説明

車両用内装材の製造方法

【課題】 表皮材をシートパッドに能率的に、しかも皺が寄ることなく接着することができるようにする。
【解決手段】シートフレーム2、シートパッド(図示せず)及び表皮材5を組付ける。このとき、表皮材5のシートパッドに接着すべき裏面には、ホットメルトフィルム(図示せず)を予め固定しておく。受け型11の受け面11aにシートフレーム2を載置する。その後、熱型12を下方へ移動させて、その下面12aを表皮材5に所定の力で押し付ける。熱型12は、予め所定の温度に加熱されており、ホットメルトフィルムを表皮材5を介して加熱溶融する。その後、溶融したホットメルトフィルムを固化させることにより、表皮材5をシートパッドに接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートクッション、バックレスト、ドアトリム等に用いられる車両用内装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用のシートクッションは、金属製のシートフレームと、このシートフレームの上面に載置固定されたシートパッドと、このシートパッドの上面(前面)に接着固定された表皮材とによって構成されている。
【0003】
上記構成のシートクッションにおいて、表皮材をシートパッドに接着固定する場合には、下記特許文献1に記載されているように、まずシートパッドに溶融状態のホットメルト接着剤を塗布する。ホットメルト接着剤が固化したら、シートパッドの上面に表皮材を被せる。そして、ホットメルト接着剤を加熱溶融させた後、ホットメルト接着剤を固化させる。これによって、表皮材をシートパッドに接着固定している。
【0004】
【特許文献1】特開平5−1420601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の製造方法においては、シートパッドにホットメルト接着剤を塗布した直後には表皮材を被せることができず、ホットメルト接着剤が固化するまでの間は待機しなければならない。このため、作業能率が低下するという問題があった。
なお、ホットメルト接着剤を塗布した直後に表皮材をシートパッドに被せるようにした場合には、溶融したホットメルト接着剤の粘度が高いため、表皮材をシートパッドに沿って均一に被せることが難しく、表皮材に皺が寄ってしまうという問題が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するために、所定の保形性及びクッション性を有するパッドの前面部に表皮材を接着してなる車両用内装材の製造方法において、上記パッドの前面部にホットメルトフィルム及び表皮材を順次重ね、上記ホットメルトフィルムを上記表皮材を介して加熱溶融した後、上記ホットメルトフィルムを固化させることによって上記パッドの前面部に上記表皮材を接着することを特徴としている。
この場合、上記ホットメルトフィルムの周縁部が上記表皮材に予め固定されていることが望ましい。
上記ホットメルトフィルムは、表皮材の前面に加熱された熱型を押し付けることにより、上記表皮材を介して加熱溶融することが望ましい。
上記熱型は、上記表皮材に押し付けられる前に、上記ホットメルトフィルムを溶融することができる温度に予め加熱されていることが望ましい。
上記ホットメルトフィルムは、繊維が絡まってなるウェブタイプのホットメルトフィルムであることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、ホットメルトフィルムが固体であるから、溶融したホットメルト接着剤を用いる場合のように工程を中断する必要がない。したがって、作業能率を向上させることができる。また、表皮材をパッドに重ねたとき、表皮とパッドとの間に介在するホットメルトフィルムが固体の状態になっていて、粘着性を有していない。したがって、表皮材をパッドに均一な状態で重ねることができ、表皮材に皺が寄ることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1及び図2は、この発明に係る車両用内装材の製造方法によって製造されたシートクッション(車両用内装材)1を示す。シートクッション1は、シートフレーム2、このシートフレーム2の上面部(前面部)2aに載置固定されたシートパッド(パッド)3と、このシートパッド3の上面部(前面部)にホットメルトフィルム4(実際には、ホットメルトフィルム4が溶融した後、固化することによって形成されるホットメルト接着剤層)を介して接着された表皮材5とによって構成されている。
【0009】
シートフレーム2は、所定の強度を有しており、図2及び図3に示すように、金属又は硬質の樹脂によって所定の形状に形成されている。金属からなるシートフレーム2は、例えば金属板をプレス成形することによって製造される。樹脂からなるシートフレーム2は、射出成形法等の各種の成形法によって製造される。
【0010】
