説明

車両用内装材、及び車両用内装材の製造方法

【課題】コストを削減しつつ、端部の見栄えが向上された車両用内装材、及び車両用内装材の製造方法を提供する。
【解決手段】ドアトリムの端部12Tでは、表側表皮シート材34の端部34Tは、コアシート材32の端面32Cに沿って車両幅方向外側へ伸長され、裏側表皮シート材36の端部36Tまで延びている。この表側表皮シート材34の端部34Tによって、コアシート材32の端面32Cがその表面32Aから裏面32Bに渡って被覆されている。また、表側表皮シート材34の端部34Tと裏側表皮シート材36の端部36Tとは、略直角に突き合されて溶着(接合)されている。更に、コアシート材32の表面32Aからコアシート材32の端面32Cに跨る表側表皮シート材34の角部34Kは、コアシート材32の表面32Aから端面32Cに向って円弧状に湾曲されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装材、及び車両用内装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内装材の製造方法として、架橋発泡シート材の両面に樹脂製の表皮シート材がそれぞれ積層された基材をプレス成形する方法が知られている(例えば、特許文献1)。このようにプレス形成された車両用内装材はトリミング加工によって外周部等の不要な部分が切断される。トリミング加工方法としては、例えば、切断刃を加熱しながら車両用内装材を切断し、切断抵抗を小さくする方法が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−227129号公報
【特許文献2】特開2009−050975号公報
【0004】
ところで、トリミング加工により切断された車両用内装材の切断面が露出すると、見栄えが悪くなるため、例えば、切断面に真空成形によって新たな表皮材を巻き付けることが考えられる。しかしながら、この方法では、切断面用に新たな表皮材が必要となるため、コストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、コストを削減しつつ、端部の見栄えが向上された車両用内装材、及び車両用内装材の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用内装材は、架橋熱可塑性発泡樹脂製のコアシート材と、前記コアシート材の表面に重ねられると共にプレス成形によって前記コアシート材と一体化され、端部が前記コアシート材の端面に沿って伸長されて該端面を被覆する熱可塑性樹脂製の表側表皮シート材と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る車両用内装材によれば、表側表皮シート材の端部がコアシート材の端面に沿って伸長されており、伸長された表側表皮シート材の端部によってコアシート材の端面が被覆されている。従って、コアシート材の端面の露出が抑制されるため、車両用内装材の端部の見栄えが向上する。
【0008】
また、コアシート材の表面に一体化された表側表皮シート材を流用してコアシート材の端面を被覆することにより、真空成形によってコアシート材の端面に新たな表皮材を巻き付ける構成と比較して、コスト削減を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の車両用内装材は、請求項1に記載の車両用内装材において、前記コアシート材の裏面に重ねられ、プレス形成によって該コアシート材と一体化された熱可塑性樹脂製の裏側表皮シート材を備え、前記表側表皮シート材の前記端部が、前記裏側表皮シート材の端部まで伸長されている。
【0010】
請求項2に係る車両用内装材によれば、コアシート材の端面を被覆する表側表皮シート材の端部が、コアシート材の裏面に一体化された裏側表皮シート材の端部まで伸長されている。即ち、伸長された表側表皮シート材の端部によって、コアシート材の端面が当該コアシート材の表面から裏面に渡って被覆されている。従って、車両用内装材の端部の見栄えが更に向上する。
【0011】
請求項3に記載の車両用内装材は、請求項2に記載の車両用内装材において、前記表側表皮シート材の前記端部が、前記裏側表皮シート材の前記端部に接合されている。
【0012】
