説明

車両用地震警報装置およびそのプログラム

【課題】車の運転者に事前に地震の到来を告知することにより運転者の安全の確保と交通事故を未然に防止する。
【解決手段】地震の発生時刻、発生位置情報を含む早期情報を受信する地震情報受信機10と、現在位置と現在時刻を受信するGPS受信機40とからの情報により、地震情報処理部20は地震の主要動(S波)の到来時刻を演算し、警報部30により、主として音声により運転者に告知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の到来を一般車両の運転者に事前に告知する地震警報装置およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震国の我が国では様々な地震計が全国的に整備されている。震源付近で検出した伝搬速度の速いP波の初動データを使って求めた早期地震情報をリアルタイムに各所に配信し、遅れてくる被害の大きいS波の被害を大幅に軽減する研究が、防災、減災、避難誘導、設備保全などを目的に多岐にわたり行われている。
【0003】
早期地震情報は、発生時刻、発生場所(緯度、経度、深度)、地震規模(マグニチュード)であり、この情報が有れば任意地点での地震の到達時刻は震源からの離隔距離とS波の伝搬速度(略秒速3km)から予測出来、また、その地点の震度は、地震規模と離隔距離およびその地点の地盤情報により推定演算出来る事が知られている。
【0004】
従って任意地点が住居や建物など固定の地点に早期地震警報を行う場合は、予めセンターで求めた地点毎の地震情報(到達時刻と予測震度)を地点毎に配信すればよい。すでに実施されている新幹線のシステムは運行経路が固定であり、かつ車両の位置が絶えず中央管制室により把握されているので被害の予測される特定の車両に情報を伝達してS波の到来以前に安全上の処置を講じることが容易である。
【0005】
一方、所在が固定しない携帯電話機などの携帯端末に対して、その携帯端末の所在地の地震情報を提供するものとして、特許文献1に示すようなものが提案されている。
【0006】
特許文献1に示すものは、GPSなどを利用して自身の現在位置を検出可能な携帯端末から送信される現在位置情報と気象庁から提供される地震観測情報とに基づき、サーバにおいてユーザの現在位置における震度情報を作成し、この震度情報を携帯端末に返信するようにしたものである。
【特許文献1】特開2002−122674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
運行が管理されていない移動走行中の一般車両に早期地震情報を伝達し、走行中の車両に事前に安全措置を講じる事を行おうとする場合、被害の予想される地域の放送局や携帯電話局の電波送信機から情報を発信する方法が一般的である。
【0008】
ところがこれらは電波の伝搬距離が数〜数10kmであり、早期地震情報を受信車両の位置によって地震の到達時刻に正負数〜10秒の誤差が生じる。例えば、早期地震情報を発信する電波局の位置における地震の到来時刻(何秒後)と震度を基準に、情報を発信した場合、その電波を受信する車両が震源寄りに18km離れていた場合と、震源から遠ざかる方向に18km離れていた場合とでは、地震の到達時刻に正負6秒の誤差を生じることになる。震源に近い車両においては、受信した地震の到達時刻予測よりも6秒も早く地震が到来する。
【0009】
この場合、地震情報を受信しても、走行中の車両にあっては安全上の措置を取る暇が無く地震情報自体の目的が達せられない。
【0010】
地震情報の発信基地を多数もうける方法も考えられるが、設備投資が膨大になる欠点があり、かつ、電波伝搬の無方向性は依然として残るので、到達時刻予測の正負の誤差を根本的に解決することはできない。
【0011】
また、特許文献1に記載の方法は、地震情報を得るためにはユーザ側からのアクセスが必要であり、地震の到来を事前に入手する早期地震情報の伝達法には適していない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために本発明の車両用地震警報装置およびそのプログラムは、地震情報受信機の他にGPS受信機を保有し、このGPS受信機の正確な時刻と位置情報とにより、車両の位置にかかわらず正確な地震の到来時刻を車両側において演算し運転者に知らせるようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用地震警報装置およびそのプログラムは地震の主要動の到達を事前に正確に知る事が出来るため運転者が心の準備をして危険な加速を行わないなど、安全運転上の措置を行う事が出来るので転倒や衝突などの事故の低減に役立つものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明は、地震の発生時刻と発生位置を含む早期地震情報を受信する地震情報受信機と現在位置、現在時刻を受信するGPS受信機、前記地震情報受信機および前記GPS受信機の情報を受けて地震の主要動の到達時刻を演算する地震情報処理部およびこの地震情報処理部の出力で主として音声により運転者に地震の到来を告知する警報部で構成することにより、地震の到来を事前に正確に運転者に知らせる事ができ、地震到来による交通事故などの被害を軽減することができる。
【0015】
第2の発明は、特に第1の発明の地震情報処理部をカーナビゲーション装置に接続し、GPS受信機として、このカーナビゲーション装置から現在位置と現在時刻を得るようにすることにより警報装置をより小型で安価に提供できる。
【0016】
第3の発明は、特に第1の発明の地震情報処理部に音声発生部を設けこの音声発生部をカーナビゲーション装置のオーディオ部もしくはカーオーディオ装置に接続することにより警報装置をよりシンプルに、かつ安価に提供できる。
