説明

車両用強度部材

【課題】 内部に空気流路が形成された車両用強度部材について、異なる車型間において車両幅方向に沿った寸法差があっても、構成部品の共通化を図ることにより、その製造コストの削減を図る。
【解決手段】 車両用強度部材34について、車両幅方向の中央に配置されて内部に空気流路38、39が形成されている中央部材36と、車両幅方向の両方の端部側に配置されて中央部材36と車両の構造体35とを連結することが可能な連結部材37とで構成されると共に、連結部材37に互換性を持たせたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に対しその車幅方向に沿って搭載されて車両の幅方向の強度を高めると同時に空気流路も有する部材の構造に関する。
【0002】
車両に対しその幅方向に沿って搭載される車両用強度部材(例えばステアリングメンバ若しくはクロスカービームとも称する。)について、当該車両用強度部材と空調ダクトとの機能統合を図るべく、その内部を空気が通過するダクト状とする構造については既に公知となっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
また、上記車両用強度部材が複数の部材により構成されたものとする構造についても既に公知となっている(例えば、特許文献2及び特許文献3を参照。)。すなわち、この特許文献2、3では、ステアリングメンバは運転手席側メンバと助手席側メンバとを連結した構造となっている。
【特許文献1】特開2004−1687号公報
【特許文献2】特開2004−189040号公報
【特許文献3】特開2004−189041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対し、車両は例えば普通乗用車同士を比較しても異なる車型間で車両幅方向に沿った寸法に差異を有することから、車両用強度部材の長手方向の全長の寸法も搭載される車型に応じて定める必要があるので、車両用強度部材を複数の寸法で用意しなければならず、車両用強度部材の製造コストが高く付くという不具合があった。
【0005】
そして、特許文献2、3に係る車両用強度部材の構造でも、異なる車型間の寸法差を吸収する手段を有しないので、上記した複数の寸法の車両用強度部材を用意することによるコスト増という不具合を解消することができない。
【0006】
そこで、本発明は、異なる車型間のために車両幅方向に沿った寸法差があっても、構成部品の共通化を図って、その製造コストの削減を図った車両用強度部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用強度部材は、車両幅方向に配置されて内部に空気流路が形成されている中央部材と、車両幅方向の両方の端部側に配置されて前記中央部材と車両の構造体とを連結することが可能な連結部材とで構成されると共に、前記連結部材に互換性を持たせたことを特徴とするものである(請求項1)。尚、中央部材は、例えば各吹出口まで空調空気を案内するためのダクトとしてのみ機能するものであっても、加熱用熱交換器等の空調手段を収納することで空調装置の一部を構成するものであっても良い。また、連結部材は中央部材の空気流路の開口部を閉塞する有底の蓋体としても機能する。
【0008】
そして、前記連結部材に前記中央部材のうち車両幅方向に沿った側の端部が挿入可能な挿入孔を形成して、前記中央部材の端部を前記連結部材の挿入孔に挿入した際に、当該中央部材の端部の挿入代の目標値を10mm以上に設定したものとなっている(請求項2)これにより、中央部材と連結部材との接合面積を確保することができ、その接合部位の強度や中央部材を連結部材に挿入した際の中央部材と連結部材との間のシール性の確保が図られる。また、中央部材の製造時の軸方向寸法の交差等も上記目標値を設定することにより吸収することができる。尚、連結部材の側面に形成される通孔は、中央部材の挿入代の寸法に差があっても螺子を螺合することができるように、挿入孔の軸方向に沿って延びる長孔となっている。
【0009】
また、前記連結部材に前記中央部材のうち車両幅方向に沿った側の端部が挿入可能な挿入孔を形成して、前記中央部材の端部を前記連結部材の挿入孔に挿入した際に、当該挿入孔のうち前記中央部材の端部が挿入されない余剰代の目標値を10mm以上に設定したものとなっている(請求項3)。これにより、中央部材を連結部材に挿入した際の取り付け交差等も上記目標値を設定することにより吸収することができる。
【0010】
