説明

車両用危険通知処置装置

【課題】危険の発生およびその対処方法を乗員に通知するとともに、車両自らが対応処置を実施することにより、乗員が危険を容易に回避できるようにする。
【解決手段】異常状態検出手段1が車両および車両周辺を監視して異常状態を検出すると、危険判定手段2が、検出された異常状態が乗員にとって危険であるかどうかを判定する。危険であると判定された場合には、通知手段3は、車両装備および/または周辺施設を用いて対処方法を乗員に通知し、処置手段4は、車両装備を用いて対応処置を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用危険通知処置装置に関し、詳しくは車両に発生する種々の危険を乗員等が容易に回避できるようにする車両用危険通知処置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のユーザ(所有者,使用者等)および/またはその家族や友人等が車両に乗車しているときに、車両に異常事態が発生し、車両に搭乗している人(以下、乗員という)に危険が及ぶおそれが生じる場合がある。
【0003】
このため、従来、車両の状態をチェックするセンサの検出値が異常値になったときに、異常検出値の程度に応じた異常状態を示すメッセージを文字や音声で乗員に通知するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−55715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の技術では、異常状態が検出されたときにメッセージが乗員に通知されるようにはなっていたが、そのメッセージを受けても、乗員が咄嗟に適切な対応処置がとれるとは限らないという問題点があった。つまり、不意に危険な状態になった場合、乗員がパニックに陥って正しい対応処置がとれなかったり、乗員が発生した危険に対する正しい対応処置を知らずに間違った対応処置をとったりするおそれがあった。正しい対応処置がとれなかったり、間違った対応処置をとったりした場合には、乗員の生命にかかわる事態が生じるおそれもあり、危険の発生時に乗員が正しい対応処置をとれるようにすることは、安全対策上きわめて重要なことである。
【0005】
そこで、本発明の課題は、危険の発生およびその対処方法を乗員に通知するとともに、該対処方法に対応する正しい処置(対応処置)を車両が自動的に実施することにより、乗員が危険を容易に回避できるようにした車両用危険通知処置装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
請求項1記載の車両用危険通知処置装置は、図1に示すように、車両および車両周辺を監視して異常状態を検出する異常状態検出手段1と、前記異常状態検出手段1により検出された異常状態が乗員にとって危険であるかどうかを判定する危険判定手段2と、前記危険判定手段2により危険であると判定されたときに車両装備および/または周辺施設を用いて対処方法を乗員に通知する通知手段3と、前記危険判定手段2により危険であると判定されたときに車両装備を用いて対応処置を実施する処置手段4とを備えることを特徴とする。請求項1記載の車両用危険通知処置装置によれば、危険の発生およびその対処方法が乗員に通知されるので、乗員は対処方法に従って行動するだけで、パニックに陥ることなく危険を回避することが可能となる。また、乗員が危険を回避するために必要な対応処置を車両が実施するので、乗員は危険を回避できる可能性が高まる。
【0007】
請求項2記載の車両用危険通知処置装置は、請求項1に記載の車両用危険通知処置装置において、前記通知手段が前記危険の内容に応じて通知する対処方法を切り替え、前記処置手段が前記危険の内容に応じて実施する対応処置を切り替えることを特徴とする。請求項2記載の車両用危険通知処置装置によれば、危険の内容に応じて通知される対処方法が切り替えられるので、乗員は危険に対する最も適切な対処方法を容易に実行することができる。また、危険の内容に応じて車両が実施する対応処置が切り替えられるので、車両は危険に対する最も適した対応処置を講じることができる。
【0008】
請求項3記載の車両用危険通知処置装置は、請求項1または請求項2に記載の車両用危険通知処置装置において、前記対応処置の内容が、乗員を安全に降車させるため退避路の確保,該退避路への乗員の誘導,および該退避路からの乗員の放出であることを特徴とする。請求項3記載の車両用危険通知処置装置によれば、乗員は退避路を確保され、退避路に誘導され、退避路から車両外に放出されるので、対処方法の通知と相まって安全に確実に危険を回避することが可能となる。
【0009】
請求項4記載の車両用危険通知処置装置は、請求項1または請求項2に記載の車両用危険通知処置装置において、前記通知手段が、前記危険の内容に応じて、車載の電話装置を使用して、ユーザ,管理センタ,警察署,消防署,救急施設,ロードサービス,カーディーラおよび修理工場のいずれか1つ以上に危険の発生を通報することを特徴とする。請求項4記載の車両用危険通知処置装置によれば、危険の内容に応じて、ユーザ,管理センタ,警察署,消防署,救急施設,ロードサービス,カーディーラおよび修理工場のいずれか1つ以上に危険の発生が通報されるので、通報先は危険の内容に応じた適切な対応処置を施すことが可能になる。
【0010】
請求項5記載の車両用危険通知処置装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置において、前記通知手段が、ハザードランプを点滅させて危険の発生を車両の周囲にも通知することを特徴とする。請求項4記載の車両用危険通知処置装置によれば、車両の周囲にいる他の車両や人が、ハザードランプの点滅を見て、車両や乗員を危険から救出する手助けすることが可能になる一方、危険に近寄らないことにより二次災害の発生を防止することができる。
【0011】
請求項6記載の車両用危険通知処置装置は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置において、前記通知手段が、危険の発生を周辺施設のディスプレイに表示して車両の周囲にも通知することを特徴とする。請求項6記載の車両用危険通知処置装置によれば、車両の周囲にいる他の車両や人が、周辺施設のディスプレイに表示された危険の発生を見て、車両や乗員を危険から救出する手助けすることが可能になる一方、危険に近寄らないことにより二次災害の発生を防止することができる。
【0012】
請求項7記載の車両用危険通知処置装置は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置において、前記危険判定手段により異常状態が車両火災であると判定された場合に、前記通知手段が、車両を直ぐに停車させて降車するという対処方法を乗員に通知し、前記処置手段が、ドアをアンロックしてウインドウを開放するという対応処置を実施することを特徴とする。請求項7記載の車両用危険通知処置装置によれば、車両火災が発生した際に対処方法が通知されるので、乗員は通知された対処方法に従って車両を直ぐに停車させて降車することにより、対処方法が通知されない場合に比べて、より速やかに車両外に退避して危険を回避することができる。また、自動的にドアがアンロックされてウインドウが開放されるので、乗員は自らドアをアンロックしてウインドウを開放する手間および時間を要することなしに車両外に脱出して危険を回避することができる。