請求項3に係る車両用内装材によれば、表側表皮シート材の端部を裏側表皮シート材の端部に接合したことにより、表側表皮シート材の剥がれが抑制される。従って、コアシート材の端面の露出を長期的に抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載の車両用内装材は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用内装材において、前記表側表皮シート材が、断面視にて前記コアシート材の前記表面から前記端面に向かって湾曲している。
【0014】
請求項4に係る車両用内装材によれば、表側表皮シート材を断面視にてコアシート材の表面から端面に向かって湾曲させたことにより、車両用内装材の端部の見栄えが向上する。
【0015】
請求項5に記載の車両用内装材の製造方法は、架橋熱可塑性発泡樹脂製のコアシート材の表面に重ねられると共にプレス成形によって該コアシート材と一体化された熱可塑性樹脂製の表側表皮シート材に、加熱された切断刃を押し当てて前記表側表皮シート材を軟化点以上融点未満に加熱しながら該表側表皮シート材を押し切る表側表皮シート材切断工程と、前記コアシート材を押し切ると共に、切断された前記コアシート材の切断面に沿って軟化された前記表側表皮シート材の切断部を伸長させて該切断面を被覆するコアシート材切断工程と、を備えている。
【0016】
請求項5に係る車両用内装材の製造方法によれば、コアシート材切断工程において、表側表皮シート材の切断部をコアシート材の切断面に沿って伸長し、伸長された切断部によってコアシート材の切断面を被覆する。従って、コアシート材の切断面の露出が抑制されるため、車両用内装材の端部の見栄えが向上する。
【0017】
また、コアシート材の表面に重ねられた表側表皮シート材を流用してコアシート材の切断面を被覆することにより、真空成形によってコアシート材の切断面に新たな表皮材を巻き付ける方法と比較して、コスト削減を図ることができる。
【0018】
請求項6に記載の車両用内装材の製造方法は、請求項5に記載の車両用内装材の製造方法において、前記コアシート材の裏面に重ねられると共にプレス成形によって該コアシート材と一体化された熱可塑性樹脂製の裏側表皮シート材を押し切ると共に、切断された前記裏側表皮シート材の切断面まで前記表側表皮シート材の前記切断部を伸長させる裏側表皮シート材切断工程を備えている。
【0019】
請求項6に係る車両用内装材の製造方法によれば、裏側表皮シート材切断工程において、切断された裏側表皮シート材の切断面まで表側表皮シート材の切断部を伸長させることにより、コアシート材の端面が当該コアシート材の表面から裏面に渡って被覆される。従って、車両用内装材の端部の見栄えが更に向上する。
【0020】
請求項7に記載の車両用内装材の製造方法は、請求項5又は請求項6に記載の車両用内装材の製造方法において、前記コアシート材の前記表面及び前記切断面に跨った前記表側表皮シート材の角部に、加熱された前記切断刃の湾曲面を押し当てて前記角部を軟化点以上融点未満に加熱しながら、該角部を湾曲させる角部成形工程を備えている。
【0021】
請求項7に係る車両用内装材の製造方法によれば、コアシート材の表面及び切断面に跨った表側表皮シート材の角部を湾曲させることにより、車両用内装材の端部の見栄えが更に向上する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る車両用内装材、及び車両用内装材の製造方法によれば、コストを削減しつつ、車両用内装材の端部の見栄えを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るドアトリムを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るドアトリムを示す図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用内装材の製造方法を説明する説明図であり、(A)はドアトリムを切断する前の状態が示されており、(B)はドアトリムの表側表皮シート材が切断された状態が示されている。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用内装材の製造方法を説明する説明図であり、(A)はドアトリムの裏側表皮シート材を切断した状態が示されており、(B)はドアトリムから切断刃を引き抜いた状態が示されている。