本発明に係る車両用強度部材について、前記中央部材のうち車両幅方向に沿った側の端部に当該中央部材の他の部位よりも径寸法の小さな小径部を形成し、この小径部を前記連結部材の挿入孔に挿入させると共に、前記小径部の外周面と前記連結部材の挿入孔の内周面との間にシール部材を介在させたものとしても良い(請求項4)。これにより、中央部材の空気流路から連結部材との接合部位の隙間を抜けて空気が漏れることがなくなり、シール性が高まる。
【0011】
また、本発明に係る車両用強度部材について、前記連結部材の側部のうち前記中央部材の端部が挿入されない範囲に、空気が通る開口部を形成したものとしても良い(請求項5)。更に、本発明に係る車両用強度部材について、前記連結部材の挿入孔のうち前記中央部材の端部が挿入されない範囲に、吸音手段を配したものとしても良い(請求項6)。更にまた、本発明に係る車両用強度部材について、前記連結部材の挿入孔にシール部材を収納したものとしても良い(請求項7)。このシール部材は、挿入孔の軸方向に沿って圧縮可能であり、中央部材が挿入されることで圧縮されるように挿入孔に収納されている。
【0012】
更に、本発明に係る車両用強度部材について、前記連結部材に前記中央部材のうち車幅方向に沿った側の端部が挿入可能な挿入孔を形成して、前記中央部材の端部を前記連結部材の挿入孔に挿入した際に、その挿入代を決定する突き当て部を、前記連結部材と前記中央部材との少なくとも一方に設けたことを特徴とする(請求項8)。前記突き当て部は、前記連結部材の挿入孔の内周面に段差を生じさせることで形成された立壁面である(請求項9)。また、前記突き当て部は、前記連結部材の挿入孔の底面である(請求項10)。更に、前記突き当て部は、前記中央部材の外周面に段差を生じさせることで形成され立壁面である(請求項11)。尚、突き当て部は、前記連結部材と前記中央部材との双方に設けても良い。更に、前記段差は、例えば、環状に突起部を形成したり、前記中央部材の開口端側近傍部位から開口端までを拡径化し、前記連結部材の挿入孔の底面近傍から底面側までを縮径化したりすることで生じさせるようにしても良い。これにより、中央部材と連結部材との組み付け時に目標値に沿った中央部材の好適な挿入代を決定することが容易となる。
【発明の効果】
【0013】
これらの発明によれば、車両用強度部材を構成する中央部材と連結部材のうち連結部材について異なる車型間でも交換可能となることから、中央部材を車型が異なっても共通化することが可能となり、これに伴い中央部材の製造コスト、ひいては車両用強度部材全体の製造コストを削減することができる。
【0014】
特に請求項2に記載の発明によれば、中央部材と連結部材との接合部位の強度や中央部材を連結部材に挿入した際の中央部材と連結部材との間のシール性の確保を図ることができる。また、中央部材の製造時の軸方向寸法の交差等も接合代の寸法を10mm以上とする目標値を設定することにより吸収することができる。
【0015】
特に請求項3に記載の発明によれば、挿入孔のうち前記中央部材の端部が挿入されない余剰代の寸法を10mm以上とする目標値を設定することにより、中央部材を連結部材に挿入した際の取り付け交差等も吸収することができる。
【0016】
特に請求項4又は請求項7に記載の発明によれば、中央部材と連結部材との接合部位のシール性が更に高まり、中央部材の空気流路から連結部材との接合部位の隙間を通って外部に空気が漏れるのをより確実に防止することができる。また、請求項5に記載の発明によれば、中央部材に空気流路から吹出口等に送風するための開口部を形成する必要がなくなり中央部材の製造コストをより削減することができると共に、中央部材にも同じ目的の開口部を有する場合には双方の開口部から大量の空気量を得ることができるので、空調性能の向上も図ることができる。更に、請求項6に記載の発明によれば、中央部材の空気流路を空気が通過する際等で発生する騒音を抑制することができる。
【0017】
特に請求項8から11に記載の発明によれば、中央部材を連結部材に対し突き当て部に突当するまで挿入するのみで、中央部材の端部の挿入寸法を正確且つ簡単に決定することができる。これに伴い、車両の取り付け寸法を容易にコントロールすることができるので、中央部材の連結部材への挿入寸法を細やかに管理しなくても良くなることから、異なる車幅の車両に対し異なる連結部材を嵌めるのみで対応可能であるというこの発明の長所をより引き出すことができる。すなわち、中央部材の端部を連結部材に挿入した際に中央部材の車両幅方向の端部が突き当て部に突当する寸法或いは中央部材の突き当て部が連結部材の挿入孔の開口端部に突当する寸法を挿入代として好ましい数値(例えば10mm以上)に設定することにより、複数の車両寸法に応じた連結部材に適宜交換するだけで好ましい挿入寸法に管理することができる。また、車両の側面に他の車両が衝突するような事態が生じた際にも、側面荷重を受けられるので車両の剛性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を図面により説明する。
