他の方法によって運転者の顔向きを検出するようにしてもよい。
【0008】
本発明の実施の形態において、車両信号検出手段により検出される車両信号は、車両の車速信号、操舵角信号、ターンシグナル信号、バック信号の少なくとも一つを備える。また、車両信号検出手段はナビゲーション装置を含むことができ、当該ナビゲーション装置から得られる車両の周辺領域の道路情報を車両信号の一つとして構成してもよい。車両信号の数を多くすればそれだけ多様な車両の走行状況に対応でき、車両の走行状況をより正確に判定することができる。
【0009】
本発明の実施の形態として、ランプは、例えば、車両の前方を照明するヘッドランプと、車両の側方を照明するサイドランプと、車両の後方を照明するバックランプを含む。また、ヘッドランプは照明光軸を左右にスイブル制御できるように構成してもよく、ヘッドランプのみでも車両の前方領域の照明範囲を左右に変更することできる。サイドランプやバックランプは点灯・消灯を制御することで、既存のヘッドランプやバックアップランプによる照明範囲に加えて車両の側方領域及び後方領域を照明し、これら領域の照明範囲を変更することができる。本発明のランプはこれらのランプに限られるものではなく、必要に応じて照明領域が異なる複数のランプを備えることが可能である。
【実施例1】
【0010】
次に、本発明の実施例1を説明する。図1は本発明のランプ制御システムを適用した自動車の概略構成と各ランプの照明範囲を併せて示す平面模式図、図2はシステムのブロック構成を示す図である。図1において、自動車CARの前部の左右には自車の前方を照明するための左と右の各ヘッドランプ(前照灯)LHL,RHLが配設される。前記左右のヘッドランプLHL,RHLは、それぞれハイビームランプHBLとロービームランプLBLを備えるいわゆる4灯式ランプとして構成されており、左右のロービームランプLBLによって同図に点描する前方領域FAを照明する配光特性となっている。また、各ヘッドランプLHL,RHLの各ロービームランプは、図2に示すように、スイブル(偏向)機構SVでの制御によって照明光軸を水平左右方向にスイブル制御し、さらにはレベリング(上下)機構LVでの制御によって照明光軸を垂直上下方向にレベリング制御することが可能に構成されている。これらスイブル機構とレベリング機構は既に広く知られている機構であるので、ここでは詳細な説明は省略する。また、図1において、各ヘッドランプLHL,RHLには、自車の左右の前側方領域RSA,LSAを照明するための補助灯としての左右サイドランプLSL,RSLが組み込まれている。一方、前記自動車CARの後部左右にはそれぞれ既存のリアランプLRL,RRLが設けられており、このリアランプLRL,RRLの一部として自車の中央後方領域BAを照明するためのバックアップランプLBUL,RBULが設けられているが、これに加えて自車の左右の後方領域LSBA,RSBAを照明するための補助灯であるサイドバックランプLSBL,RSBLが自動車CARの左右のサイドミラーの各一部に組み込まれている。
【0011】
一方、図1において、前記自動車CARの車室内の運転席の正面位置、例えばステアリングホイールSTWの近傍位置には運転者DRの顔を正面方向から撮像するための顔向き検出カメラ3が配置され、フロントガラス上部の例えば図には表れないルームミラーの近傍には自車の前方の広い領域を撮像するための周辺監視カメラ4が配置される。これらのカメラ3,4はいずれも例えばCCD撮像素子あるいはCMOS撮像素子等の半導体撮像素子を用いたカメラで構成される。また、ダッシュボードにはナビゲーション装置5が配設される。このナビゲーション装置5からは、自車が現在走行している地図上の位置情報や、自車が現在走行している地域ないしその周辺領域の道路情報、特に現在走行している道路のカーブ(曲路)や交差点、坂道、踏切等の情報が道路信号として出力される。
【0012】
