説明

車両用内装材の組付構造

【課題】組付部品の仮止め機能部を適切に設定することで、金型に仮止め機能部の成形のためのスライドコア構造の増設が伴うことがない車両用内装材の組付構造の提供を図る。
【解決手段】リッド部材1の裏面に設けた取付台座2には、その開放側縁部の座面端縁に爪部5を延設し、これが、クリップ3と取付孔16との挿入係着過程で凹部15の側壁に設けた係止孔19に落ち込み係着するようにしている。これにより、爪部5は取付台座2の成形と同時に型成形でき、爪部成形のための専用のスライドコア構造の増設を伴うことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアトリムやリャサイドトリム等に代表される合成樹脂製の車両用内装材の組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は従来の車両用内装材の組付構造を示すもので、この例では、自動車のリャサイドトリム10の一部にカップホルダ等に供されるポケット部11を構成する例を示している。
【0003】
ポケット部11は、リャサイドトリム10のアームレスト12の一部に形成した物品収容凹部13と、該物品収容凹部13の側方開放部分を覆って組付けられたリッド部材1と、で構成している。
【0004】
従って、この例では、リャサイドトリム10を相手部品とし、リッド部材1をこの相手部品に組付ける組付部品としている。
【0005】
リャサイドトリム10およびリッド部材1は、何れも適宜の合成樹脂材をもって金型を用いて射出成形される。
【0006】
リッド部材1は、その裏面に一般に隠しクリップと称されている止着構造を構成し、クリップやビス等の止着部品が意匠面側(外側)に露出して外観を損なわないように工夫されている。
【0007】
具体的には、リッド部材1の裏面の4隅部と、下辺中央部との計5ヶ所に、一側が開放した筺形状の取付台座2を一体に突出して形成してあり、この取付台座2の座面にクリップ3を突出して設けてある。この例では、クリップ3を取付け台座2に一体に突出成形してあるが、該取付台座2にホルダー孔を切欠形成し、ここに別体のクリップを差し込み係着して設ける場合もある。
【0008】
リャサイドトリム10の物品収容凹部13は、上方と側方とを開放して形成してあり、側方開放部の周囲はリッド部材1の厚み相当の深さの段差部14を形成して、リッド部材1を組付けた際に相互の外面が面一に整合し得るようにしている。
【0009】
段差部14には、リッド部材1の取付台座2に対応する位置に、これを受容する凹部15を形成してあると共に、その凹部底面にクリップ3を挿入係着する取付孔16を形成してある。
【0010】
これにより、リッド部材1を、その裏面を物品収容凹部13の側方開放部分の段差部14にあてがって押圧することにより、クリップ3が取付孔16に圧入(挿入)係着して、該リッド部材1をリャサイドトリム10に組付けてポケット部11を構成するようにしている。
【0011】
この例では、クリップ3を、中空の基軸3aと複数条のリブ3bとで構成する一方、取付孔16をボス孔として形成している。そして、クリップ3を取付孔16に挿入した後、基軸3aの中空部にビス9を螺入して拡径することにより、リブ3bがボス孔16の内周面に圧着して固定するようにしているが(図3参照)、別体のクリップが取付孔に貫通係着する汎用の係合構造とすることも可能である。
【0012】
また、段差部14には、その複数ヶ所にリッド部材1の裏面に当接するスペーサ用の凸部17を設けて、前述のリッド部材1の面整合精度を高められるようにしている。
【0013】
このように、クリップ3および取付孔16はリッド部材1の裏側に隠れた配置となるため、リッド部材1の上述の係着作業による組付けは、作業者の勘による所謂盲作業となって作業性が悪く、また、確実な係着が行われなくなってしまう可能性がある。
【0014】
このようなことから、リッド部材1の裏面に複数のフック爪4を突設する一方、段差部14にフック係着孔18を形成し、リッド部材1の組付け時に、前記クリップ3と取付孔16との挿入に先立って、フック爪4をフック係着孔18に挿入係着させて、該リッド部材1をリャサイドトリム10に対して仮止め可能としている。
【0015】
この類似構造は、例えば、特許文献1,特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002−362249号公報
【特許文献2】特開平8−91131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
リッド部材1を金型により成形する際に、取付台座2の部分は型抜きが行えないためスライドコアを用いて成形することになるが、これに加えてフック爪4もその成形にスライドコアを用いなければならないため、その分、型構造が複雑となってコスト増となってしまう。
【0018】
そこで、本発明は組付部品の仮止め機能部を適切に設定することで、成形金型に該仮止め機能部の成形のためのスライドコア構造の増設が伴うことがなく、コストダウンを実現可能な車両用内装材の組付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の車両用内装材の組付構造にあっては、組付部品の裏面に、少なくとも一側が開放した筺形状の取付台座を一体に突出成形して、該取付台座の座面にクリップを突出して設ける一方、相手部品には、前記取付台座を受容する凹部を形成して、該凹部底面に前記クリップを挿入係着する取付孔を形成し、前記クリップと取付孔の相互を係着して、前記組付部品を前記相手部品に組付けるようにしている。