【0019】
図1及び図2に示される空調ユニット1は、例えば車両用空調ユニットとして用いられる縦置き形式の一体型のもので、内外気切換ボックス2と空調ユニット本体3とで基本的に構成されている。そして、この空調ユニット1を収納し設置するための設置許容空間4は、エンジンルーム5と車室6とを仕切るファイヤーウォール7と、このファイヤーウォール7に連接したフロアパネル8と、イントルメントパネル9とで、車幅方向に沿って延設された構造となっている。この設置許容空間4内には、ベント吹出通路10、デフ吹出通路11が配されている。
【0020】
内外気切換ボックス2は、図1に示されるように、外気導入口12と内気導入口13とがケーシング14に開口すると共に、これらの内外気導入口12、13を適宜選択するための内外気切換ドア15がこのケーシング14内に収納されたものとなっている。
【0021】
空調ユニット本体3は、図示しない開口部を介して前記内外気切換ボックス2と連通しており、内部に空気流路16が形成されたケーシング18内には、内外気切換ボックス2から空気を下流側に送るための送風機20が収納されていると共に、この送風機20の下流側には、当該送風機20により送られてきた空気を冷却するエバポレータ等の冷却用熱交換器21と、この冷却用熱交換器21で冷却された空気を再加熱するヒータコア等の加熱用熱交換器22とが車両の進行方向に沿って前後に立設している。そして、この実施形態では、冷却用熱交換器21の上流側にエアフィルタ24が配されている。
【0022】
また、空調ユニット本体3は、ケーシング18内に、冷却用熱交換器21を通過した空気に対し、加熱用熱交換器22をバイパスして下流側に導く冷風通路16Aと、加熱用熱交換器22を通過した空気を下流側に導く温風通路16Bとが形成されており、冷風通路16Aと温風通路16Bとを通過する空気の割合が加熱用熱交換器22の略上方に設けられたエアミックスドア23により調整されるようになっている。
【0023】
更に、空調ユニット本体3は、ケーシング18内に、空調ユニット本体3の温風通路27と冷風通路28とが合流するエアミックスチャンバ25が形成され、更にこのエアミックスチャンバ25よりも下流側において、デフ開口部27、ベント開口部28、フット開口部29が、ケーシング18に適宜開口している。各開口部27、28、29は、対応する開口部の手前に設けられたモードドア30、31、32によりその開閉を可能としている。
【0024】
一方、空調ユニット本体3に対し、そのデフ開口部27、ベント開口部28の軸方向の上側には車両用強度部材34が配置されている。この車両用強度部材34は、ステアリングメンバ若しくはクロスカービームと称されるもので、車幅方向に沿って延設されておりその両側は図2に示されるように車両の構造体35に固定されている。
【0025】
この車両用強度部材34は、車両幅方向の中央に位置する中央部材36と、この中央部材36の長手方向(車両幅方向)に沿った両側に位置して車両の構造体35と中央部材36とを連結させる連結部材37とで構成されている。
【0026】
このうち、中央部材36は、例えば鉄板を表面に配すると共に樹脂板を内面に配したハイブリッド板を側部とするもので、この実施形態では、図1及び図2に示されるように、仕切り部33により車両の進行方向に沿って並んだ空気流路38、39が画成されているもので、空気流路38は空調ユニット本体3のデフ開口部27と連接していると共にデフ吹出通路11と開口部40を介して連接し、空気流路39は空調ユニット本体3のベント開口部28と連接していると共にベント吹出通路10と開口部41又は開口部42を介して連接している。すなわち、中央部材36の軸方向の中央側に開口した開口部41と連接するベント吹出通路はセンターベント用となり、中央部材36の軸方向の端側に開口した開口部42と連接するベント吹出通路はサイドベント用となる。
【0027】
