説明

車両用交流発電機

【課題】車両用交流発電機の出力をバッテリ等に供給するハーネス(ケーブル線)の引き回し自由度を高めるとともに、車両用交流発電機の軸方向寸法を短くする出力端子構造を提供する。
【解決手段】車両用交流発電機100の整流装置11を内蔵するケーシング1Aの端部に設けられた開口1aから径半方に延出する出力端子13が設けられ、前記開口1aが出力端子13を所定の取り出し角度に引き回すことが可能な開度θを有するとともに、開口1aに装着されたガイド14で整流装置11が保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のエンジンに取り付けられる車両用交流発電機に関するもので、特にこの発電機の出力である電力を供給するハーネス(ケーブル線)の引き回し自由度を高めた出力端子を備えた車両用交流発電機に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用発電機に取り付けるハーネスの相対位置は、車両用発電機が搭載される個々の車両により設定されており、その要求に対応するために出力端子保護の絶縁材料とその固定部品側とに凹凸を設けて、車両用交流発電機本体に対して取り出し方向を複数設定できるものが先行技術文献に示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−314190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、電気部品を覆う車両用発電機終端のカバーよりさらに軸方向に突出するガイド部を、任意の角度に選択的に位置決めすることができるものが示されている。ガイド部が延出するインシュレ−タと整流装置との嵌合部に嵌合凸凹形状を設け、出力端子中心の軸周り角度を変える構成で、360度にわたって位置決めを可能としている。
しかし、特許文献1の図1に示されるように、カバー終端部外部にガイド部を配する構成なので発電機として軸方向寸法が長くなり、車両搭載のスペース効率としては悪化してしまっていた。また、360度位置決め用に複雑な構成の部品を必要とし、コスト高となっている。さらには、それぞれ出力端子位置において引き回し範囲が外径側に90度近くあれば車両側の要求に対応できることも多く、ひとつの端子位置に対して360度引き回しの構成は、実用的ではないという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので軸方向寸法の短い、簡単な出力端子構造を備えた車両用交流発電機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両用交流発電機は構成部品を内蔵するケーシングと、ケーシングの端部に設けられた開口から径方向に延出する出力端子が設けられており、開口は出力端子を所定の取り出し角度に引き回すことが可能な範囲に対応した開度を有するとともに、開口に装着されたガイドによって、構成部品が保護されているものである。
【発明の効果】
【0007】
上記のような車両用交流発電機は、出力端子がケーシング端部から径方向に延出しているので軸方向寸法が短くなり、かつケーシングの開口が出力端子の所定の取り出し角度に引き回し範囲に対応した開度を有しているので、前記引き回し範囲内の仕様の車両用交流発電機においては、同一の開口を有するケーシングの適用が可能となり、ケーシング部品の標準化、部品数の低減ひいてはコスト低減が可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1による、車両用交流発電機の断面図である。
【図2】実施の形態1による、車両用交流発電機のリヤケーシングの方向から見た図である。
【図3】実施の形態1の整流装置の斜視図である。
【図4】実施の形態1による、出力端子部品の取り付け状態を説明する概略図である。
【図5】実施の形態1による、出力端子取り出し部を示す図である。
【図6】図5の開口部のガイド装着状態を示す概略図である。
【図7】実施の形態1によるガイドを示す斜視図である。
【図8】図7のガイドの嵌合部を示す断面図である。
【図9】実施の形態2による、車両用交流発電機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による車両用交流発電機100を示す断面図である。車両用交流発電機100は、フロントケーシング1B、リヤケーシング1A、シャフト2、回転磁極3及び回転磁極3に内包された回転巻線4により構成される回転子5、コア6及びコイル7により構成される固定子8を備えている。さらにシャフト2の一端にはスリップリング9が設けられ、回転巻線4と電気的に接続されており、このスリップリング9およびブラシ10を介して外部から巻線4に電流が供給されるようになっている。図内左側のリヤケーシング1Aに内蔵、支持される構成部品として、前記巻線4に電流が供給され回転駆動されて生じる回転磁界により固定子8のコイル7に発生する交流の起電力を、直流に整流する整流装置11と、その発生した電力を規定値に制限する電圧調整器12とが配される。