【0013】
請求項8記載の車両用危険通知処置装置は、請求項7記載の車両用危険通知処置装置において、前記通知手段が、車車間通信を使用して周囲の車両にも車両火災の発生を通知することを特徴とする。請求項8記載の車両用危険通知処置装置によれば、周囲の車両は車両火災の発生を知り、車両火災を起こした車両をよけることにより、二次災害の発生を未然に防止することができる。
【0014】
請求項9記載の車両用危険通知処置装置は、請求項7または請求項8に記載の車両用危険通知処置装置において、前記処置手段が、消火装置を作動させるという対応処置を実施することを特徴とする。請求項9記載の車両用危険通知処置装置によれば、車両火災が発生した際に、消火装置が自動的に作動されるという対応処置が実施されるので、消火装置が自動的に作動されない場合に比べて、火勢が弱まり、車両内への煙やガスの充満が遅延されるので、乗員は、その間に車両外に退避して危険を回避することができる。
【0015】
請求項10記載の車両用危険通知処置装置は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置において、前記危険判定手段により異常状態が車両の水没であると判定された場合に、前記通知手段が、ドアおよび/またはウインドウを開けて車両外に脱出するという対処方法を乗員に通知し、前記処置手段が、シートベルトの解除,ドアのアンロックおよびウインドウの開放という対応処置を実施することを特徴とする。請求項10記載の車両用危険通知処置装置によれば、車両水没が発生した際に、ドアおよび/またはウインドウを開けて車両外に脱出するという対処方法が通知されるので、乗員は通知された対処方法に従ってドアおよび/またはウインドウを開けて車両外に脱出することにより、対処方法が通知されない場合に比べて、パニックに陥ることなく車両外に退避して危険を回避することができる。また、シートベルトの解除,ドアのアンロックおよびウインドウの開放という対応処置が自動的に実施されるので、乗員は自分でシートベルトを外しドアをアンロックしウインドウを開放する手間および時間が省けるので、対応処置が実施されない場合に比べて、より迅速に車両外に退避して危険を回避することができる。
【0016】
請求項11記載の車両用危険通知処置装置は、請求項10記載の車両用危険通知処置装置において、前記処置手段が、スライドルーフを開放するという対応処置を実施することを特徴とする。請求項11記載の車両用危険通知処置装置によれば、対応処置として、スライドルーフの開放が、シートベルトの解除,ドアのアンロックおよびウインドウの開放とともに実施されるので、車両の開放性が高まり、乗員が車両外に脱出できる確率がより一層高まる。
【0017】
請求項12記載の車両用危険通知処置装置は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置において、前記危険判定手段により異常状態が車両への賊の襲来であると判定された場合に、前記通知手段が、車両内から外に出ないという対処方法を乗員に通知し、前記処置手段が、ドアをロックするとともにウインドウを閉めるという対応処置を実施することを特徴とする。請求項12記載の車両用危険通知処置装置によれば、車両への賊の襲来が発生した際に、対処方法が通知されない場合は、乗員は慌てて車両外に出て却って賊に襲われる可能性が高いが、対処方法が通知されるので、乗員は車両内から外に出ないことにより、より高い確率で危険を回避することができる。また、ドアをロックするとともにウインドウを閉めるという対応処置が自動的に実施されるので、乗員は自分でドアをロックしウインドウを閉める手間および時間が省け、対応処置が実施されない場合に比べて、より早く車両を外部から遮断して危険を回避することができる。
【0018】
請求項13記載の車両用危険通知処置装置は、請求項12記載の車両用危険通知処置装置において、前記通知手段が、警察に通報した旨を車両外に伝達することを特徴とする。請求項13記載の車両用危険通知処置装置によれば、警察に通報した旨が車両外に伝達されるので、賊が警察をおそれて退散する可能性がある。
【0019】
請求項14記載の車両用危険通知処置装置は、請求項12または請求項13に記載の車両用危険通知処置装置において、前記処置手段が、調光ウインドウ装置を使用して車両内を見えなくするという対応処置を実施することを特徴とする。請求項14記載の車両用危険通知処置装置によれば、賊は車両内の様子が見えなくなるので、車両を攻撃するリスクを意識して、攻撃を仕掛けることなく退散する可能性が生じる。
【0020】
請求項15記載の車両用危険通知処置装置は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置において、前記危険判定手段により異常状態がタイヤのパンクであると判定された場合に、前記通知手段が、車両を路肩に寄せるという対処方法を乗員に通知し、前記処置手段が、パワーステアリングのアシスト量を変化させることにより直進性を確保するという対応処置を実施することを特徴とする。請求項15記載の車両用危険通知処置装置によれば、タイヤのパンクが発生した際に、車両を路肩に寄せるという対処方法が通知されるので、乗員は通知された対処方法に従って車両を路肩に寄せることにより、対処方法が通知されない場合に比べて、パニックに陥ることなく安全に危険を回避することができるとともに、タイヤのパンクに起因する二次災害を未然に防止することができる。また、ハンドル流れが発生しないようにパワーステアリングのアシスト量を車両が流れる方向と反対方向に軽くし、直進性を保ちやすくするという対応処置が自動的に実施されるので、タイヤのパンク後も比較的安全に車両を路肩まで寄せることができ、危険を回避することが可能となる。
【0021】
請求項16記載の車両用危険通知処置装置は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置において、前記危険判定手段により異常状態が車両内への生体の閉じ込めであり、かつ該生体の生命維持に危険な状態であると判定された場合に、前記通知手段が、該生体を車両外に取り出すという対処方法をユーザに通知し、前記処置手段が、ウインドウを開放するとともにトランクリッドを開放するという対応処置を実施することを特徴とする。請求項16記載の車両用危険通知処置装置は、請求項8記載の車両用危険通知処置装置によれば、車両内に閉じ込められた生体に生命危険状態が発生したときに、該生体を車両外に取り出すという対処方法が通知されるので、ユーザは対処方法に従って生体を車両外に取り出して生命を危険から救うことができる。また、ウインドウおよびトランクリッドを開放するという対応処置が自動的に実施されるので、車室内やトランクルーム内に閉じ込められた生体をより容易に救出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