連結部材37は、例えば金属製の素材から成るもので、図3又は図4に示されるように中央部材36の長手方向の端部が挿入可能な有底の挿入孔43を形成すべく、設置時に車両の幅方向に沿って延びる側部44と底部45とを有したものとなっている。底部45の端部は側部44よりも挿入孔43の径方向に沿って突出してフランジ46を形成しており図示しないが、このフランジ46と車両の構造体35とを固定具により固定することで連結部材37は構造体35に連結される。更に、この実施形態では、中央部材36の空気流路38、39を流れて来た空気が連結部材37の挿入孔43内で混合しないように、例えば仕切り部33と略同じ厚みで挿入孔43の軸方向に沿って延びると共に可撓性を有するシール部材50が挿入孔43内に収納されて、挿入孔43内での仕切り部としての役割を果たしている。但し、中央部材36の各空気流路38、39の長手方向の両側の開口端を図示しない中蓋部材で閉塞するようにしても良い。
【0028】
中央部材36及び連結部材37の側部44には、図3又は図4に示されるように、その径方向に沿って通孔47、48が形成されており、この通孔47と通孔48とを連通状態として螺子49を挿入し、連結部材37内部に配されて螺子切りされた孔を有する受け部51の当該孔と螺合することによって、中央部材36と連結部材37とが連結される。そして、連結部材37は、中央部材36内に形成された空気流路38、39の長手方向両側の開口部を閉塞する蓋体としての役割も果たすことができる。
【0029】
上記のように車両用強度部材34が中央部材36と連結部材37、37とで構成され、
且つ連結部材37について互換性を有する複数のものを予め用意することにより、異なる車型であるために車両幅方向の寸法に違いがあっても、連結部材37を車型毎に交換することで異なる車型間に由来する寸法差を吸収することができるので、中央部材36の共通化が図れることから、中央部材36の製造コスト、ひいては車両用強度部材34全体の製造コストを削減することができる。また、中央部材36内に空気流路38、39が形成されることで車両用強度部材34としての軽量化や、空気流路のためのダクトを引き回すことがないので空調装置全体としての省スペース化を図るという目的も達成することができる。
【0030】
一方、この発明では、中央部材36の剛性や中央部材36と連結部材37とのシール性の確保、中央部材36の製造交差、中央部材36を連結部材37の挿入孔43内に装着した時の取り付け交差等の吸収のために、図3又は図4に示されるような数値が設定されている。
【0031】
すなわち、図3(A)に示されるように、ある車両における中央部材36の長手方向の端部を連結部材37の挿入孔43に挿入する範囲(以下、挿入代と略す。)の寸法値をX1と採り、図3(B)に示されるように、ある車両における中央部材36の挿入代の寸法値をX2と採った場合に、例えば、中央部材36と連結部材37との双方について同一の部材とし、更に図3(A)で車両用強度部材が搭載される車両と図3(B)車両用強度部材が搭載される車両とを別のものとしても、常にX1、X2の挿入代の目標値は10mm以上となるように設定する。これにより、中央部材36と連結部材37との接合部位の接合面積を確保することができ、その接合部位の強度や中央部材36を連結部材37に挿入した際の中央部材と連結部材との間のシール性の確保が図られる。
【0032】
しかも、中央部材36の挿入代の目標値を10mm以上としながらそれ以上の数値でも挿入可能とすることで、中央部材36の長手方向の寸法の製造交差は、その差分ほど中央部材36を連結部材37に相対的に深く挿入するのみで吸収することができる。連結部材37の通孔48は、中央部材36の挿入孔43への挿入寸法値Xの変動により中央部材36の通孔47の位置が中央部材36の軸方向に沿ってずれても、螺子49を両通孔47、48に挿通可能とするために、図3(C)に示されるように、挿入孔43の軸方向に延びる長孔形状となっている。
【0033】
また、図4(A)に示されるように、ある車両における中央部材36の長手方向の端部を連結部材37の挿入孔43への挿入した際に挿入孔43の底部45から中央部材36の長手方向の端部までの範囲(以下、余剰代と略す。)の値をY1と採り、図4(B)に示されるように、ある車両における連結部材37の挿入孔43の余剰代の値をY2と採った場合に、例えば、中央部材36は同一の部材、連結部材37は異なる部材としながら中央部材36の長手方向の端部の連結部材37の挿入孔43への挿入寸法は同一とし、更に図4(A)で車両用強度部材が搭載される車両と図4(B)車両用強度部材が搭載される車両とを別のものとしても、常にY1、Y2の目標値は10mm以上となるように設定するこれにより、中央部材36を連結部材37に挿入した際の取り付け交差を吸収することができる。