さらに、前記自動車CARには、図1には示されていないが図2に示すように、前記ヘッドランプLHL,RHLを点灯させるための照明スイッチのオン・オフ状態、すなわちヘッドランプLHL,RHLの点灯状態を検出してヘッドランプ信号を出力するヘッドランプセンサー61、運転者によって操舵されたときの前記ステアリングホイールSTWによる操舵角を検出して操舵角信号を出力するステアリング角センサー62、自動車CARの変速機のギア位置信号、特にバック(後退)にギアが入れられた状態を検出可能なギアポジションセンサー63、自動車CARの車速を検出して車速信号を出力する車速センサー64、自動車CARの図には表れない左右のターンシグナルランプを点灯させるためのターンシグナルスイッチを操作したときのターンシグナル信号を出力するターンセンサー65が配設される。
【0013】
そして、図2に示すように、前記顔向き検出カメラ3と周辺監視カメラ4で撮像した撮像信号は画像処理ECU(Electronic Control Unit )1に入力され、この画像処理ECU1において運転者DRの顔向きが検出され、また自車の前方領域の道路状況、特に障害物が検出される。なお、ここで障害物は自車の安全走行の障害になる物を意味しており、例えば路上に存在する建造物やその他の異物、並びに他車や歩行者を含む広い意味で用いている。また、前記画像処理ECU1の検出信号は制御ECU2に入力される。この制御ECU2には前記した各センサー61〜65及びナビゲーション装置5の各出力も入力されている。制御ECU1はこれら画像処理ECU1からの信号と各センサー61〜65からの信号とナビゲーション装置5からの信号とに基づいて自動車CARの現在の走行状況を判定し、この判定に基づいて前記ヘッドランプLHL,RHLやバックアップランプLBUL,RBULの点灯・消灯制御はもとよりロービームランプLBLのスイブル制御やレベリング制御を実行し、さらには補助灯としてのサイドランプLSL,RSLやサイドバックランプLSBL,RSBLの点灯・消灯の制御を実行する。
【0014】
図2に示すように、画像処理ECU1は、周辺監視部11と顔向き検出部12とを備えている。周辺監視部11は周辺監視カメラ4で撮像した撮像信号を所定の時間タイミングで取り込んで画像認識し、自動車CARの前方の道路の路肩や、道路に描かれたレーンマークを検出する。また、道路上に存在する建造物や異物、さらに他車や歩行者等の障害物を検出する。そして、これらの検出した情報を周辺監視情報として出力する。前記顔向き検出部12は顔向き検出カメラ3で撮像した運転者DRの顔画像の撮像信号を所定の時間タイミングで取り込んで画像認識し、運転者の顔向きを検出してこれを顔向き情報として出力する。顔向き検出部12での顔向き検出については特許文献1,2にも記載されているように種々の手法が存在するが、ここでは本出願人が先に特願2007−242941で提案している手法を用いている。
【0015】
この顔向き検出動作について図3を参照して簡単に説明する。顔向き検出部12は、顔向き検出カメラ3で所要の時間間隔で撮像して得られる時系列の運転者DRの顔画像DRFに対してソーベルフィルタ処理を施して顔の輪郭や両眼、鼻、耳等の輪郭を取得する。顔向き検出カメラ3は運転者DRの正面に配設されており、通常では運転者DRは運転中の殆どは自車の前方を向いていると言えるので、撮像した運転者DRの顔画像DRFは運転者の顔の正面画像と言える。しかる上で、初期設定を行う。この初期設定では、図3(a)のように運転者DRの正面の顔画像DRFを判定画面12A上に配置し、この顔画像DRFから両眼LE,REの位置座標、例えば眼球の中心点の位置座標を求め、これら両眼の位置座標から両者の左右方向の中心点を演算し、この中心点を通る垂直線を顔中心線Cxとして定義し、この顔中心線Cxの座標を記憶しておく。この初期設定を行っておくことにより、以降は時系列で順次取得される運転者DRの顔画像DRFから、その都度両眼LE,REの位置座標を求め、これらの位置座標と、初期設定で記憶した顔中心線Cxとから左右の各眼と顔中心線との各寸法dL,dRをそれぞれ偏位寸法として演算し、この偏位寸法から運転者DRの顔向きを検出する。
【0016】