車両および車両周辺を監視し、危険の発生を検出した場合には、車両装備および/または周辺施設を用いて対処方法を乗員に通知するとともに、車両装備を用いて対応処置を実施する。
【0023】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図2は、本発明の実施例1に係る車両用危険通知処置装置の構成を示すブロック図である。本実施例1に係る車両用危険通知処置装置は、制御部100と、温度センサ101および煙センサ102からなる火災検出手段と、マルチディスプレイ103および警報ブザー104からなる乗員への通知手段と、電話装置105からなる通報手段と、車車間通信106,ハザードランプ107およびメッセージボード108からなる周囲への通知手段と、ドアロック装置109,パワーウインドウ装置110および消火装置111からなる処置手段とから構成されている。
【0025】
制御部100は、ECU(Electric Control Unit)等のマイクロコンピュータでなり、図3に示す実施例1に係る車両用危険通知処置装置の制御を行なう部分である。
【0026】
温度センサ101は、白金測温抵抗体,サーミスタ,熱電対等の接触式センサや、放射温度計等の非接触式センサでなり、車室内およびトランク内等に配置される。
【0027】
煙センサ102は、煙による電離電流の変化を感知するイオン化式センサや、煙による光の透過度の変化を利用した光電式センサでなり、車室内およびトランク内等に配置される。
【0028】
マルチディスプレイ103は、ナビゲーションやエアコン/オーディオの作動状況などを集中表示する多用途ディスプレイであり、ナビゲーション装置の液晶表示装置や有機EL(Electro Luminescence)表示装置等を兼用することができる。
【0029】
警報ブザー104は、電磁式のブザーである。
【0030】
電話装置105は、携帯電話機でもよく、また携帯電話機を使用しない専用の車載データ通信モジュール(Data Communication Module:DCM)であってもよい。
【0031】
車車間通信106は、赤外線,ミリ波帯域等を使用する短距離無線通信である。
【0032】
ハザードランプ107は、方向指示ランプ等を一斉に点滅させる装置である。
【0033】
メッセージボード108は、外部へメッセージを表示するためのボードであり、蛍光管表示装置,液晶表示装置,有機EL表示装置等でなる。
【0034】
ドアロック装置109は、閉じられたドアをロック/アンロックする装置である。
【0035】
パワーウインドウ装置110は、電動式のウインドウ開閉装置である。
【0036】
消火装置111は、車室内に設けられた消火剤を散布する装置である。
【0037】
次に、このように構成された実施例1に係る車両用危険通知処置装置の動作について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
制御部100は、火災検出手段である温度センサ101,煙センサ102等の出力に基づいて車両火災の発生を検出する(ステップS101でイエス)。例えば、温度センサ101により検出された車室内の温度が50℃以上になったときに、車両火災が発生したと判断する。また、煙センサ102により煙の濃度(比視覚濃度DS)が20以上となったときに、車両火災が発生したと判断する。このとき、温度センサ101および煙センサ102による車両火災の発生の検出に、車載カメラ等の画像解析による車両火災の検出を併用することにより、車室内での単なる喫煙等による一時的な温度の上昇や煙の充満と識別することが可能となる。
【0039】
車両火災が検出されると、制御部100は、警報ブザー104を鳴動させると同時に、ナビゲーション装置のマルチディスプレイ103等の乗員への通知手段により、車両火災の発生および車両をすぐに停車して降車すべき旨の対処方法を乗員に通知する(ステップS102)。たとえば、「車両火災が発生しました。落ち着いてシートベルトを外し、ドアおよび/またはウインドウを開けて、車外に脱出してください。」等のメッセージを通知する。この通知には、マルチディスプレイ103による視覚的な通知ばかりでなく、スピーカを通じた聴覚的な通知やバイブレータを通じた触覚的な通知を併用することができ、併用することによって通知の確実性をより高めることができる。
【0040】
次に、制御部100は、車載の電話装置105等の通報手段により、車両火災が発生したことを管理センタ,警察署,消防署,救急施設等の関係機関へ自動的に通報する(ステップS103)。このとき、車載のナビゲーション装置,GPS(Global Positioning System)等により車両の位置データを取得し、車両ナンバー等と併せて関係機関に通報するとよい。また、車載カメラ等による画像や動画を電子メール等に添付して送付し、より具体的な状況を知らせるようにしてもよい。
【0041】
続いて、制御部100は、車両火災が発生したことを示すと同時に追突事故等の二次災害の発生を防止するために、車車間通信106やハザードランプ107,メッセージボード108等の周囲への通知手段により、車両が火災を発生し危険な状態であることを周囲の車両や人に通知する(ステップS104)。この通知には、ハザードランプ107,メッセージボード108等による視覚的な通知ばかりでなく、ホーンやスピーカを通じた聴覚的な通知を併用することができ、併用することによって通知の確実性をより高めることができる。また、管理センタやVICS(Vehicle Information and Communication System),ETC(Electronic Toll Collection)等の路車間通信を通じて、火災を起こした車両の近くに存在する交通信号標識,街路灯,掲示ディスプレイ,広告ディスプレイ等の周辺施設に車両火災が発生し危険な状態であることを表示するようにしてもよい。特に、車載カメラ等による画像や動画を掲示ディスプレイ,広告ディスプレイ等に表示するようにすれば、発生した車両火災の状況を即座に知ることができ、周囲の車両や人は、消火の手助けを行なえる一方、延焼等の二次災害を避けることもできる。
【0042】
一方、ステップS102ないしS104と同時に、制御部100は、ドアロック装置109によるドアのアンロックや、煙が車室内に充満してきた場合はパワーウインドウ装置110によるウインドウの開放を行なうなどの対応処置を実施する(ステップS105)。このように、乗員が車両外に脱出するために必要な対応処置を車両が自動的に実施するので、対応処置が自動的に実施されない場合に比べて、乗員が車両外に脱出できる可能性がより高まることになる。
【0043】
また、消火装置111を搭載している車両の場合は、制御部100は、消火装置111を作動させて自動消火などの対応処置を実施する。
【0044】
本実施例1によれば、車両火災の発生時に、シートベルトを外し、ドアおよび/またはウインドウを開けて車両外に脱出するという対処方法が乗員に通知されるとともに、ドアのアンロックおよびウインドウの開放が対応処置として自動的に実施されるので、乗員の車両外への脱出可能性を向上させることができる。
