説明

車両用制御装置

【課題】道路の一区間(学習対象区間)の走行により得られる回生エネルギー量を精度良く推定することができる車両用制御装置を提供する。
【解決手段】学習手段70は、前記回生エネルギー学習制御において、車両6が道路の一区間である学習対象区間を走行しているときに蓄電装置56が少なくとも一時的に満充電状態であった場合には、学習データとして記憶する回生エネルギー量EGYrsを、蓄電装置56が終始満充電状態ではなかったと仮定して算出する。従って、蓄電装置56が満充電状態であればそのときの実際の回生エネルギー量EGYrsは零又は略零であるところ、そのように回生エネルギー量EGYrsが零又は略零であるとしては前記学習データは記憶されず、推定回生エネルギー量EGYersを精度良く推定するのに適した前記学習データを記憶することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動により回生作動する電動機を備えた車両において、その回生作動に関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両を制動することにより回生作動する電動機を備えた車両が、従来から知られている。例えばハイブリッド車両や電気自動車がそれであり、特許文献1には、そのハイブリッド車両を制御するための駆動制御装置が開示されている。その特許文献1の駆動制御装置は、通常走行時には、蓄電装置の蓄電量(充電残量)が所定の通常走行管理幅内になるように、その蓄電装置の蓄放電を制御する。また、ナビゲーションシステムの道路地図情報から、走行経路上に存在する所定標高差の下り区間を特定し、その特定した下り区間を走行する際には上記通常走行管理幅を拡大した拡大管利幅で上記蓄電装置の蓄放電を制御する。詳細には、上記駆動制御装置は、上記特定した下り区間の標高差からその下り区間で蓄電装置に蓄電可能な蓄電量を見積もり、その見積もった蓄電量に対応して上記拡大管利幅を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−160269号公報
【特許文献2】特開2000−102110号公報
【特許文献3】特開平11−008909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに、特許文献1の駆動制御装置のようにすれば、前記特定した下り区間を走行する際の蓄電可能な蓄電量を見積もることができる。言い換えれば、道路の一区間を車両が走行する前に、その一区間の走行で回生される回生エネルギー量を推定することができる。しかしながら、例えば、同じ道路の一区間を走行する場合でも、個々の運転者によって車速などの走行状態が相互に異なり、その走行状態に応じて上記回生エネルギー量も異なるものである。従って、特許文献1の駆動制御装置には、上記回生エネルギー量を推定する際にその推定の精度を更に向上させる余地が残されていると考えられた。なお、このような課題は未公知のことである。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、道路の一区間の走行により得られる回生エネルギー量を精度良く推定することができる車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、(a)走行中の車両を制動することにより回生作動する電動機を備えたその車両において、その車両が道路の一区間を走行しているときに回生作動した前記電動機から蓄電装置に供給された回生エネルギー量とその回生エネルギー量を算出できる物理量との少なくとも何れかを前記一区間に関連付けて学習データとして記憶する回生エネルギー学習制御を行い、前記車両が再び前記一区間を走行する前にその一区間の走行により得られる推定回生エネルギー量を前記学習データに基づいて推定する回生エネルギー推定制御を行う車両用制御装置であって、(b)前記回生エネルギー学習制御において、前記車両が前記道路の一区間を走行しているときに前記蓄電装置が少なくとも一時的に満充電状態であった場合には、前記学習データとして記憶する前記回生エネルギー量を、前記蓄電装置が終始満充電状態ではなかったと仮定して算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、前記道路の一区間を走行する際には、前記車両用制御装置は、前記回生エネルギー推定制御において、以前の走行実績を示す前記学習データに基づいて前記推定回生エネルギー量を推定するので、上記車両の運転者に特有の車両走行における走行嗜好などの傾向を加味して上記推定回生エネルギー量を推定することになる。従って、上記学習データに基づかず例えば上記一区間内の標高差などの画一的なデータだけに基づいて上記推定回生エネルギー量を推定する場合と比較して、上記推定回生エネルギー量を精度良く推定することができる。また、前記蓄電装置が満充電状態であればそのときの回生エネルギー量は零又は略零であるところ、前記車両用制御装置は、前記回生エネルギー学習制御において、前記蓄電装置が少なくとも一時的に満充電状態であった場合には、前記回生エネルギー量を、上記蓄電装置が終始満充電状態ではなかったと仮定して算出するので、上記推定回生エネルギー量を精度良く推定するのに適した前記学習データを記憶することが可能である。このように、上記推定回生エネルギー量を精度良く推定することができれば、例えば、その推定回生エネルギー量が予測された前記道路の一区間に差し掛かる前に前記蓄電装置の充電残量を予め適切に減らしておくことができるので、十分な回生作動により車両の燃費を向上させることが可能である。なお、燃費とは、例えば単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。逆に、燃費の低下(悪化)とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が短くなることであり、或いは、燃料消費率が大きくなることである。
【0008】
また、第2発明の要旨とするところは、前記第1発明の車両用制御装置であって、(a)前記学習データには、前記回生エネルギー量に影響する走行状況が含まれており、(b)前記回生エネルギー推定制御では、前記学習データに含まれる走行状況と現在の走行状況との差異を加味した上で、前記推定回生エネルギー量を推定することを特徴とする。このようにすれば、前記車両用制御装置は、上記走行状況の差異を加味しない場合と比較して、上記推定回生エネルギー量を精度良く推定することが可能である。
【0009】
また、第3発明の要旨とするところは、前記第1発明または前記第2発明の車両用制御装置であって、(a)前記回生エネルギー推定制御では、所定の回生エネルギー算出式に従って前記推定回生エネルギー量を算出し、(b)前記車両が前記道路の一区間を走行しているときに前記蓄電装置が終始満充電状態ではなかった場合には、前記回生エネルギー算出式で算出されるその一区間走行時の回生エネルギー量がその回生エネルギー量の実際値に近付くように、その回生エネルギー算出式を補正することを特徴とする。このようにすれば、上記回生エネルギー算出式が補正されることにより、前記回生エネルギー推定制御において前記推定回生エネルギー量を精度良く推定することが可能である。
【0010】
また、第4発明の要旨とするところは、前記第1発明または前記第2発明の車両用制御装置であって、(a)前記回生エネルギー学習制御において、前記車両が前記道路の一区間を走行しているときに前記蓄電装置が少なくとも一時的に満充電状態であった場合には、前記学習データとして記憶する前記回生エネルギー量を、所定の回生エネルギー算出式に従って算出し、(b)前記車両が前記道路の一区間を走行しているときに前記蓄電装置が終始満充電状態ではなかった場合には、前記回生エネルギー算出式で算出されるその一区間走行時の回生エネルギー量がその回生エネルギー量の実際値に近付くように、その回生エネルギー算出式を補正することを特徴とする。このようにすれば、上記蓄電装置が満充電状態であっても、前記推定回生エネルギー量を精度良く推定することができる学習データとしての上記回生エネルギー量を得ることが可能である。
【0011】
また、第5発明の要旨とするところは、前記第1発明から前記第4発明の何れか一の車両用制御装置であって、前記道路の一区間は下り坂であることを特徴とする。このようにすれば、上記下り坂では前記電動機が回生作動させられる機会の多いところ、そのような下り坂での走行において前記学習データが取得されるので、上記道路の一区間が下り坂か否かを問わず前記回生エネルギー学習制御が実行される場合と比較して、前記推定回生エネルギー量を精度良く推定することによる効果たとえば燃費向上効果を同程度に得ようとした場合に、その学習データの蓄積量を減らすことが可能である。