例えば、図3(b)のように、運転者DRの顔画像DRFにおいて、左眼LEの偏位寸法dLが右眼REの偏位寸法dRよりも大きいときには運転者DRは左を向いていると検出し、反対に図3(c)のように、右眼REの偏位寸法dRが左眼LEの偏位寸法dLよりも大きいときには右を向いていると検出する。また、これら両眼の偏位寸法dL,dRの差の大きさから顔向きの角度も検出できる。実際には、初期設定において、両眼の偏位寸法の差の値と運転者の実際の顔向き角度との相関を測定しておき、この測定値に基づいて偏位寸法をパラメータとする角度マップを作成して顔向き検出部12の内部記憶装置に記憶させておき、順次取得した偏位寸法を当該角度マップに適用することで運転者DRの顔の向き及びその角度を迅速に検出することが可能になる。
【0017】
前記制御ECU2は、図2に示したように、走行状況判定部21とランプ制御部22とを備えている。走行状況判定部21には前記画像処理ECU1からの周辺監視情報と顔向き情報が入力され、また前記複数のセンサー、すなわちヘッドランプセンサー61、ステアリング角センサー62、ギアポジションセンサー63、車速センサー64、ターンセンサー65からの各検出信号が入力され、さらには前記ナビゲーション装置5からの自動車の位置情報や道路情報が入力される。そして、走行状況判定部22は、これらの情報や検出信号に基づいて所定のアルゴリズムにより自動車の現在の走行状況を判定する。この判定を行う動作については後述するが、走行状況判定部21には判定を行うために図4に示す状況マップを予め備えており、入力された各情報と検出信号をこの状況マップに適用することで走行状況を判定する。また、ランプ制御部22は走行状況判定部21で判定された走行状況に基づいてロービームランプLBLをスイブル制御するためのスイブル制御部23と、レベリング制御するためのレベリング制御部24を制御する。また、サイドランプLBL,RBLやサイドバックランプLSBL,RSBLの点灯・消灯を制御する。
【0018】
以上の構成のランプ制御システムにおいては、前記顔向き検出カメラ3及び画像処理ECU1の顔向き検出部12は本発明の顔向き検出手段を構成する。また、前記周辺監視カメラ4及び画像処理ECU1の周辺監視部11、及びナビゲーション装置4、並びに各センサー61〜65は本発明の車両信号検出手段を構成している。また、制御ECU2の走行状況判定部11は本発明の走行状況判定手段であり、同じくランプ制御部22は本発明のランプ制御手段であることは言うまでもない。
【0019】
このようなランプ制御システムによるランプ制御動作を説明する。図5はランプ制御動作のメインフローチャートである。先ず、制御ECU2は走行状況判定部21においてヘッドランプセンサーの信号からヘッドランプが点灯されているか否かを判定する(S11)。点灯されていない場合にはランプ制御は実行しない。点灯されている場合には走行状況判定ステップ(S12)を実行する。この走行状況判定ステップ(S12)では、走行状況判定部21は、画像処理ECU1からの周辺監視情報及び顔向き情報を取込み(S121)、また同時にステアリング角センサー62、ギアポジションセンサー63、車速センサー64、ターンセンサー65からの各検出信号を取込み(S122)、場合によってはナビゲーション装置5からの位置情報や道路情報を取込み(S123)、これらの情報に基づいて所定のアリゴリズムでの演算を行って自動車の走行状況を判定する(S124)。この判定する走行状況としては多数の状況が考えられるが、実施例1では説明を判り易くするために、図4の状況マップに示すように、「交差点」,「駐車場」,「カーブ」の3つの場合を例示している。また、「交差点」においては「一時停止後直進」と「右左折」の場合を、「駐車場」においては「縦列駐車」と「バック駐車」の場合を例示している。そして、走行状況判定部21において走行状況を判定すると、制御ECU1はランプ制御部22においてランプ制御ステップ(S13)を実行する。このランプ制御ステップ(S13)では、スイブル制御部23によりロービームランプLBLの照明光軸を所定方向にスイブルし(S131)、これと同時にあるいはこれとは独立してサイドランプLSL,RSLやサイドバックランプLSBL,RSBLを点灯する(S132)制御を行う。