【図5】比較例に係る切断装置を示す図4(B)に相当する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る車両用内装材、及び車両用内装材の製造方法について説明する。なお、図1及び図2において適宜示される矢印RRは車両前後方向後側を示し、矢印UPは車両上下方向上側を示し、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0025】
図1には、一例として、本実施形態に係る車両用内装材の製造方法によって製造されたフロントサイドドア用のドアトリム12が示されている。車両用内装材としてのドアトリム12は、図示しないドアインナパネルの車両幅方向内側に取り付けられている。このドアトリム12は、車両幅方向から見て略矩形形状に形成されており、車両上下方向の中央部から車両幅方向内側へ凸状に突出されたドアアームレスト部26を主要な構成として備えている。
【0026】
図2には、ドアトリム12の車両前後方向後側の端部12Tの断面図が示されている。ドアトリム12の端部12Tは、車両上下方向から見てクランク状に屈曲されている。ドアトリム12を構成する基材は、中層を構成するコアシート材32の両面に、表層を構成する表側表皮シート材34、裏側表皮シート材36をそれぞれ積層した3層構造(サンドイッチ構造)の積層シートで構成されている。コアシート材32は、架橋構造を有する熱可塑性発泡樹脂(架橋熱可塑性発泡樹脂)製で、例えば、ポリプロピレン系樹脂を主成分とした樹脂に対し、架橋補助剤、発泡剤を添加して溶融混合したものをシート状に成形し、得られたシート材に電解性放射線等を照射して架橋したものである。
【0027】
なお、コアシート材32を構成する樹脂は、熱可塑性を有し、かつ架橋可能であれば良く、ポリプロピレン系樹脂に限らない。また、架橋補助剤及び発泡剤は、従来周知のものを適宜用いることができる。また、コアシート材32のゲル分率は、60%以上であることが好ましい。なお、ここでいうゲル分率とは、次のものをいう。即ち、コアシート材片を所定温度(例えば、100℃)のキシレンに浸けて溶解させたものを濾過し、不溶解物を採取する。この不溶解物の重量をコアシート材片の重量で除した値を百分率(%)で表したものである。また、コアシート材32の目付(目付け量)は、150g/m〜500g/mが好ましい。
【0028】
コアシート材32の表面(意匠面側の面)32Aには表側表皮シート材34が重ねられ、コアシート材32の裏面32Bには裏側表皮シート材36が重ねられている。これらの表側表皮シート材34及び裏側表皮シート材36は、例えば、ポリプロピレン系樹脂を主成分する熱可塑性樹脂製のシート材で、プレス成形によってコアシート材32と一体化されている。また、表側表皮シート材34及び裏側表皮シート材36は、コアシート材32よりも板厚が薄くなっている。なお、本実施形態では、例えば、コアシート材32の板厚が3mm〜5mmとされ、表側表皮シート材34及び裏側表皮シート材36の板厚が100μm〜300μmとされている。
【0029】
ここで、ドアトリム12の端部12Tでは、コアシート材32の端面32Cが表側表皮シート材34の端部34Tによって被覆されている。具体的には、表側表皮シート材34の端部34Tは、コアシート材32の端面32Cに沿って車両幅方向外側へ伸長(延伸)され、裏側表皮シート材36の端部36Tまで延びている。この表側表皮シート材34の端部34Tによって、コアシート材32の端面32Cがその表面32Aから裏面32Bに渡って被覆されている。また、表側表皮シート材34の端部34Tと表側表皮シート材34の端部34Tとは、略直角に突き合されて溶着(接合)されている。更に、コアシート材32の表面32Aからコアシート材32の端面32Cに跨る表側表皮シート材34の角部34Kは、断面視にてコアシート材32の表面32Aから端面32Cに向って略円弧状に湾曲されている。
【0030】
次に、本実施形態に係る切断装置の構成について説明する。
【0031】
図3(A)には、本実施形態に係る切断装置60が部分的に示されている。切断装置60は押し切り式の切断装置であり、所定形状にプレス成形されたドアトリム12が載置される台座62と、切断刃74を備えた切断治具70と、切断刃74を加熱する加熱器80を備えている。台座62は鋼製で、その上面がドアトリム12が載置される載置面62Aとされている。この載置面62Aは、プレス成形されたドアトリム12の形状に応じた凹凸が付けられている。また、載置面62Aの一端には、下刃64が形成されている。