【0012】
また、第6発明の要旨とするところは、前記第1発明から前記第5発明の何れか一の車両用制御装置であって、前記回生エネルギー量を算出できる物理量とは、前記車両が前記一区間を走行している間におけるその車両の位置エネルギーの変化量、その車両の走行エネルギーの変化量、及び、その車両全体のトータル制動力が前記回生作動で許容される許容回生制動力を超えた制動力超過分に対応するエネルギー量であることを特徴とする。このようにすれば、前記学習データにおいて前記回生エネルギー量が記憶されていなくても、前記回生エネルギー推定制御において、上記学習データとしての上記回生エネルギー量を算出できる物理量に基づいて、前記推定回生エネルギー量を精度良く推定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用されるハイブリッド車両に備えられた車両用駆動装置を説明するための骨子図である。
【図2】図1の車両用駆動装置を含むハイブリッド車両を制御するための電子制御装置に入力される信号を例示した図であると共に、その電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。
【図3】図2のナビゲーションシステムが利用する道路地図情報において、道路がどのようにして記憶されているかを説明するための図であり、(a)は実際の道路の概略図を示した図であり、(b)は上記道路地図情報の一部として記憶された上記(a)の道路を表現するノードおよびリンクを示した図である。
【図4】図2の電子制御装置が備える学習手段が学習対象区間に関連付けて学習データベースに記憶する学習データを表形式で例示した図である。
【図5】図2の電子制御装置の制御作動の第1の要部、すなわち、回生エネルギー学習制御を実行する制御作動を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5のSA6で実行されるサブルーチンを示したフローチャートである。
【図7】図2の電子制御装置の制御作動の第2の要部、すなわち、回生エネルギー推定制御を実行する制御作動を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両6(以下、車両6という)に備えられた車両用駆動装置8を説明するための骨子図である。図1に示すように、車両用駆動装置8は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスルケース12(以下、「ケース12」という)、一般的に知られた自動車用ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンであるエンジン14、第1電動機MG1、第1遊星歯車装置20、第2遊星歯車装置22、および第2電動機MG2を備えている。エンジン14または第2電動機MG2の動力は、第1遊星歯車装置20および第2遊星歯車装置22のリングギヤR1,R2と一体回転する出力歯車24から、その出力歯車24を含むカウンタギヤ対32、ファイナルギヤ対34、差動歯車装置36および一対の車軸38等を順次介して一対の駆動輪40へ伝達される(図2参照)。
【0016】
第1遊星歯車装置20は、エンジン14に連結された第1キャリヤCA1と、第1電動機MG1に連結された第1サンギヤS1と、出力歯車24と一体回転する第1リングギヤR1とを備えている。また、第2遊星歯車装置22は、ケース12に連結され回転不能な第2キャリヤCA2と、第2電動機MG2に連結された第2サンギヤS2と、出力歯車24と一体回転する第2リングギヤR2とを備えている。
【0017】
第1電動機MG1及び第2電動機MG2は何れも、ジェネレータ(発電機)機能とモータ(発動機)機能との両方を備えた所謂モータジェネレータであり、例えば三相の同期電動発電機である。第1電動機MG1及び第2電動機MG2はそれぞれインバータ54(図2参照)を介して蓄電装置56に電気的に接続されており、第1電動機MG1と第2電動機MG2と蓄電装置56とは相互に電力授受可能な構成となっている。上記蓄電装置56は、例えば、鉛蓄電池などのバッテリ(二次電池)又はキャパシタなどであり、その蓄電装置56の充電残量SOCは所定の充電残量管理幅内に入るように制御される。その充電残量管理幅は、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の作動を過剰に制限しないように且つ蓄電装置56の寿命が短くならないように予め実験的に設定されている。例えば蓄電装置56の充電残量SOCが上記充電残量管理幅の上限値に達した場合には、それ以上蓄電装置56に充電されないので、この場合を蓄電装置56の満充電状態と呼ぶ。第2電動機MG2は本発明の電動機に対応する。
【0018】
上述のように構成された車両6は、走行用の駆動力源を、エンジン14のみ、第2電動機MG2のみ、或いは、エンジン14及び第2電動機MG2に適宜切り替えて走行することができる。すなわち、車両6は、走行用の駆動力源にエンジン14を含むエンジン走行、または、走行用の駆動力源が第2電動機MG2のみであるモータ走行をすることができる。
【0019】
車両6では、車両6の制動力として、ホイールブレーキ装置47が発生させる機械的車両制動力の他に、第2電動機MG2の回生作動により回生制動力が得られるので、車両6を制動する際には、電子制御装置60は、フットブレーキ45の踏込量に基づいて予め実験的に設定された関係から、車両6に対して要求される要求制動力を算出し、上記機械的車両制動力と上記回生制動力との合計がその要求制動力になるように、ホイールブレーキ装置47と第2電動機MG2とを制御する。そのとき、電子制御装置60は、運転者に違和感を与えないように且つ第2電動機MG2の回生作動が十分に行われるように、上記機械的車両制動力と回生制動力との割合を適宜調節する。なお、上記回生制動力には、第2電動機MG2とインバータ54と蓄電装置56とのそれぞれの定格値たとえば定格電流や定格トルクから定まる制動力の最大値PBKrs、すなわち、第2電動機MG2の回生作動で許容される許容回生制動力PBKrsが予め定められている。電子制御装置60は、上記回生制動力がその許容回生制動力PBKrsを超えないように、上記機械的車両制動力と回生制動力との割合を調節する。また、上記機械的車両制動力はホイールブレーキ装置47で発生する油圧から検出でき、上記回生制動力は第2電動機MG2が発生させる回生電流から検出できるので、その機械的車両制動力と回生制動力とを合計した車両制動力BKtotal、すなわち車両6全体としてのトータル制動力BKtotalはホイールブレーキ装置47と第2電動機MG2とのそれぞれに設けられたセンサ等で検出することができる。
【0020】
また、フットブレーキ45が踏み込まれた車両減速時や、加速操作が解除され下り坂を走行している時には、電子制御装置60は、走行中の車両6を第2電動機MG2の回生作動で制動することにより得られた回生エネルギーを蓄電装置56に供給する電動機回生制御を行う。具体的に、その電動機回生制御では、第1電動機MG1を空転状態とすることでエンジン14と駆動輪40との間の動力伝達を遮断すると共にエンジン14を停止し、車両6の有する慣性エネルギーで第2電動機MG2を回生作動させる。そして、その慣性エネルギーが電力として回生され第2電動機MG2から蓄電装置56に充電される。すなわち、第2電動機MG2は走行中の車両6を制動することにより回生作動する。
【0021】
また、車両6では、運転者に操作されるエコ制御モードスイッチがオンにされている場合には、車両6がエコ制御モードで走行し、そのエコ制御モード中には所定の走行状態において燃費を向上させるエコ制御が実行される。そのエコ制御では、上記電動機回生制御が行われる一部の車両走行で、その電動機回生制御に替えて、エンジン14を停止し第1電動機MG1も第2電動機MG2も空転状態として車両6を制動せず走行させるニュートラル走行が行われる。また、所謂エンジンブレーキが要求されるような走行状態では、第2電動機MG2を回生作動させることにより得られる回生制動力の割合が大きくされる。
【0022】