【0020】
そして、前記取付台座の座面の前記開放側の縁部に爪部を延設する一方、前記凹部の側壁には、前記爪部が落ち込み係着可能な係止孔を形成して、これら爪部と係止孔との係合により、前記組付部品を前記相手部品に仮止め可能としたことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、組付部品の裏面の取付台座を、相手部品の凹部に挿入して押圧すると、クリップが取付孔に挿入係着する過程で、取付台座の座面縁部の爪部が凹部側壁の係止孔に落ち込み係着する。この爪部の係止孔に対する落ち込み係着は、取付台座の凹部に対する挿入方向と直交する方向となる。これにより、組付部品を相手部品に対して仮止め(仮組付け)することができる。
【0022】
この結果、組付部品を盲作業により相手部品に係着固定する場合に、該組付部品を仮止めした状態で、クリップと取付孔とを適正にしっかりと挿入,係着することができ、かつ、組付作業性を改善することができる。
【0023】
また、爪部は取付台座の開放側縁部に延設してあるため、該取付台座の成形と同時に型成形することができ、爪部成形のための専用のスライドコア構造の増設を伴うことがない。この結果、金型のコストアップを招来することがなく、コスト的に有利に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す分解斜視図。
【図2】図1のA範囲部を拡大して示す正面図。
【図3】図2のB−B線における組付状態を拡大して示す断面図。
【図4】従来の構造を示す図1と同様の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に前記従来の構成と同一部分に同一符号を付して詳述する。
【0026】
図1に示す本実施形態の組付構造は、自動車のリャサイドトリム10の一部にカップホルダ等に供されるポケット部11を構成する例を示している。
【0027】
ポケット部11は、リャサイドトリム10のアームレスト12の一部に形成した物品収容凹部13と、該物品収容凹部13の側方開放部分を覆って組み付けられたリッド部材1と、で構成している。
【0028】
従って、本実施形態では、リャサイドトリム10を相手部品とし、リッド部材1をこの相手部品に組付ける組付部品としている。
【0029】
リャサイドトリム10およびリッド部材1は、何れも適宜の合成樹脂材をもって金型を用いて射出成形される。
【0030】
リッド部材1は、その裏面に一般に隠しクリップと称されている止着構造を構成し、クリップやビス等の止着部品が意匠面側(外側)に露出して外観を損なわないように工夫されている。
【0031】
具体的には、リッド部材1の裏面の4隅部と、下辺中央部との計5ヶ所に、一側が開放した筺形状の取付台座2を一体に突出して形成してあり、この取付台座2の座面にクリップ3を突出して設けてある。図1に示す例では、クリップ3を取付台座2に一体に突出成形してあるが、該取付台座2にホルダー孔を切欠形成し、ここに別体のクリップを差し込み係着して設ける場合もある。
【0032】
リッド部材1は、その金型成形に際して、裏面の取付台座2が型抜き方向と直交するため、該取付台座2をスライドコアを用いて成形するようにしている。従って、図1に示す例では図の右側上,下と下辺中央部の取付台座2の右側部がスライドコアの抜き方向に対応した開放部として形成され、図の左側上,下の取付台座2の左側部がスライドコアの抜き方向に対応した開放部として形成してある。
【0033】
リャサイドトリム10の物品収容凹部13は、上方と側方とを開放して形成してあり、側方開放部の周囲はリッド部材1の厚み相当の深さの段差部14を形成して、リッド部材1を組付けた際に相互の外面が面一に整合し得るようにしている。
【0034】
段差部14には、リッド部材1の取付台座2に対応する位置に、これを受容する凹部15を形成してある。この凹部底面には、クリップ3を挿入係着する取付孔16を形成してある。
【0035】
これにより、リッド部材1を、その裏面を物品収容凹部13の側方開放部分の段差部14にあてがって押圧することにより、クリップ3が取付孔16に圧入(挿入)係着して、該リッド部材1をリャサイドトリム10に組付けてポケット部11を構成するようにしている。
【0036】
本実施形態では、図2,図3に示すようにクリップ3を、中空の基軸3aと複数条のリブ3bとで構成する一方、取付孔16をボス孔として形成している。そして、クリップ3を取付孔16に挿入した後、基軸3aの中空部にビス9を螺入して拡径することにより、リブ3bがボス孔16の内周面に圧着して固定するようにしているが、別体のクリップが取付孔に貫通係着する汎用の係合構造とすることも可能である。
【0037】
ここで、本実施形態にあっては、例えば、図2にも示すようにリッド部材1の下辺中央部の取付台座2の座面の前記開放側の縁部に、爪部5を延設してある。従って、特別にスライドコア構造を必要とすることなく爪部5の成形が可能である。
【0038】
一方、この爪部5を設けた取付台座2に対応する前記リャサイドトリム1の前記凹部15の側壁には、前述のクリップ3と取付孔16とが挿入係着する過程で、前記爪部5が落ち込み係着可能な係止孔19を形成してある。
【0039】
本実施形態では、前記爪部5の外面にクリップ3のリブ3bの一部も共に延設してあるため、係止孔19はこれら爪部5とその外面のリブ3bを含む厚み方向の寸法に対応した開口寸法とされる。
【0040】
また、前記凹部15の係止孔19を設けた側壁は、該凹部15に対する前記取付台座2の進入方向に、つまり、凹部15の開放側に向けて、所要の開き角度をもって傾斜して形成してある。