【0020】
以下、図4の状況マップ及び図6ないし図8を参照して前記した「交差点」,「駐車場」,「カーブ」の各走行状況のランプ制御について説明する。
【0021】
「交差点:一時停止後直進」
顔向き検出部12からの顔向き情報から運転者DRの顔が左右に向けられたことを認識し、車速センサー64からの車速が一旦「0」もしくは徐行速度以下になったが、ステアリング角センサー62からの操舵角は直進情報であり、またターンセンサー65からの方向変更情報が入力されないときには、自車が交差点(十字路やT字路等を含む)で一時停止した後、交差点を直進する走行状況であると判定する。このときには、図6(a)に模式図を示すように、自動車CARのヘッドランプLHL,RHLで前方領域FAを照明しているのに加えて左右の両側方を照明するランプ制御を行う。ここでは、ランプ制御部22は左右のサイドランプLSL,RSLを同時に点灯して両側領域LSA,RSAを照明する。これにより、交差点の一時停止で運転者が確認することが必要な左右から来る他車、先行車や対向車、及び歩行者等を確認するための最適な明るさ及び範囲の照明が行われ、運転者による視認性が高められ、自車の左右の道路状況の確認や自車の左右に存在する他車や歩行者の確認をすることができ走行安全性が高められる。なお、このとき周辺監視部11からの周辺情報を参照して交差点での走行状況であることを判定するようにしてもよい。同様に、ナビゲーション装置5からの位置情報や道路情報から交差点での走行状況であることを判定するようにしてもよい。
【0022】
「交差点:右左折」
顔向き情報から運転者DRの顔が左右に向けられ、その後一定の方向に向けられ、車速センサー64からの車速が徐行ないし低速であり、さらにステアリング角センサー62からの操舵角が左又は右に変化する情報が入力され、これと略同時にターンセンサー65からの左又は右への方向変更情報が入力されたときには、自動車CARが交差点(十字路やT字路等を含む)を右左折する走行状況であると判定する。このときには、図6(b)に模式図を示すように、運転者DRの顔が左右に向けられるのに合わせて自動車CARの操舵方向、すなわち入力された操舵角の方向あるいは方向変更情報の方向を照明するランプ制御を行う。この場合には自動車CARは交差点を右折していると判定されるので、ランプ制御部22はヘッドランプLHL,RHLで前方領域FAを照明すると同時に、右サイドランプRSLを点灯して自動車CARが方向変更する右側領域RSLを照明する。これにより、自動車CARの走行先の道路状況や走行先に存在する他車や歩行者を照明し、安全を確認するために運転者が視認すべき領域を最適な明るさ及び範囲で照明して運転者による視認性が高められ、走行安全性が高められる。なお、この走行状況のときには、併せてスイブル制御部23によりロービームランプLBLの照明光軸を自動車の走行方向にスイブル制御してもよい。この場合には、ランプ制御部22は顔向き情報から運転者DRの顔向き角度を検出しスイブル角を運転者の顔の向いた角度に合わせてスイブル角を制御するようにしてもよい。なお、この走行状況のときには、ヘッドランプLHL,RHLによる照明領域FAも右方に偏位されるので対向車を視認するために同図に破線で示すように自動車CARの左サイドランプLSLを点灯して左側領域LSAを併せて照明するようにしてもよい。また、周辺監視部11からの情報やナビゲーション装置5からの情報を併せて参照してもよい。
【0023】
「駐車場:縦列駐車」