図2は、車両6を制御するための車両用制御装置である電子制御装置60に入力される信号を例示した図であると共に、電子制御装置60に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。この電子制御装置60は、所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。電子制御装置60には、例えば図2に示すように、車速Vを表す車速センサ52からの信号、フットブレーキ45の踏込量を表すフットブレーキセンサ46からの信号、各車輪(駆動輪40および従動輪)に設けられたホイールブレーキ装置47が発生させる機械的車両制動力を表すホイールブレーキセンサ48からの信号、車両6の前後方向の車両加速度Gcarを表す加速度センサ50からの信号、アクセルペダル41の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度センサ42からの信号、車両6の重量Mc(車重Mc)を表す車重センサ44からの信号、蓄電装置56の充電残量(充電状態)SOCを表すその蓄電装置56からの信号等が、それぞれ供給される。上記車両加速度Gcarは、車両6を増速させる方向が正方向であり、減速させる方向が負方向である。
【0023】
車両6は、図2に示すように、ナビゲーションシステム62(以下、ナビ62という)を備えている。そのナビ62は、例えばCD−ROMやDVD−ROMやHDD(hard disk drive)などの記憶媒体64を備え、記憶媒体64に記憶された道路地図情報を用いて公知のナビゲーション制御を実行する機能を有している。図3は、上記道路地図情報において、道路がどのようにして記憶されているかを説明するための図であり、図3(a)は実際の道路の概略図を示し、図3(b)は上記道路地図情報の一部として記憶された上記道路を表現するノードNDおよびリンクLnkを示している。この図3に示すように、実際の道路は、上記道路地図情報では、複数のノードNDにより分割され各ノードND間を結ぶ複数の区間としてのリンクLnkで表現されている。そして、各リンクLnkには、図3(b)に示すように、リンクID(道路番号)が決められている。また、各リンクID毎に、ノードNDにより定義される始点座標及び終点座標、走行路情報としての平均曲率半径と道路長と道路勾配と標高、一般道や高速道路や一方通行などの道路種別、交差点や直線路における通過点などの各ノードNDにおける情報、などが記憶媒体64に記憶されており、これらのリンクID毎の情報も上記道路地図情報に含まれている。例えば、ナビ62は、人工衛星からの信号を受信して車両6の位置すなわち自車位置(例えば緯度と経度)および進行方向を検出し、その自車位置を上記道路地図情報に照合して、車両6が現在走行している道路のリンクIDを特定する。そして、ナビ62は、上記自車位置に対応するリンクIDおよび車両6の進行方向を電子制御装置60に逐次出力する。また、ナビ62は、上記自車位置と運転者により入力された目的地とに基づいて、車両6がその目的地に向けて走行する予定の走行予定経路を求め、その走行予定経路を電子制御装置60に出力する。また、記憶媒体64は、電子制御装置60が上記道路地図情報を読み取れるようになっている。
【0024】
ところで、車両6はハイブリッド車両であるので、例えば下り坂などでは前記電動機回生制御が実行される。しかし、その下り坂で蓄電装置56が満充電状態になった場合には、車両6に制動力を生じさせるために、上記電動機回生制御は実行されず、専らホイールブレーキ装置47によるブレーキ制動が行われる。そうなると、上記満充電状態でなければ得られるはずの上記電動機回生制御で回生される回生エネルギーを得ることができず、燃費悪化の一因となる。一方で、その下り坂に車両6が差し掛かる前に予め蓄電装置56の充電残量SOCを減らしておくなどの措置を講じることができれば、蓄電装置56が満充電状態になることを回避して、燃費悪化を抑制することが可能である。そのためには、その下り坂のような所定区間で回生され蓄電装置56に充電される回生エネルギーの大きさすなわち回生エネルギー量が前もって精度良く推定される必要がある。本実施例では、車両6が道路の一区間(例えば下り坂)を走行する前にその一区間の走行により得られる回生エネルギー量を精度良く推定するための制御が実行される。その制御機能の要部を図2を用いて以下に説明する。
【0025】
図2に示すように、電子制御装置60は、学習部としての学習手段70と、回生エネルギー量推定部としての回生エネルギー量推定手段72とを備えている。
【0026】
学習手段70は、車両6が道路の一区間である予め定められた学習対象区間を走行しているときに回生作動した第2電動機MG2から蓄電装置56に供給された回生エネルギー量EGYrs(単位は例えばJ)とその回生エネルギー量EGYrsを算出できる複数種類の物理量である回生エネルギー関連物理量PHYrsとを前記学習対象区間に関連付けて学習データとして記憶する回生エネルギー学習制御を行う。例えば、その学習データは記憶装置としての学習データベース74に記憶される。上記学習対象区間は、第2電動機MG2を回生作動させて走行する走行距離が十分に長い下り坂等の道路の一区間であって予め実験的に定められており、例えば、前記道路地図情報の一部として記憶媒体64に記憶されている。その学習対象区間には1つのリンクLnkまたは連続的に連なる2つ以上のリンクLnkが対応しており、上記学習対象区間はリンクIDで特定することができる(図4参照)。上記学習対象区間は1つであってもよいが、本実施例では、複数の学習対象区間が前記道路地図情報の一部として記憶されている。上記回生エネルギー学習制御について以下に詳述する。
【0027】
学習手段70は、上記回生エネルギー学習制御を行うためには、車両6が上記学習対象区間内を走行しているのか否かを把握する必要があるので、先ず、車両6の現在位置である自車位置、車両6の進行方向、車両6が現在走行している道路(リンクLnk)のリンクIDをナビ62から逐次取得する。そして、車両6が前記学習対象区間に入ったか否か、すなわち、車両6がその学習対象区間外からその学習対象区間の始点のノードNDに到達したか否かを判断する。学習手段70は、車両6が上記学習対象区間の始点のノードNDに到達したと判断すると、上記自車位置などをナビ62から取得することを継続すると共に、車両6の車両状態を逐次取得し、その車両状態を上記学習対象区間の始点からの走行距離と経過時間とに関連付けて、車両6が上記学習対象区間の終点のノードNDに到達するまで連続的に記憶する。車両6が上記学習対象区間の終点に到達するまで学習手段70が逐次取得する上記車両状態とは、例えば、車速V、車両加速度Gcar、前記エコ制御モードスイッチの切換状態、前記トータル制動力BKtotal、蓄電装置56の充電残量SOC、蓄電装置56に充電される充電電流Ichg、および蓄電装置56の電圧Vbatなどである。
【0028】
学習手段70は、車両6が上記学習対象区間の終点のノードNDに到達すると、上記回生エネルギー学習制御において、車両6が上記学習対象区間を走行しているときに蓄電装置56が少なくとも一時的に満充電状態であったか否かを判断する。車両6が上記学習対象区間を走行しているときの蓄電装置56の充電残量SOCから蓄電装置56が満充電状態であったか否かを判断できる。通常、上記学習対象区間では、車両6がその学習対象区間の終点に至るまで第2電動機MG2が回生作動するので、その学習対象区間の終点における蓄電装置56の充電残量SOCから上記判断を行うことができる。
【0029】
学習手段70は、上記学習対象区間の走行中において蓄電装置56が一時的にも満充電状態にはならなかったと判断した場合、すなわち、蓄電装置56が終始満充電状態ではなかったと判断した場合には、上記学習対象区間走行時の前記回生エネルギー量EGYrsと前記回生エネルギー関連物理量PHYrsとを求める。その回生エネルギー関連物理量PHYrsとは、具体的には、車両6が上記学習対象区間を走行している間における車両6の位置エネルギーの変化量EGYpt(以下、位置エネルギー変化量EGYptという)、車両6の走行エネルギーの変化量EGYrn(以下、走行エネルギー変化量EGYrnという)、及び、車両6全体の前記トータル制動力BKtotalが前記許容回生制動力PBKrsを超えた制動力超過分に対応するエネルギー量EGYfrである。その制動力超過分に対応するエネルギー量EGYfrは、基本的にホイールブレーキ装置47の制動で摩擦エネルギーとして消費されるものであるので、本実施例では摩擦エネルギー量EGYfrと呼ぶものとする。
【0030】