【0010】
図2は、図1のA矢の方向から見たリヤケーシング1Aを示す図で、前記整流装置11から出力端子13がリヤケーシング1Aの端部から径方向に延出して車両搭載時にハーネス取り付け可能な配置で設けられている。整流装置11は、複数の整流素子(図示しない)を支持し、発生する熱を放熱するヒートシンク11a、11bが組み合わされて図3の整流装置斜視図に示すような円弧形状で構成され、リヤケーシング1A内に高密度で収納される。ヒートシンク11aと出力端子13とはボルト11c部で電気的に接続され、リヤケーシング1Aの軸端外側から図1に示すようにナット11dで締め付けられる。図4の出力端子13の取り付け状態概略図で示すように、出力端子13はリヤケーシング1Aの外から供給されるが、前述した特許文献1のように軸方向に突出することがなく、車両用交流発電機100の全長寸法を短くしている。
出力端子13は、鉄などの導電材よりなる中継ボルト13aと、これを一体モールド成形したモールド部13bとで構成される。中継ボルト13aの一端には雄ネジ部が形成され、他端には平板状の取り付け部13cが形成される。取り付け部13cには貫通穴が形成される。モールド部13bは図1に示すように、所要の個所を覆うようにモールド成形される。
【0011】
図5に示すようにリヤケーシング1Aの端部であって、出力端子13の取り付け部位に設けられた開口1aは、出力端子13がその軸中心に方向P、方向Q、方向R等の所定の取り出し角度に引き回すことが対応可能なように、開口角度θ(開口幅)が設けられている。前記方向P、Q、Rは車両のエンジン仕様によって規定される角度であり、車両用交流発電機100を製造工場から自動車メーカに出荷される際、エンジン仕様に基づいて規定される前記方向P、Q、Rのいずれかに出力端子13の延出方向が設定されているものである。この実施の形態1によるリヤケーシング1Aは、上記取り出し角度P、Q、Rに対応可能な開口角度θが設けられており、図5では約70度の例を示しているが、これに限定されることなく、θ<170度程度までの構成を採用することが可能である。このようにリヤケーシング1Aの端部に設けた開口1aがエンジン仕様によって規定される複数の取り出し角度に対応可能な開口角度θを設けてあるので、リヤケーシング1Aの標準化がなされ、種類の削減化がはかれ、従来のように個別仕様に対応した開口を有することによる多種類のリヤケーシングを準備する必要をなくすることができる。
【0012】
前記した開口1aは開口角度θを有して設け、図5の例では方向Qに出力端子13が延出しているので、方向P、方向R側にリヤケーシング1Aに内蔵する車両用交流発電機100の構成部品を見通すように不要な空所が存在することになる。この空所を覆うガイドの構成を図6〜図8で説明する。
出力端子13を図6(a)には図5で示した方向Qに、図6(b)には方向Rの取り出し角度引き回した例を示すとともに、ガイド14をリヤケーシング1Aに図1に示すA矢の方向から装着した状態を示す。図7に実施の形態1のガイド14の斜視図を示す。
【0013】
ガイド14は耐熱樹脂等の樹脂材で、図7に示すような形状をなしている。すなわち図1に示すリヤケーシング1Aの円筒部1A−aに装着される部位は、前述した開口角度θとほぼ同等の角度を形成する円弧部14cを備える。この円弧部14cは前記円筒部1A−aの軸方向長さよりやや短い寸法の高さHを有し、かつ円弧部14cの中央には図6に示す出力端子13の幅Bに相当する幅Wの開部14aが、前記出力端子13と干渉しない所定の高さhを有して設けてある。さらに図7(a)の断面A−Aを示す図7(b)には円弧部14cの両端から突出して略Y字状の係止部14bが設けられている。
また、図7(a)に示すガイド14の上面には前記開口角度θをなし、リヤケーシング1Aの端面に存在する諸部分品を避けるような形状を有するフレア部14dが、前記円弧部14cにつながって設けてある。このフレア部14dは薄肉であり、かつ複数の切り込み14eが設けてあるので、しわ寄せ可能な構成であることからガイド14のリヤケーシング1Aへの取り付けの自由度を増している。なお、係止部14bは両端に設ける例を示したが、開部14aと図7(a)に示す両端の係止部14bとの間にも設けた、例えば4個の係止部14bとしてもよい。
【0014】
図5および図6(a)、図6(b)に示すように、リヤケーシング1Aの円筒部1A−aに複数のスリット1bが設けてある。このスリット1bは開口1aをまたがる円周方向の両側に3個所ずつ設けた例を示しているが、それぞれ1個所以上の複数個であってもよい。スリット1bが複数個設けた例をリヤケーシング1Aの図1のA矢の方向から見た周方向を平面上に展開した概略図である図6(c)に示す。この図6(c)に示すtは、リヤケーシング1Aの板厚であり、従ってスリット1bは単純な溝形状である。