【0034】
次に、図4に示されるように、連結部材37の挿入孔43の余剰代の目標値Yを10mm以上とした場合における変形例について、図5、図6及び図7を用いて説明する。但し先の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0035】
図5において、連結部材37は、その側部44のうち中央部材36の端部が挿入されない範囲となる部位において、サイドベント用の開口部41が形成されている。これにより中央部材36にサイドベント用の開口部41を形成しなくても良く、また中央部材36にも開口部41を形成する場合にはサイドベント用のベント吹出通路10に送られる送風量が十分に確保される。
【0036】
図6において、連結部材37は、上述してきた挿入孔43の仕切り部として機能するシール部材50の代わりに、挿入孔43の内部を全て埋めることができるシール部材53を当該挿入孔43内に収納したものとなっている。このシール部材53は中央部材36の端部が挿入孔43内に挿入されるに従い、挿入孔43の軸方向に沿って圧縮することが可能である。このシール部材53を挿入孔43内に収納することでシール性を確保することができ、空気流路38からの空気と空気流路39からの空気とが連結部材37の挿入孔43内で不用意に合流する等して、空調ユニット1の性能が低下するのを防止することができる。
【0037】
図7において、連結部材37は、挿入孔43のうち中央部材36の端部が挿入されない範囲となる内部において、中央部材36との間に所定の隙間を形成しつつ吸音材54を収納したものとなっている。これにより、中央部材36の空気流路38、39を空気が通過する際等で発生する騒音を抑制することができる。
【0038】
更に一方で、中央部材36を連結部材37に挿入するにあたり、挿入代を一義的に決定する突き当て部61を設ける構造が図8から図10においてそれぞれ示されている。以下、この実施形態について各図8乃至図11を用いて説明する。但し、先の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0039】
図8(A)では、連結部材37の側部44をその径方向の外側に向けて曲折した曲折部60を設けて段差を生じさせることにより中央部材36の長手方向の端部が突当する突き当て部61が立壁面状に形成されたものとなっている。これにより、中央部材36を挿入孔43に突き当て部61に突当するまで挿入するのみで、その挿入寸法が正確且つ簡易に決定される。従って、車両の取り付け寸法を容易にコントロールすることができ、中央部材36を挿入する寸法を細やかに管理する必要がなくなる。しかも、連結部材37の通孔43の開口端から突き当て部61の面までの寸法Z1を好ましい挿入寸法(例えば10mm以上)に設定した場合には、挿入代は一義的に決定されるのでその好ましい挿入寸法を得ることができる。
【0040】
図8(B)では、連結部材37の挿入孔43について開口端側部位43Aより底部側部位43Bの内径寸法を小さくして挿入孔43の内周面に段差を生じさせることにより中央部材36の長手方向の端部が突当する突き当て部61が立壁面状に形成されたものとなっている。これにより、中央部材36を挿入孔43に突き当て部61に突当するまで挿入するのみで、その挿入寸法が正確且つ簡易に決定される。従って、この実施形態でも、車両の取り付け寸法を容易にコントロールすることができ、中央部材36を挿入する寸法を細やかに管理する必要がなくなる。しかも、連結部材37の通孔43の開口端から突き当て部61の面までの寸法Z2を好ましい挿入寸法(例えば10mm以上)に設定した場合には、挿入代は一義的に決定されるのでその好ましい挿入寸法を得ることができる。
【0041】
図9では、連結部材37の挿入孔43の底面が、図8で説明した立壁面状の突き当て部61を兼ねるものとなっている。これにより、中央部材36を挿入孔43の底面に突当するまで挿入するのみで、その挿入寸法が正確且つ簡易に決定される。従って、この実施形態でも、車両の取付寸法を容易にコントロールすることができ、中央部材36を挿入する寸法を細やかに管理する必要がなくなる。しかも、連結部材37の通孔43の開口端から底面までの寸法Z3を好ましい挿入寸法(例えば10mm以上)に設定した場合には、挿入代は一義的に決定されるのでその好ましい挿入寸法を得ることができる。
【0042】