【0032】
切断治具70は鋼製で、治具本体部72と切断刃74を備え、図示しないシリンダ等の昇降機構によって上下方向(矢印Z方向)に移動可能に支持されている。治具本体部72の下面は、ドアトリム12を押圧する押圧面72Aとされている。この押圧面72Aは、台座62の載置面62Aと対向すると共に、プレス成形されたドアトリム12の形状に応じて凹凸が付けられている。
【0033】
また、治具本体部72の一端には、切断刃74が設けられている。切断刃74は治具本体部72の押圧面72Aから下方へ延出されており、その先端部における押圧面72A側の角部に上刃76が形成されている。この上刃76は、切断治具70を下降させたときに台座62の下刃64と近接対向する位置に配置されており、上刃76と下刃64との間でドアトリム12の不要部分が切断されるようになっている。また、切断刃74における上刃76側の側面74Aと押圧面72Aとの隅部には、ドアトリム12の端部12Tの角部を成形する角部成形面74Bが設けられている。この角部成形面74Bは、断面視にて略円弧状に湾曲された湾曲面とされている。なお、角部成形面74Bの形状は適宜変更可能である。
【0034】
更に、切断刃74の内部には、当該切断刃74を加熱するハロゲンヒータ等の複数の加熱器80が埋設されている。また、加熱器80は角部成形面74B付近にも埋設されており、角部成形面74Bが加熱されるようになっている。各加熱器80には温度制御手段82が接続されている。この温度制御手段82によって加熱器80の加熱温度が制御され、切断刃74及び角部成形面74Bに接触したドアトリム12の表側表皮シート材34が軟化点以上融点未満に加熱されるようになっている。なお、ここでいう軟化点とは、固形の表側表皮シート材34が軟らかくなり、変形し易い状態になる温度である。
【0035】
次に、本実施形態に係るドアトリムの製造方法(切断方法)の一例について説明する。
【0036】
先ず、図3(A)に示されるように、裏側表皮シート材36を下に向けた状態で所定形状にプレス成形されたドアトリム12を台座62の載置面62Aに載置する。この際、下刃64に対してドアトリム12の切断部を位置決めし、ドアトリム12の不要部分を台座62から横方向へ突出させる。
【0037】
次に、温度制御手段82によって加熱器80を作動し、切断刃74及び角部成形面74Bを所定温度(例えば、約120℃)に加熱する。この状態で、切断治具70を所定速度で降下しながら上刃76と下刃64との間でドアトリム12の表側表皮シート材34、コアシート材32、裏側表皮シート材36を順次切断する。具体的には、図3(B)に示されるように、昇降機構(図示省略)によって切断治具70を所定速度で下降(矢印Z方向)させ、加熱された切断刃74の上刃76をドアトリム12の表側表皮シート材34に押し当てて表側表皮シート材34を加熱しながら当該表側表皮シート材34を押し切る(表側表皮シート材切断工程)。この際、上刃76が押し当てられた表側表皮シート材34の切断部34Sが軟化点以上融点未満に加熱されて軟化する。
【0038】
次に、昇降機構(図示省略)によって切断治具70を所定速度で更に下降(矢印Z方向)させ、ドアトリム12のコアシート材32を押し切る(コアシート材切断工程)。この際、切断刃74の側面74Aの摩擦力によって、軟化された表側表皮シート材34の切断部34Sが表側表皮シート材34の切れ目に引き込まれると共に、切断されたコアシート材32の切断面(端面)32Cに沿って下方へ伸長される。即ち、軟化された表側表皮シート材34の切断部34Sをコアシート材32の切断面32Cに沿って伸長させながらコアシート材32を押し切る。これにより、表側表皮シート材34の切断部34Sによってコアシート材32の切断面32Cが被覆される。
【0039】
次に、図4(A)に示されるように、コアシート材32の表面32A及び切断面32Cに跨った表側表皮シート材34の角部34Kが切断治具70の角部成形面74Bによって所定量押圧されるまで、昇降機構(図示省略)により切断治具70を所定速度で更に下降(矢印Z方向)させ、ドアトリム12の裏側表皮シート材36を押し切る(裏側表皮シート材切断工程,角部成形工程)。これにより、切断治具70の角部成形面74Bによって表側表皮シート材34の角部34Kが軟化点以上融点未満に加熱されて略円弧状に湾曲されると共に、当該角部34Kの板厚が略均一になる。また、軟化された表側表皮シート材34の切断部34Sが裏側表皮シート材36の切断面36Cまで伸長され、当該切断面36Cに溶着される。