上記回生エネルギー関連物理量PHYrsの算出に関して説明すると、学習手段70は、下記式(1)から前記位置エネルギー変化量EGYpt(単位は例えばJ)を算出し、下記式(2)から前記走行エネルギー変化量EGYrn(単位は例えばJ)を算出し、下記式(3)から前記摩擦エネルギー量EGYfr(単位は例えばJ)を算出する。ここで、下記式(2)の右辺第1項は運動エネルギーの変化分を示し、第2項は空気抵抗によるエネルギー損失分を示し、第3項は車輪(駆動輪40および従動輪)の転がり抵抗によるエネルギー損失分を示している。また、下記式(1)〜式(3)において、Mcは車重センサ44で検出される車重であり、H1は前記学習対象区間の始点における路面の標高であり、H2はその学習対象区間の終点における路面の標高であり、gは重力加速度であり、V1は上記始点における車速Vであり、V2は上記終点における車速Vであり、ρは空気密度であって予め記憶されている定数であり、Acは車両6の前面投影面積であって予め記憶されている定数であり、CDは空気抵抗係数であって予め記憶されている定数であり、L12は上記学習対象区間の始点から終点までの走行距離であり、μは車輪の転がり摩擦係数であって予め記憶されている定数であり、BKtotalは前記トータル制動力であり、PBKrsは前記許容回生制動力である。前記標高H1,H2は例えば前記道路地図情報から得ることができる。また、上記摩擦係数μは、走行時の天候例えば雨天か否かに応じて予め実験的に定められた値に切り換えられてもよい。
【0031】
【数1】

【数2】

【数3】

【0032】
次に、前記回生エネルギー量EGYrsの算出に関して説明すると、学習手段70は、その回生エネルギー量EGYrsの推測値と実際値とをそれぞれ算出する。その回生エネルギー量EGYrsの推測値は、前記回生エネルギー関連物理量PHYrs(EGYpt,EGYrn,EGYfr)に基づいて算出される算出値であり、具体的には下記式(4)から算出される。また、上記回生エネルギー量EGYrsの実際値は蓄電装置56の電圧Vbatと前記充電電流Ichgとの基づいて算出される算出値であり、具体的には下記式(5)から算出される。本実施例では、上記回生エネルギー量EGYrsの推測値と実際値とのうち一方が算出されるだけで十分であるが、その推測値と実際値との両方が算出されても差し支えないので、その両方が算出されるものとする。なお、下記式(4)および式(5)において、EFCYchは第2電動機MG2が蓄電装置56に充電するときの充電効率であり(0<EFCYch<1)、実験的に求められた初期値が予め設定されており、後述するように更新される。また、t12は車両6が前記学習対象区間の始点から終点まで走行するのに要した走行所要時間であり、Vbatは蓄電装置56の端子間電圧であり、Ichgは蓄電装置56に充電される充電電流である。なお、回生エネルギー量EGYrsの推測値と実際値とを区別して表現する必要のない場合には、単に、回生エネルギー量EGYrsという。
【0033】
【数4】

【数5】

【0034】
学習手段70は、前記回生エネルギー量EGYrsと前記回生エネルギー関連物理量PHYrsとを求めると、次に、所定の回生エネルギー算出式である前記式(4)で算出される前記学習対象区間走行時の回生エネルギー量EGYrs、すなわちその式(4)で算出される回生エネルギー量EGYrsの推測値が前記回生エネルギー量EGYrsの実際値に近付くように、上記式(4)を補正する。例えば、学習手段70は、前記式(5)で算出された回生エネルギー量EGYrsの実際値を上記式(4)の左辺EGYrsに代入してその式(4)から充電効率EFCYchを逆算する。そして、上記式(4)に含まれる充電効率EFCYchを上記逆算して得た充電効率EFCYchに更新する。要するに、上記式(4)の次回の演算から、上記逆算して得られた充電効率EFCYchが用いられる。
【0035】
また、学習手段70は、前記回生エネルギー量EGYrsと前記回生エネルギー関連物理量PHYrsとを求めると、更に、その回生エネルギー量EGYrsとその回生エネルギー関連物理量PHYrsとを前記学習対象区間に関連付けて学習データとして記憶する。その学習データとして記憶される回生エネルギー量EGYrsは、前記式(4)から算出された回生エネルギー量EGYrsの推測値であってもよいが、本実施例では、前記式(5)から算出された回生エネルギー量EGYrsの実際値である。また、前記回生エネルギー学習制御では、上記回生エネルギー関連物理量PHYrsである位置エネルギー変化量EGYptと走行エネルギー変化量EGYrnと摩擦エネルギー量EGYfrとの全部が上記学習データとして記憶されれば、それらに基づいて回生エネルギー量EGYrsを算出することが可能であるので、上記回生エネルギー量EGYrsと上記回生エネルギー関連物理量PHYrsとの少なくとも何れかが上記学習データとして記憶されればよい。
【0036】
また、学習手段70は、上記回生エネルギー量EGYrsおよび回生エネルギー関連物理量PHYrsと共に、上記回生エネルギー量EGYrsに影響する走行状況を前記学習対象区間に関連付けて学習データとして記憶する。すなわち、その学習データには、上記回生エネルギー量EGYrsに影響する走行状況が含まれることになる。その回生エネルギー量EGYrsに影響する走行状況は、例えば、前記学習対象区間内での車両加速度Gcarの最小値と最大値との差である車両加速度差、及び、前記エコ制御モードか否かすなわち前記エコ制御モードスイッチの切換状態(オン・オフ)などで表される。上記車両加速度差の大小は、運転者の走り方、言い換えれば、車両6の加減速を大きく行うスポーツ走行の度合いを表し、第2電動機MG2が回生作動を行うタイミングまたは前記回生制動力の大きさに影響するからである。また、車両6が上記エコ制御モードであるか否かも第2電動機MG2が回生作動を行うタイミングまたは前記回生制動力の大きさに影響するからである。従って、具体的には、学習手段70は、上記回生エネルギー量EGYrsに影響する走行状況を表す上記車両加速度差と上記エコ制御モードスイッチの切換状態とを上記学習データとして記憶する。本実施例では、その学習データとして記憶されるエコ制御モードスイッチの切換状態は、前記学習対象区間内のいつの時点のものでもよいが、その学習対象区間の終点での切換状態とされる。
【0037】
図4は、学習手段70が前記学習対象区間に関連付けて記憶する学習データを表形式で例示した図である。図4では、左側から順に、学習対象区間を示すリンクID、位置エネルギー変化量EGYpt、走行エネルギー変化量EGYrn、摩擦エネルギー量EGYfr、回生エネルギー量EGYrs、運転者の走り方すなわちその走り方を表す前記車両加速度差、エコ制御モードスイッチの切換状態が表されている。例えば、一つの学習対象区間を何度も車両6が走行する場合にはその都度、学習手段70は、その学習対象区間に関連付けられた学習データを更新するが、その更新方法としては種々の方法が考えられる。例えば、学習データの各値が現在までの走行実績で逐次得られた値の平均値に更新されてもよいし、最新の走行で得られた値とされてもよい。なお、図4において、リンクIDが〔4〕から〔8〕までの学習対象区間に関連付けられた学習データのように、同一の学習対象区間に関連付けられた学習データであっても、その学習データは、エコ制御モードスイッチのオンとオフとでそれぞれ別個に記憶される。
【0038】
学習手段70が実行する前記回生エネルギー学習制御の説明に戻る。学習手段70が蓄電装置56が終始満充電状態ではなかったと判断した場合に関しては前述したが、学習手段70は、車両6が前記学習対象区間を走行しているときに蓄電装置56が少なくとも一時的に満充電状態であったと判断した場合にも、上記学習対象区間走行時の前記回生エネルギー量EGYrsと前記回生エネルギー関連物理量PHYrsとを求める。但し、前記式(5)を用いた前記回生エネルギー量EGYrsの実際値は算出しない。また、その回生エネルギー量EGYrsの実際値を算出しないので、前記式(4)に含まれる充電効率EFCYchの更新も行わない。すなわち、学習手段70は、上記学習対象区間の走行中において蓄電装置56が終始満充電状態ではなかったと判断した場合と同様に、前記式(1)から前記位置エネルギー変化量EGYptを算出し、前記式(2)から前記走行エネルギー変化量EGYrnを算出し、前記式(3)から前記摩擦エネルギー量EGYfrを算出し、前記式(4)から回生エネルギー量EGYrs(推測値)を算出する。そして、その算出した位置エネルギー変化量EGYpt、走行エネルギー変化量EGYrn、摩擦エネルギー量EGYfr、および回生エネルギー量EGYrsを上記学習対象区間に関連付けて学習データとして記憶する。また、前記回生エネルギー量EGYrsに影響する走行状況を表す前記車両加速度差と前記エコ制御モードスイッチの切換状態とを上記学習データとして記憶することも同様である。