【実施例2】
【0045】
図4は、本発明の実施例2に係る車両用危険通知処置装置の構成を示すブロック図である。本実施例2に係る車両用危険通知処置装置は、制御部200と、水没センサ201からなる水没検出手段と、マルチディスプレイ203および警報ブザー204からなる乗員への通知手段と、電話装置205からなる通報手段と、ハザードランプ207からなる周囲への通知手段と、ドアロック装置209,パワーウインドウ装置210,シートベルト装置212およびスライドルーフ装置213からなる処置手段とから構成されている。
【0046】
制御部200は、ECU等のマイクロコンピュータでなり、図5に示す実施例2に係る車両用危険通知処置装置の制御を行なう部分である。
【0047】
水没センサ201は、水に濡れたときに導通するセンサ等でなり、車両が水に浸かった場合に車両の水没を検出する。
【0048】
マルチディスプレイ203,警報ブザー204,電話装置205,ハザードランプ207,ドアロック装置209およびパワーウインドウ装置210は、図2に示した実施例1に係る車両用危険通知処置装置におけるマルチディスプレイ103,警報ブザー104,電話装置105,ハザードランプ107,ドアロック装置109およびパワーウインドウ装置110と同様に構成されているので、それらの詳しい説明を省略する。
【0049】
シートベルト装置212は、シートベルトを締めたり、緩めたり、またシートベルトバックルを外したりできる装置である。
【0050】
スライドルーフ装置213は、サンルーフのルーフパネルまたはガラスルーフを電動式にスライド可能にして開閉できるようにした装置である。
【0051】
次に、このように構成された実施例2に係る車両用危険通知処置装置の動作について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0052】
車両が海,川,湖,沼等に水没すると、制御部200は、水没検出手段である水没センサ201からの出力に基づいて車両水没の発生を検出する(ステップS201でイエス)。このとき、車載カメラ等の画像解析による車両水没の検出を併用することにより、車室内での単なる水こぼし等による一時的な水感知と識別することが可能となる。
【0053】
車両水没の発生を検出すると、制御部200は、警報ブザー204を鳴動させると同時に、ナビゲーション装置のマルチディスプレイ203等の乗員への通知手段により、車両水没の発生およびその対処方法を通知する(ステップS202)。たとえば、「水没事故が発生しました。車両は5分間は沈みませんので、落ち着いてシートベルトを外し、ドアおよび/またはウインドウを開けて車外に脱出してください。」等のメッセージを通知する。この通知には、マルチディスプレイ203による視覚的な通知ばかりでなく、スピーカを通じた聴覚的な通知やバイブレータを通じた触覚的な通知を併用することができ、併用することによって通知の確実性をより高めることができる。
【0054】
続いて、制御部200は、車載の電話装置205等の通報手段により、車両水没が発生したことを管理センタ,警察署,消防署,救急施設等の関係機関に自動的に通報する(ステップS203)。このとき、車載のナビゲーション装置,GPS等から車両の位置データを取得し、車両ナンバー等と併せて関係機関に通報するとよい。また、車載カメラ等による画像や動画を電子メール等に添付して送付し、より具体的な状況を知らせるようにしてもよい。
【0055】
次に、制御部200は、車両水没が発生したことを周囲に通知するために、周囲への通知手段であるハザードランプ207を点滅させる(ステップS204)。この通知には、ハザードランプ207による視覚的な通知ばかりでなく、ホーンやスピーカを通じた聴覚的な通知を併用することができ、併用することによって通知の確実性をより高めることができる。また、管理センタやVICS,ETC等の路車間通信を通じて、水没車両の近くに存在する交通信号標識,街路灯,掲示ディスプレイ,広告ディスプレイ等の周辺施設に車両の水没が発生し危険な状態であることを表示するようにしてもよい。特に、車載カメラ等による画像や動画を掲示ディスプレイ,広告ディスプレイ等に表示するようにすれば、周囲の車両や人は、発生した車両水没の状況を即座に知ることができ、人命救助の手助けを行なうこともできる。
【0056】
一方、ステップS202ないしS204と同時に、制御部200は、シートベルト装置212によりシートベルトバックルを外し(ステップS205)、ドアロック装置209によるドアのアンロックおよびスライドルーフ装置213によるスライドルーフの自動開放等を行ない、車両の開放性を高めて乗員が車両外に脱出しやすいようにする(ステップS206)。このように、乗員が車両外に脱出するために必要な対応処置を車両が自動的に実施するので、対応処置が自動的に実施されない場合に比べて、乗員が車両外に脱出できる可能性がより高まることになる。
【0057】
また、制御部200は、パワーウインドウ装置210によるウインドウの開放を行なう(ステップS207)。
【0058】
本実施例2によれば、車両水没の発生時に、シートベルトを外し、ドアおよび/またはウインドウを開けて車両外に脱出するという対処方法が乗員に通知されるとともに、シートベルトバックルの外し,ドアのアンロックおよびスライドルーフの自動開放という対応処置が車両により自動的に実施されるので、乗員の車両外への脱出可能性を向上させることができる。
【実施例3】
【0059】
図6は、本発明の実施例3に係る車両用危険通知処置装置の構成を示すブロック図である。本実施例3に係る車両用危険通知処置装置は、制御部300と、衝撃センサ301,マイク302およびエマージェンシースイッチ316からなる賊襲来検出手段と、マルチディスプレイ303および警報ブザー304からなる乗員への通知手段と、電話装置305からなる通報手段と、ハザードランプ307からなる周囲への通知手段と、ドアロック装置309,パワーウインドウ装置310,調光ウインドウ装置314および車外スピーカ装置315からなる処置手段とから構成されている。
【0060】
制御部300は、ECU等のマイクロコンピュータでなり、図7に示す実施例3に係る車両用危険通知処置装置の制御を行なう部分である。
【0061】
衝撃センサ301は、バネと接点とを使用した機械接点式のセンサや、圧電素子の共振特性を利用した電子式のセンサでなり、車両に加えられる打撃等を検出する。
【0062】
マイク302は、車室内外に複数設けられ、車室外の音声を採音したり、車室内の乗員の音声を採音したりする。
【0063】
エマージェンシースイッチ316は、緊急時に乗員が指等で押圧操作するスイッチであり、押圧操作すると、電話装置305を通じて警察署等の関係機関に車両に緊急事態が発生したことが通報されるようにするものである。
【0064】
マルチディスプレイ303,警報ブザー304,電話装置305,ハザードランプ307,ドアロック装置309およびパワーウインドウ装置310は、図2に示した実施例1に係る車両用危険通知処置装置におけるマルチディスプレイ103,警報ブザー104,電話装置105,ハザードランプ107,ドアロック装置109およびパワーウインドウ装置110と同様に構成されているので、それらの詳しい説明を省略する。