【0017】
第4の発明は、特に第1の発明の地震情報処理部に文字発生部を設けこの文字発生部をカーナビゲーション装置のディスプレイに接続することにより、警報装置をシンプルする事ができ、かつ詳細な情報を運転者や同乗者に知らせることができる。
【0018】
第5の発明、は特に第1の発明の地震情報処理部を車両の車載機器制御装置に接続することにより、地震到来時に車両の後尾照明灯を明滅して後続の車両にも告知するようにして、後続車の事故防止にも効果をもたらすものである。
【0019】
第6の発明は、特に第1の発明の地震情報処理部を車両の車載機器制御装置に接続することにより、例えば地震到来時に車両の加速を禁止し、漸次減速を行って事故の防止をより効果的に行えるものである。
【0020】
第7の発明は、第1〜6のいずれかの発明の車両用地震警報装置の少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラムである。そして、プログラムであるので、電気・情報機器、コンピュータ、サーバー等のハードリソースを協働させて本発明の車両用地震警報装置の少なくとも一部を容易に実現することができる。また記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることでプログラムの配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における車両用地震警報装置の構成を示すものである。
【0023】
図1において、10はアンテナ11によってFM多重放送や移動体無線の早期地震情報を含む電波を受信する地震情報受信機であり、受信した地震発生情報12はCPUを備えた地震情報処理部20に送られる。40はアンテナ41によりGPS衛星からの電波を受信するGPS受信機であり、その出力は、現在位置・時刻情報42として常時前記の地震情報処理部20に送られる。またこの地震情報処理部20の警報出力21が警報部30に送られる。以上のように構成された車両用地震警報装置について、その動作、作用を説明する。
【0024】
地震情報処理部20は、地震発生情報12が発生した場合、この発生情報に含まれる発生位置の情報である緯度、経度および震源の深度の情報と、絶えずGPS受信機から送られてくる車両の現在位置(緯度、経度)から震源までの離隔距離を演算する。
【0025】
次に、この離隔距離と地震の主要動であるS波の伝搬速度とからS波の到達時間を演算する。次に前記発生情報に含まれる地震の発生時刻に到達時間を加算して到達時刻を求める。さらにGPS受信機の現在時刻と対照して何秒後の到達かを演算し、警報部30により車両の運転者に何秒後に地震の主要動が到来するかを音声等で告知する。
【0026】
一方、地震の予測震度については、地震情報処理部20が求めた前記の離隔距離と地震発生情報12に含まれる地震規模(マグニチュード)から予め設定した減衰式により求め、さらに地震発生情報12に含まれている地盤情報を加味した目安の震度情報を演算して警報部30により、前記主要動の到達時間と併せて運転者に告知される。例えば、「ピッピッ、地震注意、10秒後、震度3」といった音声情報である。
【0027】
なお、以上の動作は、CPUがRAMやROMと協働するプログラムの形態で実行される。
【0028】
以上のように本実施の形態1においては、地震情報受信機10の地震情報とGPS受信機40の現在位置・時刻情報を地震情報処理部20で地震の到来時刻と予測震度を演算し警報部30で告知する構成にしたことにより、車両の位置にかかわらず、地震の正確な到来時刻と震度を運転者に告知できるもので、地震による運転中の交通事故を未然に防止する効果が期待できるものである。
【0029】
なお、本実施の形態1は、車両に搭載して有効な効力を発揮するものであるが、車両用地震警報装置を車両から取りはずす形態にして、家庭用として応用することを妨げるものではない。
【0030】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における車両用地震警報装置の構成を示すものである。
【0031】
図2において、地震情報処理部20は、演算部と音声発生部および文字発生部を有している。50はカーナビゲーション装置である。このカーナビゲーション50において、GPS受信機40の位置情報はCPU43に送られ、ここで地図データベース(図示せず)と照合して、現在位置がディスプレイ45上に表示される。また、必要に応じオーディオ部44により音声案内が行われる。
【0032】
ここで地震情報処理部20の演算部はカーナビゲーション50のGPS受信機40に接続され、現在位置・時刻情報42を常時入手している。地震情報処理部20の音声発生部はオーディオ部44に接続され、地震情報処理部20の文字発生部もまたディスプレイ45に接続されている。
【0033】
60は前記の地震情報処理部20に接続された車載機器制御装置であり、後尾照明灯70を点滅制御する。また、図示していないが車両の加速、減速を制御するアクセルやブレーキとも係合されている。
【0034】
以上のように構成された車両用地震警報装置について、その動作、作用を説明する。
【0035】
地震の主要動の到達時刻と予測震度については、実施の形態1と同様の動作である。
【0036】
地震情報処理部20の演算部がその結果を得た時、地震情報処理部20の音声発声部はその音声出力22をカーナビゲーション50のオーディオ部44に送り、これにより運転者に音声で告知される。音声の例も実施の形態1と同様である。
【0037】
同時に地震情報処理部20の文字発生部はその文字出力23をカーナビゲーション50のディスプレイ45に送り、これによりディスプレイ45上に文字で告知される。文字情報は、人に対しての伝達速度が速く、かつ伝達情報量も多いので同乗者がいた場合に有効である。