シートパッド3は、ポリウレタン等の樹脂を発泡成形してなるものであり、図2及び図3に示すように、所定の形状に形成されている。しかも、シートパッド3は、その形状を維持することができるだけの所定の保形性(強度)を有するのみならず、シートクッション1に腰掛けたときに衝撃を緩和することができるように、所定のクッション性(柔軟性)を併せ持っている。そのような性質を有するものであれば、シートパッド3として他の公知のものを使用することが可能である。シートパッド3は、シートフレーム2の上面部2aに載置され接着等の手段によって固定されている。
【0011】
表皮材5は、各種車両用内装材の表皮材として用いられる公知のいずれのものであってもよい。したがって、表皮材5としては、単層の表皮からなるもの、表皮の裏面にフォーム層が固着された二層構造のもの、あるいはフォーム層の裏面にナイロンのハーフトリコットがさらに固着された三層構造のもの等を用いることができる。この実施の形態では、図4に示すように、表皮6とその裏面に固定されたフォーム層7とによって表皮材5が構成されている。
【0012】
表皮6は、加熱されても軟化することがないような材質、例えばファブリックやトリコットで構成されていることが望ましいが、塩化ビニル(PVC)、TPO(サーモプラスチックオレフィン)等のオレフィン系樹脂等によって構成してもよい。表皮6は、座部6A及び周囲部6Bによって構成されている。座部6Aは、シートパッド3の上面部に対応した形状に成形されている。周囲部6Bは、シートパッド3の外周面に対応して環状に形成されている。周囲部6Bの上端部は、座部6Aの周縁部に重ね合わせて縫い付けられている。これにより、表皮6全体が、下面部が開放した深さの浅い袋状に形成されている。表皮6の内部には、その下面開放部からシートパッド3が挿入されている。周囲部6Bの下端部の適宜の箇所には、樹脂製の板材6Cが接着、縫製、その他の手段によって固定されている。この板材6Cがシートフレーム2にホグリング等の手段によって固定されることにより、表皮材5がシートパッド3に押し付けられた状態でシートフレーム2に固定されるようになっている。
【0013】
フォーム層7は、例えばウレタンの樹脂からなる発泡体によって構成されており、シートパッド3より高い柔軟性を有している。そして、フォーム層7は、座部6Aの背面にラミネートされている。したがって、表皮6とシートパッド3との間にフォーム層7が介在しており、それによって表皮材5のうちの座部6Aの部分に軟らかな触感が付与されている。
【0014】
ホットメルトフィルム4は、公知の各種のものを採用することができるが、その材質は互いに接着されるシートパッド2と表皮材5(フォーム層7)との各材質に対応して適宜に定められる。例えば、ナイロン系、オレフィン系のホットメルトフィルム4が用いられる。ホットメルトフィルム4の厚さは、通常、0.05〜0.2mm程度に設定される。ホットメルトフィルム5は、全体にわたってほぼ一様な厚さを有するとともに、表裏両面が凹凸のない一様な面である通常のフィルム体として形成されていてもよく、細い糸を不織布のように絡めることによって構成したウェブタイプのものであってもよい。ホットメルトフィルム4は、フォーム層7とほぼ同一の広がりを有しており、フォーム層7全体と対向して配置されている。ホットメルトフィルム4の周縁部は、図4に示すように、フォーム層7の下側に重ね合わされ、座部6A、フォーム層7及び周囲部6Bの周縁部に縫い合わされている。なお、座部6A、周囲部6B、フォーム層7及びホットメルトフィルム4の互いに重ね合わされた周縁部は、シートパッド3の上面と外周面との交差部に形成された溝(図示せず)に嵌め込まれている。
【0015】
上記構成のシートクッション1を製造する場合には、図3に示すように、シートフレーム2の上面部2aにシートパッド3を載置固定するとともに、シートパッド3に表皮材5を被せ、シートフレーム2、シートパッド3及び表皮材5を仮組立する。これにより、シートパッド2の上にホットメルトフィルム4及び表皮材5が順次重ねられる。また、表皮材5をシートパッド3に被せたときには、シートパッド3と表皮材5のフォーム層7との間にホットメルトフィルム4が介在するが、ホットメルトフィルム4が固体であって粘着性を有していないので、表皮材5は皺が寄ることなく均一な状態でシートパッド3全体を覆うことができる。
【0016】
次に、図5に示す熱プレス装置10を用いてシートパッド2と表皮5とを接着固定する。熱プレス装置10は、上下に対向して配置された受け型11及び熱型12を有している。受け型11及び熱型12は、水平方向に対向させてもよい。受け型11の上面には、受け部11aが設けられている。この受け部11aは、シートフレーム2の下面を支持するものであり、シートフレーム2全体に下方へ向かう力が作用したとき、シートフレーム2を安定した状態で支持することができるようになっている。熱型12は、ホットメルトフィルム4を表皮材5を介して加熱溶融するためのものであり、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属によって構成されている。熱型12の内部にはヒータ(図示せず)が埋設されている。このヒータにより、熱型12の下面12aがホットメルトフィルム4を溶融することができるだけの所定の温度に加熱されている。熱型12の下面12aは、表皮材4の上面部に対応した形状を有し、しかもホットメルトフィルム4全体を溶融することができるよう、ホットメルトフィルム4と同等以上の広がりを有している。下面12aには、樹脂、その他の材質からなるコーティング層を設けてもよい。