【0065】
調光ウインドウ装置314は、分散型液晶シートを2枚のガラスの間にラミネ一トしたもので、電圧をオン/オフすることによって液晶の配列をコントロ一ルしてフロントガラス,ウインドウガラス,リアガラス等を不透明にすることができる装置であり、瞬時に車室内を車両外から見えなくすることができる。
【0066】
車外スピーカ315は、乗員の音声や制御部300からのメッセージを拡声して車室外に伝達する役目をする。
【0067】
次に、このように構成された実施例3に係る車両用危険通知処置装置の動作について、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0068】
制御部300は、車両に賊が襲来すると、マイク302によって採音された賊の声や足音等の周囲の音状況を解析したり、衝撃センサ301からの出力に基づいて車両に加えられた危害や衝撃の度合いを解析したり、エマージェンシースイッチ316の出力から乗員の緊急事態を判断したりして、賊の襲来を検出する(ステップS301のイエス)。このとき、車載カメラ等の画像解析による賊の襲来の検出を併用することができる。画像解析による賊の襲来の検出を併用することにより、車両への家族,友人,知人等の接近や、地震,悪ふざけ等による一時的に車両に加えられた衝撃や、エマージェンシースイッチ316の誤操作等と、賊の襲来とを識別することが可能となる。
【0069】
賊の襲来を検出すると、制御部300は、警報ブザー304を鳴動させると同時に、ナビゲーション装置のマルチディスプレイ303等の乗員への通知手段により、賊の襲来の発生およびその対処方法を乗員に通知する(ステップS302)。たとえば、「賊が襲来してきています。落ち着いてドアをロックし、ウインドウを閉じて車内から外に出ないでください。警察に自動的に通報します。」等のメッセージを乗員に通知する。この通知には、マルチディスプレイ303による視覚的な通知ばかりでなく、スピーカを通じた聴覚的な通知やバイブレータを通じた触覚的な通知を併用することができ、これらを併用することによって通知の確実性をより高めることができる。
【0070】
次に、制御部300は、車載の電話装置305等の通報手段により、管理センタ,警察署,消防署,救急施設等の関係機関に賊の襲来の発生を通報する(ステップS303)。このとき、車載のナビゲーション装置,GPS等から車両の位置データを取得し、車両ナンバー等と併せて関係機関に通報するとよい。また、車載カメラ等による画像や動画を電子メール等に添付して送付し、より具体的な状況を知らせるようにしてもよい。
【0071】
続いて、制御部300は、賊の襲来の発生を周囲の車両や人に知らせるために、周囲への通知手段であるハザードランプ307を点滅させる(ステップS304)。この通知には、ハザードランプ307による視覚的な通知ばかりでなく、ホーンや車外スピーカ装置315を通じた聴覚的な通知を併用することができ、併用することによって通知の確実性をより高めることができる。また、管理センタやVICS,ETC等の路車間通信を通じて、賊に襲われた車両の近くに存在する交通信号標識,街路灯,掲示ディスプレイ,広告ディスプレイ等の周辺施設に車両が賊に襲われ危険な状態であることを表示するようにしてもよい。特に、車載カメラ等による画像や動画を掲示ディスプレイ,広告ディスプレイ等に表示するようにすれば、賊は、車両を襲っていることの判明や賊自身の身許の判明をおそれて退散する可能性が高い。
【0072】
さらに、制御部300は、賊に対して車外スピーカ装置315を通じて警察署に通報した旨を伝達する(ステップS305)。これにより、警察署に通報した旨が車両外に伝達されるので、賊は警察の出動をおそれて退散する可能性が生じる。このとき、電話装置305等の通報手段により通話をしている警察署の話者の声を車外スピーカ装置315を通じて直接流すようにすれば、さらに賊が退散する可能性が高まる。
【0073】
一方、ステップS302ないしS305と同時に、制御部300は、ドアロック装置309によりドアをロックし、パワーウインドウ装置310によりウインドウを閉じる(ステップS306)。これにより、乗員は、自分でドアをロックし、ウインドウを閉じる手間および時間を省くことができ、車両内に素早く閉じ籠もって身を守ることができる。
【0074】
また、制御部300は、調光ウインドウ装置314により、フロントガラス,ウインドウガラス,リアガラス等の光透過率を下げて車両外から車室内を見えなくする(ステップS307)。これにより、賊は車両内の様子が見えなくなるので、車両を攻撃するリスクを意識して、攻撃を仕掛けることなく退散する可能性が生じる。
【0075】
本実施例3によれば、賊の襲来の発生時に、ドアをロックし、ウインドウを閉じて車内から外に出ないという対処方法が乗員に通知されるとともに、警察署等の関係機関への通報という対応処置が自動的に実施されるので、乗員は素早く車両内に閉じ籠もって身を守ることができ、不用意に車両外に出て賊からの襲撃を直接受けるという危険を回避することができる。
【実施例4】
【0076】
図8は、本発明の実施例4に係る車両用危険通知処置装置の構成を示すブロック図である。本実施例4に係る車両用危険通知処置装置は、制御部400と、タイヤ空気圧センサ401および振動センサ402からなるパンク検出手段と、マルチディスプレイ403および警報ブザー404からなる乗員への通知手段と、電話装置405からなる通報手段と、ハザードランプ407からなる周囲への通知手段と、パワーステアリング装置408からなる処置手段とから構成されている。
【0077】
制御部400は、ECU等のマイクロコンピュータでなり、図9に示した実施例4に係る車両用危険通知処置装置の制御を行なう部分である。
【0078】
タイヤ空気圧センサ401は、タイヤの圧力,温度,運動などのデータを収集し、無線リンクを介して制御部400に転送するものである。また、タイヤ空気圧センサ401は、ABS(Anti-lock Brake System)の機構を応用して、各車輪に装着された車輪速センサから「走行中」のタイヤの回転数をABSのコンピュータに送り、車速信号に含まれるタイヤの共振周波数の変化を判定し、その変化をタイヤのねじれ・ばね定数として推定して空気圧を検出するものであってもよい。
【0079】
振動センサ402は、静電容量式の変位センサ,渦電流方式の変位センサ,圧電方式の加速度センサの各種センサで構成されている。
【0080】
マルチディスプレイ403,警報ブザー404,電話装置405およびハザードランプ407は、図2に示した実施例1に係る車両用危険通知処置装置におけるマルチディスプレイ103,警報ブザー104,電話装置105およびハザードランプ107と同様に構成されているので、それらの詳しい説明を省略する。
【0081】
パワーステアリング装置408は、マニュアルステアリングに対して操舵力を補助軽減するために、倍力装置を備えた舵取り装置である。
【0082】
次に、このように構成された実施例4に係る車両用危険通知処置装置の動作について、図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0083】