図10(A)では、中央部材36の外周面に例えば環状に突出した突起部62を設けて当該中央部材36の外周面に段差を生じさせることにより、突起部62の連結部材側に対し突き当て部61を立壁面状に形成したものとなっている。これにより、中央部材36について、その突き当て部61が連結部材37の挿入孔43の開口端に突当するまで挿入するのみで、その挿入寸法が正確且つ簡易に決定される。従って、この実施形態でも、車両の取り付け寸法を容易にコントロールすることができ、中央部材36を挿入する寸法を細やかに管理する必要がなくなる。しかも、中央部材36の突き当て部61の面から長手方向の開口端までの寸法Z4を好ましい挿入寸法(例えば10mm以上)に設定した場合には、挿入代は一義的に決定されるのでその好ましい挿入寸法を得ることができる。
【0043】
図10(B)では、中央部材36の長手方向の端部に対しその外径寸法を他の部位よりも小さくして小径部63として、当該中央部材36の外周面に段差を生じさせることにより突き当て部61を立壁面状に形成したものとなっている。これにより、中央部材36について、その突き当て部61が連結部材37の挿入孔43の開口端に突当するまで挿入するのみで、その挿入寸法が正確且つ簡易に決定される。従って、この実施形態でも、車両の取り付け寸法を容易にコントロールすることができ、中央部材36を挿入する寸法を細やかに管理する必要がなくなる。しかも、中央部材36の突き当て部61の面から長手方向の開口端までの寸法Z5好ましい挿入寸法(例えば10mm以上)に設定した場合には、挿入代は一義的に決定されるのでその好ましい挿入寸法を得ることができる。
【0044】
更にまた、図11において、中央部材36の端部等についての変形例が示されている。以下、この実施形態について図11を用いて説明する。但し、先の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
中央部材36の端部は、当該中央部材36の径方向に窄める等して中央部材36の他の部位よりも径方向寸法の小さい小径部55が形成されている。そして、このような構成の中央部材36を連結部材37の挿入孔43に挿入するにあたっては、中央部材36の小径部55の外周面に環状のシール部材56を予め嵌合する等して、小径部55の外周面と挿入孔43の内周面との間にシール部材56を介在させて、中央部材36と連結部材37との接合部位のシール性を確保するものとなっている。
【0046】
そして、この車両用強度部材34においても、中央部材36の挿入代の目標値X3は10mm以上、連結部材37の挿入孔43の余剰代の目標値Y3は10mm以上となるように設定されている。中央部材36と連結部材37との接合部位の接合面積を確保することができ、その接合部位の強度や中央部材36を連結部材37に挿入した際の中央部材36と連結部材37との間のシール性の確保が図られる。また、中央部材36を連結部材37に挿入した際の取り付け交差を吸収することができる。
【0047】
最後に、これまでの実施形態では、車両用強度部材34は、中央部材36内に空気流路38、39を形成した構成のみで説明してきたが必ずしもこれに限定されず、図示しないが、加熱用熱交換器22等の空調手段を収納した構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、車両用空調ユニット及び車両用強度部材等について車両幅方向から見た状態を示す説明図である。
【図2】図2は、車両用空調ユニット及び車両用強度部材等について車両進行方向の後側から見た状態を示す説明図である。
【図3】図3は、車両用強度部材の交差を吸収するための中央部材の挿入代の数値設定を示す説明図である。
【図4】図4は、車両用強度部材の交差を吸収するための連結部材の挿入孔の余剰代の数値設定を示す説明図である。
【図5】図5は、中央部材が連結部材の挿入孔に挿入した際の挿入孔の中央部材が挿入されない範囲となる連結部材の側部に送風用開口部を形成したことを示す説明図である。
【図6】図6は、中央部材が連結部材の挿入孔にシール部材を収納したことを示す説明図である
【図7】図7は、中央部材が連結部材の挿入孔に挿入した際の挿入孔の中央部材が挿入されていない範囲内に消音手段を配したことを示す説明図である。
【図8】図8(A)は、連結部材の側部を曲折して段差を生じさせることにより突き当て部を設けた構成を示す説明図であり、図8(B)は、連結部材の挿入孔の開口端側を底面側よりも相対的に拡げることにより段差を生じさせて突き当て部を設けた構成を示す説明図である。
【図9】図9は、連結部材の挿入孔の底面が突き当て部を兼ねる構成を示す説明図である。