【0038】
図3はその表示例を示す。図3において地震の文字表示は点滅により注意を喚起し、予測到達時間は時間経過に従いカウントダウンで表示される。また地震情報の中に震源地の地名情報がある場合はその地名が表示される。
【0039】
以上のように本実施の形態2においては、実施の形態1のGPS受信機40をカーナビゲーションで保有するGPS受信機40と共用しかつ、実施の形態1の警報部30をカーナビゲーション50で保有するオーディオ部44とディスプレイ45と共有する構成にしたことで実施の形態1の装置の構成が簡素になり、従って小型で安価に地震警報装置が提供できる。
【0040】
また、警報信号24で車載機器制御装置60を介して後尾照明灯70を点滅させる構成にしたことにより、本発明の装置を搭載していない後続の車両にも地震の到来を告知して後続車両の運転事故を未然に防止するとともに後続車両からの追突を避けるなどの効果が期待できるものである。
【0041】
また、警報信号24で車載機器制御装置60を介してアクセルやブレーキを制御する構成にしたことにより、運転者がパニック状態になった場合でも、あわてて加速したり、急ブレーキ操作を行うなどの不安全操作を修正して、より安全側に車両を運行できる。
【0042】
なお、本実施の形態ではディスプレイ45上の表示は文字としたが、文字の一部に絵文字やマークを用いてもよく、同じく本実施の形態では地震情報処理部20の音声発生部をカーナビゲーション50のオーディオ部に接続したが、この音声発生部はカーオーディオ装置(図示せず)に接続してもよい。または、音声と表示は、地震情報処理部20の演算部とCPU43を接続することにより、それぞれカーナビゲーションのディスプレイ45とオーディオ部44に出力する構成としてもよい。
【0043】
また、実施の形態1および実施の形態2において、地震情報処理部20の内部に緯度、経度情報に対応した地盤情報を内蔵してもよい。また、地震情報の発信側の発信データに地盤情報を含まないようにすれば情報量が低減できるので、より迅速な告知が期待できる。
【0044】
なお、本実施の形態で説明した各部は、CPU(またはマイコン)、RAM、ROM、記憶・記録装置、I/Oなどを備えた電気・情報機器、コンピュータ、サーバー等のハードリソースを協働させるプログラムの形態で実施してもよい。プログラムの形態であれば、磁気メディアや光メディアなどの記録媒体に記録したりインターネットなどの通信回線を用いて配信することで新しい機能の配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明の車両用地震警報装置およびそのプログラムは、地震の主要動の到来を任意の場所において正確に予測し告知するものであるので、本発明の装置を携帯型に展開して車両用以外の地震到来で人命の危険の発生する分野、例えば、ビル建設現場やダム建設現場などの高所作業者の地震警報装置として、あるいは登山者向けの落石や滑落をさけるための警報装置などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1における車両用地震警報装置の構成を示す説明図
【図2】本発明の実施の形態2における車両用地震警報装置の構成を示す説明図
【図3】本発明の実施の形態2における地震警報の表示例を示す説明図
【符号の説明】
【0047】
10 地震情報受信機
20 地震情報処理部
30 警報部
40 GPS受信機
44 オーディオ部
45 ディスプレイ
50 カーナビゲーション装置
60 車載機器制御装置
70 後尾照明灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震の発生時刻、発生位置情報を含む早期地震情報を受信する地震情報受信機と、現在位置と現在時刻情報を受信するGPS受信機と、前記地震情報受信機および前記GPS受信機の情報を受けて地震の主要動の到来時刻を演算する地震情報処理部、およびこの地震情報処理部の出力で主として音声により地震の到来を運転者に告知する警報部とで構成された車両用地震警報装置。
【請求項2】
地震情報処理部はカーナビゲーション装置に接続され、GPS受信機として、このカーナビゲーション装置から現在位置と現在時刻を得るようにした請求項1の車両用地震警報装置。
【請求項3】
地震情報処理装置は音声発生部を有し、この音声発生部がカーナビゲーション装置のオーディオ部もしくはカーオーディオ装置に接続され、このオーディオ部もしくはカーオーディオ装置によって運転者に地震の到来を告知する請求項1の車両用地震警報装置。
【請求項4】
地震情報処理部は文字発生部を有し、この文字発生部がカーナビゲーション装置のディスプレイに接続され、このディスプレイによって運転者に地震の到来を告知する請求項1の車両用地震警報装置。
【請求項5】
地震情報処理部は照明灯などを制御する車載機器制御装置に係合され、この車載機器制御装置によって車両の後尾照明灯を明滅して後続の車両に地震の到来を告知する請求項1の車両用地震警報装置。
【請求項6】
地震情報処理部は車両の加速および減速を制御する車載機器制御装置に係合され、この車載機器制御装置によって車両の走行を制御する請求項1の車両用地震警報装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の車両用地震警報装置の少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−318003(P2006−318003A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137005(P2005−137005)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】