制御部400は、タイヤ空気圧センサ401,振動センサ402等のパンク検出手段によりタイヤのパンク発生を検出する(ステップS401でイエス)。例えば、タイヤ空気圧センサ401により検出されるタイヤの空気圧が正常値の80%以下になったときには、タイヤがパンクしたものと判断する。また、振動センサ402により検出される振動が、正常値から20%以上大きくなったときには、タイヤがパンクしたものと判断する。このとき、4本のタイヤの内の、いずれのタイヤにパンクが発生したのかも検出する。なお、パンクしたタイヤの走行抵抗が増大することをABSで検出して、いずれのタイヤがパンクしたかを検出することもできる。また、サイドミラーに取り付けたカメラ等により、乗員自身がタイヤのパンクを目視できるようにするとなおさらよい。
【0084】
タイヤのパンクの発生を検出すると、制御部400は、警報ブザー404を鳴動させると同時に、ナビゲーション装置のマルチディスプレイ403等の乗員への通知手段により、タイヤのパンクの発生およびその対処方法を乗員に通知する(ステップS402)。たとえば、「タイヤがパンクしました。落ち着いて車両を路肩に寄せてください。ロードサービスに自動的に通報します。」等のメッセージを通知する。この通知には、マルチディスプレイ403による視覚的な通知ばかりでなく、スピーカを通じた聴覚的な通知やバイブレータを通じた触覚的な通知を併用することができ、併用することによって通知の確実性をより高めることができる。
【0085】
続いて、制御部400は、車載の電話装置405等の通報手段により管理センタ,ロードサービス,カーディーラ,修理工場等にタイヤのパンクの発生を通報する(ステップS403)。このとき、車載のナビゲーション装置,GPS等から車両の位置データを取得し、車両ナンバー等と併せて通報するとよい。また、車載カメラ等による画像や動画を電子メール等に添付して送付し、より具体的な状況を知らせるようにしてもよい。
【0086】
次に、制御部400は、タイヤのパンクが発生したことを示すと同時に追突事故等の二次災害を防止するために、周囲への通知手段であるハザードランプ407を点滅させる(ステップS404)。なお、この通知には、ハザードランプ407による視覚的な通知ばかりでなく、ホーンやスピーカを通じた聴覚的な通知を併用することができ、併用することによって通知の確実性をより高めることができる。また、車車間通信を使用して、周囲にある他の車両に対して追突の危険性があることを積極的に警告して、二次災害の発生を防止するようにしてもよい。
【0087】
一方、ステップS402ないしS404と同時に、制御部400は、ハンドル流れが発生しないように、パワーステアリング装置408によりパワーステアリングのアシスト量を車両が流れる方向と反対方向に軽くし、直進性を保ちやすくするなどの対応処置を実施する(ステップS405)。例えば、車両の右側の前輪または後輪のタイヤがパンクすると、右側のタイヤの走行抵抗が増大する結果、ハンドルが右側に流れやすくなるが、これに抗するためにパワーステアリングのアシスト量を車両が流れる方向とは反対方向に軽くし、直進性を保ちやすくする等の対応処置を自動的に実施する。これにより、タイヤのパンク後も乗員は比較的安全に車両を路肩まで寄せることができ、危険を回避することが可能となる。
【0088】
本実施例4によれば、タイヤのパンク発生時に、車両を路肩に寄せるという対処方法が乗員に通知されるとともに、パワーステアリングのアシスト量を車両が流れる方向と反対方向に軽くし、直進性を保ちやすくする対応処置が自動的に実施されるので、乗員は車両を安全に路肩に停車させてロードサービス等の救援を待つことができるとともに、接近してくる他の車両から追突されるという二次災害の危険性も回避することができる。
【実施例5】
【0089】
図10は、本発明の実施例5に係る車両用危険通知処置装置の構成を示すブロック図である。本実施例5に係る車両用危険通知処置装置は、制御部500と、超音波センサ521,音センサ522,ビデオカメラ523および二酸化炭素センサ524からなる生物検出手段と、酸素センサ(室内)525,温度センサ(室内)526,酸素センサ(トランク)527および温度センサ(トランク)528からなる生命危険状態検出手段と、マルチディスプレイ503および警報ブザー504からなる乗員への通知手段と、電話装置505からなる通報手段と、ハザードランプ507からなる周囲への通知手段と、パワーウインドウ装置510およびトランクリッド装置516からなる処置手段とから構成されている。
【0090】
制御部500は、ECU等のマイクロコンピュータでなり、図11に示す実施例5に係る車両用危険通知処置装置の制御を行なう部分である。
【0091】
超音波センサ521は、圧電素子等からなる超音波の送受信素子を備え、超音波を送・受波することにより物体を検出するスイッチであり、車室内およびトランク内に配設される。例えば、車室内やトランク内に犬などの動物ペットや幼児等の生体(生物)が閉じ込められている場合、超音波センサ521は、超音波を照射して生体が閉じ込められていることを検知することができる。
【0092】
音センサ522は、動電型,静電型,圧電型等のマイクロホンでなり、車室内およびトランク内に配設される。音センサ522は、車室内やトランク内で犬などの動物ペットや幼児等の生体の話し言葉,鳴き声,呼吸音等を採音することにより、生体が閉じ込められたことを検出することができる。
【0093】
ビデオカメラ523は、動画撮影が可能なカメラであり、車室内およびトランク内に配設される。なお、ビデオカメラ523は、夜間撮影や暗所撮影を可能にするために、赤外線照射機能を有するナイトビジョン等の暗視装置を備えるものであってもよい。ビデオカメラ523は、車室内やトランク内で犬などの動物ペットや幼児等の生体の姿を撮像することにより、生体が閉じ込められたことを検出することができる。
【0094】
二酸化炭素センサ524は、特定波長の赤外光が二酸化炭素ガス分子に吸収されることを応用する赤外光方式のセンサや、加熱した二酸化スズの表面への分子の吸着による電気抵抗値の変化を測定する半導体方式のセンサであり、車室内およびトランク内に配設される。二酸化炭素センサ524は、車室内やトランク内で犬などの動物ペットや幼児等の生体の呼吸により増加する二酸化炭素ガス濃度を検出することにより、生体が閉じ込められたことを検出することができる。
【0095】
酸素センサ(室内)525および酸素センサ(トランク)527は、酸素ガス濃淡による起電力を測定するジルコニアセンサや、酸素ガスの拡散による限界電流を測定するセラミック酸素センサ等でなり、車室内およびトランク内に配設される。酸素センサ(室内)525および酸素センサ(トランク)527は、車室内やトランク内で犬などの動物ペットや幼児等の生体の呼吸により減少する酸素ガス濃度を検出することにより、生体が閉じ込められたことを検出することができる。
【0096】