【0041】
これにより、リャサイドトリム10を金型により射出成形する場合に、前記係止孔19は図3に破線で示すように図外の下型と上型の型面が斜状に擦り合わさるパーティングライン上に形成されることになる。従って、この場合も特別にスライドコア構造を必要とすることなく係止孔19の成形が可能となる。
【0042】
以上の構成からなる本実施形態によれば、リッド部材1をリャサイドトリム10の物品収容凹部13の側方開放部分を覆って組付ける場合、該リッド部材1を、その裏面を物品収容凹部13の開放部周縁の段差部14にあてがい、取付台座2を対応する凹部15に挿入して押圧する。
【0043】
このとき、座面端縁に爪部5を延設した取付台座2に対応した部分を重点として外面側から押圧すると、クリップ3がボス孔(取付孔)16の内周面に圧入係着する過程で、爪部5が凹部15の係止孔19に落ち込んでその孔縁に係着し、リッド部材1を前記段差部14に仮止め(仮組付け)することができる。
【0044】
このように、爪部5の係止孔15に対する落ち込み係着は、取付台座2の凹部15に対する挿入方向と直交する方向となるから、リッド部材1を段差部14にしっかりと仮止め(仮組付け)することができる。
【0045】
そこで、他の取付台座2と、これらに対応した凹部15との挿入部分にあっても、それぞれ重点的に押圧荷重を加えることによって、各クリップ3をボス孔(取付孔)16の内周面に確実に圧入係着させることができる。
【0046】
この結果、リッド部材1をリャサイドトリム10に盲作業により係着固定する場合に、該リッド部材1を部分的に仮止め(仮組付け)した状態としておいて、全体的にクリップ3とボス孔(取付孔)16とを適正にしっかりと圧入係着することができ、かつ、組付作業性を改善することができる。
【0047】
また、爪部5は取付台座2の開放側縁部の座面端縁に延設してあるため、該取付台座の成形と同時に型成形することができ、爪部成形のためだけの専用のスライドコア構造の増設を伴うことがない。
【0048】
この結果、金型のコストアップを招来することがなく、コスト的に有利に得ることができる。
【0049】
また、本実施形態では上述の凹部15の係止孔19を設けた側壁を、該凹部15の開放側に向けて所要の開き角度をもって傾斜して形成してあるため、前記取付台座2と凹部15との挿入係合作業の際に、爪部5の先端が凹部15の側壁の傾斜に沿って誘導されるため、ここにガイド作用が得られて組付作業性をより向上することができる。
【0050】
また、このような組付作業上の効果とは別に、リャサイドトリム10を金型により射出成形する場合に、前記係止孔19は前述のように図3に破線で示す図外の下型と上型の型面が擦り合わさるパーティングライン上に形成されることになる。
【0051】
従って、この場合も特別にスライドコア構造を必要とすることなく、コスト的に有利に係止孔19の成形が可能となる。
【0052】
なお、前記実施形態では、組付部品をリッド部材1に、相手部品をリャサイドトリム10にそれぞれ例をとって説明したが、組付部品1をドアトリムやリャサイドトリム,ピラーガーニッシュ等の合成樹脂製の車両用内装材とし、相手部品10をそれらに対応する車体パネル材とした組付構造に適用することも可能である。
【0053】
また、前記実施形態では複数の取付台座2のうち、1つの取付台座2のみに爪部5を形成した例を示したが、これに限るものではなく、複数の取付台座2に爪部5を形成してもよいことは勿論である。
【0054】
また、爪部5と係止孔19とは、クリップ3と取付孔16とが挿入係着する過程で落ち込み係着するように構成しているが、これらクリップ3と取付孔16との係着に先立って爪部5が係止孔19に落ち込み係着して仮止めする構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…リッド部材(組付部品)
2…取付台座
3…クリップ
5…爪部
10…リャサイドトリム(相手部品)
15…凹部
16…取付孔
19…係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組付部品の裏面に、少なくとも一側が開放した筺形状の取付台座を一体に突出成形して、該取付台座の座面にクリップを突出して設ける一方、
相手部品には、前記取付台座を受容する凹部を形成して、該凹部底面に前記クリップを挿入係着する取付孔を形成し、
前記クリップと取付孔の相互を係着して、前記組付部品を前記相手部品に組付けるようにした構造であって、
前記取付台座の座面の前記開放側の縁部に爪部を延設する一方、
前記凹部の側壁には、前記爪部が落ち込み係着可能な係止孔を形成して、
これら爪部と係止孔との係合により、前記組付部品を前記相手部品に仮止め可能としたことを特徴とする車両用内装材の組付構造。
【請求項2】
前記凹部の前記係止孔を形成した側壁を、前記凹部に対する前記取付台座の進入方向に開き角度をもって傾斜して形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用内装材の組付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−28205(P2013−28205A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163849(P2011−163849)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】