顔向き情報から運転者の顔が左又は右、ここでは左に向けられ、車速センサー64からの車速が徐行速度以下になり、ステアリング角センサー62からの操舵角が左又は右に変化した後、直ぐに直進方向に戻される情報が入力されたとき、また場合によってはターンセンサー65からの方向変更情報が入力されたときには、自動車CARが道路の路肩に沿った駐車スペースに縦列駐車する走行状況であると判定する。このときには、図7(a)に模式図を示すように、ランプ制御部22は自動車CARの前方領域FAをヘッドランプLHL,RHLで照明すると同時に運転者の顔の向いている左側の自車の左側領域LSAを左サイドランプLSLで照明するランプ制御を行う。これにより、駐車スペース及び前後に駐車している他車を最適な明るさ及び範囲で照明でき、運転者による視認性が高められ、隣接する他車に接触することなく、あるいは路肩に脱輪することなく駐車スペースに自車を確実かつ安全に駐車させることが可能となる。また、周辺監視部11からの情報やナビゲーション装置5からの情報を併せて参照してもよい。
【0024】
「駐車場:バック駐車」
顔向き情報から運転者DRの顔が左右のいずれか一方に大きい角度に向けられて、自動車CARの後方を向いている情報が入力され、これと共にギアポジションセンサー63からバック(後退)情報が入力され、さらにステアリング角センサー62からの操舵角が左又は右に大きく変化した情報が入力されたとき、また場合によってはターンセンサー65から方向変更情報が入力されたときには、自車が駐車スペースにバック駐車する走行状況であると判定する。このときには、図7(b)に模式図を示すように、運転者の顔が後方に向けられるのに合わせてランプ制御部22は、自車のバックアップランプLBUL,RBULを点灯して駐車スペースのある後方領域BAを照明すると同時に、左と右のサイドバックランプLSBL,RSBLを点灯して駐車スペースに隣接する他車が存在する左右の各後方領域LSBA,RSBAを照明する。これにより、運転者が視認しようとする自動車CARの後方に存在する駐車スペース及びその近傍領域を最適な明るさ及び範囲で照明でき、運転者による視認性が高められ、隣接する他車に接触することなく、あるいは駐車スペースを逸脱することなく駐車スペースに自車を確実かつ安全に駐車させることが可能となる。なお、自動車CARが駐車場に存在することは周辺監視部11からの情報やナビゲーション装置5からの情報を併せて参照することによっても判定できる。
【0025】
「カーブ」
顔向き情報から運転者DRの顔が左又は右に向けられた情報が入力され、これと共にステアリング角センサー62からの操舵角が左又は右に徐々に変化した情報が入力され、車速センサー64から中速ないし高速の車速情報が入力されたときには、自動車CARがカーブ(曲路)を走行する走行状況であると判定する。このとき、ギアポジションセンサー63からの変速比情報を参照してもよい。このときには、図8に右カーブでの模式図を示すように、ランプ制御部22は、ヘッドランプLHL,RHLにより自動車CARの直進方向の前方領域FAを照明するとともに、運転者の顔が左又は右に向けられるのに合わせて顔の向いている自動車CARの側方、カーブ路の前方領域を最適な明るさ及び範囲で照明でき、運転者による視認性が高められ、カーブに適した車速での安全な走行が可能になる。なお、この走行状況のときには、スイブル制御部23によりロービームランプLBLの照明光軸をカーブ路に向けてスイブル制御するようにしてもよい。この場合には、ランプ制御部22は顔向き情報から運転者の顔向き角度を検出し、ロービームランプLBLのスイブル角を運転者DRの顔の向いた角度に合わせてスイブル角を制御することが好ましい。
【0026】
ここで、前記した各走行状況においては、走行状況判定部21はナビゲーション装置5からの自動車の位置情報と周辺の道路情報、及び周辺監視部11からの周辺情報をそれぞれ補助的に参照している例を説明したが、これらの情報をメインの情報として判定を行うようにしてもよい。特に、「交差点」,「駐車場」,「カーブ」の走行状況はナビゲーション装置からの道路情報と位置情報とで自車が交差点にさしかかり、あるいは駐車場内に存在し、さらにはカーブ路を走行することのそれぞれを高い精度で判定することが可能である。その上で、顔向き検出部12からの運転者の顔向き情報と各センサー61〜65からの車両信号に基づいて自車の走行状況をより具体的に判定することで、各走行状況の判定の信頼性を高め、前記したような各走行状況に対応した最適な照明制御が実現できる。
【0027】