温度センサ(室内)526および温度センサ(トランク)528は、白金測温抵抗体,サーミスタ,熱電対等の接触式のセンサや、放射温度計等の非接触式のセンサでなり、車室内およびトランク内に配設される。温度センサ(室内)526および酸素センサ(トランク)528は、車室内やトランク内で閉じ込められた犬などの動物ペットや幼児等の生体により増加する温度を検出することにより、生体が閉じ込められたことを検出することができる。
【0097】
マルチディスプレイ503,警報ブザー504,電話装置505,ハザードランプ507およびパワーウインドウ装置510は、図2に示した実施例1に係る車両用危険通知処置装置におけるマルチディスプレイ103,警報ブザー104,電話装置105,ハザードランプ107およびパワーウインドウ装置110と同様に構成されているので、それらの詳しい説明を省略する。
【0098】
トランクリッド装置516は、トランクをロックアップする蓋をいい、解錠は、キー,運転席の操作レバーまたは電磁スイッチで行なうものである。
【0099】
次に、このように構成された実施例5に係る車両用危険通知処置装置の動作について、図11に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0100】
制御部500は、超音波センサ521からの出力に基づいて車室内またはトランク内に不審物が存在することを検出したり、音センサ522の音声解析に基づいて車室内またはトランク内で話し言葉,鳴き声,呼吸音等がすることを検出したり、ビデオカメラ523の画像解析に基づいて車室内またはトランク内に移動体が存在することを検出したり、二酸化炭素センサ524からの出力に基づいて車室内またはトランク内に呼吸する生体が存在することを検出したりすると、車室内またはトランク内で生体閉じ込めが発生したと判断する(ステップS501でイエス)。
【0101】
生体閉じ込めが発生とすると、制御部500は、温度センサ(室内)526および温度センサ(トランク)528からの出力に基づいて閉じ込められた生体が生命の維持に困難なほど温度(例えば、36℃以上)が上昇していないかどうかを検出し、温度が上昇している場合には生体の生命危険状態が発生したと判断する。また、酸素センサ(室内)525および酸素センサ(トランク)527からの出力に基づいて閉じ込められた生体が生命の維持に困難なほど酸素濃度(例えば、16%以下)が低下していないかどうかを検出し、酸素濃度が低下している場合には生体の生命危険状態が発生したと判断する(ステップS502)。なお、生命危険状態検出手段により生体の生命危険状態を検出する代わりに、全ドア閉から所定時間(例えば、45分以上)が経過したかどうかに基づいて、生体の生命危険状態が発生したかどうかを判断してもよい。
【0102】
生体の生命危険状態が発生すると(ステップS502でイエス)、制御部500は、警報ブザー504を鳴動させると同時に、ナビゲーション装置のマルチディスプレイ503等の乗員への通知手段により、生体閉じ込めの発生およびその対処方法を通知する(ステップS503)。たとえば、「生体の閉じ込めが発生しました。ドアおよびウインドウを開けて生体を車外に救出してください。」等のメッセージを通知する。この通知には、マルチディスプレイ203による視覚的な通知ばかりでなく、スピーカを通じた聴覚的な通知やバイブレータを通じた触覚的な通知を併用することができ、併用することによって通知の確実性をより高めることができる。
【0103】
次に、制御部500は、車載の電話装置505等の通報手段により、ユーザの携帯電話機等に電話または電子メールで生体の閉じ込めがあり、かつ生体の生命危険状態にあることを通報するとともに、ユーザの携帯電話機等への通報後に一定時間(例えば、10分間以上)が経過しても、生体の生命危険状態が解消されない場合には、さらに警察署,消防署,救急施設等の関係機関に車両への生体閉じ込めの発生を通報する(ステップS504)。通報に際しては、車載のナビゲーション装置,GPS等から車両の位置データを取得し、車両ナンバー等と併せて通報するとよい。また、ビデオカメラ523による映像や画像を電子メール等に添付して送付し、より具体的な状況を知らせるようにしてもよい。
【0104】
続いて、制御部500は、周囲への通知手段であるハザードランプ507を点滅させる(ステップS505)。なお、この通知には、ハザードランプ507による視覚的な通知ばかりでなく、ホーンやスピーカを通じた聴覚的な通知を併用することができ、併用することによって通知の確実性をより高めることができる。また、車車間通信を使用して、周囲にいる車両や人に対して生体閉じ込めが発生し生体の生命危険状態であることを知らせて、救出を依頼するようにしてもよい。さらに、管理センタやVICS,ETC等の路車間通信を通じて、車両の近くに存在する交通信号標識,街路灯,掲示ディスプレイ,広告ディスプレイ等の周辺施設に生体の閉じ込めが発生して生命危険状態であることを表示するようにしてもよい。特に、車載カメラ等による画像や動画を掲示ディスプレイ,広告ディスプレイ等に表示するようにすれば、どのような生体が閉じ込められているのかが瞬時に分かるので、周囲にいる車両や人は、生体の救出を躊躇することなく迅速に行なうことができる。
【0105】
一方、ステップS503ないしステップ505と同時に、制御部500は、パワーウインドウ装置510によるウインドウの開放およびトランクリッド装置516によるトランクリッドの開放等の対応処置を実施する(ステップS506)。このように、生体を車両外に脱出させるために必要な対応処置を車両が自動的に実施するので、対応処置が自動的に実施されない場合に比べて、生体の生命危険状態が自動的に解消されたり、生体が車両外へ自力で脱出したりすることもでき、生体が救出される可能性がより高まることになる。
【0106】
本実施例5によれば、閉じきりの車室内またはトランク内に犬などの動物ペットや幼児等の生体が存在し、内部が温度上昇等で生命維持に危険が及ぶような環境条件になった時に、生体閉じ込めの発生およびその対処方法がユーザ等に通知されると同時に、生体閉じ込めへの対応処置が自動的に実施されるので、ユーザ等は車両に駆けつけて、または関係機関の到着を待って、生体を車室内またはトランク内から救出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の車両用危険通知処置装置の概念を説明するブロック図。
【図2】本発明の実施例1に係る車両用危険通知処置装置の構成を示すブロック図。
【図3】実施例1に係る車両用危険通知処置装置の動作を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施例2に係る車両用危険通知処置装置の構成を示すブロック図。
【図5】実施例2に係る車両用危険通知処置装置の動作を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施例3に係る車両用危険通知処置装置の構成を示すブロック図。
【図7】実施例3に係る車両用危険通知処置装置の動作を示すフローチャート。
【図8】本発明の実施例4に係る車両用危険通知処置装置の構成を示すブロック図。
【図9】実施例4に係る車両用危険通知処置装置の動作を示すフローチャート。