【0040】
次に、図4(B)に示されるように、温度制御手段82によって加熱器80を停止し、表側表皮シート材34を冷却、固化させた後、昇降機構(図示省略)によって切断治具70を上昇(矢印Z方向)させる。これにより、硬化した表側表皮シート材34の切断部34Sがコアシート材32の切断面32C及び裏側表皮シート材36の切断面36Cに接合され、表側表皮シート材34の切断部34S(端部34T)によってコアシート材32の切断面32C(端面32C)が被覆されたドアトリム12が製造される。
【0041】
このように表側表皮シート材34を流用してコアシート材32の切断面32Cを被覆することにより、真空成形によってコアシート材32の切断面32Cに新たな表皮材を巻き付ける方法と比較して、コスト削減を図ることができる。
【0042】
なお、切断治具70の下降速度、即ち、ドアトリム12を切断する切断速度は、表側表皮シート材34の切断部34Sがコアシート材32の切断面32Cに沿って伸長するように、表側表皮シート材34の材料特性や加熱器80の加熱温度に応じて適宜設定すれば良い。
【0043】
また、本実施形態では、角部成形工程において、切断治具70の角部成形面74Bによって表側表皮シート材34の角部34Kを略円弧状に湾曲させたが、角部成形工程は適宜省略可能である。
【0044】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
図2に示されるように、本実施形態に係るドアトリム12は、表側表皮シート材34の端部34Tがコアシート材32の端面32Cに沿って伸長されており、伸長された表側表皮シート材34の端部34Tによってコアシート材32の端面32Cが被覆されている。この表側表皮シート材34の端部34Tは、コアシート材32の裏面32Bに一体化された裏側表皮シート材36の端部36Tまで伸長されている。即ち、伸長された表側表皮シート材34の端部34Tによって、コアシート材32の端面32Cが当該コアシート材32の表面32Aから裏面32Bに渡って被覆されている。従って、コアシート材32の端面32Cが露出しないため、ドアトリム12の端部12Tの見栄えが向上する。また、表側表皮シート材34がコアシート材32の表面32Aから裏面32Bに向かって湾曲しているため、ドアトリム12の端部12Tの見栄えが更に向上する。
【0046】
更に、表側表皮シート材34の端部34Tが裏側表皮シート材36の端部36Tに接合されているため、表側表皮シート材34の剥がれが抑制される。従って、コアシート材32の端面32Cの露出を長期的に抑制することができる。また、コアシート材32の両面に表側表皮シート材34、裏側表皮シート材36をそれぞれ積層した3層構造(サンドイッチ構造)とすることにより、ドアトリム12の剛性が向上する。
【0047】
更にまた、コアシート材32の表面32Aに一体化された表側表皮シート材34を流用してコアシート材32の端面32Cを被覆することにより、真空成形によってコアシート材32の端面32Cに新たな表皮材を巻き付ける構成と比較して、コスト削減を図ることができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係るドアトリム12、及びドアトリム12の製造方法によれば、コストを削減しつつ、ドアトリム12の端部12Tの見栄えを向上することができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、ドアトリム12を3層構造の積層シートで構成したが、例えば、裏側表皮シート材36を省略して2層構造にしても良い。
【0050】
また、上記実施形態に係る車両用内装材の製造方法は、フロントサイドドアのドアトリム12に限らず、例えば、リアサイドドアのドアトリム、クォータトリム、ピラーガーニッシュ等の車両用内装材にも適用可能である。
【0051】
次に、比較試験について説明する。
【0052】
本比較試験では、上記実施形態に係る車両用内装材の製造方法によって製造されたドアトリムの切断面と、比較例に係る車両用内装材の製造方法によって製造されたドアトリムの切断面を比較した。
【0053】