【0039】
上記のように、車両6が前記学習対象区間を走行しているときに蓄電装置56が少なくとも一時的に満充電状態であった場合には、学習データとして記憶される前記回生エネルギー量EGYrsは、位置エネルギー変化量EGYptと走行エネルギー変化量EGYrnと摩擦エネルギー量EGYfrとに基づいて前記式(4)から算出されるので、蓄電装置56が満充電状態であることによる充電制限を受けないという前提で算出されている。すなわち、その回生エネルギー量EGYrsは、車両6が前記学習対象区間を走行しているときに、蓄電装置56が終始満充電状態ではなかったと仮定して算出されている。学習手段70は、以上説明したように前記回生エネルギー学習制御を行う。
【0040】
回生エネルギー量推定手段72は、前記学習データが既に記憶されている前記学習対象区間を車両6が走行する際には、その学習対象区間の走行で得られる前記回生エネルギー量EGYrsを推定する回生エネルギー推定制御を行う。この回生エネルギー推定制御で推定される回生エネルギー量EGYrsを推定回生エネルギー量EGYersという。すなわち、回生エネルギー量推定手段72は、その回生エネルギー推定制御において、車両6が再びその学習対象区間を走行する前に、その学習対象区間の走行により得られる推定回生エネルギー量EGYersを前記学習データに基づいて推定する。
【0041】
具体的に、回生エネルギー量推定手段72は、前記回生エネルギー推定制御では、先ず、前記学習データが既に記憶されている前記学習対象区間を走行する前であるか否かを判断する。例えば、ナビ62から得られる前記走行予定経路に上記学習対象区間が含まれており、且つ、車両6がその学習対象区間の始点から所定の制御開始判断距離手前の位置に到達した場合に、上記学習対象区間を走行する前であると判断する。その制御開始判断距離は、車両6が上記学習対象区間に至る可能性が高く且つできるだけ長い距離となるように予め実験的に定められている。
【0042】
回生エネルギー量推定手段72は、上記学習対象区間を走行する前であると判断すると、これから走行する予定の上記学習対象区間に関連付けられて記憶されている前記学習データを、例えば前記学習データベース74から読み出す。具体的に、回生エネルギー量推定手段72は、その学習データとして記憶されている位置エネルギー変化量EGYpt、走行エネルギー変化量EGYrn、摩擦エネルギー量EGYfr、運転者の走り方を表す前記学習対象区間内での車両加速度差、前記エコ制御モードスイッチの切換状態を読み出す。また、上記学習データに回生エネルギー量EGYrsが含まれていれば、その回生エネルギー量EGYrsを読み出す。そのエコ制御モードスイッチの切換状態でオンとオフとの両方の学習データが存在する場合にはその両方を読み出す。
【0043】
また、回生エネルギー量推定手段72は、前記回生エネルギー推定制御では、上記学習対象区間を走行する前であると判断した場合に、現在の走行状況を確認する。具体的には、現在走行中の道路で所定の走行状況確認距離を車両6が走行する間の車両加速度Gcarの最小値と最大値との差である車両加速度差を取得する。要するに、走り方モニタリングを行う。そして、現在の前記エコ制御モードスイッチの切換状態がオンであるのかオフであるのかを認識する。要するに、制御状態モニタリングを行う。また、回生エネルギー量推定手段72は、上記走り方モニタリングでは、現在の走り方を表す上記走行状況確認距離を走行する間の車両加速度差と、前記学習データである学習対象区間内での車両加速度差とを相互に比較し、現在の走り方を表す車両加速度差が、学習データである車両加速度差に対し所定の判定加速度差以上乖離して大きい場合には、上記学習データとの比較で、現在は動力性能を重視した走行であると判断する。逆に、学習データである車両加速度差が、現在の走り方を表す車両加速度差に対し上記判定加速度差以上乖離して大きい場合には、現在は燃費性能を重視した走行であると判断する。そして、上記動力性能を重視した走行とも判断せず且つ上記燃費性能を重視した走行とも判断しなければ、現在は上記学習データと同じ傾向の走行であるという判断、すなわち同一走行傾向であるという判断をする。上記判定加速度差は、運転者の走り方の差異を上記車両加速度差から判断できるように予め実験的に定められている。
【0044】
回生エネルギー量推定手段72は、上記学習データの読出しを完了し、且つ、上記現在の走行状況の確認を完了すると、これから走行する予定の前記学習対象区間の走行で得られる前記推定回生エネルギー量EGYersを推定する。具体的には、その学習対象区間の走行で生じるものと推定される位置エネルギー変化量EGYptである推定位置エネルギー変化量EGYept、その学習対象区間の走行で生じるものと推定される推定走行エネルギー変化量EGYern、及び、その学習対象区間の走行で生じるものと推定される推定摩擦エネルギー量EGYefrをそれぞれ求める。このとき、前記制御状態モニタリングで認識された現在の前記エコ制御モードスイッチの切換状態と同じ切換状態の学習データと、異なる切換状態の学習データとの両方が読み出されている場合には、前記制御状態モニタリングで認識された現在のエコ制御モードスイッチの切換状態と同じ切換状態の学習データだけが採用される。そして、前記式(4)においてEGYrsを推定回生エネルギー量EGYersに置き換え、EGYptを推定位置エネルギー変化量EGYeptに置き換え、EGYrnを推定走行エネルギー変化量EGYernに置き換え、EGYfrを推定摩擦エネルギー量EGYefrに置き換えた上で、その式(4)に従って推定回生エネルギー量EGYersを算出する。
【0045】
例えば、上記推定位置エネルギー変化量EGYeptは、前記学習データである前記読み出された位置エネルギー変化量EGYptと同一とされる。或いは、回生エネルギー量推定手段72は、前記学習データに車重Mcが含まれているのであれば、学習データである車重Mcと現在の車重Mcとの差異に基づき、上記学習データである位置エネルギー変化量EGYptを現在の車重Mcに合わせて修正して得た値を上記推定位置エネルギー変化量EGYeptとしても差し支えない。
【0046】
また、前記推定走行エネルギー変化量EGYernは、前記制御状態モニタリングで認識された前記エコ制御モードスイッチの切換状態と同じ切換状態である学習データが存在していれば、その学習データの走行エネルギー変化量EGYrnと同一とされる。但し、そのエコ制御モードスイッチの切換状態が同じ学習データが存在しなければ、回生エネルギー量推定手段72は、その切換状態の差異を加味した上で推定走行エネルギー変化量EGYernを決定する。例えば、学習データでは上記エコ制御モードスイッチがオフとして記憶されており、前記制御状態モニタリングでエコ制御モードスイッチがオンと認識されている場合には、そのエコ制御モードスイッチのオンにより前記ニュートラル走行が行われる機会が増すので、学習データである走行エネルギー変化量EGYrnから所定の走行エネルギー調整量(>0)を差し引いて推定走行エネルギー変化量EGYernを算出する。逆の場合、すなわち、学習データでは上記エコ制御モードスイッチがオンとして記憶されており、前記制御状態モニタリングでエコ制御モードスイッチがオフと認識されている場合には、学習データである走行エネルギー変化量EGYrnに上記走行エネルギー調整量を加えて推定走行エネルギー変化量EGYernを算出する。上記走行エネルギー調整量は、推定走行エネルギー変化量EGYernが実際値に近付くように予め実験的に設定された値であり、例えば前記学習対象区間が長いほど大きくなるように設定されたマップなどで与えられる。
【0047】