【0015】
ガイド14を車両用発電機100の軸方向終端方向、すなわちリヤケーシング1Aの端面からスライドさせて前記リヤケーシング1Aの開口1aのスリット1bに取り付けをする。ガイド14の係止部14bが挿入された状態を図8(a)から判るようにY字状をなす係止部14bがスリット1bの溝底にて周方向につっぱる状態となり、かつガイド14のフレア部14dがリヤケーシング1Aの端面に当接した状態でリヤケーシング1Aに固着される。
なお、スリット1bは図8(b)に示すような係止溝1bsを有し、この係止溝1bsにガイド14の係止部14bが挿入されるような構造であってもよい。
【0016】
なお、図6(b)から判るように出力端子13が方向Rに延出した仕様の場合には、リヤケーシング1Aに設けられた方向Pのスリット1bのいくつかは使用されない状態となるがスリット1bの深さは図6(c)に示したように、リヤケーシング1Aの板厚t以下であるので、スリット1bからは水分が機内に浸入することはない。
【0017】
上記のような構成とすることで、従来では、出力端子の引き回しに合わせた開口を有する、複数のリヤケーシングを準備して車両の要求に対応していたものが、ひとつのリヤケーシングに、単一のガイドを嵌合させることで対応可能となりまた、軸方向のサイズを大きくすることなく、かつ、不要な異物侵入口も開けてしまうことなく、搭載性を向上させたものが得られる。
【0018】
実施の形態2.
図9は、実施の形態2に係る車両用交流発電機100の要部を示す断面図である。図9に示す車両用交流発電機100は、図1に示した構造に対して、リヤケーシング1Aの外側に電気部品が取り付けられる点が異なる。リヤケーシング1Aに取り付けられた車両用交流発電機100の内部構成品である整流装置11を保護する保護カバー15から、出力端子13を延出させる構成であり、前述した実施の形態1のリヤケーシング1Aに代替するのが保護カバー15であり、出力端子13の構成周りは実施の形態1と同様なので説明省略する。
このような実施の形態2による車両用交流発電機は、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0019】
上記実施の形態1、2では、リヤケーシング1A側に全ての構成部品を配する構成を示したが、いずれの構成部品も、この配置に限るものでなく、フロントケーシング1B側に配置しても差し支えない。
【符号の説明】
【0020】
1A リヤケーシング、1a 開口、1b スリット、11 整流装置、
13 出力端子、14 ガイド、14b 係止部、15 保護カバー、
100 車両用交流発電機、θ 開口開度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用交流発電機であって、前記車両用交流発電機には構成部品を内蔵するケーシングと、該ケーシングの端部に設けられた開口から径方向に延出する出力端子が設けられており、前記開口は前記出力端子を所定の取り出し角度に引き回すことが可能な範囲に対応した開度を有するとともに、該開口に装着されたガイドによって、前記構成部品が保護されていることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項2】
車両用交流発電機であって、前記車両用交流発電機には構成部品を内蔵するケーシングと、該ケーシングの軸方向外側に設けられた整流装置と、該整流装置の保護カバーと、該保護カバーの端部に設けられた開口から径方向に延出する出力端子が設けられており、前記開口は前記出力端子を所定の取り出し角度に引き回すことが可能な範囲に対応した開度を有するとともに、該開口に装着されたガイドによって、前記整流装置が保護されていることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項3】
前記ケーシングにはスリットが設けられているとともに、前記ガイドに設けられた係止部が前記スリットに挿入されることにより、前記ガイドが前記開口に装着されることを特徴とする請求項1に記載の車両用交流発電機。
【請求項4】
前記保護カバーにはスリットが設けられているとともに、前記ガイドに設けられた係止部が前記スリットに挿入されることにより、前記ガイドが前記開口に装着されることを特徴とする請求項2に記載の車両用交流発電機。
【請求項5】
前記スリットは、前記開口をまたがる両側に設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の車両用交流発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−229330(P2011−229330A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98679(P2010−98679)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】