【図10】図10(A)は、中央部材の長手方向の開口端近傍部位に突起部を設けることにより段差を生じさせて突き当て部を設けた構成を示す説明図であり、図10(B)は、中央部材の長手方向の開口端側に小幅部を形成することにより段差を生じさせて突き当て部を設けた構成を示す説明図である。
【図11】図11は、中央部材の長手方向の側端に小径部を形成し、この小径部の外周面と連結部材の挿入孔の内周面との間にシール部材を配したことを示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用空調ユニット
34 車両用強度部材
35 車両の構造体
36 中央部材
37 連結部材
38 空気流路
39 空気流路
41 開口部
43 挿入孔
44 側部
45 底部
47 通孔
48 通孔
49 螺子
53 シール部材
54 吸音材(吸音手段)
55 小径部
56 シール部材
60 曲折部
61 突き当て部
62 突起部
63 小径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に配置されて内部に空気流路が形成されている中央部材と、車両幅方向の両方の端部側に配置されて前記中央部材と車両の構造体とを連結することが可能な連結部材とで構成されると共に、前記連結部材に互換性を持たせたことを特徴とする車両用強度部材。
【請求項2】
前記連結部材に前記中央部材のうち車両幅方向に沿った側の端部が挿入可能な挿入孔を形成して、前記中央部材の端部を前記連結部材の挿入孔に挿入した際に、当該中央部材の端部の挿入代の目標値を10mm以上に設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両用強度部材。
【請求項3】
前記連結部材に前記中央部材のうち車両幅方向に沿った側の端部が挿入可能な挿入孔を形成して、前記中央部材の端部を前記連結部材の挿入孔に挿入した際に、当該挿入孔のうち前記中央部材の端部が挿入されない余剰代の目標値を10mm以上に設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両用強度部材。
【請求項4】
前記中央部材のうち車両幅方向に沿った側の端部に当該中央部材の他の部位よりも径寸法の小さな小径部を形成し、この小径部を前記連結部材の挿入孔に挿入させると共に、前記小径部の外周面と前記連結部材の挿入孔の内周面との間にシール部材を介在させたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の車両用強度部材。
【請求項5】
前記連結部材の側部のうち前記中央部材の端部が挿入されない範囲に、空気が通る開口部を形成したことを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の車両用強度部材。
【請求項6】
前記連結部材の挿入孔のうち前記中央部材の端部が挿入されない範囲に、吸音手段を配したことを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の車両用強度部材。
【請求項7】
前記連結部材の挿入孔にシール部材を収納したことを特徴とする請求項12又は3のいずれかに記載の車両用強度部材。
【請求項8】
前記連結部材に前記中央部材のうち車幅方向に沿った側の端部が挿入可能な挿入孔を形成して、前記中央部材の端部を前記連結部材の挿入孔に挿入した際に、その挿入代を決定する突き当て部を、前記連結部材と前記中央部材との少なくとも一方に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用強度部材。
【請求項9】
前記突き当て部は、前記連結部材の挿入孔の内周面に段差を生じさせることで形成された立壁面であることを特徴とする請求項8に記載の車両用強度部材。
【請求項10】
前記突き当て部は、前記連結部材の挿入孔の底面であることを特徴とする請求項8に記載の車両用強度部材。
【請求項11】
前記突き当て部は、前記中央部材の外周面に段差を生じさせることで形成された立壁面であることを特徴とする請求項8に記載の車両用強度部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−13048(P2008−13048A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186341(P2006−186341)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)
【Fターム(参考)】