また、前記推定摩擦エネルギー量EGYefrは、前記制御状態モニタリングで認識された前記エコ制御モードスイッチの切換状態と同じ切換状態である学習データが存在していれば、その学習データの摩擦エネルギー量EGYfrと同一とされる。但し、そのエコ制御モードスイッチの切換状態が同じ学習データが存在しなければ、回生エネルギー量推定手段72は、その切換状態の差異を加味した上で推定摩擦エネルギー量EGYefrを決定する。例えば、学習データでは上記エコ制御モードスイッチがオフとして記憶されており、前記制御状態モニタリングでエコ制御モードスイッチがオンと認識されている場合には、そのエコ制御モードスイッチのオンによりブレーキ操作時などに第2電動機MG2の回生作動による回生ブレーキの機会が増すので、学習データである摩擦エネルギー量EGYfrから所定のエコ制御時摩擦エネルギー調整量(>0)を差し引いて推定摩擦エネルギー量EGYefrを算出する。逆の場合、すなわち、学習データでは上記エコ制御モードスイッチがオンとして記憶されており、前記制御状態モニタリングでエコ制御モードスイッチがオフと認識されている場合には、学習データである摩擦エネルギー量EGYfrに上記エコ制御時摩擦エネルギー調整量を加えて推定摩擦エネルギー量EGYefrを算出する。上記エコ制御時摩擦エネルギー調整量は、推定摩擦エネルギー量EGYefrが実際値に近付くように予め実験的に設定された値であり、例えば前記学習対象区間が長いほど大きくなるように設定されたマップなどで与えられる。また、回生エネルギー量推定手段72は、前記走り方モニタリングでの判断結果を加味した上で推定摩擦エネルギー量EGYefrを決定する。例えば、回生エネルギー量推定手段72は、その走り方モニタリングで、現在は動力性能を重視した走行(スポーツ走行ともいう)であるという判断をした場合には、ブレーキ操作時などにホイールブレーキ装置47が多用され前記回生ブレーキの機会が減るので、学習データである摩擦エネルギー量EGYfrに所定のスポーツ走行時摩擦エネルギー調整量(>0)を加えて推定摩擦エネルギー量EGYefrを算出する。逆の場合、すなわち、上記走り方モニタリングで、現在は燃費性能を重視した走行であるという判断をした場合には、学習データである摩擦エネルギー量EGYfrから上記スポーツ走行時摩擦エネルギー調整量を差し引いて推定摩擦エネルギー量EGYefrを算出する。上記スポーツ走行時摩擦エネルギー調整量は、推定摩擦エネルギー量EGYefrが実際値に近付くように予め実験的に設定された値であり、例えば前記学習対象区間が長いほど大きくなるように設定されたマップなどで与えられる。
【0048】
回生エネルギー量推定手段72は、上記のように推定位置エネルギー変化量EGYeptと推定走行エネルギー変化量EGYernと推定摩擦エネルギー量EGYefrとを求めると、それらに基づいて、前述したように前記式(4)に従って前記推定回生エネルギー量EGYersを算出するが、前記学習データとしての回生エネルギー量EGYrsが存在すれば、その学習データとしての回生エネルギー量EGYrsから上記推定回生エネルギー量EGYersを推定しても差し支えない。その際、学習データとしての回生エネルギー量EGYrsをそのまま推定回生エネルギー量EGYersとしてもよいが、上記のように前記エコ制御モードスイッチの切換状態および前記走り方モニタリングでの判断結果を加味した上で上記推定回生エネルギー量EGYersを決定するのが好ましい。
【0049】
図5は、電子制御装置60の制御作動の第1の要部、すなわち、前記回生エネルギー学習制御を実行する制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。図5に示す全ステップは、学習手段70に対応する。この図5に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行される。
【0050】
先ず、ステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、車両6の現在位置(自車位置)、車両6の進行方向、車両6が現在走行している道路(リンクLnk)のリンクIDがナビ62から取得される。SA1の次はSA2に移る。
【0051】
SA2においては、上記SA1で取得された自車位置などから、車両6が前記学習対象区間外からその学習対象区間の始点のノードNDに到達したか否かが判断される。このSA2の判断が肯定された場合、すなわち、車両6が前記学習対象区間外からその学習対象区間の始点のノードNDに到達した場合には、SA3に移る。一方、このSA2の判断が否定された場合には、本フローチャートは終了する。
【0052】
SA3においては、前記SA1と同様に、前記自車位置などがナビ62から取得される。SA3の次はSA4に移る。
【0053】
SA4においては、車速V、車両加速度Gcar、前記エコ制御モードスイッチの切換状態、前記トータル制動力BKtotal、蓄電装置56の充電残量SOC、前記充電電流Ichg、および蓄電装置56の電圧Vbatなどで表される車両状態が取得される。そして、その車両状態が、前記学習対象区間の始点からの走行距離と経過時間とに関連付けられて記憶される。SA4の次はSA5に移る。
【0054】
SA5においては、上記SA3で取得された自車位置などから、車両6が前記学習対象区間の終点のノードNDに到達したか否かが判断される。このSA5の判断が肯定された場合、すなわち、車両6が上記学習対象区間の終点のノードNDに到達した場合には、SA6に移る。一方、このSA5の判断が否定された場合には、SA3に移る。
【0055】
SA6においては、図6のフローチャートが実行される。その図6は、このSA6で実行されるサブルーチンを示した図である。図6の全ステップは学習手段70に対応する。
【0056】
図6のSB1においては、前記学習対象区間の始点から終点までの前記SA4にて記憶された車両状態から、車両6がその学習対象区間を走行しているときに蓄電装置(バッテリ)56が少なくとも一時的に満充電状態であったか否かが判断される。このSB1の判断が肯定された場合、すなわち、蓄電装置56が少なくとも一時的に満充電状態であった場合には、SB8に移る。一方、このSB1の判断が否定された場合、すなわち、蓄電装置56が終始満充電状態ではなかった場合には、SB2に移る。
【0057】
SB2においては、前記位置エネルギー変化量EGYptが前記式(1)から算出される。続くSB3においては、前記走行エネルギー変化量EGYrnが前記式(2)から算出される。続くSB4においては、前記摩擦エネルギー量EGYfrが前記式(3)から算出される。続くSB5においては、前記回生エネルギー量EGYrsの推測値が、前記SB2〜SB4にて算出された前記回生エネルギー関連物理量PHYrs(EGYpt,EGYrn,EGYfr)に基づいて、前記式(4)から算出される。続くSB6においては、前記回生エネルギー量EGYrsの実際値が、蓄電装置56の電圧Vbatと前記充電電流Ichgとに基づいて、前記式(5)から算出される。SB6の次はSB7に移る。
【0058】
SB7においては、前記回生エネルギー算出式である前記式(4)で算出される回生エネルギー量EGYrsの推測値がその回生エネルギー量EGYrsの実際値に近付くように、その式(4)が補正される。具体的には、その式(4)に含まれる充電効率EFCYchが補正される。SB7の次はSB12に移る。
【0059】
SB8においては、前記位置エネルギー変化量EGYptが前記式(1)から算出される。続くSB9においては、前記走行エネルギー変化量EGYrnが前記式(2)から算出される。続くSB10においては、前記摩擦エネルギー量EGYfrが前記式(3)から算出される。続くSB11においては、前記回生エネルギー量EGYrsの推測値が、前記SB8〜SB10にて算出された前記回生エネルギー関連物理量PHYrs(EGYpt,EGYrn,EGYfr)に基づいて、前記式(4)から算出される。SB11の次はSB12に移る。
【0060】
SB12においては、前記SB2またはSB8にて算出された前記位置エネルギー変化量EGYptが、前記学習対象区間に関連付けられて学習データとして記憶される。すなわち、その位置エネルギー変化量EGYptが学習される。SB12の次はSB13に移る。
【0061】
SB13においては、前記SB3またはSB9にて算出された前記走行エネルギー変化量EGYrnが、前記学習対象区間に関連付けられて学習データとして記憶される。すなわち、その走行エネルギー変化量EGYrnが学習される。SB13の次はSB14に移る。
【0062】
SB14においては、前記SB4またはSB10にて算出された前記摩擦エネルギー量EGYfrが、前記学習対象区間に関連付けられて学習データとして記憶される。すなわち、その摩擦エネルギー量EGYfrが学習される。SB14の次はSB15に移る。
【0063】
SB15においては、前記SB6またはSB11にて算出された前記回生エネルギー量EGYrsの実際値または推測値が、前記学習対象区間に関連付けられて学習データとして記憶される。すなわち、その回生エネルギー量EGYrsが学習される。SB15の次はSB16に移る。
【0064】
SB16においては、前記学習対象区間内での前記車両加速度差が、前記学習対象区間に関連付けられて学習データとして記憶される。その車両加速度差の大小は、運転者の走り方、言い換えれば、車両6の加減速を大きく行うスポーツ走行の度合いを表す。すなわち、その運転者の走り方が学習される。
【0065】