【図10】本発明の実施例5に係る車両用危険通知処置装置の構成を示すブロック図。
【図11】実施例5に係る車両用危険通知処置装置の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0108】
1 異常状態検出手段
2 危険判定手段
3 通知手段
4 処置手段
100,200,300,400,500 制御部
101 温度センサ
102 煙センサ
103,203,303,403,503 マルチディスプレイ
104,204,304,404,504 警報ブザー
105,205,305,405,505 電話装置
106 車車間通信
107,207,307,407,507 ハザードランプ
108 メッセージボード
109,209,309 ドアロック装置
110,210,310,510 パワーウインドウ装置
111 消火装置
201 水没センサ
212 シートベルト装置
213 スライドルーフ装置
301 衝撃センサ
302 マイク
314 調光ウインドウ装置
315 車外スピーカ装置
316 エマージェンシースイッチ
401 タイヤ空気圧センサ
402 振動センサ
408 パワーステアリング装置
516 トランクリッド装置
521 超音波センサ
522 音センサ
523 ビデオカメラ
524 二酸化炭素センサ
525 酸素センサ(室内)
526 温度センサ(室内)
527 酸素センサ(トランク)
528 温度センサ(トランク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両および車両周辺を監視して異常状態を検出する異常状態検出手段と、
前記異常状態検出手段により検出された異常状態が乗員にとって危険であるかどうかを判定する危険判定手段と、
前記危険判定手段により危険であると判定されたときに車両装備および/または周辺施設を用いて対処方法を乗員に通知する通知手段と、
前記危険判定手段により危険であると判定されたときに車両装備を用いて対応処置を実施する処置手段と
を備えることを特徴とする車両用危険通知処置装置。
【請求項2】
前記通知手段が前記危険の内容に応じて通知する対処方法を切り替え、前記処置手段が前記危険の内容に応じて実施する対応処置を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項3】
前記対応処置の内容が、乗員を安全に降車させるため退避路の確保,該退避路への乗員の誘導,および該退避路からの乗員の放出であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項4】
前記通知手段が、前記危険の内容に応じて、車載の電話装置を使用して、ユーザ,管理センタ,警察署,消防署,救急施設,ロードサービス,カーディーラおよび修理工場のいずれか1つ以上に危険の発生を通報することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項5】
前記通知手段が、ハザードランプを点滅させて危険の発生を車両の周囲にも通知することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項6】
前記通知手段が、危険の発生を周辺施設のディスプレイに表示して車両の周囲にも通知することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項7】
前記危険判定手段により異常状態が車両火災であると判定された場合に、前記通知手段が、車両を直ぐに停車させて降車するという対処方法を乗員に通知し、前記処置手段が、ドアをアンロックしてウインドウを開放するという対応処置を実施することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項8】
前記通知手段が、車車間通信を使用して周囲の車両にも車両火災の発生を通知することを特徴とする請求項7に記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項9】
前記処置手段が、消火装置を作動させるという対応処置を実施することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項10】
前記危険判定手段により異常状態が車両の水没であると判定された場合に、前記通知手段が、ドアおよび/またはウインドウを開けて車両外に脱出するという対処方法を乗員に通知し、前記処置手段が、シートベルトの解除,ドアのアンロックおよびウインドウの開放という対応処置を実施することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項11】
前記処置手段が、スライドルーフを開放するという対応処置を実施することを特徴とする請求項10に記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項12】
前記危険判定手段により異常状態が車両への賊の襲来であると判定された場合に、前記通知手段が、車両内から外に出ないという対処方法を乗員に通知し、前記処置手段が、ドアをロックするとともにウインドウを閉めるという対応処置を実施することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項13】
前記通知手段が、警察に通報した旨を車両外に伝達することを特徴とする請求項12に記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項14】
前記処置手段が、調光ウインドウ装置を使用して車両内を見えなくするという対応処置を実施することを特徴とする請求項12または請求項13に記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項15】
前記危険判定手段により異常状態がタイヤのパンクであると判定された場合に、前記通知手段が、車両を路肩に寄せるという対処方法を乗員に通知し、前記処置手段が、パワーステアリングのアシスト量を変化させることにより直進性を確保するという対応処置を実施することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置。
【請求項16】
前記危険判定手段により異常状態が車両内への生体の閉じ込めであり、かつ該生体の生命維持に危険な状態であると判定された場合に、前記通知手段が、該生体を車両外に取り出すという対処方法をユーザに通知し、前記処置手段が、ウインドウを開放するとともにトランクリッドを開放するという対応処置を実施することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用危険通知処置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−23862(P2006−23862A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199858(P2004−199858)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】