本発明において、顔向き検出手段は運転者の顔向き動作が検出できる手段であれば、実施例1のように顔向き検出カメラ3で撮像した顔画像を画像解析する構成に限られるものではない。また、顔向き検出カメラ3で撮像した運転者の顔画像を画像解析して顔向きを検出する際の処理手法は実施例1の手法に限られるものはなく種々の処理手法が採用できる。
【0028】
実施例1では、車両信号として、操舵角信号、変速機ギア位置信号、ターンシグナル信号、車速信号を用いており、これに加えてナビゲーション装置からの信号、さらに周辺監視カメラからの周辺領域信号を用いているが、多様な走行状況をより高信頼度で判定するためには、その他の信号を適宜採用することも可能である。
【0029】
また、実施例1では、制御ECU1はロービームランプLBLのレベリング制御を行うレベリング制御部24を備えているので、各走行状況のときにロービームランプLBLのレベリング制御を併せて行うことで路面に対する有効な照明範囲を変化させ、より最適な照明範囲の制御を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用した自動車の概念構成を示す平面模式図である。
【図2】本発明のランプ制御システムのブロック構成図である。
【図3】顔向き検出手段での検出動作を説明する概念図である。
【図4】走行状況を判定するマップである。
【図5】ランプ制御動作のメインフローチャートである。
【図6】交差点走行時のランプ制御を説明するための模式図である。
【図7】駐車場走行時のランプ制御を説明するための模式図である。
【図8】カーブ走行時のランプ制御を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0031】
1 画像処理ECU
2 制御ECU
3 顔向き検出カメラ
4 周辺監視カメラ
5 ナビゲーション装置
11 周辺監視部
12 顔向き検出部
21 走行状況判定部
22 ランプ制御部
23 スイブル制御部
24 レベリング制御部
LHL,RHL ヘッドランプ
LBUL,RBUL バックアップランプ
LSL,RSL サイドランプ
LSBL,RSBL サイドバックランプ
LBL ロービームランプ
CAR 自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた照明用のランプの照明範囲を変更制御するためのランプ制御システムであって、当該車両の運転者の顔向き動作を検出する顔向き検出手段と、当該車両の走行状況に伴なう車両信号を検出する車両信号検出手段と、前記顔向き動作と前記車両信号に基づいて当該車両の走行状況を判定する走行状況判定手段と、前記走行状況判定手段の判定結果に基づいて前記照明範囲を変更制御するランプ制御手段とを備えることを特徴とする車両用ランプ制御システム。
【請求項2】
前記車両信号は、車両の車速信号、操舵角信号、ターンシグナル信号、バック信号の少なくとも一つを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用ランプ制御システム。
【請求項3】
前記車両信号検出手段はナビゲーション装置を含み、当該ナビゲーション装置から得られる当該車両の周辺領域の道路情報を車両信号の一つとして構成していることを特徴とする請求項2に記載の車両用ランプ制御システム。
【請求項4】
前記ランプは車両の前方を照明するヘッドランプと、車両の側方を照明するサイドランプと、車両の後方を照明するバックランプを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用ランプ制御システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−120146(P2009−120146A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299224(P2007−299224)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】