SB17においては、前記学習対象区間内での前記エコ制御モードスイッチの切換状態が、前記学習対象区間に関連付けられて学習データとして記憶される。すなわち、前記エコ制御モードの制御状態が学習される。このSB17での学習が完了すると、図5に戻り、その図5のフローチャートが終了する。
【0066】
図7は、電子制御装置60の制御作動の第2の要部、すなわち、前記回生エネルギー推定制御を実行する制御作動を説明するためのフローチャートである。この図7のフローチャートは、図5および図6のフローチャートが実行されて記憶された前記学習データが存在する前記学習対象区間を車両6が再び走行する前に実行される。具体的に、図7のフローチャートは、車両6がその学習対象区間を走行する前であると回生エネルギー量推定手段72により判断された場合に実行される。図7に示す全ステップは、回生エネルギー量推定手段72に対応する。この図7に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行される。
【0067】
SC1にて、車両6がこれから走行する予定の上記学習対象区間に関連付けられて記憶されている学習データである位置エネルギー変化量EGYptが読み出される。続くSC2にて、その学習データである走行エネルギー変化量EGYrnが読み出される。続くSC3にて、その学習データである摩擦エネルギー量EGYfrが読み出される。続くSC4にて、その学習データである回生エネルギー量EGYrsが読み出される。続くSC5にて、その学習データである運転者の走り方、すなわちその走り方を表す上記学習対象区間内での車両加速度差が読み出される。続くSC6にて、その学習データである前記エコ制御モードスイッチの切換状態が読み出される。SC6の次はSC7に移る。
【0068】
SC7においては、運転者の現在の走り方を認識しその現在の走り方と上記学習データにおける走り方とを相互に比較する前記走り方モニタリングが行われる。続くSC8においては、現在の前記エコ制御モードスイッチの切換状態を認識する前記制御状態モニタリングが行われる。SC8の次はSC9に移る。
【0069】
SC9においては、前記SC1にて読み出された位置エネルギー変化量EGYptから、前記推定位置エネルギー変化量EGYeptが推定される。続くSC10においては、前記SC2にて読み出された走行エネルギー変化量EGYrnから、前記推定走行エネルギー変化量EGYernが推定される。続くSC11においては、前記SC3にて読み出された摩擦エネルギー量EGYfrから、前記推定摩擦エネルギー量EGYefrが推定される。SC11の次はSC12に移る。
【0070】
SC12においては、前記推定回生エネルギー量EGYersが、前記SC9〜SC11にて推定された推定位置エネルギー変化量EGYept、推定走行エネルギー変化量EGYern、および推定摩擦エネルギー量EGYefrに基づき、各パラメータを適宜置換した前記式(4)に従って推定される。或いは、前記学習データとしての回生エネルギー量EGYrsが存在していれば、SC4にて読み出された回生エネルギー量EGYrsから、前記推定回生エネルギー量EGYersが推定されても差し支えない。なお、前記推定回生エネルギー量EGYersは、前記学習データに含まれる走行状況と現在の走行状況との差異が加味された上で推定される。具体的には、前記制御状態モニタリングで認識された前記エコ制御モードスイッチの切換状態の差異と、前記走り方モニタリングで認識された運転者の走り方の差異とが加味された上で推定される。
【0071】
上述した本実施例によれば、学習手段70は前記回生エネルギー学習制御を行い、回生エネルギー量推定手段72はその回生エネルギー学習制御で記憶された学習データに基づいて前記回生エネルギー推定制御を行う。更に、学習手段70は、前記回生エネルギー学習制御において、車両6が道路の一区間である前記学習対象区間を走行しているときに蓄電装置56が少なくとも一時的に満充電状態であった場合には、前記学習データとして記憶する前記回生エネルギー量EGYrsを、蓄電装置56が終始満充電状態ではなかったと仮定して算出する。そのため、車両6が前記学習対象区間を走行する際には、回生エネルギー量推定手段72は、前記回生エネルギー推定制御において、以前の走行実績を示す前記学習データに基づいて前記推定回生エネルギー量EGYersを推定するので、車両6の運転者に特有の車両走行における走行嗜好などの傾向を加味してその推定回生エネルギー量EGYersを推定することになる。従って、上記学習データに基づかず例えば上記学習対象区間内の標高差などの画一的なデータだけに基づいて上記推定回生エネルギー量EGYersを推定する場合と比較して、上記推定回生エネルギー量EGYersを精度良く推定することができる。また、蓄電装置56が満充電状態であればそのときの実際の回生エネルギー量EGYrsは零又は略零であるところ、学習手段70は、前記回生エネルギー学習制御において、蓄電装置56が少なくとも一時的に満充電状態であった場合には、前記回生エネルギー量EGYrs(推測値)を、蓄電装置56が終始満充電状態ではなかったと仮定して算出するので、上記推定回生エネルギー量EGYersを精度良く推定するのに適した前記学習データを記憶することが可能である。このように、上記推定回生エネルギー量EGYersを精度良く推定することができれば、例えば、その推定回生エネルギー量EGYersが予測された前記道路の一区間(学習対象区間)に差し掛かる前に蓄電装置56の充電残量SOCを予め適切に減らしておくことができるので、十分な第2電動機MG2の回生作動により車両6の燃費を向上させることが可能である。
【0072】
また、本実施例によれば、図4に示すように前記学習データには、前記回生エネルギー量EGYrsに影響する走行状況、例えば、前記学習対象区間内での車両加速度差、及び、前記エコ制御モードスイッチの切換状態(オン・オフ)などで表される走行状況が含まれている。そして、回生エネルギー量推定手段72は、前記回生エネルギー推定制御では、前記学習データと現在の走行状況との間における上記エコ制御モードスイッチの切換状態の差異と、上記車両加速度差に基づいて判断された運転者の走り方の差異とを加味した上で、前記推定走行エネルギー変化量EGYernおよび推定摩擦エネルギー量EGYefrを決定する。すなわち、前記推定回生エネルギー量EGYersはその推定走行エネルギー変化量EGYernおよび推定摩擦エネルギー量EGYefrに基づいて決まるので、回生エネルギー量推定手段72は、上記回生エネルギー推定制御では、前記学習データに含まれる走行状況と現在の走行状況との差異を加味した上で、前記推定回生エネルギー量EGYersを推定すると言える。従って、回生エネルギー量推定手段72は、上記走行状況の差異を加味しない場合と比較して、上記推定回生エネルギー量EGYersを精度良く推定することが可能である。
【0073】
また、本実施例によれば、回生エネルギー量推定手段72は、前記回生エネルギー推定制御では、所定の回生エネルギー算出式である前記式(4)にてEGYrsをEGYersに置き換え、EGYptをEGYeptに置き換え、EGYrnをEGYernに置き換え、EGYfrをEGYefrに置き換えた上で、その式(4)に従って前記推定回生エネルギー量EGYersを算出する。そして、学習手段70は、車両6が前記学習対象区間を走行しているときに蓄電装置56が終始満充電状態ではなかった場合には、前記式(4)で算出されるその学習対象区間走行時の回生エネルギー量EGYrs(推測値)が回生エネルギー量EGYrsの実際値に近付くように、上記式(4)を補正する。従って、その式(4)すなわち上記回生エネルギー算出式が補正されることにより、回生エネルギー量推定手段72は、前記回生エネルギー推定制御において推定回生エネルギー量EGYersを精度良く推定することが可能である。
【0074】
また、本実施例によれば、学習手段70は、前記回生エネルギー学習制御において、車両6が前記学習対象区間を走行しているときに蓄電装置56が少なくとも一時的に満充電状態であった場合には、前記学習データとして記憶する前記回生エネルギー量EGYrsを、前記式(4)に従って算出する。そして、学習手段70は、車両6が前記学習対象区間を走行しているときに蓄電装置56が終始満充電状態ではなかった場合には、前記式(4)で算出されるその学習対象区間走行時の回生エネルギー量EGYrs(推測値)が回生エネルギー量EGYrsの実際値に近付くように、上記式(4)を補正する。従って、蓄電装置56が満充電状態であっても、前記推定回生エネルギー量EGYersを精度良く推定することができる学習データとしての上記回生エネルギー量EGYrsを得ることが可能である。