【0017】
熱プレス装置10を用いてシートパッド2と表皮5とを接着固定する場合には、まず受け型11にシートフレーム2を載置する。次に、熱型12をシリンダ13によって下方へ移動させ、その下面12aを表皮材5の上面に所定の力で押し付ける。熱型12は、下面12aを表皮材5に押し付けてから加熱してもよいが、作業の能率上、予め加熱しておくことが望ましい。その後、熱型12を表皮材5に押し付けた状態に所定時間維持することにより、ホットメルトフィルム4を加熱溶融する。その後、熱型12を上方へ移動させて表皮材5から離間させる。これにより、溶融したホットメルトフィルム4を固化させ、シートパッド3と表皮材5とを接着固定する。なお、シートパッド3と表皮材5との接着後には、表皮材5がシートフレーム2にホグリング等によって固定される。
【0018】
上記のようにしてシートパッド3と表皮材5とを接着固定した場合には、ホットメルトフィルム4を溶融することなく、固体の状態で表皮材5をシートパッド3に被せているから、溶融状態のホットメルト接着剤をシートパッド3に塗布する場合のようにホットメルト接着剤が固化するまで待機する必要がない。したがって、作業能率を向上させることができる。また、表皮材5をシートパッド3に被せたときホットメルトフィルム4が固体の状態であって粘着性を有していないから、表皮材5をシートパッド3に被せたときに。表皮材5に皺がよることがない。したがって、製造後の表皮材5に皺が寄ることを防止することができる。
【0019】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、シートパッド3をシートフレーム2に固定した状態でシートパッド3と表皮材5とを接着しているが、シートパッド3と表皮材5とを接着した後にシートパッド3をシートフレーム2に固定してもよい。
また、上記の実施の形態においては、ホットメルトフィルム4を表皮材5に縫い付けることによって固定しているが、他の方法で固定してもよい。また、ホットメルトフィルム4は、必ずしも表皮材5に予め固定しておかなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る製造方法によって製造されるシートクッションを示す斜視図である。
【図2】図1のX−X線に沿う断面図である。
【図3】この発明の製造方法において用いられるシートフレーム、シートパッド及び表皮材を示す斜視図である。
【図4】図3のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図5】この発明の製造方法を実施するための熱プレス装置によってシートパッドと表皮材とを接着固定している状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 シートクッション(車両用内装材)
3 シートパッド
4 ホットメルトフィルム
5 表皮材
12 熱型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の保形性及びクッション性を有するパッドの前面部に表皮材を接着してなる車両用内装材の製造方法において、
上記パッドの前面部にホットメルトフィルム及び表皮材を順次重ね、上記ホットメルトフィルムを上記表皮材を介して加熱溶融した後、上記ホットメルトフィルムを固化させることによって上記パッドの前面部に上記表皮材を接着することを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【請求項2】
上記ホットメルトフィルムの周縁部が上記表皮材に予め固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装材の製造方法。
【請求項3】
上記表皮材の前面に加熱された熱型を押し付けることにより、上記ホットメルトフィルムを上記表皮材を介して加熱溶融することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用内装材の製造方法。
【請求項4】
上記熱型が、上記表皮材に押し付けられる前に、上記ホットメルトフィルムを溶融することができる温度に予め加熱されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用内装材の製造方法。
【請求項5】
上記ホットメルトフィルムが、繊維が絡まってなるウェブタイプのホットメルトフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用内装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−1001(P2008−1001A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173454(P2006−173454)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】