実施例におけるドアトリムは、図3(A)に示される切断装置60において、加熱器80によって切断刃74及び角部成形面74Bを約120℃に加熱した後、図示しない昇降手段によって切断治具70を下降させてドアトリム12を切断した。一方、比較例におけるドアトリムは、図5に示される切断装置100において、切断刃74及び角部成形面74Bの加熱をせず、図示しない昇降手段によって切断治具70を下降させてドアトリム12を切断した。なお、角部成形面74Bは、半径5mmの円弧面とされている。
【0054】
表1には、実施例及び比較例で用いたドアトリム12の構成が示されている。なお、実施例におけるドアトリム12の構成と比較例におけるドアトリム12の構成は同じである。
【0055】
【表1】

【0056】
図5に示されるように、比較例に係るドアトリム12では、表側表皮シート材34の切断部34Sがコアシート材32の切断面32Cに沿って伸長せず、コアシート材32の切断面32Cが露出した状態となった。これに対して実施例に係るドアトリム12では、表側表皮シート材34の切断部34Sがコアシート材32の切断面32Cに沿って伸長し、伸長した表側表皮シート材34の切断部34Sによってコアシート材32の切断面32Cが被覆された。この結果から実施例で用いた車両用内装材の製造方法の有用性が確認できた。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
12 ドアトリム(車両用内装材)
32 コアシート材
32C 端面(切断面)
34 表側表皮シート材
34K 角部
34S 切断部
36 裏側表皮シート材
74 切断刃
74B 角部成形面(湾曲面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋熱可塑性発泡樹脂製のコアシート材と、
前記コアシート材の表面に重ねられると共にプレス成形によって前記コアシート材と一体化され、端部が前記コアシート材の端面に沿って伸長されて該端面を被覆する熱可塑性樹脂製の表側表皮シート材と、
を備える車両用内装材。
【請求項2】
前記コアシート材の裏面に重ねられ、プレス形成によって該コアシート材と一体化された熱可塑性樹脂製の裏側表皮シート材を備え、
前記表側表皮シート材の前記端部が、前記裏側表皮シート材の端部まで伸長されている請求項1に記載の車両用内装材。
【請求項3】
前記表側表皮シート材の前記端部が、前記裏側表皮シート材の前記端部に接合されている請求項2に記載の車両用内装材。
【請求項4】
前記表側表皮シート材が、断面視にて前記コアシート材の前記表面から前記端面に向かって湾曲している請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用内装材。
【請求項5】
架橋熱可塑性発泡樹脂製のコアシート材の表面に重ねられると共にプレス成形によって該コアシート材と一体化された熱可塑性樹脂製の表側表皮シート材に、加熱された切断刃を押し当てて前記表側表皮シート材を軟化点以上融点未満に加熱しながら該表側表皮シート材を押し切る表側表皮シート材切断工程と、
前記コアシート材を押し切ると共に、切断された前記コアシート材の切断面に沿って軟化された前記表側表皮シート材の切断部を伸長させて該切断面を被覆するコアシート材切断工程と、
を備える車両用内装材の製造方法。
【請求項6】
前記コアシート材の裏面に重ねられると共にプレス成形によって該コアシート材と一体化された熱可塑性樹脂製の裏側表皮シート材を押し切ると共に、切断された前記裏側表皮シート材の切断面まで前記表側表皮シート材の前記切断部を伸長させる裏側表皮シート材切断工程を備える請求項5に記載の車両用内装材の製造方法。
【請求項7】
前記コアシート材の前記表面及び前記切断面に跨った前記表側表皮シート材の角部に、加熱された前記切断刃の湾曲面を押し当てて前記角部を軟化点以上融点未満に加熱しながら、該角部を湾曲させる角部成形工程を備える請求項5又は請求項6に記載の車両用内装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−240555(P2012−240555A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112572(P2011−112572)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】