【0075】
また、本実施例によれば、前記学習対象区間は例えば下り坂である。従って、上記下り坂では第2電動機MG2が回生作動させられる機会の多いところ、そのような下り坂での走行において前記回生エネルギー学習制御により前記学習データが取得されるので、上記学習対象区間が下り坂か否かを問わず設定されている場合と比較して、前記推定回生エネルギー量EGYersを精度良く推定することによる効果たとえば燃費向上効果を同程度に得ようとした場合に、その学習データの蓄積量を減らすことが可能である。
【0076】
また、本実施例によれば、前記回生エネルギー量EGYrsを算出できる物理量である前記回生エネルギー関連物理量PHYrsとは、具体的には、車両6が上記学習対象区間を走行している間における車両6の位置エネルギーの変化量EGYpt(位置エネルギー変化量EGYpt)、車両6の走行エネルギーの変化量EGYrn(走行エネルギー変化量EGYrn)、及び、車両6全体の前記トータル制動力BKtotalが前記許容回生制動力PBKrsを超えた制動力超過分に対応するエネルギー量EGYfr(摩擦エネルギー量EGYfr)である。従って、前記学習データにおいて前記回生エネルギー量EGYrsが記憶されていなくても、回生エネルギー量推定手段72は、前記回生エネルギー推定制御において、上記学習データとしての上記回生エネルギー関連物理量PHYrsに基づいて、前記推定回生エネルギー量EGYersを精度良く推定することが可能である。
【0077】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0078】
例えば、前述の実施例において、前記学習対象区間の一例として下り坂が挙げられているが、その学習対象区間の別の例として、道路上で一時停止位置の手前の所定位置からその一時停止位置までの走行区間すなわち一時停止減速区間も挙げることができる。
【0079】
また、前述の実施例において、第2電動機MG2の回生作動で許容される前記許容回生制動力PBKrsが予め定められているが、その許容回生制動力PBKrsは、一定値であってもよいし、第2電動機MG2の温度とインバータ54の温度と蓄電装置56の温度とのそれぞれに応じて、予め実験的に定められた関係に従って変更される許容値であっても差し支えない。
【0080】
また、前述の実施例では、図6のフローチャートのSB7にて、前記充電効率EFCYchが補正されることで、前記回生エネルギー算出式である前記式(4)は補正されるが、その充電効率EFCYch以外のもので、上記回生エネルギー算出式が補正されても差し支えない。
【0081】
また、前述の実施例において、図4に示すように、前記学習対象区間に関連付けられた前記学習データの1つとして位置エネルギー変化量EGYptが記憶されるが、その位置エネルギー変化量EGYptに替えて、その学習対象区間の始点と終点との間の標高差が上記学習データの1つとして記憶されても差し支えない。
【0082】
また、前述の実施例において、例えば下り坂が前記学習対象区間として定められているとした場合、その下り坂の一部の走行区間が上記学習対象区間であってもよいし、その下り坂の頂上から谷までの走行区間が上記学習対象区間であってもよい。
【0083】
また、前述の実施例において、車両6はハイブリッド車両であるが、電気自動車でも電動機による回生作動はなされるので、その車両6は電気自動車に置き換えられても差し支えない。
【0084】
また、前述の実施例において、図4に示すように、回生エネルギー量EGYrs等が学習データとして記憶されるが、その学習データに含まれる回生エネルギー量EGYrs等のエネルギー量は、その次元が厳密にエネルギー(単位は例えばJ)である必要である必要はなく、例えば、パワー(単位は例えばkW)であっても差し支えない。学習対象区間の距離および車速Vが決まれば、上記パワーからエネルギーを算出できるからである。
【0085】
また、前述の実施例において、図6のフローチャートのSB7にて、前記式(4)の充電効率EFCYchが補正されるが、そのSB7が無く、その式(4)が補正されないフローチャートであっても差し支えない。
【0086】
また、前述の実施例において、図6のフローチャートのSB16にて前記運転者の走り方が学習され、SB17にて前記エコ制御モードの制御状態が学習されるが、それらのSB16とSB17とにおける学習は無くてもよい。すなわち、図6のフローチャートにおいてSB16とSB17とは無くてもよい。
【0087】
また、前述の実施例において、図7のフローチャートにはSC5およびSC7が設けられているが、そのSC5およびSC7は無くても差し支えない。また、その図7のフローチャートにはSC6およびSC8が設けられているが、そのSC6およびSC8は無くても差し支えない。
【符号の説明】
【0088】
6:車両
56:蓄電装置
60:電子制御装置(車両用制御装置)
MG2:第2電動機(電動機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両を制動することにより回生作動する電動機を備えた該車両において、該車両が道路の一区間を走行しているときに回生作動した前記電動機から蓄電装置に供給された回生エネルギー量と該回生エネルギー量を算出できる物理量との少なくとも何れかを前記一区間に関連付けて学習データとして記憶する回生エネルギー学習制御を行い、前記車両が再び前記一区間を走行する前に該一区間の走行により得られる推定回生エネルギー量を前記学習データに基づいて推定する回生エネルギー推定制御を行う車両用制御装置であって、
前記回生エネルギー学習制御において、前記車両が前記道路の一区間を走行しているときに前記蓄電装置が少なくとも一時的に満充電状態であった場合には、前記学習データとして記憶する前記回生エネルギー量を、前記蓄電装置が終始満充電状態ではなかったと仮定して算出する
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記学習データには、前記回生エネルギー量に影響する走行状況が含まれており、
前記回生エネルギー推定制御では、前記学習データに含まれる走行状況と現在の走行状況との差異を加味した上で、前記推定回生エネルギー量を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記回生エネルギー推定制御では、所定の回生エネルギー算出式に従って前記推定回生エネルギー量を算出し、
前記車両が前記道路の一区間を走行しているときに前記蓄電装置が終始満充電状態ではなかった場合には、前記回生エネルギー算出式で算出される該一区間走行時の回生エネルギー量が該回生エネルギー量の実際値に近付くように、該回生エネルギー算出式を補正する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記回生エネルギー学習制御において、前記車両が前記道路の一区間を走行しているときに前記蓄電装置が少なくとも一時的に満充電状態であった場合には、前記学習データとして記憶する前記回生エネルギー量を、所定の回生エネルギー算出式に従って算出し、
前記車両が前記道路の一区間を走行しているときに前記蓄電装置が終始満充電状態ではなかった場合には、前記回生エネルギー算出式で算出される該一区間走行時の回生エネルギー量が該回生エネルギー量の実際値に近付くように、該回生エネルギー算出式を補正する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記道路の一区間は下り坂である
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記回生エネルギー量を算出できる物理量とは、前記車両が前記一区間を走行している間における該車両の位置エネルギーの変化量、該車両の走行エネルギーの変化量、及び、該車両全体のトータル制動力が前記回生作動で許容される許容回生制動力を超えた制動力超過分に対応するエネルギー量である
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の車両用制御装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−34339(P2013−34339A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169808(P2011−169808)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】